説明

流体運動及び流体成分の分析装置及び分析方法

【課題】
【解決手段】遠隔センサ及びこれと関連するデータ処理装置は、輸送パイプ(2)又はチャネルの内壁に対して位置決めされたマルチビーム(6〜10)音響ドップラー送信器/受信器(1)からの後方散乱信号の同時分析を行う。戻り信号の距離ゲーティングにより、水及び浮遊固形物(4)の小さな個別の容積部分即ちビンの分布、濃度及び移動速度に対応した後方散乱信号の個別の容積部分の独立した分析が可能となる。各ビンについて測定されたドップラー周波数シフトから速度が導き出される。相対的な固形物濃度は、後方散乱信号の測定強度の関数として推定される。温度、塩分濃度、音響系定数、濃度と粒径との間の後方散乱信号の割り当て比率などの場所特有の環境情報と、物理的なサンプルの集合及び事前の研究室での分析から得た同時に測定された濃度値を分析コンピュータプログラムに入力することにより強度データが較正される。プログラムは、連続的自己補正プロセスにおいて、隣接する層についての前回の測定から得られたデータを用いて較正パラメータを調整する冗長な繰り返しルーチンを使用する。本装置及び方法は、パイプ又はチャンネルを流れる液体(3)中の浮遊固形物の分布、濃度及び速度の履歴的及びリアルタイムでの測定を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水質測定、より具体的には、導管を流れる液体中の浮遊固形物の濃度を測定するために使用する測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
安全な下水処理及び水処理を行うためには、処理パイプ、暗きょ及びその他の導管における浮遊固形物の濃度を測定する必要がある。
【0003】
浮遊固形物が少ない下水の場合、簡素化した処理が施されるか、或いは全く処理が施されない。幾つかの自治体からの下水を扱う処理場では、各自治体からの取水管で測定される容積流量及び総浮遊固形物濃度に応じて各自治体に対して請求を行う。
【0004】
これまでは、固形物を含む水が侵襲的に(intrusive)定期的に採取されると共に研究室において分析され、水の固形物含有量に関する必要な情報が提供されていた。
【0005】
液体中の総固形物濃度を電子的に測定する種々の方法が提案されてきたが、流量と浮遊固形物濃度を同時に、連続的にリアルタイムで測定する測定装置は提供されていなかった。
【0006】
本発明は、下水及び水処理場で使用するための、より実用的な測定装置を提供しようとする試みから生まれたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1及び第2の目的は、パイプ内の種々の層の流速と共に、パイプを流れる液体中の総固形物濃度を連続的に測定するための、非侵襲的(non-intrusive)な方法及び装置を提供することである。
【0008】
上記及びその他の価値ある目的は、音響発信器をパイプ或いはその他の導管の内壁に配置することにより達成される。上述の発信器は2組の斜めに発散するビームを発し、各組の一方のビームは同じ組の他方のビームより下流に向けられる。発せられた波形のエコー信号は、各ビームに沿って分布したパイプ内の液体の個別の(discrete)容積部分群(即ちポケット群)に対応する抽出部分(samplings)に分割される。ビームから得たドップラー周波数シフトは、パイプ内の多数の流れの層における固形物の速度を表すものと解釈される。後方散乱エコー信号の強度は、簡略化したアルゴリズムを用いて固形物濃度値に変換されるが、このアルゴリズムは、連続的自己補正プロセスにおいて、隣接する層での前回の測定で得られたデータを使用して較正パラメータを調整する冗長な繰り返しルーチンと組み合わされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面を参照する。図1及び図2に示されるように、浮遊固形物速度・濃度変換器1が、浮遊固形物4を含み図1の矢印5で示される方向に流れる下水3を通すパイプ2の底部に取り付けられている。変換器内の圧電セラミックスは、其々異なる方向を向いている4本の幅狭のビーム6、7、8、9に沿って、短パルスから成る音響波形を発する。ビームは2組に分けられ、各組の第1ビーム6、8は、垂直線に対して約20度の角度Lで上流方向に傾いており、第2ビーム7、9も、第1ビームと同じ角度で下流方向に傾いている。図2により詳細に示されているように、各ビーム対の平面は、垂直方向及び他のビーム対に対して所定の横断方向角度で延在している。パルスのエコー信号は、浮遊固形物4から後方散乱する。これらの固形物は変換器に対して相対に運動しているので、エコー信号の周波数はドップラー効果によりシフトする。5番目のセラミック製変換器10は、変換器の中央に設置され、垂直方向を向き、流れの深さを測定するために使用される。図3及び4に示されているように、システムは変換器1から入力信号RCVS−SIGを受け取り、デジタルデータD−OUTに変換する電子処理ユニット11を組み込んでいる。デジタルデータD−OUTは、データ処理装置12に送られる。システムは、エコー信号を、流れている液体の異なる個別の容積部分に対応する抽出部分のための個別の一定の間隔に分割する。速度は各抽出部分で測定された周波数シフトから算出される。その結果、図2において速度プロファイルライン13によって示されている、ビームに沿った速度の線形分布のプロファイルが得られる。図2のビーム9上に示されている各小区分14は、深度セル或いは深度ビンとして知られている個別の容積部分における個々の速度測定を表している。速度プロファイルライン13は、各組の上流側ビームと下流側ビームによって測定される速度データから発生される。即ち、1組のビームからのデータを平均してプロファイルラインを発生する。
【0010】
