説明

流動物散布装置

【課題】供給遅れを無くして流動物を適切に供給できる流動物散布装置を提供する。
【解決手段】繰出部を有する散布装置本体42と、案内部材41と、散布装置本体42を往復移動させる駆動機構43と、散布装置本体42の往復移動操作を繰出部に伝達して該繰出部を駆動する駆動伝達部とを備える。一方のストロークエンドに位置する散布装置本体42が他方のストロークエンドに移動する際に、散布装置本体42が他方のストロークエンド側に第1所定距離D1だけ移動し、次に、一方のストロークエンド側に第2所定距離D2だけ移動して、他方のストロークエンドに移動するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動物を貯留するホッパと該ホッパの流動物を繰り出して散布する繰出部とを有する散布装置本体と、前記散布装置本体を所定のストロークで往復移動可能に案内支持する案内部材と、前記散布装置本体を前記所定のストロークの範囲で往復移動させる駆動機構と、を備えた流動物散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる流動物散布装置として、例えば、特許文献1に開示されているように、田植機の苗植付装置に設けられるものがある。特許文献1の構成によると、例えば、図24に示すように、駆動機構43の駆動によって、苗載せ台の上方に設けられた散布装置本体42を所定のストロークの範囲で往復移動させる。このとき、駆動伝達部55が散布装置本体42の往復移動操作を繰出部46に伝達して繰出部46を駆動する。これにより、繰出部46がホッパ48の流動物(薬剤)を繰り出して散布する。散布装置本体42がストロークエンドに到達したときには、流動物の散布及び散布装置本体42の移動を一時的に停止する。このようにして、苗載せ台に載置されたマット状苗に流動物を散布する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−296344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
散布装置本体42がストロークエンドに到達したときに、流動物の散布及び散布装置本体42の移動を一時的に停止した後、再び流動物の散布及び散布装置本体42の移動を開始する一連の動作について、図24に基づいて説明する。
【0005】
図24(a)に示すように、駆動機構43の駆動によって散布装置本体42を一方のストロークエンド側(図24の紙面右方)に移動させ、繰出部46がホッパ48の流動物を繰出口49から散布する。繰出口49から散布された流動物はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下する。図24(b)に示すように、散布装置本体42が一方のストロークエンドに到達したときに、駆動機構43の駆動を停止する。これにより、流動物の散布及び散布装置本体42の移動を停止する。
【0006】
図24(c)に示すように、駆動機構43の駆動によって、散布装置本体42を他方のストロークエンド側(図24の紙面左方)に移動させ始めると、繰出部46がホッパ48の流動物を繰出口49から散布し始める。このとき、繰出口49から散布された流動物はノズル50を通過している途中であることがあり、流動物はノズル50の開口50aから落下していないことがある。このような状態になると、図24(d)に示すように、散布装置本体42が他方のストロークエンド側に移動を開始してから少し時間が経過した後に、繰出口49から散布された流動物はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下するような状態になることがある。
【0007】
これにより、図24(c)、図24(d)に示すように、散布装置本体42が移動すると同時に流動物がノズル50の開口50aから落下しないことがある。このため、散布装置本体42の始動位置付近に流動物の未散布領域d1が生じることがあるので、この点において改善の余地があった。
【0008】
本発明の目的は、流動物の供給遅れを無くして流動物を適切に供給できる流動物散布装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の流動物散布装置の第1特徴構成は、流動物を貯留するホッパと該ホッパの流動物を繰り出して散布する繰出部とを有する散布装置本体と、前記散布装置本体を所定のストロークで往復移動可能に案内支持する案内部材と、前記散布装置本体を前記所定のストロークの範囲で往復移動させる駆動機構と、前記散布装置本体の往復移動操作を前記繰出部に伝達して該繰出部を駆動する駆動伝達部と、一方のストロークエンドに位置する前記散布装置本体が他方のストロークエンドに移動する際に、前記散布装置本体が一方のストロークエンドから他方のストロークエンド側に第1所定距離だけ移動し、次に、前記散布装置本体が一方のストロークエンド側に第1所定距離とほぼ同じ又は第1所定距離よりも短い第2所定距離だけ移動し、その後、前記散布装置本体が他方のストロークエンドに移動するように、前記駆動機構を駆動させる制御手段と、を備えた点にある。
【0010】
本構成によれば、散布装置本体が一方のストロークエンドに到達したときに、駆動機構の駆動を停止する。これにより、流動物の散布及び散布装置本体の移動を停止する。駆動機構の駆動によって散布装置本体を他方のストロークエンド側に第1所定距離だけ移動させる。このとき、散布装置本体が一方のストロークエンドから移動し始めると同時に繰出部が駆動され始める。しかしながら、繰出部が駆動されるタイミングと実際に繰出部から流動物が落下するタイミングとには、〔発明が解決しようとする課題〕に記載のように、ずれ(タイムラグ)がある。
【0011】
次に、駆動機構の駆動によって散布装置本体を一方のストロークエンド側に第2所定距離だけ移動させる。このとき、繰出部から流動物が落下してマット状苗等の供給対象箇所に到達し始める可能性が高い。その後、駆動機構の駆動によって散布装置本体を他方のストロークエンドに移動させる。
【0012】
このように、散布装置本体を一方のストロークエンドから移動させ始める場合、散布装置本体を、一方のストロークエンドから他方のストロークエンド側に第1所定距離だけ移動させ、次に、散布装置本体を、一方のストロークエンド側に第2所定距離だけ移動させることにより、流動物が供給対象物に到達してから、散布装置本体を他方のストロークエンドに移動させることができて、散布装置本体の始動位置付近に流動物の未散布領域が生じることを少なくする等、流動物を適切に供給できる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記ホッパの下部に前記繰出部とは別に流動物を排出する排出口を形成し、前記排出口に着脱可能な又は伸縮可能な排出部材を設けてある点にある。
