説明

流体製品を投与するための弁、及び、そのような弁を有するディスペンサ

流体製品の格納された貯蔵器に取り付けることを意図した、流体製品投与のための弁であり、前記弁は計量チャンバ(20)を含む弁本体(10)を有しており、特徴となるのは、弁が、計量チャンバ(20)に入っている製品を投与することを目的とした第1の弁部材(30)と、前記計量チャンバ(20)を充填することを目的とした第2の弁部材(40)とを有し、特徴として、前記第1および第2の弁部材(30,40)が、弁の使用中、別々に駆動される、ということである、という前記弁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体製品を投与する弁(特に定量弁)に関し、さらには、そのような弁を有する流体製品ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
定量弁は現在の技術でも公知である。それらは一般的に、エアゾール型の製品を投与するよう設計されており、流体製品は推進体を用いて投与される。一般的に、これらの弁は弁本体を有し、当該本体の内部では弁部材または弁ステムが休止位置と投与位置との間をスライド移動する、という形になっている。弁本体には計量チャンバが形成されており、この計量チャンバは弁部材の駆動の間に空になる。駆動後に弁部材がその休止位置に戻ると、計量チャンバは貯蔵器に接続した状態となって充填され(一般的に、重力による)、その結果、弁は次回の駆動が可能になる。こうした公知の弁には、いくつの不都合が生じ得る。つまり、弁の休止状態において、特にそれが直立状態にある時、すなわち弁が貯蔵器より上の位置にある状態では、計量チャンバの中にある製品が貯蔵器に向かって逆流する事態を招きやすく、そうなると、計量の精度ならびに定量ドーズの再現性に悪影響が及ぶ。加えて、貯蔵器を流体製品と推進体とで満たす操作は、複雑であると共に、弁に損傷を与える可能性もある。特許広報:US−4,597,512号に示されている弁は2つの部分(上側部分および下側部分)を有した弁部材を備えており、これら部分は同時に駆動される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、流体製品を投与するための弁として、上で述べた問題の生じないものを提供することである。
さらに具体的に言えば、本発明は、1回1回の弁駆動において、完全な計量精度と定量ドーズの完全な再現性とが共に実現される、という弁を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、製造、組立、充填、そして使用が簡単かつ安価に行える、という弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明が提供するのは、流体製品の格納された貯蔵器に取り付けることを意図した、流体製品投与のための弁であり、前記弁は計量チャンバを含む弁本体を有しており、弁は、計量チャンバに入っている製品を投与することを目的とした第1の弁部材と、前記計量チャンバを充填することを目的とした第2の弁部材とを有し、好ましい構成として、前記第1および第2の弁部材が、弁の使用中、別々に駆動される、という前記弁である。
【発明の効果】
【0005】
また、効果的な構成として、前記第1および第2の弁部材は一緒に駆動されることで、貯蔵器に流体製品を充填する。
また、効果的な構成として、前記第2の弁部材は、前記第1の弁部材を囲む形で配置され、前記第1の弁部材は、前記第2の弁部材の内部を密閉様態でスライド移動する。
また、効果的な構成として、弁部材のそれぞれは、バネなどの弾力部材に取り付けられており、当該弾性部材は弁部材をその休止位置の方向に押しやる。
【0006】
また、効果的な構成として、第1の弁部材の駆動手段は第2の弁部材の駆動装置とは別のものである。
また、効果的な構成として、前記第2の弁部材は、弁本体と共に、計量チャンバ用の入口弁を形成し、前記第2の弁部材は、弁本体に対して、前記入口弁が閉状態となる位置と開状態になる位置との間で移動可能である。
【0007】
また、効果的な構成として、前記入口弁は、第2の弁部材の壁に設けられた側面通路によって形成されており、前記通路は、入口弁が閉状態にある際には閉じており、入口弁が開状態にある際には開いている。
また、効果的な構成として、前記第1の弁部材は、前記第2の弁部材と共に、計量チャンバ用の出口弁を形成しており、前記第1の弁部材は、前記第2の弁部材に対して、前記出口弁の閉状態になる位置と開状態になる位置との間で移動可能である。
【0008】
また、効果的な構成として、前記出口弁は、前記第1の弁部材に設けられた側面通路によって形成されており、前記通路は、出口弁が閉状態にある際には閉じており、出口弁が開状態にある際は計量チャンバに通じている。
