説明

浄化剤及び浄化方法

【課題】環境負荷をかけることなく、簡便で効率が良く、水中の種々の浄化対象物を除去することができる浄化剤、及び該浄化剤を用いた浄化方法を提供する。
【解決手段】本発明は、カルボキシ基を有するモノマー単位(a1)を含むポリマーにおいて、前記カルボキシ基の少なくとも一部が、有機概念図上で、化合物が占める点と原点を結ぶ線と、有機性軸とのなす角α°が20〜70°である多価アルコール及び/または水酸基を2個以上持つ多価アルコール誘導体からなる架橋剤(b)によって架橋された架橋体(A)を含有することを特徴とする浄化剤、及び該浄化剤を用いた浄化方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化剤、及び該浄化剤を用いた浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、環境負荷の軽減という観点から、いったん利用した水を浄化し、再利用等することが望まれている。
水の浄化や再利用等は、公共の浄水設備や工場などの大規模施設等で行われているが、近年では、小〜中規模施設や一般の家庭などにおいても、一次利用水の再利用や、雨水の利用等が行われるようになってきている。
【0003】
水の浄化方法としては、例えば、有機凝集剤を用いた沈降や、活性汚泥を用いた資化、あるいは吸着膜を用いた透析・ろ過等を応用した方法などが挙げられる。
しかしながら、これら浄化方法は、特に大規模施設等で使用されているものであり、一般の家庭用などの用途としては、浄化効率の点で充分とはいえず、多額のコストや広い設置場所が必要である等の問題がある。
【0004】
また、これまでに、予期せざる水質汚染、例えば有機溶剤による水質汚染に対する浄化方法が提案されており、例えばゲル化剤を用いて有機溶剤をゲル化して除去する方法等が開発されている。
しかしながら、このゲル化剤を用いた方法の場合、例えば重油のような非極性物質に対しては高い除去能を有するものの、高〜低極性の多様な物質を含有する排水に対しての除去能は充分ではない。
したがって、簡便で効率が良く、水中の種々の浄化対象物を除去することができる浄化方法が求められる。
【0005】
そのような浄化方法として、例えば、特定の架橋重合体を疎水性多孔質布からなる袋中に充填してなる吸油材(特許文献1参照)や、吸油性ポリマー、油吸着剤又は油ゲル化剤からなる吸油剤を含有する浴用水の浄化剤及び浄化方法(特許文献2参照)等が提案されている。
【0006】
また、活性炭を用いた方法や、塩素化合物により浄化対象物を分解除去する剤(例えば、特許文献3参照)、不織布を用いて油分を吸着する剤(例えば、特許文献4参照)、凝集剤を用いた方法(例えば、特許文献5参照)等が提案されている。
【特許文献1】特開平4−015286号公報
【特許文献2】特開平9−206739号公報
【特許文献3】特開昭58−214386号公報
【特許文献4】特開平8−24149号公報
【特許文献5】特開2004−174326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の吸油材、特許文献2に記載の浄化剤及び浄化方法では、油溶性汚垢は除去されるものの、水溶性汚垢が充分に除去できないという問題がある。
また、活性炭を用いた剤の場合、この剤が有する表面積によって浄化対象物の吸着量が限られてしまい、効率が悪いという問題がある。
また、特許文献3に記載の塩素化合物を含有する風呂水清浄剤においては、残留塩素が環境中へ放出されてしまう恐れがあり、環境負荷の点で問題がある。
また、特許文献4に記載の不織布を用いた方法においては、不織布により吸油するため、不織布に圧力がかかった場合に吸油された油が漏出してしまう場合があり、簡便性に劣るという問題がある。
また、特許文献5に記載の金属系凝集剤を用いた水の浄化方法では、浄化処理後に、沈殿物をろ過する手間を要し、操作が煩雑であり、簡便性に劣るという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、環境負荷をかけることなく、簡便で効率が良く、水中の種々の浄化対象物を除去することができる浄化剤、及び該浄化剤を用いた浄化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の第一の態様においては、カルボキシ基を有するモノマー単位(a1)を含むポリマーにおいて、前記カルボキシ基の少なくとも一部が、有機概念図上で、化合物が占める点と原点を結ぶ線と、有機性軸とのなす角α°が20〜70°である多価アルコール及び/または水酸基を2個以上持つ多価アルコール誘導体からなる架橋剤(b)によって架橋された架橋体(A)を含有することを特徴とする浄化剤を提案する。
また、本発明の浄化剤においては、前記カルボキシ基を有するモノマー単位(a1)は、マレイン酸モノマー単位を含むことが好ましい。
また、本発明の浄化剤においては、前記架橋体(A)は、カルボキシ基を有することが好ましい。さらに、前記架橋体(A)は、マレイン酸モノマー単位を含むことが好ましい。
また、本発明の浄化剤においては、前記架橋剤(b)は、アミノ基を有することが好ましい。
本発明の第二の態様においては、前記第一の態様の浄化剤を浄化対象物に接触させることを特徴とする浄化方法を提案する。
【0010】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において「有機概念図」とは、有機化合物の化学構造的な特性を、主として炭素数に基づく有機性(共有結合性)と、置換基の性質、傾向に基づく無機性(イオン結合性)とに分け、すべての有機化合物を有機性軸と無機性軸の直交座標上の1点ずつに位置させたものをいう(例えば、参考文献:甲田,有機概念図―基礎と応用―,初版,13(1984)参照。関連する文献として、文献1:長谷川ら,グリーンテクノロジー,13,No.5,42(2003);文献2:藤田,化学の領域,11,No.10,719(1957);文献3:小田,帝人タイムス,Vol.22,No.9,P10−14(1952)参照)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、環境負荷をかけることなく、簡便で効率が良く、水中の種々の浄化対象物を除去することができる浄化剤、及び該浄化剤を用いた浄化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
≪浄化剤≫
本発明の浄化剤は、カルボキシ基を有するモノマー単位(a1)を含むポリマーにおいて、前記カルボキシ基の少なくとも一部が、有機概念図上で、化合物が占める点と原点を結ぶ線と、有機性軸とのなす角α°が20〜70°である多価アルコール及び/または水酸基を2個以上持つ多価アルコール誘導体からなる架橋剤(b)によって架橋された架橋体(A)を含有するものである。
