説明

流路開閉用の水門駆動装置

【課題】 この流路開閉用の水門駆動装置は,緊急時等に水門の自重降下させた場合に水門が流路の底面に到達したことに応答してモータ出力軸と伝動軸との連結状態を解放し,モータの慣性エネルギーが動力伝達装置の減速機等に負荷されることを防止する。
【解決手段】 この流路開閉用の水門駆動装置は,モータ出力軸22と動力伝達装置14における伝動軸4との間にワンウエイクラッチ12を介在させ,ワンウエイクラッチ12によって水門20が降下限界位置に到達したことに応答してモータ1の駆動力を伝動軸4から切り離してモータ1を空転させ,慣性エネルギーが減速機5,6に付加されることを防止して,耐久性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,例えば,水路,浄水場等の流路を開閉する扉体,ゲート,バルブ等の水門を上下往復移動させ,流路の水の流れを調整する流路開閉用の水門駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,流路開閉用の水門駆動装置は,例えば,図4に示すように,水路,浄水場等の流路に建造された土台等のベース26にスタンド15を設置し,スタンド15で支持された水門支持手段を構成するピンラック10に流路を開閉するゲート,扉体,バルブ等の水門20を取り付け,ピンラック10に長手方向に沿って設けたラックピン16に噛み合うピニオン9をモータ又は手動ハンドルで回転駆動し,水門20を流路に対して上下方向に往復移動させて流路を開閉するものである。上記流路開閉用の水門駆動装置は,一般に,水門20が取り付けられたピンラック10,ラックピン16に噛み合うピニオン9を設けたピニオン軸11,ピニオン軸11に回転を伝達する出力軸を備えた動力伝達装置,動力伝達装置における伝動軸に回転を与えるサーボモータ等のモータ,及び出力軸に回転を与える手動ハンドルを備えている。また,動力伝達装置には,水門20を保持するブレーキ,モータの回転を断接するクラッチ,及び水門20を自重で降下させるための自重降下レバーが設けられている。
【0003】
従来,流路を流れる水等の流体の流れを制御するゲートを駆動するクラッチ等を組み込んだ弁駆動用アクチュエータが知られている。該弁駆動用アクチュエータは,回転軸に固定され且つ端面にドグ歯を備えた筒体,及び前記回転軸上を摺動可能であり且つ端面に前記筒体の前記ドグ歯に噛み合うドグ歯を備えたスリーブから成る動力伝達装置における噛み合いクラッチにおいて,一方のドグ歯は低い歯たけと高い歯たけに交互に形成され,他方のドグ歯の間の歯溝は前記低い歯たけのドグ歯と前記高い歯たけの前記ドグ歯とが噛み合う幅を有し,前記他方のドグ歯は前記低い歯たけのドグ歯と前記高い歯たけのドグ歯の間の歯溝に噛み合って動力を伝達するものである(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
また,モータの駆動により弁体の開閉制御を行うバルブ用アクチュエータが知られている。該バルブ用アクチュエータは,ステータ,ロータ及び回転軸から成るモータを有し,ロータと回転軸との間にワンウエイクラッチを介在させたものであり,ワンウエイクラッチや電磁ブレーキを大型のものとすることなく,減速ギヤの径を大きくしたり,減速ギヤの数を多くする必要がないものである(例えば,特許文献2参照)。
【0005】
また,水門や樋門用のゲート開閉装置の駆動系に適用される変速装置が知られている。該変速装置は,互いに同軸上に配置されて装置ハウジングに支承された1対の回転軸の一方に,装置ハウジング内に収容された遊星歯車機構における遊星歯車を支持させ,他方の回転軸に上記遊星歯車機構における太陽歯車を固定し,互いに逆動作する1対の一方向クラッチの一方を介して上記一方の回転軸側と太陽歯車側とを連結し,他方のクラッチを介して上記遊星歯車機構ケース側と太陽歯車側とを連結したものである(例えば,特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平11−108239号公報
【特許文献2】特開平6−307570号公報
