説明

流動性固体の搬送装置及びそれを用いた破砕物処理装置

【課題】原動機の始動時に必要な力が少なく、破砕物の詰まり等で装置の作動が阻害又は停止するようなときに原動機、クラッチ機構に掛かる負荷が少なく、狭隘地等の場所で使用しやすい、流動性固体の搬送装置及びそれを用いた破砕物処理装置を提供する。
【解決手段】搬送装置は、ケーシング、ファン、ファンの回転軸、回転軸に取着されたプーリー、ケーシングに設けられた吸入ダクト及び排出ダクトを備えるブロワ、原動軸にプーリーを備え、ブロワを作動させる原動機、ブロワと原動機の間に設けられ、各プーリーを伝導ベルトにより駆動可能に設けたテンションクラッチであるクラッチ機構、ブロワ回転軸を支持するプーリーとブロワ間に設けた2以上の軸受、前記各部材を積載する台車を備える。前記搬送装置はケーシングの吸入ダクト及び排出ダクトの一方又は双方が位置を変えることができるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性固体の搬送装置及びそれを用いた破砕物処理装置に関する。更に詳しくは、原動機の始動時に必要な力が少なくて済み、また、破砕物の詰まり等でブロワの作動が阻害されるか又は停止するようなときでも原動機又はクラッチ機構に掛かる負荷が少なくて済み、更に、狭隘地等の制約のある作業場所においてもブロワの排出ダクトの位置が簡単に変更できるので作業がしやすいものに関する。
【背景技術】
【0002】
山林の整備を行うにあたっては、剪定又は枝打ち、下草、雑木等の伐採、伐根を行うが、当該作業により生じた枝、下草、雑木等(以下「廃材」という。)は一般廃棄物や産業廃棄物に区分され、廃材をそのまま放棄すると一般的に法律又は条例等に違反することとなる。
【0003】
このため、近年これら廃材を資源化すべく、破砕機が利用されている。破砕機の例としては、例えば特許文献1の破砕機を挙げることができる。特許文献1記載のような自走式破砕機であれば、山林等の作業場所へ破砕機を持ち込み、現場において廃材の破砕が行うことができるので、廃材をそのまま平地まで運搬して作業するよりも嵩張らずに効率的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−161297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の破砕機を利用する場合、破砕した廃材(以下「チップ」という。)を破砕機の排出口から運搬車或いは運搬に使う袋等の容器に移し替えるべく、流動性固体の搬送装置(例えば、送風機、ブロワ等を備えたもの)が使用され、チップを吸引して搬送等することがある。
【0006】
しかしながら、前記流動性固体の搬送装置を使用した作業では以下のような課題があった。即ち、
(1)流動性固体の搬送装置の動力が例えばリコイルスターターにより起動するタイプの原動機であって、原動機と内蔵するファンとの動力伝導装置がチェーン又はギアであるような場合、その始動時にはファンも共に回すことになるため、出力の大きな流動性固体の搬送装置(ファンも大きい)を使用すると、始動に要する労力も増大する。
【0007】
(2)前記のように流動性固体の搬送装置の原動機とファンの動力伝導装置がチェーン又はギアであるような場合、作業時に流動性固体の搬送装置を通過するチップがファンに絡みつく或いは詰まる等してその作動が阻害されるか又は回転が停止すると、動力伝導装置や原動機等に負荷が掛かり、故障の原因となる可能性がある。
【0008】
(3)作業場所が山林等の狭隘地や傾斜地である場合、使用する流動性固体の搬送装置の排出ダクトの位置によっては、立木、傾斜、崖等が障害となって排出ダクトに繋がるチップ搬出用のチューブの取り回しに支障を来す。
【0009】
(発明の目的)
そこで、本発明の目的は、原動機の始動時に必要な力が少なくて済み、また、破砕物の詰まり等で装置の作動が阻害されるか又は停止するようなときでも原動機又はクラッチ機構に掛かる負荷が少なくて済み、更に、狭隘地等の制約のある作業場所においても使用しやすい、流動性固体の搬送装置及びそれを用いた破砕物処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
