説明

流体飛散防止機能付ホース

【課題】 ホースの内部コアチューブが破損した場合であっても、ホース周辺の操作員の安全確保及び周辺の汚損防止を図り、ホースの定期的な取り替えを不要とし、使用期間の管理や使用可能なホースの取り替えといった無駄をなくすことができる流体飛散防止機能付ホースを提供する。
【解決手段】 内部コアチューブ(1)と、その外側の耐圧補強層(2)と、外被(3)とからなるホースであって、内部コアチューブ(1)が破損した際に内部流体が耐圧補強層(2)を通過して外被(3)の内周面にまで到達可能となっており、かつ、外被(3)と耐圧補強層(2)との密着力が弱く、内部流体が外被(3)の引張り破断伸度に応じて外被(3)を膨張させつつ耐圧補強層(2)と外被(3)との間を浸透できるようにした流体飛散防止機能付ホース。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえホースの内部コアチューブが破損した場合であっても、内部流体を外部に飛散させることなく、内部コアチューブの破損を外観上容易に知ることができる流体飛散防止機能付ホースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】図5に示す通り、従来からホースの構造は内部コアチューブ11と耐圧補強層12と外被13とからなるが、図5(A)のように内部コアチューブ11が何らかの原因で破損すると、内部流体5が内圧によって外被を破壊し、図5(B)のように内部流体5が外部にまで噴出する。即ち、内部コアチューブ11にピンホールと呼ばれる小さな孔が開いた場合には、耐圧補強層12に局所的な内圧が作用して内部流体5が外被13にまで達し、外被13を破壊して噴出することになる。また、耐圧補強層12が劣化や外傷等によって破損すると、内部コアチューブ11及び外被13が内圧に耐えきれなくなって不特定の個所で破壊され、内部流体5が外部に噴出する。
【0003】このような内部流体の噴出が起きると、噴出した流体によってホース取付機器の操作員が負傷したり、飛散した流体による周辺の汚損が生じる。特に、高圧力の油圧で作動させる機器の高圧流体用ホースにあっては、破損により噴出する油が時には操作員の人身に損傷を与え、労働災害を発生させることとなる。そのため、従来は流体の噴出を防止するために、ホースの破損前に使用の有無にかかわらず定期的な取り替えを行っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、定期的な取り替えでは、安全を見込んで必要以上に早期に取り替えたり、未だ使用可能なものまで取り替えるという無駄が避けられなかった。また、定期的に取り替えるにはホースの使用期間の管理が必要になり、管理作業の繁雑化を招くという問題もあった。更に、定期的な取り替えの前に、何らかの原因でホースが破損する危険も避けられない。
【0005】そこで本発明は、ホースの内部コアチューブが破損した場合であっても、ホース周辺の操作員の安全確保及び周辺の汚損防止を図り、ホースの定期的な取り替えを不要とし、使用期間の管理や使用可能なホースの取り替えといった無駄をなくすことができる流体飛散防止機能付ホースを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであって、その要旨は、内部コアチューブが破損した際に、内部流体が耐圧補強層を通過して外被の内周面にまで到達可能となっており、かつ、外被と耐圧補強層との密着力が弱く、内部流体が外被の引張り破断伸度に応じて外被を膨張させつつ耐圧補強層と外被との間を浸透できるようにした流体飛散防止機能付ホースに係るものである。
【0007】そして具体的な構造の一例として、耐圧補強層が編上げ構造であり、外被の引張り破断伸度が350〜1200%、耐圧補強層と外被との接着力が0〜400N/mである流体飛散防止機能付ホースとするものである。
【0008】また、好ましくは、外被が内層と外層の2重構造であり、かつ、内層と外層の色彩が異なる流体飛散防止機能付ホースに係るものであって、特に、外被の内層の厚さを0.3mm以上で、外被の全体の厚さを2.2mm以下としたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の流体飛散防止機能付ホースは、従来の一般的なホースと同様に、内部コアチューブと、その外側の耐圧補強層と、外被とからなっている。ここで内部コアチューブは、内部流体の種類に応じたものであれば、材質や厚さ等に制限はない。