【0013】
<架橋体(A)>
架橋体(A)は、架橋反応中において、少なくとも架橋剤(b)が結合する直前にカルボキシ基を有するモノマー単位(a1)を含むポリマーを、架橋剤(b)と反応させることによって、前記ポリマーのカルボキシ基を有するモノマー単位(a1)中のカルボキシ基の少なくとも一部が、当該架橋剤(b)により架橋されることによって得られるものである。
好ましくは、前記架橋体(A)は、架橋反応後においても残存するカルボキシ基を有する。これにより、原料ポリマーと架橋剤(b)との相溶性が向上する。また、水中の浄化対象物の除去効果も向上する。
好ましくは、前記架橋体(A)は、架橋反応後において、前記架橋反応後においても残存するカルボキシ基を有するモノマー単位としてマレイン酸モノマー単位を含む。
なお、「マレイン酸モノマー単位」とは、マレイン酸のエチレン性二重結合が開裂して構成されるモノマー単位を意味する。
【0014】
以下、架橋体(A)の製造手順とともに、本発明の架橋体(A)について説明する。
【0015】
(原料ポリマー)
まず、架橋反応に用いられる原料ポリマーについて説明する。
原料ポリマーは、架橋剤(b)が架橋する時点でカルボキシ基を有するモノマー単位(a1)が存在するポリマーであればよい。
カルボキシ基を有するモノマー単位(a1)は、原料ポリマー中において、その少なくとも一部は、架橋剤(b)を用いた架橋反応により架橋する部分であり、架橋体(A)を形成する上で必須のモノマー単位である。
また、架橋反応後に架橋体(A)中に残存するカルボキシ基が存在するような原料ポリマーを用いると、原料ポリマーと架橋剤(b)との相溶性を向上させるために有効である。また、水中の浄化対象物の除去効果も向上する。
モノマー単位(a1)は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0016】
原料ポリマーは、例えば、
(1)「架橋反応に供する前から架橋反応時まで変化しないカルボキシ基」を有するモノマー単位(a1−1)を含むポリマーであってもよいし、
(2)架橋反応に供する前においては酸無水物から誘導されるモノマー単位(a1−2)を有するポリマーであり、これを架橋反応に供することにより、架橋剤(b)が結合する直前に、前記モノマー単位(a1−2)中の酸無水物基が開環してカルボキシ基を有するモノマー単位(a1)を生成するポリマーであってもよい。
好ましくは架橋反応性の点から(2)の原料ポリマー、すなわち、酸無水物から誘導されるモノマー単位(a1−2)を有する原料ポリマーである。
そして、原料ポリマーと架橋剤(b)との相溶性及び本発明の効果の向上の点から、原料ポリマーがモノマー単位(a1−1)とモノマー単位(a1−2)の両方を有することがより好ましい。
モノマー単位(a1−1)は架橋剤(b)との反応性が低い傾向がある。そのため、これを含む原料ポリマーを用いることにより、架橋反応後にモノマー単位(a1−1)のカルボキシ基が残存する。そして、その結果、ポリマーの鎖が架橋剤(b)によって橋かけされ、かつこのポリマーの鎖がカルボキシ基を有する架橋体(A)を得ることができる。
【0017】
前記モノマー単位(a1―1)としては、マレイン酸モノマー単位、イタコン酸モノマー単位等が挙げられる。中でも、本発明の効果の点から、マレイン酸モノマー単位(以下、マレイン酸単位という。)が好ましい。
前記モノマー単位(a1−2)としては、上記モノマー単位(a1−1)として例示したものの酸無水物から誘導されるモノマー単位が好ましく、中でも無水マレイン酸モノマー単位(以下、無水マレイン酸単位という。)が好ましい。
すなわち、架橋反応の点から、無水マレイン酸単位を有する原料ポリマーを用いることが好ましい。さらに、水中の浄化対象物の除去効果、および原料ポリマーと架橋剤(b)との相溶性が向上することから、無水マレイン酸単位とマレイン酸単位の両方を含む原料ポリマーが最も好ましい。
【0018】
原料ポリマーにおいて、カルボキシ基を有するモノマー単位(a1)となるモノマー単位[すなわち、モノマー単位(a1−1)とモノマー単位(a1−2)の合計量]の割合は、原料ポリマーを構成する全モノマー単位の合計に対して、40〜60モル%が好ましく、45〜55モル%がより好ましい。下限値以上であることにより架橋剤(b)との架橋反応性が向上し、一方、上限値以下であることにより架橋体(A)の製造性が向上する。
このとき、モノマー単位(a1−1)とモノマー単位(a1−2)との割合は、モル比で15/85〜99/1であることが好ましく、より好ましくは20/80〜95/5である。前記混合割合が該範囲であることにより、原料ポリマーと架橋剤(b)との反応による架橋体(A)形成能が向上する。
なお、モノマー単位(a1−1)とモノマー単位(a1−2)との割合、例えば無水マレイン酸単位とマレイン酸単位とのモル比は、電位差滴定法により測定することができる。
【0019】
原料ポリマーは、前記カルボキシ基を有するモノマー単位(a1)以外のモノマー単位(以下、モノマー単位(a2)という。)を含んでいてもよい。
モノマー単位(a2)は、前記カルボキシ基を有するモノマー単位(a1)に分類されない他のモノマー単位であれば特に限定するものではなく、例えばアルキルビニルエーテルモノマー単位、スチレンモノマー単位、エチレンモノマー単位、イソブチレンモノマー単位等が好適なものとして挙げられる。中でも、前記原料ポリマーと架橋剤(b)との相溶性や、架橋反応性の点から、アルキルビニルエーテルモノマー単位がより好ましく、その中でも炭素数1〜22のアルキル基を有するアルキルビニルエーテルモノマー単位がさらに好ましく、メチルビニルエーテルモノマー単位が最も好ましい。
かかるモノマー単位(a2)を原料ポリマー中に含有させる際には、原料ポリマーを構成する全モノマー単位の合計に対して、40〜60モル%が好ましく、45〜55モル%がより好ましく、50モル%が最も好ましい。
【0020】
原料ポリマーは、モノマー単位(a1−1)及び/又はモノマー単位(a1−2)と、必要に応じてモノマー単位(a2)を含む重合体であり、好ましくは、モノマー単位(a1−1)及び/又はモノマー単位(a1−2)と、モノマー単位(a2)とからなる共重合体である。中でも、無水マレイン酸単位/マレイン酸単位/炭素数1〜22のアルキル基を有するアルキルビニルエーテルモノマー単位からなる共重合体が好ましく、無水マレイン酸単位/マレイン酸単位/メチルビニルエーテルモノマー単位からなる共重合体がより好ましく、メチルビニルエーテルモノマー単位が交互に共重合した無水マレイン酸単位/マレイン酸単位/メチルビニルエーテルモノマー単位からなる共重合体が最も好ましい。
【0021】
原料ポリマーの重合方法は、特に限定されるものではなく、公知の重合方法によって得ることができる。中でも、好ましくはラジカル重合を用いると、前記メチルビニルエーテルモノマー単位が交互に重合した共重合体を容易に得ることができる。