【特許文献3】特開平4−60240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,従来のバルブアクチュエータでは,モータの動力慣性エネルギーは,ウォーム軸等の駆動系に皿ばね等のスプリングを挿入し,スプリングにエネルギーを蓄える構造に構成されている。また,サーボモータを使用したバルブアクチュエータは,自重降下時に,調速機能により高速回転している状態でゲートが全閉になると,モータが高速回転から急激に停止するため,モータの慣性エネルギーがゲート,減速機等に作用し,減速機等の破損につながる原因になっていた。また,停電等の電気系が故障している際には,モータによる駆動及び制御が不能になるが,その状態で水門を閉鎖しなければならない緊急時に,自重降下レバーによってロックを解除し,水門の自重で降下させた場合に,モータは空転しており,次いで,水門が流路の底面に衝突して停止した場合に,衝撃による衝撃力がモータに伝達されたり,モータの慣性エネルギーが動力伝達装置に伝達されたりして好ましくなかった。
【0007】
この発明の目的は,上記の問題を解決することであり,扉体,バルブ,ゲート等の水門を上下往復移動させる水門支持手段を上下往復移動可能に駆動するものであって,少なくとも水門が限界位置まで下降されて水路,浄水場等の流路を水門で閉鎖した時に,モータと伝動軸との駆動連結状態がワンウエイクラッチで自動的に解放され,モータの慣性エネルギーが伝動軸に伝達されない状態になって動力伝達装置における減速機等が損傷するのが防止され,また,水門の自重降下時に水門が流路の底面に衝突して水門がリバウドした際にワンウエイクラッチの機能で伝動軸の逆回転がモータに伝達されず,モータや減速機に異常な負荷がかかるのが防止され,装置そのものの耐久性を向上させることができる流路開閉用の水門駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は,流路を開閉する水門,該水門を上下往復移動させて前記流路を開閉するため駆動するモータ,前記水門を手動で上下往復移動させる手動ハンドル,及び前記モータ又は前記手動ハンドルによる回転運動を前記水門の上下往復移動に変換伝達する動力伝達装置を有し,前記動力伝達装置は前記モータのモータ出力軸に連結された伝動軸,前記伝動軸に組み込まれた無励磁作動保持ブレーキ,前記伝動軸に入力側が連結された減速機,前記モータと前記伝動軸との連結状態を切り離して前記水門を自重降下させるため操作される前記伝動軸に組み込まれた自重降下レバー,及び前記減速機の出力側に連結された出力軸によって作動される前記水門を取り付けた水門支持手段を備えていることから成る流路開閉用の水門駆動装置において,
前記モータ出力軸と前記動力伝達装置における前記伝動軸との間にワンウエイクラッチを介在させ,前記ワンウエイクラッチによって前記水門が降下限界位置に到達したことに応答して前記モータの駆動力を前記伝動軸から切り離して前記モータを空転させることを特徴とする流路開閉用の水門駆動装置に関する。
【0009】
この流路開閉用の水門駆動装置は,前記モータ又は前記手動ハンドルで回転駆動される前記出力軸にはピニオンを備えたピニオン軸が設けられ,前記水門支持手段には前記ピニオンに噛み合うラックピンを備えたピンラック又は前記ピニオンに噛み合うラックを備えたギヤラックが設けられている。
【0010】
また,この流路開閉用の水門駆動装置において,前記減速機は前記入力軸が前記伝動軸に連結された一次減速機と該一次減速機の後流に連結された二次減速機から構成され,前記手動ハンドルは前記一次減速機のケースに連結されている。
【0011】
また,前記ワンウエイクラッチは,前記水門が前記流路を全閉して前記伝動軸が回転停止することに応答して,前記モータの駆動力を前記伝動軸から切り離すように設定されている。
【0012】
また,前記ワンウエイクラッチは,前記水門が前記流路を全閉する時に前記水門がリバンドして前記伝動軸が逆転することに応答して,前記伝動軸を前記モータから切り離すように設定されている。
【0013】