【0010】一方耐圧補強層は、内部コアチューブが破損した際に内部流体が通過可能なものでなければならない。即ち、本発明は、仮に内部コアチューブが破損した場合であっても、内部流体が外被を膨張させつつ耐圧補強層と外被との間を浸透できるようにすることで、外被の破壊を回避して内部流体が外部に飛散しないようにし、かつ、外被の膨張によって内部コアチューブの破損を外観から判断可能とするものである。従って、内部流体が耐圧補強層を通過して外被の内周面にまで到達できなければ、内部コアチューブの破損を察知することができず、内部流体の接触による耐圧補強層の劣化が人知れず進行し、耐圧補強層の突然の破断とそれに伴う外被破壊を招いてしまうのである。
【0011】ここで、内部流体を外被の内周面にまで到達可能とするには、例えば耐圧補強層を編上げ(ブレード)構造にすればよい。編上げ構造であれば、耐圧補強層を構成するコード間に隙間が存在するので、内部流体の通過が可能だからである。一方、コードを螺旋状に巻き付けるスパイラル構造であっても、コードの打込本数の調整(本数を少なくしてコードに間隔を設ける)等によっては内部流体の通過が可能となる。しかし、スパイラル構造では製造上の問題から一般的にコードを接着させるため、接着剤が内部流体の通過の妨げとなってしまうので得策でない。
【0012】また、耐圧補強層は、使用圧力に応じて多層構造にすることが行われている。この場合、内部コアチューブ側の1層目の密度を一番高くし、外被側にかけて順に密度を下げることが好ましい。内部流体が外被に向かうにつれて拡散することで、外被に局部的な圧力が作用することなく外被が全体的に膨張するようになるからである。なお、耐圧補強層を構成するコードは、金属及び繊維のいずれでもよく、撚ったものでも無撚りであってもよい。但し、繊維糸では0〜50ターン/mの範囲とすることが好ましい。
【0013】次に、耐圧補強層と外被との密着力は弱くする必要がある。即ち、本発明は、内部流体が耐圧補強層を通過して外被の内周面にまで到達した際に、内部流体が外被を破壊せずに耐圧補強層と外被との間を浸透して外被を膨張させるものである。従って、内圧が外被に作用したとき、耐圧補強層と外被との密着力が強いと外被が破断してしまうので、漏出した内部流体を蓄えることができなくなる。
【0014】ここで、耐圧補強層と外被との密着力を弱くするには、例えば耐圧補強層と外被とを全く接着させなければよい。また、接着させた場合は、耐圧補強層との接着力を400N/m以下とすることが好ましい。更に、外被に到達した内部流体が外被を破断することなく膨張させるためには、外被の引張り破断伸度を350〜1200%とすることが好ましい。
【0015】このように本発明のホースでは、内部コアチューブが破損すると外被が破断することなく膨張する。そのため、内部流体が外部に飛散することもなく、安全を確保した上で内部コアチューブの破損を外観的に判断できる。但し、内部コアチューブが先に破損するのではなく、耐圧補強層の外傷等によって内部コアチューブ及び外被が不特定の個所で破壊されることも考えられる。例えば外被が摩耗等によって損傷し、耐圧補強層が露出した場合である。この場合は、耐圧補強層が破損すると内部コアチューブ及び外被も破壊されるので、内部流体が外部に飛散してしまう。
【0016】そこで、このような場合に対処すべく、外被を内層と外層との2重構造にし、かつ、内層と外層の色彩を変えることが好ましい。色彩が異なっていれば、外層が摩耗した際に内層の露出が視認でき、外被の摩耗が耐圧補強層に達する前に危険信号を発することができるからである。即ち、外傷の大小、深さ等、従来不明確であったホース取り替え時期の判断基準を、内層が目視確認できたら取り替えるようにすることで基準が簡単明確となり、取り替え時期の誤りによる内部流体の噴出災害や汚損を防止できるのである。
【0017】ここで、外被の内層の厚さは0.3mm以上にしておくことが好ましい。外層が摩耗して内層が露出するとその部分での耐圧補強層上の外被は内層だけになるので、0.3mm未満であると強度的に弱くなり、内部流体が外被の内周面にまで到達した際に局部的な膨らみを生じ、内部流体が耐圧補強層と外被との間を浸透する前に外被を破壊させて危険だからである。なお、同様の理由により、外被を単層にした場合の外被厚さは0.3mm以上が好ましい。
