説明

流路開閉装置、および紙葉類処理装置

【課題】この発明は、流路を高速に開閉することができ、流路を開いたときの媒体の流量を所望する値に素早くコントロールできる流路開閉装置、および紙葉類処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】流路開閉装置20は、吸気管および排気管をそれぞれ接続した2つの通気孔をそれぞれ有する円柱形の2つの筐体26、27、回転の途中で吸気管の流路および排気管の流路に重なる4つの流通孔をそれぞれ有する2枚の回転板23、24、および各回転板23、24をそれぞれ独立して回転させる2つのモータ28、29を有する。一方の回転板23を回転させて2つの流路を交互に開閉すると同時に、他方の回転板24の回転量を制御して、開いた流路に対する流通孔の重なり具合を調節して、流路を流れる空気の流量をコントロールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流路を開閉すると同時に、流れる流体の流量をコントロールする流路開閉装置、およびこの流路開閉装置を備えた紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙葉類処理装置として、郵便物に沿って孔開きベルトを走行させ、ベルトの裏側に配置した吸引ノズルによってベルトの孔を吸引することでベルトの表面に郵便物を吸着させて、郵便物を1通ずつ取り出す郵便物取り出し装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この装置は、吸引ノズルとバキュームタンクの間にソレノイドバルブを備えている。
【0003】
しかして、郵便物を取り出す際には、ベルトを走行させてソレノイドバルブを開いて吸引ノズルで郵便物をベルトに吸着せしめる。郵便物を連続して取り出す際には、ソレノイドバルブを各郵便物の取り出しタイミングに合せて開閉し、先行する郵便物と次に取り出す郵便物との間にギャップを形成する。
【0004】
しかし、ソレノイドバルブを閉じて吸引ノズルによる吸引をやめても、郵便物がベルトに吸着している状態では、郵便物に作用している負圧を素早く消失させることができない。このため、郵便物を高速で取り出すべくベルトを高速で走行させてソレノイドバルブの開閉周期を短くしても、実際に郵便物に作用している負圧を瞬時に消失させることができないので、郵便物同士の間にギャップを設けた上で高速に取り出すことはできない。また、負圧を瞬時に消失させることができないと、2枚の郵便物を重ねた状態で取り出してしまう重送を生じ易い。
【0005】
図27および図28には、一般的な従来のソレノイドバルブ100の概略図を示してある。図27にはソレノイドバルブ100を開いた状態を示してあり、図28にはソレノイドバルブ100を閉じた状態を示してある。
【0006】
ソレノイドバルブ100は、一般に、略円筒形のプランジャ102を軸方向に移動させるためのコイル104、プランジャ102を収容する略円筒形のチャンバ106(図27のみに図示)、およびこのチャンバ106の底に2本の配管108、109を接続した2つの孔108a、109aを有する。上述した特許文献1の装置にこのソレノイドバルブ100を使用する場合、2本の配管108、109それぞれに吸引ノズルとバキュームタンクを接続する。
【0007】
このソレノイドバルブ100を開く場合、コイル104に通電してプランジャ102をチャンバ106から引き抜き、チャンバ106を介して2つの孔108a、109aを連通させる。反対に、このソレノイドバルブ100を閉じる際には、コイル104への通電を止めてプランジャ102をチャンバ106内に押し込んで、プランジャ102の底面をチャンバ106の底に密着させる。これにより、2つの孔108a、109aが塞がれて2本の配管108、109をつなぐ流路110が遮断される。
【0008】
しかし、この種のソレノイドバルブ100は、プランジャ102を軸方向に移動させることによって開閉されるため、イナーシャが大きい。特に、ソレノイドバルブ100に接続する配管108、109の径を大きくして空気の流量を多くしようとした場合、孔108a、109aを塞ぐプランジャ102も大径にする必要があり、その分、イナーシャも大きくなる。
【0009】
また、ソレノイドバルブ100を開くとき、コイル104に通電してプランジャ102を移動させた後、空気がチャンバ106内に流入して一定圧力に達するまで時間がかかり、通電した後、空気が流通し始めるまでの応答速度が遅い。さらに、ソレノイドバルブ100を閉じるとき、チャンバ106内の一定圧力の空気を押してプランジャ102がチャンバ106内に押し込まれるため、プランジャ102の移動速度が遅い。つまり、従来のソレノイドバルブ100は、コイル104に通電したとき、および通電を止めたときの応答速度が遅い。
【0010】
このため、特許文献1の郵便物取り出し装置のように吸引ノズルとバキュームタンクの間でソレノイドバルブ100を使用すると、上述した負圧解消の問題で郵便物の高速取り出しができないことに加え、ソレノイドバルブ100自体の応答速度が遅いことに起因して、取り出し速度がより遅くなってしまう。
【0011】
また、特許文献1の郵便物取り出し装置にソレノイドバルブ100を使用すると、比較的サイズの大きい重い郵便物を孔開きベルトに吸着させることが難しくなる。つまり、ソレノイドバルブ100は、図27に示すように、開状態のとき、その構造上の問題から、複数回折れ曲がった流路を通して空気を流通させる必要があり、通過抵抗が大きく流量を大きくすることが難しい。このため、吸引ノズルを介して比較的多量の空気を吸引することが難しく、重い郵便物を吸着し難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許5,391,051
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年、この種の郵便物取り出し装置では、A4サイズを超えるより大きいサイズの郵便物を通常サイズの郵便物に混在させた状態で、高速に連続して取り出す要求が高まりつつある。このようにサイズの大きい比較的重い郵便物を取り出す場合、ベルトに郵便物を吸着させる際の吸着力を強くする必要がある。
【0014】
仮に、上述した通過抵抗の問題を解消して、サイズの大きい郵便物に合せて、吸引ノズルで吸引する空気の量を多くできたとしても、郵便物に作用させる吸着力を強くすると、比較的サイズの小さい薄くて軽いはがきのような郵便物を取り出す際に、2枚重ねて取り出してしまう重送を生じ易くなる。
【0015】
このため、通常は、当該郵便物取り出し装置で取り扱う最大サイズの郵便物を吸着できる最小の吸着力となるように、吸引する空気の量をコントロールすることになるが、重送を少なくできる反面、最大サイズの郵便物の取り出しができなくなる可能性が高くなってしまう。
【0016】
つまり、サイズや重さの異なる郵便物を混在させて処理する場合、ベルトによる吸着力を一定にした方法では限界がある。このため、吸着する郵便物のサイズに応じてベルトによる吸着力を変える方法が望まれる。
【0017】
しかし、ベルトによる吸着力を変えるため、吸引ノズルによる空気の吸引量を変えようとした場合、1通ごとに高速で吸引量を変化させることは極めて難しく、高速取り出しには対応できない。
【0018】
この発明の目的は、流路を高速に開閉することができ、流路を開いたときの流体の流量を所望する値に素早くコントロールできる流路開閉装置、およびこの流路開閉装置を用いた紙葉類処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の流路開閉装置は、隣接する2つの流路を横切る面に沿って移動可能に設けられ、移動の途中で上記2つの流路それぞれに重なる第1の流通孔を有し、この第1の流通孔を一方の流路に重ねてこの一方の流路を全開にするとともに、他方の流路をこの第1の流通孔以外の部位で遮断する第1の移動体と、この第1の移動体に近接して上記2つの流路を横切る面に沿って移動可能に設けられ、移動の途中で上記2つの流路それぞれに重なる第2の流通孔を有し、上記第1の流通孔が上記一方の流路を全開にする位置に上記第1の移動体が移動したとき、上記第2の流通孔がこの一方の流路に少なくとも部分的に重なる位置に移動する第2の移動体と、を有する。
【0020】
この発明によると、第1の移動体の第1の流通孔と第2の移動体の第2の流通孔を一方の流路に重ねることで、一方の流路を開くようにしているため、第1および第2の流通孔の大きさを所望する大きさに設計することによって、多量の流体を一斉に流通させることができる。
【0021】
また、上記発明によると、第1の移動体と第2の移動体を流路を横切る面に沿って移動させることで、2つの流路を選択的に開閉するようにしているため、流路を高速に開閉することができる。
【0022】
さらに、上記発明によると、第1の流通孔を一方の流路に重ねて全開にすると同時に、第2の流通孔を一方の流路に少なくとも部分的に重ねることで、一方の流路を流れる流体の流量を所望する値にコントロールすることができる。つまり、この場合、第2の移動体の移動量をコントロールして、第2の流通孔の一方の流路に対する重なり具合をコントロールすることによって、一方の流路を流れる流体の流量を所望する値にコントロールすることができる。
