説明

流体機器の継手の製造方法

【課題】 単一の材料を用いる1回の成形工程で継手の全体を成形し、ホース挿着部の膨出部を含む先端側部分の外面にパーティングラインのバリを生じさせず、オイルのにじみを防止すること。
【解決手段】 流体機器10の接続口11に取着される取着部21と、ホース12の一端が挿着されるホース挿着部22とを備え、ホース挿着部22はホース12が挿着される範囲の中間部に外径の膨出部22Aを設けてなる流体機器10の継手20の製造方法において、ホース挿着部22の膨出部22Aを含む先端側部分の外面を環状の外型32により形成するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機器の継手の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ等の流体機器の樹脂等から形成される継手として、図6、図7に記載の如く、流体機器の接続口に取着される取着部1と、ホースの一端が挿着されるホース挿着部にて、取着部1とホース挿着部2の間で直角に折れ曲がる折れ曲がり部3とを備えてなるものがある。ホース挿着部2は、ホースが挿着される範囲の中間部に外径の膨出部2Aを設け、ホース挿着部2に対するホースの密着を図っている。
【0003】
このような継手の製造方法としては、図6、図7に記載の如く、取着部1の外面を形成する環状の外型4と、ホース挿着部2と折れ曲がり部3を形成する上下の2つの割型5A、5Bと、取着部1から折れ曲がり部3に向かって流通路を形成する内型6と、ホース挿着部2から折れ曲がり部3に向かって流通路を形成する内型7を用いるものがある。型内に樹脂を充填し、冷却した後に内型6と内型7を引き抜き、次に外型4を引き抜き、2つの割型5A、5Bを取り外すことによって継手が形成される。
【0004】
しかしながら、上述した従来の製造方法では、図8に示す如く、ホース挿着部2の膨出部2Aを含む全体の外面が2つの割型5A、5Bで形成されるため、ホース挿着部2のホースが挿着される範囲の軸方向(長手方向)に沿う全長さ範囲に渡ってパーティングライン8のバリが出る。このため、ホース挿着部2にゴムホースを嵌めたとき、ゴムホースはホース挿着部2との間に、ホースが挿着される範囲の軸方向に沿う全長さ範囲に渡る、パーティングライン8のバリに起因する隙間を生じ、タンク内オイルのヘッド圧等により加圧されたオイルがこの隙間から外界ににじみ出るおそれがある。
【0005】
特許文献1に記載の継手では、上述のオイルのにじみを防止するため、グラスなしの樹脂で成形されかつ内部に流通路を形成した継手本体と、グラス入りの樹脂で成形されかつ継手本体に溶着されて流体機器にボルト等により取付けられるフランジ部材とから構成されるものとし、継手本体におけるホース挿着部の全体の外面を環状の外型により形成することとした。この外型は成形された継手本体のホース挿着部からむり抜きされ、ホース挿着部の外面にパーティングラインのバリを生じさせない。
【特許文献1】実公平4-10476
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の継手では、継手本体のホース挿着部を単一の外型でむり抜きするため、継手本体はグラスなしの樹脂で成形し、継手本体に溶着されて流体機器にボルト等により取付けられるフランジ部材はグラス入りの樹脂で成形する。2種類の材料を用いて、2回の成形工程を必要とし、更に溶着の工程もあり、手間がかかる。
【0007】
本発明の課題は、単一の材料を用いる1回の成形工程で継手の全体を成形し、ホース挿着部の膨出部を含む先端側部分の外面にパーティングラインのバリを生じさせず、オイルのにじみを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、流体機器の接続口に取着される取着部と、ホースの一端が挿着されるホース挿着部とを備え、ホース挿着部はホースが挿着される範囲の中間部に外径の膨出部を設けてなる流体機器の継手の製造方法において、ホース挿着部の膨出部を含む先端側部分の外面を環状の外型により形成するようにしたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において更に、前記継手が取着部とホース挿着部の間を折れ曲がり部としてなるとき、ホース挿着部の膨出部を含まない反先端側部分の外面と折れ曲がり部の外面を2つの割型により形成するようにしたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記ホース挿着部の膨出部が同一外径で軸方向の一定長さ範囲に渡って連続するストレート状をなすようにしたものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の流体機器の継手の製造方法により製造されたものである。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1、4)
(a)継手において、ホース挿着部の膨出部を含む(膨出部の少なくとも一部を含む)先端側部分の外面が環状の外型により成形される。従って、単一の材料を用いる1回の成形工程で継手の全体を成形し、ホース挿着部のホースが挿着される範囲のうち、膨出部を含む先端側部分にパーティングラインがなく、バリが出ない。このため、ホース挿着部にゴムホースを嵌めたとき、ゴムホースはホース挿着部の膨出部を含む先端側部分に対し、パーティングラインのバリに起因する隙間を生ずることがなく密着し、タンク内オイルのヘッド圧等により加圧されたオイルがにじみ出ることを防止できる。
