説明

流量計測装置

【課題】 燃料電池の稼働効率を十分に向上でき、かつ、異常使用判定時間の好適値を学習可能とする流量計測装置を提供する。
【解決手段】 本発明の流量計測装置10Aは、通信部14を介して、燃料電池21で消費されるガス流量の目標値を受信し、ガス流量監視部12では、当該目標値と流量計測部11で計測されたガス流量の実測値とを用いて、ガス流量の監視を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用されているガス器具の判別を可能とする流量計測装置に関し、特に、使用されているガス器具が燃料電池であるか否かの判別を可能とする流量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスメータ(流量計測装置)は、従来から、マイクロコンピュータの制御により、所定時間(漏洩判定基準時間、例えば30日)を超えて一定量を超えるガスが流れ続けているか否かを監視し、ガスが流れ続けている時間が前記所定時間を超えたと判断されれば、安全動作を行う構成のガスメータ(いわゆるマイコンメータ)が知られている。この構成によれば、前記漏洩判定基準時間を超えて一定量のガス流量が計測されれば、ガス配管につながる各種ガス器具またはガス配管そのものにガス漏洩が生じたと判断し、警報を発報したり自動的にガスの流れを遮断したりする等の安全動作を行う。それゆえ、ガス使用環境における安全性を向上することができる。
【0003】
また、前記マイコンメータには、ガス器具の使用流量帯(ガス流量の区分帯)毎に前記異常使用判定時間が予め設定されている。前記マイコンメータは、ガス器具の使用に応じて随時ガス流量を記憶し、記憶されたガス流量の中から最大の流量を抽出して、いずれの使用流量帯に該当するかを判定し、当該使用流量帯に対応する異常使用判定時間を基準として、ガス流量を監視する。なお、使用流量帯毎に設定された前記異常使用判定時間は学習により好適化することが可能である。すなわち、前記マイコンメータに、各使用流量帯において想定され得る前記異常使用判定時間の最長時間を初期時間として設定しておき、学習により当該初期時間よりも小さい好適時間が再設定される。
【0004】
ここで、燃料電池は一時的に使用される一般的なガス器具とは異なり、発電のために停止されること無く稼働されることが望ましいが、前記マイコンメータに設定されている前記異常使用判定時間を超えて燃料電池が稼働していると、当該マイコンメータはガス漏れ等の異常が発生したと誤判断して、ガスの流れを遮断してしまう。ガスの流れが遮断されると発電が中断してしまうので、継続的な発電を妨げることになる。
【0005】
そこで、燃料電池側において、このような誤判断を回避する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、燃料電池に関する言及はないが、ガスメータによってガス供給遮断が行われる異常使用判定時間(同文献では第一の設定時間)よりも短い所定時間(同文献では第二の設定時間)にわたって、ガス燃焼量が一定変動範囲に収まっているときに、ガス燃焼量を強制的に変更するよう構成されたガス燃焼器具が開示されている。これにより、ガス燃焼量が強制的に変更されることでガス流量の使用流量帯が変化するので、前記所定時間を計時するタイマーをリセットすることができ、誤判定を回避することが可能となる。
【0006】
また、特許文献2には、燃料電池の稼働を開始した後から漏洩判定基準時間(同文献では第一の所定時間、例えば30日)が経過するまでの間に、消費電力計測手段で計測された消費電力のスケジュールに基づいて、一定時間(第二の所定時間、例えば60分)燃料電池を停止状態に保持する構成の燃料電池システムが開示されている。前記一定時間(第二の所定時間)は、ガスメータが警報を発するまでの時間の計測を中断できる時間として設定されており、この時間が経過するまで燃料電池を停止するので、ガスメータからのガス漏洩警報の発報を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−248153号公報