ドップラー測定は指向性を有するため、送受信方向に沿った速度成分のみが測定される。幅の狭い音響ビームを利用し、流れの水平方向の速度を精密に決定する。測定精度は、長さ及び直径が約5センチメートルの小容積部分に対応する抽出部分群のためのゲート時間を利用することによっても向上する。距離(range)依存性の変数に起因する戻りエネルギースペクトルの偏りが生じる可能性が避けられる。その結果、流速の垂直及び横断方向分布が正確に測定される。2組のビームから得られる速度データをアルゴリズムに入力し、液体の断面全体に亘る流速を数学的に記述する。アルゴリズムは実データに対してパラメトリックモデルの基本関数をフィットさせる。その結果、液体中の全ての位置について流速が予測される。これらの結果は断面全体に亘って積算され、排出量が決定される。このアプローチの主要な利点は、システムが、異なる液圧条件下で正確に作動することである。液圧条件が変化すると、流れの深さ方向全体に亘る速度分布にその変化が現れる。速度分布を直接測定している時、システムは、液圧の変化に適合し、新たな液圧条件を表す流れパターンを発生し、これにより流量の正確な推定が確実に行えるようにする。ほぼ一定の入力電圧を受信する電子処理ユニット11内の周波数測定回路の要求により、浮遊固形物4の分布及び濃度が測定される。変換器1から発せられる音響パルスは特定の初期強度を有しているが、液体中を進み浮遊粒子で散乱するにつれて次第に減衰していく。変換器により検出される反射エネルギーは、元々発せられたものの極く一部である。更に、後方散乱の戻り強度は、エネルギー反射点までの距離、反射粒子の濃度、水温(これらに限定されないが)によって大きく変化する。受信した減衰信号RCV−SIGは増幅器RCV−AMPを通過し、周波数測定回路が要求するレベルまで増幅される。信号強度の減衰が大きいほど、高い増幅度が求められる。このため、要求される増幅度は信号強度の減衰度の尺度となり、逆に言えば、後方散乱の強度の尺度となる。要求される増幅量は、受信信号強度表示器RSSIにより提供される。この測定こそ、水柱における浮遊固形物濃度の推定を容易にするものである。言い換えれば、後方散乱信号の強度値は、浮遊固形物の濃度値に換算され、受信信号の周波数シフトは液体の流れにおける固形物の速度を示すものとして解釈される。
【0011】
変換器出力信号RCV−SIGは、分離及びインピーダンス整合を行う受信結合変成器RCV−XFMRに出力される。高ゲイン選択型ログアンプRCV−AMPによって信号が更に増幅され、バンド幅が制限される。増幅された受信信号は、1組の周波数ミキサFMIXに送信され、ここで、局部発振器からの信号周波数LOと複製的(replicatively)に混合される。受信信号や局部発振器と周波数が異なる所望のベースバンド信号が、ミキサが出力する信号を1組の低域通過フィルタLPFを通過させることによって得られる。こうして得られたベースバンド信号は、搬送信号を除く全てのドップラースペクトルを含んでいる。前述のミキサは直交ミキサで、同相及び直角位相の信号が得られる。両信号は相関器CORRで必要とされるが、この相関器は基本的なデジタル信号処理を行う。同相及び直角位相の信号は1組の先入れ/先出しバッファFIFOでバッファ処理され、データ処理装置12に出力されるデータD−OUTの一部となる。エコー信号も低域通過フィルタRSSI−LPFに、次にバッファRSSI−BUFFに送信され、アナログ−デジタル変換器RSSI−ADCによってデジタル化される。最終的に、出力信号D−OUTの一部としてデータ処理装置に送られる。
【0012】
タイミング発生器TMG−GENは、送信器及び受信器に必要な信号、例えば送信信号、送信可能信号、ミキサに送られる局部発振器直角位相信号等、を全て発生する。変換器が発するパルスの周波数は、1.2288MHzである。送信増幅器XMT−AMPは、タイミング発生器が発生した論理レベル信号をバッファ処理し、送信出力変成器XMT−XFMRを駆動するパワードライバとして働く。送信変成器は、電子処理ユニットと変換器との間の分離も行う。
【0013】
送信電流は電流変成器CURR−XFMRにより監視される。その出力信号はアナログ−デジタル変換器CURR−ADCによりスケーリングされると共にデジタル化され、データ処理装置により組み込み自己診断機能の一部として使用される。タイミング発生器の全セットアップは完全にプログラム化可能であり、データ処理装置によりタイミング発生器の内蔵RAMにダウンロードされる。
【0014】
前記データ処理装置は、タイミングセットアップデータやデジタル化した電流検出データを読み返すこと(read back)が可能である。
【0015】
図5に示されている変換器は、電子処理ユニットにより制御される信号送受信マルチプレクサを備えている。電子処理ユニットのタイミング発生器TMG−GENにより発生された送信信号は、分離及びインピーダンス整合を行う結合変成器XFMRを通過する。結合変成器XFMRを通過した信号は、選択可能な送信/受信スイッチT/R−SW6〜T/R−SW10により、5本あるビームの内の1本に多重伝送される。送信フェーズの終わりで、マルチプレクサは非選択となる。エコー信号は圧電セラミックスP−6〜P−10から受信されると、前述のスイッチ及び、バンドパスフィルタBPF−6〜BPF−10の内の選択されたものを通過し、前置増幅器PA−6〜PA−10へと送られる。更に、電子処理ユニットに送信される前に広帯域信号変成器XFMRにより差動信号に変換される。サーミスタT−SENSEは、変換器の周囲温度を測定するために使用される。温度信号は、増幅器S−AMPによってスケーリングされると共にバッファ処理され、変換器制御XDCR−CTLによりデジタル化され、電子制御ユニットに送られる。
【0016】
水柱に浮遊している粒子からの後方散乱に適用される音響理論を簡略化した下記の式は、強度データから浮遊固形物の濃度を決定するのに貢献する主なファクターを特定する。
【0017】
【数1】

