説明

流体節約喚起器

【課題】流体圧に応じて昇降部材を移動させることができるコンパクトで簡素な構成の蛇口取付用の流体節約喚起器を提案すること。
【解決手段】水道の蛇口に取り付けた節水喚起器1(流体節約喚起器)は、円筒状の透明な側ケース部3の内周面に沿って上下に延びている移動通路13に円筒状の昇降部材20を配置しており、この移動通路13を下から上に流体が流れる。昇降部材20の内周面から内側に張り出すように円環状の受圧板22が形成されており、この受圧板22に上向きの流体の流れが当たって流体圧に応じた上昇方向の力が作用する。昇降部材20は、この上昇方向の力と重力とが釣り合う位置まで上昇する。透明な側ケース部3を透過して昇降部材20の位置を外側から目視できる。昇降部材20が上昇しすぎる場合には水の出し過ぎであることが分かり、節水を喚起できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道の蛇口などの流体流出管の流出口に取り付けて使用する流体節約喚起器に関し、さらに詳しくは、流出口から流出する流体流量に応じて昇降部材を昇降させ、当該昇降部材の位置を目視で確認することにより流体の節約を喚起できるようにした流体節約喚起器に関する。
【背景技術】
【0002】
この形式の流体節約喚起器としては、特許文献1に開示のものが知られている。特許文献1の流量表示器は、透明樹脂からなる本体ケースの中に、コイルばねによって付勢した浮子が配置されており、浮子が配置されている通路に水を流して、浮子に作用する通過水の圧力が大きくなると、ばね力に逆らって浮子が移動するように構成されている。これにより、浮子の移動位置を見ることにより流量が設定流量以上になったか否かを認識でき、利用者の節水行動を喚起することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−196719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体通路内にばねなどの部品を組み込んだ流体節約喚起器は、ばね受けを配置するなど構造が複雑である。また、ばねの経時変化などに起因して、流体圧に対する浮子の移動位置が変化して、正確に流体圧や流量を把握できなくなる可能性がある。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、ばねなどの部品を流路内に配置することなく流体圧に応じて昇降部材を移動させることができるコンパクトで簡素な構成の流体節約喚起器を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の流体節約喚起器は、
水道の蛇口などの流体流出口に取り付けるケースと、
当該ケースの内部に形成した流体通路と、
当該流体通路における上下に延びる移動通路部分に沿って昇降する昇降部材とを有し、
前記ケースは、前記移動通路部分における前記昇降部材の位置を外部から目視で確認するための位置確認部を備え、
前記流体通路は、前記移動通路部分において流体が上昇する方向に流れるように構成されており、
前記昇降部材は、前記移動通路部分を通過する流体からの上昇方向の流体圧を受ける受圧部を備えることを特徴としている。
【0007】
本発明は、このような構成により、ばねなどの部材を用いずに重力と上昇方向の流体圧とが釣り合う位置まで昇降部材を移動させることができる。よって、流体節約喚起器を、部品点数が少なく簡単な構成にすることができ、小型化および軽量化を図ることができる。また、部品を少なくすることにより流体が流れる流路を広くすることができ、流体の抵抗を少なくすることができる。また、受圧部の受圧面積と昇降部材の重量とを適宜設定することにより、所望の流量に対応する昇降部材の上昇位置を、位置確認部から確認できるように適宜設定することができる。
【0008】
本発明の流体節約喚起器において、前記昇降部材に、前記移動通路部分に沿って延びているガイド部を設け、前記受圧部を、前記ガイド部から前記移動通路部分を横断する方向に張り出した構成にすることができる。このようにすると、昇降部材を移動通路に沿ってスムーズに移動させることができると共に、上昇方向の流体の流れを受圧部の下面でとらえることができる。また、受圧部の張り出し寸法を調整することで、受圧面積を調整できる。
