説明

流水検知装置

【課題】 点検やメンテナンスの際にスイッチの作動を防止する信号停止手段を簡易な操作により実現可能であり、さらにメンテナンス時に誤って信号が出力することを防止可能な流水検知装置の提供。
【解決手段】 スプリンクラー設備配管に設置される筒状の本体1内に開閉自在に設置された弁体7を有し、該弁体7の開放により変位するロッド11の一端側にはリミットスイッチ17が設置されており、ロッド11の変位によってリミットスイッチ17が作動して信号が出力され、ロッド11の変位を阻止可能なロッド係止部30を常時蓋体20により閉止された本体1の開口21付近に設置し、該ロッド係止部30の移動によりロッド11の変位を阻止するロック状態と、変位を許容するロック解除状態とを切換え可能とし、ロック解除状態では蓋体20が外れる方向にロッド係止部30が位置するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備配管上に設置される流水検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流水検知装置は、スプリンクラー設備や泡消火設備等の消火設備配管上に設置され、配管内の流水を検知して信号を出力する装置である。
【0003】
流水検知装置の内部は逆止弁構造をしており、弁により内部が一次側室と二次側室に分けられ弁体は常時閉止状態にある。一次側室および二次側室は常時充水されており、一次側室に接続された配管(以下、「一次側配管」とする)は水源と接続され、二次側室に接続された配管(以下、「二次側配管」とする)はスプリンクラーヘッドや泡ヘッド等の散布ヘッドが設置されている。
【0004】
流水検知装置は二次側配管に設置された散布ヘッドの作動を検知するために設置されており、例えばスプリンクラーヘッドが作動すると、二次側配管内に充水されている水がスプリンクラーヘッドより放出されることで二次側配管内が減圧する。それにより流水検知装置の二次側室内の圧力も減少し、弁体に作用している圧力による力のバランスが崩れて、一次側室側から弁体に作用する力が二次側室側から弁体に作用する力を上回り弁体が開放される。
【0005】
この弁体の開放を検知してスイッチ装置が作動され信号が出力される。出力された信号は建物の管理室等に設置されている監視装置と接続されており、監視装置からの信号によって管理人等にスプリンクラーヘッドが作動したことを知らせる。
【0006】
上記に示す逆止弁構造の流水検知装置は、弁体が着座している弁座に外部へ通じる穴が穿設されており、該穴と圧力スイッチが接続され、圧力スイッチが信号を発生するタイプ(例えば、特許文献1参照。)や、弁体の開放による変位を検知して信号を出力するタイプ(例えば、特許文献2、3参照。)がある。
【0007】
上記の流水検知装置において、非火災時である点検やメンテナンスの際にスイッチが作動して信号が出力されると館内に火災警報が出力されるおそれがあることから、スイッチの作動を防ぐために信号停止手段が設けられている。
【0008】
例えば特許文献1の流水検知装置においては弁座に穿設された穴と圧力スイッチとの間の通水路に信号停止弁が設置されている。該信号停止弁を閉止すると流水検知装置の弁体が開いた際に弁座に穿設された穴から流入した水が信号停止弁で遮断される。圧力スイッチまで水が到達しないので圧力スイッチが作動することを防止できる。
【0009】
また特許文献2、3の流水検知装置にはターミナルボックスが備えられてあり、該ターミナルボックス内には、弁体の開放動作によって信号を出力するリミットスイッチと、リミットスイッチを作動させる作用を有するリミットスイッチ押圧手段が設けられている。該リミットスイッチとリミットスイッチ押圧手段の間に、信号出力停止手段であるピースを挿入させてリミットスイッチ押圧手段がリミットスイッチ側へ移動することを阻止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公平6−14780号公報
【特許文献2】国際公開第2009/57236号
【特許文献3】国際公開第2009/130903号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
流水検知装置は一般的に建物内の目立たない場所に設置されていることが多い。特にマンション等の共同住宅に設置される場合はガスメーター等が設置されるメーターボックス内に流水検知装置が設置されていることがあり、後者の流水検知装置においては小さなピースをリミットスイッチ近傍の所定位置に差し込む作業が困難な場合がある。
【0012】
メーターボックス内は薄暗く、さらにターミナルボックス内にリミットスイッチが設置されていることから、電灯を照らしながらターミナルボックスの蓋を外して所定位置にピースを差し込む作業は作業者の負担が大きいものであった。またピースは小さな部品であることから紛失しやすいものであった。

【0013】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、点検やメンテナンスの際にスイッチの作動を防止する信号停止手段を簡易な操作により実現可能であり、さらにメンテナンス時に誤って信号が出力することを防止可能な流水検知装置を提供することを目的としている

