説明

浄水器

【課題】シャワー吐水口から吐水したときの清流性(整流性)を向上する。
【解決手段】原水を浄化処理して吐水する浄水カートリッジ100と、原水を浄化処理せずにシャワーにして吐水するシャワー部と、原水の供給先を浄水カートリッジ100とシャワー部のいずれかに切り換える切り換え部と、を備える浄水器1であって、シャワー部は、シャワー室と、切り換え部によって原水の供給先をシャワー部に切り換えられたときに原水をシャワー室に吐出する原水導出路とからなり、シャワー室は、多数の小径のシャワー吐水口57が開口する底板56によってシャワー室底部が仕切られており、シャワー室内には、原水導出路に対面して、分散板44およびメッシュ板51,52とが配置され、メッシュ板51,52は、分散板44と底板56との間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浄水器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浄水器には、切り換えレバー等を操作して流路を切り換えることによって、原水を浄化処理して吐水したり、原水を浄化処理せずそのまま吐水することが可能としたものがある。例えば、特許文献1に開示された浄水器では、原水を浄化処理しない場合の吐水口として、原水をストレートな直流水として吐水するストレート吐水口と、原水をシャワーにして吐水するシャワー吐水口を備えており、この浄水器では、ストレート吐水口の外周を取り囲むようにシャワー室が形成され、このシャワー室の底面を形成する底板部に多数の前記シャワー吐水口が貫通形成されている。
【0003】
なお、シャワーに関連して、シャワー吐水口の目詰まり防止にシャワー吐水口の上流側にストレーナとしての網体を配置したり、泡沫状のシャワーとするためにシャワー吐水口の上流に泡沫形成用の網体を配置することは知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−132027号公報
【特許文献2】特許第2952651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、原水をシャワーにして吐水する場合に、シャワー吐水口から吐水される原水を真っ直ぐ真下に直線状の形態で吐水したい場合がある。
しかしながら、浄水器の場合には、原水を浄化処理する浄水部へ導く流路や原水を前記ストレート吐水口へ導く流路などがシャワー室の周囲に存在して構造が複雑で、原水をシャワー室全体に均一に導くことが難しかった。このように、原水をシャワー室全体に均一に導くことができないと、各シャワー吐水口から吐水される水線の太さがばらついたり、水の勢いが偏るなどの課題が生じる。
【0006】
また、原水をシャワー室に導入する過程で原水に旋回成分が発生し、シャワー室内で原水が旋回してしまうこともある。シャワー室内で原水が旋回すると、各シャワー吐水口から吐水される水が真っ直ぐ真下に流れずに、斜め下向きに流れてしまう。
また、シャワー吐水口の形態によっては、図12に示すように、各シャワー吐水口から吐水される水線Wがよじれて、太さが変わりながら下方に流れる場合もある。
これらは見栄えを悪くするだけでなく、図12に示すように細かい水粒Woが発生して周囲に飛散するという不具合がある。
【0007】
そこで、この発明は、各シャワー吐水口から原水を均一に吐水することができ、且つ、吐水された水が真っ直ぐ真下に直線状に流れる浄水器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る浄水器では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、原水を浄化処理して吐水する浄水部と、原水を浄化処理せずに吐水する1または複数の原水吐出部を有する本体部と、を備える浄水器であって、前記本体部は、原水の供給先を前記浄水部もしくは前記1又は複数の原水吐出部のうちの一つの吐出部のいずれかに切り換える切り換え部を備えており、前記1又は複数の原水吐出部には、少なくともシャワー部を含み、前記シャワー部は、シャワー室と、前記切り換え部によって原水の供給先を前記シャワー部に切り換えられたときに原水を前記シャワー室に吐出する原水導出路とからなり、前記シャワー室は、多数の小径のシャワー吐水口が開口する底板によってシャワー室底部が仕切られており、前記シャワー室内には、前記原水導出路に対面して、分散板およびメッシュ板とが配置され、前記