【0009】
このとき、前記ケースを、円筒状の側ケース部と、当該側ケース部の上端を封鎖している上ケース部と、前記側ケース部の下端を封鎖している下ケース部と、前記側ケース部内に同軸状に形成されている内ケース部によって構成し、前記上ケース部の上端面に開口している流体流入口と、前記下ケース部の下端面に開口している流体吐出口と、前記内ケース部および前記上ケース部の内部を通って上下方向に延びており、その上端が前記流体流入口を介して外部と連通し、且つ、その下端が閉鎖されている軸線方向通路と、当該軸線方向通路よりも下方において前記軸線方向通路と区画されて形成されており、前記流体吐出口を介して外部と連通している下部チャンバーと、当該軸線方向通路の底面付近から横向きに延びて前記内ケース部の外周面に開口している横向き通路と、前記内ケース部における前記横向き通路と交差しない部分を貫通して上下に延びており、前記内ケース部の外周部分における前記横向き通路よりも上の位置に一端が開口し、他端が前記下部チャンバー内に開口している縦向き通路とを備えた構成とする。そして、前記移動通路部分を、前記側ケース部の内周面と、前記内ケース部の外周面との間に形成された隙間とし、前記位置確認部を、前記側ケース部の少なくとも一部に形成された透明部分にすることができる。このようにすれば、円筒状の側ケース部の内周面に沿って移動通路部分を形成でき、この移動通路部分において上昇する方向に流体を流すことができる。また、この移動通路部分を上下に移動する昇降部材の位置を、側ケースの透明部分から目視で確認できる。
【0010】
この場合には、前記昇降部材を、前記側ケース部の内周面に内接して上下に延びている円筒状のガイド部と、当該ガイド部の内周面から径方向内側に張り出している前記受圧部とを備えている構成にすることができる。このとき、前記受圧部を前記ガイド部の内周面に沿って円環状に形成しておけば、受圧面積を広くすることができる。
【0011】
さらに、前記受圧部を、前記ガイド部の下端が前記移動通路の下端に当たる位置まで前記ガイド部が落下した状態で、前記横向き通路よりも上に位置するように構成しておけば、昇降部材が最も下の位置に落下している状態でも、横向き通路から流れ出す流体による上向き流体圧が受圧部に作用する。よって、昇降部材を流量に応じて確実に移動させることができる。
【0012】
このとき、前記横向き通路および前記縦向き通路をそれぞれ複数設け、前記円錐台部の周方向に、前記横向き通路と前記縦向き通路を交互に配置することもできる。このようにすれば、流路面積を大きくして流量を大きくすることができ、かつ、受圧部への上向き流体圧が周方向に偏らないようにバランス良く作用させることができる。
【0013】
また、前記位置確認部または前記昇降部材に、前記昇降部材の位置と流量とを対応付ける指標を付しておけば、流量を目視で正確に把握できる。例えば、複数段階の流量に対応付けた目盛りを付しておくことにより、各段階の流量を読み取れるようにすることができる。
【0014】
さらに、前記流体吐出口に流量調整器を接続可能に構成しておくか、もしくは、流量調整機構を内蔵しておけば、流量調整を行って流体の出し過ぎを解消することができる。
【0015】
また、前記昇降部材を、前記流体通路を流れる流体流量に応じて、当該昇降部材の中心軸線回りに回転可能にしておくことでも、流体の節約を喚起することができる。
【0016】
この場合には、前記ケースの前記位置確認部を介して外部から目視可能な前記昇降部材の外周面に、文字、絵柄あるいは図形を描いておき、これらの文字、絵柄、図形が前記昇降部材の回転に伴って目視形状が変化するように、これらを前記外周面に描いておけばよい。たとえば、回転が速くなると一定形状の絵柄、図形が認識できなくなるようにすればよい。逆に、回転が速くなると一定形状の絵柄、図形として目視できるように、残像現象を利用可能な形態で絵柄、図形、文字などを印刷しておいてもよい。
【0017】
