説明

流量調整器

【課題】極めてシンプルな構造で、微細化・集積化が容易に可能で、高い耐久性を有し、高圧で粘度の高い流体または弁の出入口間における圧力差が大きくても弁が損傷することなく、安定かつ確実に弁の開閉動作が行われ、流路の開閉および流量調節を行える流量調整器を提供する。
【解決手段】微小球2が第1の位置に移動したときに、流路A,B内を流れる非磁性流体の流量は、微小球2が第2の位置に移動したときに、流路A,B内を流れる非磁性流体の流量よりも少ないので、極めてシンプルな構造で、微細化・集積化が容易に可能で、高い耐久性を有し、高圧で粘度の高い流体または微小球2の出入口間における圧力差が大きくても弁が損傷することなく、安定かつ確実に弁の開閉動作が行われ、流路の開閉および流量調節を行える流量調整器を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量の液体や気体などの流体の流れを遮断したり、流量を調整する流量調整器に係るものであり、例えば微量または粘度の高い高圧の油などの流体を確実に調整できる流量調整器に関するものであり、また強磁性体材料を含有しない様々な微粒子を含む流体が流れる流路を切り替えることで微粒子の搬送経路を選択できる機能または微粒子をろ過する機能を有する流量調整器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、微量な流体を制御するニーズが高まり、特に化学やバイオ分野においては微小流路の内部に微量な液体を流すことで分析を可能にするために、微細加工技術を用いて作製される微小流路やマイクロバルブなどの研究が試みられている。ここで、微小流路を遮断し流路を通過する流量を制御するために、従来いくつかの方法が提案されている。一例として、
(1)静電力を用いてシリコンゴム製のダイアフラム部を平らな面に押し当てて液体を遮断するもの(例えば、特許文献1参照)、
(2)空気やガスの膨張によってメンブレンを変形させて、マイクロチップ中の微小流路を遮断するもの(例えば、特許文献2参照)、
(3)微小流路にゲートとなる部材を挿入することにより微小流路を流れる流体を遮断することが可能なスライドゲートを用いるもの(例えば、非特許文献3参照)、のような種々のアクチュエータを組み合わせてマイクロチップに設置されるマイクロバルブが提案されている。
【特許文献1】特開2004−176802号公報
【特許文献2】特開2004−358635号公報
【非特許文献1】Albert P.Pisanoらによる、「Low−Leakage Micro Gate Valve」、Transducers‘03、Berkley USA、2003年6月11日、pp,143−146
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のごとく微細加工技術を用いて作製された従来のバルブにおいて、特許文献1に記載された静電気による動作形態では、静電気力でバルブを動作させる方式であるために、対向電極の間隔を広く取れないことから十分な流路断面が確保されず、流体を搬送するときの圧力抵抗が大きくなることや、バルブ部分を弾性支持する支持部における耐久性を確保する必要があるという問題点があった。また、特許文献2や非特許文献1の技術では、流体の進行方向に対して垂直方向に動作するバルブ弁をもち流路の断面を確保することができるが、急激な高圧が加わると、特許文献2の技術においては、空圧などを用いて弾性変形により流量を調整するメンブレンが流路へ吸着することや弁が損傷する恐れがある不都合な点があげられ、非特許文献1の技術においては、スライドゲートによって流路を閉じるときに急に高い圧力差が生じる場合に弁を動作させる場合、弁の接点位置での摩擦力を上回る余分な力を必要とするという不都合な点があげられる。
【0004】
以上のような理由からこれらのバルブにおいては、燃料や潤滑剤として使用する粘度の高い高圧の油などの流体を流入した流路中で弁を開閉する用途には不向きであるといえる。さらに、上記にあげるような遮断弁をもつ構造体を従来よりも微小化して基板内部や微小な領域に埋め込む場合には、プロセス工程が多く構造が複雑であるために、ミクロンオーダーでの微細な構造設計およびシステムの小型化を進める上で、製造、生産コストや効率なども含めて不利な点が多い。
【0005】
そこで本発明は、以上にあげた従来の不都合な点からなる課題を解決するものであり、極めてシンプルな構造で、微細化・集積化が容易に可能で、高い耐久性を有し、高圧で粘度の高い流体または弁の出入口間における圧力差が大きくても弁が損傷することなく、安定かつ確実に弁の開閉動作が行われ、流路の開閉および流量調節を行える流量調整器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流量調整器は、
非磁性流体の流路内において、第1の位置と第2の位置との間で移動可能となっている磁性体の弁部材と、
前記弁部材を、少なくとも前記第1の位置から前記第2の位置へと移動させるように磁力を発生する磁力発生手段とを有し、
前記弁部材が第1の位置に移動したときに、前記流路内を流れる非磁性流体の流量は、前記弁部材が第2の位置に移動したときに、前記流路内を流れる非磁性流体の流量よりも少ないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の流量調整器によれば、非磁性流体の流路内において、第1の位置と第2の位置との間で移動可能となっている磁性体の弁部材と、前記弁部材を、少なくとも前記第1の位置から前記第2の位置へと移動させるように磁力を発生する磁力発生手段とを有し、前記弁部材が第1の位置に移動したときに、前記流路内を流れる非磁性流体の流量は、前記弁部材が第2の位置に移動したときに、前記流路内を流れる非磁性流体の流量よりも少ないので、極めてシンプルな構造で、微細化・集積化が容易に可能で、高い耐久性を有し、高圧で粘度の高い流体の出入口間における圧力差が大きくても弁部材が損傷することなく、安定かつ確実に弁部材の動作が行われ、流路の開閉や流量調節を行える流量調整器を提供することができる。