かかる原料ポリマーは、例えば無水マレイン酸単位/マレイン酸単位/モノマー単位(a2)からなる共重合体の場合、以下のように製造することができる。
すなわち、無水マレイン酸モノマーとマレイン酸モノマーとモノマー単位(a2)を提供するモノマーを共重合することによって製造することもできるし、無水マレイン酸単位とモノマー単位(a2)との繰り返し単位からなるポリマーを加水分解することによって無水マレイン酸単位/マレイン酸単位/モノマー単位(a2)からなる共重合体を製造することもできる。
加水分解の際、水の添加量は、加水分解前のポリマー100質量部に対し、2〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましい。温度は20〜100℃であることが好ましく、1〜600分間の反応時間により加水分解処理を行うことが好ましい。
水の添加方法は、加水分解前のポリマーを、予め溶剤、例えばアセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド等に溶解させ、該溶解液に水を添加してもよいし、加水分解前のポリマーに水を噴霧してもよいし、加水分解前のポリマーに水蒸気として吸収させてもよい。
加水分解後に得られたポリマーは、そのまま用いることもできるし、加熱、減圧乾燥等により系内に存在する水を、ポリマーに対して1質量%程度まで除去した後に用いることもできる。
かかる原料ポリマーにおいて、(無水マレイン酸単位/マレイン酸単位)とモノマー単位(a2)との混合割合は、ポリマーの製造性が容易であることから、モル比で60/40〜40/60であることが好ましく、より好ましくは50/50である。
このようなポリマーの具体例としては、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、イソブチレン無水マレイン酸共重合体、スチレン無水マレイン酸共重合体、エチレン無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。商品名としては、例えば、ISP社からGANTREZ ANシリーズ(商品名)として市販されているものを使用することができる。
【0022】
原料ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定するものではないが、架橋体(A)の物理的な強度が良好で、架橋体(A)が水中から容易に回収できる程度に物理的な強度が高いことから、1万〜1000万であることが好ましく、より好ましくは10万〜500万である。なお、この重量平均分子量(Mw)は、サイズ排除分離−低角度レーザー光散乱検出器法により測定することができる。
原料ポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
原料ポリマーは、原料ポリマーと架橋剤(b)との合計重量中、1〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜50質量%であり、さらに好ましくは3〜40質量%である。該範囲の下限値以上であることにより架橋剤(b)との架橋反応性が向上し、一方、上限値以下であることにより本発明の効果が向上する。
【0023】
(架橋剤(b))
次いで、架橋剤(b)について説明する。
架橋剤(b)は、有機概念図上で、化合物が占める点と原点を結ぶ線と、有機性軸とのなす角α°が20〜70°である多価アルコール及び/または水酸基を2個以上持つ多価アルコール誘導体からなるものである。
好ましくは、前記架橋剤(b)は、アミノ基を有する。
【0024】
本発明者は、水中の種々の浄化対象物を除去することができる基材を探索していたところ、本発明にかかる架橋体(A)に含まれるものの幾つかが、その効果に優れることが分かった。そこで、その化学的な構造について検討を行った。その結果、特に原料ポリマーの鎖が同じ場合、架橋剤(b)の種類により、架橋体(A)と浄化対象物との吸着能が変化することが分かった。そこで、さらに架橋剤(b)の浄化対象物との吸着能について検討を行った。その結果、有機概念図上で特定の範囲のα°値を有する架橋剤(b)を用いることによって、架橋剤(b)の浄化対象物との吸着能が高くなったり、低くなったりすることが分かった。
なお、有機概念図上で前記α°値が近いもの同士は、良好な相溶性を示す。
したがって、定かではないが、架橋剤(b)と水中の種々の浄化対象物のα°値が近いものと推測される。
本発明において、架橋剤(b)のα°値は20〜70°であり、好ましくは30〜70°
であり、より好ましくは40〜70°である。また、前記α°値は、その値が20°に近づくほど、浄化対象物の中でも親油性の浄化対象物との吸着性がより高まり、一方、その値が70°に近づくほど、親水性の浄化対象物との吸着性がより高まる。
【0025】
ここで、有機概念図上で、化合物が占める点と原点を結ぶ線と、有機性軸とのなす角α°は、次のように求めることができる。
まず、化合物中に存在する無機性基と有機性基の各割合(質量%)を求め、該化合物の分子量から、各無機性基と有機性基の化合物中の含有量(モル数)を計算して求める。
次いで、表1の無機性基表に従って、該当する無機性及び有機性の数値を定め、無機性値と有機性値をそれぞれ求める。
そして、数式:tanα=(無機性値)/(有機性値)より、α°を算出することができる。
以下に、一例として、実施例に用いたポリエチレングリコール(商品名:PEG400、ライオン(株)製)のα°の算出方法を示す。
【0026】
【表1】

【0027】
・ポリエチレングリコール(商品名:PEG400)
ポリエチレングリコール中に存在する無機性基はエチレンオキシド(EO)、有機性基は総炭素数に相当する。ポリエチレングリコール中のEOの存在割合は100(質量%)であり、重量平均分子量は400であることから、EO平均付加モル数は9.1と求まる。
そして、無機性値と有機性値は、以下のように計算される。
無機性値:エチレンオキサイドのO(酸素原子)は75(前記関連する文献3参照);表1より、両末端の−OHはそれぞれ100と与えられる。
ここで、ポリエチレングリコール中において、−OHの個数は2個(両末端の−OH)と数えられる。
これより、エチレンオキサイドのO(酸素原子)の個数は、EO平均付加モル数から、末端の−OHとして数えられる酸素原子1個分を差し引くことにより、(9.1−1)と数えられる。従って、
(無機性値)=(9.1−1)×75+2×100=807.5
有機性値:総炭素数に対して有機性20が与えられる。従って、
(有機性値)=9.1×2×20=364
以上より、
tanα=(無機性値)/(有機性値)≒2.2
これより、α= 66(°)と算出される。
【0028】