【特許文献2】特開2005−353292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の技術では、燃料電池の側において本来不要な動作を行うよう制御する必要があるため、燃料電池の稼働効率を十分に向上することができない。例えば、タイマーをリセットするために、引用文献1に開示の技術ではガス燃焼器具で必要以上にガスを燃焼させており、また、引用文献2に開示の技術では燃料電池の稼働を停止させている(引用文献1でも稼働の停止が教示されている)。
【0009】
また、引用文献1の燃料電池においては、ガスを必要以上に燃焼させることで異常使用判定時間に達することを回避している。この方法を用いると、異常使用判定時間に達する前に監視タイマーをリセットでき異常判定を回避できる。しかし、この方法では、マイコンメータの下流に燃料電池と使用流量帯が燃料電池と同じガス器具とが設置している場合、マイコンメータは、燃料電池とそれ以外のガス器具との区別がつかないため、使用流量帯が燃料電池と同じガス器具について異常使用判定時間が更新されず、初期時間のまま維持される。それゆえ、燃料電池と同じ使用流量帯で使用されるガス器具については、異常使用判定時間を好適時間に再設定することが妨げられてしまう。さらに、引用文献2の燃料電池においては、稼働を一度停止すると再起動まで時間を要するので、一般的なガス器具に比べても稼働効率が低下する。
【0010】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、燃料電池の稼働効率を十分に向上でき、かつ、異常使用判定時間の好適化を可能とする流量計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る流量計測装置は、前記の課題を解決するために、燃料電池を含む複数のガス器具に流入するガスの流量を計測する流量計測装置であって、前記ガスが流れる流路と、当該流路内でのガス流量を計測する流量計測部と、前記燃料電池との間で、少なくとも前記燃料電池で消費されるガス流量の目標値を受信可能とする通信部と、前記ガス器具に流入する前記ガス流量を監視するガス流量監視部と、を備えており、当該ガス流量監視部は、前記流量計測部で計測された前記ガス流量の実測値と、前記燃料電池から受信した前記ガス流量の目標値とを用いて、前記ガス流量の監視を行うよう構成されている構成である。
【0012】
前記構成の流量計測装置においては、前記ガス流量監視部は、前記ガス流量の実測値から前記目標値を差し引いた上で、前記ガス流量の監視を行うよう構成されてもよい。
【0013】
前記構成の流量計測装置においては、前記ガス流量監視部による監視に用いられる監視用流量データを記憶する監視用流量データ記憶部をさらに備えており、前記ガス流量監視部は、前記実測値および前記目標値に加えて、前記監視用流量データを用いて、前記ガス流量の監視を行うように構成されてもよい。
【0014】
前記構成の流量計測装置においては、前記監視用流量データ記憶部には、前記ガスの漏洩を監視する流量として設定される漏洩監視値が、前記監視用流量データとして記憶されており、前記ガス流量監視部は、実測値から前記目標値を減算した減算値が、前記漏洩監視値よりも大きく、かつ、当該減算値が、予め設定される所定時間以上にわたって計測されれば、ガスが漏洩していると判定するよう構成されてもよい。
【0015】
前記構成の流量計測装置においては、前記監視用流量データ記憶部には、前記ガス器具に設定されている使用流量帯に対応する流量であるガス器具使用監視値が、前記監視用流量データとして記憶されており、前記ガス流量監視部は、前記実測値と前記ガス器具使用監視値とを比較することにより、使用中の前記ガス器具の有無を判定するよう構成されてもよい。
【0016】
前記構成の流量計測装置においては、前記ガス流量監視部は、前記実測値が、予め設定されている所定時間を超えて、前記ガス器具使用監視値として維持されていれば、異常使用状態にある前記ガス器具が存在していると判定するよう構成されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明では、燃料電池の稼働効率を十分に向上でき、かつ、異常使用判定時間の好適化を可能とする流量計測装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る流量計測装置の構成およびその利用形態の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す流量計測装置の利用形態で用いられるガス器具の使用流量帯の一例を説明する模式図である。