本発明は、流動性固体を空気流によって搬送する装置であって、ブロワと、ブロワを作動させる原動機と、ブロワと原動機の間に設けられているクラッチ機構と、前記ブロワ、原動機及びクラッチ機構を積載する台車と、を備えており、前記ブロワは、吸入ダクトと排出ダクトを備えているケーシングと、該ケーシング内に設けられたファンと、前記ケーシング外部へ延設されたファンの回転軸と、該回転軸に取着されたプーリーと、前記ケーシングに設けられた吸入ダクト及び排出ダクトと、を備えており、前記原動機の原動軸にはプーリーが設けてあり、前記クラッチ機構は、前記ファンの回転軸及び原動機に取着されたプーリーを伝導ベルトにより駆動可能に設けられたものであって、テンションプーリーを備えたテンションクラッチであり、ブロワの回転軸が、プーリーとブロワの間に設けられた2以上の軸受により支持されている、流動性固体の搬送装置である。
【0011】
前記流動性固体の搬送装置は、ケーシングが備えている吸入ダクト及び排出ダクトの一方又は双方は、位置を変えることができるよう構成されているものであってもよい。
【0012】
前記流動性固体の搬送装置は、ケーシングは、正面及び背面に設けられた封鎖板と、該封鎖板に対して円周方向へ回動可能に形成された周壁を備え、いずれか一方の封鎖板と周壁にはダクトが形成されており、ダクトのうちいずれか一方は吸入ダクトであり、他方は排出ダクトであるものであってもよい。
【0013】
本発明は、前記のいずれかの流動性固体の搬送装置と、破砕機と、搬出手段または/および貯蔵手段と、前記各機材を繋ぐチューブと、を備えた、破砕物処理装置である。
【0014】
本明細書及び本願の特許請求の範囲にいう流動性固体としては、前記チップが挙げられるが、これに限定するものではなく、例えば、発泡スチロール、合成樹脂等の空気流によって搬送可能な軽い素材又は破片の建築廃材等であってもよい。
【0015】
本明細書及び本願の特許請求の範囲にいう原動機としては、ガソリン等を燃料とするエンジンが挙げられるが、これに限定するものではなく、例えば、電気モーター等の公知の装置であってもよい。
【0016】
「搬出手段または/および貯蔵手段」とは、搬出手段または貯蔵容器のいずれか一方であってもよいし、あるいは、搬出手段および貯蔵容器の両方であってもよい、という意味で使用している。
搬出手段とはチップを積載及び搬出可能なトラック、手押し車、リヤカー等の車両を含む輸送手段という意味で使用しており、また、貯蔵手段とは生成したチップを入れる容器、袋、タンク、貯蔵する設備等を含む意味で使用している。
【0017】
(作 用)
本発明に係る流動性固体の搬送装置及び破砕物処理装置の作用を説明する。
【0018】
山林等の作業場所へ本発明に係る流動性固体の搬送装置を含む破砕物処理装置を設置する。
本発明の流動性固体の搬送装置は、クラッチ機構を有しているので、例えばリコイルスターターにより起動するタイプの原動機の始動時に、クラッチを切っておけば、伝導ベルトにより接続されたブロワのファンを回す力が不要となるので、始動時に必要な力が少なくて済む。
【0019】
剪定又は枝打ち、下草、雑木等の伐採、伐根を行い、生じた廃材を破砕機によりチップにする。破砕機の排出口から排出されたチップは、破砕機の排出口に取着したチューブを通じて流動性固体の搬送装置に送られ、流動性固体の搬送装置を通過し、流動性固体の搬送装置に取着されたチューブを通じて、搬出手段または/および貯蔵手段にチップを送る。
【0020】
前記のように流動性固体の搬送装置が作動しているときにファンの動作によりストレスが掛かりブロワに振動が発生するが、設けられた2以上の軸受によりブロワの回転軸が支持されているので、当該振動が抑制される。
【0021】
また、チップが流動性固体の搬送装置を通過する際に、ファンに絡みつく、詰まる等してブロワの作動が阻害されるか又は停止するようなときは、プーリーと伝導ベルトの間で滑りが生じ、プーリーが空転するか又は空転しやすいので、原動機又はクラッチ機構に掛かる負荷が軽減される。
【0022】
流動性固体の搬送装置のブロワが水平方向の中心軸を中心に回動可能に形成されたものについては、流動性固体の搬送装置の設置場所又は状況に応じてブロワを回動させ、周方向に排出ダクトの位置を変更することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の流動性固体の搬送装置によれば、クラッチ機構により原動機の始動時に必要な力が少なくて済み、また、破砕物の詰まり等でブロワの作動が阻害されるか又は停止するようなときでも原動機又はクラッチ機構に掛かる負荷が少なくて済む。更に、2以上の軸受によりブロワの回転軸が支持されているので、ファンの動作により生じるブロワの振動が抑制できる。