また、効果的な構成として、弁本体は、具体的にはスナップ留めによって一体的に固定された2つの部分で作られている。
【0009】
また、効果的な構成として、弁が休止状態にある際、計量チャンバは、貯蔵器および外部に関して気密状態で閉じている。
本発明はさらに、流体製品を投与するための装置であって、流体製品と推進剤とを格納した貯蔵器を有し、それと共に、上で述べたような弁を有する、という装置を提供する。
また、効果的な構成として、前記貯蔵器は、第1および第2の弁部材を同時に駆動させる充填装置によって充填される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に関する他の特性および効果は、添付の図面を参照しながら、非限定的な例として提示する、本発明の効果的な実施の形態についての以下の詳細な説明を読めば、より明らかになるであろう。
図面を見て分かるように、弁は、計量チャンバ20を形成する弁本体10を有している。弁本体10は2つの部分から作ることができる。そのうち1つの部分は、頂上部分または上側部分11として示されるもので、計量チャンバ20を有しており、これに底部分または下側部分12が(具体的にはスナップ留めによって)密封様態で固定されている。この下側部分12は、弁が上下逆さまの状態で示してあるため、図面では上側に見られるが、リング13(いわゆるキャンエンド(can-end)リング)と共に単一ブロックの部分として作ることができる。これを使用する目的は、第1に、デッドボリュームを小さくし、それによって、貯蔵器に格納された製品の最大量を投与することであり、第2には、製品とガスケット(弁本体と装着部材との間に置かれるもの)との接触を制限することである。この装着部材70はどのようなものでもよく、公知の様態で弁を貯蔵器(図示せず)のネック上に固定するのに用いられる。装着部材70は、具体的には、クリンプ留め、ネジ留め、あるいはスナップ留めされるカプセル、または、これに類似のものとすることができる。
【0011】
本発明では、弁は第1の弁ステム部材30と第2の弁ステム部材40とを有する。第1の弁部材30は、計量チャンバ20に入っている製品を投与することを目的としたものであり、第2の弁部材40は、この計量チャンバ20に貯蔵器(図示せず)からの充填を行うことを目的としたものである。すなわち、本発明では、従来の弁とは対照的に、定量ドーズの放出動作を計量チャンバの充填動作から切り離すことが可能である。従来の弁では、計量チャンバの充填は、弁部材がその投与位置から休止位置に戻るまでに実施される。前記第1および第2の弁部材30、40は、弁の使用中に別々に駆動される。言い換えると、第1の弁部材30による製品投与は、特定の駆動装置(例:第1の弁部材30の出口端部に設置され、軸方向に移動可能なプッシャー)を動作させることにより、公知の様態で実現することができる。第2の弁部材40は、前記の定量分が放出された後で計量チャンバ20を充填するのに用いられるものであるが、効果的な構成として、第1の弁部材30の駆動システムとは別の駆動システムによって駆動される。例えば、側面駆動システムを用いることにして、2つの弁部材が同時に駆動される危険を排除する、という形が考えられる。
【0012】
効果的な構成として、第2の弁部材40は第1の弁部材30を囲む形で配置されており、部材30は密閉様態で前記第2の弁部材40内をスライド移動する。また、効果的な構成として、密閉ガスケット80が2つの弁部材30、40の間に設けられており、その結果、弁部材はどのような姿勢においても密閉様態で移動する。さらに、別の密閉ガスケット81を2つの弁部材の間に設けることで、第1の弁部材30の休止位置にある際には、密閉を確実にすることができる。
【0013】
本発明の有する特別な効果は、弁の休止状態において、計量チャンバ20が完全に、そして密封状態で外部および貯蔵器から隔てられており、そのため、定量ドーズが部分的にも失われる危険がないということである。これにより、長い保管期間を経た後でも、1回1回の駆動において、完全な再現性ならびに絶対的な計量精度が保証される。さらに、計量チャンバの充填は第1の弁ステムまたは弁部材30の駆動または戻りストロークと関わりがないことから、計量チャンバ充填後の段階で同チャンバ内に入っている製品および推進体について良好な均質性が保証される、という形にこの充填動作を最適化することも可能となる。留意すべき点として、計量チャンバは前述の定量ドーズの放出の直後に充填が可能である。ただし、変形例として、チャンバを定量ドーズの放出直前に充填できるようにして、定量ドーズがチャンバ内に保持される期間が長くなり過ぎないようにすることもできる。
【0014】