【図3】(a)は、図1に示す流量計測装置におけるガス流量の時間的変化の一例を示すタイムチャートであり、(b)は、比較例としての一般的な流量計測装置におけるガス流量の時間的変化の一例を示すタイムチャートである。
【図4】図1に示す流量計測装置のガス流量監視部で行われるガス流量監視の制御の一例を示すフローチャートである。
【図5】(a),(b)は、図1に示す流量計測装置の変形例を示す要部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0020】
[流量計測装置の構成]
まず、本発明の実施の形態に係る流量計測装置の構成の一例と、当該流量計測装置の利用形態の一例とについて、図1を参照して具体的に説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る流量計測装置10Aは、ガス供給ライン32を介してガス供給源31とガス器具20とにつながっている。
【0021】
ガス供給源31は、原料ガス源(例えば、都市ガスまたは液化石油ガス源)に接続されており、需要に応じて炭化水素系ガスをガス供給ライン32およびガス器具20に供給する。
【0022】
ガス器具20として、燃料電池21、ファンヒータ22、およびガステーブル23を本実施の形態では例示しているが、これらの種類に限定されるものではなく、他のガス器具を用いても良い。燃料電池21の具体的な構成についても、特に限定されるものではなく、公知のものを好適に用いることができる。
【0023】
流量計測装置10Aは、燃料電池21を含む複数のガス器具20に流入するガスの流量を計測するために、ガス供給ライン32に設けられ、流量計測部11、ガス流量監視部12、監視用流量データ記憶部13、通信部14、およびガス遮断部15を備えている。
【0024】
流量計測部11は、ガスが流れる流路33内でのガス流量を計測するものであり、本実施の形態では、超音波を用いてガス等の流体の流量を計測する超音波流量計測器が用いられている。典型的な超音波流量計測方法としては、伝搬時間差法を利用したものを挙げることができる。伝搬時間差法では、流量計測の対象となる流路33の上流側および下流側のそれぞれに超音波送受波器を設け、超音波を交互に送受信させる。これにより、順方向および逆方向それぞれの伝搬時間の差から流体の流速を測定し、当該流速と流路33の断面積とを利用して流体の流量を計測する。
【0025】
なお、伝搬時間差法を利用した超音波流量計測器の具体的な構成および流路33の具体的な構成は特に限定されるものではなく、公知の構成を好適に用いることができる。また、流量計測部11としては、前記超音波流量計測器以外にも、熱フローセンサ、フルディック式等の電子式流量計測器を用いることができる。
【0026】
ガス流量監視部12は、ガス器具20に流入するガス流量を監視するものであり、本実施の形態では、流量計測部11で計測されたガス流量の実測値と、燃料電池21から受信したガス流量の目標値とを用いて、ガス流量の監視を行うよう構成されている。ここで、ガス流量の目標値は、燃料電池21で消費されるガス流量の設定値であり、燃料電池21において予め設定されている流量である。ガス流量監視部12は、通信部14を介して燃料電池21と通信可能に接続されており、当該通信部14によって、少なくとも前記目標値を受信可能としている。もちろんガス流量監視部12は、目標値以外の情報を受信してもよいし、ガス流量監視部12から通信部14を介して情報を送信するように構成されてもよい(図1におけるガス流量監視部12および通信部14の間の実線双方向矢印、並びに、燃料電池21および通信部14の間の破線双方向矢印参照)。
【0027】
監視用流量データ記憶部13は、ガス流量監視部12による監視に用いられる監視用流量データを記憶する。ガス流量監視部12は、監視用流量データ記憶部13から監視用流量データを読み出し、ガス流量の実測値および目標値に加えて、監視用流量データも用いることにより、ガス流量の監視を行う。
【0028】