次に、流体節約喚起器に、前記流体通路を流れる流体流量が所定流量を超えると水を外部に噴出する水噴射ノズルを備えた水噴射リングを接続可能にしておくことができる。この代わりに、流体節約喚起器に、水噴射ノズルを備えた水噴射機構を内蔵しておくことも可能である。流体流量が増加すると水噴射ノズルから勢いよく流体が外部に噴出することにより、流量が多すぎることを知らせることができる。
【0018】
同様に、流体節約喚起器に、前記流体通路を流れる流体流量に応じて警告音あるいは振動音を発生する振動発生器を接続可能にしておくことができる。あるいは、流体通路を流れる流体流量に応じて警告音あるいは振動音を発生する振動発生機構を内蔵しておくことができる。このようにすれば、視覚と共に聴覚に対しても、流体流量が過剰であることを訴えることができるので効果的である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の流体節約喚起器では、ばねなどの部材を用いずに重力と流体圧力が釣り合う位置まで昇降部材を移動させることができる。よって、流体節約喚起器を、部品点数が少なく簡単な構成にすることができ、小型化および軽量化を図ることができる。また、部品を少なくすることにより流体が流れる流路を広くすることができ、流体の抵抗を少なくすることができる。また、受圧部の受圧面積と昇降部材の重量とを適宜設定することにより、所望の流量に対する昇降部材の移動位置を、位置確認部から確認できるように適宜設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した節水喚起器の縦断面図である。
【図2】節水喚起器の横断面図(図1(b)のA−A断面図)である。
【図3】節水喚起器の分解斜視図である。
【図4】内ケースの上面図、側面図、下面図、および縦断面図である。
【図5】水流に応じて回転する昇降部材の2例を示す斜視図である。
【図6】節水喚起器に接続可能な水噴射リングを示す図であり、(a)はその水流入側の端面図であり、(b)はその縦断面図であり、(c)はその水流出側の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した水道蛇口用の節水喚起器の実施の形態を説明する。図1(a)および(b)は節水喚起器の縦断面図であり、図2は節水喚起器の横断面図(図1(b)のA−A断面図)である。また、図3は節水喚起器の分解斜視図である。節水喚起器1(流体節約喚起器)は、下向きに延びる蛇口の先端などの流体流出口に取り付けるケース2と、このケース2の内部に配置した昇降部材20とを備えている。昇降部材20の構成は後述する。
【0022】
ケース2は、透明樹脂製の円筒形状の側ケース部3の上下端を上ケース部4および下ケース部5によって封鎖している。上ケース部4の上端面中央にはケース2の内部に流体を導入するための流体流入口6が開口している。流体流入口6は、取り付け対象の水道の蛇口などの先端部分に接続される。一方、下ケース部5における下端面の中央部分は下向きの円筒状に突出しており、この突出部分の下端に流体吐出口7が開口している。流体流入口6は、上ケース部4を上下方向に貫通する流体通路部分の上端開口となっており、流体吐出口7は、下ケース部5を上下方向に貫通する流体通路部分の下端開口となっている。
【0023】
上ケース部4は、その外周部分に側ケース部3の上端部分が接続されており、内周部分に形成されている下向き凸部8を側ケース部3の内側に挿入した状態となっている。下向き凸部8は側ケース部3の内側に同軸状に延びており、その外周面と側ケース部3の内周面との間に円筒状の隙間が形成されている。
【0024】
下ケース部5の上面部分には、浅い上向き凹部が形成されており、この上向き凹部の中央に、下ケース部5を上下に貫通する流体通路部分の上端が開口している。また、下ケース部5は、その外周端に沿って上向きに立ち上がる円筒状の周壁9を備えており、この周壁9の内側に、側ケース部3の下半分の部分が内接している。
【0025】
