説明

流量制御弁

【課題】流量制御弁のガタつき防止の構造を簡略し、少ない制御流量を維持でき、さらに小型化を図ることができる流量制御弁を提供する。
【解決手段】回動シャフト8の周囲に設けられ、回動シャフト8と一体に電磁力により回転する回転体6を備える。回動シャフト8の一端部側の雌ねじ部93に螺合し、回動シャフト8の回転に基いて回動シャフト8の軸方向に沿って移動することにより、流体が通過する開口部を開閉する弁体9を備える。回動シャフト8の他端部側に設けられ、回動シャフト8を回転自在に支持するとともに、回動シャフト8の他端部側に向う移動を規制する軸支持部材14を備える。弁体9を回動シャフト8の軸方向に沿って回動シャフト8の他端部側に付勢する圧縮コイルばね10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータとこのモータの回転により作動して流体の流量を制御する弁とを備える流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や自動二輪等の車両において、例えば、電子制御装置により燃料噴射と点火をコントロールするインジェクションを備えるエンジンの場合に、スロットルバルブの横に、電子制御されるもう一つのスロットルであるISCV(アイドル・スピード・コントロール・バルブ)が設けられ、エアコンが作動したときのアイドルアップの制御を行ったり、アイドリングを安定させるような制御を行ったりしている。すなわち、ISCVは、例えば、自動車がスロットルを絞ってアイドリング状態になっている際に、エンジンへの吸気量を制御して、エンジンをアイドリング時の目標回転数になるように制御している。
【0003】
ISCVは、例えば、弁を動作させるアクチュエータとしてのステッピングモータと、このステッピングモータの回転するシャフトと、このシャフトとの間にねじ機構を有し、シャフトの軸方向に移動する弁体とを備えている。シャフトの先端部側は、雄ねじとされており、この雄ねじの部分に弁体に固定されたナット部が螺合しており、シャフトの正転及び反転に基いて、弁体がシャフトの軸方向に移動することによって、アイドリング時のエンジンへの吸気の流量が制御される。
【0004】
このようなISCVでは、制御流量が小さく、通常待機位置(車両のアイドル状態)では、より小さい流量が要求されるため、弁(ISCV)の開口面積を小さくする必要がる。
【0005】
また、ISCVでは、上述のように制御流量が小さいので、少しのガタつきがあっても流量に与える影響が大きなものになってしまう。そのため、ガタつきを抑えるような構造(部材)が必要とされる。
【0006】
また、ISCVは、例えば、自動車や自動二輪等の車両に設置されることから、固定された装置に設置される部品に比べ、熱・振動等の環境条件が厳しく、耐久性を必要とする。したがって、ISCVにおいて、シャフトや回転体を回転自在に支持する軸受も耐久性を有するものを用いる必要がある。
【0007】
ここで、上述のように、自動車の振動とガタつきによる制御流量への影響を考慮した場合に、例えば、弁体やモータの回転体をバネ等によりそれぞれ押し付けることによってガタつきを防止することが考えられる。また、上述のように制御流量が小さいことから、基本的に弁座に対して弁体を近づけた状態で弁体の移動を制御する必要がある。例えば、円錐形の弁体を用いた流量制御弁の場合に、流量制御弁のボデーの弁座部分に向けて弁体を伸ばした状態を維持して、弁の開口面積を小さくし、これにより制御流量を小さくする必要がある。
【0008】
また、モータにおける一般的な軸受の構造としては、回転体側に凸部、例えば、回転体から突出するシャフトの端部等を設け、この凸部をボデー(本体)側に設けた凹状の軸受部材で回転自在に支持するのが一般的である。
【0009】
流量制御弁といては、例えば、シャフトにマグネットを固定し、シャフトの後端側と前部とに環状のドライベアリング(滑り軸受)が配置されているものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この流量制御弁では、シャフトは、ドライベアリングの孔に挿入された状態であり、これらドライベアリングは、シャフトの軸方向移動を規制していない。
【0010】
また、流量制御弁として、マグネットが固定された樹脂製の回転体がボールベアリングにより支持される構造であり、環状のボールベアリングの内側に回転体が配置され、ボールベアリングの内輪に回転体が固定され、回転体が、ボールベアリングの外輪に対して内輪と一体に回転する内燃機関用モータ式流量制御弁が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この流量制御弁では、シャフトに、その外周に雄ねじが形成され、回転体に設けられた雌ねじに螺合しており、回転体の回転に対応してシャフトが弁体と一体に軸方向に移動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−19957号公報