メッシュ板は、前記分散板と前記底板との間に配置されていることを特徴とする浄水器である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記メッシュ板を複数枚重ねて備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記メッシュ板の目の粗さは#40〜#80であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記分散板は、水平な上面と、該上面から上方に突出して形成され該上面に放射状に配列された複数のリブと、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記シャワー部の前記原水導出路とこれに連なる流路の少なくとも一部が、原水に旋回成分を与える姿勢に配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記複数の原水吐出部は、原水を浄化せずにストレートな直流水として吐水するストレート吐水口を含み、前記シャワー室は前記ストレート吐水口の周囲に環状に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の発明において、前記切り換え部は、ロータリー弁と前記ロータリー弁のシャフトの一端に接続された切り換えレバーにより構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、原水導出路に対面して分散板が配置されているので、この分散板により原水がシャワー室全体に均一に流れるようになる。その結果、原水がシャワー室の一部領域に偏って流れるのを防止することができる。また、分散板により原水の旋回成分を殆ど消滅させることができ、シャワー室内で原水が旋回することがない。また、シャワー吐水口の上流にメッシュ板を配置しているので、シャワー吐水口の長さと直径の比(L/D)を擬似的に大きくすることができる。これらの作用により、シャワー吐水口からの吐水において清流性(整流性)が極めて向上し、見栄えが良いだけでなく、周囲への細かい水滴の飛散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係る浄水器の実施例における外観斜視図である。
【図2】実施例の浄水器の平面図である。
【図3】実施例の浄水器のシャワー部の分解斜視図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】実施例の浄水器に用いられるロータリー弁の断面図である。
【図6】実施例の浄水器におけるシャワー部の構成部品の一部を取り外して示す底面図である。
【図7】実施例の浄水器において原水をストレートに吐水するときの流路説明図であり、図4のC−C断面に対応する図である。
【図8】実施例の浄水器において原水をシャワーで吐水するときの流路説明図であり、図4のD−D断面に対応する図である。
【図9】実施例の浄水器において原水を浄水カートリッジに供給するときの流路説明図であり、図4のE−E断面に対応する図である。
【図10】図2のB−B断面図である。
【図11】実施例の浄水器において原水をシャワーで吐水したときの吐水形態を示す図である。
【図12】従来の浄水器において原水をシャワーで吐水したときの吐水形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明に係る浄水器の実施例を図1から図11の図面を参照して説明する。
図1は実施例における浄水器1の外観斜視図、図2は同平面図である。この浄水器1は、水道の蛇口等に直接取り付けて使用する蛇口直結型の浄水器であり、蛇口に取り付けられる流路切換部2に、原水を浄化するカートリッジ式の浄水部(以下、浄水カートリッジと言う)100が着脱可能に取り付けられて構成されている。
【0018】
浄水カートリッジ100は、略円筒状の樹脂製のケーシング101の内部に、流路切換部2から供給された原水を濾過する中空糸膜、活性炭、ゼオライト、イオン交換繊維、フィルタ、ストレーナ等(いずれも図示せず)を1または2種類以上を収容してなり、これら濾過材により浄化された浄水はケーシング101の一方の端面側に設けられた浄水吐水口102から吐水される。