【0008】
特に、非磁性流体である気体や液体などを導入する微小断面の流路、流路の途中に連結されて流路の開閉または流量の調整を行う弁部材として機能する微小球を単一または複数個内蔵する収容部を形成したハウジングと、外部磁場の印加によって収容部内を移動する強磁性体材料を含有した微小球と、外部磁場を用いて微小球を同一または個別に動作できる磁力発生手段の他に、流体の流入口と流出口、流路の蓋部材、流路に取り付けられる各種圧力や温度測定に要するセンサなどの周辺部を含むと好ましい。
【0009】
更に、本発明に係る流量調整器に用いるハウジングに、半導体微細加工技術を利用して流路や弁部材の収容部を作製する場合、ガラスやシリコン基板、PDMS(poly−dimethylsiloxane)材料をハウジングの素材として、その表面に微小な溝を作製し、更に微小溝よりも大きな断面をもつ収容部を作製した後に、流路を通過できない程度の単一または複数個の微小球を収容部に配置して、蓋部材とハウジングの貼り合わせを行い、最後に磁力発生手段を取り付けることで簡単に構造の製作が可能であり、微細化、複数多段化、高い耐圧構造を極めて安価に実現できる上に、種々の材料を用いた設計が可能であるため耐薬品性にも優れた幅広い材料設計ができる。
【0010】
また、本発明に係る流量調整器においては、例えば微小球を用いた簡素な構成であって弾性支持部が存在しないために耐久信頼性が高く、磁力により微小球を移動するだけで開閉動作が可能であり、微小球の移動による遮断メカニズムにより流路と微小球の間の摩擦力が低減されるため、圧力差が大きくても潤滑に安定した流路の開閉および流量調整を潤滑に行うことが可能である。なお、弁部材は微小球に限らず微小円筒(これらを総称して微小体という)であっても良い。
【0011】
更に、本発明によれば、以下の利点がある。
(1)弁部材である微小体が移動の際に生じる摩擦力を低減できるため、高粘度・高圧力の流体搬送が可能である。
(2)弾性支持部をもたない単純な構造であるために微細化、集積化が容易であり、生産コストも低い。
(3)流路に対して垂直方向に微小体を移動する場合は、流路に沿った面内における微小体が占有する面積を少なくすることができるために、複数の収容部を設計し集積化する場合は有利な構造である。
(4)磁力発生手段は、ハウジングや蓋部材とは完全に分離して取付け交換が可能な構造にできる。収容部内で流路を開閉する微小体を個別もしくは、同時に移動させることも可能である。
(5)微小体を直列に集積化することで開閉時の流量比が向上され流量調整が可能であり、マイクロポンプとしての応用、ろ過装置としての応用など、微小体の配置設計によって様々な付加機能が考えられる。
(6)構造が単純であるために、高い耐薬品性を持たせるなどの幅広い材料設計が可能である。
【0012】
前記磁力発生手段は、前記弁部材を前記第1の位置から前記第2の位置へと移動させるか、又は前記弁部材を前記第2の位置から前記第1の位置へと移動させるように、選択的に磁力を発生させると、確実な動作を実現できるので好ましい。
【0013】
前記弁部材は複数設けられ、前記磁力発生手段は、任意の前記弁部材が移動するように磁力を発生すると、細かい流量制御ができるので好ましい。
【0014】
前記弁部材の収容部及び前記収容部に連通する溝を備えたハウジングと、前記収容部及び前記溝を遮蔽する蓋部材とが設けられていると好ましい。
【0015】
前記蓋部材には、前記収容部の少なくとも一部が形成されると好ましい。
【0016】
前記蓋部材は板材であると好ましい。
【0017】
前記溝は、前記ハウジングの素材にエッチングマスクとレジストとをこの順序で形成した後に、露光と現像とにより前記レジストの一部を除去し、更にエッチング処理により前記レジストと前記エッチングマスクとを除去することにより形成されると好ましい。
【0018】
前記溝は、前記ハウジングの素材に膜材料とエッチングマスクとレジストとをこの順序で形成した後に、露光と現像により前記レジストの一部を除去し、更にエッチング処理により前記レジストと前記エッチングマスクと前記膜材料の一部とを除去することにより形成されると好ましい。
【0019】
前記溝は、前記ハウジングの素材にレジストを形成した後に、露光と現像とにより前記レジストの一部を除去することにより形成されると好ましい。
【0020】
前記溝は、金型を用いて形成されると好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態にかかる流量調整器の側面断面図である。図2は、図1の構成をII-II線で切断して矢印方向に見た図である。
【0022】
図1において、ブロック状のハウジング1は、平面である上面1aの中央に開口した袋穴状の収容部1bと、上面1aにおいて左右の両端から中央に向かって延在し収容部1bに連通した断面U字状もしくは凹状の流路溝1cとを有している。ハウジング1の素材としては、ガラス基板、シリコン基板、PDMS(poly-dimethylsiloxane)などを用いることができる。ガラス基板上に流路溝1cを作製する場合は、ガラス基板上に光硬化樹脂または熱硬化樹脂、レジスト類や、ポリミドなどを用いた膜を形成して、露光、現像、エッチングなどを経て微小流路を作製する。そのほかにも、基板本体のウェットエッチング、RIEによるドライエッチングなどを用いて流路をエッチングするための各種加工手法を用いて作製してもよい。
