説明

流量制御バルブ

【課題】コストを低減し、製造を容易にすることができる流量制御バルブを提供する。
【解決手段】入口室2と出口室3の間に設けられ、前記両室の連通を開閉するバルブ体5と、バルブ体をバルブシート6に圧接するバルブスプリング7とを有する流量制御バルブにおいて、高線膨張係数を持つ合成樹脂により形成された膨張体15の一端を膨張体カバー13に対して固定し、周囲温度の変化により変位する膨張体の他端を膨張体カバーに対して移動可能に配置し、膨張体の他端の移動によりバルブ体をバルブスプリングに抗してバルブシートから離し、前記両室の連通を開通して、流量を周囲温度の変化に対して線形に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲温度の変化に対して圧縮空気などの流体の流量を線形に制御する流量制御バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械などの制御に用いられる制御盤はさまざまな機器により構成されている。中には、一部の半導体やトランスのように発熱するものがあり、クーリングファンやクーラント液などにより制御盤内を冷却するのが一般的である。
【0003】
この方法では下記のようないくつかの問題点がある。
【0004】
1.クーリングファンは電源投入と同時に作動するので、盤内の温度が低くても作動している。したがって、不必要な電気(エネルギー)を使っている。一部、温度センサなどが使われているが、温度センサや制御回路を必要とするので、コストアップになる。よって、クーリングファンは電源投入と同時に作動するのが一般的である。
【0005】
2.クーリングファンは盤内の空気を盤外に排出するので、排出された分どこからか空気を盤内に補充しなければならない。空気は、盤の隙間より盤内に入り込むことになるが、盤の近傍(工作機械の近く)より取り入れられる。そのため、盤内に取り入れられる空気は、塵、金属粉、ミストなどを含んでおり、制御盤内の機器類に誤動作をさせたり、損傷を与えたりし、工作機械の稼動を止めることがしばしば発生している。
【0006】
3.盤に空気流入口がある場合には、粉塵が入らないようにフィルタが装着されているが、環境の悪い条件では、フィルタが詰まって冷却効果が落ちないように、マンパワーによって点検、清掃、交換が定期的に行われている。そのため、コストアップの要因となる。
【0007】
4.クーラント液を用いる場合には、盤内温度とクーラント液の温度に温度差がありすぎて、結露が生じ、盤内の機器類に悪影響を与えている。
【0008】
従来、制御盤内を冷却するために、温度センサにより盤内温度を検出し、設定温度を越えたときに冷却空気を盤内に供給する工作機械の制御盤の冷却装置が、特開2001−269838号公報(特許文献1)に開示されている。
【0009】
また、空気調和機の冷温水の流量を調整するために、雰囲気温度の変化に応じて膨張・収縮するパラフィン液などの熱応動部材によって弁棒を動かし、流量を比例的に調整する流量調整弁が、実開昭62−181773号全文公開明細書(特許文献2)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−269838号公報
【特許文献2】実開昭62−181773号全文公開明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載のものは、温度センサや制御回路を必要とするので、コストアップになる。
【0012】
また、特許文献2に記載のものは、雰囲気温度の変化に応じて膨張・収縮するパラフィン液などの熱応動部材によって弁棒を動かすので、パラフィン液をどうやって封じ込めるか、膨張をどこで取り出すか、漏れない構造をどうするか、漏れた場合の対策をどうするか、などの難しい点が多々ある。
【0013】
(本発明の目的)
本発明の目的は、コストを低減し、製造を容易にすることができる流量制御バルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の流量制御バルブは、入口室と出口室の間に設けられ、前記両室の連通を開閉するバルブ体と、前記バルブ体をバルブシートに圧接するバルブスプリングとを有する流量制御バルブにおいて、高線膨張係数を持つ合成樹脂により形成された膨張体の一端を膨張体カバーに対して固定し、周囲温度の変化により変位する前記膨張体の他端を前記膨張体カバーに対して移動可能に配置し、前記膨張体の他端の移動により前記バルブ体を前記バルブスプリングに抗して前記バルブシートから離し、前記両室の連通を開通して、流量を周囲温度の変化に対して線形に制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コストを低減し、製造を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1である流量制御バルブを示す図である。
【図2】本発明の実施例1による10リットル/minの流量特性を示す図である。
【図3】本発明の実施例1による200リットル/minの流量特性を示す図である。
【図4】本発明の実施例2である流量制御バルブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態は後述する実施例1及び2に記載の通りである。
【実施例1】
【0018】
図1(a)は、本発明の実施例1である流量制御バルブの平面図、図1(b)は、本発明の実施例1である流量制御バルブの断面図である。