図1に示すように、浄水カートリッジ100を流路切換部2に装着した状態において、浄水吐水口102を鉛直下方に向けたときに、流路切換部2は浄水カートリッジ100のケーシング101の側面である外周面から水平方向に突出する姿勢となる。以下の説明において上下方向、水平方向等の方向を指すときは、このときの姿勢を基準とする。また、図2において矢印Y1を前方向、矢印Y2を後方向と定義する。
【0019】
図4に示すように、流路切換部2は、円筒状のロータリー弁(切り換え部)3と、ロータリー弁3を回動可能に収納した本体部4と、浄水カートリッジ100を着脱可能に連結する連結部材7と、これらを収納するケーシング5と、ケーシング5の下側に設置されるカバー6と、図示しない蛇口に本体部4を固定するためのリング8と、ロータリー弁3を回動操作するための切り換えレバー(切り換え部)9を主要構成として備えている。ロータリー弁3、本体部4、ケーシング5、カバー6、連結部材7、リング8、切り換えレバー9はいずれも樹脂で形成されている。
【0020】
本体部4には、浄水カートリッジ100のケーシング101の軸心と直交する水平線を中心軸とする弁収納孔(弁収納部)10が設けられている。弁収納孔10は、浄水カートリッジ100に近い側が閉塞され、浄水カートリッジ100から遠い側が開口していて、この開口からロータリー弁3が挿入される。
また、本体部4には、弁収納孔10に連なる原水通路11が弁収納孔10の上方に弁収納孔10の長手方向に沿って設けられている。
【0021】
本体部4において、原水通路11よりも上側の部分は円柱状に延びて蛇口接続部12となっていて、蛇口接続部12には鉛直方向に貫通し原水通路11に連なる原水導入路13が形成されている。この蛇口接続部12にはリング8が螺合可能となっていて、水道の蛇口に挿通させたリング8を蛇口接続部12に螺合し、蛇口接続部12に装着したパッキン14を前記蛇口に密着させることにより、流路切換部2を蛇口に連結することができるようになっている。
【0022】
本体部4の弁収納孔10にはロータリー弁3が収納されている。ロータリー弁3は中空円筒状をなし、弁収納孔10に収納される弁体部15と、弁収納孔10から外方へ突き出るシャフト16を備えている。ロータリー弁3はその軸心を水平にして弁収納孔10と同心上に配置され、軸心回りに回動可能に取り付けられている。ロータリー弁3の内部は原水流路17となっていて、シャフト16側は閉塞し、弁体部15において浄水カートリッジ100に近い側は開口している。
【0023】
図4および図5に示すように、ロータリー弁3の弁体部15には、軸方向に互いに位置をずらし且つ周方向60度ずつ位置をずらして第1原水出口孔18、第2原水出口孔19、第3原水出口孔20が設けられている。この実施例では、図4に示すように、本体部4の原水導入路13の真下に位置する弁体部15の軸方向略中央に第3原水出口孔20が配置され、第3原水出口孔20よりも浄水カートリッジ100に近い側に第2原水出口孔19が配置され、第3原水出口孔20よりもシャフト16に近い側に第1原水出口孔18が配置されており、図5において、第1原水出口孔18から反時計回り方向に60度離間して第2原水出口孔19が配置され、第1原水出口孔18から時計回り方向に60度離間して第3原水出口孔20が配置されている。なお、図5は、図4のD−D矢視におけるロータリー弁3の断面図である。さらに、これら第1原水出口孔18、第2原水出口孔19、第3原水出口孔20に対して、それぞれロータリー弁3の軸方向同一位置であって周方向に180度離間した位置に、第1原水入口孔21、第2原水入口孔22、第3原水入口孔23が設けられている。
【0024】
また、図4および図7から図9に示すように、本体部4には弁収納孔10に隣接して弁収納孔10の斜め下45度に位置する部位に、パッキン収納孔24が弁収納孔10の長手方向に沿って設けられている。パッキン収納孔24には、ゴム等の弾性体からなる1枚の帯状の弁座パッキン25が収納されている。弁座パッキン25には、3つの連通孔26,27,28が弁座パッキン25の長手方向(すなわち、弁収納孔10の軸方向と同方向)に互いに位置をずらして一直線上に配列されて、貫通形成されている。
【0025】