【0014】
流動物の散布作業終了後において、ホッパの下部に形成された排出口から流動物を排出し、排出された流動物を回収容器に受けて回収する。このとき、排出口付近にフレーム等がある場合には、回収容器を排出口に近づけようとするときに、フレーム等が回収容器に当たる等して回収容器を排出口に近づけ難いことがあり、排出口から排出された流動物が回収容器からこぼれ易い等、排出口から排出される流動物を回収し難いことがある。また、回収容器を排出口に近づけるために回収容器を持ち上げることがあり、流動物を回収する間、作業者が回収容器を持ち上げた状態を維持する等、作業者の回収作業の負担が大きくなることがある。
【0015】
そこで、本構成の如く、排出口に着脱可能な又は伸縮可能な排出部材を設ける。これにより、排出口付近にフレーム等がある場合でも、排出部材を装着又は伸長して排出部材の先端を回収容器に近づけることにより、流動物が回収容器からこぼれ難い等、排出口から排出される流動物を良好に回収することができる。また、排出部材の先端を回収容器に近づけることができるので、回収容器を持ち上げる必要が無く、作業者の回収作業の負担の軽減を図ることができる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、前記繰出部からの流動物を受け止める計量容器を、前記散布装置本体の受け部分に着脱可能に構成し、前記計量容器を、前記散布装置本体における前記受け部分から離れた格納部分又は前記案内部材に着脱可能に構成してある点にある。
【0017】
散布装置本体の受け部分に計量容器を装着し、散布装置本体を往復移動させて、計量容器に流動物を回収することにより、繰出部から実際に繰り出される流動物の量を計量することができる。流動物の計量作業終了後に、散布装置本体の格納部分又は案内部材に計量容器を装着する。このように、流動物の計量作業終了後に、散布装置本体の格納部分又は案内部材に計量容器を装着しておくことで、計量容器を紛失することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】乗用型田植機を示す全体側面図である。
【図2】苗植付け装置と苗載せ面用薬剤散布装置とを示す側面図である。
【図3】苗植付け装置の概略平面図である。
【図4】苗載せ面用薬剤散布装置を示す後面図である。
【図5】苗載せ台と散布装置本体とを示す側面図である。
【図6】散布装置本体を往復移動させる駆動機構を示す後面図である。
【図7】散布装置本体の繰出部を示す縦断側面図である。
【図8】散布装置本体の繰出部を示す縦断正面図である。
【図9】ホッパと計量カップを示す縦断側面図である。
【図10】圃場用薬剤散布装置を示す断面側面図である。
【図11】圃場用薬剤散布装置による薬剤の散布を示す図である。
【図12】駆動機構のモータ配設部を示す断面図である。
【図13】位置検出手段を示す正面図である。
【図14】縦送り検出手段を示す正面図である。
【図15】縦送り検出手段を示す側面図である。
【図16】制御部のブロック図である。
【図17】散布制御のフロー図である。
【図18】右向き散布制御のフロー図である。
【図19】左向き散布制御のフロー図である。
【図20】散布装置本体の動作を示す図である。
【図21】別実施形態における流動物散布装置を示す側面図である。
【図22】別実施形態における流動物散布装置を示す正面図である。
【図23】別実施形態における流動物散布装置を示す側面図である。
【図24】特許文献1における流動物散布装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る流動物散布装置を乗用型田植機に適用した場合について説明する。
【0020】
〔全体構成〕
図1は、本発明の実施例に係る流動物散布装置としての苗載せ面用薬剤散布装置1が装備された乗用型田植機の全体側面図である。この図に示すように、乗用型田植機は、左右一対の操向操作及び駆動可能な前車輪2と左右一対の駆動可能な後車輪3とによって自走する自走車と、この自走車の車体フレーム4の後部にリンク機構5を介して連結された苗植付装置6とを備えて構成してある。
【0021】
前記苗植付装置6には、苗載せ面用薬剤散布装置1及び圃場用薬剤散布装置91が装備されている。この乗用型田植機は、除草用の薬剤を圃場に散布しながら、流動物としての消毒用の薬剤が供給された稲苗を圃場に植え付ける田植え作業を行う。
【0022】
すなわち、前記自走車は、前記左右一対の前車輪2と前記左右一対の後車輪3とを備え、前記車体フレーム4の前部に設けたエンジン7が装備された原動部と、前記車体フレーム4の後部に設けた運転座席8が装備された運転部13と、前記原動部の両横側に設けた予備苗貯留装置9とを備えている。この自走車は、前部のミッションケース10から前記苗植付装置6のフィードケース20に延出された回転軸11を備えており、この回転軸11によって前記エンジン7の出力を前記苗植付装置6に伝達する。
【0023】
〔苗植付装置〕
図1に示すように、前記苗植付装置6は、前記リンク機構5が油圧シリンダ12によって車体フレーム4に対して上下に揺動操作されることにより、苗植付装置6の下部に苗植付装置6の左右方向に並んで位置する三つの接地フロート21が圃場面に接地した下降作業状態と、前記接地フロート21が圃場面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降する。
【0024】
図1〜図5に示すように、前記苗植付装置6を下降作業状態に下降させて自走車を走行させると、苗載せ台22の苗植付装置6の左右方向に並ぶ六つの苗載置部22aに載置されたマット状苗Aに対して、薬剤が前記苗載せ面用薬剤散布装置1から供給され、苗植付装置6の後部に苗植付装置6の左右方向に並んで位置する六つの苗植付機構23によって、薬剤供給済みの苗が圃場面の前記接地フロート21による整地後に植え付けられる。
【0025】
前記苗植付装置6について詳述する。図2は、前記苗植付装置6の側面図である。図3は、前記苗植付装置6の概略平面図である。これらの図に示すように、苗植付装置6の左右方向に沿った鋼管材で成るメインフレーム16には、苗植付装置6の左右方向に並べて連結された三つの植付駆動ケース25が設けられている。
【0026】
(苗植付機構)
図1〜図3に示すように、前記各植付駆動ケース25の後端部の左右側に一つの苗植付機構23が駆動可能に支持されている。
【0027】
各苗植付機構23は、一対の苗植付爪23aを備えている。各苗植付機構23は、前記フィードケース20から前記植付駆動ケース25を介して伝達された駆動力によって駆動され、各苗植付爪23aの先端側が苗載せ台22の下端側に位置する苗取出口26と圃場面との間を、回動軌跡を描きながら上下に往復移動し、一対の苗植付爪23aによって交互に苗載せ台22の対応する苗載置部22aに載置されたマット状苗Aの下端部から一株分の苗を切断して取り出し、取り出した苗を圃場面に植え付けるよう苗植え運動する。