【0018】
式中: E = エコー強度
SL = 送信パワー
SV = 水柱の浮遊粒子による後方散乱強度
αw = 水によるエネルギー吸収を表す係数
R = 変換器から測定ビンまでの距離
【0019】
システムにより測定されたエコー強度Eは相対的な強度であり、戻り信号の圧力振幅を直接測定することから得られる。システムはエコー強度の変化を明確に認識できるが、固形物の存在だけによる後方散乱強度の正確な量を決定することは出来ない。最終的な強度に影響を与える他の要因を取り除かなくてはならない。
【0020】
20log(R)の項は、ビームの球状拡散を説明するシンプルな幾何学的関数である。この項は球状拡散の想定に近距離補正(near-field correction)を加えることで更に改良し得る。音速が正確に分かっていることが、所定の測定ビンまでの距離を決めるのに不可欠である。システムは実測した時間と音速に基づいて距離を計算する。音速は、ユーザが定義した塩分濃度(下水環境では、0と想定される)とセンサーヘッドで測定された温度を使用して計算される。本明細書に示されている方法では、音速は水柱の全域に亘って一定であると想定されている。流れの深さに限りがあり、流れが十分に混ざっている下水環境において、この想定は信頼度が高いと言える。
【0021】
異なる測定器による測定値同士を直接比較することは、それらの測定器を現場或いは研究室で較正してそれらの性能特性を確定しない限り不可能である。SL項及び定数項は、これらの差異を表すと共に浮遊物(suspended load)の特性に対処するものである。測定器の性能特性がデータに対してどの様に影響を及ぼすかを理解し、現場での較正によってこれらの差異を補正することは、本測定法において重要である。本方法は相対的な後方散乱強度の実測値を利用し、また、このようなばらつきを補正する場所特有の較正を使用し、浮遊固形物の濃度を決定する。
【0022】
最後の2項であるαw及びSVは、其々音響エネルギーの水による吸収及び相対的な後方散乱強度を表している。音響エネルギーは水の中を通過するに連れて水に吸収されるが、αwはこの過程で失ったエネルギー量の測定値である。SVは、我々が関心を寄せる項であるが、水柱に存在する固形物により後方散乱されたエネルギー量である。固形物の量の増減がSV値に影響を及ぼす。式1に含まれていない更なる項についても考慮する必要がある。それは、浮遊物による散乱や吸収に起因する音響信号の減衰を記述する項である。
【0023】
測定した強度から水に含まれる総浮遊固形物TSSの質量濃度を実際に導き出すためには、固形物の存在に起因する真の後方散乱音響強度を決定しなくてはならない。2個のパラメータ間の関係は次のように示すことができる。
【0024】
【数2】

