説明

流量調整弁及びそれを備えた給湯機

【課題】流量を減少させた場合でも、弁体の回転トルクの増大を抑え、駆動ユニットの小型化、省電力化を実現する流量調整弁を提供すること。
【解決手段】入出水口(17、18)を有する弁本体4と、前記弁本体4内に配設され、回転することで、出水口17からの出水量を変化させる第一開口部5を有する弁体8とを備え、前記弁体8を所定角度以上回転させたときに、前記第一開口部5とは別の第二開口部10が、前記入水口18と連通するように、前記弁体8に配設したことを特徴とする流量調整弁で、流量を減少させも、第一開口部5とは別に圧力逃し用の第二開口部10によって圧力が逃げるため、弁体の回転トルクが増大するのを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量調整弁及びそれを備えた給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の流量調整弁は、以下に記載されているようなものが一般的であった。
【0003】
図8に示すように、円筒状の弁室1と前記弁室1に開口する側部ポート2、3を有する弁本体4と、前記弁本体4の前記弁室1に回転可能に挿置されかつ前記側部ポート2、3の開口面積を回転に伴って連続的に変化させる所定形状の開口部5が円筒状部(周壁部)6に設けられた天井部7付き円筒状の弁体8とを備え、前記円筒状の弁体8は樹脂成形品とされ、前記弁体8の円筒状部6内に、前記天井部7から下方及び内周壁面から径方向に伸びる仕切形状補強リブ9が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−1925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、流量を減少させていくと入水の水圧により弁体が弁ボディの内壁に押し付けられ、弁体の回転トルクが増大するという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、流量を減少させた場合でも、弁体の回転トルクの増大を抑え、駆動ユニットの小型化、省電力化を実現する流量調整弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の流量調整弁は、入出水口を有する弁本体と、前記弁本体内に配設され、回転することで前記出水口からの出水量を変化させる第一開口部を有する弁体とを備え、前記弁体を所定角度以上回転させたときに、前記第一開口部とは別の第二開口部が、前記入水口と連通するように、前記弁体に配設したことを特徴とするもので、流量を減少させていき、第一開口部の開口面積が小さくなっても、第一開口部とは別に圧力逃し用の第二開口部によって圧力が逃げるため、水圧によって弁体が弁ボディの内壁に押し付けられて、弁体の回転トルクが増大するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流量を減少させた場合でも、弁体の回転トルクの増大を抑え、駆動ユニットの小型化、省電力化を実現する流量調整弁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における流量調整弁の断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1における流量調整弁の弁体の回転角度が0°のときの構成図(b)同弁体の回転角度が90°のときの構成図(c)同弁体の回転角度が180°のときの構成図
【図3】本発明の実施の形態1における流量調整弁の弁体を構成する円筒状部の構成図
【図4】(a)(b)(c)本発明の実施の形態1における流量調整弁の弁体を回転させたときの開口部の位置関係を示す図
【図5】従来の技術の流量調整弁の弁体の回転角度と出湯口1からの流量及び弁体の回転トルクとの関係を示した図
【図6】本発明の実施の形態1における流量調整弁の弁体の回転角度と出湯口からの流量及び弁体の回転トルクとの関係を示した図
【図7】本発明の実施の形態1における給湯機の回路構成図
【図8】従来の流量調整弁の図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、入出水口を有する弁本体と、前記弁本体内に配設され、回転することで前記出水口からの出水量を変化させる第一開口部を有する弁体とを備え、前記弁体を所定角度以上回転させたときに、前記第一開口部とは別の第二開口部が、前記入水口と連通するように、前記弁体に配設したことを特徴とする流量調整弁で、流量を減少させていき、第一開口部の開口面積が小さくなっても、第一開口部とは別に圧力逃し用の第二開口部によって圧力が逃げるため、水圧によって弁体が弁ボディの内壁に押し付けられて、弁体の回転トルクが増大するのを防ぐことができる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明の流量調整弁を給湯機に搭載することにより、流量を減少させた場合でもトルクが増大しないようになり、弁体を駆動させる駆動ユニットの出力を低下させることが可能となり、給湯機の小型化及び省電力化が可能となる。また、入水圧の増大による弁体の回転トルクの増大が押さえられるので、より高水圧でも動作可能な給湯機を提供することが可能となる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における流量調整弁の断面図を示すものである。