そして、ロータリー弁3を回転すると、その弁体部15の外周面が弁座パッキン25に密接摺動し、その回転位置によってロータリー弁3の第1,第2,第3原水出口孔18,19,20のいずれか1つが弁座パッキン25の連通孔26,27,28のうちの一つに接続され、ロータリー弁3の二つの原水出口孔が同時に弁座パッキン25の連通孔に接続することがないように構成されている。具体的には、図8に示すようにロータリー弁3の第1原水出口孔18が弁座パッキン25の連通孔26(以下、第1連通孔26という)に接続されたときには、弁座パッキン25の他の二つの連通孔27,28はロータリー弁3の外周面によって閉塞され、図9に示すようにロータリー弁3の第2原水出口孔19が弁座パッキン25の連通孔27(以下、第2連通孔27という)に接続されたときには、弁座パッキン25の他の二つの連通孔26,28はロータリー弁3の外周面によって閉塞され、図7に示すようにロータリー弁3の第3原水出口孔20が弁座パッキン25の連通孔28(以下、第3連通孔28という)に接続されたときには、弁座パッキン25の他の二つの連通孔26,27はロータリー弁3の外周面によって閉塞される。
【0026】
また、第1原水出口孔18と第1連通孔26が接続したとき、および第2原水出口孔19が第2連通孔27に接続したとき、および第3原水出口孔20が第3連通孔28に接続したときには、第1原水入口孔21と第2原水入口孔22と第3原水入口孔23の少なくとも1つが原水通路11に連通するように構成されている。
【0027】
図4に示すように、本体部4における原水通路11の開口端およびパッキン収納孔24の開口端は、本体部4に液密に嵌合固定された軸受部材29によって閉塞されており、この軸受部材29をロータリー弁3のシャフト16が液密に回動可能に貫通している
本体部4において、弁収納孔10およびパッキン収納孔24よりも下側の部分は円筒状に延び、外筒部30と内筒部31が同心上に形成されている。内筒部31の内側は原水通路32となっており、外筒部30と内筒部31の間に形成される環状の空間はシャワー室33となっている。
【0028】
本体部4においてパッキン収納孔24の鉛直下方に位置する壁部には、弁座パッキン25の第1連通孔26とシャワー室33とを接続する第1原水導出路34が、その軸心を鉛直下方に向けて形成されるとともに(図8参照)、弁座パッキン25の第3連通孔28と原水通路32とを接続する第3原水導出路35が、その軸心を鉛直下方に向けて形成されている(図7参照)。なお、図6は、本体部4を下方から見て、原水通路32とシャワー室33と第1原水導出路34と第3原水導出路35の相対位置関係を示す図である。
【0029】
また、図9に示すように、本体部4においてパッキン収納孔24の水平後方に位置する壁部には、弁座パッキン25の第2連通孔27に連通する第2原水導出路36が、その軸心を水平後方に向けて形成されており、さらに、図10に示すように、本体部4には、第2原水導出路36に直交しその軸心を浄水カートリッジ100に接近する方向へ水平に延ばす浄化用原水供給口37が形成されている。すなわち、第2原水導出路36は、弁座パッキン25の第2連通孔27と浄化用原水供給口37とを接続する。なお、第2原水導出路36の末端は端版38によって閉塞されている。
【0030】
図4および図10に示すように、本体部4において浄水カートリッジ100に対向する部位には連結部材7が液密に固定されており、この連結部材7を介して浄水カートリッジ100を流路切換部2に対して着脱することができるように構成されている。
連結部材7には、本体部4の浄化用原水供給口37に接続された原水通路39が形成されており、浄水カートリッジ100を流路切換部2に取り付けた状態において、浄水カートリッジ100の連結部103に設けられた原水導入路104と原水通路39がシール材40を介して連通するように構成されている。
【0031】
前述した本体部4の内筒部31内には、原水通路41が鉛直方向に貫通形成された樹脂製の整流器42が収納され、整流器42の直ぐ下流に異物除去用のステンレス製のメッシュ板43が配置されている。
【0032】
一方、図4に示すように、本体部4のシャワー室33には樹脂製の分散板44が収納されている。分散板44は、下側が円筒部45、上側が円板部46となっていて、中央に上下方向に貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔は下側と上側で径を異にし、下側が小径孔47、上側が小径孔47よりも若干大径の大径孔48となっている。図3に示すように、円板部46は、水平面からなる環状の上面49と、上面49に周方向等間隔に配列され上面49から上方に突出し放射状に延びる複数のリブ50とを備えている。各リブ50の径方向内側の端部は上面49の径方向内縁から外側に離間して位置しており、各リブ50の径方向外側の端部は水平面48の径方向外縁と一致している。前述した第1原水導出路34の出口は、分散板44の上面49に対面して配置されている。