【0025】
式中: M(r) = エコー強度
K = 送信パワー
rms = 水柱の浮遊粒子に起因する後方散乱強度
s = 粒子半径
ρs = 粒子密度
αw = 水によるエネルギー吸収を表す係数
αs = 水によるエネルギー吸収を表す係数
【0026】
この式において、予測質量濃度M(r)は、固形物の存在がどのように戻り信号を減衰させるかを説明する澱(おり;sediment)減衰係数αsの関数である。これら両パラメータは未知である。この関数の解を得るためには、数値法を用いる必要がある。質量濃度を求める演算は、αsの値を用いずに実行される。演算の結果得られるM(r)値は、αsの値を算出するのに使われる。この演算プロセスは、澱減衰係数及び質量濃度の両方の最終値を導き出すためにセンサに最も近いビンにおいて繰り返される。この方法は更に、プロフィルの連続するビンに沿って階段的に適用される。
【0027】
現場での固形物濃度の測定を可能にするために本明細書で提案されている方法は、前述の式を簡略化した次式を用いることによりこれを達成する。
【0028】
【数3】

【0029】
ここでdBは、相対後方散乱強度の測定値であり、球状拡散及び適用可能な近距離効果に対する補正が施されている。Sは、固形物濃度と粒子サイズとの関係を説明する相対後方散乱係数である。Ksは、所定の現場での特定の測定器の個々の特性に対して補正を施す、場所・測定器定数である。その他の項は式2の場合と同様に、固形物の存在による強度減衰(αs)及び、水の吸収による強度減衰(αw)を表す。
【0030】
水による吸収に起因した音響エネルギーの損失や減衰の量は、次に示すように、音波の(即ち、測定器の)周波数、塩分濃度及び水温に依存することがわかった。
【0031】
【数4】

【0032】
式中: αw = 水による吸収係数(Nepers/m)
f = 測定器周波数(MHz)
S = 塩分濃度(ppt)
【0033】
T項は緩和周波数と呼ばれるもので次に示す式で与えられる。
【0034】
【数5】

【0035】
式中: Tは水温(摂氏)
【0036】
これらの式を用いれば、水による吸収に起因する1メートル当たりの信号減衰が算出される。従って、ビンの斜めの長さを用いれば、各測定区間、即ち「ビン」での音響の総減衰量を導き出すことができる。
【0037】
水柱を通過している音響が浮遊固形物の粒子にぶつかるとき、エネルギーは固形物媒体による散乱及び吸収により減衰する。散乱度は周波数と粒子の大きさとの関係に依存する。周波数は次式の通り波数kによって表される。
【0038】
【数6】

【0039】
式中: f = 測定器の周波数(Hertz)
s = 塩分濃度(ppt)
【0040】
積kas(ここでasは粒子の半径)の値が、0.5をかなり下回るとき、レイリー散乱が起こる。これは、浮遊澱の測定状態で通常見られる範囲である。澱定数ζ1は次の式により与えられる。
【0041】
【数7】