架橋剤(b)としては、前記α°が20〜70°である多価アルコール及び/または水酸基を2個以上持つ多価アルコール誘導体であれば特に限定するものではなく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(重量平均分子量200〜2000、好ましくは200〜600)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール (重量平均分子量2000〜5000)、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール (重量平均分子量2000〜3500)、エチレンジアミンテトラポリオキシプロピレンポリオキシエチレン付加物(重量平均分子量2000〜5000)、エイコサングリコール、サリチル酸ジプロピレングリコール、ラウリン酸ジエチレングリコール、リシノレイン酸プロピレングリコール、ステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、硬化ヒマシ油(EO5モル付加体)、硬化ヒマシ油(EO7モル付加体)、硬化ヒマシ油(EO10モル付加体)、硬化ヒマシ油(EO20モル付加体)、硬化ヒマシ油(EO30モル付加体)、硬化ヒマシ油(EO40モル付加体)、硬化ヒマシ油(EO50モル付加体)、硬化ヒマシ油(EO60モル付加体)、硬化ヒマシ油(EO80モル付加体)、硬化ヒマシ油(EO100モル付加体)、ステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン(EO5モル付加体)、ステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン(EO10モル付加体)、ステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン(EO15モル付加体)、ステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン(EO20モル付加体)、ステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン(EO30モル付加体)、ステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン(EO40モル付加体)、ポリオキシエチレンヒマシ油(EO20モル付加体)、ポリオキシエチレンヒマシ油(EO30モル付加体)、ポリオキシエチレンヒマシ油(EO40モル付加体)、ポリオキシエチレンヒマシ油(EO50モル付加体)、ポリオキシエチレンソルビタンココエート(EO20モル付加体)、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(EO40モル付加体)、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(EO80モル付加体;ポリソルベート−80)、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(EO3モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(EO5モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(EO6モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(EO8モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(EO10モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(EO15モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(EO20モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(EO25モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(EO30モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(EO40モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(EO50モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(EO60モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO5モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO10モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO15モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO20モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO30モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO40モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO50モル付加体)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO58モル付加体)、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO20モル付加体)、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO30モル付加体)、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO40モル付加体)、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO50モル付加体)、ラウリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO60モル付加体)等が挙げられる。
中でも、水中の浄化対象物の除去効果が向上する点から、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール (重量平均分子量2000〜5000)、エチレンジアミンテトラポリオキシプロピレンポリオキシエチレン付加物(重量平均分子量2000〜5000)が好ましい。その中でも、前記架橋剤(b)はアミノ基を有することが好ましく、エチレンジアミンテトラポリオキシプロピレンポリオキシエチレン付加物(重量平均分子量2000〜5000)が最も好ましい。