【0033】
本体部4の外筒部30の下側であって分散板44の円筒部45の外側には、リング状をなす整流用の2枚のステンレス製のメッシュ板51,52が重ねて配置されている。なお、メッシュ板51,52は耐食性を有する金属製であれば、ステンレス製に限るものではない。
【0034】
整流器42とメッシュ板43と分散板44とメッシュ板51,52は、本体部4の下側に配置されたカバー6によって支持されている。この支持構造およびカバー6について詳述する。カバー6は、本体部4およびケーシング5に対して着脱可能に固定されている。カバー6の下部には下方に突出する円筒部53が形成されており、円筒部53の中央にはストレート吐水口54が開口し、円筒部53の内側にはストレート吐水口54に連なる内側筒部55が上方に起立して設けられている。
【0035】
カバー6の円筒部53の内部には本体部4の外筒部30が液密に嵌入し、本体部4の内筒部31の内部にはカバー6の内側筒部55が液密に嵌入しており、これにより、ストレート吐水口54の周囲に形成された円筒部53の底板56がシャワー室33を閉塞する。底板56には多数のシャワー吐水口57がその軸心を鉛直下方に向けて貫通形成されている。
【0036】
分散板44は、その小径孔47にカバー6の内側筒部55をほぼ隙間なく挿通させ、大径孔48に本体部4の内筒部31を挿入させており、円筒部45の下端をカバー6の底板56の内面に突き当てることでカバー6によって下から支持されている。なお、この取り付け状態において、分散板44の各リブ50の上面が本体部4におけるシャワー室33の上壁58にほぼ接触するようにリブ50の高さが設定されており、図4に示すように、分散板44の円板部46の外周と本体部4の外筒部30の内周との間に原水が流通可能な外周通路59が形成されるように、円板部46の外径が設定されている。なお、前述したように分散板44において各リブ50の径方向内側の端部が円板部46の上面49の径方向内縁から外側に離間して位置しているので、分散板44が取り付けられた状態において、図4に示すように、本体部4の内筒部31と各リブ50との間にはリング状の環状通路60が形成されることとなる。
【0037】
一方、整流器42はその上部フランジ部42aをカバー6における内側筒部55の上端に係止させて内側筒部55内に収納されており、整流器42の下側に配置されるメッシュ板43は内側筒部55に基部内側に形成された段部に係止されている。
なお、整流器42の原水通路41はカバー6のストレート吐水口54に連通しており、実質的にストレート吐水口54の一部とみなすことができ、したがって、シャワー室33はストレート吐水口54の周囲に環状に設けられていると言える。
【0038】
図4に示すように、ロータリー弁3のシャフト16はケーシング5およびカバー6から外方に突出しており、この突出端にコア61が固定され、コア61に切り換えレバー9が固定されている。コア61にはスプリング62により軸受部材29に接近する方向に付勢されたピン63が突没可能に収納されており、コア61から突出したピン63の先端が、軸受部材29の端面に形成された3つの凹部64のいずれかに進入したときに、切り換えレバー9を操作した使用者にクリック感が感じられるように構成されている。
【0039】
この実施例の浄水器1では、図1および図2に示すように、切り換えレバー9を手前側水平姿勢に位置させたときに、図8に示すようにロータリー弁3の第1原水出口孔18が弁座パッキン25の第1連通孔26に接続され、そのときにピン63が第1の凹部64に進入し、切り換えレバー9を前記水平姿勢から上方に60度回転したときに、図9に示すようにロータリー弁3の第2原水出口孔19が弁座パッキン25の第2連通孔27に接続され、そのときにピン63が第2の凹部64に進入し、切り換えレバー9を前記水平姿勢から下方に60度回転したときに、図7に示すようにロータリー弁3の第3原水出口孔20が弁座パッキン25の第3連通孔28に接続され、そのときにピン63が第3の凹部64に進入するようになっている。
【0040】
次に、この浄水器1の作用を説明する。
初めに、蛇口から浄水器1に供給された原水を浄化処理せずにシャワーとして吐水する場合を説明する。この場合には、図1に示すように切り換えレバー9を水平姿勢にして、図8に示すようにロータリー弁3の第1原水出口孔18と弁座パッキン25の第1連通孔26とを接続する。これにより、蛇口から本体部4の原水通路11に導入された原水は、少なくとも第1原水入口孔21を含む原水入口孔21〜23からロータリー弁3内の原水流路17に流入し、さらにロータリー弁3の第1原水出口孔18および弁座パッキン25の第1連通孔26を通って第1原水導出路34に流出し、第1原水導出路34からシャワー室33に流入する。