【0023】
収容部1bは、上面1aに対して面内方向や垂直方向に微小球2の変位を制限する形状をとってもよいし、面内方向や垂直方向などの任意の方向に微小球2を移動させる構成としてもよい。また、収容部1bの内部に複数の微小球(例えば多孔質材からなる)2を配置することによって微粒子のフィルタリングや機械的な破壊用途にも活用することができる。収容部1b又は流路溝1cの形成方法については後述する。
【0024】
ハウジング1の収容部1bは内径D1の例えば円筒状などであり、その内部には、外径D2(<D1)である微小球2が、流路溝1cの延在方向に交差する方向に移動可能に配置されている(図2(a)参照)。弁部材である微小球2は、流路溝1cを通過できない径をもち、強磁性体を含有するものを選択する。これは、微小球2を外部磁場印加によって変位動作させるためである。従って、微小球2としては強磁性材料を含む鉄球などを用いてもよいし、表面を保護するために各種メッキ、蒸着や表面処理加工などを行ってよい。また別な例を示す図2(b)のように、ハウジング1の収容部1bは溝幅D3、深さD4(図1(a)参照)の適当な形状で、その内部において、外径D2(<D3、<D4)の微小球2が、ハウジング1の面内方向(図2(b)で紙面方向)に移動する形態としてもよい。この場合、電磁石4,5はハウジング1の側面に微小球2に対応して取り付けられる。
【0025】
図1において、ブロック状のハウジング1の上面1aに密着するようにして、板状の蓋部材3が取り付けられている。蓋部材3により流路溝1cの上部が覆われることで、非磁性流体の入口側流路A及び出口側流路Bが形成されると共に、収容部1bも同時に遮蔽されるため、収容部1bは、流路A、Bを介してのみ外部と連通することとなる。
【0026】
蓋部材3は、ハウジング1に対して、接着剤、フッ酸を用いた接合、陽極接合、機械的な固定などをもちいて貼り合わせを行い、流路溝1cを外気から孤立させる機能を有するが、高圧流体を流す必要がなければ特に取り付けをする必要はない。また、必要であれば蓋部材3においても、ハウジング1と同様のプロセスを行い流路や収容部を設けることができる。
【0027】
図1において、微小球2が上下方向に移動する場合、蓋部材3の上面には、収容部1bに対向して電磁石4が取り付けられており、また、ハウジング1の下面には、収容部1bに対向して電磁石5が取り付けられている。また、図2(b)において、微小球2が面内方向に移動する場合、電磁石4,5を蓋部3の上面、ハウジング1の下面または側面にも取り付けることができる。電磁石4,5が磁力発生手段を構成するが、コイル、永久磁石などを用いて作製することができる。その他に、図示しないセンサーや、流路の導入口、導出口などが取り付けられている。
【0028】
本実施の形態の動作について説明する。図1,2において、入口側流路Aは非磁性流体の貯蔵部(不図示)に接続され、出口側流路Bは、非磁性流体を供給すべき箇所(不図示)に接続されているものとする。ここで、外部の電源(不図示)から電磁石5に電力を供給し、電磁石4には電力を供給しない状態では、電磁石5のみから磁気が発生し、それにより図1(a)に示すように、微小球2は収容部1b内で磁力により電磁石5(図1で下方)に向かって吸引され、収容部1bの底面に接触する。かかる位置が第2の位置になる。このとき、入口側流路A及び出口側流路Bは、微小球2により塞がれることがなく、比較的大きな流量で非磁性流体が入口側流路Aから出口側流路Bに流れることとなる。
【0029】
ここで、外部の電源から電磁石5への電力供給を遮断すると共に、電磁石4に電力を供給すると、電磁石4のみから磁気が発生し、それにより図1(b)に示すように、微小球2は収容部1b内で磁力により電磁石4(図1で上方)に向かって吸引される。かかる位置が第1の位置になる。このとき、入口側流路A及び出口側流路Bの間に微小球2が位置するようになるが、微小球2と収容部1bとの間には微小なスキマが存在する。従って、図1(a)に示す状態よりも出口側流路Bを通過する非磁性流体の流量は少なくなる。
【0030】
このように収容部1b内の微小球2は、外部磁場の印加によって流路A,Bを開閉または流量制御することができるので、微小球2の移動形態に応じて電磁石4,5をハウジング1や蓋部材3の面の任意の位置に固定することができる。収容部1bを集積化する場合は、各収容部1b内部に収容された複数の微小球2を同時に動かすために一つあるいは複数の磁力発生手段を用いてもよいし、または例えば磁力発生手段を収容部1bの数分だけ複数個置くことによって微小球2を個別に移動する形態としてもよい。
【0031】
以上のように、本実施の形態の流量調整器は、簡単に作製される極めて簡単な構造であることにより、微細化、複数多段化、高い耐圧構造を極めて安価に実現できる上に、種々の材料で設計可能であるため耐薬品性にも優れている。また、幅広い材料設計が可能であり、微小球2を用いた簡単な形状で弾性支持部が存在しないために耐久信頼性が高く、外部磁場により微小球2を移動するだけで開閉動作が可能であり、微小球2の移動による遮断メカニズムにより流路A,Bと微小球2の間の摩擦力が低減されるため、圧力差が大きくても潤滑に安定した流路A、Bの開閉および流量調整を円滑に行うことが可能である。
【0032】