効果的な構成として、弁部材30、40はそれぞれ、直接的または間接的に弾性部材35または45(例:バネ)に取り付けられており、当該弾性部材は、弁部材をその休止位置方向に押しやる。この休止位置は図1に示されている。図を見て分かるように、第2の弁部材40は、効果的な構成として、第1の弁部材30を囲む形に配置されており、第1の弁部材30が第2の弁部材40の内部を密閉様態でスライド移動する形となっている。図1、2は弁の投与動作のサイクルを示す。計量チャンバ20の内容物を投与するためには、第1の弁部材30を第2の弁部材40内部で軸方向に移動させる。それによって、前記第1の弁部材30に設けられた側面通路61が前記計量チャンバ20の内部に通じる状態になれば、定量ドーズ分が放出されることになる。こうして製品が投与される間、第2の弁部材40は不動のままである。よって、第1の弁部材30は、第2の弁部材40との関わりで、計量チャンバ20用の出口弁60を形成することになる。第1の弁部材30の動作サイクル全体を通じて、計量チャンバは、図1、2から分かるように、閉じられた状態、そして、貯蔵器に関して完全に隔絶された状態を保つ。図3は、駆動が行われた後での計量チャンバ20の充填の様子を示す。充填のためには、第2の弁部材40を弁本体10(特に、弁本体の上側部分11)の内部で軸方向に異動させて、前記第2の弁部材40の壁41に設けられた側面通路51によって貯蔵器(図示せず)が計量チャンバ20と連結される、という状態にする。つまり、第2の弁部材40は、弁本体10と共に、計量チャンバ用の入口弁50を形成していることになる。第2の弁部材40がその充填位置に向かって移動している間、第1の弁部材30は常に、計量チャンバ20の出口弁60が閉じた状態になる位置に留まり、そのため、この充填段階にある間に製品が失われる危険はない。第1の弁部材30は、この計量チャンバ20の充填サイクルの間に、第2の弁部材40によって軸方向に動かされるが、2つの弁部材の間に相対移動がないため、出口弁60は閉じた状態を保つ。
【0015】
効果的な構成として、第2の弁部材40は、2つの部分を一体的に固定した形で作ることができる。それら部分とは、計量チャンバ20の壁を形成する上側部分41、そして、この第1の上側部分41に固定された下側部分42である。これらの2つの部分41、42によって、両者の間に前記側面通路51を形成することができる。下側部分42は、第1の弁部材30のバネ35の支持部とすることができ、一方、第2の弁部材40のバネ45は、前記下側部分42ならびに弁本体12の底部と協働する、という形にできる。
【0016】
本発明に関するもう1つの非常に重要な効果は、弁が駆動されて定量ドーズの製品が投与される前の段階での、貯蔵器の充填に関する。実際、図4に示されるように、この充填処理は、第1の投与弁部材30を介して完了させることができ、弁に損傷を与えることがない。これを実現するために、2つの弁部材30、40は、適切な充填装置や充填ヘッドなどを介して同時に駆動され、さらに、正確な軌道に沿って下げられる。これによって、計量チャンバの出口弁60と計量チャンバの入口弁50とが同時に開くことになる。このようにして、貯蔵器(図示せず)が第1の弁部材30の出口開口部に接続されると、この通路を通して製品が供給され、供給された製品は、第1の弁部材30に、それから計量チャンバ20に、さらにそこから貯蔵器(図示せず)に進んでいくが、その間、現行の弁の場合のように機能ガスケットを損傷させることはない。
【0017】
このように、本発明が提案する弁は、先ず、絶対的な精度で計量を実行するものであり、さらに、貯蔵器の充填を簡単に行えるようにするものである。そして、こうしたことは、計量チャンバの投与動作を投与駆動後のチャンバ充填の動作から切り離すことによって実現されている。
以上、本発明に関し、その効果的な実施の形態を参照しながら説明したが、これは、本発明をこの実施の形態だけに限定することを意図するものではない。それどころか、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に記述された本発明の範囲から逸脱しない形で、必要な変更を施すことができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の効果的な実施の形態による弁を、その休止状態において示す概略横断面図である。
【図2】図1と同様の図であり、投与位置において示す図である。
【図3】図1、2と同様の図であり、計量チャンバが充填中の状態にある際の図である。
【図4】図1乃至3と同様の図であり、貯蔵器が充填中の状態にある際の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体製品の格納された貯蔵器に取り付けることを意図した、流体製品投与のための弁であり、