【0013】
(請求項2)
(b)継手が取着部とホース挿着部の間を折れ曲がり部としてなるときには、ホース挿着部の膨出部を含まない(膨出部の少なくとも一部を含まない)反先端側部分の外面と折れ曲がり部の外面を2つの割型により形成する。このとき、ホース挿着部の膨出部を含む先端側部分のための上述の外型と、2つの割型のそれぞれとの境界に環状のパーティングラインを生じ、2つの割型の境界に直線状のパーティングラインを生ずる。そして、継手の外面には、上述の環状のパーティングラインと直線状のパーティングラインのバリを生ずる(図4、図5)。このため、ホース挿着部にゴムホースを嵌めたとき、ゴムホースはホース挿着部において膨出部を含まない反先端側部分に対し、パーティングラインのバリに起因する隙間を生ずる。ところが、ゴムホースはホース挿着部の膨出部を含む先端側部分に対しては上述(a)によってパーティングラインのバリに起因する隙間を生ずることなく密着するから、タンク内オイルのヘッド圧等により加圧されたオイルがにじみ出ることを防止できる(図5)。
【0014】
(請求項3)
(c)継手のホース挿着部の膨出部が同一外径で軸方向の一定長さ範囲に渡って連続するストレート状をなす。従って、ホース挿着部にゴムホースを嵌めたとき、ゴムホースがホース挿着部の反先端側部分で上述(b)のパーティングライン(特に環状のパーティングライン)のバリに起因する隙間を生じても、この隙間はホース挿着部の先端側部分でストレート状をなす膨出部の一定長さ範囲に渡って密着するゴムホースにより外界に対して確実に封止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は継手の使用状態を示す断面図、図2は継手の製造型を示す断面図、図3は図2のIII−III線に沿う断面図、図4は継手のホース挿着部のための型割を示す模式図、図5は継手のホース挿着部のストレート状膨出部を示す模式図、図6は従来例の継手の製造型を示す断面図、図7は図6のVII−VII線に沿う断面図、図8は従来例の継手のホース挿着部のための型割を示す模式図である。
【実施例】
【0016】
図1において、10はベーンポンプ等のポンプケーシング(流体機器)であり、ポンプケーシング10には吸入口(接続口)11が形成され、この吸入口11に継手20を介してゴムホース12が接続され、リザーバタンクのオイルがゴムホース12から供給される。
【0017】
継手20は、樹脂で形成され、ポンプケーシング10の吸入口11に取着される取着部21と、ゴムホース12の一端が挿着されるホース挿着部22と、取着部21とホース挿着部22の間で直角に折れ曲がった折れ曲がり部23を備える。
【0018】
取着部21は、ポンプケーシング10の吸入口11にOリング13を介して液密に挿入される先細り部21Aを備える。
【0019】
ホース挿着部22は、ゴムホース12が装着される範囲の中間部に最大外径をなす拡径状の膨出部22Aと、その先端側の先細り部22Bを備える。本実施例では、ホース挿着部22の膨出部22Aが同一外径で軸方向の一定長さ範囲L(図5)に渡って連続するストレート状をなす。ゴムホース12はホース挿着部22の先端側の先細り部22Bから膨出部22Aを経て、膨出部22Aの奥側(反先端側)にまで挿着され、膨出部22Aにおいて密着をなすように被着される。
【0020】
折れ曲がり部23は、ボス23Aに金属カラー23Bをくるみ込むように成形される。
【0021】
従って、継手20は、ポンプケーシング10の吸入口11に取着部21の先細り部21Aを挿入し、折れ曲がり部23のカラー23Bに差し込まれるボルト14をポンプケーシング10のねじ孔に螺着することにより、ボス23Aをポンプケーシング10に締結し、ホース挿着部22にゴムホース12を挿着するように用いられる。
【0022】
しかるに、継手20は、図2、図3に示す如く、取着部21の外面を形成する環状の外型31と、ホース挿着部22の膨出部22Aの少なくとも一部(好適には概ね全部)、本実施例では全部を含む先端側部分(膨出部22A及び先細り部22B)の外面を形成する環状の外型32と、ホース挿着部22の膨出部22Aの少なくとも一部、本実施例では全部を含まない反先端側部分(22C)の外面を形成する上下の2つの割型33A、33Bと、取着部21から折れ曲がり部23にかけて流通路24を形成する内型34と、ホース挿着部22から折れ曲がり部23にかけて流通路25を形成する内型35の6つの型を用いて以下の手順で形成される。尚、外型32はホース挿着部22の膨出部22Aの全部でなく、膨出部22Aの一部を含む先端側部分(膨出部22Aの一部及び先細り部22B)の外面を形成するものでも良い。
【0023】
(1)型31〜35内に樹脂を充填する。
(2)樹脂の冷却後、内型34と内型35を引き抜く。
(3)外型31と外型32を引き抜き、上下の割型33A、33Bを取り外す。
【0024】
型31、32、33A、33Bにより成形された継手20の外面には、図4に示す如く、各型の合せ面に対応するパーティングラインに沿うバリを生ずる。継手20のホース挿着部22の先端側部分(膨出部22A及び先細り部22B)の外面を成形する外型32は割型になっていないため、パーティングラインに沿うバリを生じない。