【0042】
式中: ρs = 澱密度(kg/m3
Kα = 圧縮性及び密度に関する項(標準値0.18)
【0043】
距離(range)rの領域中の固形物による散乱に起因する、1メートル当たりの実際の澱減衰α1(Nepers/m)は、質量濃度Μr(kg/m3)を用いて次のように与えられる。
【0044】
【数8】

【0045】
音響エネルギーは水柱の澱によっても吸収される。次の式(ウリック(Urick)、1948)は、該吸収に起因した1メートル当たりの澱減衰α2(Nepers/m)を求めるために用いられる。
【0046】
【数9】

【0047】
式中:
【0048】
【数10】

【0049】
式中: ρs = 固形物粒子の密度
ρw = 水の密度
νw = 水の動粘度
【0050】
前述の式は、積kasの値が1よりかなり小さい時に有効である。散乱に起因する減衰は無視できるほどになり、粘性吸収が優位になり始める領域である。
【0051】
前述の方法は、散乱や吸収に起因する減衰をまとめて1個の澱減衰係数SACとしている。SACは、ユーザが定義することも可能であるし、粒子の公称、即ち「有効」サイズを粒子比重推定値(2.7)や圧縮性推定値(0.18)と組み合わせて用いる処理ソフトウェアにより計算することもできる。どちらの場合も、入力値は必然的に推定値であり、ソフトウェアの較正モジュールでの反復処理により改良されなくてはならない。
【0052】
実際には、澱の自然母集団についての澱減衰係数を公理から計算するのは殆ど不可能である。前述のソフトウェアが採用している手法は実際的なものであり、該係数の使用可能値を実際の観測データを用いて定めている。それ故、前述した、例えば粒子の大きさや圧縮性等の入力値が正確かどうか等は、どちらかといえば学問領域の事項である。
【0053】
データ処理装置を制御するコンピュータプログラムCPは、簡略化された式3及び較正により導き出された澱減衰値に基づいて、測定された後方散乱強度から澱濃度を導き出すのに必要な全ての計算を実行する。該プログラムは後方散乱データ(測定器カウントで表示される)や追加情報(例えば、温度、塩分濃度等)をシステム生データファイルからインポートする。ユーザは特定の場所の較正値(例えば、SやKsに対する値)をキーボードから入力してもよいし、プログラムによって入力データからこれらのデータを決定してもよい。ユーザは、水を採取すると共にこれを研究室で分析することにより測定されたTSSの値を入力してもよい。これらのサンプルデータはシステムデータと同時に取り込まれ、これにより、システムにより測定されたデータと実際のデータとの間の直接較正値を決定できる。
【0054】
次に、前述プログラムは、各変換器下の最初の有効な測定ビンから測定された生データを取り込む。そして、繰り返しルーチンを用いて、必要な各種パラメータを計算すると共に式3を解き、最初のビン全体及び変換器と最初のビンとの間の間隙(ここではシステムはデータを得ることのできない)の浮遊澱濃度を求める。計算された固形物濃度及び澱減衰は、次のビンで関連した補正を行うために再びシステムに送られ、ここでも同様な繰り返し処理を用いて解かれる。この手続きは最後のビンについて解かれるまで繰り返される。そしてソフトウェアは次の組のデータに移る。
【0055】
これに続き、プログラムは算出した濃度を表示し、実際に測定した濃度と比較する。2個のデータセット、即ち計算されたデータと実測データと間の誤差も深さ及び濃度の関数として表示される。ユーザは、種々のパラメータ(S、Ks及びSAC)を調整し、データセット間の相関関係を改善する。これは繰り返し処理であり、パラメータによっては初めにシード値が与えられ、ユーザは、それらのアクションの結果をリアルタイムで観測しながら、2個のデータセット間の相関関係を強め、誤差がゼロになるようにパラメータを調整する。
【0056】
本方法は、汚水環境で利用することができ、流量測定に加えてTSSの履歴測定及びリアルタイム測定を提供できる。これにより、ユーザは水の体積輸送量だけでなく、汚水システム中の固形物の総質量輸送量を測定することができる。本明細書で説明した方法は、これを実現するために複数のビームからのデータを使用する。本方法により、総固形物濃度だけでなく、流れの深さ方向における固形物濃度の空間分布を見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】流れ及び濃度変換器を装備した導管の概略斜視図である。
【図2】上記導管の概略断面図である。
【図3】濃度、分布及び流速を測定する測定器のブロック図である。
【図4】電子処理ユニットのブロック図である。
【図5】変換器回路のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れる液体中に浮遊する固形物の濃度、分布及び速度を測定するための装置であって、 音響波形の少なくも一本の方向性ビームを発する送信器と、
前記固形物から後方散乱する前記波形のエコー信号を受信する少なくとも1個の検出器と、
前記エコー信号の測定強度値を集める手段と、
前記エコー信号のドップラー周波数シフトを測定する手段と、
前記強度値を前記固形物の濃度値に変換する手段と前記周波数シフトを前記固形物の速度測定値として解釈する手段とを備えたデータ処理装置とを含む装置。
【請求項2】
前記流れる液体は、流れ方向が一定の導管内に含まれ、前記送信器と検出器は前記導管内に位置決めされている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記送信器は、第1の対を成す前記ビームを実質的に同一の位置から発し、前記対内の第2ビームが第1のビームに対して下流方向に、前記第1のビームに対して或る長手方向角度で向けられている、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記第1の対のビームに対して或る横断方向角度に向けられた第2の対のビームを更に含む、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記ビームに沿って分布している前記液体の別個の(discrete)容積部分に対応して前記エコー信号を抽出する手段を更に含む、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記変換手段は、場所特有の環境情報を考慮する(impute)ことによって前記強度値を較正する手段を含む、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記変換手段は、前回の測定から得られた浮遊固形物濃度値を入力する手段を更に含む、請求項5記載の装置。
【請求項8】
前記場所特有の環境情報は、水温、塩分濃度及び音響系定数、並びに濃度と粒径との間のエコー信号割り当て比を含む、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記データ処理装置は、前記容積部分の内の一容積部分からの強度値を変換する際に、同じビームに沿った他の容積部分から得た値を用いて少なくも1個の較正パラメータを調整するプログラム手段を更に含む、請求項6記載の装置。
【請求項10】
前記較正手段は、自動的に情報を入力する手段と手動で情報を入力する手段とを含む、請求項6記載の装置。
【請求項11】
前記変換手段は、距離rにおける単位容積あたりの固形物の質量濃度M(r)を式
【数1】