ガス流量監視部12は、例えば、流量計測装置10Aに設けられる演算器(図1には示さず)の機能構成であってもよいし、公知のスイッチング素子、減算器、比較器等による論理回路等として構成されてもよい。また、監視用流量データ記憶部13は、不揮発性メモリ、ハードディスクドライブ、あるいはこれらの組合せ等として構成されればよい。
【0029】
通信部14は、前記の通り、燃料電池21と流量計測装置10Aのガス流量監視部12との間で、情報の通信を可能とするものである。その具体的な構成は特に限定されず、公知の有線通信機器または無線通信機器を好適に用いることができる。
【0030】
ガス遮断部15は、ガス流量監視部12により流量計測部11で計測されるガス流量を監視した結果、何らかの異常状態またはそのおそれがあると判断したときに、当該ガス流量監視部12によって動作し、ガス供給ライン32におけるガスの流通を遮断するものである。
【0031】
なお、流量計測装置10Aは、流量計測部11、ガス流量監視部12、監視用流量データ記憶部13、通信部14およびガス遮断部15以外の構成を備えていてもよい。例えば、前記演算器を含む制御部、表示部、監視用流量データ記憶部13以外の記憶部、計時部、報知部等が挙げられるが、特に限定されない。なお、報知部については、後述する変形例で説明する。
【0032】
[ガス器具異常使用の監視]
次に、流量計測装置10Aにおいて行われるガス器具の異常使用の監視について、図3(a),(b)および図4を参照して具体的に説明する。
【0033】
前記構成の流量計測装置10Aにおいては、使用流量帯(区分帯)に応じた異常使用判定時間が設定されている。そして、一つの使用流量帯において異常使用判定時間以上のガス使用が検出されると流量計測装置は安全のためにガス流路を遮断する構成をとっている。図2は、ガスコンロ、ファンヒータ22、およびガステーブル23の標準的な使用流量帯と各使用流量帯における異常使用判定時間との関係をグラフとして示している。縦軸がガス器具20に設定される最大のガス流量V、横軸が異常使用判定時間tである。
【0034】
通常、図2に示すように、ガス器具の使用流量帯が大きくなるに従って異常使用判定時間は短くなるように設定されている。具体的には、ガステーブル23などが使用される流量帯III(V2<V≦V3)の異常使用判定時間t3は、ファンヒータ22などが使用される流量帯II(V1<V≦V2)の異常使用判定時間t2よりも短い。さらに、流量帯II(V1<V≦V2)の異常使用判定時間t2は、ガスコンロ等が使用される流量帯I(0<V≦V1)の異常使用判定時間t1よりも短い。
【0035】
しかしながら、従来の構成の燃料電池(特許文献1参照)には、上記異常使用判定による遮断を回避するために、燃料電池21の流量帯を超えて、例えばファンヒータ22の流量帯IIに達する程度にガス流量を大幅に変動させる制御(図3(b)参照)が、所定間隔C(Cは漏洩判定時間未満に設定)毎に行われていた。これにより、この従来の構成では所定間隔C毎にガス流量を大幅に変動させるため、ガスを無駄に消費することになる。
【0036】
[ガス漏洩の監視]
次に、前記構成の流量計測装置10Aにおいて行われるガス漏洩の監視について、図3を用いて具体的に説明する。前記構成の流量計測装置10Aは、長時間にわたって流量有りの状態が継続しているときに、漏洩が発生している恐れがあるとして漏洩検出を行うよう構成されている。
【0037】
しかしながら、燃料電池21は、発電のために常時稼働されることが想定されるので、燃料電池21が使用されている間は、漏洩判定基準時間(たとえば、30日)を超える時間でガス器具20の使用が監視されても、ガス遮断部15を動作させず流路33を遮断しないことが望ましい。そこで、一般的な燃料電池では、図3(b)に示すように、流量計測装置によりガス漏れ等の異常が生じていると判断されないように、異常使用判定時間を超える前に、その稼働(運転)を一定時間停止する制御が行われていた(特許文献2参照)。しかしながら、燃料電池21を一度停止すれば再起動まで長時間を要するため稼働効率が低下することになる。
【0038】
