説明

浄水装置

【課題】膜表面の閉塞物質を十分に剥離して膜の負担を軽減することができる浄水装置を提供する。
【解決手段】原水を濾過する第1濾過手段5および第2濾過手段6と、少なくとも第1濾過手段5および第2濾過手段6のうち、いずれか一方に設けられた排出流路16と、第1濾過手段5および第2濾過手段6に対して選択的に原水を供給する原水供給流路7,8と、第1濾過手段および第2濾過手段から得られる浄水を系外に吐出させる主浄水流路18と、第1濾過手段5および第2濾過手段6のうち、いずれか一方で得られた浄水を他方の2次側から1次側に逆通水することが可能な合流流路17,26と、原水供給流路7,8に設けられ、少なくとも第1濾過手段5に対して気泡を供給するエジェクタ3と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浄水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、上水道など配管の途中に介挿して膜濾過を行う浄水装置が知られている。この種の浄水装置では目詰まり状態であるいわゆる膜のファウリングが進行する度に膜の交換が必要となるため、とりわけ、水環境が良好でない地域では膜の交換頻度が高くなり負担が大きくなっていた。そこで近年、膜の寿命を延ばすために、2つの濾過ユニットを並列接続して、一方の濾過ユニットから吐出された浄水を他方の濾過ユニットの膜の二次側から一次側に向けて通水する、いわゆる逆洗を行い、膜の一次側に付着した閉塞物質を剥離洗浄するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−137976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の浄水装置では、逆洗によって膜の一次側に付着した閉塞物質の一部が剥離した時点で、この部分に逆洗による通水が集中してしまうため、他の部分の閉塞物質が十分に剥離できないという課題がある。
【0004】
そこで、この発明は、膜表面の閉塞物質を十分に剥離して膜の負担を軽減することができる浄水装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、原水を濾過する第1濾過手段(例えば、実施の形態における第1濾過手段5)および第2濾過手段(例えば、実施の形態における第2濾過手段6)と、前記第1濾過手段および前記第2濾過手段のうち、少なくともいずれか一方に設けられた排出流路(例えば、実施の形態における排出流路16)と、前記第1濾過手段および前記第2濾過手段に対して選択的に前記原水を供給する原水供給流路(例えば、実施の形態における原水供給流路7,8)と、前記第1濾過手段および前記第2濾過手段から得られる浄水を系外に吐出させる主浄水流路(例えば、実施の形態における主浄水流路18)と、前記第1濾過手段および前記第2濾過手段のうち、いずれか一方で得られた浄水を他方の2次側から1次側に逆通水することが可能な合流流路(合流流路17,26)と、前記原水供給流路に設けられ、少なくとも前記第1濾過手段に対して気泡を供給するエジェクタ(例えば、実施の形態におけるエジェクタ3)と、を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記第1濾過手段は中空糸膜(例えば、実施の形態における中空糸膜10)であり、該中空糸膜を構成する中空糸の外側が一次側、前記中空糸の内側が二次側に設定されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は、前記第1濾過手段の膜洗浄を行う際に、前記第2濾過手段の一次側に滅菌・洗浄剤(例えば、実施の形態における滅菌・洗浄剤41)を添加する滅菌・洗浄剤添加手段(例えば、実施の形態における滅菌・洗浄剤添加手段40)を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、原水を膜濾過する第1濾過手段と第2濾過手段とを並列接続して、第2濾過手段から吐出される浄水を第1濾過手段の二次側から一次側に逆通水して第1濾過膜手段の膜洗浄を行うのに加え、さらに、エジェクタで給水管の原水に対して気泡を混入して第1濾過手段の膜のいわゆるスクラビング洗浄を行うことができる。したがって、従来のように逆通水だけを行う場合と比較して、均一に膜の洗浄を行うことができ、膜への負担を軽減することができる効果がある。
また、原水を排出する排出流路が第1濾過手段に接続されていることで、膜のスクラビング洗浄によって剥離した閉塞物質が速やかに系外に排出されるため、剥離された閉塞物質が管路の表面などに付着するのを低減することができる。
【0009】
請求項2に記載した発明によれば、例えば中空糸の内側が一次側に設定されている場合には、スクラビングによって剥離した閉塞物質が中空糸の内面に接触して再度中空糸の内側に付着する可能性が高くなるが、中空糸の外面を一次側に設定していることで、スクラビングによって剥離した閉塞物質が速やかに排出管側に向かって移動するため、再び閉塞物質が中空糸に付着するのを防止することができる。
【0010】
請求項3に記載した発明によれば、第1濾過手段に逆通水する際に、第2濾過手段の一次側に設けられた滅菌・洗浄剤添加手段により滅菌・洗浄剤を添加することができるため、第2濾過手段の膜と、第1濾過手段の膜とを同時に滅菌・洗浄することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の第1の実施の形態を図1から図4に基づいて説明する。