【0019】
バルブ本体1には、入口室2と出口室3が設けられる。両室2,3の間には通路4が設けられ、通路4には両室2,3の連通を開閉するボール状のバルブ体5が設けられる。バルブ体5をバルブシート6に圧接するバルブスプリング7は、スプリング押さえ8によりバルブシート6への圧接力が調整される。入口室2は圧縮空気源に接続され、出口室3には配管9によりノズル10が取り付けられる。ノズル10は圧縮空気を制御盤などの冷却対象に圧縮空気を噴出する。
【0020】
スプリング押さえ8の反対側では、バルブロッド11がバルブ体5に接する。バルブロッド11は、バルブ本体1に設けられたガイド孔12に案内されて上下に移動する。
【0021】
バルブ本体1の上部には膨張体カバー13がビス14により固定される。膨張体カバー13の内部には膨張体15が収容される。膨張体15は、10.0×10−5/℃以上の高線膨張係数を持ち、機械的強度も大きい合成樹脂、例えばポリエチレン樹脂(線膨張係数20×10−5/℃)、ポリプロピレン樹脂(線膨張係数11×10−5/℃)により形成されたものである。膨張体15の上端は膨張体カバー13に対して固定され、周囲温度の変化により変位する膨張体15の下端は、膨張体カバー13に対して移動可能に配置される。膨張体15の下端はワッシャー16を介してバルブロッド11に接する。膨張体15の上端の固定位置は、ワッシャー16を介して調整ねじ17により調整される。なお、18はロックナットである。
【0022】
周囲温度の上昇により膨張体15の長さが伸びると、膨張による膨張体15の他端の移動がワッシャー16及びバルブロッド11を介してバルブ体5に伝えられ、バルブ体5をバルブスプリング7に抗してバルブシート6から離す。これにより、入口室2と出口室3の連通は開通され、出口室3から配管9及びノズル10を経て圧縮空気が噴出する。
【0023】
圧縮空気の流量は周囲温度の変化に対して線形に制御される。図2は10リットル/minの流量特性を示し、図3は200リットル/minの流量特性を示す。図2及び図3から明らかなように、流量は線形に変化している。流量については、圧縮空気の圧力(0.01〜0.51MPa)により任意に設定することができる。
【0024】
本発明の実施例1によれば、以下の効果を得ることができる。
【0025】
1.膨張体が固体なので、膨張体からバルブ体への変位の伝達構造の設計・製造が容易となり、コストダウンを図ることができる。また、センサや制御回路、アクチュエータなどが不要であり、この面でもコストダウンを図り、省エネルギーとすることができる。
【0026】
2.クーリングファンに比べて制御盤内に汚れた空気が外部から入らない。つまり、作動時には、クリーンな圧縮空気を制御盤内に吹き込むため、制御盤の内圧が上り、外部から空気が入り込むことはない。
【0027】
3.制御盤近傍の空気を圧縮して流すため、結露を生じない。
【0028】
4.小型なので、制御盤上部に簡単に取り付けることができる。出口室側からは熱源付近にノズルを配管するだけでよい。
【実施例2】
【0029】
図4(a)は、本発明の実施例2である流量制御バルブの平面図、図4(b)は、本発明の実施例2である流量制御バルブの断面図である。
【0030】
実施例2が実施例1と異なるところは、バルブロッド11と膨張体15を、高線膨張係数を持つ合成樹脂により一体に成形した点である。実施例2は実施例1よりも部品点数が減るので、一層のコストダウンを図ることができる。
【0031】
なお、本発明は、気体に限らず、液体の流量を制御するバルブにも適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
2 入口室
3 出口室
5 バルブ体
6 バルブシート
7 バルブスプリング
11 バルブロッド
13 膨張体カバー
15 膨張体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口室と出口室の間に設けられ、前記両室の連通を開閉するバルブ体と、
前記バルブ体をバルブシートに圧接するバルブスプリングとを有する流量制御バルブにおいて、
高線膨張係数を持つ合成樹脂により形成された膨張体の一端を膨張体カバーに対して固定し、周囲温度の変化により変位する前記膨張体の他端を前記膨張体カバーに対して移動可能に配置し、
前記膨張体の他端の移動により前記バルブ体を前記バルブスプリングに抗して前記バルブシートから離し、前記両室の連通を開通して、流量を周囲温度の変化に対して線形に制御することを特徴とする流量制御バルブ。
【請求項2】
前記高線膨張係数は、10.0×10−5/℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の流量制御バルブ。
【請求項3】
前記高線膨張係数を持つ合成樹脂は、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の流量制御バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−196866(P2010−196866A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45275(P2009−45275)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000107767)スプレーイングシステムスジャパン株式会社 (17)
【Fターム(参考)】