【0024】
また、本発明の流動性固体の搬送装置によれば、ケーシングの吸入ダクト及び排出ダクトの一方又は双方は位置変更可能に構成されているため、狭隘地等の制約のある作業場所においても使用しやすい。
【0025】
本発明の破砕物処理装置によれば、前記効果を奏する破砕物処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る搬送装置のクラッチケースを一点鎖線で示し、クラッチケースの内部構造を実線で示した斜視説明図。
【図2】図1に示す搬送装置の平面視説明図。
【図3】図1に示す搬送装置の側面視説明図。
【図4】図1に示す搬送装置の正面視説明図。
【図5】第2実施形態に係る搬送装置の排出ダクトの動きを示した斜視説明図。
【図6】第3実施形態に係る搬送装置の排出ダクトの動きを示した斜視説明図。
【図7】破砕物処理装置の使用状態説明図。
【図8】図5に示す搬送装置の排出ダクトに撒布用ダクトを取着した状態を示した斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔第1実施形態〕
本発明の搬送装置の実施の形態(第1実施形態)を図1〜図4に基づき更に詳細に説明する。
搬送装置B1は、後記する破砕機(以下「チッパーA」という。)により廃材を破砕して生成したチップを取り出すための移動式の搬送装置である。
前記搬送装置B1は、ブロワ1aと、ブロワ1aを作動させる原動機2と、ブロワ1aと原動機2の間に設けられたクラッチ機構3と、前記各構成部材を積載する台車4を備えている。
【0028】
ブロワ1aは、後記する台車4の前方側(ハンドル430側、以下同じ。)のフレーム410上に配置されており、ケーシング100と、ケーシング100内に設けられたファン110と、ファン110を回転させるためにケーシング100外部へ延設された回転軸112と、回転軸112に取着されたプーリー114と、ケーシング100に設けられた吸入ダクト102及び排出ダクト104を備えている。
【0029】
ケーシング100は下部が台車4のフレーム410上に固着されており、ケーシング100の正面中心部分に筒状に突出した吸入ダクト102が形成されており、ケーシング100の側面部に筒状に突出した排出ダクト104が形成されている。また、ケーシング100の背面中心部分には、回転軸112が挿通されており、該回転軸112は、基端がファン110に固着され、先端にプーリー114が固着されている。
【0030】
ファン110は、回転軸112と固着して回転可能に設けられている円盤状のファン基部116と、ファン基部表面に対し直交方向へ突設された複数(本実施形態では6枚)の羽根部118を備えている。
各羽根部118は、ファン110中心軸部分からファン基部116の外縁までの長さを有する板状体であって、長手方向略中央部がファン110の回転方向(図4の矢印方向)へ突き出すように屈曲した形状に形成されている(図4参照)。前記ファン110は、吸入ダクト102から吸引された空気及びチップを、排出ダクト104から送風すると共にチップも送り出せるように構成されている。
【0031】
原動機2は、駆動軸の先端にプーリー214が設けられている。なお、本実施形態においては、原動機として、リコイルスターターにより起動するタイプのエンジンを用いるが、他の公知の動力装置であってもよい。
【0032】
クラッチ機構3は、ブロワ1a及び原動機2にそれぞれ取着されたプーリー114,214を伝導ベルト310により駆動可能に設けられたテンションクラッチであって、クラッチボックス340内に収納されている。
プーリー114,214の間にはテンションプーリー320が設けられている。テンションプーリー320と操作桿330との間にスプリング(図示省略)が配置されており、テンションプーリー320は操作桿330により操作可能に構成されている。
【0033】
前記ファン110は、原動機2からの動力が、プーリー214、伝導ベルト310、プーリー114と回転軸112を介して駆動するよう構成されている。
【0034】