なお、電磁石5は必須の構成ではなく、永久磁石に置き換えてもよい。この場合、例えば電磁石4への電力供給を遮断することで、磁力および自重を用いて微小球2を収容部1b内で下方に移動させることができる。
【0033】
図3(a)は、第2の実施の形態にかかる流量調整器を示す図1と同様な側面断面図であるが、同様な構成については説明を省略する。ハウジング1は、平面である上面1aの中央に開口した袋穴状の4つの収容部1bと、必要があれば置く溝3aと、上面1aにおいて左右の両端から中央に向かって延在し4つの収容部1bと直列に連通する断面U字状もしくは凹状または円状などの流路溝1cとを有している。各収容部1b内には、図1,2に示す例と同様に強磁性体である微小球2が配置されている。
【0034】
図3(a)において、ブロック状のハウジング1の上面1aに密着するようにして、板状の蓋部材3が取り付けられている。蓋部材3により流路溝1cの上部が覆われることで、非磁性流体の流路A,B,C,D,Eが形成されると共に、4つの収容部1bも同時に遮蔽されるため、内側の2つの収容部1bは、流路B,C、Eにより隣接する収容部1b、1bのみに連通し、両端側の2つの収容部1bは、流路A,Eにより外部と連通し且つ流路B、Dにより隣接する収容部1bに連通している。
【0035】
図3(a)において、蓋部材3の上面には、各収容部1bに対向して電磁石4が取り付けられており、また蓋部材3の下面には、収容部1bの一部を構成する、必要があれば置く溝3aが形成されている。更に、ハウジング1の下面には、各収容部1bに対向して電磁石5が取り付けられている。電磁石4,5が磁力発生手段を構成するが、本実施の形態では、各電磁石4,5は独立して磁力を発生可能となっている。なお、図3(b)に示す変形例のように、ハウジング1の各収容部1bを深さ方向より流路A〜Eに直交する面内方向に長くすることで、微小球2が、ハウジング1の収容部1bに沿って移動する形態としてもよい。この場合、電磁石4,5はハウジング1の側面に微小球2に対応してそれぞれ取り付けられる。
【0036】
本実施の形態の動作について説明する。図3(a)において、入口側流路Aは非磁性流体の貯蔵部(不図示)に接続され、出口側流路Eは、非磁性流体を供給すべき箇所(不図示)に接続されているものとする。ここで、外部の電源(不図示)から全ての電磁石5に電力を供給し、全ての電磁石4には電力を供給しない状態では、全ての電磁石5のみから磁気が発生し、各微小球2は収容部1b内で磁力により電磁石5(例えば図3(a)で下方)に向かって吸引され、収容部1bの底面に接触する(第2の位置になる)。このとき、流路A〜Eは、いずれの微小球2により塞がれることがなく、比較的大きな流量で非磁性流体が入口側流路Aから出口側流路Eに流れることとなる。
【0037】
ここで、外部の電源から全ての電磁石5への電力供給を遮断すると共に、全ての電磁石4に電力を供給すると、全ての電磁石4のみから磁気が発生し、それにより各微小球2は収容部1b内で磁力により電磁石4(例えば図3(a)で上方)に向かって吸引され、蓋部材3の下面に接触する(第1の位置になる)。このとき、入口側流路A及び出口側流路Eの間に全ての微小球2が位置するようになるため、流路抵抗が増大し、非磁性流体の入口側流路Aから出口側流路Eへの流れが抑制される。
【0038】
一方、例えば図3(a)に示すように、左から2番目の電磁石4と、左から1,3,4番目の電磁石5のみに電力を供給するようにすると、左から2番目の微小球2のみが第1の位置になり、それ以外の3つの微小球2は第2の位置となる。即ち、流路A〜Eを塞いでいるのは、1つの微小球2のみであるため、その流路抵抗に応じた流量の非磁性流体が流路を流れるように調整されることとなる。明らかであるが、任意の数及び位置の電磁石4、5にのみ電力を供給するようにすると、流路A〜Eを塞ぐ微小球2の数と位置が変化するので、それに応じて流量調整器を通過する非磁性流体の流量が変化することとなる。収容部1bと微小球2の数を増大させれば、それに応じて細かい流量調整が可能となる。このように多段配置構造をとることによって、開閉時の流量比を簡易に大きくすることができる
【0039】
図4(a)は、第2の実施の形態の変形例にかかる流量調整器の図3(a)と同様な断面図である。図4(a)に示す変形例においては、各収容部1bは、流路溝1cの長手方向及び上面1aに対して直角でなく傾いて延在している。それ以外の構成に関しては、第2の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。本変形例によれば、収容部1bを傾斜を持たせて複数配置することによって、送り流量を増加するポンプ機能を与えることが可能である。なお、図4(b)に示す変形例のように、ハウジング1の各収容部1bを深さ方向より流路A〜Eに対して傾いた面内方向に長くすることで、微小球2が、ハウジング1の収容部1bに沿って移動する形態としてもよい。この場合、電磁石4,5はハウジング1の側面に微小球2に対応してそれぞれ取り付けられる。
【0040】
図5は、第3の実施の形態にかかる流量調整器の分解斜視図であり、ハウジング1と蓋部材3とが分離した状態で示されている。本実施の形態においては、図1,2の実施の形態に対して、ハウジング1に形成した収容部1bを、ハウジング1の上面1aに平行に且つ流路溝1cの長手方向に直角延在するように形成した点が異なっており、それに伴い、電磁石4,5を収容部1bに対向してハウジング1の両側面にそれぞれ接着している。なお、電磁石4,5はハウジング1の下面や蓋部材3の上面に取り付けてもよい。収容部1bは、その内部に転動自在に微小球2が配置されている。流路溝1cは、収容部1bに対して電磁石4寄りに接続している。なお、収容部1bを複数設けることは任意であるし、収容部1bを任意方向に傾けてもよい。