【0028】
(苗載せ台)
図2,図3に示すように、前記苗載せ台22は、前記フィードケース20に駆動回動可能に設けた苗横送り軸27aが装備された横送り機構27によって前記各苗植付機構23の苗植え運動に連動させて、横送りガイドレール28に沿わせて機体左右方向に往復移送される。
【0029】
すなわち、苗載せ台22は、各苗植付機構23が苗載せ台22のマット状苗Aの下端部から、これの横一端側から他端側に向けて順次に苗を取り出していくよう、各苗載置部22aのマット状苗Aを苗取出口26に対して機体左右方向に移送する。図4に示すように、前記苗取出口26は、前記横送りガイドレール28に設けた切欠孔によって形成されている。
【0030】
(苗縦送りベルト)
図1〜図3に示すように、前記苗載せ台22は、前記各苗載置部22aに一つずつ設けた苗縦送りベルト30を備えている。各苗縦送りベルト30の苗載せ台下端側が一本のベルト駆動軸31に巻回されている。前記ベルト駆動軸31は、苗載せ台22が左右の横移送ストロークエンドに到達する都度、前記フィードケース20に駆動可能に設けた苗縦送り軸32aが装備された苗縦送り機構32によって回転駆動され、各苗縦送りベルト30を回転駆動する。
【0031】
すなわち、各苗載置部22aの苗縦送りベルト30は、苗載せ台22が左右の横移送ストロークエンドに到達する都度、苗縦送り方向に設定ストロークだけ駆動され、対応する苗載置部22aに位置するマット状苗Aを、苗植付機構23による苗縦方向での苗取出量に相当した長さだけ前記苗取出口26に向けて縦送りする。
【0032】
〔苗載せ面用薬剤散布装置〕
前記苗載せ面用薬剤散布装置1について詳述する。図2は、前記苗載せ面用薬剤散布装置1の側面図である。図4は、前記苗載せ面用薬剤散布装置1の後面図である。図1、図2、図4〜図8に示すように、前記苗載せ面用薬剤散布装置1は、前記苗載せ台22に左右一対の支柱40を介して支持された案内部材としてのガイドレール41と、このガイドレール41に支持された散布装置本体42と、前記ガイドレール41の一端部に設けられた駆動機構43と、散布装置本体42と駆動機構43との間に設けられた駆動伝達部としてのロール駆動スプロケット55と、を備えて構成してある。
【0033】
(散布装置本体)
前記散布装置本体42は、繰出ケース47の上部に連結されて消毒用の薬剤を貯留可能なホッパ48と、ホッパの薬剤を繰り出して散布する繰出部46と、前記繰出ケース47の下部に接続されたホースで成るノズル50とを備えて構成してある。
【0034】
図7,図8に示すように、前記散布装置本体42は、前記繰出ケース47の後部に設けた取付部51で前記ガイドレール41に摺動可能に支持されており、繰出部46とホッパ48とノズル50とが、一体となって苗載せ台22の左右方向に移動するようガイドレール41に沿って移動する。
【0035】
前記散布装置本体42は、前記ガイドレール41の上辺部41aの上向きカイド面で転動するよう前記取付部51に設けた樹脂製のコロ52と、前記ガイドレール41の縦辺部41bの後向きガイド面に摺接するよう前記取付部51に設けた樹脂製のスライド部材53と、前記ガイドレール41の下辺部41cの前向きガイド面に摺接するよう前記取付部51に設けた樹脂製のスライド部材53との作用により、ガイドレール41との摩擦が少ない状態で移動する。
【0036】
前記繰出部46は、前記繰出ケース47と、この繰出ケース47の内部に回転可能に設けた繰出ロール54とを備えている。
【0037】
図5,図7に示すように、前記ノズル50は、その上端側が繰出ケース47の下部に連設された円筒形の繰出口49に接続されている。
【0038】
前記ノズル50は、前記繰出口49から流入した薬剤をノズル下端の開口50aから、マット状苗Aの苗植付機構23による取出苗が位置する下端部よりも苗載せ台上端側に位置する部位で、かつ苗押え杆61による苗葉押さえによって苗葉間に形成された隙間に落下させてマット状苗Aの床土部に供給する。ノズル50は、前記繰出口49からノズル内に延出された板金製の芯材62によって所定のノズル形状に保形されている。
【0039】
(ロール駆動スプロケット)
図5〜図8に示すように、前記ロール駆動スプロケット55は、繰出ケース47の外部に回転可能に設けてある。
【0040】
前記ロール駆動スプロケット55の回転支軸56の端部に一体回転可能に設けたギヤ57と、前記繰出ロール54の一端側に一体回転可能に設けた内歯ギヤ58とが噛み合っている。
【0041】
これにより、ロール駆動スプロケット55は、回転操作されると、回転支軸56を介して繰出ロール54を駆動する。すると、繰出ロール54は、前記ホッパ48の底孔48aから繰出ロール54の上側に流下した粒状の薬剤を、繰出ロール54の周面に繰り出しロール回転方向に並んで位置する繰出凹部54aによって繰出ロール54の下方に搬送して落下させる。繰出ロール54から落下した薬剤は、前記繰出口49から前記ノズル50に流入する。
【0042】
図8に示すように、ロール駆動スプロケット55が回転操作されることにより繰出ロール54が回転駆動され、ホッパ48に貯留されている薬剤が、繰出ロール54の繰出凹部54aに入り込み、ブラシ63で摺りきられて、ホッパ48からノズル50に繰り出され、このノズル50によって苗載せ台22のマット状苗Aの床土部に落下させて供給するよう散布作動する。
【0043】
前記繰出部46は、繰出ケース47に回転操作可能に支持された調節ダイヤル59を備えている。この調節ダイヤル59の端部59aが、繰出ロール54を回転可能に支持する支軸60のネジ軸部60aに螺合し、かつ、繰出ロール54の一対の構成体54bの一方に係合している。これにより、調節ダイヤル59を回転操作することにより、調節ダイヤル59と一緒に構成体54bを支軸60に沿って移動操作し、前記各繰出凹部54aの容量を増減調節して繰出ロール54による繰り出し量を増減調節する。
【0044】
(駆動機構)
図6は、前記駆動機構43の後面図である。図12は、前記駆動機構43の断面図である。これらの図に示すように、前記駆動機構43は、電動モータM1を備える他、この電動モータM1の出力軸65に一体回転可能に設けた駆動スプロケット66と、この駆動スプロケット66と前記ガイドレール41の前記電動モータM1が位置する側とは反対側の端部に遊転可能に設けた遊動スプロケット67と、駆動スプロケット66および遊動スプロケット67に巻回された無端チェーン68と、を備えて構成してある。
【0045】
図6,図7に示すように、前記無端チェーン68には、前記繰出ケース47に設けた一対の移送アーム69が連結されている。これにより、無端チェーン68と散布装置本体42とが一体で移動可能に構成されている。
【0046】