台車4は、フレーム410と、フレーム410の略中央に設けられた軸受フレーム420a,420bと、フレーム410の長手方向一端側に設けされたハンドル430と、フレーム410の長手方向他端側に設けられた一対の車輪440と、フレーム410のハンドル430側であってフレーム410下方に突出して設けられた補助脚450を備えている。
【0035】
フレーム410は、略長方形の形状であって、所要幅の長板体により形成された外枠と、外枠の内側に配置され、長手方向の外枠と並列に設けられた所要幅の長板体により形成された2本の内枠を備えている。
【0036】
軸受フレーム420a,420bは、前記内枠上に長手方向に並んで配置されており、各軸受フレーム420a,420bはクラッチボックス340内に位置している。
軸受フレーム420aの上面には軸受422aが、軸受フレーム420bの上面には軸受422bがそれぞれ設けられている。
各軸受422a,422bは、前記の回転軸112を回転可能に固定している。
【0037】
(作 用)
図1〜図4を参照して、搬送装置B1の作用を説明する。
搬送装置B1は、クラッチ機構3がテンションクラッチであるので、リコイルスターターにより起動する原動機2の始動時に、操作桿330によりテンションプーリー320を操作してクラッチを切っておけば、伝導ベルト310により接続された状態のブロワ1aのファン110を回す力が不要となるので、始動時に必要な力が少なくて済む。
【0038】
搬送装置B1の吸入ダクト102から入ったチップはブロワ1a内に入り、吸引した空気と共にチップが排出ダクト104から排出される。
前記のように搬送装置B1が作動しているときにファン110の動作によりストレスが掛かりブロワ1aに振動が発生するが、ブロワ1aの回転軸112が軸受422a,422bにより二点で支持されているので、当該振動が抑制される。
【0039】
また、チップが搬送装置B1を通過する際に、ファン110に絡みつく、詰まる等してブロワ1aの作動が阻害されるか又は停止するようなときは、プーリー214と伝導ベルト310の間で滑りが生じ、プーリー214が空転するか又は空転しやすいので、原動機2又はクラッチ機構3に掛かる負荷が軽減される。
【0040】
〔第2実施形態〕
本発明の搬送装置の他の実施の形態(第2実施形態)を図5に基づき、詳細に説明する。
なお、当該実施形態において、搬送装置B2のブロワ1bは、その周壁が回動し、周壁に設けられた排出ダクトの位置を変更しうるように設けられた構造以外は、図1〜図4に示す搬送装置B1と構造が共通している。このため、共通部分の説明は省略し、相違する構造について以下説明する。また、構造が共通する箇所については、図1〜図4と同じ符号を付している。
【0041】
搬送装置B2のブロワ1bは、その正面に設けられた封鎖板101と、封鎖板101に対して円周方向へ回動可能に形成された周壁103と、を備えたケーシング100aと、ケーシング100a内に設けられたファン110を備えている。封鎖板101は、ケーシング100aの正面部よりもやや径小に設けられている。
【0042】
封鎖板101の中央部分には筒状に突出した吸入ダクト102が形成されており、周壁103の所要箇所には筒状に突出した排出ダクト104が形成されている。
なお、ブロワ1bの背面側中心部分には回転軸112が挿通しており、該回転軸112は、基端がファン110に固着され、先端にプーリー114が固着されている。
【0043】
ケーシング100a正面側の周縁近傍には、ガイド溝120が設けられている。該ガイド溝120は、封鎖板101の外縁に沿って、所要長さの円弧状に形成されている。
【0044】
また、ブロワ1bのケーシング100a正面下側には、板状の水平部分と垂直部分を有し、側面視L字型に屈曲した形状のアングル122aが設けられている。アングル122aの水平部分及び垂直部分の略中央にはボルトを挿通させるための孔がそれぞれ形成されている。
アングル122aの水平部分は台車4のフレーム410にボルトで螺着してあり、垂直部分はケーシング100a正面及び封鎖板101と僅かな隙間を空けて立設している。
【0045】
アングル122aの垂直部分に形成された孔は、前記ガイド溝120と同じ高さとなるように設けてあり、該孔及びガイド溝120にボルト(以下、「位置調整ボルト124」という。)を挿通し、ケーシング100a内部に配置されたナット(またはネジ穴)と螺合するように設けられている。
【0046】
(作 用)
搬送装置B2のブロワ1bは、位置調整ボルト124を緩めると、周壁103が図5の矢印が示す方向に回動するので、排出ダクト104の位置を任意の位置に変更しうる。