【0041】
本実施の形態の動作について説明する。図5において、入口側流路Aは非磁性流体の貯蔵部(不図示)に接続され、出口側流路Bは、非磁性流体を供給すべき箇所(不図示)に接続されているものとする。ここで、外部の電源(不図示)から電磁石5に電力を供給し、電磁石4には電力を供給しない状態では、電磁石5のみから磁気が発生し、微小球2は収容部1b内で磁力により電磁石5(図5で右方)に向かって吸引され、収容部1bの右側面に接触する(第2の位置になる)。このとき、流路A、Bは微小球2により塞がれることがなく、比較的大きな流量で非磁性流体が入口側流路Aから出口側流路Bに流れることとなる。
【0042】
一方、外部の電源から電磁石5への電力供給を遮断すると共に、電磁石4に電力を供給すると、電磁石4のみから磁気が発生し、それにより微小球2は収容部1b内で磁力により電磁石4(図5で左方)に向かって吸引され、収容部1bの左側面に接触する(第1の位置になる)。このとき、入口側流路A及び出口側流路Bの間に微小球2が位置するようになるため、流路抵抗が増大し、非磁性流体の入口側流路Aから出口側流路Bへの流れが抑制される。
【0043】
図6(a)は、第4の実施の形態にかかる流量調整器の図1と同様な側面断面図であり、図6(b)は、図6(a)の構成をVIB-VIB線で切断して矢印方向に見た図である。図6(c)は、第4の実施の形態の変形例において蓋部材3を取り外した状態で示す上面図である。本実施の形態においては、図1,2の実施の形態に対して、蓋部材3の下面に、収容部1bの一部を構成する溝3aを形成している。又、ハウジング1の上面に形成された流路溝1cの断面を半円形状とし、それに対向して蓋部材3の下面に形成された流路溝3bの断面を半円形状としている。従って、ハウジング1に蓋部材3を接着したときに、流路溝1cと流路溝3bとで形成される流路A、Bは、断面が円形状となっている。それ以外の構成については、図1、2の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。なお、図6(c)のように、ハウジング1の収容部1bを深さ方向より流路A、Bに直交する面内方向に長くすることで、微小球2が、ハウジング1の収容部1bに沿って移動する形態としてもよい。この場合、電磁石4,5はハウジング1の側面に微小球2に対応して取り付けられる。
【0044】
本実施の形態の動作について説明する。図6において、入口側流路Aは非磁性流体の貯蔵部(不図示)に接続され、出口側流路Bは、非磁性流体を供給すべき箇所(不図示)に接続されているものとする。ここで、外部の電源(不図示)から電磁石5に電力を供給し、電磁石4には電力を供給しない状態では、電磁石5のみから磁気が発生し、微小球2は収容部1b内で磁力により電磁石5(図6で下方)に向かって吸引され、収容部1bの底面に接触する(第2の位置になる)。このとき、流路A、Bは微小球2により塞がれることがなく、比較的大きな流量で非磁性流体が入口側流路Aから出口側流路Bに流れることとなる。
【0045】
一方、外部の電源から電磁石5への電力供給を遮断すると共に、電磁石4に電力を供給すると、電磁石4のみから磁気が発生し、それにより微小球2は収容部1b内で磁力により電磁石4(図6で上方)に向かって吸引され、蓋部材3の溝3aの底面に接触する(第1の位置になる)。このとき、図6(b)に示すように、出口側流路Bの中心線が微小球2の中心を通るようにすると、第1の位置に移動した微小球2は、出口側流路Bの開口部を丁度塞ぐ形となる。これにより、非磁性流体が出口側流路Bに流れ出すことが抑制されるので、流量調整器を、完全閉止可能なマイクロバルブとしても機能させることができる。
【0046】
図7(a)は、第5の実施の形態にかかる流量調整器の側面断面図であり、図7(b)は、図7(a)の構成をVIIB-VIIB線で切断して矢印方向に見た図であるが、蓋部材3は取り外して示している。図7(c)は、第5の実施の形態の変形例において蓋部材3を取り外した状態で示す上面図である。本実施の形態においては、図1,2の実施の形態に対して、ハウジング1に形成した単一の収容部1bの中に複数個の微小球2を配置している。(図7には例として単一の収容部1bの中に2列ずつ3個(計6個)の微小球2を、殆どスキマなく配置し図示する)。また、各微小球2に対向して、ハウジング1の下面及び蓋部材3の上面に、各微小球2を同時にまたは独立して動作可能な電磁石4,5をそれぞれ取り付けている。それ以外の構成については、上述した実施の形態と同様であるため説明を省略する。なお、図7(c)のように、ハウジング1の収容部1bを深さ方向より流路A、Bに直交する面内方向に長くすることで、複数の微小球2が、ハウジング1の収容部1bに沿って独立して移動する形態としてもよい。この場合、電磁石4,5はハウジング1の側面に微小球2に対応してそれぞれ取り付けられる。
【0047】
本実施の形態の動作について説明する。図7(a)、(b)において微小球2が上下方向に移動する場合、入口側流路Aは非磁性流体の貯蔵部(不図示)に接続され、出口側流路Bは、非磁性流体を供給すべき箇所(不図示)に接続されているものとする。ここで、外部の電源(不図示)から全ての電磁石5に電力を供給し、全ての電磁石4には電力を供給しない状態では、全ての電磁石5のみから磁気が発生し、各微小球2は収容部1b内で磁力により電磁石5(図7(a)で下方)に向かって吸引され、収容部1bの底面に接触する(第2の位置になる)。このとき、流路A、Bは、いずれの微小球2により塞がれることがなく、比較的大きな流量で非磁性流体が入口側流路Aから出口側流路Eに流れることとなる。