ケース2は、側ケース部3の内側に同軸状に形成された内ケース部10を備えている。図4(a)は内ケース部の上面図、図4(b)は内ケース部の側面図、図4(c)は内ケース部の下面図、図4(d)は内ケース部の縦断面図である。内ケース部10は、円錐台部11と、その上端面の中央から延びている円筒部12とを備えている。円錐台部11の概略形状は円錐の上部を底面と平行な面で切断した形状であり、円錐台部11の外周面と側ケース部3の内周面との間には隙間が形成されている。円錐台部11の外周面はテーパ状であるため、この隙間の幅は、上方に向かうほど内側に広がっている。円錐台部11の上端面における円筒部12を囲んでいる部分は下向き凸部8の先端面と対峙しており、この間には、側ケース部3の内周面から円筒部12の外周面まで円盤状に拡がる隙間が形成されている。このように、ケース2の内部には、側ケース部3の内周面に沿って、下向き凸部8の外周面および内ケース部10の外周面との間の隙間が縦につながっており、これらの隙間が上下に延びる移動通路13(移動通路部分)を構成している。この移動通路13に昇降部材20が配置されている。
【0026】
内ケース部10における円錐台部11の下端部分は下ケース部5の上面に載っている。より詳しく説明すると、円錐台部11には、テーパ状の外周面の下端から径方向外側に向かって平坦に延びるフランジ部14が設けられ、このフランジ部14の外周端面が側ケース部3の下端部分に内接している。すなわち、側ケース部3の下端部分は、下ケース部5の周壁9と、内ケース部10のフランジ部14との間に挟み込まれている。フランジ部14の下面には、フランジ部14よりも一回り小さい形状で下向きに延びている固定部15が形成されている。この固定部15を、下ケース部5の上向き凹部内に挿入することにより、内ケース部10が下ケース部5に接続されている。固定部15の内側には浅い下向き凹部が形成されており、この下向き凹部と下ケース部5の上向き凹部の底面によって、円盤状の下部チャンバー16が形成されている。下部チャンバー16は、下ケース部5を貫通している流体通路部分および流体吐出口7を介して、ケース2の外部と連通している。
【0027】
円錐台部11の上端面には円環状の溝が形成されており、この溝の底面から下向きに延びる縦向き通路17が形成されている。縦向き通路17の下端は下部チャンバー16内に開口している。円錐台部11には、複数の縦向き通路17が、周方向に等角度間隔で形成されている。本実施形態では、3本の同一形状の縦向き通路17が、周方向に120度間隔で形成されている。
【0028】
円筒部12の内部の空洞部分は、円錐台部11の下端付近まで直線状に延びている。この空洞部分は、円筒部12の先端部分が上ケース部4における下向き凸部8の先端に接合されたことにより、上ケース部4を貫通する流体通路部分に接続され、直線状の軸線方向通路18を形成している。軸線方向通路18の上端は、流体流入口6を介してケース2の外部と連通している。一方、軸線方向通路18の下端部分は、下部チャンバー16のわずかに上方の位置で閉鎖されて下部チャンバー16と区画されており、径方向外側に延びる横向き通路19を介して、円錐台部11の外周側の隙間17の下端部分に連通している。横向き通路19は、縦向き通路17と交差しないように、円錐台部11における縦向き通路17が貫通していない部分を通って形成されている。本実施形態では、3本の横向き通路19が周方向に等角度間隔(120度ピッチ)で配置されており、隣接する横向き通路19の中間の位置に縦向き通路17が形成されている。すなわち、各3本の横向き通路19と縦向き通路17が、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。
【0029】
なお、横向き通路19と縦向き通路17の数は3本に限定されず、4本以上あるいは2本以下であってもよい。その配置は、流体の流れを周方向に均等に分布させるため、および、昇降部材20にバランス良く上昇方向の力を作用させるためには、周方向に等角度間隔で配置するのが望ましい。
【0030】