【0047】
一方、位置調整ボルト124を締めると、位置調整ボルト124がケーシング100a内部に配置されたナット(またはネジ穴)に締着してアングル122aの垂直部分及びケーシング100a正面及び封鎖板101が挟持され、アングル122aの垂直部分がガイド溝120に撓んでその背面が封鎖板101表面と強く密接し、当該箇所の摩擦力によってブロワ1bの周壁103の回動が止まり、排出ダクト104が所要位置に固定される。
【0048】
〔第3実施形態〕
本発明の搬送装置の他の実施の形態(第3実施形態)を図6に基づき、詳細に説明する。
なお、当該実施形態において、搬送装置B3のブロワ1cは、その周壁が回動し、周壁に設けられた排出ダクトの位置を変更しうるように設けられた構造以外は、図1〜図4に示す搬送装置B1及び図5に示す搬送装置B5と構造が共通している。この共通部分の説明は省略し、相違する構造について以下説明する。また、構造が共通する箇所については、図1〜図4及び図5と同じ符号を付している。
【0049】
搬送装置B3のブロワ1cは、封鎖板101と周壁103を備えたケーシング100b、ファン110、吸入ダクト102及び排出ダクト104、回転軸112、プーリー114については、搬送装置B2の形状、構造と同様であるため、説明を省略する。なお、ブロワ1cにはガイド溝120は形成されていない。
【0050】
ケーシング100b正面側の周縁近傍であって封鎖板101外縁の所要箇所には、後記する位置調整ボルト124を螺着するためのネジ孔(図示及び符号省略。)が形成されている。
【0051】
ブロワ1cのケーシング100b正面下側には、水平部分と垂直部分を有した側面視L字型に形成されたアングル122bが設けられている。アングル122bは、その水平部分の略中央に孔が形成されており、該孔にボルトを挿入して、台車4のフレーム410へ螺着してある。
アングル122bの垂直部分は、正面視円弧状に形成された板状のガイド部126を構成しており、該ガイド部126の幅方向中央には長さ方向に亘って円弧状のガイド溝127が形成されている。
なお、ガイド部126を含んだアングル122bの垂直部分は、ケーシング100b正面及び封鎖板101と僅かな隙間を空けて立設している。
【0052】
アングル122bのガイド部126に形成されたガイド溝127は、ケーシング100b正面側に形成された前記ネジ孔と位置が合う(同じ高さとなる)ように設けてあり、該孔及び前記ネジ孔にボルト(以下、「位置調整ボルト124a」という。)を挿通し、ケーシング100bに形成されたネジ孔と螺合するように設けられている。
【0053】
なお、本実施形態においては、ブロワの周壁の回動を固定する手段は、ケーシング正面側に形成されたネジ孔に位置調整ボルトを挿通する構造であるが、これに限定するものではなく、例えば、ケーシング100b正面側に棒状体であって軸部周面にネジが切られたものが固着又は突設されており、該棒状体にナットを締着する構造であってもよい。
【0054】
(作 用)
搬送装置B3のブロワ1cは、位置調整ボルト124aを緩めると、周壁103が図6の矢印が示す方向へ(ガイド溝127に沿って)回動するので、排出ダクト104の位置を任意の位置に変更しうる。
【0055】
一方、位置調整ボルト124aを締めると、位置調整ボルト124aがケーシング100bのネジ孔に締着してアングル122bのガイド部126及びケーシング100b正面及び封鎖板101が挟持され、ガイド部126がケーシング100b側に撓んで、ガイド部126の背面が封鎖板101表面と強く密接し、当該箇所の摩擦力によってブロワ1bの周壁103の回動が止まり、排出ダクト104が所要位置に固定される。
【0056】
〔破砕物処理装置S〕
図7及び図1〜図4、図6を参照して、破砕物処理装置Sについて詳細に説明する。
破砕物処理装置Sは、破砕機としてのチッパーA、搬送装置B2及び搬出手段としてのトラックCと、前記各機材を繋ぐチューブT1,T2を備えている。
【0057】
チッパーAとしては例えば株式会社大橋のGSシリーズ、GSCシリーズの自走式の木質材粉砕機が好適に使用されるが、これに限定するものではなく、他社の木質材粉砕機又はチッパーであってもよい。
【0058】
チューブT1は、チッパーAのチップ排出口と搬送装置B2の吸入ダクト102を繋ぐよう接続されており、チューブT2は、搬送装置B2の排出ダクト104とトラックCの荷台を繋ぐよう接続されている。