【0048】
ここで、外部の電源から全ての電磁石5への電力供給を遮断すると共に、全ての電磁石4に電力を供給すると、全ての電磁石4のみから磁気が発生し、それにより各微小球2は収容部1b内で磁力により電磁石4(図7(a)で上方)に向かって吸引され、蓋部材3の下面に接触する(第1の位置になる)。このとき、入口側流路A及び出口側流路Bの間に全ての微小球2が位置するようになるため、流路抵抗が増大し、非磁性流体の入口側流路Aから出口側流路Bへの流れが抑制される。
【0049】
一方、各電磁石4,5への電力の供給状態を調整することで、蓋部材3の下面に接触する微小球2を収容部1b内で任意のパターンで配置することもできる。例えば図7(b)において、第1の位置にある微小球2をハッチングで示し、第2の位置にある微小球2を白抜きで示しているように、蓋部材3の下面に接触する微小球2を千鳥状に配置できる。即ち、流路A、B間を塞ぐ微小球2の数と位置を任意に変更できるので、それに応じて流量調整器を通過する非磁性流体の流量が変化することとなる。収容部1b内の微小球2の数を増大させれば、それに応じて細かい流量調整が可能となる。このように複数の微小球2を用いて、出口側流路Bの開閉を行うことにより、非磁性流体の流れにのって搬送される微粒子などの機械的破壊装置や濾過装置としても機能させることが可能である。なお、微小球2を1つずつ、第1の位置又は第2の位置に移動させれば、流量変化を徐々に行わせる構成も可能となる。図7(c)において、微小球2が面内方向に移動する場合、電磁石4,5はハウジング1の上面や蓋部3の下面に取り付けてもよい。
【0050】
図8は、第6の実施の形態にかかる流量調整器の上面図であるが、蓋部材は取り外して示している。本実施の形態においては、図1,2の実施の形態に対して、ハウジング1に複数個(例えば5個)の収容部1bを形成しており、また入口側流路Aは入口が1つで中で分岐して5つの収容部1bに連通し、更に各収容部1bからそれぞれ出口側流路B〜Fがハウジング1の外部まで延在するように、計5本形成されている。各収容部1b内に微小球2が配置されている。また、各微小球2に対向して、ハウジング1の下面及び蓋部材3の上面に、電磁石(不図示)をそれぞれ取り付けている。それ以外の構成については、上述した実施の形態と同様であるため説明を省略する。なお、図6(c)、図7(c)と同様に各微小球2は、ハウジング1の面内方向に移動する形態をとってもよい。
【0051】
本実施の形態の動作について説明する。図8において微小球2が上下方向に移動する場合、入口側流路Aは非磁性流体の貯蔵部(不図示)に接続され、出口側流路B〜Fは、非磁性流体を供給すべき箇所(不図示)に接続されているものとする。本実施の形態によれば、各電磁石への電力の供給状態を調整することで、蓋部材の下面に接触する微小球2を任意に設定できる。例えば図8において、第1の位置にある微小球2をハッチングで示し、第2の位置にある微小球2を白抜きで示しているように、出口側流路B、D、Fは微小球2によりふさぎ、出口側流路C、Eは開放している。これにより、必要な箇所にのみ非磁性流体を供給することができる。このように、一つの入口側流路Aから侵入した非磁性流体を、出口側流路B〜Fの選択を行うことによって、流量調整器を、流体の流れに乗って搬送される微粒子などの振り分けを行うマイクロバルブとして機能させることができる。微小球2が面内方向に移動する場合、電磁石4,5はハウジング1の上面や蓋部3の下面に取り付けてもよい。
【0052】
次に、ハウジング1(又は蓋部材3)に微細な流路溝1cを形成する方法について説明する。かかる形成方法としては、以下の3つがあげられる。以下、ハウジング又は蓋部材の素材を基板Sと呼ぶこととする。
(1)エッチング流路加工法:
これは、基板Sに、ウエットエッチングまたはドライエッチングを用いて流路用の微細な溝Sgを加工する方法である。図9に、エッチング流路加工法のプロセスフローを示す。まずエッチング部分以外を保護するためのエッチングマスク層EMとして、クロムなどを真空蒸着やスパックリングなどにより基板Sの上面に成膜する(図9(a)参照)。次にスピンコートによりレジストRSを、エッチングマスク層EMの上面に均一の厚さで被覆する(図9(b)参照)。その後、フォトリソグラフィーやその他の露光技術により、微細な流路溝1cの形状にレジストのRSパターニング(パターン転写)を行った後(図9(c)参照)、エッチングマスク層EMをエッチングし(図9(d)参照)、基板Sのエッチングを行い(図9(e)参照)、最終的には、不要なエッチングマスク層EMとレジストRSを除去して、基板Sに微細な溝Sgの形成を行う。収容部も同様にして形成できる。
【0053】
エッチング流路加工法に用いる材料構成の実施例を以下に示す。
(実施例1)基板:石英又はガラス/エッチングマスク:Cr等/レジスト:フォトレジスト/マスクのエッチング液:Crエッチャント/基板エッチング:フッ酸溶液(ウエットエッチング)
(実施例2)基板:シリコン/エッチングマスク:SiO2+Cr等/レジスト:フォトレジスト/マスクのエッチング液:Crエッチャント(硝酸二アンモニウムセリウム+過塩素酸)、SiO2エッチャント(フッ酸緩衝溶液)/基板エッチング:KOH又はTMAHを用いたウェットエッチング、又はSF6を用いたドライエッチング、プラズマエッチング、RIEエッチング)
【0054】
(2)膜材料を用いた流路加工法:
これは、基板に成膜した膜材料に流路用の微細な溝を加工する方法である。図10、11に膜材料を用いた流路加工法のプロセスフローを示す。本手法は、感光性の膜材料を露光することで微細な溝を形成できるi)感光材料を使用する場合と、ii)基板上の膜材料をエッチングで加工する非感光性材料を使用した場合などがある。
【0055】
i)感光材料を使用する場合は、基板S上にフォトレジストPRを塗布し(図10(a)参照)、フォトリソグラフィーやその他の露光技術でパターニングし(図10(b)参照)、更に現像することで一部のフォトレジストPRを除去して微細な溝Sgを形成することができる(図10(c)参照)。
【0056】
ii)非感光材料を使用する場合は、図9を参照して説明したエッチング流路加工法に類似した作製方法を用いる。より具体的には、膜材料PRとエッチングマスクEMとレジストRSを、この順序で基板Sの上面に成膜する(図11(a)参照)。次に、フォトリソグラフィーやその他の露光技術により、微細な溝Sgの形状にレジストのRSパターニング(パターン転写)を行った後(図11(b)参照)、エッチングマスク層EMをエッチングし(図11(c)参照)、膜材料PRのエッチングを行い(図11(d)参照)、最終的には、不要なエッチングマスク層EMとレジストRSを除去して、膜材料PRに微細な溝Sgの形成を行う。収容部も同様にして形成できる。
【0057】
膜材料を用いた流路加工法に用いる材料構成の実施例を以下に示す。なお、基板としてはガラス又はシリコンを用いることができるが、材料を特定せず非磁性材料であれば様々なものが使用できる。特に、膜材料にシリコンを用いる場合は、SOI基板を使用することもできる。
【0058】
(感光材料を使用する実施例1)膜材料:光硬化樹脂、厚膜レジスト又は感光性ポリミド
(非感光材料を使用する実施例2)膜材料:SiO2ガラス等/レジスト:フォトレジスト/エッチングマスク:Cr等/膜のエッチング:フッ酸溶液(ウエットエッチング)
(非感光材料を使用する実施例3)膜材料:ポリミド等/レジスト:フォトレジスト/エッチングマスク:Cr、SiO2等/膜のエッチング:KOH又はTMAHを用いたウェットエッチング)
(非感光材料を使用する実施例4)膜材料:レジスト等/レジスト:フォトレジスト/エッチングマスク:SiO2等/膜のエッチング:O2ガスを用いたドライエッチング
(非感光材料を使用する実施例5)膜材料:シリコン等/レジスト:フォトレジスト/エッチングマスク:Cr、SiO2等/膜のエッチング:KOH又はTMAHを用いたウェットエッチング、又はSF6を用いたドライエッチング
【0059】
なお、SiO2エッチャントはフッ酸緩衝溶液であり、シリコン基板のエッチングは、KOH又はTMAHを用いたウェットエッチング、又はSF6を用いたドライエッチングが好適である。膜材料を用いた流路加工法においては、流路の深さが膜材料の膜厚より浅く加工されていてもよい。
【0060】
(3)金型を用いた成形による流路加工法:
これは、流路用の微細な溝のパターンを転写するために準備した金型を利用して、金型の表面形状に相反する形状を転写することで流路用の微細な溝を作製する手法であるが、これは大量生産に適している。PDMS(poly‐dimethylsiloxane)やシリコンゴムなどを金型の上で成型する成型手法とプラスチックに圧力をかけて金型に押しつけて成形する成形手法によってもよい。
【0061】
図12は、金型からPDMSに微細な溝を形成するプロセスフローを示す図である。図12(a)において、微細な溝に対応する凸部を有する金型Mを製造する。続いて、図12(b)に示すように、金型Mの凸部によりPDMS上に微細溝Sgを転写形成する。更に図12(c)に示すように、金型MよりPDMSを離型させることで、微細溝Sgを有するハウジング等を形成できる。
【0062】
図13は、金型から樹脂に微細な溝を形成するプロセスフローを示す図である。図13(a)において、微細な溝に対応する凸部を有する金型Mを製造する。続いて、図13(b)に示すように、金型Mの凸部上に溶融した樹脂PLをかぶせることで、微細溝Sgを転写形成する。更に樹脂PLが固化した後に、図13(c)に示すように、金型Mより樹脂PLを離型させることで、微細溝Sgを有するハウジング等を形成できる。
【0063】
更に、ハウジングと蓋部材の接着は、基本的には接着剤や光硬化樹脂、熱硬化樹脂を用いることが可能ではあるが、耐圧性をよくするために、石英やシリコンの直接接合、ガラスとシリコンの陽極接合、ガラス間ではフッ酸を用いたフッ酸接合、場合によっては機械的な固定手法などの種々の接合手法を用いてもよい。
【0064】
以上述べたように、本実施の形態によれば、外部磁場を用いて微小球の移動により流路の開閉または流量調整を行うことが可能であるために、簡単な構造で、耐圧力性に優れたバルブを実現できることから、粘度の高い油の輸送や、高圧の流れを用いた流体の搬送にも使用できる。また、簡単な構造であるために、微小化や集積化に極めて優れた構造であり、特に直列に配置することによってバルブとしての開閉機能を向上でき、個別に動作させることで流量調整機能や、マイクロポンプとして機能させることが可能である。さらに外部磁場を制御して複数チャネルを組み合わせて流路の開閉を行うことで、流体中に流した磁性体以外の様々な微粒子の搬送、例えば細胞やDNAなどの生体物質を通過しても細胞が破壊されることがなく、効率的な搬送経路の選択を行うことも可能である。その他、光スイッチや微粒子・細胞などの機械的な破壊、微小物体のフィルタとしても応用できる。以上のように、微小球の集積化と配置設計によって多機能な応用の実現や生産コストの削減を図ることができる。