【0023】
また、本発明の紙葉類処理装置は、複数枚の紙葉類を重ねて投入する投入部と、この投入部に投入された紙葉類のうち重ね方向一端の紙葉類に沿って走行する吸着孔を有する取り出し部材と、この取り出し部材の裏面側から上記吸着孔を吸引して当該取り出し部材の表面側に負圧を発生させ、上記一端の紙葉類を当該取り出し部材の表面に吸着させる負圧発生部と、この負圧発生部に吸気管および排気管を介して接続した吸気装置と、上記吸気管および排気管の途中に設けられた流路開閉装置と、を有し、この流路開閉装置は、上記吸気管および排気管をそれぞれ流れる空気の流路を横切る面に沿って移動可能に設けられ、移動の途中で上記2つの流路それぞれに重なる第1の流通孔を有し、この第1の流通孔を一方の流路に重ねてこの一方の流路を全開にするとともに、他方の流路をこの第1の流通孔以外の部位で遮断する第1の移動体と、この第1の移動体に近接して上記2つの流路を横切る面に沿って移動可能に設けられ、移動の途中で上記2つの流路それぞれに重なる第2の流通孔を有し、上記第1の流通孔が上記一方の流路を全開にする位置に上記第1の移動体が移動したとき、上記第2の流通孔がこの一方の流路に少なくとも部分的に重なる位置に移動する第2の移動体と、を有する。
【0024】
この発明によると、吸気装置によって負圧発生部内の空気を吸引する吸気管を流れる空気の流路を高速で開閉することができ、多量の空気を一斉に吸引することができるため、サイズの大きい比較的重い紙葉類であっても、確実に取り出し部材の表面に吸着させることができる。特に、この発明によると、吸気管の流路に重なる第2の流通孔の重なり具合をコントロールするように第2の移動体の移動量をコントロールすることができるため、吸気管を流れる空気の流量を高速且つ確実に所望する流量にコントロールすることができる。このため、紙葉類のサイズや重さに合せて、取り出し部材に対する当該紙葉類の吸着力を、各紙葉類毎にコントロールすることができる。
【0025】
更に、本発明の流路開閉装置は、流路を横切る方向に移動可能に設けられ、移動の途中で上記流路に重なる第1の流通孔を有し、この第1の流通孔を上記流路に重ねてこの流路を全開にする第1の移動体と、この第1の移動体に近接して上記流路を横切る方向に移動可能に設けられ、移動の途中で上記流路に重なる第2の流通孔を有し、上記第1の流通孔が上記流路を全開にする位置に上記第1の移動体が移動したとき、上記第2の流通孔が上記流路に少なくとも部分的に重なる位置に移動する第2の移動体と、を有する。
【0026】
上記発明によると、流路を横切る方向に第1および第2の移動体を移動させて第1および第2の流通孔を流路に重ねることにより、流路を開閉させるようにしているため、多量の流体を一斉に流通および遮断することができる。また、第2の流通孔の流路に対する重なり具合をコントロールすることにより、流体の流通量を高速且つ確実に所望する量にコントロールすることができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明の流路開閉装置は、上記のような構成および作用を有しているので、流路を高速に開閉することができ、流路を開いたときの流体の流量を所望する値に素早くコントロールできる。
【0028】
また、この発明の紙葉類処理装置によると、上記のような構成および作用を有する流路開閉装置を用いたため、重さの異なる複数種類の紙葉類を混在させた状態で、複数枚の紙葉類を高速且つ確実に連続して取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、この発明の実施の形態に係る紙葉類取り出し装置を上方から見た概略平面図である。
【図2】図2は、図1の取り出し装置の動作を制御する制御系のブロック図である。
【図3】図3は、図1の取り出し装置に組み込まれた取り出しベルトを部分的に示す部分拡大図である。
【図4】図4は、図1の取り出し装置に組み込まれた流路開閉装置の接続状態を示す概略図である。
【図5】図5は、図4の流路開閉装置の内部構造を説明するための透視図である。
【図6】図6は、図4の流路開閉装置の動作を制御する制御系のブロック図である。
【図7】図7は、図4の流路開閉装置で吸気管の流路を全開にした際の2枚の回転板の流通孔の位置を示す概略図である。
【図8】図8は、図4の流路開閉装置で排気管の流路を全開にした際の2枚の回転板の流通孔の位置を示す概略図である。
【図9】図9は、図4の流路開閉装置で吸気管の流路を全開にした状態から排気管の流路を半開にする際の2枚の回転板の挙動を説明するための概略図である。
【図10】図10は、図4の流路開閉装置で排気管の流路を全開にした状態から吸気管の流路を半開にする際の2枚の回転板の挙動を説明するための概略図である。
【図11】図11は、図9および図10で説明したように2枚の回転板を回転させた際の角速度の経時変化を示すグラフである。
【図12】図12は、図9および図10で説明したように2枚の回転板を回転させた際の角速度の経時変化を示すグラフである。
【図13】図13は、図9および図10で説明したように2枚の回転板を回転させた際の角速度の経時変化を示すグラフである。
【図14】図14は、図4の流路開閉装置で吸気管の流路を全開にした状態から排気管の流路を半開にする際の2枚の回転板の挙動を説明するための概略図である。
【図15】図15は、図4の流路開閉装置で排気管の流路を全開にした状態から吸気管の流路を半開にする際の2枚の回転板の挙動を説明するための概略図である。
【図16】図16は、図14および図15で説明したように2枚の回転板を回転させた際の角速度の経時変化を示すグラフである。
【図17】図17は、図14および図15で説明したように2枚の回転板を回転させた際の角速度の経時変化を示すグラフである。
【図18】図18は、図14および図15で説明したように2枚の回転板を回転させた際の角速度の経時変化を示すグラフである。
【図19】図19は、図4の流路開閉装置で排気管の流路を半開にした状態から吸気管の流路を全開にする際の2枚の回転板の挙動を説明するための概略図である。
【図20】図20は、図4の流路開閉装置で排気管の流路を半開にした状態から吸気管の流路を全開にする際の2枚の回転板の挙動を説明するための概略図である。
【図21】図21は、図4の流路開閉装置で吸気管の流路を半開にした状態から排気管の流路を全開にする際の2枚の回転板の挙動を説明するための概略図である。
【図22】図22は、図4の流路開閉装置で吸気管の流路を半開にした状態から排気管の流路を全開にする際の2枚の回転板の挙動を説明するための概略図である。
【図23】図23は、図4の流路開閉装置で排気管の流路を半開にした状態から吸気管の流路を全開にする際の2枚の回転板の挙動を説明するための概略図である。
【図24】図24は、図4の流路開閉装置で排気管の流路を半開にした状態から吸気管の流路を全開にする際の2枚の回転板の挙動を説明するための概略図である。
【図25】図25は、図4の流路開閉装置で吸気管の流路を半開にした状態から排気管の流路を全開にする際の2枚の回転板の挙動を説明するための概略図である。
【図26】図26は、図4の流路開閉装置で吸気管の流路を半開にした状態から排気管の流路を全開にする際の2枚の回転板の挙動を説明するための概略図である。
【図27】図27は、従来のソレノイドバルブを開いた状態を示す概略図である。
【図28】図28は、図27のソレノイドバルブを閉じた状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1には、この発明の紙葉類処理装置の1実施形態として、郵便物取り出し装置1(以下、単に、取り出し装置1と称する)を上方から見た概略平面図を示してある。また、図2には、取り出し装置1の動作を制御する制御系のブロック図を示してある。この取り出し装置1は、処理対象となる紙葉類として、例えば、サイズや重さの異なる複数種類の郵便物Pを混在させた状態で処理する装置である。
【0031】
取り出し装置1は、投入部2、供給機構3、取り出しベルト4(取り出し部材)、負圧チャンバ5(負圧発生部)、吸引チャンバ6、分離ローラ7、搬送ベルト8a、8b(以下、総称して搬送ベルト8と称する場合もある)、複数のセンサS1〜S6、および装置全体の動作を制御する制御部10などを有する。
【0032】
制御部10には、複数のセンサS1〜S6、供給機構3の図示しないフロアベルトやバックアッププレートを動作させるモータ11、取り出しベルト4を矢印T方向に走行させるモータ12、負圧チャンバ5を真空引きするポンプ13(吸気装置)、吸引チャンバ6を吸引するブロア14、分離ローラ7に分離トルクを付与するモータ15、分離ローラ7の周面に負圧を発生させるためのポンプ16、および搬送ベルト8を走行させるモータ17が接続されている。
【0033】