なお、このときには、前述したように、弁座パッキン25の第2連通孔27と第3連通孔28はロータリー弁3の外周面によって閉塞されているので、第2連通孔27および第3連通孔28から原水が流出することはない。
【0041】
第1原水導出路34からシャワー室33に吐出された原水は、第1原水導出路34の出口に対面して配置された分散板44の上面49に突き当たり、一部の原水は突き当たった部位に隣接して配置された2つのリブ50,50間を通って径方向外側へ流れていき、他の原水は分散板44のリブ50と本体部4の内筒部31との間に形成された環状通路60に流入し、この環状通路60の全周に亘って原水が流れるようになり、さらに環状通路60を流れていく過程で原水は各リブ50の間を通って径方向外側に向かい分散板44の上面49に沿って流れていく。そして、リブ50の間を径方向外側に流れ出た原水は、分散板44の円板部46と本体部4の外筒部3との間に形成された外周通路59を通って下向きの流れとなってシャワー室33の下側領域に広がっていく。このように、第1原水導出路34からシャワー室33に吐出された原水は、シャワー室33の下側領域に至る間に、分散板44によって周方向に均一に分散されるようになり、シャワー室全体を均一に流れるようになる。その結果、原水がシャワー室33の一部領域に偏って流れるのを防止することができる。
【0042】
また、ロータリー弁3の第1原水出口孔18と弁座パッキン25の第1連通孔26が鉛直方向に対して斜め下45度に傾斜しているので、原水が第1原水出口孔18および第1連通孔26を通ってシャワー室33に流出した際に、原水をシャワー室33内で旋回させようとする作用が働く。しかしながら、この浄水器1では、第1原水導出路34の出口に対面して分散板44が配置されていて、原水は前述した経路を経てシャワー室33の下側領域に広がっていくので、原水の旋回成分を殆ど消滅させることができ、シャワー室33内で原水が旋回することがない。
【0043】
そして、シャワー室33の下側領域に導かれた原水は、積層された二つのメッシュ板51,52を通り、さらにカバー6の底板56に設けられたシャワー吐水口57を通って、図11に示すように原水シャワーとして吐水される。
【0044】
ところで、各シャワー吐水口57から吐水される水線はその一つ一つが鉛直下方に真っ直ぐに流れるのが、見栄えの上から好ましいだけでなく、周囲への水滴飛散防止の上からも好ましい。以下、この水線が鉛直下方に真っ直ぐ流れる特性を清流性(整流性)と称す。
シャワー吐水口57から吐水される水線の清流性(整流性)が悪い状態とは、例えば、シャワー吐水口57から吐水される水線が鉛直下方ではなく斜めに傾いて流れていく場合や、水線の流れる方向は鉛直下方であるが水線がよじれて太さが変わりながら下方に流れていく場合などがある。このように清流性(整流性)が悪いと、図12に示すように水線Wから細かい水滴Woが発生し、周囲に飛散してしまう。
【0045】
ここで、清流性(整流性)を悪化させる要因の一つとして、シャワー室33内での原水の旋回流が考えられるが、前述したようにこの浄水器1では分散板44の作用により、原水の旋回成分が殆ど消滅しているので、これによって清流性(整流性)が悪化することはない。
清流性(整流性)を悪化させる他の要因として、シャワー吐水口57の直径Dと長さLの比がある。一般に、孔を通過させて水を吐出する場合、孔の直径Dに対する孔の長さLの比L/Dが大きい方が清流性(整流性)が高くなることが知られている。
【0046】
ところで、この実施例の浄水器1のように、樹脂製のカバー6に多数の小さなシャワー吐水口57を形成する場合には、多数の細いピンを埋め込んだ状態でカバー6を成形し、成形後に前記ピンを引き抜くことによって、該ピンが埋め込まれていた部分をシャワー吐水口57とするが、カバー6の底板56の厚さ、すなわちシャワー吐水口57の長さLを長くすると前記ピンを引き抜く際にピンが折れるなどの不具合があり、この成形上の制約によってシャワー吐水口57の長さLを余り長くできず、L/Dに限界があり、所望する清流性(整流性)を得ることが難しかった。
【0047】