【0059】
(作 用)
図7及び図1〜図4、図6を参照して、破砕物処理装置Sの作用を説明する。
まず、山林等の作業場所へチッパーA、搬送装置B2及びトラックCを含む破砕物処理装置Sを設置する。
【0060】
なお、作業場所が狭隘な土地であって、例えば立木、壁面、崖等の障害物があるときは、搬送装置B2に繋がるチューブT2の取り回しに支障がある場合がある。
このような場合、位置調整ボルト124を緩め、ガイド溝120に沿ってブロワ1bの周壁103を回動させ、排出ダクト104を作業しやすい位置に変更し(図5参照)、適当な位置が決まったら位置調整ボルト124を締めて排出ダクト104の位置を当該位置に固定する。
【0061】
搬送装置B2を起動する。搬送装置B2は、クラッチ機構3がテンションクラッチであるので、リコイルスターターにより起動する原動機2の始動時に、操作桿330によりテンションプーリー320を操作してクラッチを切っておけば、伝導ベルト310により接続された状態のブロワ1bのファン110を回す力が不要となるので、始動時に必要な力が少なくて済む。
【0062】
剪定又は枝打ち、下草、雑木等の伐採、伐根を行い、生じた廃材をチッパーAによりチップにする。 チッパーAの排出口から排出されたチップは、搬送装置B2のブロワ1bにより生じた吸引力によって、チッパーAに取着したチューブT1を通じて搬送装置B2へ吸引される(搬送装置B2へ送られる)。
搬送装置B2の吸入ダクト102から入ったチップはブロワ1b内に入り、吸引した空気と共にチップが排出ダクト104からチューブT2へ排出される(搬送装置B2を通過する)。
【0063】
ブロワ1bから排出されたチップは、搬送装置B2に取着されたチューブT2を通じて、トラックCの荷台へ送られて搬出される。
【0064】
前記のように搬送装置B2が作動しているときにファン110の動作によりストレスが掛かりブロワ1bに振動が発生するが、設けられた軸受422a,422bによりブロワ1bの回転軸112が二点支持されているので、当該振動が抑制される。
【0065】
また、チップが搬送装置B2を通過する際に、ファン110に絡みつく、詰まる等してブロワ1bの作動が阻害されるか又は停止するようなときは、プーリー214と伝導ベルト310の間で滑りが生じ、プーリー214が空転するか又は空転しやすいので、原動機2又はクラッチ機構3に掛かる負荷が軽減される。
【0066】
このように、破砕物処理装置Sは、狭隘地等の制約のある作業場所においても使用しやすい。
【0067】
なお、本実施形態では搬送装置B2を用いているが、これに限定するものではなく、搬送装置B1又は搬送装置B3を用いてもよい。
なお、搬送装置B3を用いても同様の作用及び効果を奏するため、作用の説明を省略する。
また、搬送装置B1を用いた場合については、排出ダクト104の位置変更以外の作用及び効果については、同様の作用及び効果を奏するため、説明を省略する。
【0068】
また、本実施形態においては、後記の通り生成したチップはトラックCへ直接送られているが、例えば狭隘地での作業であって作業場所から搬送車両までの距離があるような場合は、搬送装置から送られてきたチップを一端運搬用の袋又容器、手押し車、リヤカー等にチップを入れて運搬車両に運んでもよい。更にまた、チップを袋又は容器、サイロや倉庫のような建造物等に貯蔵してもよい。
【0069】
本実施形態においては、吸引ダクトはケーシングの正面中心部分又はケーシング正面の封鎖板に設けられており、排出ダクトはケーシングの側面部又は周壁の所要箇所に設けられているが、当該形態に限定するものではなく、例えば、吸引ダクトをケーシングの側面部又は周壁の所要箇所に設け、排出ダクトをケーシングの正面中心部分又はケーシング正面の封鎖板に設けてもよい。
【0070】
図8は、図5に示す搬送装置B2の排出ダクト104に撒布用ダクトT3を取着した状態を示した斜視説明図である。撒布用ダクトT3は、真っ直ぐなチューブが中途から湾曲し側方へ開口した略L字状に形成されている。
【0071】
なお、図8では、撒布用ダクトは略L字状に形成されているが、当該形状に限定するものではなく、例えば屈曲部は鈍角又は鋭角であってもよい。また、図8に示す撒布用ダクトは、鋼管により形成され、ネジで取り付けられている(図示省略)が、撒布用ダクトの材質は合成樹脂等の公知材料であってもよいし、取付方法は他の公知技術であってもよい。