流体は、節水喚起器1の内部を図1(a)に示す矢印のように流れる。まず、節水喚起器1を取り付けた蛇口などから供給される水などの流体は、流体流入口6を通って軸線方向通路18を下向きに流れ、3つの横向き通路19を通って3方向に分岐して流れ、各横向き通路19から移動通路13の下端に流入する。続いて、移動通路13を下から上に向かって流れる。そして、下向き凸部8と円錐台部11との隙間に流入し、円錐台部11の上端部分の溝を経由して3本の縦向き通路17に流入し、下部チャンバー16内で合流した後、流体吐出口7から外部に吐出される。このように、移動通路13は、ケース2の内部に形成した流体流路における上下に延びる流路部分となっている。
【0031】
移動通路13に配置されている昇降部材20は、円筒状のガイド部21の内周面における所定高さの位置に、内側に向かって張り出す円環状の受圧板22(受圧部)を設けたものである。昇降部材20は、ガイド部21を側ケース部3の内周面に内接させた状態で配置されており、受圧板22は移動通路13の内周側の部分に張り出した状態となっている。この状態で、移動通路13を流体が流れていなければ、あるいは、流量が十分小さければ、昇降部材20はその重さによって移動通路13の下端の位置まで降下する。そして、横向き通路19から流体が移動通路13に流れ込むと、上向きに流れる流体からの流体圧が受圧板22に上向きに作用する。よって、この流体圧が昇降部材20に加わる重力よりも大きくなる程度に流量が大きくなれば、昇降部材20が上昇する。そして、流体圧と重力がつりあう高さまで上昇した地点で昇降部材20が停止する。
【0032】
このように、本発明では、移動通路13を上下に延びる形状にしており、この移動通路13の下端から上向きに流体が流れるように構成しているので、この上向きに流れる流体からの流体圧が、重力による下降方向とは逆の上昇方向に昇降部材20を動かす力として作用する。よって、ばねなどの部材を用いなくても、流量に応じた位置に昇降部材20を移動させることができ、節水喚起器1を、部品点数が少なく簡単な構成にすることができる。また、節水喚起器1の小型化および軽量化を図ることができる。なお、節水喚起器1を斜めに傾けて使用してもよい。上ケース部4の側が上向きになっていれば、移動通路13を上向きに流体が流れるので、垂直にした状態と同様に使用できる。
【0033】
移動通路13における昇降部材20の可動範囲は、ガイド部21の下端が移動通路13の下端に到達した位置(図1(b)の位置)から、ガイド部21の上端が移動通路13の上端に到達した位置(図1(a)の位置)までの範囲である。昇降部材20における受圧板22の位置は、昇降部材20が図1(b)に示す最下位置まで下降したときでも、横向き通路19よりも上の位置となる高さに設定されている。このような高さ設定では、昇降部材20が最下位置まで下降している状態であっても、受圧板22への流体圧が必ず上向きに作用する。よって、昇降部材20がどの位置にあっても、必ず昇降部材20を上昇させることができる。
【0034】
昇降部材20が流体から受ける上昇方向の力は、受圧板22の面積に比例する。よって、昇降部材20の重量と、受圧板22の面積とをそれぞれ適切に設定することにより、節水喚起器1が取り付けられた流体流出口における流体圧と、昇降部材20の上昇高さとを適切に対応付けることができる。例えば、基準となる流体圧を設定しておき、この基準流体圧以下のときは昇降部材20が最下位置にとどまっており、この基準流体圧を越えたら昇降部材20が上昇を開始するように設定することができる。
【0035】
図1(b)に示すように、下ケース部5の周壁9の上端は、最下位置にある昇降部材20の上端の位置まで延びている。したがって、最下位置にあるときは昇降部材20は外部から見えず、昇降部材20が上昇を開始すると、外部からその上昇位置を確認できる。すなわち、透明な側ケース部3が、昇降部材20の位置を確認するための位置確認部として機能する。昇降部材20は、赤色などの目立つ色に着色しておくことが望ましい。また、この部分の側ケース部3に、昇降部材20の昇降位置と流量とを対応付ける目盛り(指標)を付しておけば、目盛りによって、流量が多すぎるか否かを知ることができる。あるいは、昇降部材20に目盛りを付してもよい。このようにすると、水などの出し過ぎ状態を視覚に訴えることができ、節水意識を高めることができる。
【0036】
