説明

流体浄化のためのフィルター用素材

【課題】土壌中に極めて多量に貯えられている炭素、所謂、土の炭素を粉末化して得られる粉末炭素をベースとするフィルター素材を供するものであり、それによって、各種汚水の浄化(汚水中の重金属の吸着処理、濁度の除去、脱臭)、並びに、室内あるいは車内などの空気の浄化、マイナスイオンの発生などに極めて効果的に作用する流体浄化のためのフィルター用素材を提供すること。
【解決手段】土壌中に貯えられている炭素を粉末化して得られる粉末炭素を、発泡性プラスチックペレットとともに発泡処理して、気泡性に富んだスポンジ状の組織体1に成形し、あるいは、当該粉末炭素を、不織布の加工処理過程において混入し、不織布組織体2に成形してなる流体浄化のためのフィルター用素材であり、且つ、前記粉末炭素に放射性鉱物を加えたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、汚水浄化並びに空気浄化を含む流体浄化のためのフィルター用素材に関するものであり、特に、各種汚水の浄化(汚水中の重金属の吸着処理、濁度の除去、脱臭)、並びに、室内あるいは車内などの空気の浄化、マイナスイオンの発生などに効果のあるフィルターのための素材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、汚水を浄化する処理法としては、微生物による生物学的処理と、薬剤などによる化学的処理を施し、活性炭処理並びにフィルタ−処理を経て浄化放流している。戦後60年余、上水、下水、工業、産業、畜産などあらゆる分野において、上記するような処理法によって汚水の浄化が行われてきた結果、河川並びに湖沼の現況は、環境ホルモンの破壊という重大な問題に直面し、著しい速度で更なる汚染が進行してきている。
【0003】
このように、上水、下水、工業、産業、畜産など全ての汚水処理が、生物学的処理と薬剤などの有機物処理であるために、汚水中の重金属の除去が極めて困難であり、更には、生物処理であるために、微生物の死骸が汚泥になってしまい、この汚泥から、例えば、アンモニアガスなどの異臭ガスが発生し、周囲の生活環境を破壊している。これらの異臭は、活性炭で処理されてきているため、莫大な資金が投入されているのが現況である。
【0004】
活性炭は、脱臭機能を有するものであり、活性炭を媒体とする脱臭フィルターとしては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載のような技術内容のものが知られており、提供されてきている。まず、特許文献1に記載のものは、吸着材の初期性能を低下させることなく、充分な触媒作用を発揮させることができ、優れた初期脱臭性能を長期に亘って維持することができる脱臭フィルターを提供するものであり、バインダーにより保持された吸着材5を含む保持用不織布2と、この保持用不織布を両側から挟持する除塵用不織布3および4からなる3層積層構造の脱臭フィルターにおいて、吸着ガスを処理するための触媒を吸着材以外の部分に、例えば、バインダーに担持させる技術内容が開示されている。
【0005】
一方、特許文献2に記載のものは、電気的設備を必要とせず、簡単に換気と脱臭ができるクローゼットの換気脱臭構造を提供しようとするものであり、クローゼット1の開口部2に通気孔4を形成した折り戸を設けると共に、折り戸の裏側面の通気孔4と対応する位置に活性炭フィルター7を取り替え可能に取り付けた構造の技術内容が開示されている。
【0006】
この特許文献1および特許文献2に記載のものは、いずれも、吸着材5として活性炭を用いる技術内容が開示されているものにすぎない。活性炭とは、木質系原料をベースにガス割賦法により生産した水蒸気炭、薬品割賦法により生産した塩化亜鉛炭などの粉末活性炭、あるいは、石炭、ヤシ殻、木質系原料をベースに、これらを粒状化した粒状活性炭などとして提供されている。上記するように、活性炭は、石炭、ヤシ殻、木質系原料をベースとするものであり、資源の面からも多くの問題を有しており、莫大な資金が投入されてきた要因となっている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−17832号公報(要約、請求項12、図1)