【特許文献2】特許第3598219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述のような流量制御弁にガタつき防止のためにバネ等の部材を使う場合に、弁体のガタつき防止と、回転体(ロータ)のガタつき防止のために、バネ等の部材を二つ使用しなければならない。また、バネで回転する回転体のガタつきを防止する場合に構造が複雑になる虞がある。これらのことからガタつき防止のためのコストが高くなったり、組み付け作業が煩雑になったりする虞がある。
【0013】
また、上述のように、ISCVの場合に、小さな流量を制御するので、開口面積を小さくするため、ボデーの弁座部分に対して弁体側を伸ばして近づけた状態で主な制御が行われる。この際に自動車の振動により上述のようなガタつきがあると伸ばされた弁体側が弁座側に接触する。この場合に、弁座と弁体の接触による摩耗が発生し、開口面積が大きくなり、制御流量が大きくなってしまう虞があった。
【0014】
また、上述のように回転体の軸受構造として、回転体に凸部(突出する軸)を設け、ボデー側に凹状の軸受を設けると、凸部分だけ流量制御弁が長くなり、スペース効率が悪くなる。なお、特許文献1、2に記載される流量制御弁では、これらの問題に対処できない。
【0015】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、流量制御弁のガタつき防止の構造を簡略し、少ない制御流量を維持でき、さらに小型化を図ることができる流量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の流量制御弁は、回転自在な回動シャフトと、
前記回動シャフトの周囲に設けられ、前記回動シャフトと一体に電磁力により回転する回転体と、
前記回動シャフトの一端部側に係合して設けられ、当該回動シャフトの回転に基いて当該回動シャフトの軸方向に沿って移動することにより、流体が通過する開口部を開閉する弁体と、
前記回動シャフトの他端部側に設けられ、前記回動シャフトを回転自在に支持するとともに、前記回動シャフトの他端部側に向う移動を規制する軸支持部材と、
前記回転シャフトの一端部と他端部との間に設けられ、前記回転体を介して回動シャフトを回転自在に支持する軸受部材と、
前記弁体を前記回動シャフトの軸方向に沿って当該回動シャフトの他端部側に付勢するばねとを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項1に記載の本発明においては、回動シャフトの一端側に係合している弁体が、ばねにより、回動シャフトの他端側に付勢されている。これにより、弁体が係合する回動シャフトを、その他端部側に押圧した状態になる。すなわち、回動シャフトに軸方向に沿って他端部側に向うばねの付勢力が弁体を介して作用し、この回動シャフトの他端部が軸支持部材に押し付けられる。
【0018】
これにより、弁体側と回動シャフト(回転体)側との二箇所にばねを設けた場合と同様に、1つのばねで弁体のガタつきを抑制するだけではなく、モータ側の回動シャフトおよび回転体のガタつきも抑制できる。これにより、部品点数が減少するとともに、組み付けに手間がかかるばねを1つにできることから、コストの低減と、流体制御弁の組み立て時の作業性の向上を図ることができる。
【0019】
また、ばねの力により弁体のガタつきが抑制されるとともに、弁体がばねの付勢力により、例えばボデーに形成される弁座側から離れる方向に押されているので、弁座と弁体が近接した状態での弁体の弁座への振動等による接触が抑制される。これにより弁体との摩擦により流体が通過する開口部が大きくなってしまうのを抑制できる。
【0020】
請求項2に記載の流体制御弁は、請求項1に記載の発明において、
前記弁体の軸心部に設けられる雌ねじ部と、前記回動シャフトの前記弁体側に前記雌ねじ部に螺合するように設けられる雄ねじ部とから、前記回動シャフトの回転により前記弁体を前記開口部の開閉方向に移動するねじ機構が設けられ、
前記回動シャフトの雄ねじ部を除く部分の径が、前記雄ねじ部の径より細くされていることを特徴とする。
【0021】
請求項2に記載の発明においては、回動シャフトが回転した場合に、ねじ機構により弁体を移動させることによって開口部の開閉を行う構成において、回動シャフトの雄ねじ部を除く部分の径を雄ねじ部の径より小さくすることによって、弁体の開閉駆動に必要な力を確保しつつ、回動シャフトの軽量化を図ることができる。