また,前記ワンウエイクラッチは,前記モータ出力軸に連結された外周側に軌道面を持つ内輪,前記伝動軸に連結された内周側に軌道面を持つ外輪,前記内輪と前記外輪との前記軌道面間に組み込まれた多数のカム,及び前記カムを前記内輪と前記外輪との前記軌道面に接触させるスプリングを備えている。
【発明の効果】
【0014】
この流路開閉用の水門駆動装置は,上記のように,モータからの出力を減速機等を介して水門を支持した水門支持手段に伝達する動力伝達装置の入力側の伝動軸とモータ出力軸との間にワンウエイクラッチが組み込まれているので,水門が流路の底面に到達して動力伝達装置の伝動軸の回転が停止,即ち,伝動軸に過大な負荷がかかった状態になると,ワンウエイクラッチがモータ出力軸と伝動軸との連結状態を解放即ち切り離し,モータの慣性エネルギーが動力伝達装置における減速機等に負荷されることがなく,減速機の損傷を防止し,また,水門が自重降下して流路の底面に衝突し,水門がリバウンドして伝動軸が逆転したとしても,その逆転力がワンウエイクラッチの機能によってモータ出力軸に負荷されず,モータを損傷させることがなく,安全性,信頼性に富んだものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明による流路開閉用の水門駆動装置の実施例を説明する。この流路開閉用の水門駆動装置は,水路,浄水場等の流路を開閉するためゲート,扉体,バルブ等の水門(以下,総称)を上下往復移動させて駆動するものであり,サーボモータ等のモータのモータ出力軸と動力伝達装置における入力側の伝動軸との間にワンウエイクラッチを組み込み,動力伝達装置における減速機等の部品にモータの慣性エネルギーが負荷されることを防止して耐久性を向上させることを特徴としている。
【0016】
以下,図面を参照して,この発明による流路開閉用の水門駆動装置の実施例を説明する。この流路開閉用の水門駆動装置は,概して,水路,浄水場等の流路を開閉するため配設されたゲート,扉体,バルブ等の水門20,水門20を上下往復移動させて流路を開閉するため駆動するモータ1,水門20を手動で上下往復移動させる手動ハンドル7,及びモータ1又は手動ハンドル7による出力軸34の回転を水門20の上下往復移動に変換伝達する動力伝達装置14を有している。水門支持手段を構成するピンラック10は,水門20が取り付けられ,ベース26に設置されたスタンド15に上下移動可能に支持されている。この流路開閉用の水門駆動装置は,モータ1及び手動ハンドル7の回転を解放して水門20を自重降下させるための自重降下レバー2が動力伝達装置14において設けられている。モータ1は,ACサーボモータ等のサーボモータで構成されている。
【0017】
動力伝達装置14は,モータ1のモータ出力軸22,モータ出力軸22にワンウエイクラッチ12を介在させて連結された伝動軸4,伝動軸4に設けられた無励磁作動保持ブレーキ3,伝動軸4に入力軸31が連結された減速機5(一次減速機),減速機5のケース39を介して連結された手動ハンドル7,手動ハンドル7を減速機5のケース39を介して出力軸32に連結するウォームギヤ35,減速機5の出力軸32に入力軸33が連結された減速機6(二次減速機),減速機6の出力軸34に連結されたピニオン9を備えたピニオン軸11,及びピニオン9に噛み合うラックピン16を備え且つ水門20を取り付けた水門支持手段を構成するピンラック10から構成されている。
【0018】
この流路開閉用の水門駆動装置は,特に,モータ出力軸22と動力伝達装置14における伝動軸4との間にワンウエイクラッチ12を介在させ,ワンウエイクラッチ12によって水門20が降下限界位置即ち流路の底面に到達したことに応答して,モータ1の駆動力を伝動軸4から切り離してモータ1を空転させることを特徴としている。ワンウエイクラッチ12は,例えば,モータ出力軸22に連結された外周側に軌道面を持つ内輪18,伝動軸4に連結された内周側に軌道面を持つ外輪17,内輪18と外輪17との軌道面間に組み込まれた多数のカム19,及びカム19を内輪18と外輪17との軌道面に接触させるスプリング27を備えている。勿論,ワンウエイクラッチ12は,その構成によっては,モータ出力軸22に外輪17を連結し,伝動軸4に内輪18を連結することもできるものである。また,ワンウエイクラッチ12は,水門20が流路を全閉して伝動軸4の回転停止時に応答して,モータ1の駆動力を伝動軸4から切り離すように設定されているものである。更に,ワンウエイクラッチ12は,水門20が流路を全閉する時にリバンドして伝動軸4が逆転することに応答して,伝動軸4をモータ1から切り離すように設定されているものである。