【0072】
図8に示す状態において、排出ダクト104は上方に向けて固定され、撒布用ダクトT3の基端側は排出ダクト104の鉛直方向に取着され、他端側である排出口T31が解放された(他の機材等に接続されていない)状態である。
【0073】
図5に示す搬送装置B2は、その使用時においては、吸入ダクト102から吸入されてブロワ1bを通過したチップを撒布用ダクトT3の排出口T31から撒布することができ、また、撒布用ダクトT3を回転させて排出口T31の向きを変えることにより、360度いずれか所望する方向へチップを撒布することができる。
【0074】
撒布したチップは、雑草の繁殖抑止材、山林等撒布箇所での堆肥化原料材、公園や登山道又は遊歩道、競走馬の調教施設等のぬかるみ抑止材及びクッション材、その他家畜の敷料等として用いられる。
【0075】
なお、図8においては、搬送装置B2の排出ダクト104に撒布用ダクトT3を取着した状態を示しているが、搬送装置B3にも同様に撒布用ダクトT3を取着して使用することができる。
【0076】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
A チッパー
B1,B2,B3 搬送装置
1a,1b,1c ブロワ
100,100a,100b ケーシング
101 封鎖板
103 周壁
102 吸入ダクト
104 排出ダクト
110 ファン
112 回転軸
114 プーリー
116 ファン基部
118 羽根部
120 ガイド溝
122a,122b アングル
124,124a 位置調整ボルト
126 ガイド部
127 ガイド溝
2 原動機
214 プーリー
3 クラッチ機構
310 伝導ベルト
320 テンションプーリー
330 操作桿
340 クラッチボックス
4 台車
410 フレーム
420a,420b 軸受フレーム
422a,422b 軸受
430 ハンドル
440 車輪
450 補助脚
C トラック
S 破砕物処理装置
T1,T2 チューブ
T3 撒布用ダクト
T31 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性固体を空気流によって搬送する装置であって、
ブロワと、ブロワを作動させる原動機と、ブロワと原動機の間に設けられているクラッチ機構と、前記ブロワ、原動機及びクラッチ機構を積載する台車と、を備えており、
前記ブロワは、
吸入ダクトと排出ダクトを備えているケーシングと、
該ケーシング内に設けられたファンと、
前記ケーシング外部へ延設されたファンの回転軸と、
該回転軸に取着されたプーリーと、
前記ケーシングに設けられた吸入ダクト及び排出ダクトと、
を備えており、
前記原動機の原動軸にはプーリーが設けてあり、
前記クラッチ機構は、
前記ファンの回転軸及び原動機に取着されたプーリーを伝導ベルトにより駆動可能に設けられたものであって、テンションプーリーを備えたテンションクラッチであり、
ブロワの回転軸が、プーリーとブロワの間に設けられた2以上の軸受により支持されている、
流動性固体の搬送装置。
【請求項2】
ケーシングが備えている吸入ダクト及び排出ダクトの一方又は双方は、位置を変えることができるよう構成されている、
請求項1記載の流動性固体の搬送装置。
【請求項3】
ケーシングは、正面及び背面に設けられた封鎖板と、該封鎖板に対して円周方向へ回動可能に形成された周壁を備え、
いずれか一方の封鎖板と周壁にはダクトが形成されており、ダクトのうちいずれか一方は吸入ダクトであり、他方は排出ダクトである、
請求項2記載の流動性固体の搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3記載のいずれかの流動性固体の搬送装置と、破砕機と、搬出手段または/および貯蔵手段と、前記各機材を繋ぐチューブと、を備えた、
破砕物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−125739(P2012−125739A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281749(P2010−281749)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(501346858)
【Fターム(参考)】