以上の課題に対し、本実施の形態に係る流量計測装置10Aは、通信部14を介して燃料電池21から、当該燃料電池21で消費されるガス流量の目標値を取得し、ガス流量監視部12による監視に利用する構成としている(一般に燃料電池21はガス流量を計測する構成を備えていないが、燃料電池21の発電動作を制御するために、ガス流量の予測値である目標値が設定されている。なお、このガス流量の目標値は、流量計測部11で実際に計測されるガス流量の実測値とほぼ同様の挙動を示す)。具体的には、ガス流量監視部12は、燃料電池21からガス流量の目標値を取得し、当該目標値と実測値とを比較することにより、燃料電池21の使用または不使用を判定することができる。
【0039】
これにより、ガス流量監視部12は、燃料電池21が使用されている(稼働中である)間であれば、例えば図3(a)に点線で示すように、監視の上では燃料電池21によるガス流量を打ち消すことができる。それゆえ、例えば、他のガス器具20の稼動によるガス流量の変化Vm、あるいは、配管等から生じたガス漏れによるガス流量の変化Vnを監視することができる。その結果、燃料電池21においてガス流量を大幅に変動させたり、燃料電池21を定期的に停止したりする必要がなくなり、燃料電池21の稼働効率を向上することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、監視用流量データ記憶部13に、各種監視用流量データが記憶され、ガス流量監視部12は、この監視用流量データを利用してガス流量を監視することができる。それゆえ、燃料電池21の使用または不使用以外の様々な監視動作を行うことができる。例えば、ガスの漏洩監視において、ガス流量監視部12は、流量計測部11からの実測値から目標値を減算した減算値が、所定の漏洩監視値よりも大きく、かつ、予め設定される所定時間(漏洩判定基準時間)以上にわたって計測されれば、ガスが漏洩していると判定する。
【0041】
また、他の監視動作としては、ガス器具20の使用状態の監視を挙げることができる。例えば、監視用流量データとして、ガス器具20に設定されている使用流量帯に対応する流量であるガス器具使用監視値が記憶されていれば、燃料電池21が稼働中であっても、ガス流量監視部12は、前記実測値とガス器具使用監視値とを比較することにより、使用中のガス器具20の有無を判定することができる。あるいは、他の監視動作としては、使用中のガス器具20の種類の監視を挙げることができる。例えば、監視用流量データとして、燃料電池21を除くガス器具20の種類に対応するガス器具判別値が記憶されていれば、ガス流量監視部12は、使用中のガス器具20の種類(例えば、ファンヒータ22またはガステーブル23等)を判別することができる。
【0042】
さらに、ガス流量監視部12は、使用中のガス器具20に設定されている使用流量帯および異常使用判定時間に基づいて、異常使用状態にあるガス器具20の存在を判定することもできる。例えば、流量計測部11からのガス流量の前記減算値が、所定の使用流量帯にあり、かつ、当該使用流量帯に設定される異常使用判定時間を超えて、ガス器具使用監視値で維持されていると、ガス流量監視部12が判定していれば、異常使用状態にあるガス器具20が存在していると判定することができる。なお、ガス流量監視部12による流量監視の制御は具体的に限定されず、流量計測部11で計測されたガス流量の実測値と、通信部14を介して受信される燃料電池21の目標値とを少なくとも用いて、ガス流量の監視動作を行えばよい。
【0043】
次に、図4に具体的な監視制御の一例を示す。
まず、ガス流量監視部12は、通信部14により燃料電池21からガス流量の目標値を取得(受信)するとともに、流量計測部11からガス流量の実測値を取得する(ステップS101)。次に、取得したガス流量の目標値と実測値とを比較し(ステップS102)、燃料電池21が稼働中であるか否かを判定する(ステップS103)。稼働中であれば(ステップS103でYES)、ガス流量監視部12は、監視の上で実測値から目標値を差し引き(ステップS104、図3(a)参照)、ガス器具使用監視値を用いて稼働中の他のガス器具20が存在するか否かを判定する(ステップS105)。また、燃料電池21が停止中であれば(ステップS103でNO)、実測値から目標値を差し引くステップを経ずに、稼働中の他のガス器具20の存在を判定する(ステップS105)。
【0044】