【特許文献2】特開平11−206483号公報(要約、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明では、上記する従来技術の問題点を解消すべくなしたものであって、特に重要な要素は、土壌中に極めて多量に貯えられている炭素、所謂、土の炭素を粉末化して得られる粉末炭素をベースとするフィルター素材を提供するものであり、それによって、各種汚水の浄化(汚水中の重金属の吸着処理、濁度の除去、脱臭)、並びに、室内あるいは車内などの空気の浄化、マイナスイオンの発生などに極めて効果的に作用する流体浄化のためのフィルター用素材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記する目的を達成するにあたって、請求項1に記載の発明は、土壌中に貯えられている炭素を粉末化して得られる粉末炭素を、発泡性プラスチックペレットとともに発泡処理して、気泡性に富んだスポンジ状の組織体に成形してなることを特徴とする流体浄化のためのフィルター用素材を構成する。
【0010】
さらに、この発明において請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の流体浄化のためのフィルター用素材であって、前記粉末炭素に放射性鉱物を加えたことを特徴とするものである。
【0011】
さらに、この発明において請求項3に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載の流体浄化のためのフィルター用素材であって、前記スポンジ状の組織体をブロック状に成形してなることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、この発明において請求項4に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載の流体浄化のためのフィルター用素材であって、前記スポンジ状の組織体をプレート状に成形してなることを特徴とするものである。
【0013】
さらにまた、この発明において請求項5に記載の発明は、土壌中に貯えられている炭素を粉末化して得られる粉末炭素を、不織布の加工処理過程において混入し、不織布組織体に成形してなることを特徴とする流体浄化のためのフィルター用素材を構成するものでもある。
【0014】
さらに、この発明において請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の流体浄化のためのフィルター用素材であって、前記粉末炭素に放射性鉱物を加えたことを特徴とするものである。
【0015】
さらに、この発明において請求項7に記載の発明は、請求項5あるいは請求項6に記載の流体浄化のためのフィルター用素材であって、前記不織布組織体をブロック状に成形してなることを特徴とするものである。
【0016】
さらに、この発明において請求項8に記載の発明は、請求項5あるいは請求項6に記載の流体浄化のためのフィルター用素材であって、前記不織布組織体をプレート状に成形してなることを特徴とするである。
【発明の効果】
【0017】
この発明になる流体浄化のためのフィルター用素材によれば、土壌中に極めて多量に貯えられている炭素、所謂、土の炭素を粉末化して得られる粉末炭素をベースとして構成され、一例においては、当該粉末炭素を発泡性プラスチックペレットとともに発泡処理して、気泡性に富んだスポンジ状の組織体に成形し、他例においては、当該粉末炭素を不織布の加工処理過程において混入し、不織布組織体に成形してなるものであり、これらによって、汚水の浄化(汚水中の重金属の吸着処理、濁度の除去、脱臭)、並びに、室内あるいは車内などの空気の浄化、マイナスイオンの発生などに極めて効果的に作用する流体浄化のためのフィルター用素材を供するもので、経済的にも極めて有利であり、環境衛生的にも極めて有効に作用するものといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明になる流体浄化のためのフィルター用素材について、図面に示す具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明になる流体浄化のためのフィルター用素材であって、図1Aは、粉末炭素を発泡性プラスチックペレットとともに発泡処理して、気泡性に富んだスポンジ状の組織体に成形した例を示す概略的な断面図、図1Bは、粉末炭素を不織布の加工処理過程において混入し、不織布組織体に成形した例を示す概略的な断面図である。
【0019】