しかしながら、この浄水器1では、シャワー吐水口57の上流に、シャワー吐水口57の孔径よりも小径の孔を有するメッシュ板51,52を配置しているので、L/Dを擬似的に大きくすることができ、清流性(整流性)を向上させることができる。
なお、この実施例の浄水器1では、シャワー吐水口57の直径Dを約1mmとし、底板56の厚み(すなわちシャワー吐水口57の長さ)Lはその2倍の約2mmとし、メッシュ板51,52の目の粗さをいずれも#60とした。#60の粗さは約240μmの孔径に相当する。メッシュ板51,52の目の粗さは#60が好適であるが、これに限るものではなく、#40〜#80を採用することが可能である。#40は約400μmの孔径に相当し、#80は約180μmの孔径に相当する。メッシュ板51,52の目の粗さを#40よりも粗くすると所望する清流性(整流性)を得ることができないので、#40を下限値とした。一方、メッシュ板51,52は目の細かい方が清流性(整流性)が向上するが、#80よりも細かいと抵抗が大きくなって水量が低下するので、#80を上限値とした。また、メッシュ板の数は2枚に限るものではなく、1枚あるいは3枚以上であってもよい。メッシュ板の数は多い方が清流性(整流性)が向上するが、数を増やすと抵抗が大きくなり水量が低下するので、2枚が好適である。
なお、シャワー吐水口57の直径Dと長さLも前記寸法に限るものではない。
【0048】
図11は、実施例の浄水器1において原水シャワーとして吐水させたときの様子を示したものであり、清流性(整流性)が極めて高く、各シャワー吐水口57から吐水される各水線Wが鉛直下方に真っ直ぐに流れていき、周囲に細かい水滴が飛散することがない。
【0049】
次に、蛇口から浄水器1に供給された原水を浄化処理せずに直流水として吐水する場合を説明する。この場合には、切り換えレバー9を図1に示す水平姿勢から下方に60度回転して、図7に示すようにロータリー弁3の第3原水出口孔20と弁座パッキン25の第3連通孔28とを接続する。これにより、蛇口から本体部4の原水通路11に導入された原水は、少なくとも第3原水入口孔23を含む原水入口孔21〜23からロータリー弁3内の原水流路17に流入し、さらにロータリー弁3の第3原水出口孔20および弁座パッキン25の第3連通孔28を通って第3原水導出路35に流出し、第3原水導出路35から本体部4の原水通路32に流入する。
なお、このときには、前述したように、弁座パッキン25の第1連通孔26と第2連通孔27はロータリー弁3の外周面によって閉塞されているので、第1連通孔26とおよび第2連通孔27から原水が流出することはない。
原水通路32に吐出された原水は、さらに整流器42の原水通路41を通り、メッシュ板43を通過して、カバー6のストレート吐水口54からストレートな直流水として吐水される。
【0050】
次に、蛇口から浄水器1に供給された原水を浄化処理し、浄水として吐水する場合を説明する。この場合には、切り換えレバー9を図1に示す水平姿勢から上方に60度回転して、図9に示すようにロータリー弁3の第2原水出口孔19と弁座パッキン25の第3連2孔27とを接続する。これにより、蛇口から本体部4の原水通路11に導入された原水は、少なくとも第2原水入口孔22を含む原水入口孔21〜23からロータリー弁3内の原水流路17に流入し、さらにロータリー弁3の第2原水出口孔19および弁座パッキン25の第2連通孔27を通って本体部4の第2原水導出路36に流出し、第2原水導出路36から浄化用原水供給口37に流出する。
なお、このときには、前述したように、弁座パッキン25の第1連通孔26と第3連通孔28はロータリー弁3の外周面によって閉塞されているので、第1連通孔26とおよび第3連通孔28から原水が流出することはない。
浄化用原水供給口37に吐出された原水は、図10に示すように、連結部材7の原水通路39を通り、浄水カートリッジ100の原水導入路104に吐水される。これにより、原水は浄水カートリッジ100に供給され、内部の濾過材によって浄化された浄水が浄水カートリッジ100の浄水吐水口102から吐水される。
この実施例において、ロータリー弁3は、原水の供給先を、浄水カートリッジ100とシャワー室33とストレート吐水口54のいずれかに切り換える切り換え手段を構成する。
【0051】
この実施例1の浄水器1によれば、第1原水導出路34の出口に対面して分散板44が配置されているので、この分散板44により原水がシャワー室全体に均一に流れるようになる。その結果、原水がシャワー室33の一部領域に偏って流れるのを防止することができる。また、分散板44により原水の旋回成分を殆ど消滅させることができ、シャワー室33内で原水が旋回することがない。