稼働中のガス器具20が存在していなければ(ステップS105でNO)、ガス流量監視動作を継続する(ステップS101に戻る)。一方、稼働中のガス器具20が存在していれば(ステップS105でYES)、稼働中のガス器具20が異常使用状態にあるか否かを判定する(ステップS106)。異常使用状態になければ(ステップS106でNO)、漏洩監視値を用いて前述したようにガス漏洩発生の有無を判定する(ステップS107)。ガス漏洩が発生していなければ(ステップS107でNO)、ガス流量監視動作を継続する(ステップS101に戻る)が、ガス漏洩が発生していれば(ステップS107でNO)、ガス流量監視部12は、ガス遮断部15を動作させ、ガス供給源31からのガスを遮断して(ステップS108)、一連の制御を終了する。
【0045】
また、ガス器具20の異常使用状態が判定されれば(ステップS106でYES)、ガス流量監視部12は、ガス遮断部15を動作させ、ガス供給源31からのガスを遮断して(ステップS108)、一連の制御を終了する。なお、ガス流量監視部12は、稼働中のガス器具20の有無を判定するとともに、ガス器具判別値を用いてガス器具20の具体的な種類を判定してもよい。
【0046】
このように、本実施の形態に係る流量計測装置10Aは、燃料電池21が稼働中であっても、当該燃料電池21からガス流量の目標値を取得してガス流量の監視を行うので、これまでの燃料電池21の側で行われていた本来不要な動作(必要以上にガス流量を多くしたり燃料電池21の稼働を停止したりする動作)が不要となり、燃料電池21において煩雑な制御が必要なくなるとともに、稼働効率を向上することができる。
【0047】
また、流量計測装置10Aが、使用流量帯毎に設定される異常使用判定時間を学習できる構成となっていれば、燃料電池21と同じ使用流量帯で使用されるガス器具20の異常使用判定時間の好適化が可能となる。なお、異常使用判定時間を学習する具体的な構成は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
【0048】
[変形例]
なお、本発明に係る流量計測装置は、前述した流量計測装置10Aに限定されず、他の構成も採用することができる。この点について、図5(a),(b)を参照して説明する。
【0049】
本実施の形態では、図1に示すように流量計測装置10Aが監視用流量データ記憶部13およびガス遮断部15を備えているが、本発明はこれに限定されず、図5(a)に示す流量計測装置10Bのように、少なくとも通信部14を備えており、ガス流量の監視に、燃料電池21から受信した目標値を用いるように構成されていればよい。
【0050】
この場合、流量計測装置10Bは、例えば、ガス漏れ対応動作を行う機器と連係するように構成されていればよい。具体的には、ガス漏れ時に警報を発報する報知装置、あるいは、ガス供給ライン32のガスを遮断する遮断装置等と連係する構成が挙げられる、したがって、本発明においては、ガス遮断部15は必須構成ではない。また、流量計測装置10Bにおいては、通信部14を介して燃料電池21以外にLAN等のネットワークに接続されることで、外部の情報機器から監視用流量データを取得することもできる。したがって、監視用流量データ記憶部13も必須構成ではない。
【0051】
あるいは、図5(b)に示す流量計測装置10Cのように、報知部16をさらに備えていてもよい。報知部16は、ガス流量監視部12において何らかの異常状態またはそのおそれがあると判断されたときに、音声、発光等によって異常を報知するものであればよい。これにより、例えば、図4の制御において、ガス遮断部15を動作させてガス供給源31からのガスを遮断する(ステップS108)前に、報知部16により一定時間の報知を行わせてもよい。これにより、いきなりガスを遮断することが回避されるので、例えば、ガス器具20の異常使用状態が判定されたとき(ステップS106でYES)には、ガスが遮断される前に使用者がガス器具20を消すことができる。
【0052】
また、前述したガスの漏洩監視においては、監視用流量データとしてガスの漏洩を監視する流量として漏洩監視値が設定されているが、この漏洩監視値は、ガスの漏洩を判定する閾値として利用できれば、その具体的な値(流量)は特に限定されず、例えば、前記目標値よりも大きい流量として設定されてもよい。このとき燃料電池21が稼働中であっても、ガス流量監視部12は、前記実測値と漏洩監視値とを比較することにより、ガスの漏洩の有無を判定することができる。