前記駆動機構43は、電動モータM1によって駆動スプロケット66を介して無端チェーン68を駆動し、この無端チェーン68によって散布装置本体42をガイドレール41に沿わせて苗載せ台22の左右方向に移動させる。駆動機構43は、電動モータM1が正回転方向に駆動されることにより、散布装置本体42を苗載せ台22の左右方向での他方から一方に移送操作し、電動モータM1が逆回転方向に駆動されることにより、散布装置本体42を苗載せ台22の左右方向での一方から他方に移送操作する。
【0047】
前記無端チェーン68は、散布装置本体42を移送操作すると同時に、散布装置本体42の往復移動操作を繰出部46に伝達して繰出部46の繰出ロール54を駆動し、散布装置本体42を散布作動するように構成してある。
【0048】
散布装置本体42を他方から一方に移送操作するときを例に挙げて説明する。図7,図8に示すように、無端チェーン68の上側部分に移送アーム69が連結されると共に、無端チェーン68の下側部分にロール駆動スプロケット55が係合されている。これにより、電動モータM1が正回転方向に駆動されることにより、無端チェーン68の上側部分が他方から一方へ移動し、散布装置本体42を他方から一方に移送操作する。無端チェーン68の下側部分が一方から他方へ移動し、ロール駆動スプロケット55を回転操作して、繰出部46の繰出ロール54を駆動し、散布装置本体42を散布作動する。
【0049】
〔圃場用薬剤散布装置〕
図10,図11に示すように、圃場用薬剤散布装置91は、除草用の薬剤を貯留するホッパ92と、貯留した薬剤を所定量ずつ繰出供給する供給機構93と、繰出供給された薬剤を植付け幅に相当する横幅で植付け跡に拡散散布する拡散機構94と、供給機構93および拡散機構94を内装する散布ケース95とを備えて構成されている。
【0050】
前記圃場用薬剤散布装置91の散布ケース95が、図1に示すように苗植付装置5の植付駆動ケース25に支持される圃場用薬剤散布装置支持部96を介して連結支持されている。前記ホッパ92は、中央後方箇所に下向きに開口した単一の流下筒92aが形成されている。そして、このホッパ92全体が、散布ケース95の上部中央部位に連設された筒部95aの上端に脱着可能に外嵌されて、この筒部95aに備えた左右のバックル(図示せず)で止着されている。
【0051】
前記散布ケース95における筒部95aの内部には、上向きに開口した内ケース部95bが設けられており、この内ケース部95bの内部に前記供給機構93が装備されている。
【0052】
(供給機構)
前記供給機構93は、目皿97や目皿駆動機構98等で構成されており、流下筒92aの下端に形成された薬剤流下口aから薬剤を目皿97によって定量ずつ繰出供給して拡散機構94に供給するものである。
【0053】
前記目皿97は、平面形状が扇形の厚肉樹脂材で形成されており、この目皿97がホッパ92に縦軸芯X周りに揺動可能に支持されている。この目皿97の外周両端部近くには、上下に貫通する一対の繰出孔bが形成されており、目皿97が縦軸心周りに水平に往復揺動することで、各繰出孔bが薬剤流下口aに臨む薬剤受け入れ位置と、薬剤流下口aから外れた位置との間で移動する。そして、前記目皿97は、電動モータM2(ステッピングモータ)を備えた目皿駆動機構98によって往復揺動駆動されるようになっている。
【0054】
前記内ケース部95bにおける底面の後方箇所には左右一対のロート状の流下案内部95cが形成されるとともに、その入口部位には、バネ板材からなる遮蔽板102が水平片持ち状にネジ止め固定されている。
【0055】
この遮蔽板102は目皿97の下面に弾性押圧されており、これによって目皿97の上面が流下筒92aの下端に密着されるとともに、目皿97の下面に遮蔽板102が密着されて摺動するようになっている。そして、薬剤流下口aに臨む薬剤受け入れ位置に繰出孔bが位置する状態では繰出孔bの下方が遮蔽板102にて閉塞され、薬剤流下口aから外れた位置に繰出孔bが位置する状態では繰出孔bの下方が開放されるように構成されている。
【0056】
尚、薬剤流下口aに臨む薬剤受入位置に繰出孔bが位置する状態では薬剤流下口aが繰出孔bと連通し、薬剤流下口aから外れた位置に繰出孔bが位置する状態では薬剤流下口aが目皿97にて閉塞される。
【0057】
また、流下筒92aにおける下端部の左右には、目皿97の上面に作用するブラシ99が配備され、繰出孔bに供給充填された薬剤をブラシ99で摺りきって定量ずつの繰出しを行うよう構成されている。
【0058】
従って、目皿駆動機構98によって目皿97が往復揺動駆動されて繰出孔bが薬剤流下口aに臨む位置と薬剤流下口aから外れた位置とに位置変更し、繰出孔bが薬剤流下口aに臨む位置にある時、繰出孔bは下方から遮蔽板102で閉塞されるので、ホッパ92内の薬剤が薬剤流下口aから繰出孔bに流入し、繰出孔bが薬剤流下口aから外れる位置に移動すると繰出孔bが遮蔽板102から外れて下方に開放されることで、繰出孔b内の薬剤が流下案内部95cに落下排出されるのである。
【0059】
(拡散機構)
前記拡散機構94は、拡散羽根100や電動モータM3等で構成されており、供給機構93にて繰り出された薬剤を拡散するように構成されている。つまり、前記散布ケース95の内部には下方および後方に向けて開口された拡散室101が形成されるとともに、この拡散室101と前記流下案内部95c内とが連通されており、目皿97で繰出されて流下案内部95cに排出された薬剤が拡散室101に落下供給され、その拡散室101に落下供給された薬剤を電動モータM3にて回転駆動された拡散羽根100にて拡散させて圃場に散布する。
【0060】
〔制御部〕
図16に示すように、制御部45は、縦送り検出手段44と、左端検出手段70と、右端検出手段72と、位置検出手段75と、散布タイミング検出手段88と、株間検出手段111と、第1操作手段113と、第2操作手段115と、それら各検出手段44,70,72,75,88,111及び各操作手段113,115の検出情報に基づいて電動モータM1、電動モータM2の駆動制御および第1表示手段117、第2表示手段119の表示制御を行う制御手段79と、を備えている。
【0061】
(縦送り検出手段)
図14,図15に示すように、縦送り検出手段44は、一対の縦送り検出スイッチ44aを備える他、一つのスイッチ操作体80を備えて構成してある。
【0062】
前記一対の縦送り検出スイッチ44aは、苗載せ台22の横端部に設けたブラケット81に苗載せ台左右方向に並べて支持されている。スイッチ操作体80は、ベルト駆動軸31の端部に一体回転可能に支持されており、苗載せ台22が左右の横送りストロークエンドに到達して苗縦送りベルト30が駆動されるに伴ってベルト駆動軸31によって回転駆動される。
【0063】