【0022】
雄ねじ部を含む回動シャフト全体の径を大きくすることによって、回動シャフトから弁体に作用する力を高めることができるが、回動シャフトが重くなる。これにより、例えば、回動シャフトの慣性が大きくなることによって、弁体の開閉移動における応答性能が悪化する虞がある。また、回動シャフトために使用される材料が多くなりコストが高くなる可能性がある。
それに対して雄ねじ部だけ径を大きくし、他の部分の径を小さくすることにより、回動シャフト全体の重量の低減を図ることによって、上述の応答性の向上およびコストの低減を量ることができる。
【0023】
請求項3に記載に記載の流量制御弁は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記回転体の少なくも前記回動シャフトの他端部側が中空に形成され、前記回転体の中空内で前記軸支持部材が前記回動シャフトの一端部を支持していることを特徴する。
【0024】
請求項3に記載の発明においては、例えば、磁石や電磁石等を備えることによって、ステータに対して電磁力により回転するロータである回転体が中空に形成されている。これにより、回転体の軽量化による慣性の低減と材料の削減によるコストダウンを図ることができる。
また、回転体の中空部分で回動シャフトの一端部が軸支持部材により支持された構造になるので、回動シャフトを回転体の一端部側から突出させる必要がなく、軸等の凸部を凹状の軸受等の支持部材で支持する形状になっていても、凸部を中空部内に配置することによって、軸方向の長さを短くすることが可能になり、流量制御弁のスペース効率の向上と小型化を図ることができる。
【0025】
請求項4に記載の流量制御弁は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、
前記弁体の周囲を覆い、かつ、内周面の断面が非円形の筒状のボデーを備え、
前記弁体には、前記ボデー内周面の周方向および軸方向に沿って延在する壁部が設けられ、
前記壁部には、前記ボデー内周面に向かって突出して、前記ボディ内周面に当接する複数の凸部が前記ボデーの軸方向に沿うとともに互いに前記ボデーの周方向に間隔をあけて設けられていることを特徴とする。
【0026】
請求項4に記載の発明においては、壁部が断面非円形の筒状のボデーの内周面に沿って配置され、かつ、壁部からボデー内面に突出して当接する複数の凸部が、ボデーの軸方向に沿って、ボデーの周方向に互いに間隔をあけて設けられている。これらの凸部が断面非円形のボデーの内周面に当接しているため、この壁部の凸部とボデーの内周面の接触により、ボデーの軸方向に対して弁体の軸方向が傾くのが抑制される。さらに、ボデ-周方向に間隔をあけて複数凸部が断面非円形のボデー内周面に当接することによって、壁部とその凸部とで弁体の回転が規制される。例えば、上述のようにねじ機構で弁体が開閉移動する場合に、弁体側の回転を規制することにより、稼働シャフトの回転にしたがって弁体を回動シャフトの軸方向に移動させることができる。この際に、壁部の凸部がボデー内周面に案内されるとともに、弁体の傾きを抑制する。この場合に、上述のように弁体のガタつきが抑制されることと合わせて、弁体と弁座が近接した状態で、弁体が傾くことが抑制されることにより、弁座側に弁体が触るのを抑制することができる。これにより、弁座、弁体の摩耗による開口部面積の拡大を防止できる。
また、壁部のうちの凸部だけをボデー内周面に接触させるようにすることで、ボデー内周面と壁部との褶動抵抗を低減し、弁体を円滑に軸方向に沿って移動することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、少ない流量の制御を行うとともに、モータの回転体と一体に回転する回動シャフトにより軸方向に移動して弁の開閉を行う弁体のガタつきを低コストで防止することができる。また、これにより弁座と弁体の摩耗による弁の開口部面積の拡大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態の流量制御弁を示す断面図である。
【図2】前記流量制御弁の弁体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態の流量制御弁は、樹脂製のモータ側ボデー1と、弁側ボデー2とを備え、モータ側ボデー1側にモータ(ステッピングモータ)11が設けられ、弁側ボデー2側に流体用(空気用)の弁21が設けられている。
【0030】