【0019】
動力伝達装置14の最終出力軸となる出力軸34は,ピニオン9を備えたピニオン軸11であり,また,水門支持手段はピニオン9に噛み合うラックピン16を備えたピンラック10である。ピンラック10は,図示していないが,スタンド15に取り付けられたローラピンに回転自在なローラにガイドされてスムーズに上下移動できるように構成されている。動力伝達装置14は,ピンラック10を上下移動させるため,モータ1のモータ出力軸22からの回転力を一対の減速機5,6を介して最終減速段の出力軸34と一体のピニオン軸11に伝達する。動力伝達装置14において,水門20とモータ1との間の駆動系には差動歯車機構を利用した差動歯車減速機等から構成された減速機5,6を直列に二段に配設されている。一次減速機5は,ケース39,及びケース39に組み込み支持された入力軸31と出力軸32から構成されている。手動ハンドル7は,減速機5のケース39にウォームギヤ35を介して組み込まれている。また,この流路開閉用の水門駆動装置では,ピニオン軸11は,一次減速機5及び二次減速機6を介してモータ1のモータ出力軸22に対して実質的に同一軸心上に配設されており,装置全体がコンパクトに簡素化された構造に構成されている。
【0020】
モータ1は,水門20の位置を調整可能に作動するACサーボモータで構成されている。減速機5のケース39は軸受30によってスタンド15に回転自在に支持されている。減速機5は,入力軸31の回転を減速して出力軸32の回転へと伝達される。また,減速機6は,入力軸33の回転を減速して出力軸34の回転へと伝達される。この実施例では,水門20の位置を検出する位置検出器8が減速機5の出力軸32に設けられている。この流路開閉用の水門駆動装置は,位置検出器8を設けたので,モータ1による水門20の駆動の時は勿論のこと,手動ハンドル7による水門20の駆動の時にも,水門20の現在位置が常に情報としてコントローラに認識されており,水門20を常に高精度に所望の位置に移動させることができる。勿論,この流路開閉用の水門駆動装置では,最終減速段の出力軸34に位置検出器8を設けることもできる。
【0021】
この流路開閉用の水門駆動装置において,手動ハンドル7は,ウォームギヤ35を介して動力伝動装置14に作動連結されている。手動ハンドル7に設けられたウォームギヤ35は,ウォーム軸38に設けたウォーム36とそれに噛み合うウォームホイール37から構成されている。ウォームホイール37と減速機5のケース39とはボルト29によって締結されている。ウォーム36の回転はウォームホイール37に減速伝達されて回転するが,ウォームホイール37からは,その回転がウォーム36には伝達されない構造であり,従って,手動ハンドル7によってウォーム36が回転する時には,ウォームホイール37が回転し,ウォームホイール37の回転が減速機5のケース39を介して出力軸32に伝達されることになるので,手動ハンドル7の回転の減速比は減速機5ではほとんど減速されずに,手動ハンドル7の回転はウォームギヤ35で減速されるようになっている。
【0022】
また,無励磁作動保持ブレーキ3は,動力伝達装置14を通じて水門20を所定の位置に保持し,非常時にはブレーキ解放機構を構成する自重降下レバー2の作動によって水門20を自重降下させると共にサーボモータ1によりダイナミックブレーキで水門20の降下を制御し,流路を水門20で閉鎖する機能を有している。サーボモータ1は,例えば,永久磁石をロータに設け,巻線をステータに巻き上げた同期電動機即ち永久磁石式発電・電動機が使用されている。永久磁石式発電・電動機は,ステータに巻き上げた巻線に電流を流すと,ロータが回転し,トルクが発生する電動機モードとして機能し,また,自重等によってロータを回転させれば,ステータの巻線に電流が発生して発電機モードとして機能する。従って,この実施例では,水門20の降下時に水門20にブレーキをかける場合に,モータ1を発電機モードとして機能させて制動トルクを得るダイナミックブレーキとして働かせる。ブレーキ力は,熱エネルギとして放熱したり,電力として回生することができる。