また、シャワー吐水口57の上流に、シャワー吐水口57の孔径よりも小径の孔を有するメッシュ板51,52を配置しているので、シャワー吐水口57のL/Dを擬似的に大きくすることができる。
これらの作用により、シャワー吐水口57からの吐水において清流性(整流性)が極めて向上し、見栄えが良いだけでなく、周囲への細かい水滴の飛散を防止することができる。
【0052】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、前述した実施例では、原水をストレートな直流水として吐水することができるように切り換え可能とするために、ロータリー弁3に第3原水出口孔20を設け、弁座パッキン25に第3連通路28を設け、本体部4に原水通路32や第3原水導出路35等を設けているが、この発明は、原水をストレートな直流水として吐水しない浄水器にも適用可能であり、その場合には、第3原水出口孔20、第3連通路28、原水通路32、第3原水導出路35等を設けない。
【符号の説明】
【0053】
1 浄水器
3 ロータリー弁(切り換え部)
9 切り換えレバー(切り換え部)
33 シャワー室(シャワー部、原水吐出部)
34 第1原水導出路(原水導出路、シャワー部、原水吐出部)
44 分散板(シャワー部)
49 上面
50 リブ
51,52 メッシュ板(シャワー部)
54 ストレート吐水口(原水吐出部)
56 底板
57 シャワー吐水口
100 浄水カートリッジ(浄水部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を浄化処理して吐水する浄水部と、
原水を浄化処理せずに吐水する1または複数の原水吐出部を有する本体部と、
を備える浄水器であって、
前記本体部は、原水の供給先を前記浄水部もしくは前記1又は複数の原水吐出部のうちの一つの吐出部のいずれかに切り換える切り換え部を備えており、
前記1又は複数の原水吐出部には、少なくともシャワー部を含み、
前記シャワー部は、シャワー室と、前記切り換え部によって原水の供給先を前記シャワー部に切り換えられたときに原水を前記シャワー室に吐出する原水導出路とからなり、
前記シャワー室は、多数の小径のシャワー吐水口が開口する底板によってシャワー室底部が仕切られており、
前記シャワー室内には、前記原水導出路に対面して、分散板およびメッシュ板とが配置され、
前記メッシュ板は、前記分散板と前記底板との間に配置されていることを特徴とする浄水器。
【請求項2】
前記メッシュ板を複数枚重ねて備えることを特徴とする請求項1に記載の浄水器。
【請求項3】
前記メッシュ板の目の粗さは#40〜#80であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浄水器。
【請求項4】
前記分散板は、水平な上面と、該上面から上方に突出して形成され該上面に放射状に配列された複数のリブと、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の浄水器。
【請求項5】
前記シャワー部の前記原水導出路とこれに連なる流路の少なくとも一部が、原水に旋回成分を与える姿勢に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の浄水器。
【請求項6】
前記複数の原水吐出部は、原水を浄化せずにストレートな直流水として吐水するストレート吐水口を含み、
前記シャワー室は前記ストレート吐水口の周囲に環状に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の浄水器。
【請求項7】
前記切り換え部は、ロータリー弁と前記ロータリー弁のシャフトの一端に接続された切り換えレバーにより構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の浄水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−143367(P2011−143367A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6969(P2010−6969)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(504346204)三菱レイヨン・クリンスイ株式会社 (57)
【Fターム(参考)】