前記弁は計量チャンバ(20)を含む弁本体(10)を有しており、
特徴となるのは、
弁が、計量チャンバ(20)に入っている製品を投与することを目的とした第1の弁部材(30)と、前記計量チャンバ(20)を充填することを目的とした第2の弁部材(40)とを有し、
特徴として、前記第1および第2の弁部材(30,40)が、弁の使用中、別々に駆動される、ということである、
という前記弁。
【請求項2】
前記第1および第2の弁部材(30,40)は一緒に駆動されることで、貯蔵器に流体製品を充填すること、
を特徴とする請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記第2の弁部材(40)は、前記第1の弁部材(30)を囲む形で配置され、前記第1の弁部材(30)は、前記第2の弁部材(40)の中を密閉様態でスライド移動すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の弁。
【請求項4】
弁部材(30,40)のそれぞれに、バネなどの弾力部材(35,45)が取り付けられており、当該弾性部材は弁部材をその休止位置の方向に押しやること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の弁。
【請求項5】
第1の弁部材(30)の駆動手段は第2の弁部材(40)の駆動装置とは別であること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の弁。
【請求項6】
前記第2の弁部材(40)は、弁本体(10)と共に、計量チャンバ(20)用の入口弁(50)を形成し、前記第2の弁部材(40)は、弁本体(10)に対して、前記入口弁(50)が閉状態となる位置と開状態になる位置との間で移動可能であること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の弁。
【請求項7】
前記入口弁(50)は、第2の弁部材(40)の壁(41)に設けられた側面通路(51)によって形成されており、前記通路(51)は、入口弁(50)が閉状態にある際には閉じており、入口弁(50)が開状態にある際には開いていること、
を特徴とする請求項6に記載の弁。
【請求項8】
前記第1の弁部材(30)は、前記第2の弁部材(40)と共に、計量チャンバ(20)用の出口弁を形成しており、前記第1の弁部材(30)は、前記第2の弁部材(40)に対して、前記出口弁(60)の閉状態になる位置と開状態になる位置との間で移動可能であること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の弁。
【請求項9】
前記出口弁(60)は、前記第1の弁部材(30)に設けられた側面通路(61)によって形成されており、前記通路(61)は、出口弁(60)が閉状態にある際には閉じており、出口弁(60)が開状態にある際は計量チャンバ(20)に通じていること、
を特徴とする請求項8に記載の弁。
【請求項10】
弁本体(10)は、具体的にはスナップ留めによって一体的に固定された2つの部分(11,12)で作られていること、
を特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の弁。
【請求項11】
弁が休止状態にある際、計量チャンバ(20)は、貯蔵器および外部に関して気密状態で閉じていること、
を特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の弁。
【請求項12】
流体製品を投与するための装置であって、流体製品と推進剤とを格納した貯蔵器を有し、特徴となるのは、請求項1乃至11のいずれかに記載の弁を有することである、
という前記装置。
【請求項13】
前記貯蔵器は、第1および第2の弁部材(30,40)を同時に駆動させる充填装置によって充填されること、
を特徴とする請求項12に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−516133(P2007−516133A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518276(P2006−518276)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001704
【国際公開番号】WO2005/012137
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(502343252)バルワー エス.アー.エス. (144)
【Fターム(参考)】