投入部2には、複数枚の郵便物Pが集積状態で且つ立位で投入される。投入部2へ投入された郵便物Pは、供給機構3によってその集積方向一端側(図1中左側)へ移動されて集積方向一端(図1中左端)の郵便物Pが取り出し位置Sへ供給される。供給機構3は、取り出し位置Sへ供給した郵便物Pが取り出される度に動作して、常に集積方向一端にある郵便物Pを取り出し位置Sへ供給する。
【0034】
取り出しベルト4は、複数のプーリ18に巻回されて無端状に張設されている。取り出しベルト4の一部は、取り出し位置Sに供給された郵便物Pに接触して、当該郵便物Pの面方向、すなわち取り出し方向(図1中矢印T方向)に一定速度で走行する。負圧チャンバ5は、この取り出しベルト4の内側で、取り出しベルト4を挟んで取り出し位置Sに対向する位置に配置されている。
【0035】
取り出しベルト4には、図3に示すように、複数の吸着孔4aが形成されている。一方、負圧チャンバ5は、取り出しベルト4の裏面に対向する開口5aを有する。しかして、取り出しベルト4を走行させて負圧チャンバ5を真空引きすると、負圧チャンバ5が減圧されて、負圧チャンバ5の開口5aおよび取り出しベルト4の吸着孔4aを介して取り出し位置Sの郵便物Pに負圧が作用し、当該郵便物Pが取り出しベルト4の表面に吸着される。取り出しベルト4に吸着された郵便物Pは、ベルト4の走行によって取り出し位置Sから矢印T方向に取り出される。
【0036】
取り出し位置Sから取り出された郵便物Pは、搬送路9を介して図1で上方に搬送され、搬送ベルト8へ受け渡される。搬送路9に沿って設けられた複数のセンサS1〜S6は、透過型(片側図示せず)の光センサであり、センサの光路を郵便物Pが遮ることを検出(センサ出力;暗)するとともに、光路上に郵便物Pが存在しないことを検出(センサ出力;明)する。つまり、これら各センサS1〜S6は、それぞれ、郵便物Pの搬送方向先端および後端通過を検知する。
【0037】
吸引チャンバ6は、郵便物Pの取り出し方向に沿って取り出しベルト4の上流側(図中下側)で、取り出し位置Sに開口6aを対向せしめて配置されている。しかして、ブロア14が動作されると、吸引チャンバ6の開口6aから空気が吸引され、取り出し位置Sに空気流が発生する。この空気流は、投入部2に投入された複数枚の郵便物Pのうち集積方向一端の郵便物Pを取り出し位置Sへ素早く吸引するよう機能する。
【0038】
分離ローラ7は、取り出し位置Sの取り出し方向下流側で、搬送路9を挟んで取り出しベルト4とは反対側に配置されている。分離ローラ7は、内部にチャンバ7aを有する略円筒形のコア7b、およびこのコア7bの外周に回転可能に設けられた略円筒形のスリーブ7cを有する。コア7bは、開口7dを搬送路9に向けて固定的に取り付けられている。スリーブ7cは、複数の吸着孔7eを有する。しかして、ポンプ16を動作させてコア7bのチャンバ7aを真空引きすると、チャンバ7aが減圧されて、コア7bの外周を回転するスリーブ7cの複数の吸着孔7eを介して分離ローラ7の周面に負圧が発生する。
【0039】
つまり、モータ15によってスリーブ7cに取り出し方向Tと逆方向の分離トルクを付与し、ポンプ16によってスリーブ7cの外周面に負圧を発生させることで、取り出し位置Sから取り出された郵便物Pに連れ出された2枚目以降の郵便物Pを分離することができる。
【0040】
また、搬送路9を挟んで分離ローラ7に対向する側(図中左側)には、無端状の搬送ベルト8aが張設されている。一方、搬送路9を挟んで搬送ベルト8aに対向する位置にも、無端状の搬送ベルト8bが張設されている。すなわち、2本の搬送ベルト8a、8bの間で、分離ローラ7の下流側の搬送路9が規定されている。しかして、取り出しベルト4によって取り出し位置Sから取り出された郵便物Pの取り出し方向先端が搬送ベルト8a、8bのニップ8cで挟持され、搬送ベルト8a、8bに受け渡されて下流側へと搬送される。
【0041】
ここで、投入部2を介して投入された複数通の郵便物Pを搬送路9上に1枚ずつ取り出す動作について説明する。
複数通の郵便物Pが投入部2を介して取り出し装置1に投入されると、供給機構3によって郵便物Pが取り出し位置Sへ順次供給され、取り出しベルト4に吸着されて搬送路9上へ取り出される。搬送路9を介して搬送される郵便物Pは、複数のセンサS1〜S6を介して、制御部10によって、その搬送位置および搬送状態が監視される。
【0042】
郵便物Pの取り出し時には、ポンプ13によって負圧チャンバ5が真空引きされて、負圧チャンバ5内の圧力が減圧され、この減圧された圧力によって、取り出しベルト4の表面に負圧が発生される。また、投入部2に投入された郵便物Pのうち集積方向一端の郵便物Pには、吸引チャンバ6によって常に取り出し位置Sに向かう空気流が作用される。つまり、吸引チャンバ6によって集積方向一端の郵便物Pが素早く取り出し位置Sに引き寄せられ、取り出しベルト4に吸着されて取り出される。
【0043】
取り出し位置Sから取り出された郵便物Pは、搬送ベルト8a、8bのニップ8cに突入し、取り出し方向先端がニップ8cで挟持されて、さらに下流へと搬送される。取り出された郵便物Pがニップ8cに到達したことは、センサS5の出力が明から暗になったことをもって検知される。このとき、搬送ベルト8a、8bの走行速度は、取り出しベルト4の走行速度より僅かに速い速度に設定されており、当該郵便物Pは、搬送ベルト8a、8bによって引き抜かれて搬送されることになる。
【0044】
取り出し位置Sから取り出された郵便物Pに重なった状態で2枚目以降の郵便物Pが連れ出された場合、2枚目以降の郵便物Pが分離ローラ7によって分離される。このとき、分離ローラ7の周面には負圧が発生されており、スリーブ7cには取り出し方向と逆方向の分離トルクが付与されている。1枚の郵便物Pが正常に取り出された際には、分離ローラ7のスリーブ7cが取り出し方向に沿って連れ回り、2枚重なった状態で取り出された場合には、スリーブ7cが逆転する。これにより、2枚目以降の郵便物Pが逆方向に戻されて1枚目の郵便物Pと分離される。
【0045】
ところで、上述したように、複数通重なった状態で投入された郵便物Pを1枚ずつに分離して搬送路9上に取り出す場合、負圧チャンバ5の負圧をON/OFF制御するか、或いは取り出しベルト4を間歇的に走行させることにより、郵便物P同士の間にギャップを形成する。これらギャップの大きさは、取り出し装置1の下流の搬送路9に接続された処理装置(ここでは図示および説明を省略する)における郵便物Pの処理能力に応じて決まる。および/或いは、これらギャップの大きさは、搬送路9の下流に配置された図示しないゲートの切り換え速度に応じて決まる。
【0046】
例えば、下流側の処理装置における処理効率を高めるとともに、十分な処理時間を与えるためには、郵便物P間のギャップを所望する長さに安定してコントロールすることが望ましい。しかし、取り出しベルト4を間歇的に動作させてギャップを形成する方法では、ベルトの加速および減速に必要とされる時間を高い精度でコントロールすることが難しく、加減速時にベルトと郵便物Pとの間に滑りを生じる可能性がある。
【0047】
一方、負圧チャンバ5の負圧をON/OFF制御するため、ポンプ13と負圧チャンバ5をつなぐ配管の途中に上述した従来のソレノイドバルブを設けて、このソレノイドバルブを開閉制御することで、郵便物同士のギャップをコントロールする方法が考えられる。しかし、この方法では、上述したように、ソレノイドバルブ自体の応答速度が遅いことに加え、ソレノイドバルブを閉じてポンプ13による吸引をやめても、郵便物Pがベルトに吸着している状態では、負圧チャンバ5内の負圧が暫く残るため、大気圧に戻るまでに時間を要する。
【0048】
また、ソレノイドバルブを開閉して負圧をON/OFF制御する方法では、比較的サイズの大きい重い郵便物Pを所望するタイミングで取り出すことは難しい。つまり、上述した通過抵抗の問題から、ソレノイドバルブを通過する空気の流量を多くすることは難しく、重い郵便物Pを吸着するのに十分な強さの吸着力を発生させることは難しい。仮に、負圧チャンバ5を吸引するポンプ13の容量を大きくして、取り出しベルト4に対する郵便物Pの吸着力を強くできたとしても、ポンプ13による空気の吸引量を郵便物Pの重さに応じて高速に切り換えることは難しく、重さの異なる全ての郵便物Pを同じタイミングで高速に取り出すことは極めて困難である。
【0049】
このため、いずれの方法でも、郵便物P同士のギャップを所望する長さにコントロールすることは難しく、郵便物Pのサイズや重さに関わらず、所望するタイミングで高速且つ確実に複数通の郵便物Pを連続して所望するギャップで取り出しできる取り出し装置の開発が望まれていた。
【0050】
これに対し、本願発明者等は、図4に概略図を示すように、負圧チャンバ5とポンプ13をつなぐ吸気管21と排気管22の途中に、本発明の実施の形態に係る流路開閉装置20を設けることで、上記の問題を解決した。つまり、以下に説明する流路開閉装置20を用いることで、重さの異なる複数通の郵便物を混在させて高速に処理することができるようになった。
【0051】
以下、この流路開閉装置20の構造について、図4乃至図6を参照して詳細に説明する。図4には、流路開閉装置20を取り出し装置1に組み込んだ状態の概略図を示してあり、図5には、流路開閉装置20の内部構造の概略透視図を示してあり、図6には、流路開閉装置20の動作を制御する制御系のブロック図を示してある。なお、この流路開閉装置20は、上述した取り出し装置1の制御部10によって動作制御される。