一方、図2は、当該フィルター用素材によって形成されるフィルターの形態例を示すものであって、図2Aは、これをブロック状に成形した例を示す概略的な斜視図、図2Bは、プレート状に成形した例を示す概略的な斜視図である。さらに、図3は、当該フィルター用素材によって形成されるフィルターの適用例を示す概略的な側断面図であり、図4は、当該フィルター用素材による第2の適用例を示す概略的な側断面図である。
【0020】
この発明になる流体浄化のためのフィルター用素材FMは、基本的には、土壌中に極めて多量に貯えられている炭素Ca、所謂、土の炭素を粉末化して得られる粉末炭素をベースとして構成され、一例においては、当該粉末炭素を発泡性プラスチックペレットとともに発泡処理して、気泡性に富んだスポンジ状の組織体1として成形され、他例においては、当該粉末炭素を不織布の加工処理過程において混入して、不織布組織体2として成形されるものである。前記粉末炭素は、以下のようにして採取、加工、生成する。
(1)まず、炭素含有率(%)が極めて高い黒色土を採取し、これを篩装置にかけて異物を排除する。
(2)ふるい分けられた黒色土を硫酸で滅菌処理する。この場合、硫酸を用いることにより、土の中に含まれているアルミナを活性アルミニウムにかえることができる。
(3)しかる後、天日で乾燥させてから、所望の粒径になるよう粉末化する。
【0021】
この発明において、土の炭素は、炭素含有率(%)が極めて高い黒色土と称する土壌中に存在する炭素であり、比重は0.6以下で、その炭素核の粒度は、
(1/100億)mm〜(1/300億)mmと非常に微細であるため、膨大な内表面積を有し、可変性の電荷をもっている。この土の炭素は、その中に植物性炭素フェノール水酸基(−OH)と、動物性炭素カルボキシル基(−COOH)とを含有しているため、汚水中の重金属あるいは臭気を吸収分解する能力を有している。また、この発明では、土の炭素に対して放射性鉱物Raを加えた構成をも含むもので、当該放射性鉱物のアルファー線の射出と、炭素のもつ(−H)の複合作用によって、1mm立方当たり2万個のマイナスイオンを射出する。
【0022】
この発明になる流体浄化のためのフィルター用素材は、汚水の浄化にあたって、汚水中の重金属の吸着処理、濁度の除去あるいは臭の吸着分解に作用し、室内あるいは車内などの空気の浄化、臭の吸着分解ならびにマイナスイオンの発生などの効果がある。
【0023】
この発明になる流体浄化のためのフィルター用素材は、その適用例により、図2各図に示すような形態のものとして形成される。すなわち、図2Aに示す例によれば、これをブロック状に成形したブロック状成形体3であって、厚み寸法が、0.5mm〜400mm程度のものであり、角型、丸型あるいはこれらに類する各種立体形状のものとして形成される。一方、図2Bに示す例によれば、これをプレート状に形成したプレート状成形体4であって、厚み寸法が、0.5mm〜200mm程度のものである。
【0024】
上記するような構成でなるフィルター用素材を、図3に示すように浄化材ないしはフィルターとして適用した具体的な適用例に基づいて説明する。図3は、原水5を整水6に処理する装置であり、原水供給側に浄化材としてのブロック状成形体3を収容して、曝気口Seよりエアー曝気する複数の曝気槽7、8を備えており、その下流側にフィルターとしての複数枚のプレート状成形体4を収容してエアー曝気する曝気槽9を備えている。このような装置で、原水を整水処理した場合の臭気試験のための試験操作並びにその結果について例示する。
(1)臭気濃度検知測定容器は、測定する前に開放し、付属換気扇を約3分以上作動し、内部の残留臭気を完全に追い出す。
(2)反応容器の500ミリリットルのビーカーを横にし、その中に臭気原液を入れ、その直後に臭気原液をラップフィルム(塩化ビニリデン)で密閉する。その後所定の反応時間を経過する。
(3)所定の反応時間経過後、臭気濃度検知測定容器内換気扇を完全に停止し、直ちにビーカーのラップフィルムを手早く取り除き、臭気原液を臭気濃度検知測定容器に入れ密閉する。
(4)臭気濃度検知測定容器内換気扇を作動し、約2分間経過後、検知管で臭気濃度を測定した。
その結果、臭気の要因となるアンモニアとメチルアミンについて、原水と処理水について比較した。アンモニアについては、原水では230PPMであったものが、処理水では1.0PPM以下であり、メチルアミンについては、原水では39.5PPMであったものが、処理水では0.5PPM以下であった。
【0025】