架橋剤(b)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
架橋剤(b)は、原料ポリマーと架橋剤(b)との合計重量中、40〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは50〜99質量%であり、さらに好ましくは60〜97質量%の割合で用いることが望ましい。該範囲の下限値以上であることにより前記原料ポリマーとの架橋反応性が向上し、一方、上限値以下であることにより適度な物理的な強度を有する架橋体(A)が得られる。
【0030】
本発明における架橋体(A)においては、前記原料ポリマーと架橋剤(b)との混合割合が、質量比で99/1〜45/55であることが好ましく、95/5〜55/45であることがより好ましく、95/5〜65/35であることがさらに好ましい。前記原料ポリマーの割合が45以上であることにより適度な物理的な強度を有する架橋体(A)が得られ、本発明の効果が向上する。一方、前記原料ポリマーの割合が99以下であることにより架橋反応性が向上する。
【0031】
架橋体(A)は、原料ポリマーと架橋剤(b)とを用いて、例えば以下のように製造することができる。
原料ポリマーを架橋剤(b)に溶解又は分散し、原料ポリマーと架橋剤(b)とを架橋反応させると架橋体(A)が得られる。
ここで、架橋体(A)には、原料ポリマーと架橋剤(b)以外に、必要に応じて任意に香料(香料組成物)、色素等の添加物を配合することができる。この任意成分は、原料ポリマーを架橋剤(b)に溶解又は分散させる際に配合することが好ましい。
【0032】
香料(香料組成物)としては、例えば特開2003−183698号公報([0019]〜[0034])に記載されている香料成分、香料用溶剤等が挙げられる。
ここで「香料組成物」とは、香料成分、香料用溶剤、香料安定化剤等からなる混合物である。
香料安定化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンEとその誘導体、カテキン化合物、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物等が挙げられ、中でもジブチルヒドロキシトルエンが好ましい。
香料組成物中、香料安定化剤の配合量は、0.0001〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜5質量%である。
また、香料組成物中、香料用溶剤の配合量は、0.1〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜50質量%である。
本発明の浄化剤中の香料組成物の含有量は、0.0001〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜5質量%である。
【0033】
色素としては、特に限定されるものではなく、法定色素ハンドブック記載の色素等を配合することができる。例えば、赤2号、緑色3号、青色1号、だいだい402号、黄色401号、紫色401号等が挙げられる。
【0034】
架橋体(A)の含有量は、本発明の浄化剤中、80〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは90〜100質量%である。上記範囲とすることで、本発明の効果が充分に得られる。
また、任意成分の含有量は、本発明の浄化剤中、0.0002〜20質量%となるように製造することが好ましい。
【0035】
前記架橋反応の際、溶解・架橋反応を促進させるために、加熱処理を行うことが好ましい。加熱は、原料ポリマーと架橋剤(b)とを練合ないし混練しながら実施してもよい。
加熱温度は、使用する架橋剤(b)によって異なるが、架橋剤(b)の沸点を超えない範囲、例えば20〜250℃であることが好ましく、より好ましくは40〜200℃であり、さらに好ましくは60〜180℃である。
加熱時間は、例えば10分〜30時間であることが好ましく、より好ましくは10時間〜30時間である。
【0036】
また、溶解・架橋反応を促進させるために、前記酸又はアルカリ性触媒を加えることが好ましい。
また、酸又はアルカリ性触媒を配合することもできる。ここで「アルカリ性触媒」とは、それ自体がアルカリ性を示すものの他、高温で分解してアルカリ性物質に変換するものを包含する。
酸性触媒としては、例えば硫酸、リン酸などの無機酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、ゼオライト等の固体酸等が挙げられる。
アルカリ性触媒としては、例えば酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸リチウム、脂肪酸マグネシウム、脂肪酸カルシウムの他、チタン、スズ、亜鉛、ケイ素、アルミニウムなどの金属やアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸化物、酸化物、脂肪酸の塩などが挙げられる。
酸又はアルカリ性触媒の中でも、前記ポリマーと架橋剤(b)との架橋反応性に優れることから、硫酸が特に好ましい。
これら触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
この様にして、例えば、好ましくはモノマー単位(a1−2)を有する原料ポリマーを用いた場合、架橋反応中において、モノマー単位(a1−2)が開環してカルボキシ基が生成してモノマー単位(a1)に変化し、このカルボキシ基に架橋剤(b)が結合することによって、カルボキシ基を有するモノマー単位(a1)を有するポリマーの鎖が架橋剤(b)によって架橋された架橋体(A)が得られる。
そして、好適にはモノマー単位(a1−1)を含む原料ポリマーを用いることにより、架橋反応後の架橋体(A)中にカルボキシ基が残存する。これによりカルボキシ基を有する架橋体(A)が得られる。
【0038】
架橋体(A)の水に対する膨潤度は、特に限定するものではないが、架橋体(A)の物理的な強度が良好であることから、1〜20が好ましく、より好ましくは2〜10である。
ここで、本明細書において「膨潤度」とは、下記の測定方法により求められる値を示す。
・「膨潤度」の測定方法
架橋体(A)1質量部を、25℃の蒸留水200質量部中に、24時間浸漬した後に引き上げ、この浸漬後の架橋体(A)の質量を秤量し、次式によって膨潤度を算出する。
(膨潤度)=(浸漬後の質量)/(浸漬前の質量)
架橋体(A)の水に対する膨潤度は、架橋反応に用いる原料ポリマーと架橋剤(b)との混合割合を調整することによって制御することができる。該混合割合において、原料ポリマーの混合割合を小さくすることにより、膨潤度を高くすることができる。
【0039】