【0052】
流路開閉装置20は、図4に示すように、負圧チャンバ5とポンプ13をつなぐ吸気管21と排気管22の途中に取り付けられている。吸気管21は、ポンプ13による吸引動作によって、負圧チャンバ5内の空気をポンプ13に向けて流通させるための流路を規定している。排気管22は、ポンプ13の排気を負圧チャンバ5内へ送り込むための流路を規定している。
【0053】
言い換えると、吸気管21は、空気の流通方向に沿って、流路開閉装置20より上流側の配管21aと、流路開閉装置20より下流側の配管21bと、に分割されている。また、排気管22も、空気の流通方向に沿って、流路開閉装置20より上流側の配管22aと、流路開閉装置20より下流側の配管22bと、に分割されている。そして、流路開閉装置20内を、分割された吸気管21a、21bをつなぐ流路と、分割された排気管22a、22bをつなぐ流路と、が通っている。なお、流路開閉装置20は、これら2つの流路を選択的に開閉するよう機能する。
【0054】
流路開閉装置20は、図5に示すように、互いに近接して平行且つ同軸に配置された2枚の円形の回転板23、24を有する。一方の回転板23は、この発明の第1の移動体として機能し、他方の回転板24は、この発明の第2の移動体として機能する。つまり、これら2枚の回転板23、24は、吸気管21を流れる空気(流体)の流路と排気管22を流れる空気の流路を横切る面に沿って移動可能に設けられている。
【0055】
本実施の形態では、一方の回転板23は、回転方向に沿って離間して等間隔で形成された4つの略扇形の流通孔23a、23b、23c、23dを有する。また、他方の回転板24は、回転方向に沿って離間して等間隔で形成された4つの略扇形の流通孔24a、24b、24c、24dを有する。言い換えると、これら複数の流通孔23a、23b、23c、23d、24a、24b、24c、24dは、各回転板23、24の回転角度にして90°間隔でそれぞれ配置されている。
【0056】
一方の回転板23の4つの流通孔23a、23b、23c、23dは、それぞれ、回転板23の回転(移動)の途中で、吸気管21の流路に重なるとともに、排気管22の流路に重なるこの発明の第1の流通孔として機能する。他方の回転板24の4つの流通孔24a、24b、24c、24dは、それぞれ、回転板24の回転(移動)の途中で、吸気管21の流路に重なるとともに、排気管22の流路に重なるこの発明の第2の流通孔として機能する。
【0057】
2枚の回転板23、24は、円筒形のケース25内に回転可能に収容配置されている。また、2枚の回転板23、24の軸方向外側で且つケース25の内側には、上述した吸気管21の流路と排気管22の流路の一部を構成するための2枚の円柱形の筐体26、27がケース25に対して固定的に配置されている。筐体26、27は、回転板23、24より厚く、回転板23、24と略同じ直径を有する。
【0058】
これら2つの筐体26、27は、それぞれ、吸気管21を通る流路の一部を構成する通気孔26a、27aと、排気管22を通る流路の一部を構成する通気孔26b、27bと、を有する。言い換えると、一方の筐体26の一方の通気孔26aには吸気管21の上流側の配管21aが接続され、他方の通気孔26bには排気管22の下流側の配管22bが接続されている。また、他方の筐体27の一方の通気孔27aには吸気管21の下流側の配管21bが接続され、他方の通気孔27bには排気管22の上流側の配管22aが接続されている。つまり、一方の筐体26の一方の通気孔26aと他方の筐体27の一方の通気孔27aが同軸に配置され、一方の筐体26の他方の通気孔26bと他方の筐体27の他方の通気孔27bが同軸に配置されている。
【0059】
本実施の形態では、一方の筐体26に形成した2つの通気孔26a、26b、および他方の筐体27に形成した2つの通気孔27a、27bは、それぞれ、上述した回転板23、24の流通孔23a、23b、23c、23d、24a、24b、24c、24dのピッチ(回転方向に沿った配置間隔)の半分のピッチで周方向に互いに近接して設けられている。このため、例えば、回転板23の1つの流通孔23aを筐体26の一方の通気孔26aに完全に重ねた状態では、筐体26の他方の通気孔26bは、回転板23の2つの流通孔23a、23b間の部位で完全に閉塞される。
【0060】
さらに、ケース25の軸方向外側には、2つのモータ28、29が設けられている。一方のモータ28は、一方の筐体26の中心を貫通して延びた回転軸28aを有し、この回転軸28aの先端に一方の回転板23が同軸に取り付けられている。また、他方のモータ29は、他方の筐体27の中心を貫通して延びた回転軸29aを有し、この回転軸29aの先端に他方の回転板24が同軸に取り付けられている。これら2つのモータ28、29は、それぞれ、2つの回転板23、24を両方向に所望する角度だけそれぞれ独立して回転する。
【0061】
図6に示すように、流路開閉装置20の制御部10には、2枚の回転板23、24をそれぞれ独立して所望する方向に所望する角度で回転させる2つのモータ28、29が接続されている。また、制御部10には、CCDラインセンサ32を接続した画像処理部34、負圧チャンバ5に取り付けられた内圧センサ36、および後述する制御テーブルを格納したメモリ38を有する。
【0062】
CCDラインセンサ32は、図1に示すように、投入部2の底に取り付けられており、取り出し位置Sの近傍に供給された郵便物Pの下端辺の画像を撮像する。画像処理部34は、CCDラインセンサ32で撮像した画像を処理したデータを制御部10へ送る。制御部10は、この画像処理部34から送られたデータに基づいて、取り出し部Sに向かって供給される複数通の郵便物Pの厚さを検出する。つまり、CCDラインセンサ32と画像処理部34が、本発明の厚さ検出部として機能する。
【0063】
内圧センサ36は、図4に示すように、負圧チャンバ5に外付けされている。この内圧センサ36は、負圧チャンバ5の内部圧力を測定するために設けられている。
【0064】
また、メモリ38に格納された図示しない制御テーブルには、1つ前の郵便物Pを取り出した後の回転板24(第2の移動体)の停止位置に対する、次の郵便物Pを取り出す際の当該回転板24の適切な回転方向および回転角度に関するデータが格納されている。この制御テーブルは、上述した厚さ検出部32、34で検出される郵便物Pの厚さ(すなわち重さ)毎に用意されている。
【0065】
上記構造の流路開閉装置20を動作させて吸気管21を流れる空気の流路(以下、単に、吸気管21の流路と称する)を全開にして排気管22を流れる空気の流路(以下、単に、排気管22の流路と称する)を閉じる場合、例えば、2枚の回転板23、24を図7に示す回転位置まで回転させて停止させる。この状態で、回転板23の流通孔23aが吸気管21の流路に重なるとともに、回転板24の流通孔24aが吸気管21の流路に重なって、吸気管21の流路が開通される。また、この状態で、回転板23の流通孔以外の部位(ここでは流通孔23aと23bとの間の部位)が排気管22の流路に重なるとともに、回転板24の流通孔以外の部位(ここでは流通孔24aと24bとの間の部位)が排気管22の流路に重なって、排気管22の流路が閉じられる。
【0066】
一方、流路開閉装置20を動作させて吸気管21流路を閉じて排気管22の流路を全開にする場合、例えば、2枚の回転板23、24を図8に示す回転位置まで回転させて停止させる。この状態で、回転板23の流通孔23aが排気管22の流路に重なるとともに、回転板24の流通孔24aが排気管22の流路に重なって、排気管22の流路が開通される。また、この状態で、回転板23の流通孔以外の部位(ここでは流通孔23aと23dとの間の部位)が吸気管21の流路に重なるとともに、回転板24の流通孔以外の部位(ここでは流通孔24aと24dとの間の部位)が吸気管21の流路に重なって、吸気管21の流路が閉じられる。
【0067】
つまり、吸気管21の流路を全開にする場合には、2枚の回転板23、24それぞれの1つの流通孔を吸気管21の流路に同時に重ねる必要があり、排気管22の流路を全開にするためには、2枚の回転板23、24それぞれの1つの流通孔を排気管22の流路に同時に重ねる必要がある。言い換えると、図7に示す状態および図8に示す状態のいずれかの状態に2枚の回転板23、24を回転させて停止させることで、吸気管21の流路と排気管22の流路を選択的に開閉させることができる。
【0068】
本実施の形態では、ポンプ13を常に作動させて負圧チャンバ5を常に真空引きすることを前提として、取り出しベルト4に郵便物Pを吸着させないタイミングでは、吸気管21の流路を閉じると同時に排気管22の流路を開くように(図8に示す状態)流路開閉装置20を制御するようにしている。本実施の形態の流路開閉装置20を用いることで、吸気管21の流路を瞬時に閉じることができると同時に、ポンプ13によって真空引きした状態の負圧チャンバ5内に排気管22を介して多量の空気を瞬時に流入することができるため、所望するタイミングで負圧チャンバ5を瞬時に大気圧に開放できる。