前記モータ側ボデー1は、本体12が有蓋有底の円筒状に形成され、その内周面側にモータのステータとして、本体12の内周面に沿う環状の二つのコイル3が本体12の軸方向に沿って前後に並んで設けられている。コイル3はコイルボビン5に巻かれた状態で、コイル支持部材4に支持されている。
円環状のコイル3の内側には、円筒状のマグネット7を外周に固定した状態に備えている回転体6が設けられている。この回転体6がステータに対して回転するロータになっており、ステータとロータからモータが構成され、マグネット7を有する回転体6が電磁力により回転することになる。
【0031】
また、回転体6は、有蓋円筒状に形成され、内部が中空とされている。また、回転体6の蓋61部分には、ロータの回転軸になる回動シャフト8が貫通するとともに、回動シャフト8が固定されている。また、回転体6の蓋61の回動シャフト8が貫通する部分には、回転体6本体の円筒部分より径の小さい円筒状の突出部62が回転体6の本体と同軸になるように形成されている。また、回転体6は、蓋61部分が外周側に鍔状に突出し、円筒状のマグネット7の一端部側を位置決めするようになっている。なお、蓋61の鍔状部分の外周面と、マグネット7の外周面は、略同じ外径とされるとともに、同軸上に配置されるようになっている。
【0032】
回動シャフト8は丸棒状の部材であり、回転体6の一端側の突出部62の先端部を略中央として、一端部側がモータ側ボデー1より弁側ボデー2内に延出している。また、回動シャフト8の他端部側は、回転体6の内側に配置されている。この実施形態では、回転体6の開放された他端側(蓋の無い側)と略同じ位置(軸方向に沿った位置)に、回動シャフト8の他端が配置されている。
【0033】
また、回動シャフト8の一端部側は、その外周面にねじが形成され、ボルト状の雄ねじ部81とされている。なお、ここでは、雄ねじ部81以外の部分をシャフト部82とする。
回動シャフト8は、雄ねじ部81の径が、シャフト部82の径より大きくなっており、雄ねじ部81が回動シャフト8の他の部分に対して拡径された形状になっている。この雄ねじ部81には、後述のように弁体9の雌ねじ部93が螺合するようになっている。
【0034】
また、回動シャフト8は、その中央部の回転体6の突出部62に覆われた部分が、ラジアル軸受で、かつ、滑り軸受であるボデー1の軸受部材13に、突出部62を介して回転自在に支持されている。なお、図1において、軸受部材13は、モータ側ボデー1と一体に図示されているが、ボデー1と別体になっていてもよい。
【0035】
また、回動シャフト8の他端部は、上述のように回転体の内側に配置されている状態で、軸支持部材14により回転自在に支持されている。軸支持部材14は、滑り軸受として機能するとともにラジアル軸受およびスラスト軸受として機能している。すなわち、回動シャフト8が軸支持部材14により回転中心を規定されているとともに、回動シャフト8の軸方向に沿って、回動シャフト8の一端部から他端部に向う方向の移動が規制されている。なお、その反対方向への移動は、後述のように圧縮コイルばね10により規制されている。
【0036】
弁体9は、弁本体として機能する先端部の外周面が円錐台状に形成され、有蓋筒状の弁側ボデー2の蓋23に形成された貫通孔22に挿入可能にされている。なお、貫通孔22の内周面に弁体9の外周面が当接することによって弁21が閉状態になり、前記貫通孔部分が弁21の弁座として機能する。この弁座としての貫通孔22の内周面と、弁体9の先端部分の外周面とが近接して配置されることによって、流体を少ない流量で制御するようになっている。
【0037】
また、弁側ボデー2には、その筒状部分(断面略楕円(断面非円形)の筒状)に流体が通る貫通孔24が形成されている。流量制御弁で流量が制御される流体としての空気は、弁側ボデー2の蓋23側の貫通孔22と、弁側ボデー2本体の筒状部分の貫通孔24との間を流れるようになっている。例えば、蓋23側の貫通孔22が吐出口とされ、弁側ボデー2の筒状の本体の貫通孔24が吸入口とされている。
【0038】
弁体9は、図1および図2に示すように、その本体の先端部側が上述のように円錐台状に形成されるとともに、先端部を除く部分が内側が雌ねじ部93とされた円筒状に形成されている。雌ねじ部93は、回動シャフト8の雄ねじ部81に螺合するねじ孔であり、これら雌ねじ部93と雄ねじ部81とが、回動シャフト8が軸周りに回転するのに合わせて、弁体9を回動シャフト8の軸方向に沿って移動させるねじ機構を構成している。なお、移動方向は、回転方向の違いによって反対になるようになっており、例えば、時計回りを正回転とした場合に正回転方向に回動シャフト8が回ることによって、例えば、弁体9が、回動シャフト8の軸方向に沿ってボデー1から離れる方向に移動し、回動シャフト8が反時計回りの逆回転方向に回転した場合に、弁体9が回動シャフト8の軸方向に沿ってボデー1に近くづく方向に移動するようになっている。