なお、架橋体(A)は、上述の様にカルボキシ基を有することが好ましい。カルボキシ基を有することにより安定な架橋体(A)が得られ、適度な物理的な強度(ゲル状態)を有する架橋体(A)が得られることにより本発明の効果が向上する。
このとき、前記架橋体(A)はマレイン酸モノマー単位を含むことが好ましい。マレイン酸モノマー単位を含むことにより、上記カルボキシ基を有することにより得られる効果がより向上する。
かかる架橋体(A)において、架橋剤(b)と架橋せずに存在しているカルボキシ基の割合は、前記ポリマーが有する全カルボキシ基に対し、60〜90モル%であることが好ましく、70〜80モル%であることがより好ましい。該範囲の下限値以上であることにより安定な架橋体(A)が形成され、一方、上限値以下であることにより適度な物理的な強度(ゲル状態)を有する架橋体(A)が得られて本発明の効果が向上する。
かかる架橋体(A)において、架橋剤(b)と架橋せずに存在しているカルボキシ基(架橋剤(b)と架橋するカルボキシ基)の割合は、原料ポリマーの組成や、上述の原料ポリマーと架橋剤(b)との混合割合を制御等することにより可能である。
【0040】
この様にして得られた架橋体(A)、または架橋体(A)とその他の任意成分との混合物を、浄化剤として用いる。
本発明にかかる浄化剤の形態は、特に限定されるものではなく、例えばシート状、粉末状、ビーズ状、ブロック状、繊維状、網目状等の形態として使用することができる。
【0041】
≪浄化方法≫
本発明の浄化方法は、本発明にかかる前記浄化剤を浄化対象物に接触させる方法である。
かかる浄化剤を浄化対象物に接触させる方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、水中に該浄化剤を浸漬させてもよく、該浄化剤に水を連続的に接触させてもよいが、いずれの方法においても、該浄化剤が水中の浄化対象物を除去しやすくなるように、水に充分に接触させて用いることが好ましい。
具体的には、例えば繊維等で形成された袋状体の中又はシート状体の間に、かかる浄化剤を入れて水に浮かべてもよく、また、ブロック状の架橋体(A)からなる浄化剤を水中に浸漬させておいてもよく、また、浄化装置の水循環経路に配設された濾過槽に、浄化剤単品又はフィルターや活性炭、無機質濾過剤などの濾過剤と一緒に配置してもよい。
【0042】
本発明の浄化剤は、環境負荷をかけることなく、簡便で効率が良く、水中の種々の浄化対象物を除去することができるという効果を有する。その理由は明らかではないが、次のように推測される。
本発明においては、主として架橋体(A)の架橋部分に浄化対象物が吸着することにより、浄化対象物の除去効果が得られると推測される。
この架橋部分は架橋剤(b)に由来し、該架橋剤(b)は、有機概念図上で特定範囲のα°値を有する多価アルコール及び/または水酸基を2個以上持つ多価アルコール誘導体からなるものである。
一般的に、有機概念図上でα°値が近いもの同士は、溶液系において相溶しやすいと考えられる。
本発明においては、この関係が、架橋体(A)の架橋部分と水中の種々の浄化対象物との間で成立していると考えられる。すなわち、水中の種々の浄化対象物が示すα°値が、架橋剤(b)が示す前記特定範囲のα°値を有すると考えられる。そのため、架橋体(A)の架橋部分と浄化対象物との相溶(吸着)性が高いことにより、本発明の効果が得られると推測される。
【0043】
本発明によれば、環境負荷をかけることなく、簡便で効率が良く、水中の種々の浄化対象物を除去することができる浄化剤、及び該浄化剤を用いた浄化方法を提供することができる。
また、本発明の浄化剤は、使用後、浄化対象物が吸収・吸着されたままの状態で、使用場所から簡便に取り出すことができる。
本発明は、生活排水等の浄化を目的とした一般の家庭用、公共の浄水設備や工場などの大規模施設、小〜中規模施設等において利用可能なものである。
また、本発明は、海水等(例えば、し尿等の海の汚れ)の浄化に対しても有効であり、利用可能である。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
≪架橋剤(b)における、有機概念図上で、「化合物が占める点と原点を結ぶ線」と「有機性軸」とのなす角α°の計算方法≫
実施例で用いた下記の架橋剤について、有機概念図上で、「化合物が占める点と原点を結ぶ線」と「有機性軸」とのなす角α°を、それぞれ以下に示すように算出した。
なお、下記化学式中のl,m,n,X1〜X4,Y1〜Y4は、付された各構成単位の繰り返し数をそれぞれ示す。
【0046】
(実施例で用いた架橋剤)
ポリエチレングリコール(商品名:PEG400、ライオン(株)製)。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(商品名:アデカプルロニックL−44、旭電化(株)製):下記化学式で示される化合物。l+n=20.0,m=22.8。
【0047】
【化1】

【0048】
エチレンジアミンテトラポリオキシプロピレンポリオキシエチレン付加物(商品名:アデカプルロニックTR−704、旭電化(株)製):下記化学式で示される化合物。X1+X2+X3+X4=45.5,Y1+Y2+Y3+Y4=51.7。
【0049】
【化2】

【0050】
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(商品名:EMALEX EG−2854−OL、日本エマルジョン(株)製):下記化学式で示される化合物。
【0051】
【化3】

【0052】
グリセリン(新日本理化(株)製)。
流動パラフィン(商品名:M72、カネダ(株)製)。
【0053】
各架橋剤中に含有されるエチレンオキシド(EO)の割合(質量%)、重量平均分子量、EO平均付加モル数、プロピレンオキシド(PO)平均付加モル数を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表1、2から、各架橋剤の有機性値および無機性値を求め、上記所定の式よりα°を算出した。なお、エチレンオキサイドのO(酸素原子)は75(前記関連する文献3参照);表1より、ポリプロピレンオキサイドのO(酸素原子)は20、両末端の−OHは100、アミンのNは70、−O−は20、−C(O)O−は60、二重結合は2、総炭素数に対しては有機性20とそれぞれ与えられる。
【0056】
・ポリエチレングリコール(商品名:PEG400)
上述の通り、α= 66(°)と算出される。
【0057】
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(商品名:アデカプルロニックL−44)
本化合物中において、−OHの個数は2個(両末端の−OH)と数えられる。
これより、エチレンオキサイドのO(酸素原子)の個数は、EO平均付加モル数から、末端の−OHとして数えられる酸素原子1個分を差し引くことにより、(20−1)と数えられる(前記化学式を参照)。従って、