【0069】
このように、本実施の形態では、負圧チャンバ5を常に真空引きしているため、チャンバ5内の負圧を解消するためには、多量の空気を一斉に負圧チャンバ5内に送り込む必要がある。しかし、従来のようにソレノイドバルブをOFFにするだけの制御では、多量の空気がチャンバ5内に一斉に送り込まれることはないので、負圧が無くなるまで時間がかかる。
【0070】
このため、郵便物P間のギャップを所望する値に高精度に制御するためには、郵便物Pを吸着しないとき、所望するタイミングで負圧チャンバ5内に多量の空気を一斉に送り込むことが重要である。本実施の形態では、排気管22の流路を円形の比較的大きな断面に形成でき、2枚の回転板23、24を回転させるだけで、瞬時に負圧チャンバ5内に多量の空気を送り込むことができるため、極めて短い時間で負圧を無くすことができる。
【0071】
一方、取り出し位置Sに供給された郵便物Pを矢印T方向に走行している取り出しベルト4の表面に吸着させて、当該郵便物Pを所望するタイミングで搬送路9上に取り出すためには、取り出しベルト4の表面に瞬時に所望する強さの吸着力を生出させる必要がある。この場合、図7に示す状態に流路開閉装置20を動作させることで、取り出し位置Sの郵便物Pに最も強い吸着力を作用させることができる。このときの吸着力は、ポンプ13の吸引能力に依存する。
【0072】
しかし、比較的サイズの小さい薄くて軽いはがきなどの郵便物Pを取り出しベルト4に吸着させて取り出す場合、取り出しベルト4の表面に生出させる吸着力が強すぎると、その次に取り出す予定の郵便物Pまでもいっしょに吸着して取り出してしまういわゆる重送を生じる可能性が高くなる。つまり、郵便物Pを取り出しベルト4に吸着させる吸着力は、当該郵便物Pのサイズや重さに応じて適切な大きさに設定することが望ましい。
【0073】
このため、本実施の形態では、上述した流路開閉装置20を用いて、郵便物に対する吸着力を1通毎に変化させるようにした。具体的には、流路開閉装置20の2枚の回転板23、24に形成された流通孔の各流路に対する重なり具合を調節することで、吸気管21を介して吸引する空気の流量を制御して、取り出しベルト4の表面に生出させる負圧の大きさをコントロールするようにした。
【0074】
つまり、比較的サイズの小さい薄くて軽いはがきなどの郵便物Pを取り出す際には、吸気管21を流れる空気の流量を少なくして吸着力を弱め、A4サイズを超える比較的厚くて重い郵便物Pを取り出す際には、吸気管21を流れる空気の流量を多くして吸着力を強めるようにした。
【0075】
ここでは、まず初めに、上述した流路開閉装置20の基本動作について、いくつかの例を挙げて説明する。
【0076】
例えば、吸気管21の流路を全開にした状態から、吸気管21の流路を閉じるとともに、排気管22の流路を半開にする場合、図9の左図から右図に示すように、2枚の回転板23、24を回転させる。具体的には、一方の回転板23を図中時計回り方向に45°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔23aを排気管22の流路に重ねるとともに、回転板23の流通孔以外の部位(図9では流通孔23a、23d間の部位)で吸気管21の流路を閉じる。同時に、他方の回転板24を図中時計回り方向(同じ方向)に22.5°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔24aを排気管22の流路に半分だけ重ねる。
【0077】
また、排気管22の流路を全開にした状態から、排気管22の流路を閉じるとともに、吸気管21の流路を半開にする場合、例えば、図10の左図から右図に示すように、2枚の回転板23、24を回転させる。具体的には、一方の回転板23を図中時計回り方向に45°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔23dを吸気管21の流路に重ねるとともに、回転板23の流通孔以外の部位(図10では流通孔23a、23d間の部位)で排気管22の流路を閉じる。同時に、他方の回転板24を図中時計回り方向(同じ方向)に22.5°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔24dを吸気管21の流路に半分だけ重ねる。
【0078】
図9および図10で説明したように2枚の回転板23、24を回転させる場合の回転速度パターンとして、例えば、図11乃至図13に図示したパターンが考えられる。図11のパターンでは、一方の回転板23(遮蔽板1として図示)を制約時間t1の間に加速および減速させて45°回転させているのに対し、他方の回転板24(遮蔽板2として図示)を一方の回転板23の回転開始から少し遅れてt1より短い時間t2の間に加速および減速させて22.5°回転させている。図12のパターンでは、一方の回転板23を時間t1の間に加減速させて45°回転させ、他方の回転板24を同じ時間t1の間に加減速させて22.5°回転させている。図13のパターンでは、2枚の回転板23、24を同じ角加速度で加速させるとともに減速させ、回転角度の小さい方の回転板24を短い時間t2の間に停止している。
【0079】
いずれにしても、一方の回転板23を45°回転させて他方の回転板24を同じ方向に22.5°回転させる場合、回転板24の角速度を制御時間t2で積分した値が、回転板23の角速度を制御時間t1で積分した値のちょうど半分になる速度パターンで2枚の回転板23、24を回転させれば良い。また、このとき、一方の回転板23をモータ28の最大速度で回転することを前提にした場合、他方の回転板24の回転速度がモータ29の限界速度を超えることがない。
【0080】
また、吸気管21の流路を全開にした状態から、吸気管21の流路を閉じるとともに、排気管22の流路を半開にする場合、例えば、図14の左図から右図に示すように、2枚の回転板23、24を回転させても良い。具体的には、一方の回転板23を図中時計回り方向に45°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔23aを排気管22の流路に重ねるとともに、回転板23の流通孔以外の部位(図14では流通孔23a、23d間の部位)で吸気管21の流路を閉じる。同時に、他方の回転板24を図中反時計回り方向(逆方向)に22.5°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔24bを排気管22の流路に半分だけ重ねる。
【0081】
また、排気管22の流路を全開にした状態から、排気管22の流路を閉じるとともに、吸気管21の流路を半開にする場合、例えば、図15の左図から右図に示すように、2枚の回転板23、24を回転させても良い。具体的には、一方の回転板23を図中時計回り方向に45°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔23dを吸気管21の流路に重ねるとともに、回転板23の流通孔以外の部位(図15では流通孔23a、23d間の部位)で排気管22の流路を閉じる。同時に、他方の回転板24を図中反時計回り方向(逆方向)に22.5°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔24aを吸気管21の流路に半分だけ重ねる。
【0082】
図14および図15で説明したように2枚の回転板23、24を回転させる場合の回転速度パターンとして、例えば、図16乃至図18に図示したパターンが考えられる。図16のパターンでは、一方の回転板23(遮蔽板1として図示)を制約時間t1の間に加速および減速させて45°回転させているのに対し、他方の回転板24(遮蔽板2として図示)を一方の回転板23の回転開始から少し遅れてt1より短い時間t2の間に加速および減速させて逆方向に22.5°回転させている。図17のパターンでは、一方の回転板23を時間t1の間に加減速させて45°回転させ、他方の回転板24を同じ時間t1の間に加減速させて逆方向に22.5°回転させている。図18のパターンでは、他方の回転板24を一方の回転板23と同じ角加速度で逆方向に回転させ、t1より短い時間t2の間に停止している。
【0083】
いずれにしても、一方の回転板23を45°回転させて他方の回転板24を逆方向に22.5°回転させる場合、回転板24の角速度を制御時間t2で積分した値が、回転板23の角速度を制御時間t1で積分した値のちょうど半分になる速度パターンで2枚の回転板23、24を回転させれば良い。また、このとき、一方の回転板23をモータ28の最大速度で回転することを前提にした場合、他方の回転板24の回転速度がモータ29の限界速度を超えることがない。
【0084】
また、排気管22の流路を半開にした状態から、排気管22の流路を閉じるとともに、吸気管21の流路を全開にする場合、例えば、図19の左図から右図に示すように、2枚の回転板23、24を回転させる。具体的には、一方の回転板23を図中時計回り方向に45°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔23dを吸気管21の流路に重ねるとともに、回転板23の流通孔以外の部位(図19では流通孔23a、23d間の部位)で排気管22の流路を閉じる。同時に、他方の回転板24を図中時計回り方向(同じ方向)に67.5°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔24dを吸気管21の流路に重ねる。