ここで、下ケース部5の下端の流体吐出口7に、別体の流量調整器を接続して流路面積を絞ることができるようにしておけば、水の出し過ぎ状態を確認したときには流路面積を絞ることにより、水道の蛇口を大きく開いても流量が大きくならないようにすることができる。あるいは、節水喚起器1に流量調整機構を内蔵させた構成にしてもよい。
【0037】
また、上記構成では、ケース2を、側ケース部3、上ケース部4、下ケース部5、内ケース部10の4部材を接合して形成しているが、これらの一部あるいは全部を一体成形により形成してもよい。また、ケース2を上記4部材とは異なる形状の部品に分けたものを形成しておき、これらを接合してケース2を形成してもよい。また、部材同士の接合方法は、溶着、嵌合、ねじ込み接合などの各種の方法を用いることができる。いずれの構成においても、ケース2における側ケース部3の内周面に沿って上下に延びる移動通路13を形成しておくと共に、この移動通路13と区画された上下に延びる軸線方向通路18、および、軸線方向通路18および移動通路13と区画された下部チャンバー16を形成しておき、軸線方向通路18の下端と移動通路13の下端とを横向き通路19によって連通し、移動通路13における横向き通路19よりも上方の位置に、下部チャンバー16を介して流体吐出口7に連通している縦向き通路17の上端部分を開口させた構成となっていればよい。
【0038】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態では、昇降部材20は流量に応じて移動通路13内を昇降するようになっている。これに加えて、昇降部材20をその中心軸線回りに水圧により回転させるようにすることも可能である。この場合、昇降部材20のガイド部21の外周面に文字、絵柄などを描いておけば、昇降部材20の上昇と、回転に伴う文字、絵柄の回転とに基づき、流量が過剰であることを強く印象付けることができる。
【0039】
図5(a)は、水流によって回転可能な昇降部材の例を示す斜視図であり、上記の実施の形態における昇降部材20の代わりに用いることができるものである。この図に示す昇降部材20Aの基本構成は昇降部材20と同様であり、ガイド部21と受圧板22とを備えている。異なる点は、ガイド部21および受圧板22の内周面部分には、一定の間隔で、上下方向(昇降部材20の中心軸線の方向)に対して一定のねじれを持っている溝22aが付いている。移動通路13を上方に流れる水が各溝22a内を通って上方に流れることにより、昇降部材20にはその中心軸線回りの回転力が与えられ、水圧に応じた速度で昇降部材20が回転する。回転速度は、溝22aのリード角、深さ、ピッチなどを調整することにより適切な回転状態が得られるようにすることができる。図5(b)に示す昇降部材20Bのように、ガイド部21の内周面部分にのみ溝を形成してもよい。溝の形状は、これらに限定されるものではなく、昇降部材20Aが水流に応じた速度で回転できる形状のものであればよい。
【0040】
また、昇降部材20の外周面20bに描かれている無意味な図形・絵柄22cが、当該昇降部材20が所定の回転速度を超えた速度で回転している状態において、節水を喚起する絵柄、文字となって現れるようにすることが可能である。これにより、適正な使用流量範囲を超える流量の場合に、図形、絵柄、文字などにより節水を喚起することができる。
【0041】
逆に、静止状態、あるいは低い回転速度の状態では目視により認識できる絵柄・文字が、一定流速を超えると(換言すると、使用流量過多になると)、判別不能の状態になるようにすることも可能である。
【0042】
次に、節水喚起器1に、過大流量時において節水喚起器1の流体吐出口7以外の部位から水を放出させることにより、流量が多すぎることを喚起させる機能を付加することも可能である。たとえば、図6に示す形状の水噴射リングを節水喚起器1に接続して用いることができる。もちろん、水噴射機能を節水喚起器1に一体的に組み込んでおくことも可能である。
【0043】