【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の流水検知装置を提供する。
【0015】
本発明は、スプリンクラー設備配管に設置される筒状の本体内に開閉自在に設置された弁体を有し、該弁体の開放により変位するロッドの一端側にはリミットスイッチが設置され、ロッドの変位によってリミットスイッチが作動して信号が出力される流水検知装置において、ロッドの変位を阻止可能なロッド係止部を常時蓋体により閉止された本体の開口付近に設置し、該ロッド係止部の移動によりロッドの変位を阻止するロック状態と、変位を許容するロック解除状態とを切換え可能とし、ロック解除状態では蓋体が外れる方向にロッド係止部が位置することを特徴とする。
これによれば、ロッド係止部を移動させることでロッドの変位を阻止し、ロッドの変位によって作動するリミットスイッチからの信号出力を防止できる。
その際、ロッド係止部を移動させることでロッドをロック状態とロック解除状態とに切換え可能であり、ロッド係止部の位置によってリミットスイッチの信号出力が阻止された状態かどうかを作業者が判断することができる。
【0016】
ロッド係止部は作業者が手で掴んで操作可能な程度の大きさとし、例えば従来例の信号停止弁のハンドル程度の大きさにすることで、辺りが薄暗くても目視によりロッド係止部の位置の判断や操作が可能である。
【0017】
また、ロック解除状態、すなわちロッドの変位によりリミットスイッチが作動して信号出力可能な状態ではロッド係止部に阻まれて蓋体を外すことができない。逆に、ロック状態においては蓋体を外して本体内の弁体を取外す作業を行う場合に、ロッド係止部によってロッドが変位しないのでリミットスイッチから信号が出力することを防止できる。
【0018】
前記ロッド係止部は本体の開口が設置された面の側面に回動可能に設置されており、ロック開放状態では本体の筒軸と平行であり、ロック状態では本体の筒軸に対して垂直に配置され、ロッド係止部の本体外部側の端は先端が屈曲しており、該先端部がロック解除状態において蓋体と重なる位置に配置される。
これによりロック解除状態で蓋体の取り外そうとした場合に先端部と干渉するので蓋体を取外すことができず、ロック状態にしないと蓋体を取り外すことができない構成にすることができる。

【発明の効果】
【0019】
上記の流水検知装置によれば、信号停止手段を本体の外部に設置したロッド係止部の移動によりロッド動作のロック・ロック解除を切り替え可能としたことで、メンテナンス作業者が目視により容易にロッドのロック・ロック解除状態をロッド係止部の位置によって確認可能である。またロック・ロック解除操作においてもロッド係止部が本体の正面から見て目立つ所に設置されていることから、作業者が直感的にロッド係止部の操作を理解しやすい構造である。さらにロッド係止部をロック状態にしないと蓋体が取外せないので、ロック解除状態でメンテナンス作業を行いリミットスイッチから信号が出力されることを防止可能である。