【0085】
また、排気管22の流路を半開にした状態から、排気管22の流路を閉じるとともに、吸気管21の流路を全開にする場合、例えば、図20の左図から右図に示すように、2枚の回転板23、24を回転させる。具体的には、一方の回転板23を図中時計回り方向に45°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔23dを吸気管21の流路に重ねるとともに、回転板23の流通孔以外の部位(図20では流通孔23a、23d間の部位)で排気管22の流路を閉じる。同時に、他方の回転板24を図中反時計回り方向(逆方向)に22.5°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔24aを吸気管21の流路に重ねる。
【0086】
図19で説明した動作と図20で説明した動作を比較すると、前者では他方の回転板24を67.5°回転させているのに対し、後者では他方の回転板24を逆方向に22.5°回転させているのが分かる。つまり、流路開閉装置20を高速で切り換えるためには、他方の回転板24の回転角度が小さい図20の動作が有利となる。言い換えると、図19で説明した方向に他方の回転板24を時間t1の間に回転させる場合、一方の回転板23より高速で回転させる必要があり、モータ29の能力の限界を超えてしまうことになる。
【0087】
また、吸気管21の流路を半開にした状態から、吸気管21の流路を閉じるとともに、排気管22の流路を全開にする場合、例えば、図21の左図から右図に示すように、2枚の回転板23、24を回転させる。具体的には、一方の回転板23を図中時計回り方向に45°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔23aを排気管22の流路に重ねるとともに、回転板23の流通孔以外の部位(図21では流通孔23a、23d間の部位)で吸気管21の流路を閉じる。同時に、他方の回転板24を図中時計回り方向(同じ方向)に67.5°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔24aを排気管22の流路に重ねる。
【0088】
また、吸気管21の流路を半開にした状態から、吸気管21の流路を閉じるとともに、排気管22の流路を全開にする場合、例えば、図22の左図から右図に示すように、2枚の回転板23、24を回転させる。具体的には、一方の回転板23を図中時計回り方向に45°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔23aを排気管22の流路に重ねるとともに、回転板23の流通孔以外の部位(図22では流通孔23a、23d間の部位)で吸気管21の流路を閉じる。同時に、他方の回転板24を図中反時計回り方向(逆方向)に22.5°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔24bを排気管22の流路に重ねる。
【0089】
図21で説明した動作と図22で説明した動作を比較すると、前者では他方の回転板24を67.5°回転させているのに対し、後者では他方の回転板24を逆方向に22.5°回転させているのが分かる。つまり、流路開閉装置20を高速で切り換えるためには、他方の回転板24の回転角度が小さい図22の動作が有利となる。言い換えると、図21で説明した方向に他方の回転板24を時間t1の間に回転させる場合、一方の回転板23より高速で回転させる必要があり、モータ29の能力の限界を超えてしまうことになる。
【0090】
また、排気管22の流路を半開にした状態から、排気管22の流路を閉じるとともに、吸気管21の流路を全開にする場合、例えば、図23の左図から右図に示すように、2枚の回転板23、24を回転させる。具体的には、一方の回転板23を図中時計回り方向に45°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔23dを吸気管21の流路に重ねるとともに、回転板23の流通孔以外の部位(図23では流通孔23a、23d間の部位)で排気管22の流路を閉じる。同時に、他方の回転板24を図中時計回り方向(同じ方向)に22.5°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔24dを吸気管21の流路に重ねる。
【0091】
また、排気管22の流路を半開にした状態から、排気管22の流路を閉じるとともに、吸気管21の流路を全開にする場合、例えば、図24の左図から右図に示すように、2枚の回転板23、24を回転させる。具体的には、一方の回転板23を図中時計回り方向に45°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔23dを吸気管21の流路に重ねるとともに、回転板23の流通孔以外の部位(図24では流通孔23a、23d間の部位)で排気管22の流路を閉じる。同時に、他方の回転板24を図中反時計回り方向(逆方向)に67.5°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔24aを吸気管21の流路に重ねる。
【0092】
図23で説明した動作と図24で説明した動作を比較すると、前者では他方の回転板24を22.5°回転させているのに対し、後者では他方の回転板24を逆方向に67.5°回転させているのが分かる。つまり、流路開閉装置20を高速で切り換えるためには、他方の回転板24の回転角度が小さい図23の動作が有利となる。言い換えると、図24で説明した方向に他方の回転板24を時間t1の間で回転させる場合、一方の回転板23より高速で回転させる必要があり、モータ29の能力の限界を超えてしまうことになる。
【0093】
また、吸気管21の流路を半開にした状態から、吸気管21の流路を閉じるとともに、排気管22の流路を全開にする場合、例えば、図25の左図から右図に示すように、2枚の回転板23、24を回転させる。具体的には、一方の回転板23を図中時計回り方向に45°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔23aを排気管22の流路に重ねるとともに、回転板23の流通孔以外の部位(図25では流通孔23a、23d間の部位)で吸気管21の流路を閉じる。同時に、他方の回転板24を図中時計回り方向(同じ方向)に22.5°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔24aを排気管22の流路に重ねる。
【0094】
また、吸気管21の流路を半開にした状態から、吸気管21の流路を閉じるとともに、排気管22の流路を全開にする場合、例えば、図26の左図から右図に示すように、2枚の回転板23、24を回転させる。具体的には、一方の回転板23を図中時計回り方向に45°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔23aを排気管22の流路に重ねるとともに、回転板23の流通孔以外の部位(図22では流通孔23a、23d間の部位)で吸気管21の流路を閉じる。同時に、他方の回転板24を図中反時計回り方向(逆方向)に67.5°回転させて右図の位置に停止させ、流通孔24bを排気管22の流路に重ねる。
【0095】
図25で説明した動作と図26で説明した動作を比較すると、前者では他方の回転板24を22.5°回転させているのに対し、後者では他方の回転板24を逆方向に67.5°回転させているのが分かる。つまり、流路開閉装置20を高速で切り換えるためには、他方の回転板24の回転角度が小さい図25の動作が有利となる。言い換えると、図26で説明した方向に他方の回転板24を時間t1の間で回転させる場合、一方の回転板23より高速で回転させる必要があり、モータ29の能力の限界を超えてしまうことになる。
【0096】
以上のような流路開閉装置20の基本動作を踏まえて、実際に郵便物Pを取り出す際の流路開閉装置20の動作について説明する。
取り出し装置1が動作されて郵便物Pの取り出しが開始されると、制御部10は、取り出し位置Sの近傍に供給された複数通の郵便物Pの下端辺を、投入部2の底に配置したCCDラインセンサ32を介して撮像し、その画像を画像処理部34で処理して、次に取り出される郵便物Pの厚さを検出する。ここでは、郵便物Pの重さは郵便物Pの厚さに略比例するものとして考える。
【0097】
そして、制御部10は、CCDラインセンサ32を介して検出した次に取り出す取り出し位置Sの郵便物Pの厚さ(重さ)に基づいて、メモリ38から該当する制御テーブルを読み出して、当該郵便物Pの取り出しタイミングに合せて、この制御テーブルにある適切な回転方向および適切な回転角度で回転板24を回転させる。このとき、一方の回転板23は、上述した基本動作で説明したように、吸気管21の流路と排気管22の流路を交互に開閉するだけであるため、吸気管21を流れる空気の流量には関係がないので、ここではこの回転板23の動作説明を省略する。