この水噴射リング30は全体として円筒状のものであり、その水流入口31の側の内周面には雌ねじ部32が形成されており、例えば水道蛇口40に接続される。水噴射リング30における水流入口31とは反対側の水流出口33の外周面には雄ネジ部34が形成されており、前述の節水喚起器1の流体流入口6にねじ込み固定可能である。水噴射リング30の円筒状胴部の部位には、円周方向に、所定の角度間隔、図示の例では45度の等角度間隔で、8本の水噴射ノズル35が水流出口33の側に向かって傾斜した状態で放射状に形成されている。
【0044】
この構成の水噴射リング30を水道蛇口40と節水喚起器1の間に挟む状態に取り付けて、水を出すと、水量が少ない間は水噴射リング30の水噴射ノズル35からは殆ど水が噴射することはない。所定の水量を超えると、水噴射ノズル35から勢いよく水が噴射され始める。水噴射ノズル35の内径、ノズル管路抵抗を適切に設定しておくことにより、適切水量を超えると、水噴射ノズル35から勢いよく水が噴射して、水量が過剰であることを喚起することができる。なお、水噴射リング30を、節水喚起器1の流体吐出口7の側に接続して用いるようにすることもできる。
【0045】
一方、節水喚起器1に、過大流量時において警告音あるいは振動音を発生させる機能を付加して、節水を喚起することも可能である。たとえば、笛機構などの振動発生機構を節水喚起器1に組み込み、そこを通過する水流によって警告音あるいは振動音を発生させるようにすればよい。あるいは、節水喚起器1に、水量に応じて振動して振動音を発生する振動発生器を着脱できるようにしてもよい。
【0046】
なお、上記の例は水道の蛇口に取り付けて使用する節水喚起器1であるが、本発明は、水道水以外の流体の節約を喚起するために用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 節水喚起器(流体節約喚起器)
2 ケース
3 側ケース部
4 上ケース部
5 下ケース部
6 流体流入口
7 流体吐出口
8 下向き凸部
9 周壁
10 内ケース部
11 円錐台部
12 円筒部
13 移動通路(移動通路部分)
14 フランジ部
15 固定部
16 下部チャンバー
17 縦向き通路
18 軸線方向通路
19 横向き通路
20 昇降部材
20A、20B 昇降部材
21 ガイド部
22 受圧板(受圧部)
22a 溝
22b 外周面
22c 絵柄
30 水噴射リング
31 水流入口
32 雌ねじ部
33 水流出口
34 雄ねじ部
35 水噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道の蛇口などの流体流出口に取り付けるケースと、
当該ケースの内部に形成した流体通路と、
当該流体通路における上下に延びる移動通路部分に沿って昇降する昇降部材とを有し、
前記ケースは、前記移動通路部分における前記昇降部材の位置を外部から目視で確認するための位置確認部を備え、
前記流体通路は、前記移動通路部分において流体が上昇する方向に流れるように構成されており、
前記昇降部材は、前記移動通路部分を通過する流体からの上昇方向の流体圧を受ける受圧部を備えることを特徴とする流体節約喚起器。
【請求項2】
請求項1に記載の流体節約喚起器において、
前記昇降部材は、前記移動通路部分に沿って延びているガイド部を備え、
前記受圧部は、前記ガイド部から前記移動通路部分を横断する方向に張り出していることを特徴とする流体節約喚起器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流体節約喚起器において、
前記ケースは、
円筒状の側ケース部と、
当該側ケース部の上端を封鎖している上ケース部と、
前記側ケース部の下端を封鎖している下ケース部と、
前記側ケース部内に同軸状に形成されている内ケース部と、
前記上ケース部の上端面に開口している流体流入口と、
前記下ケース部の下端面に開口している流体吐出口と、
前記上ケース部および前記内ケース部の内部を通って上下方向に延びており、その上端が前記流体流入口を介して外部と連通し、且つ、その下端が閉鎖されている軸線方向通路と、
当該軸線方向通路よりも下方において前記軸線方向通路と区画されて形成されており、前記流体吐出口を介して外部と連通している下部チャンバーと、
当該軸線方向通路の底面付近から横向きに延びて前記内ケース部の外周面に開口している横向き通路と、