(式中、KSは場所・測定器定数、
Sは固形物濃度と粒径との間の関係を定義する相対後方散乱係数、
dBは測定相対後方散乱強度、
αwは水の減衰係数
αsは固形物ほ存在による減衰係数)
に従って計算する手段を含む、請求項5記載の装置。
【請求項12】
前記変換手段は、
前記容積部分の一個に関連して得たM(r)値を用いて前記減衰係数αsを計算する手段と、
前記強度値を前記送信器から更に離れた前記容積部分の次のものについてのM(r)値に変換する際に前記αsの値を考慮する手段と
を更に含む、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記ビームに沿って分布している前記液体の別個の容積部分に対応して前記エコー信号を抽出する手段を更に含む、請求項4記載の装置。
【請求項14】
前記変換手段は、場所特有の環境情報を考慮することによって前記強度値を較正する手段をむ、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記変換手段は、前回の測定から得られた濃度値を入力する手段を更に含む、請求項13記載の装置。
【請求項16】
前記場所特有の環境情報は、水温、塩分濃度及び音響系定数、並びに濃度と粒径との間のエコー信号割り当て比を含む、請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記データ処理装置は、前記容積部分の内の一容積部分からの強度値を変換する際に、同じビームに沿った他の容積部分から得た値を用いて少なくも1個の較正パラメータを調整するプログラム手段を更に含む、請求項14記載の装置。
【請求項18】
前記較正手段は、自動的に情報を入力する手段と手動で情報を入力する手段とを含む、請求項14記載の装置。
【請求項19】
前記変換手段は、距離rにおける単位容積あたりの固形物の質量濃度M(r)を式
【数2】