【0014】
図1において、円筒状の弁室1と前記弁室1に開口する側部ポート2を有する弁本体4と、前記弁本体4の前記弁室1に回転可能に挿置されかつ前記側部ポート2の開口面積を回転に伴って連続的に変化させる所定形状の開口部5が円筒状部(周壁部)6に設けられた円筒状の弁体8とを備え、前記開口部から180°回転した部分に第二の開口として、圧力逃がし用のスリット10が設けられている。
【0015】
前記弁体8には弁体8を回転させるための回転軸11が形成されており、前記回転軸11には回転軸Oリング12が2個取り付けられており、弁体8と弁本体4との間の水漏れを防ぐ構成となっている。
【0016】
弁体8が弁本体4から抜けるのを防止するために、弁押さえ13が弁本体4に挿置されており、前記弁押さえ13は弁本体から抜けないようにピン14によって止められている。前記弁押さえ13と弁本体4の間に弁押さえOリング15が挿置されており、押さえ13と弁本体4の間からの水漏れを防いでいる。
【0017】
弁体8を回転摺動させるために、弁本体4に駆動ユニット16が弁本体4に取り付けられている。駆動ユニット16と回転軸11は嵌め合いにより連結されており、駆動ユニット16によって発生した回転動力を弁体8に伝えて、弁体8が回転摺動する。
【0018】
側部ポート2から流入した流体は、入水口である側部ポートの開口18に流入し、前記開口部5を通り、弁本体4の下部に開けられている出水口である出湯口17から流出する

【0019】
ここで、前記弁体8を回転すると、前記開口部5と側部ポートの開口18とのオーバーラップした面積が変化し、出湯口17に流出する流量を連続的に変化させることができる。
【0020】
以上のように構成された流量調整弁について、以下その動作、作用を説明する。
【0021】
図2(a)〜図2(c)に前記弁体8を90°毎に回転させた図面を示す。図に示すように、第一の開口として開口部5が弁体8を構成する円筒状部6に開けられており、前記第一の開口部5から180°回転した部分、すなわち、第一の開口部5が形成されている同一面である円筒状部6で、第一の開口部5の対向面に、第二の開口として圧力逃がし用のスリット10が設けられている。
【0022】
また、図3に前記円筒状部6の展開図を示す。第一の開口部5は長方形をしており、その長手方向の軸線上に第二の開口としてスリット10が形成されている。図4(a)、図4(b)、図4(c)に、円筒状部6に開けられた第一の開口部5と第二の開口部であるスリット10及び側部ポート2の開口18との位置関係を示したものである。
【0023】
図4(a)は開口部5と入水口である側部ポートの開口18とが、完全にオーバーラップした状態であり、出湯口からの流出流量は最大となる。なお、入水口である側部ポートの開口18と第二の開口部であるスリット10とは完全にオーバーラップしていない。
【0024】
図4(b)は図4(a)に示した位置から弁体8を所定角度回転させた状態で、第一の開口部5と入水口である側部ポートの開口18のオーバーラップしている面積は小さくなり、前記面積と比例して出湯口からの流出流量も少なくなる。なお、入水口である側部ポートの開口18と第二の開口部であるスリット10とは、まだ、完全にオーバーラップしていない。
【0025】
図4(c)は図4(b)よりさらに弁体8を所定角度回転させた状態で、開口部5と入水口である側部ポートの開口18とのオーバーラップ面積がなくなる前に、第二の開口部であるスリット10と入水口である側部ポートの開口18とがオーバーラップするようにスリット10が形成されている。
【0026】
以上のように本実施の形態においては、側部ポート2を有する弁本体4と、前記弁本体4内に配設され、回転することで、前記側部ポート2からの出水量を変化させる第一の開口部5を有する弁体8とを備え、前記第一開口部5とは別に圧力逃し用の第二開口部としてスリット10を有することにより、流量を減少させていき、第一の開口部5の面積が小さくなり、圧力が上昇していくと圧力逃し用のスリット10が側部ポートの開口18とオーバーラップし始め、前記スリット10から圧力が逃げるため、水圧によって弁体が弁ボディの内壁に押し付けられて弁体の回転トルクが増大するのを防ぐことができる。
【0027】
図5は、従来の技術の流量調整弁の弁体5の回転角度と出湯口16からの流量及び弁体の回転トルクとの関係を示したもので、図6は、本発明における流量調整弁の弁体5の回転角度と出湯口16からの流量及び弁体の回転トルクとの関係を示したものである。
【0028】