【0023】
また,無励磁作動保持ブレーキ3は,モータ出力軸22にワンウエイクラッチ12を介して連結した伝動軸4には,安全性を考慮して一対の無励磁作動保持ブレーキを平行して設けることができる。無励磁作動保持ブレーキ3は,そのケースにシフタが取り付けられる。シフタは,手動による自重降下レバー2の作動によって無励磁作動保持ブレーキ3を解放するように構成されている。無励磁作動保持ブレーキ3は,電源がONすると,モータ1が回転可能になり,減速機5の入力軸31が回転するように構成されている。電源がOFFの時には,アーマチャがブレーキディスクに接し,ブレーキが掛かった状態になり,従って,無励磁作動保持状態になる。無励磁作動保持ブレーキ3は,例えば,一対の無励磁作動保持ブレーキを設けておけば,一方のブレーキ機能が故障した場合に,他方のブレーキ機能を発揮させることができ,安全性に富んだ構成となる。即ち,モータ1にブレーキをかけるときに,2個の無励磁作動保持ブレーキ3の内,一方を付勢してブレーキがかかる状態にしておき,一方が故障した場合に他方を付勢してブレーキがかかるように設定しておくことが好ましい。
【0024】
次に,特に図3を参照して,この流路開閉用の水門駆動装置の作動を説明する。図3は,この流路開閉用の水門駆動装置における動力伝達装置14の作動原理を示しており,(A)は動力伝達装置14を図解的に示しており,(B)はモータ1の駆動によって水門20を上昇させる時の態様を示し,(C)はモータ1の駆動によって水門20を降下させる時の態様を示し,(D)は自重降下レバーを操作して水門20を自重降下させる時の態様を示し,(E)は水門20が流路の底面に達して自重降下が停止した時の態様を示している。
【0025】
この流路開閉用の水門駆動装置は,図3の(B)及び(C)に示すように,モータ1による自動作動の場合には,先ず,無励磁作動保持ブレーキ3の電源がONされると,ブレーキディスクが解放され,モータ1が回転駆動される。モータ1の出力軸22からの駆動力は,減速機5の入力軸31が回転し,この時,減速機5のケース39はウォームギヤ35が回転していないので,固定状態になっている。減速機5の入力軸31が回転すると減速されて減速機5の出力軸32が回転する。減速機5の出力軸32が回転すると,減速機6の入力軸33が回転し,次いで減速機6の出力軸34が回転する。減速機6の出力軸34が回転すると,出力軸34と一体のピニオン軸11が回転してピニオン9が回転し,次いで,ピニオン9に噛み合っているラックピン16を形成したピンラック10が上下移動することになる。この場合には,動力伝達装置14には,水門20及びピンラック10によって自重が負荷されている。
【0026】
次に,この流路開閉用の水門駆動装置は,手動ハンドル7による手動作動の場合には,無励磁作動保持ブレーキ3は電源がOFFされており,ブレーキディスクが接触状態になって閉状態であり,モータ1の駆動は停止して減速機5の入力軸31の回転が停止している。手動ハンドル7を回転作動すると,ウォームギヤ35のウォーム36が回転してウォームホイール37が回転する。ウォームホイール37は減速機5のケース39に固定されているので,減速機5は軸受30を介して全体的に回転して減速機5の出力軸32が回転する。従って,手動ハンドル7の回転は,ウォームギヤ35で減速されるが,減速機5ではほとんど減速されずにケース39を介して出力軸32へと伝達される。減速機5の出力軸32が回転すると,減速機6の入力軸33が回転し,次いで減速機6の出力軸34が回転する。減速機6の出力軸34が回転すると,出力軸34と一体のピニオン軸11が回転してピニオンであるピニオン9が回転し,次いで,ピニオン9に噛み合っているラックピン16を形成したピンラック10が上下移動することになる。この場合には,動力伝達装置14には,水門20が流路の底面に到達するまでは,水門20及びピンラック10によって自重が負荷された状態である。水門20が流路の底面に到達すると,動力伝達装置14へかかる自重は無くなり,ワンウエイクラッチ12がモータ出力軸22と伝動軸4とを切り離し,モータ1は空転する。