【0039】
また、弁体9は、弁側ボデー2の内部に配置されている、弁側ボデー2は、有蓋筒状に形成されている。この弁側ボデー2は、円筒状ではなく、断面略楕円状の筒状に形成されている。
【0040】
弁体9は、弁側ボデー2の断面の略楕円に対応した形状の支持板92が弁体の後部の左右に延出して設けられ、この支持板92の左右の概略円弧状の端部にそれぞれ前記楕円の内周面に沿って配置される概略円弧板状の壁部91が配置されている。壁部91は、ボデー2の断面の略楕円に沿っているので、一対の壁部91を備える弁体9がボデー2の内周面面に沿って回転することがなく、弁体9の回転を抑制している。なお、後述のように壁部の外面は、ボデー2の内周面に直接当接しておらず、後述のように壁部の凸部95,96、97がボデー2の内周面に当接している。また、概略円弧板状の壁部91の上述の雌ねじ部93の軸方向に沿った長さは、弁体9の雌ねじ部93の軸方向に沿った長さの1/2以上で2/3以下とされている。
【0041】
壁部91は、上述のことから軸方向に沿って長いものになっており、その外面側の概略円弧方向(楕円の周方向)の中央部と、一方の側縁側と、他方の側縁側に弁体9の軸方向に沿って前後に延材する長いリブ状の凸部95、96,97が形成されている。
この凸部95、96,97の延材方向は、雌ねじ部93の軸方向、弁体9の軸方向と平行になっており、これらの方向が弁体9の移動方向に対して平行であり、この方向が流体制御弁における弁体9の開閉方向になる。
【0042】
弁側ボデー2の内周面には、弁体9の壁部91に形成された凸部95,96,97が当接し、弁体9の移動方向に沿って弁体9を案内するとともに、弁体9の回転を規制している。つまり、弁側ボデー2の内周面と当接する凸部95,96,97を設けることにより、弁体9と弁側ボデー2との摺動抵抗を減らしつつ確実に軸方向へ弁体9が移動するのを支持すると共に、回転シャフト8に追従して弁体9が回転するのを防いでいる。
【0043】
これらのことから、壁部91およびそれらの凸部95,96,97により弁体9が弁側ボディの内周面に係合して回転が規制されるとともに、弁体9の移動方向(弁の開閉方向)に案内されることになる。この際に、壁部91およびそれらの凸部95,96,97により、弁体9の軸方向が弁側ボデー2の軸方向と斜めになるのを防止するようになっている。
すなわち、壁部91が弁体9の軸方向に長く延在するので弁体9が傾くのが防止される。これにより、弁体9が傾いて、弁体9の先端部が挿入された状態の貫通孔22である弁座の内周面に接触するのが防止されるようになっている。これにより貫通孔22の内周面と、弁体9の外周面との間の間隔が弁体9の外周面と貫通孔22の内周面との接触による摩耗によって広くなって小さな流量の制御が困難になるのを防止することができる。
【0044】
また、弁体9の支持板92と、弁側ボデー2の蓋23の内側部分で弁座になる貫通孔22の外側部分との間にばねとして圧縮コイルばね10が配置されている。この圧縮コイルばね10は、弁体9をその開閉方向の開側で、モータ側ボデー1の底部の軸支持部材14側に押圧している。この圧縮コイルばね10により、弁体9と、回動シャフト8と回転体6のガタつきが防止されている。
【0045】
この圧縮コイルばね10は、弁体9をモータ側ボデー1に向けて押圧することによって、弁体9の雌ねじ部93に雄ねじ部81が螺合している回動シャフト8をその他端部側に設けられた軸支持部材14に押し付けている。軸支持部材14は、軸方向に沿った荷重も受けることになり、軸支持部材14に回動シャフト8の他端部が回転自在に支持されることにより、安定的に回転可能な状態になる。
【0046】
このような流体制御弁においては、上述の1つの圧縮コイルばね10により、弁体9と、弁体9に螺合する回動シャフト8と、回動シャフト8と一体に回転する回転体6およびそのマグネット7とのガタつきを防止することができる。これにより部品点数の低減によるコストダウンと、作業性の向上を図ることができる。特に、取り付けに手間のかかるばねを1つだけとすることによって、作業性が確実に向上する。
【0047】
また、圧縮コイルばね10による弁体9のガタつきの防止に加えて、近接する弁側ボデー2の蓋23の貫通孔22の内周面と、弁体9の先端部の外周面とが近接した状態でも、圧縮コイルばね10により、貫通孔22の内周面から弁体9の外周面が離れる方向に付勢されているので、貫通孔22の内周面と、弁体9の外周面の接触が抑制される。
【0048】