【0025】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)継手20において、ホース挿着部22の膨出部22Aを含む(膨出部22Aの少なくとも一部を含む)先端側部分の外面が環状の外型32により成形される。従って、単一の材料を用いる1回の成形工程で継手20の全体を成形し、ホース挿着部22のホース12が挿着される範囲のうち、膨出部22Aを含む先端側部分にパーティングラインがなく、バリが出ない。このため、ホース挿着部22にゴムホース12を嵌めたとき、ゴムホース12はホース挿着部22の膨出部22Aを含む先端側部分に対し、パーティングラインのバリに起因する隙間を生ずることがなく密着し、タンク内オイルのヘッド圧等により加圧されたオイルがにじみ出ることを防止できる。
【0026】
(b)継手20が取着部21とホース挿着部22の間を折れ曲がり部23としてなるときには、ホース挿着部22の膨出部22Aを含まない(膨出部22Aの少なくとも一部を含まない)反先端側部分の外面と折れ曲がり部23の外面を2つの割型33A、33Bにより形成する。このとき、ホース挿着部22の膨出部22Aを含む先端側部分のための上述の外型32と、2つの割型33A、33Bのそれぞれとの境界に環状のパーティングライン26を生じ、2つの割型33A、33Bの境界に直線状のパーティングライン27を生ずる。そして、継手20の外面には、上述の環状のパーティングライン26と直線状のパーティングライン27のバリ26A、27Aを生ずる(図4、図5)。このため、ホース挿着部22にゴムホース12を嵌めたとき、ゴムホース12はホース挿着部22において膨出部22Aを含まない反先端側部分に対し、パーティングライン26、27のバリ26A、27Aに起因する隙間28を生ずる。ところが、ゴムホース12はホース挿着部22の膨出部22Aを含む先端側部分に対しては上述(a)によってパーティングラインのバリに起因する隙間を生ずることなく密着するから、タンク内オイルのヘッド圧等により加圧されたオイルがにじみ出ることを防止できる(図5)。
【0027】
(c)継手20のホース挿着部22の膨出部22Aが同一外径で軸方向の一定長さ範囲に渡って連続するストレート状をなす。従って、ホース挿着部22にゴムホース12を嵌めたとき、ゴムホース12がホース挿着部22の反先端側部分で上述(b)のパーティングライン26、27(特に環状のパーティングライン26)のバリ26A、27Aに起因する隙間28を生じても、この隙間28はホース挿着部22の先端側部分でストレート状をなす膨出部22Aの一定長さ範囲に渡って密着するゴムホース12により外界に対して確実に封止される。
【0028】
尚、図5に示す如く、高さ0.1mmのバリ26に対し、膨出部22Aのストレート部の長さ4mmで、隙間28を封止できる。
【0029】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明の継手は、少なくとも取着部とホース挿着部を備えるものであれば、折れ曲がり部を備えなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は継手の使用状態を示す断面図である。
【図2】図2は継手の製造型を示す断面図である。
【図3】図3は図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図4は継手のホース挿着部のための型割を示す模式図である。
【図5】図5は継手のホース挿着部のストレート状膨出部を示す模式図である。
【図6】図6は従来例の継手の製造型を示す断面図である。
【図7】図7は図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図8は従来例の継手のホース挿着部のための型割を示す模式図である。
【符号の説明】
【0031】
10 ポンプケーシング(流体機器)
11 吸入口(接続口)
12 ゴムホース
20 継手
21 取着部
22 ホース挿着部
22A 膨出部
23 折れ曲がり部
32 環状の外型
33A、33B 2つの割型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体機器の接続口に取着される取着部と、ホースの一端が挿着されるホース挿着部とを備え、
ホース挿着部はホースが挿着される範囲の中間部に外径の膨出部を設けてなる流体機器の継手の製造方法において、
ホース挿着部の膨出部を含む先端側部分の外面を環状の外型により形成することを特徴とする流体機器の継手の製造方法。
【請求項2】
前記継手が取着部とホース挿着部の間を折れ曲がり部としてなるとき、
ホース挿着部の膨出部を含まない反先端側部分の外面と折れ曲がり部の外面を2つの割型により形成する請求項1に記載の流体機器の継手の製造方法。
【請求項3】
前記ホース挿着部の膨出部が同一外径で軸方向の一定長さ範囲に渡って連続するストレート状をなす請求項1又は2に記載の流体機器の継手の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の流体機器の継手の製造方法により製造された流体機器の継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−840(P2009−840A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161861(P2007−161861)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】