【0098】
制御テーブルは、上述したように、次に取り出す郵便物Pの厚さ毎に複数用意されている。各制御テーブルには、それぞれ、1つ前の郵便物Pを取り出した後の回転板24の停止位置に対する、次の郵便物Pを取り出す際の当該回転板24の適切な回転方向および適切な回転角度(回転量)に関するデータが記録されている。
【0099】
ここで言う「1つ前の郵便物Pを取り出した後の回転板24の停止位置」は、1つ前の郵便物Pの厚さに関わらず排気管22の流路を全開にする位置であることが殆どである。つまり、郵便物Pを取り出した後、取り出しベルト4の表面に生出している負圧を瞬時に無くすためには、排気管22の流路を全開にすることが有利であるため、各郵便物Pを取り出した後の回転板24の停止位置は、いずれかの流通孔24a、24b、24c、24dが排気管22の流路に重なる位置となる。
【0100】
このため、通常、制御部10は、1つ前の郵便物Pの厚さに関係なく、次に取り出す郵便物Pの重さに応じて回転板24の回転方向および回転角度を制御することになる。
例えば、次に取り出す郵便物Pが比較的重いA4サイズを超える封書であるような場合には、制御部10は、回転板24を、排気管22の流路を全開にしている位置(例えば図8に示す位置)から吸気管21の流路を全開にする位置(例えば図7に示す位置)まで回転することになる。この場合の回転板24の回転方向はいずれの方向であっても良い。
【0101】
また、制御部10は、次に取り出す郵便物Pが比較的軽いはがきであるような場合には、例えば、回転板24を、排気管22を全開にする位置から吸気管21を半開にする位置まで回転することになる。この場合も、回転板24の回転方向はいずれの方向であっても良い。つまり、図10で説明したように回転板24を回転板23と同じ方向に回転した場合と、図15で説明したように回転板24を回転板23と逆方向に回転した場合とでは、回転板24の回転量は同じであるため、回転板24をいずれの方向に回転しても同じ時間で回転を終了させることができる。
【0102】
さらに、例えば、次に取り出す郵便物Pがはがきより重くA4サイズの封書より軽い長形4号(たて205mm×よこ90mm)であるような場合には、制御部10は、回転板24を、例えば、排気管22の流路を全開にする位置から吸気管21の流路を3/4だけ開く位置まで回転することになる。この場合も、回転板24の回転方向はいずれの方向であっても良い。
【0103】
つまり、図10の左側に示すように回転板24の流通孔24aを排気管22の流路に重ねた状態から、回転板24を図中時計回り方向に回転させて、排気管22の流路に重なっていた流通孔24aより回転板24の回転方向に沿って1つ上流側の流通孔24dを吸気管21の流路に3/4だけ重ねる場合、回転板24を図10の右側の状態(半開)より所定量だけ多い回転量で回転させる必要がある。
【0104】
これに対し、例えば、図15の左側の状態から、回転板24を図中反時計回り方向に回転させて、排気管22の流路に重なっていた流通孔24aを吸気管21の流路に3/4だけ重ねる場合も、回転板24を図15の右側の状態(半開)より同じ量だけ多い回転量で回転させることになる。つまり、この場合、回転板24の適切な回転方向はいずれの方向であっても良く、適切な回転量は、22.5°より所定量だけ多い回転量となる。
【0105】
しかし、「1つ前の郵便物Pを取り出した後の回転板24の停止位置」が、上述したようにいずれか1つの流通孔24a、24b、24c、24dを排気管22の流路に重ねて全開にする位置ではない場合、制御部10は、読み出した制御テーブルにある、この停止位置に対する適切な回転方向および適切な回転角度で、回転板24を回転させる必要がある。
【0106】
例えば、A4サイズを超える比較的重い郵便物Pを取り出す場合、最大の吸着力で取り出しベルト4に当該郵便物Pを吸着させて取り出した後には、郵便物P自体の慣性力によって当該郵便物Pは取り出しベルト4から剥離されるため、取り出し後に取り出しベルト4による吸着力を完全に消失させる必要はない。また、次に取り出す取り出し位置Sの郵便物Pが比較的重い郵便物Pである場合、ベルト表面に僅かな負圧が残っていても、当該郵便物Pがベルトに吸着されて取り出されることがないので、取り出しベルト4の表面に負圧が残っていても問題はない。
【0107】
このような場合には、むしろ、郵便物Pを取り出した後、取り出しベルト4表面の負圧を完全に消失させないことにより、次に取り出す郵便物Pを取り出しベルト4に吸着させるための十分な吸着力をより早く発生させることができ、ポンプ13の消費電力を抑えることもできる。
【0108】
具体的には、例えば、図19の左側の図のように、排気管22の流路を半開にした状態から、回転板24を図中時計回り方向に回転させて、右側の図のように、吸気管21の流路を全開にする場合、排気管22の流路に半分だけ重なっていた流通孔24aより回転板24の回転方向に沿って1つ下流側の流通孔24dを吸気管21の流路に重ねることになる。この場合、回転板24の回転方向は時計周り方向で、回転板24の回転角度は67.5°となる。
【0109】
同様に、排気管22の流路を半開にした状態から吸気管21を全開にする場合、例えば、図20の左側の図のように排気管22の流路に流通孔24aを半分だけ重ねた状態から、回転板24を図中反時計回り方向(逆方向)に回転させて、右側の図のように吸気管21の流路に当該流通孔24aを重ねるようにしても良い。この場合、回転板24の回転方向は反時計周り方向であり、回転板24の回転角度は22.5°である。
【0110】
また、同様に、排気管22の流路を半開にした状態から吸気管21を全開にする場合、例えば、図23の左側の図のように排気管22の流路に流通孔24aを半分だけ重ねた状態から、回転板24を図中時計回り方向に回転させて、右側の図のように吸気管21の流路に1つ上流側の流通孔24dを重ねるようにしても良い。この場合、回転板24の回転方向は時計周り方向であり、回転板24の回転角度は22.5°である。
【0111】
また、同様に、排気管22の流路を半開にした状態から吸気管21を全開にする場合、例えば、図24の左側の図のように排気管22の流路に流通孔24aを半分だけ重ねた状態から、回転板24を図中反時計回り方向(逆方向)に回転させて、右側の図のように吸気管21の流路に当該流通孔24aを重ねるようにしても良い。この場合、回転板24の回転方向は反時計周り方向であり、回転板24の回転角度は67.5°である。
【0112】
つまり、排気管22の流路を半開にした状態から吸気管21を全開にする場合、少なくとも上述した4通りの方法が考えられるが、この場合の回転板24の適切な回転方向および回転角度は、回転板24の回転量が最も少なくなる図20および図23の回転方向および回転角度である。よって、制御テーブルには、この適切な回転方向と回転角度が記録されることになる。
【0113】
この他に、例えば、排気管22の流路を1/3だけ開いた状態から次の郵便物P(例えば、はがき)を取り出すために吸気管21の流路を半開にする場合、排気管22の流路を1/4だけ開いた状態から次の郵便物P(例えば、長形4号)を取り出すために吸気管21の流路を3/4だけ開く場合など、郵便物Pの取り出し方にはいろいろな場合が考えられる。しかし、いずれにしても、次に取り出す郵便物Pの重さや前の郵便物Pを取り出した後の回転板24の停止位置に基づいて、回転板24の回転量が最も少なくなるように、回転板24の適切な回転方向および適切な回転角度は決まるため、この適切な回転方向や回転角度を次に取り出す郵便物Pの重さ毎に制御テーブルに記録しておけば良いことになる。
【0114】
以上のように、本実施の形態の流路開閉装置20によると、一方の回転板23を回転させて吸気管21の流路と排気管22の流路を交互に開閉すると同時に、他方の回転板24の回転量を調節することによって、回転板24の流通孔の流路に対する重なり具合を制御して、開いた流路を流れる空気の流量をコントロールするようにしたため、流路の開通および遮断を高速で瞬時に切り換えることができ、流路を開いたときの空気の流量も所望する値に確実且つ瞬時に制御することができる。
【0115】
このため、この流路開閉装置20を上述したように郵便物Pの取り出し装置1に適用すると、取り出し位置Sから次に取り出す郵便物Pの重さに応じて当該郵便物Pの取り出しベルト4に対する吸着力を適切な値に変化させることができ、全ての郵便物Pを所望するタイミングで安定して取り出すことができる。また、これにより、郵便物Pの重送を防止でき、取り出しギャップを安定させることができる。
【0116】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【0117】
例えば、上述した実施の形態では、投入部2の底に配置したCCDラインセンサ32を用いて郵便物Pを撮影した画像に基づいて郵便物Pの厚さを検出する場合について説明したが、これに限らず、取り出し位置Sに供給された郵便物Pの表面を撮影するカメラを配置して、郵便物Pのサイズから重さを検出するようにしても良い。或いは、取り出し位置Sに供給された郵便物Pの重量を直接測定しても良い。