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の流水検知装置の正面図
【図2】図1のX−X断面図
【図3】図1の左側面図(一部断面)
【図4】弁体閉止時の流水検知部の断面図
【図5】弁体開放時の流水検知部の断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の流水検知装置の詳細な構造や動作については国際公開第2009/130903号公報に記載されているので発明の要旨とあまり関係ない部分についての説明は省略する。
【0022】
図1に示す流水検知装置Aは本体1、流水検知部2、排水弁3から構成される。筒状の本体1の内部には回動自在な弁体7が設置されており、弁体7によって本体1内は一次側Iと二次側IIに仕切られている。弁体7は本体1内に設置され、常時においては一次側Iと二次側IIを連通する連通穴5上に着座している。弁体7は回動動作により一次側Iと二次側IIの連通穴5を開放・閉止可能である。弁体7は逆止弁構造をしており、一次側Iの流体が二次側IIへ流入することはできるが、二次側IIの流体が一次側Iへ流れることができない構成となっている。
【0023】
弁体7の周縁には外方へ突出した突出部10が形成されている。突出部10には流水検知部2のロッド11の先端に形成されたフランジFが接触している。図4、図5に示すようにロッド11は流水検知部2内に設置された軸12により軸支され図中上下に回動することが可能である。ロッド11のフランジFが設置された側と反対側の端にはコイルバネ14が設置され、コイルバネ14はロッド11を図中下方へ付勢している。コイルバネ14の作用によりフランジFは弁体7が開放する方向へ押圧するが、弁体7の自重がコイルバネ14の付勢力よりも強いのでコイルバネ14の作用だけでは弁体7は閉止状態が維持される。
【0024】
流水検知部2の内部にはリミットスイッチ17が設置されており、リミットスイッチ17の近傍には遅延機構18と前述のロッド11のフランジFが設置された側と反対側の端が配置されている。フランジFが設置された側と反対側の端には、先端が湾曲形状をした接触子16が設置されており、接触子16は遅延機構18内のリミットスイッチ押圧片18Aと接触している。
【0025】
リミットスイッチ押圧片18Aは遅延機構18内の図示しないバネによってリミットスイッチ17側に付勢されているが、接触子16がリミットスイッチ17側への移動を阻止している。リミットスイッチ押圧片18Aは遅延機構18内のダンパー等によってリミットスイッチ17側への移動速度が緩慢となるよう構成されている。
【0026】
火災時スプリンクラーヘッドの作動により弁体7が開放したとき、ロッド11のフランジFが弁体7から離れるので、ロッド11はコイルバネ14の付勢力によって図中反時計周りに回動する(図5)。すると、リミットスイッチ押圧片18Aを保持していた接触子16がリミットスイッチ押圧片18Aから離れてリミットスイッチ17側へ移動する。
【0027】
リミットスイッチ押圧片18Aは遅延機構18の作用によってゆっくりリミットスイッチ17側へ移動し、リミットスイッチ17をオン状態にする。これよりリミットスイッチ17のオン信号が図示しない外部の受信機へ出力され、流水検知装置Aの作動していることを管理人等に知らせることができる。
【0028】
本体1には、正面側に蓋体20で塞がれた開口21が形成されている。側面には流水検知部2が設置されており、蓋体20を取外すと開口21付近にロッド11や弁体7が配置されているのでロッド11や弁体7の状態が確認しやすい構造となっている。
【0029】
ロッド11の上方にはロッド係止部30が設置されており、ロッド係止部30は係止板31、ハンドル32、軸33から構成される。係止板31は本体1内部のロッド11の上方に配置され、軸33の本体1の内部側の端に固定されている。軸33は本体を貫通して設置されており、本体1の外部側の端にはハンドル32が固定設置され、ハンドル32を回動することで本体1の内部の係止板31を回動させることができる。
【0030】
常時においてハンドル32は正面側に倒れた状態、つまり図3において二点鎖線で示すように本体1の筒軸に対して垂直方向に配置されている。このとき係止板31の先端はロッド11から離れておりロッド11は回動動作可能な「ロック解除状態」となっている。ハンドル32の先端に形成した屈曲部33は蓋体20と重なる位置に配置され、蓋体20を外せないように阻止している。
【0031】
一方、ロック解除状態のハンドル32は上方に向かって(図3の側面状態においては反時計回りに)90°回動することが可能である。ハンドル32を90°回転させると、図3において破線で示すように係止板31の先端がロッド11と接触してロッド11の回動動作を阻止する「ロック状態」となる。このときハンドル32の先端は蓋体20から離れるので蓋体20を外すことが可能となる。
【0032】
上記より、ロック解除状態においては、蓋体20を外すことができず、ロック状態では蓋体20を外して本体1内部の弁体7やロッド11のメンテナンス作業を行うことが可能である。これにより、メンテナンス作業時においてロッド11は係止板31によって回動動作が阻止されることからリミットスイッチ17が作動して信号を出力するおそれが無くなり、メンテナンス作業時の誤報防止を確実にできるものである。
【0033】
また、メンテナンス作業者がハンドル32の位置からロック状態・ロック解除状態を容易に判断可能であり、ハンドル32の操作においても汎用バルブのハンドルを操作する感覚で直感的に操作方法を理解できるものである。
【0034】
上記の実施形態においては、ロッド係止部の移動を回動動作としたが、これに限らず直線動作に構成することも可能である。

【符号の説明】
【0035】
A 流水検知装置
F フランジ
1 本体
2 流水検知部
3 排水弁
5 連通穴
7 弁体
10 突出部
11 ロッド
12 軸
14 コイルバネ
16 接触子
17 リミットスイッチ
18 遅延機構
18A リミットスイッチ押圧片
20 蓋体
21 開口
30 ロッド係止部
31 係止板
32 ハンドル
33 軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラー設備配管に設置される筒状の本体内に開閉自在に設置された弁体を有し、該弁体の開放により変位するロッドの一端側にはリミットスイッチが設置され、ロッドの変位によってリミットスイッチが作動して信号が出力される流水検知装置において、ロッドの変位を阻止可能なロッド係止部を常時蓋体により閉止された本体の開口付近に設置し、該ロッド係止部の移動によりロッドの変位を阻止するロック状態と、変位を許容するロック解除状態とを切換え可能とし、ロック解除状態では蓋体が外れる方向にロッド係止部が位置することを特徴とする流水検知装置。

【請求項2】
ロッド係止部は本体の開口が設置された面の側面に回動可能に設置されており、ロック開放状態では本体の筒軸と平行であり、ロック状態では本体の筒軸に対して垂直に配置され、ロッド係止部の本体外部側の端は先端が屈曲しており、該先端部がロック解除状態において蓋体と重なる位置に配置される請求項1記載の流水検知装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−249735(P2012−249735A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123189(P2011−123189)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000199186)千住スプリンクラー株式会社 (87)
【Fターム(参考)】