(式中、KSは場所・測定器定数、
Sは固形物濃度と粒径との間の関係を定義する相対後方散乱係数、
dBは測定相対後方散乱強度、
αwは水の減衰係数
αsは固形物ほ存在による減衰係数)
に従って計算する手段を含む、請求項13記載の装置。
【請求項20】
前記変換手段は、
前記容積部分の一個に関連して得たM(r)値を用いて前記減衰係数αsを計算する手段と、
前記強度値を前記送信器から更に離れた前記容積部分の次のものについてのM(r)値に変換する際に前記αsの値を考慮する手段と
を更に含む、請求項20記載の装置。
【請求項21】
流れる液体中に浮遊する固形物の濃度、分布及び速度を測定するための方法であって、 前記液体を横切って音響波形の少なくも一本の方向性ビームを発する段階と、
前記固形物から後方散乱する前記波形のエコー信号を受信する検出器と、
前記エコー信号の測定強度値を集める段階と、
前記エコー信号のドップラー周波数シフトを測定する段階と、
前記強度値を前記固形物の濃度値に変換する段階と、
前記周波数シフトを前記固形物の速度測定値として解釈する段階とを含む方法。
【請求項22】
前記流れる液体は、流れ方向が一定の導管内に含まれ、前記送信器と検出器は前記導管内に位置決めされている、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記発する段階は、第1の対を成す前記ビームを実質的に同一の位置から発することを含み、前記対内の第2ビームは第1のビームに対して下流方向に、前記第1のビームに対して或る長手方向角度で向けられている、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記第1の対のビームに対して或る横断方向角度に向けられた第2の対のビームを発することを更に含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記ビームに沿って分布している前記液体の別個の容積部分に対応して前記エコー信号を抽出することを更に含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記変換段階は、場所特有の環境情報を考慮することによって前記強度値を較正することを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記変換段階は、前回の測定から得られた浮遊固形物濃度値を入力することを更に含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記場所特有の環境情報は、水温、塩分濃度及び音響系定数、並びに濃度と粒径との間のエコー信号割り当て比を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記容積部分の内の一容積部分からの強度値を変換する際に、同じビームに沿った他の容積部分から得た値を用いて少なくも1個の較正パラメータを調整することを更に含む、請求項26記載の方法。
【請求項30】
前記較正段階は、自動的に情報を入力すること、及び手動で情報を入力することを含む、請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記変換段階は、距離rにおける単位容積あたりの固形物の質量濃度M(r)を式
【数3】

(式中、KSは場所・測定器定数、
Sは固形物濃度と粒径との間の関係を定義する相対後方散乱係数、
dBは測定相対後方散乱強度、
αwは水の減衰係数
αsは固形物ほ存在による減衰係数)
に従って計算する手段を計算することを含む、請求項25記載の方法。
【請求項32】
前記変換段階は、
前記容積部分の一個に関連して得たM(r)値を用いて前記減衰係数αsを計算することと、
前記強度値を前記送信器から更に離れた前記容積部分の次のものについてのM(r)値に変換する際に前記αsの値を考慮すること
を更に含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記ビームに沿って分布している前記液体の別個の容積部分に対応して前記エコー信号を抽出することを更に含む、請求項24記載の方法。
【請求項34】
前記変換段階は、場所特有の環境情報を考慮することによって前記強度値を較正することを含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記変換段階は、前回の測定から得られた濃度値を入力することを更に含む、請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記場所特有の環境情報は、水温、塩分濃度及び音響系定数、並びに濃度と粒径との間のエコー信号割り当て比を含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記データ処理装置は、前記容積部分の内の一容積部分からの強度値を変換する際に、同じビームに沿った他の容積部分から得た値を用いて少なくも1個の較正パラメータを調整するプログラムを更に含む、請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記較正段階は、自動的に情報を入力すること、及び手動で情報を入力することを含む、請求項34記載の方法。
【請求項39】
前記変換段階は、距離rにおける単位容積あたりの固形物の質量濃度M(r)を式
【数4】

(式中、KSは場所・測定器定数、
Sは固形物濃度と粒径との間の関係を定義する相対後方散乱係数、
dBは測定相対後方散乱強度、
αwは水の減衰係数
αsは固形物ほ存在による減衰係数)
に従って計算する手段を計算することを含む、請求項33記載の方法。
【請求項40】
前記変換段階は、
前記容積部分の一個に関連して得たM(r)値を用いて前記減衰係数αsを計算することと、
前記強度値を前記送信器から更に離れた前記容積部分の次のものについてのM(r)値に変換する際に前記αsの値を考慮すること
を更に含む、請求項39記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−513341(P2007−513341A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541732(P2006−541732)
【出願日】平成16年11月23日(2004.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/039637
【国際公開番号】WO2005/052547
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506172355)エムジーディー・テクノロジーズ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】