【0118】
また、例えば、郵便物Pの重さを検出する代りに、図4および図6に図示した内圧センサ36を用いて、負圧チャンバ5内の圧力を測定することで、取り出しベルト21に対する郵便物Pの吸着状態を検出するようにしても良い。この場合、制御部10は、内圧センサ36を介して検出した圧力を監視して、流路開閉装置20の回転板24の回転量を制御することで、全ての郵便物Pを適切な吸着力で取り出しベルト4に吸着させて取り出すことができる。
【0119】
また、上述した実施の形態では、2枚の回転板23、24を用いた流路開閉装置20について説明したが、これに限らず、径の異なる2つの円筒形の回転体を同軸に重ねてその内部に負圧チャンバを配置したドラムタイプの流路開閉装置を用いても良い。この場合、円筒形の負圧チャンバの周壁に取り出し位置Sに対向する開口部を設けて、その周壁に沿って回転する2つの回転体に形成した流通孔を通して空気を吸引することになる。
【0120】
さらに、上述した実施の形態では、2枚の回転板23、24のうち一方の回転板23を90°ずつ回転させて2つの流路を交互に開閉させて他方の回転板24の回転量を制御して空気の流通量をコントロールするようにしたが、これに限らず、他方の回転板24で流路を開閉して一方の回転板23で流量をコントロールするようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0121】
この発明の流路開閉装置は、例えば、サイズや重さの異なる複数通の郵便物を1通ずつ取り出しベルトに吸着せしめて取り出す郵便物取り出し装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0122】
1…郵便物取り出し装置、2…投入部、3…供給機構、4…取り出しベルト、5…負圧チャンバ、10…制御部、13…ポンプ、20…流路開閉装置、21…吸気管、22…排気管、23…一方の回転板、24…他方の回転板、23a、23b、23c、23d、24a、24b、24c、24d…流通孔、26、27…筐体、26a、26b、27a、27b…通気孔、28、29…モータ、32…CCDラインセンサ、34…画像処理部、36…メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する2つの流路を横切る面に沿って移動可能に設けられ、移動の途中で上記2つの流路それぞれに重なる第1の流通孔を有し、この第1の流通孔を一方の流路に重ねてこの一方の流路を全開にするとともに、他方の流路をこの第1の流通孔以外の部位で遮断する第1の移動体と、
この第1の移動体に近接して上記2つの流路を横切る面に沿って移動可能に設けられ、移動の途中で上記2つの流路それぞれに重なる第2の流通孔を有し、上記第1の流通孔が上記一方の流路を全開にする位置に上記第1の移動体が移動したとき、上記第2の流通孔がこの一方の流路に少なくとも部分的に重なる位置に移動する第2の移動体と、
を有することを特徴とする流路開閉装置。
【請求項2】
上記第2の移動体の移動量を制御して、上記第2の流通孔の上記一方の流路に対する重なり具合を制御することで、上記一方の流路を流れる流体の流量を制御する制御部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の流路開閉装置。
【請求項3】
上記第2の移動体は、その移動方向に沿って離間した複数の上記第2の流通孔を有し、
上記制御部は、上記一方の流路を開いた状態から当該一方の流路を閉じて上記他方の流路を開くとき、上記第1の流通孔を上記他方の流路に重ねてこの他方の流路を全開にする位置に上記第1の移動体を移動するとともに、上記複数の第2の流通孔のうち最も少ない移動量で上記他方の流路を開く位置へ移動できる第3の流通孔を上記他方の流路に重ねる方向に上記第2の移動体を移動することを特徴とする請求項2に記載の流路開閉装置。
【請求項4】
上記制御部は、上記一方の流路を開いた状態における上記第2の流通孔の上記一方の流路に対する重なり具合と、上記一方の流路を閉じて上記他方の流路を開いた状態における上記第2の流通孔の上記他方の流路に対する重なり具合と、に基づいて、上記移動量が最も少ない第3の流通孔を決定するとともに、この第3の流通孔を上記他方の流路に重ねる方向に上記第2の移動体を移動することを特徴とする請求項3に記載の流路開閉装置。
【請求項5】
複数枚の紙葉類を重ねて投入する投入部と、
この投入部に投入された紙葉類のうち重ね方向一端の紙葉類に沿って走行する吸着孔を有する取り出し部材と、
この取り出し部材の裏面側から上記吸着孔を吸引して当該取り出し部材の表面側に負圧を発生させ、上記一端の紙葉類を当該取り出し部材の表面に吸着させる負圧発生部と、
この負圧発生部に吸気管および排気管を介して接続した吸気装置と、
上記吸気管および排気管の途中に設けられた流路開閉装置と、を有し、
この流路開閉装置は、
上記吸気管および排気管をそれぞれ流れる空気の流路を横切る面に沿って移動可能に設けられ、移動の途中で上記2つの流路それぞれに重なる第1の流通孔を有し、この第1の流通孔を一方の流路に重ねてこの一方の流路を全開にするとともに、他方の流路をこの第1の流通孔以外の部位で遮断する第1の移動体と、
この第1の移動体に近接して上記2つの流路を横切る面に沿って移動可能に設けられ、移動の途中で上記2つの流路それぞれに重なる第2の流通孔を有し、上記第1の流通孔が上記一方の流路を全開にする位置に上記第1の移動体が移動したとき、上記第2の流通孔がこの一方の流路に少なくとも部分的に重なる位置に移動する第2の移動体と、
を有することを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項6】
上記第2の移動体の移動量を制御して、上記第2の流通孔の上記一方の流路に対する重なり具合を制御することで、上記一方の流路を流れる空気の流量を制御する制御部をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の紙葉類処理装置。
【請求項7】
上記第2の移動体は、その移動方向に沿って離間した複数の上記第2の流通孔を有し、
上記制御部は、上記一方の流路を開いた状態から当該一方の流路を閉じて上記他方の流路を開くとき、上記第1の流通孔を上記他方の流路に重ねてこの他方の流路を全開にする位置に上記第1の移動体を移動するとともに、上記複数の第2の流通孔のうち最も少ない移動量で上記他方の流路を開く位置へ移動できる第3の流通孔を上記他方の流路に重ねる方向に上記第2の移動体を移動することを特徴とする請求項6に記載の紙葉類処理装置。
【請求項8】
上記制御部は、上記一方の流路を開いた状態における上記第2の流通孔の上記一方の流路に対する重なり具合と、上記一方の流路を閉じて上記他方の流路を開いた状態における上記第2の流通孔の上記他方の流路に対する重なり具合と、に基づいて、上記移動量が最も少ない第3の流通孔を決定するとともに、この第3の流通孔を上記他方の流路に重ねる方向に上記第2の移動体を移動することを特徴とする請求項7に記載の紙葉類処理装置。
【請求項9】
上記負圧発生部の内部圧力を測定するための内圧センサをさらに有し、
上記制御部は、この内圧センサによる測定結果に基づいて、上記第2の移動体の移動量を制御して、上記第2の流通孔の上記一方の流路に対する重なり具合を制御することを特徴とする請求項6に記載の紙葉類処理装置。
【請求項10】
上記投入部に投入された紙葉類のうち上記重ね方向一端の紙葉類の厚さを検出する厚さ検出部をさらに有し、
上記制御部は、この厚さ検出部による検出結果に基づいて、上記第2の移動体の移動量を制御して、上記第2の流通孔の上記一方の流路に対する重なり具合を制御することを特徴とする請求項6に記載の紙葉類処理装置。
【請求項11】
流路を横切る方向に移動可能に設けられ、移動の途中で上記流路に重なる第1の流通孔を有し、この第1の流通孔を上記流路に重ねてこの流路を全開にする第1の移動体と、
この第1の移動体に近接して上記流路を横切る方向に移動可能に設けられ、移動の途中で上記流路に重なる第2の流通孔を有し、上記第1の流通孔が上記流路を全開にする位置に上記第1の移動体が移動したとき、上記第2の流通孔が上記流路に少なくとも部分的に重なる位置に移動する第2の移動体と、
を有することを特徴とする流路開閉装置。
【請求項12】
上記第2の移動体の移動量を制御して、上記第2の流通孔の上記流路に対する重なり具合を制御することで、上記流路を流れる流体の流量を制御する制御部をさらに有することを特徴とする請求項11に記載の流路開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−190098(P2011−190098A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59857(P2010−59857)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】