従来の流量調整弁では、弁体の回転とともに流量が低下していき、流量が極端に少なくなると回転トルクが急激に上昇してしまうが、本発明の構成では、弁体の回転とともに流量が低下していき、流量が最小となる付近で回転トルクは上昇するものの、第二の開口であるスリットから圧力が逃げるために圧力上昇は低く抑えることが可能となる。
【0029】
これにより、より高水圧での使用が可能であり、また、弁体8を駆動させるのに必要な回転トルクも小さくてすむため、駆動ユニット15のパワーを落とし、消費電力を抑えられ、駆動ユニット15を小型化することが可能となる。
【0030】
また、弁体8にかかる横方向の負荷が小さくなり、弁体8が弁室1に押し付けられる力が小さくなるので、弁体が摺れを押さえることが可能で、結果高寿命化が図れる。
【0031】
図7は、本発明の給湯機のシステム図を示すものである。図7において、貯湯槽19とヒートポンプ熱源20を備え、給水源から供給された水は給水管21を通り、減圧弁22により減圧された後、貯湯槽19の下部と給湯混合弁23に分岐され、貯湯槽19の下部から入水された水は貯湯槽19に貯まる。
【0032】
貯湯槽19の下部とヒートポンプ熱源20とは沸き上げポンプ24を介してヒートポンプ往き配管25で接続されている。ヒートポンプ熱源20内にはコンプレッサー26が内蔵され、ヒートポンプ熱源20に入水された湯水を熱交換器27で熱交換して温度を上げてヒートポンプ戻り配管28とタンク下戻り配管29を通って、貯湯槽19の下部に戻るようになっている。
【0033】
ヒートポンプ戻り配管28とタンク下戻り配管29の間には三方弁30が設けられており、沸き上げ初期にはヒートポンプ熱源20から戻ってくる湯温は低く、その場合には三方弁30の流路は沸き上げた湯をタンク下戻り配管29を通り、貯湯槽20の下部に供給するようになっており、ヒートポンプ熱源20から戻ってくる湯温が高くなった場合、三方弁30の流路は、タンク上戻り配管31を通り、貯湯槽20の上部に戻すようになっている。
【0034】
貯湯槽20の上部に貯えられた湯と給水管21から分岐された水は給湯混合弁23で混合され、流量調整弁32と流量センサー33を通り蛇口34から出湯される。流量調整弁32は給湯混合弁23からの出湯される湯量を流量センサー33からの流量情報に基づきコントロールされ、給湯開始時などに蛇口34から急激に湯が流れないように開度を絞り、その後徐々に流量が全開になるように流量調整弁32の開度を連続的に変化させることが可能である。
【0035】
以上のように本実施の形態においては、給湯混合弁23からの出湯される湯量を流量調整弁32によって減少させるときに、弁体の回転トルクが増大するのを防ぐことができるため、より高圧でも流量調整弁32の駆動が可能であり、減圧弁22の設定圧力を上げることができるため、より高水量の確保または、より高い箇所への出湯が可能となり、よりユーザーの使い勝手が向上する。また、流量調整弁32を駆動させるための動力が小さくてすむので、省電力化も図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかる流量調整弁及びそれを備えた給湯機は、流量を減少させて場合でもトルクが増大しないようになり、弁体を駆動させる駆動ユニットの出力を低下させることが可能となり、前記駆動ユニットの小型化、省電力化が可能となる。また、入水圧の増大による弁体の回転トルクの増大が押さえられるので、より高水圧でも駆動可能な流量調整弁を提供することが可能なので、給水、給湯の流量調整弁や給湯機等への用途に適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 弁室
2 側部ポート
4 弁本体
5 第一開口部
6 円筒状部(周壁部)
7 天井部
8 弁体
9 仕切形状補強リブ
10 第二開口部(スリット)
11 回転軸
12 回転軸Oリング
13 弁押え
14 ピン
15 弁押えOリング
16 駆動ユニット
17 出水口(出湯口)
18 入水口(側部ポートの開口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出水口を有する弁本体と、前記弁本体内に配設され、回転することで前記出水口からの出水量を変化させる第一開口部を有する弁体とを備え、前記弁体を所定角度以上回転させたときに、前記第一開口部とは別の第二開口部が、前記入水口と連通するように、前記弁体に配設したことを特徴とする流量調整弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流量調整弁を備えた給湯機。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−226607(P2011−226607A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98524(P2010−98524)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】