すると、スイッチ操作体80の回転軸芯方向に位置ずれさせて設けてある一対の操作部80aの一方が、一対の縦送り検出スイッチ44aの一方の切り換え部に押圧作用してこの縦送り検出スイッチ44aがオンに切り換わるか、一対の操作部80aの他方が一対の縦送り検出スイッチ44aの他方の切り換え部に押圧作用してこの縦送り検出スイッチ44aがオンに切り換わる。
【0064】
つまり、苗載せ台22が左側の横送りスロトークエンドに到達して苗縦送りベルト30が駆動されると、一方の縦送り検出スイッチ44aがオンに切り換わり、苗載せ台22が右側の横送りストロークエンドに到達して苗縦送りベルト30が駆動されると、他方の縦送り検出スイッチ44aがオンに切り換わる。
【0065】
これにより、縦送り検出手段44は、一対の縦送り検出スイッチ44aのいずれか一方がオンに切り換わることにより、苗載せ台22での苗縦送りが行われたと検出し、この検出結果を制御手段79に出力する。
【0066】
(左端検出手段)
図12に示すように、左端検出手段70は、散布装置本体42が左側のストロークエンドに位置していることを検出するものであって、左端検出スイッチ71を備える他、無端チェーン68に支持させた検出対象片74aを備えて構成してある。
【0067】
前記左端検出スイッチ71は、ガイドレール41に電動モータM1を支持するよう設けたモータ支持体82に固定されている。散布装置本体42が左側のストロークエンドに位置すると、検出対象片74aが左端検出スイッチ71の切り換え部に接触し、左端検出スイッチ71がオンに切り換わる。
これにより、左端検出手段70は、左端検出スイッチ71がオンになることにより、ノズル50が左側のストロークエンドに位置していると検出し、この検出結果を制御手段79に出力する。
【0068】
(右端検出手段)
図12に示すように、右端検出手段72は、散布装置本体42が右側のストロークエンドに位置していることを検出するものであって、右端検出スイッチ73を備える他、無端チェーン68に支持させた検出対象片74bを備えて構成してある。
【0069】
前記右端検出スイッチ73は、モータ支持体82に固定されている。散布装置本体42が右側のストロークエンドに位置すると、検出対象片74bが右端検出スイッチ73の切り換え部に接触し、右端検出スイッチ73がオンに切り換わる。
これにより、右端検出手段72は、右端検出スイッチ73がオンになることにより、ノズル50が右側のストロークエンドに位置していると検出し、この検出結果を制御手段79に出力する。
【0070】
(位置検出手段)
図12,図13に示すように、位置検出手段75は、第1近接センサ76を備える他、周縁部に突部77aが回転方向に並んでいる回転体77を備えて構成してある。
【0071】
前記回転体77は、駆動スプロケット66に一体回転可能に支持されている。第1近接センサ76は、回転体77の周縁部に対向した配置でモータ支持体82に固定されている。駆動スプロケット66が駆動されて無端チェーン68を回動操作するに伴って回転体77が駆動スプロケット66と共に回転し、第1近接センサ76は、回転体77の回転に伴い、この回転体77の突部77aを間欠的に検出することによってパルス信号を発生する。
【0072】
これにより、位置検出手段75は、第1近接センサ76と回転体77とによって駆動スプロケット66の回転数を検出してこの検出結果を制御手段79に出力する。このとき、演算手段87は、検出回転数と、左端検出手段70の検出結果と、右端検出手段73の検出結果とに基づいて、ノズル50が左側のストロークエンドから右側のストロークエンドに向けて移送された際の位置と、ノズル50が右側のストロークエンドから左側のストロークエンドに向けて移送された際の位置とを演算する。
【0073】
(株間検出手段および散布タイミング検出手段)
図1および図16に示すように、エンジン7と苗植付装置6との間には、乗用型田植機の走行速度と苗植付装置6の植付速度(株間)との比率を調整する株間変速装置86が介装されている。株間変速装置86には、株間を所定の株間に切り換える株間切換レバー85が設けられている。株間検出手段111は、その株間切換レバー85の位置(株間)を検出する株間検出センサ112を備えている。これにより、株間検出手段111は、株間切換レバー85の位置を検出し、この検出結果を制御手段79に出力する。
【0074】
図3,図16に示すように、散布タイミング検出手段88は、第2近接センサ89を備える他、苗縦送り軸32aから放射状に延びる4つのスポーク部83と、各スポーク部83の夫々の端部に取り付けられた被検出部84と、を備えて構成してある。苗縦送り軸32aが駆動されるに伴って被検出部84が回転する。第2近接センサ89は被検出部84を間欠的に検出してパルス信号を発生する。具体的には、第2近接センサ89は苗縦送り軸32aの1回転につき4つのパルス信号を発生する。尚、苗縦送り軸32aの回転数(パルス数)は、株間変速装置86の変速動力(株間)に同調しているので、苗縦送り軸32aの回転数から株間を判断できることになる。これにより、散布タイミング検出手段88は、苗縦送り軸32aの回転数を検出し、この検出結果を制御手段79に出力する。
【0075】
このとき、制御手段79は、株間が例えば16cmのときには、苗縦送り軸32aが比較的高速で回転するので、2つのパルス信号、つまり、苗縦送り軸32aの2分の1回転を検出すると目皿駆動機構98を駆動して目皿97を往復揺動させる。目皿97の往復揺動によって繰出孔bに充填された1回分の薬剤が流下案内部95cに落下し、拡散羽根100の回転駆動によって落下した薬剤が圃場に散布される。
【0076】
また、制御手段79は、株間が例えば28cmのときには、苗縦送り軸32aが比較的低速で回転するので、1つのパルス信号、つまり、苗縦送り軸32aの4分の1回転を検出すると目皿駆動機構98を駆動して目皿97を往復揺動させる。目皿97の往復揺動によって繰出孔bに充填された1回分の薬剤が流下案内部95cに落下し、拡散羽根100の回転駆動によって落下した薬剤が圃場に散布される。
【0077】
従来構成では、2本のスポーク部83を備えるものであった。このため、株間が例えば16cmのときには、苗縦送り軸32aの1回転を検出すると薬剤を散布し、株間が例えば28cmのときには、苗縦送り軸32aの2分の1回転を検出すると薬剤を散布するように構成されていた。このとき、散布間隔が広いために散布に縞状の濃淡が生じる虞がある。これに対し、本構成では、株間が例えば16cmのときには、苗縦送り軸32aの2分の1回転を検出すると薬剤を散布し、株間が例えば28cmのときには、苗縦送り軸32aの4分の1回転を検出すると薬剤を散布する。これにより、株間の大小に拘わらず、1回分の薬剤の量を少なくし、散布間隔を狭くして、薬剤を均一に散布することができる。
尚、散布間隔とは、薬剤を散布してから次に薬剤を散布するまでの間に乗用型田植機が進む距離のことであり、薬剤が散布されない領域の間隔である。
【0078】