【0053】
また、前述した構成では、ガス流量監視部12は、ガス流量の実測値から目標値を差し引いた上で、ガス流量の監視を行っているが、本発明はこれに限定されず、実測値と目標値とを単に対比させるだけでもよいし、取得した目標値または実測値を、予め設定される数式または条件等を利用して処理した上で、ガス流量を監視してもよい。
【0054】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、ガス流量を計測するガスメータ等の流量計測装置の分野に広く好適に用いることができ、特に、ガス器具に燃料電池を含む環境で好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
10A 流量計測装置
10B 流量計測装置
10C 流量計測装置
11 流量計測部
12 ガス流量監視部
13 監視用流量データ記憶部
14 通信部
20 ガス器具
21 燃料電池
33 流路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を含む複数のガス器具に流入するガスの流量を計測する流量計測装置であって、
前記ガスが流れる流路と、
当該流路内でのガス流量を計測する流量計測部と、
前記燃料電池との間で、少なくとも前記燃料電池で消費されるガス流量の目標値を受信可能とする通信部と、
前記ガス器具に流入する前記ガス流量を監視するガス流量監視部と、を備えており、
当該ガス流量監視部は、前記流量計測部で計測された前記ガス流量の実測値と、前記燃料電池から受信した前記ガス流量の目標値とを用いて、前記ガス流量の監視を行うよう構成されていることを特徴とする、流量計測装置。
【請求項2】
前記ガス流量監視部は、前記ガス流量の実測値から前記目標値を差し引いた上で、前記ガス流量の監視を行うよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の流量計測装置。
【請求項3】
前記ガス流量監視部による監視に用いられる監視用流量データを記憶する監視用流量データ記憶部をさらに備えており、
前記ガス流量監視部は、前記実測値および前記目標値に加えて、前記監視用流量データを用いて、前記ガス流量の監視を行うように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の流量計測装置。
【請求項4】
前記監視用流量データ記憶部には、前記ガスの漏洩を監視する流量として設定される漏洩監視値が、前記監視用流量データとして記憶されており、
前記ガス流量監視部は、実測値から前記目標値を減算した減算値が、前記漏洩監視値よりも大きく、かつ、当該減算値が、予め設定される所定時間以上にわたって計測されれば、ガスが漏洩していると判定するよう構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の流量計測装置。
【請求項5】
前記監視用流量データ記憶部には、前記ガス器具に設定されている使用流量帯に対応する流量であるガス器具使用監視値が、前記監視用流量データとして記憶されており、
前記ガス流量監視部は、実測値から前記目標値を減算した減算値と前記ガス器具使用監視値とを比較することにより、使用中の前記ガス器具の有無を判定するよう構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の流量計測装置。
【請求項6】
前記ガス流量監視部は、前記減算値が、予め設定されている所定時間を超えて、前記ガス器具使用監視値に対応する流量として維持されていれば、異常使用状態にある前記ガス器具が存在していると判定するよう構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の流量計測装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−220230(P2012−220230A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83349(P2011−83349)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】