【0065】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施の形態にかかる流量調整器の側面断面図である。
【図2】図2(a)は、図1の構成をII-II線で切断して矢印方向に見た図であり、図2(b)は、別な例にかかる流量調整器の図2(a)と同様な図である。
【図3】図3(a)は、第2の実施の形態にかかる流量調整器を示す図1と同様な側面断面図であり、図3(b)は、第2の実施の形態の変形例において蓋部材3を取り外した状態で示す上面図である。
【図4】図4(a)は、第2の実施の形態の変形例にかかる流量調整器の図3と同様な断面図であり、図4(b)は、更に別な変形例において蓋部材3を取り外した状態で示す上面図である。
【図5】第3の実施の形態にかかる流量調整器の分解斜視図である。
【図6】図6(a)は、第4の実施の形態にかかる流量調整器の図1と同様な側面断面図であり、図6(b)は、図6(a)の構成をVIB-VIB線で切断して矢印方向に見た図である。図6(c)は、第4の実施の形態の変形例において蓋部材3を取り外した状態で示す上面図である。
【図7】図7(a)は、第4の実施の形態にかかる流量調整器の側面断面図であり、図7(b)は、図7(a)の構成をVIIB-VIIB線で切断して矢印方向に見た図である。図7(c)は、第5の実施の形態の変形例において蓋部材3を取り外した状態で示す上面図である。
【図8】第5の実施の形態にかかる流量調整器の上面図である。
【図9】エッチング流路加工法のプロセスフローを示す図である。
【図10】感光性の膜材料を用いた流路加工法のプロセスフローを示す図である。
【図11】非感光性の膜材料を用いた流路加工法のプロセスフローを示す図である。
【図12】金型からPDMSに微細な溝を形成するプロセスフローを示す図である。
【図13】金型から樹脂に微細な溝を形成するプロセスフローを示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ハウジング
1a 上面
1b 収容部
1c 流路溝
2 微小球
3 蓋部材
3a 溝
3b 流路溝
4,5 電磁石
A,B,C,D,E、F 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性流体の流路内において、第1の位置と第2の位置との間で移動可能となっている磁性体の弁部材と、
前記弁部材を、少なくとも前記第1の位置から前記第2の位置へと移動させるように磁力を発生する磁力発生手段とを有し、
前記弁部材が第1の位置に移動したときに、前記流路内を流れる非磁性流体の流量は、前記弁部材が第2の位置に移動したときに、前記流路内を流れる非磁性流体の流量よりも少ないことを特徴とする流量調整器。
【請求項2】
前記磁力発生手段は、前記弁部材を前記第1の位置から前記第2の位置へと移動させるか、又は前記弁部材を前記第2の位置から前記第1の位置へと移動させるように、選択的に磁力を発生させることを特徴とする請求項1に記載の流量調整器。
【請求項3】
前記弁部材は複数設けられ、前記磁力発生手段は、任意の前記弁部材が移動するように磁力を発生することを特徴とする請求項1又は2に記載の流量調整器。
【請求項4】
前記弁部材の収容部及び前記収容部に連通する溝を備えたハウジングと、前記収容部及び前記溝を遮蔽する蓋部材とが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流量調整器。
【請求項5】
前記蓋部材には、前記収容部の少なくとも一部が形成されることを特徴とする請求項4に記載の流量調整器。
【請求項6】
前記蓋部材は板材であることを特徴とする請求項4又は5に記載の流量調整器。
【請求項7】
前記溝は、前記ハウジングの素材にエッチングマスクとレジストとをこの順序で形成した後に、露光と現像とにより前記レジストの一部を除去し、更にエッチング処理により前記レジストと前記エッチングマスクとを除去することにより形成されることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の流量調整器。
【請求項8】
前記溝は、前記ハウジングの素材に膜材料とエッチングマスクとレジストとをこの順序で形成した後に、露光と現像により前記レジストの一部を除去し、更にエッチング処理により前記レジストと前記エッチングマスクと前記膜材料の一部とを除去することにより形成されることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の流量調整器。
【請求項9】
前記溝は、前記ハウジングの素材にレジストを形成した後に、露光と現像とにより前記レジストの一部を除去することにより形成されることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の流量調整器。
【請求項10】
前記溝は、金型を用いて形成されることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の流量調整器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−255433(P2007−255433A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76612(P2006−76612)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】