次いで、上記するような構成でなるフィルター用素材を、図4に示すように浄化材として適用した第2の具体的な適用例に基づいて説明する。図4は、原水10を処理水11に処理する装置であり、原水供給側に浄化材としてのブロック状成形体3を収容してエアー曝気する複数の曝気槽12、13を備えており、その下流側に沈殿槽14を備えている。このような装置で、原水を処理した場合の各検査項目についての結果は、下記に示す通りのものであった。
検査項目 計量値 処理水 計量方法
COD [mg/l] 3,900 PPM 17 PPM JIS K 0102 17
BOD [mg/l] 2,900 PPM ND JIS K 0102 2132.3
大腸菌群数 [個/ml] 18000000 PPM 260 PPM 昭和37年厚生省建設省令 1号
全リン [mg/l] 240 PPM 0.5 PPM JIS K 0102 46.3
全窒素 [mg/l] 370 PPM 65 PPM JIS K 0102 45.2
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、この発明になる流体浄化のためのフィルター用素材であって、図1Aは、粉末炭素を発泡性プラスチックペレットとともに発泡処理して、気泡性に富んだスポンジ状の組織体に成形した例を示す概略的な断面図、図1Bは、粉末炭素を不織布の加工処理過程において混入し、不織布組織体に成形した例を示す概略的な断面図である。
【図2】図2は、当該フィルター用素材によって形成されるフィルターの形態例を示すものであって、図2Aは、これをブロック状に成形した例を示す概略的な斜視図、図2Bは、プレート状に成形した例を示す概略的な斜視図である。
【図3】図3は、当該フィルター用素材によって形成されるフィルターの適用例を示す概略的な側断面図である。
【図4】図4は、当該フィルター用素材による第2の適用例を示す概略的な側断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 スポンジ状の組織体
2 不織布組織体
3 ブロック状成形体
4 プレート状成形体
5 原水
6 整水
7、8 複数の曝気槽
9 曝気槽
10 原水
11 処理水
12、13 複数の曝気槽
14 沈殿槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌中に貯えられている炭素を粉末化して得られる粉末炭素を、発泡性プラスチックペレットとともに発泡処理して、気泡性に富んだスポンジ状の組織体に成形してなることを特徴とする流体浄化のためのフィルター用素材。
【請求項2】
前記粉末炭素に放射性鉱物を加えたことを特徴とする請求項1に記載の流体浄化のためのフィルター用素材。
【請求項3】
前記スポンジ状の組織体をブロック状に成形してなることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の流体浄化のためのフィルター用素材。
【請求項4】
前記スポンジ状の組織体をプレート状に成形してなることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の流体浄化のためのフィルター用素材。
【請求項5】
土壌中に貯えられている炭素を粉末化して得られる粉末炭素を、不織布の加工処理過程において混入し、不織布組織体に成形してなることを特徴とする流体浄化のためのフィルター用素材。
【請求項6】
前記粉末炭素に放射性鉱物を加えたことを特徴とする請求項5に記載の流体浄化のためのフィルター用素材。
【請求項7】
前記不織布組織体をブロック状に成形してなることを特徴とする請求項5あるいは請求項6に記載の流体浄化のためのフィルター用素材。
【請求項8】
前記不織布組織体をプレート状に成形してなることを特徴とする請求項5あるいは請求項6に記載の流体浄化のためのフィルター用素材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−110510(P2006−110510A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302688(P2004−302688)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(300011667)株式会社エコ・ウォータージャパン (1)
【Fターム(参考)】