前記内ケース部における前記横向き通路と交差しない部分を貫通して上下に延びており、前記内ケース部の外周部分における前記横向き通路よりも上の位置に一端が開口し、他端が前記下部チャンバー内に開口している縦向き通路とを備え、
前記移動通路部分は、
前記側ケース部の内周面と、前記内ケース部の外周面との間に形成された隙間であり、
前記位置確認部は、前記側ケース部の少なくとも一部に形成された透明部分であることを特徴とする流体節約喚起器。
【請求項4】
請求項3に記載の流体節約喚起器において、
前記昇降部材は、
前記側ケース部の内周面に内接して上下に延びている円筒状のガイド部と、
当該ガイド部の内周面から径方向内側に張り出している前記受圧部とを備えていることを特徴とする流体節約喚起器。
【請求項5】
請求項4に記載の流体節約喚起器において、
前記受圧部は、前記ガイド部の下端が前記移動通路の下端に当たる位置まで前記ガイド部が落下した状態で、前記横向き通路よりも上に位置していることを特徴とする流体節約喚起器。
【請求項6】
請求項4または5に記載の流体節約喚起器において、
前記受圧部は、前記ガイド部の内周面に沿って円環状に形成されていることを特徴とする流体節約喚起器。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれかの項に記載の流体節約喚起器において、
前記横向き通路および前記縦向き通路はそれぞれ複数設けられており、
前記円錐台部の周方向に、前記横向き通路と前記縦向き通路が交互に配置されていることを特徴とする流体節約喚起器。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかの項に記載の流体節約喚起器において、
前記位置確認部または前記昇降部材に、前記昇降部材の位置と流体圧とを対応付ける指標が付されていることを特徴とする流体節約喚起器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかの項に記載の流体節約喚起器において、
前記流体通路に流量調整器を接続可能に構成されているか、もしくは、流量調整機構を内蔵していることを特徴とする流体節約喚起器。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかの項に記載の流体節約喚起器において、
前記昇降部材は、前記流体通路を流れる流体流量に応じて、当該昇降部材の中心軸線回りに回転可能であることを特徴とする流体節約喚起器。
【請求項11】
請求項10に記載の流体節約喚起器において、
前記ケースの前記位置確認部を介して外部から目視可能な前記昇降部材の外周面には文字、絵柄あるいは図形が描かれており、
前記文字、絵柄、図形は、前記昇降部材の回転に伴って目視形状が変化するように、前記外周面に形成されていることを特徴とする流体節約喚起器。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかの項に記載の流体節約喚起器において、
前記流体通路を流れる流体流量が所定流量を超えると水を外部に噴出する水噴射ノズルを備えた水噴射リングが接続可能であるか、または、前記水噴射ノズルを備えた水噴射機構が内蔵されていることを特徴とする流体節約喚起器。
【請求項13】
請求項1ないし10のいずれかの項に記載の流体節約喚起器において、
前記流体通路を流れる流体流量に応じて警告音あるいは振動音を発生する振動発生器が接続可能であるか、または、前記流体通路を流れる流体流量に応じて警告音あるいは振動音を発生する振動発生機構が内蔵されていることを特徴とする流体節約喚起器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−52530(P2011−52530A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174870(P2010−174870)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000222657)東洋計器株式会社 (39)
【Fターム(参考)】