(各操作手段および各表示手段)
図16に示すように、第1操作手段113は、押しボタン式の第1作動スイッチ114を備えて構成してある。第2操作手段115は、押しボタン式の第2作動スイッチ116を備えて構成してある。第1表示手段117は、第1表示ランプ118を備えて構成してある。第2表示手段119は、第2表示ランプ120を備えて構成してある。第1作動スイッチ114、第2作動スイッチ116、第1表示ランプ118、第2表示ランプ120は、運転部13の操作パネル13aに設けられている。
【0079】
作業者が苗載せ面用薬剤散布装置1の駆動を停止した状態で第1作動スイッチ114を押し操作すると、制御手段79は、苗載せ面用薬剤散布装置1の駆動を開始するとともに第1表示ランプ118を点灯して、苗載せ面用薬剤散布装置1の作動状態を表示する。作業者が苗載せ面用薬剤散布装置1の駆動した状態で第1作動スイッチ114を押し操作すると、制御手段79は、苗載せ面用薬剤散布装置1の駆動を停止するとともに第1表示ランプ118を消灯して、苗載せ面用薬剤散布装置1の非作動状態を表示する。
【0080】
作業者が圃場用薬剤散布装置91の駆動を停止した状態で第2作動スイッチ116を押し操作すると、制御手段79は、圃場用薬剤散布装置91の駆動を開始するとともに第2表示ランプ120を点灯して、圃場用薬剤散布装置91の作動状態を表示する。作業者が圃場用薬剤散布装置91の駆動した状態で第2作動スイッチ116を押し操作すると、制御手段79は、圃場用薬剤散布装置91の駆動を停止するとともに第2表示ランプ120を消灯して、圃場用薬剤散布装置91の非作動状態を表示する。
【0081】
これら作動スイッチ114,116が薬剤散布装置1,91の側に設けられていると、これら薬剤散布装置1,91の駆動を開始したり駆動を停止する度に、これら薬剤散布装置1,91が設けられた乗用型田植機の後側に回ってこれら作動スイッチ114,116を押し操作しなければならない。しかも、運転部からはこれら薬剤散布装置1,91の作動状態が判り難いため、これら薬剤散布装置1,91の駆動を停止し忘れることがある。
【0082】
本構成によれば、第1作動スイッチ114、第2作動スイッチ116、第1表示ランプ118、第2表示ランプ120は、運転部13の操作パネル13aに設けられているので、作業者は運転部13から移動することなくこれら薬剤散布装置1,91の駆動を開始したり駆動を停止することができる。しかも、作業者は、それら表示ランプ118,120の表示によりこれら薬剤散布装置1,91の作動状態・非作動状態を確認できるので、これら薬剤散布装置1,91の駆動を停止し忘れることを防止できる。
【0083】
〔苗載せ面に薬剤を散布する制御〕
前記制御手段79は、マイクロコンピュータを利用して構成してある。図17は、散布制御のフロー図である。図18は、右向き散布制御のフロー図である。図19は、左向き散布制御のフロー図である。
【0084】
図17に示すように、制御手段79は、縦送り検出手段44による検出情報に基づいて苗縦送りが行われたか否かを判断し、苗縦送りが行われたと判断すると、左端検出手段70が検出状態にあるか、あるいは右端検出手段72が検出状態にあるかを判断する。制御手段79は、苗縦送りが行われたと判断し、かつ左端検出手段70が検出状態にあると判断した場合、右向き散布制御を行う。制御手段79は、苗縦送りが行われたと判断し、かつ右端検出手段72が検出状態にあると判断した場合、左向き散布制御を行う。
【0085】
(右向き散布制御)
図4、図18に示すように、制御手段79は、左側のストロークエンドに位置する散布装置本体42が右側のストロークエンドに移動する際に、散布装置本体42が左側のストロークエンドから右側のストロークエンド側に第1所定距離D1だけ移動し、次に、散布装置本体42が左側のストロークエンド側に第2所定距離D2だけ移動し、その後、散布装置本体42が右側のストロークエンドに移動するように、駆動機構43を駆動させるように構成してある。
【0086】
具体的には、制御手段79は、始動位置RS(左側のストロークエンド)と第1折返位置P1と第2折返位置P2と停止位置ST(右側のストロークエンド)とを設定すると、電動モータM1を正回転方向に駆動する。
【0087】
前記制御手段79は、演算手段87の演算結果に基づいてノズル50が左側のストロークエンドから右側のストロークエンド側に第1所定距離D1だけ離れた第1折返位置P1に至ったか否かを判断し、ノズル50が第1折返位置P1に至ったと判断するまで、電動モータM1を正回転方向に駆動する。
【0088】
前記制御手段79は、ノズル50が第1折返位置P1に至ったと判断すると、電動モータM1を逆回転方向に駆動する。制御手段79は、演算手段87の演算結果に基づいてノズル50が第1折返位置P1から左側のストロークエンド側に第2所定距離D2だけ離れた第2折返位置P2に至ったか否かを判断し、ノズル50が第2折返位置P2に至ったと判断するまで、電動モータM2を逆回転方向に駆動する。
【0089】
前記制御手段79は、ノズル50が第2折返位置P2に至ったと判断すると、電動モータM1を正回転方向に駆動する。制御手段79は、右端検出手段72の検出情報に基づいてノズル50が停止位置STに至ったか否かを判断し、停止位置STに至ったと判断するまで、電動モータM1を正回転方向に駆動する。
【0090】
前記制御手段79は、右端検出手段72の検出情報に基づいてノズル50が停止位置STに至ったと判断すると、ノズル50が停止位置STに停止するよう電動モータMを停止操作する。
【0091】
(左向き散布制御)
図4、図19に示すように、制御手段79は、右側のストロークエンドに位置する散布装置本体42が左側のストロークエンドに移動する際に、散布装置本体42が右側のストロークエンドから左側のストロークエンド側に第1所定距離D1だけ移動し、次に、散布装置本体42が左側のストロークエンド側に第2所定距離D2だけ移動し、その後、散布装置本体42が左側のストロークエンドに移動するように、駆動機構43を駆動させるように構成してある。
【0092】
具体的には、制御手段79は、始動位置LS(右側のストロークエンド)と第1折返位置P1と第2折返位置P2と停止位置ST(左側のストロークエンド)とを設定すると、電動モータM1を逆回転方向に駆動する。
【0093】
前記制御手段79は、演算手段87の演算結果に基づいてノズル50が右側のストロークエンドから左側のストロークエンド側に第1所定距離D1だけ離れた第1折返位置P1に至ったか否かを判断し、ノズル50が第1折返位置P1に至ったと判断するまで、電動モータM1を逆回転方向に駆動する。
【0094】
前記制御手段79は、ノズル50が第1折返位置P1に至ったと判断すると、電動モータM1を正回転方向に駆動する。制御手段79は、演算手段87の演算結果に基づいてノズル50が第1折返位置P1から右側のストロークエンド側に第2所定距離D2だけ離れた第2折返位置P2に至ったか否かを判断し、ノズル50が第2折返位置P2に至ったと判断するまで、電動モータM2を正回転方向に駆動する。