【0027】
また,この流路開閉用の水門駆動装置は,水門20による流路を早急に閉鎖しなければならない緊急の場合には,図3の(D)に示すように,水門20の自重によって水門20を降下させることができる。この緊急時には,停電等による電気系が故障していない場合又は故障している場合があるが,そのような緊急の場合には,自重降下レバー2を操作し,シフタによって無励磁作動保持ブレーキ3のアーマチャを強制的に動かしてブレーキディスクを解放する。この時,一対の無励磁作動保持ブレーキ3が設けられているので,シフタによってブレーキディスクを解放する。これによって,水門20はその保持状態が解放され,水門20とピンラック10の自重により,水門20とピンラック10とが流路へと下降し,その時にサーボモータ1をダイナミックブレーキとして機能させて水門20に制動をかけつつ降下させ,水門20で流路を閉鎖するように作動する。この時,水門20とピンラック10の降下によってピニオン9が回転し,ピニオン9の回転は減速機6の出力軸34を回転させる。出力軸34の回転は減速機6の入力軸33を回転させ,次いで,減速機5の出力軸32が回転して減速機5の入力軸31が回転する。減速機5の入力軸31の回転は,モータ出力軸22を空転させる。また,動力伝達装置14には,水門20が流路の底面に到達するまでは,水門20及びピンラック10によって自重が負荷された状態である。図3の(E)に示すように,水門20が流路の底面に到達すると,動力伝達装置14へかかる自重は無くなり,ワンウエイクラッチ12がモータ出力軸22と伝動軸4とを切り離し,モータ1は空転する。また,水門20が流路の底面に激突して水門20がリバウドして逆転し,逆回転が動力伝達装置14に伝達されたとしても,ワンウエイクラッチ12がモータ出力軸22と伝動軸4とを切り離しているので,モータ1は逆回転することなく空転する。また,水門20が底面に静止すれば,動力伝達装置14の回転は停止するが,ワンウエイクラッチ12によってモータ出力軸22と伝動軸4とを切り離されているので,モータ1が空転して慣性エネルギーを持っていても動力伝達装置14へは伝達されず,動力伝達系への悪影響はなくなる。
【0028】
この発明による流路開閉用の水門駆動装置は,上記実施例では,ピニオン9にはピンラック10のラックピン16が噛み合い,水門支持手段がピンラック10の態様を説明したが,水門支持手段をピンラック10に限らず,例えば,ギヤラックで構成することができることは勿論である。その場合には,ピニオン9はギヤラックのラックの歯部に噛み合うことになる。ギヤラックは,スタンド15に取り付けられたローラピンに回転自在なローラにガイドされてスムーズに上下移動できるように構成される。従って,二次減速機6の出力軸34が回転すると,ピニオン軸11を通じてピニオン9が回転し,ピニオン9の回転運動は,図示していないが,ラックに順次に伝達されてギヤラックが上下移動し,該ギヤラックに取り付けられた水門20が上下移動することになる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明による流路開閉用の水門駆動装置は,例えば,流路を開閉するのに設けられた扉体,ゲート,弁体等の水門を上下移動させるアクチュエータに適用され,モータから水門への駆動系にワンウエイクラッチを組み込んで減速機等の損傷を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明による流路開閉用の水門駆動装置をを示す概略図である。
【図2】この流路開閉用の水門駆動装置の実施例を示す断面図である。
【図3】図2に示す流路開閉用の水門駆動装置の作動原理を示す説明図である。