また、弁体9の壁部91が弁体9の軸方向長さの1/2より長い長さにわたって形成され、この壁部91の外面側の凸部95,96,97が弁側ボデー2の略楕円状の内周面に当接し、弁体9の軸方向の傾きおよび周方向の移動を規制しているので、弁体9の軸方向と、弁側ボデー2の軸方向がずれるのを抑制することができる。この構成によっても、貫通孔22の内周面と、弁体9の外周面の接触が抑制される。
【0049】
これらのことから、弁座としての弁側ボデー2の貫通孔22の内周面と、弁体9の先端部側の外周面との接触が抑制されることにより、これら貫通孔22の内周面および弁体9の外周面の摩耗を防止することができ、摩耗により弁の開口部面積が多くなってしまうのを抑制できる。
【0050】
ラジアル方向の力とスラスト方向の力を受ける軸支持部材14は、有蓋円筒状の回転体6の底部側の開口内、すなわち回転体6の中空部内にある回動シャフト8の一端部を受けることから、回転体6を含むロータの長さを短くすることができる。これにより流体制御弁の小型化を図ることができる。
この場合に回動シャフト8を短くしているとも言うことができ、回動シャフト8を構成する材料の削減、回転体6を中空とすることによる回転体6を構成する部材の削減を図ることができる。この場合に、回転する部分の質量が低減され、回転体6等に作用する慣性力を低減し、応答性能を高めることができる。
【0051】
また、回動シャフト8は、弁体9に回転運動を伝達する雄ねじ部81の径がシャフト部82の径より大きくなっていることにより、雄ねじ部81おシャフト部82の太さとした場合に比較してより強い力で弁体9を開閉動作させることが可能になる。この際に雄ねじ部81よりシャフト部82の方が径が狭いので、雄ねじ部81による回転運動の伝達能力を維持した状態で、回動シャフト8の軽量化を図ることができる。これにより回動シャフト8に使われる材料の低減によるコストダウンと、回動シャフト8の質量低下による慣性の低減に基づいて、応答性能の迅速化を図ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 モータ側ボデー
2 弁側ボデー
6 回転体
8 回動シャフト
81 雄ねじ部
82 シャフト部
9 弁体
10 圧縮コイルばね(ばね)
13 軸受部材
14 軸支持部材
91 壁部
95、96,97 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在な回動シャフトと、
前記回動シャフトの周囲に設けられ、前記回動シャフトと一体に電磁力により回転する回転体と、
前記回動シャフトの一端部側に係合して設けられ、当該回動シャフトの回転に基いて当該回動シャフトの軸方向に沿って移動することにより、流体が通過する開口部を開閉する弁体と、
前記回動シャフトの他端部側に設けられ、前記回動シャフトを回転自在に支持する軸支持部材と、
前記回転シャフトの一端部と他端部との間に設けられ、前記回転体を介して回動シャフトを回転自在に支持する軸受部材と、
前記弁体を前記回動シャフトの軸方向に沿って当該回動シャフトの他端部側に付勢するばねとを備える流体制御弁。
【請求項2】
前記弁体の軸心部に設けられる雌ねじ部と、前記回動シャフトの前記弁体側に前記雌ねじ部に螺合するように設けられる雄ねじ部とから、前記回動シャフトの回転により前記弁体を前記開口部の開閉方向に移動するねじ機構が設けられ、
前記回動シャフトの雄ねじ部を除く部分の径が、前記雄ねじ部の径より細くされていることを特徴とする請求項1に記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記回転体の少なくとも前記回動シャフトの他端部側が中空に形成され、前記回転体の中空内で前記軸支持部材が前記回動シャフトの他端部を支持していることを特徴する請求項1または請求項2に記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記弁体の周囲を覆い、かつ、内周面の断面が非円形の筒状のボデーを備え、
前記弁体には、前記ボデー内面の周方向および軸方向に沿って延在する壁部が設けられ、
前記壁部には、前記ボデー内周面に向かって突出して、前記ボディ内周面に当接する複数の凸部が前記ボデーの軸方向に沿うとともに互いに前記ボデーの周方向に間隔をあけて設けられていることを特徴とする
請求項1から請求項3に記載の流量制御弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−96388(P2013−96388A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243155(P2011−243155)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】