(無機性値)=(20−1)×75+22.8×20+2×100=2081
(有機性値)=(20×2+22.8×3)×20=2168
以上より、
tanα=(無機性値)/(有機性値)≒0.96
これより、α= 44(°)と算出される。
【0058】
・エチレンジアミンテトラポリオキシプロピレンポリオキシエチレン付加物(商品名:アデカプルロニックTR−704)
本化合物中において、−OHの個数は4個(各末端の−OH)と数えられる。
これより、エチレンオキサイドのO(酸素原子)の個数は、EO平均付加モル数から、各末端の−OHとして数えられる酸素原子1個分をそれぞれ差し引くことにより、(45.5−4)と数えられる(前記化学式を参照)。従って、
(無機性値)=(45.5−4)×75+51.7×20+2×70+4×100=4686.5
(有機性値)=(45.5×2+51.7×3+2)×20=4962
以上より、
tanα=(無機性値)/(有機性値)≒0.94
これより、α= 43(°)と算出される。
【0059】
・テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(商品名:EMALEX EG−2854−OL)
(無機性値)=(20+60+2)×4+2×100=528
(有機性値)=(2+21×4)×20=1720
以上より、
tanα=(無機性値)/(有機性値)≒0.31
これより、α= 17(°)と算出される。
【0060】
・グリセリン
(無機性値)=3×100=300
(有機性値)=3×20=60
以上より、
tanα=(無機性値)/(有機性値)=5
これより、α≒ 78(°)と算出される。
【0061】
・流動パラフィン(商品名:M72)
(無機性値)=0より、tanα=0となる。よって、α= 0(°)と算出される。
【0062】
(実施例1〜6、及び比較例1〜4)
以下に示す調製方法により各例の浄化剤を調製し、それら浄化剤の染料除去能、タンパク質除去能、水中分散油除去能、浮上油除去能、及び残り湯の菌増殖抑制能について、下記方法によりそれぞれ評価した。
【0063】
≪浄化剤の調製≫
浄化剤の調製方法は、実施例1〜6及び比較例1、2においては、各成分をベンチニーダー(商品名:PNV−1、(株)日立製作所製)で練合することにより得た浄化剤組成物を、耐熱性容器に流し込んで加熱し、水洗浄後、乾燥して目的の浄化剤を得た。
比較例3、4においては、各成分をベンチニーダー(商品名:PNV−1、(株)日立製作所製)で練合することにより得た浄化剤組成物を、耐熱性容器に流し込んで加熱して目的の浄化剤を得た。
以下、各例の浄化剤の調製方法について具体的に説明する。
【0064】
(実施例1)
メチルビニルエーテル/無水マレイン酸から構成される共重合体(商品名:GANTREZ AN−169、ISP社製)100質量部に、8質量部の水を添加し、90℃において180分間加水分解させることにより、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸/マレイン酸から構成される共重合体(無水マレイン酸/マレイン酸のモル比が56/44、重量平均分子量198万)を得た。
得られた共重合体5質量部とポリエチレングリコール(商品名:PEG400、ライオン(株)製)95質量部とを練合し、硫酸1質量部を加え、耐熱性容器に流し込んで90℃で24時間加熱した。その後、得られた成型物を蒸留水中に24時間浸漬し、未反応のPEG400を除去して浄化剤(1)を得た。
【0065】
(実施例2)
実施例1において、共重合体5質量部を45質量部、ポリエチレングリコール(商品名:PEG400、ライオン(株)製)95質量部を55質量部とした以外は、実施例1と同様にして浄化剤(2)を得た。
【0066】
(実施例3)
実施例1と同様にして、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸/マレイン酸から構成される共重合体(無水マレイン酸/マレイン酸のモル比が56/44、重量平均分子量198万)を得た。
得られた共重合体5質量部とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(商品名:アデカプルロニックL−44、旭電化(株)製)95質量部とを練合し、硫酸1質量部を加え、耐熱性容器に流し込んで90℃で24時間加熱した。その後、得られた成型物を蒸留水中に24時間浸漬し、未反応のL−44を除去して浄化剤(3)を得た。
【0067】
(実施例4)
実施例3において、共重合体5質量部を45質量部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(商品名:アデカプルロニックL−44、旭電化(株)製)95質量部を55質量部とした以外は、実施例3と同様にして浄化剤(4)を得た。
【0068】
(実施例5)
実施例1と同様にして、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸/マレイン酸から構成される共重合体(無水マレイン酸/マレイン酸のモル比が56/44、重量平均分子量198万)を得た。
得られた共重合体5質量部とエチレンジアミンテトラポリオキシプロピレンポリオキシエチレン付加物(商品名:アデカプルロニックTR−704、旭電化(株)製)95質量部とを練合し、硫酸1質量部を加え、耐熱性容器に流し込んで90℃で24時間加熱した。その後、得られた成型物を蒸留水中に24時間浸漬し、未反応のTR−704を除去して浄化剤(5)を得た。
【0069】
(実施例6)
実施例5において、共重合体5質量部を45質量部、エチレンジアミンテトラポリオキシプロピレンポリオキシエチレン付加物(商品名:アデカプルロニックTR−704、旭電化(株)製)95質量部を55質量部とした以外は、実施例5と同様にして浄化剤(6)を得た。
【0070】
(比較例1)
実施例1と同様にして、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸/マレイン酸から構成される共重合体(無水マレイン酸/マレイン酸のモル比が56/44、重量平均分子量198万)を得た。
得られた共重合体5質量部とテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(商品名:EMALEX EG−2854−OL、日本エマルジョン(株)製)95質量部とを練合し、硫酸1質量部を加え、耐熱性容器に流し込んで90℃で24時間加熱した。その後、得られた成型物を蒸留水中に24時間浸漬し、未反応のテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットを除去して浄化剤(7)を得た。
【0071】
(比較例2)