【図4】従来の流路開閉用の水門駆動装置におけるピンラックと水門との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 モータ
2 自重降下レバー
3 無励磁作動保持ブレーキ
4 伝動軸
5 一次減速機
6 二次減速機
7 手動ハンドル
9 ピニオン
10 ピンラック(水門支持手段)
11 ピニオン軸
12 ワンウエイクラッチ
14 動力伝動装置
16 ラックピン
17 外輪
18 内輪
19 カム
20 水門
22 モータ出力軸
27 スプリング
34 出力軸
39 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を開閉する水門,該水門を上下往復移動させて前記流路を開閉するため駆動するモータ,前記水門を手動で上下往復移動させる手動ハンドル,及び前記モータ又は前記手動ハンドルによる回転運動を前記水門の上下往復移動に変換伝達する動力伝達装置を有し,前記動力伝達装置は前記モータのモータ出力軸に連結された伝動軸,前記伝動軸に組み込まれた無励磁作動保持ブレーキ,前記伝動軸に入力側が連結された減速機,前記モータと前記伝動軸との連結状態を切り離して前記水門を自重降下させるため操作される前記伝動軸に組み込まれた自重降下レバー,及び前記減速機の出力側に連結された出力軸によって作動される前記水門を取り付けた水門支持手段を備えていることから成る流路開閉用の水門駆動装置において,
前記モータ出力軸と前記動力伝達装置における前記伝動軸との間にワンウエイクラッチを介在させ,前記ワンウエイクラッチによって前記水門が降下限界位置に到達したことに応答して前記モータの駆動力を前記伝動軸から切り離して前記モータを空転させることを特徴とする流路開閉用の水門駆動装置。
【請求項2】
前記モータ又は前記手動ハンドルで回転駆動される前記出力軸にはピニオンを備えたピニオン軸が設けられ,前記水門支持手段には前記ピニオンに噛み合うラックピンを備えたピンラック又は前記ピニオンに噛み合うラックを備えたギヤラックが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流路開閉用の水門駆動装置。
【請求項3】
前記減速機は前記入力軸が前記伝動軸に連結された一次減速機と該一次減速機の後流に連結された二次減速機から構成され,前記手動ハンドルは前記一次減速機のケースに連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流路開閉用の水門駆動装置。
【請求項4】
前記ワンウエイクラッチは,前記水門が前記流路を全閉して前記伝動軸が回転停止することに応答して,前記モータの駆動力を前記伝動軸から切り離すように設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の流路開閉用の水門駆動装置。
【請求項5】
前記ワンウエイクラッチは,前記水門が前記流路を全閉する時に前記水門がリバンドして前記伝動軸が逆転することに応答して,前記伝動軸を前記モータから切り離すように設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の流路開閉用の水門駆動装置。
【請求項6】
前記ワンウエイクラッチは,前記モータ出力軸に連結された外周側に軌道面を持つ内輪,前記伝動軸に連結された内周側に軌道面を持つ外輪,前記内輪と前記外輪との前記軌道面間に組み込まれた多数のカム,及び前記カムを前記内輪と前記外輪との前記軌道面に接触させるスプリングを備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の流路開閉用の水門駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−224649(P2007−224649A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48413(P2006−48413)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000196705)西部電機株式会社 (80)
【Fターム(参考)】