【0095】
前記制御手段79は、ノズル50が第2折返位置P2に至ったと判断すると、電動モータM1を逆回転方向に駆動する。制御手段79は、左端検出手段70の検出情報に基づいてノズル50が停止位置STに至ったか否かを判断し、停止位置STに至ったと判断するまで、電動モータM1を逆回転方向に駆動する。
【0096】
前記制御手段79は、左端検出手段70の検出情報に基づいてノズル50が停止位置STに至ったと判断すると、ノズル50が停止位置STに停止するよう電動モータMを停止操作する。
【0097】
(散布装置本体の動作)
散布装置本体42が一方側のストロークエンドに到達したときに、薬剤の散布及び散布装置本体42の移動を一時的に停止した後、再び薬剤の散布及び散布装置本体42の移動を開始する一連の動作について説明する。
【0098】
図20(a)に示すように、電動モータM1の駆動によって駆動スプロケット66を介して無端チェーン68を一方側に回転駆動することにより、無端チェーン68に係合するロール駆動スプロケット55を回転駆動し、ロール駆動スプロケット55の回転に伴って繰出ロール54が駆動回転し、繰出ロール54の繰出凹部54aに充填された薬剤を繰出口49から散布する。繰出口49から散布された薬剤はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下する。また、無端チェーン68を一方側に回転駆動することにより、無端チェーン68に一体移動する散布装置本体42が一方側に移動する。このようにして、散布装置本体42が薬剤を散布しながら一方側に移動する。
【0099】
図20(b)に示すように、散布装置本体42が一方のストロークエンドに到達したときに、電動モータM1が停止することにより、無端チェーン68が停止し、ロール駆動スプロケット55および散布装置本体42が停止する。
【0100】
図20(c)に示すように、電動モータM1の駆動によって散布装置本体42が一方のストロークエンドから他方側に第1所定距離D1だけ移動する。このとき、繰出口49から散布された薬剤はノズル50を通過している途中であり、薬剤はノズル50の開口50aから落下していない。
【0101】
図20(d)に示すように、電動モータM1の駆動によって散布装置本体42が一方側に第2所定距離D2だけ移動する。このとき、繰出口49から散布された薬剤はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下してマット状苗等の供給対象箇所に到達し始める。その後、電動モータM1の駆動によって散布装置本体42を他方のストロークエンドに移動させる。
【0102】
このように、散布装置本体42を、一方のストロークエンドから他方側に第1所定距離D1だけ移動させ、次に、散布装置本体42を、一方側に第2所定距離D2だけ移動させ、その後、散布装置本体42を、他方のストロークエンドに移動させるので、散布装置本体42を一方側に一旦戻すタイミングと薬剤が実際に落下して供給対象箇所に供給されるタイミングとを合わせることにより、散布装置本体42の始動位置付近に薬剤の未散布領域d1が生じることを少なくすることができる。
【0103】
(薬剤の計量作業)
図9に示すように、ホッパ48の蓋部48aの内部側には、計量容器としての計量カップ39を引っ掛ける格納部分としてのカップホルダ48bが形成されている。ノズル50の開口50aには、計量容器としての計量カップ39を引っ掛ける受け部分としてのカップホルダ50bが形成されている。
【0104】
実際の薬剤の散布作業を行う前に適正量の薬剤が散布されるか否かチェックする必要がある。このため、散布される薬剤の計量作業が行なわれる。図9に示すように、計量カップ39は、ホッパ48の蓋部48aのカップホルダ48bに装着された状態でホッパ48の内部に収容されている。
【0105】
薬剤の計量作業を開始するときに、ホッパ48の蓋部48aのカップホルダ48bから計量カップ39を取り外して、その計量カップ39をノズル50の開口50aのカップホルダ50bに装着しておく。散布装置本体42を往復移動させて、計量カップ39の薬剤を計量する。
【0106】
薬剤の計量作業終了後において、ホッパ48の蓋部48aを開けて、計量カップ39の薬剤をホッパ48に戻すと共に、ホッパ48の蓋部48aのカップホルダ48bに計量カップ39を装着する。
【0107】
このように、薬剤の計量作業終了後に、ホッパ48の蓋部48aのカップホルダ48bに計量カップ39を装着しておくことで、計量カップ39を紛失することを防止できる。
【0108】
図7に示すように、前記ホッパ48の下部には、繰出部46とは別に薬剤を排出する排出口48cが形成され、排出口48cには、排出部材としての蛇腹状の伸縮ホース38が接続されている。そして、伸縮ホース38を短縮した状態で排出口48cにかぶせるキャップ37が設けられている。
【0109】
薬剤の散布作業中において、伸縮ホース38を短縮した状態でキャップ37が排出口48cにかぶせられている。
【0110】
薬剤の散布作業終了後において、キャップ37を排出口48cから取り外し、伸縮ホース38を伸長して、その先端を回収容器(図示しない)に差し込むことにより、薬剤が回収容器からこぼれることを防止することができる。
【0111】
また、伸縮ホース38を伸長して、その先端を回収容器に近づけるので、回収容器を排出口48cに近づけるために回収容器を持ち上げる必要が無く、作業者の回収作業の負担の軽減を図ることができる。
【0112】
尚、薬品を回収する回収容器はカップ等種々の容器が使用可能である。さらに、容器に代えて袋を用いても良い。
【0113】
〔第2実施形態〕
第1実施形態の乗用型田植機は、苗載せ面用薬剤散布装置1が苗載せ台22に支持されている。しかし、第2実施形態の乗用型田植機は、苗載せ面用薬剤散布装置1が苗載せ台22に支持されているのに加えて、薬剤散布装置130が予備苗貯留装置129にも支持されている。また、第2実施形態の乗用型田植機は、第1実施形態とほぼ同じ構成であるが、予備苗貯留装置129の構成が異なっている。よって、予備苗貯留装置129の構成、および、予備苗貯留装置129に支持された薬剤散布装置130の構成についてのみ説明する。
【0114】
図21に示すように、左右の各予備苗貯留装置129は、それぞれ複数枚の苗を育苗箱ごと載置収容できるよう構成されており、車体フレーム4から立設されたアーチ形の支柱131と、この支柱131の機体外側に上下3段に配備された苗受け体133とを備えて構成してある。
【0115】