【0018】また、外被の全体の厚さは2.2mm以下にしておくことが好ましい。厚さが増すと外被が膨張し難くなるので、内部流体が余り外被を膨張させることなく耐圧補強層と外被との間を浸透して行くことになり、内部コアチューブの破損を外観から容易に判断できなくなるからである。即ち、外被の全体の厚さは、外被の引張り破断伸度や硬度等を考慮して、外観から膨張が的確に判断できる程度に設定すればよい。
【0019】更に、外被の外層の厚さは0.2mm以上が好ましい。0.2mm未満であるとすぐに内層の露出に至ってしまうからである。なお、外層の厚さの好ましい範囲の上限は、内層の厚さが0.3mm以上で外被の全体の厚さが2.2mm以下であるから、1.9mm以下となる。また、内層の厚さの上限は、外層の厚さが0.2mm以上で外被の全体の厚さが2.2mm以下であるから、2.0mm以下となるが、特に、0.8mm以下とすることが好ましい。
【0020】なお、ホースはその両端に口金具を固定しなければ機器に取り付けできないので機能しない。本発明の流体飛散防止機能付ホースにおいても当然に口金具を設けるが、その際、耐圧補強層と外被との間を浸透してきた内部流体がホースと口金具との接続部から漏れないように、外被の両端部の上から(外被が2重構造の場合には外層の上から)口金具を加締める必要がある。
【0021】
【実施例】以下、本発明の好ましい実施の形態を更に詳細に説明する。図1は、本発明の流体飛散防止機能付ホースの第1実施例を示す半断面図であり、内部コアチューブ、耐圧補強層、外被をそれぞれ露出させた状態を示したものである。即ち、第1実施例のホースは、ナイロン製の内部コアチューブ1、ポリエステル繊維の編上げ構造3層からなる耐圧補強層2(1層目2A、2層目2B、3層目2C)、ポリウレタン製の2重構造の外被3(内層3Aはオレンジ、外層3Bはグリーン)からなる絶縁油圧ホースであり、配電工事で使用するものである。
【0022】そして、耐圧補強層2の各層2A〜2Cは、全て打込数が1500デニール×3本×24本立ての編上げ構造であり、巻き径の増加に伴い密度が1層目2A>2層目2B>3層目2Cの順に小さくなっている。また、20℃の環境下における外被の引張り破断伸度は1053%、破断強度は249N(JIS K 6251 3号試験片形状0.92mm厚 引張速度200mm/分)、硬度は90°(JIS K 7215 タイプAデュロメーターの測定)で、外被の内層3Aの厚さは0.9mm、外層3Bの厚さは0.5mmである。更に、耐圧補強層の3層目2Cと外被の内層3Aとは接着させておらず、加締め部分の安全性と信頼性を高めるために、外被の外層3Bも口金具4で一体に加締めている。
【0023】次に、この第1実施例のホース中央部における内部コアチューブ1を傷付け、ピンホールを発生させた上で油圧機器に取り付けて700kgf/cm2 の圧力で内部流体5として作動油を流した。すると、図2(A)に示すように、作動油5が耐圧補強層2A〜2Cの隙間を通過して外被の内層3Aの内周面に到達し、図2R>2(B)のように外被3A及び3Bを膨張させて作動油5を蓄えつつ、作動油5が耐圧補強層の3層目2Cと外被の内層3Aとの間を浸透して行った。
【0024】従って、作動油5が外部に噴出することなく、図2(B)のように外被3A及び3Bが膨張して太くなることによって内部コアチューブ1が破損していることを視認できた。また、この状態において、油圧機器の操作時間が通常操作時間と比べて異常に長くなることからも、内部コアチューブの破損を確認できた。
【0025】また、図3は、本発明の流体飛散防止機能付ホースの第2実施例を示す半断面図であり、第1実施例における口金具4の加締め部において、外被の外層3Bの端部を取り除き、耐圧補強層2に対する締め付けの信頼性を向上させたものである。なお、第2実施例の場合であっても、内部流体は耐圧補強層の3層目2Cと外被の内層3Aとの間を浸透するので、内部流体が口金具4の加締め部から漏れ出すことはない。