実施例1と同様にして、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸/マレイン酸から構成される共重合体(無水マレイン酸/マレイン酸のモル比が56/44、重量平均分子量198万)を得た。
得られた共重合体5質量部とグリセリン(新日本理化(株)製)95質量部とを練合し、硫酸1質量部を加え、耐熱性容器に流し込んで90℃で24時間加熱した。その後、得られた成型物を蒸留水中に24時間浸漬し、未反応のグリセリンを除去して浄化剤(8)を得た。
【0072】
(比較例3)
ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC−H、ハーキュレス社製)10質量部とポリエチレングリコール(商品名:PEG400、ライオン(株)製)90質量部とを練合し、その練合物を耐熱性容器に流し込んで90℃で90分間加熱して浄化剤(9)を得た。
【0073】
(比較例4)
スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(商品名:R−1119、KRATON社製)20質量部と流動パラフィン(商品名:M72、カネダ(株)製)80質量部とを練合し、その練合物を130℃で3時間撹拌しながら加熱して浄化剤(10)を得た。
【0074】
≪評価≫
得られた浄化剤(1)〜(10)に対して、以下に示す評価方法及び評価基準により評価を行い、その結果を表3に示した。なお、表3中の「溶解」とは、浄化剤が溶液に溶解したことを表す。
【0075】
[染料除去能の評価]
浄化剤(1)〜(10)のそれぞれ5質量部を、ダイレクトブルー86(商品名:Sumilight Supra Turquise Blue G conc、住友化学(株)製)の30ppm水溶液1000質量部中に24時間浸漬した。
この浸漬処理前後の水溶液の外観を比較し、以下の基準により目視評価した。
<評価基準>
◎:染料がほぼ完全に除去され、ほぼ無色透明となっていた。
○:初期の水溶液を2倍に希釈したものよりも薄い色であった。
△:初期の水溶液を2倍に希釈したものと同程度の色であった。
×:初期の水溶液と同程度の色であった。
【0076】
[タンパク質除去能の評価]
浄化剤(1)〜(10)のそれぞれ1質量部を、アルブミン(卵製)7ppm水溶液100質量部中に72時間浸漬した後、該アルブミン水溶液中から取り出した浄化剤をニンヒドリン反応により着色し、アルブミンの浸透・吸着の効果を顕微鏡観察し、以下の基準により評価した。
<評価基準>
◎:浄化剤内部まで多量に浸透・吸着していた。
○:浄化剤内部まで浸透・吸着していた。
△:浄化剤表面にのみ吸着していた。
×:浄化剤には全く吸着していなかった。
【0077】
[水中溶存油除去能の評価]
接触撹拌法により、水中溶存油除去能の評価を行った。すなわち、浄化剤(1)〜(10)のそれぞれ5質量部を、ガラス容器中の蒸留水10000質量部とオレイン酸5質量部からなる分散液に浸漬し、1時間撹拌した後に引き上げ、乾燥後、秤量によりオレイン酸量を測定し、下記の式によってオレイン酸の除去率を算出し、以下の基準により評価した。
除去率(%)=(浸漬後乾燥重量−浸漬前重量)/オレイン酸重量×100
<評価基準>
◎:除去率40%以上。
○:除去率30%以上40%未満。
△:除去率20%以上30%未満。
×:除去率20%未満。
【0078】
[浮上油除去能の評価]
浄化剤(1)〜(10)のそれぞれ1質量部を、ガラス容器中の蒸留水490質量部の水面(水面の面積は約80cm)に添加したオレイン酸1質量部の上に20分間浮かべ、その後引き上げ、水面上のオレイン酸の残存の様子から浮上油回収能を以下の基準により目視評価した。
<評価基準>
◎:浮上油がほぼ完全に除去されていた。
○:浮上油の大部分が除去されていた。
△:約半分程度の浮上油が除去されていた。
×:浮上油がほとんど除去されていなかった。
【0079】
[残り湯の菌増殖抑制能の評価]
浄化剤(1)〜(10)のそれぞれ1質量部を、容量約200Lの家庭用浴槽で、5人の大人が連続して10分間ずつ入浴した40℃の残り湯1000質量部に浸漬し、40℃で7日間静置後の水を採取した。常法に従い、採取した残り湯を滅菌水で1,000倍に希釈したものを、それぞれ標準寒天培地に0.1mLずつ分注し、37℃で24時間培養した。寒天培地上に生じた集落数を計数し、希釈率を乗じて試料中の生菌数(個/mL)を測定し、菌増殖抑制能を以下の基準により評価した。なお、試料中の生菌数が少ないほど菌増殖抑制能に優れること示す。
<評価基準>
◎:10個/mL未満。
○:10個/mL以上10個/mL未満。
△:10個/mL以上10個/mL未満。
×:10個/mL以上。
【0080】
【表3】

【0081】
表3の結果から明らかなように、本発明にかかる実施例1〜6の浄化剤は、比較例1〜4の浄化剤に比べて、水中の種々の浄化対象物を、環境負荷をかけることなく、簡便で効率が良く除去できることが確認できた。
特に、実施例5の浄化剤は、残り湯の菌増殖抑制能の評価において、40℃で7日間静置後の水を採取して水の外観を評価したところ、水の濁りが抑制されることが確認できた。
【0082】
なお、上記の各評価後、評価に使用した浄化剤を水中あるいは水上から取り出したところ、本発明にかかる実施例1〜6の浄化剤は、各評価における浄化対象物が吸収されたままで、染み出ることがなく、浄化剤を簡便に取り出すことができることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基を有するモノマー単位(a1)を含むポリマーにおいて、前記カルボキシ基の少なくとも一部が、有機概念図上で、化合物が占める点と原点を結ぶ線と、有機性軸とのなす角α°が20〜70°である多価アルコール及び/または水酸基を2個以上持つ多価アルコール誘導体からなる架橋剤(b)によって架橋された架橋体(A)を含有することを特徴とする浄化剤。
【請求項2】
前記カルボキシ基を有するモノマー単位(a1)は、マレイン酸モノマー単位を含む請求項1に記載の浄化剤。
【請求項3】
前記架橋体(A)は、カルボキシ基を有する請求項1または2に記載の浄化剤。
【請求項4】
前記架橋体(A)は、マレイン酸モノマー単位を含む請求項3に記載の浄化剤。
【請求項5】
前記架橋剤(b)は、アミノ基を有する請求項1〜4のいずれかに記載の浄化剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の浄化剤を浄化対象物に接触させることを特徴とする浄化方法。

【公開番号】特開2007−175646(P2007−175646A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378627(P2005−378627)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】