前記予備苗貯留装置129は、全部の苗受け体133が上下3段に配備された第1形態(図21の二点鎖線の状態)と、苗受け体133が前後直列に並べて機体前後に延出された第2形態(図21の実線の状態)とに切換え可能に構成されている。苗受け体133は、上側の苗受け部133a、中間の苗受け部133b、下側の苗受け部133cから構成されている。
【0116】
図21,図22に示すように、前記予備苗貯留装置129に支持された薬剤散布装置130は、繰出部46の繰出ケース47の上部に連結されて消毒用の薬剤を貯留可能なホッパ48と、ホッパの薬剤を繰り出して散布する繰出部46とを備えて構成してある。
【0117】
前記繰出部46は、繰出ケース47と、この繰出ケース47の内部に回転可能に設けた繰出ロール54とを備えている。繰出ロール54には、円板部材134が一体回転可能に取り付けられている。
【0118】
植付作業を行うにあたって、作業者は、苗受け体133を第2形態に切り換え、上側の苗受け体133aの前部から育苗箱135に収容された苗を供給して、縦列状に順次後方に押し動かす。
【0119】
このとき、円板部材134は育苗箱135に接触しているので、育苗箱135の搬送に伴って円板部材134が回転操作される。円板部材134の回転操作によって繰出ロール54を駆動する。繰出ロール54の駆動により繰出ロール54から落下した薬剤は、繰出口49から育苗箱135に散布される。
【0120】
作業者は、後側の苗受け体133cに到達した苗を順次取り出して機体後方の苗のせ台22に供給する。苗のせ台22に苗が満載されると、苗受け体133を第1形態に戻す。
【0121】
マット状苗Aに散布する薬剤の散布量は決まっているので、予備苗貯留装置129に支持される薬剤散布装置130の薬剤の散布量だけ、苗載せ面用薬剤散布装置1の薬剤の散布量を減らすことができ、ホッパ48の小型化を図ることができる。
【0122】
〔別実施形態〕
(1)上記各実施形態では、苗載せ面用薬剤散布装置1を乗用型田植機に設ける構成を例示したが、図23に示すように、苗載せ面用薬剤散布装置1を歩行型田植機に設けてもよい。具体的には、歩行型田植機は、左右一対の車輪140によって自走する自走車の下部にフロート141を備えると共に、この自走車の後部に苗植付装置6、ハンドル142を備えて構成してある。自走車の上方には、予備苗貯留装置9が装備されている。苗植付装置6の苗植付爪23aによって苗載せ台22に載置されたマット状苗の下端部から一株分の苗を切断して取り出し、取り出した苗を圃場に植え付ける。苗植付装置6には、苗載せ面用薬剤散布装置1が装備されており、苗載せ面用薬剤散布装置1が左右往復移動しながら薬剤をマット状苗に散布する。
【0123】
(2)上記各実施形態では、第2所定距離D2が第1所定距離D1と同じに構成されている。しかし、第2所定距離D2が第1所定距離D1よりも短く構成されても良い。
【0124】
(3)上記各実施形態では、排出口48cに蛇腹状の伸縮ホース38が接続される構成を例示したが、これに限られるものではなく、排出口48cに可撓性を有するホース38が着脱可能に接続される構成であっても良い。薬剤の散布作業中はホース38を取り外しておき、薬剤の回収作業を開始するときにホース38を装着して薬剤を回収する。
【0125】
(4)上記各実施形態では、計量カップ39を引っ掛ける格納部分がカップホルダ48bである構成を例示したが、計量カップ39を引っ掛ける格納部分がガイドレール41であってもよい。
【0126】
(5)上記各実施形態では、第1表示手段117は、第1表示ランプ118を備え、第2表示手段119は、第2表示ランプ120を備える構成を例示したが、これに限られるものではなく、液晶表示であっても良い。また、第1表示手段117、第2表示手段119に代えて、音声によって苗載せ面用薬剤散布装置1や圃場用薬剤散布装置91の作動状態を報知する報知手段を備える構成であっても良い。
【0127】
(6)上記各実施形態では、散布タイミング検出手段88が苗縦送り軸32aから放射状に延びる4つのスポーク部83と、各スポーク部83の夫々の端部に取り付けられた被検出部84とを備える構成を例示したが、スポーク部83および被検出部84の数は4つに限られるものではない。ただし、スポーク部83および被検出部84の数が2つであると、薬剤の散布に濃淡が生じるため、スポーク部83および被検出部84の数が3つ以上であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、肥料をマット状苗Aに供給する構成を備えた流動物散布装置にも、肥料や種子を圃場に直接に供給する構成を備えた流動物散布装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0129】
1,130 流動物散布装置
38 排出部材
39 計量容器
41 案内部材
42 散布装置本体
43 駆動機構
46 繰出部
48 ホッパ
48b 格納部分
48c 排出口
50b 受け部分
55 駆動伝達部
79 制御手段
D1 第1所定距離
D2 第2所定距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動物を貯留するホッパと該ホッパの流動物を繰り出して散布する繰出部とを有する散布装置本体と、
前記散布装置本体を所定のストロークで往復移動可能に案内支持する案内部材と、
前記散布装置本体を前記所定のストロークの範囲で往復移動させる駆動機構と、
前記散布装置本体の往復移動操作を前記繰出部に伝達して該繰出部を駆動する駆動伝達部と、
一方のストロークエンドに位置する前記散布装置本体が他方のストロークエンドに移動する際に、前記散布装置本体が一方のストロークエンドから他方のストロークエンド側に第1所定距離だけ移動し、次に、前記散布装置本体が一方のストロークエンド側に第1所定距離とほぼ同じ又は第1所定距離よりも短い第2所定距離だけ移動し、その後、前記散布装置本体が他方のストロークエンドに移動するように、前記駆動機構を駆動させる制御手段と、を備えた流動物散布装置。
【請求項2】
前記ホッパの下部に前記繰出部とは別に流動物を排出する排出口を形成し、前記排出口に着脱可能な又は伸縮可能な排出部材を設けてある請求項1に記載の流動物散布装置。
【請求項3】
前記繰出部からの流動物を受け止める計量容器を、前記散布装置本体の受け部分に着脱可能に構成し、前記計量容器を、前記散布装置本体における前記受け部分から離れた格納部分又は前記案内部材に着脱可能に構成してある請求項1又は2に記載の流動物散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−36211(P2011−36211A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188519(P2009−188519)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】