【0026】更に、図4は、本発明の流体飛散防止機能付ホースの第3実施例を示す半断面図であり、第1実施例における耐圧補強層2を4層(1層目2A、2層目2B、3層目2C、4層目2D)としたものである。耐圧補強層の層数が多くなれば耐圧性能が向上するが、積層数が多くなるにつれて内部流体が外被内層3Aの内周面に到達し難くなるので、第3実施例のように4層程度までが適当である。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の流体飛散防止機能付ホースは、内部コアチューブが破損した際に、内部流体が耐圧補強層を通過して外被の内周面にまで到達可能となっており、かつ、外被と耐圧補強層との密着力が弱く、内部流体が外被の引張り破断伸度に応じて外被を膨張させつつ耐圧補強層と外被との間を浸透できるようになっているので、たとえ内部コアチューブが破損した場合であっても内部流体が外部に飛散せず、ホース周辺の操作員の安全確保及び周辺の汚損が防止できる。しかも、内部コアチューブの破損を外観から判断できるので、ホースの定期的な取り替えが不要となり使用期間の管理や使用可能なホースの取り替えといった無駄をなくすことができる。
【0028】また、外被を内層と外層との2重構造にし、かつ、内層と外層の色彩を変えれば、外層が摩耗した際に内層の露出が視認でき、それによってホース取り替え時期の判断基準が簡単明確となり、取り替え時期の誤りによる内部流体の噴出災害や汚損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の流体飛散防止機能付ホースの第1実施例を示す半断面図である。
【図2】図2は、第1実施例のホースの内部コアチューブにピンホールがある場合の経過を示す概念図である。
【図3】図3は、本発明の流体飛散防止機能付ホースの第2実施例を示す半断面図である。
【図4】図4は、本発明の流体飛散防止機能付ホースの第3実施例を示す半断面図である。
【図5】図5は、従来のホースの内部コアチューブにピンホールがある場合の経過を示す概念図である。
【符号の説明】
1‥内部コアチューブ
2‥耐圧補強層
2A‥耐圧補強層の1層目
2B‥耐圧補強層の2層目
2C‥耐圧補強層の3層目
2D‥耐圧補強層の4層目
3‥外被
3A‥外被の内層
3B‥外被の外層
4‥口金具
5‥内部流体(作動油)
11‥内部コアチューブ
12‥耐圧補強層
13‥外被

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部コアチューブ(1)と、その外側の耐圧補強層(2)と、外被(3)とからなるホースであって、内部コアチューブ(1)が破損した際に内部流体が耐圧補強層(2)を通過して外被(3)の内周面にまで到達可能となっており、かつ、外被(3)と耐圧補強層(2)との密着力が弱く、内部流体が外被(3)の引張り破断伸度に応じて外被(3)を膨張させつつ耐圧補強層(2)と外被(3)との間を浸透できるようにしたことを特徴とする流体飛散防止機能付ホース。
【請求項2】 耐圧補強層(2)が編上げ構造であり、外被(3)の引張り破断伸度が350〜1200%、耐圧補強層(2)と外被(3)との接着力が0〜400N/mであることを特徴とする請求項1に記載の流体飛散防止機能付ホース。
【請求項3】 外被(3)が内層(3A)と外層(3B)の2重構造であり、かつ、内層(3A)と外層(3B)の色彩が異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体飛散防止機能付ホース。
【請求項4】 外被(3)の内層(3A)の厚さが0.3mm以上で、外被(3)の全体の厚さが2.2mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の流体飛散防止機能付ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2002−243070(P2002−243070A)
【公開日】平成14年8月28日(2002.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−37568(P2001−37568)
【出願日】平成13年2月14日(2001.2.14)
【出願人】(390034452)ブリヂストンフローテック株式会社 (80)
【出願人】(391024892)北海電気工事株式会社 (7)
【出願人】(501063335)株式会社ブリヂストンアイピーエー (1)
【Fターム(参考)】