図1において、符号1はこの実施の形態の浄水装置を示している。この浄水装置1は、原水を浄化するためのものであり、利用する地域に応じて河川水、湖沼水、井戸水、工業用水等が水道を通じて原水として供給される。なお、この第1の実施の形態では、水道圧によって浄水装置1に原水が供給される一例を示しているが、例えば、水道圧が不足している場合や不安定な場合などは浄水装置1の前段にポンプを設けることにより増圧してもよい。
【0012】
浄水装置1は、外部から原水が流入する主原水供給流路2を備えている。この主原水供給流路2には原水供給流路7,8が分岐接続され、原水供給流路7の途中には、エジェクタ3が介装されている。このエジェクタ3には、空気供給流路4が接続され、エジェクタ3により原水供給流路7を流過する原水に空気の気泡が混入可能になっている。ここで、エジェクタ3に接続された空気供給流路4には第1制御弁V1が設けられており、第1制御弁V1を開閉することで、気泡混入の有無を切り換えることが可能となっている。さらに、第1制御弁V1より取り込む空気量を増大させるために、空気供給手段を用いて空気量を増大させることもできる。ここで言う空気供給手段とは、コンプレッサおよびブロア等の正圧による送風装置を指す。
【0013】
さらに、原水供給流路7には第1濾過手段5、原水供給流路8には第2濾過手段6がそれぞれ接続されている。原水供給流路7には第2制御弁V2が介装され、この第2制御弁V2により原水供給流路7の開閉が可能となっている。同様に、原水供給流路8にも第3制御弁V3が介装されており、この第3制御弁V3により原水供給流路8の開閉が可能となっている。
【0014】
第1濾過手段5は、ケーシング9を備えるとともに、このケーシング9内には中空糸膜10が収容されている。この中空糸膜10は、ケーシング9の上部に配置されているウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂などのポッティング材11によって一次側である原水側と二次側である浄水側とが遮断されている。また、ケーシング9は、下部に入口ポート12を備えるとともに上部に出口ポート13とを備え、さらに、ケーシング9の側壁14の上記ポッティング材11のやや下方の位置に排水ポート15を備えている。ここで、中空糸膜10の内側面はポッティング材11よりも出口ポート13側に配置され、中空糸膜10の外側面はポッティング材11よりも入口ポート12および排水ポート15側に配置されている。また、入口ポート12には、前述した原水供給流路7が接続されている。
【0015】
排水ポート15は、中空糸膜10の膜洗浄を行った際に中空糸膜10から剥離または溶出した閉塞物質をケーシング9の一次側の原水とともに浄水装置1の系外に排出するためのものであり、この排水ポート15には、その端部が装置外部に配置された排出流路16が接続されている。ここで、排出流路16には、この排出流路16の開閉を行う第4制御弁V4が介装されている。また、出口ポート13には、合流流路17が接続され、この合流流路17の端部が浄水を送る主浄水流路18と合流接続されている。ここで、上記閉塞物質としては、配水池から浄水装置1に到達した鉄錆等の浮遊物質、原水中の微生物からの代謝物である多糖類、浄水施設等で添加された酸化作用のある滅菌剤による消毒副産物などがある。
【0016】
一方、第2濾過手段6は、上記第1濾過手段5と同様に、入口ポート19と出口ポート20と排水ポート21とをそれぞれ備えたケーシング22と、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂などのポッティング材23によって浄水側と原水側とが遮断された中空糸膜24とを備えている。中空糸膜24の内側面は出口ポート19側に配置されており、中空糸膜の外側面は入口ポート19及び排水ポート21側に配置されている。なお、第2濾過手段6は第1濾過手段5と同一で、排水ポート21に蓋25を装着して利用不可にすることが好ましい。第1濾過手段5を、本発明による洗浄を繰り返し長期間使用し浄水水量が低下した際に、排水ポート21の蓋25を取り外し、第2濾過手段6と第1濾過手段5を交換し、第1濾過手段5の排水ポート15に蓋25を取り付けることで、更に浄水装置1が長期間使用することができるため経済的である。
【0017】
第2濾過手段6の出口ポート20には、第1濾過手段5の出口ポート13と同様に、合流流路26が接続され、この合流流路26の端部が浄水を送る主浄水流路18と合流接続されている。また、合流流路26には、この合流流路26の開閉を行う第5制御弁V5が介装されている。
【0018】
主浄水流路18は、原水を処理した処理水である浄水を浄水装置1の系外に送り出すための流路であり、この主浄水流路18の途中には、主浄水流路18の開閉を行う第6制御弁V6が設けられている。なお、主浄水流路18の途中に、浄水の流量が一定となるように調整する定流量弁27を取り付けることもできる。
【0019】
また、上述した第1〜第6制御弁V1〜V6は、これら第1〜第6制御弁V1〜V6に対して制御指令を出力する制御部28に接続されている。この制御部28には、図示しない圧力計や流量計などが接続されており、例えば、第1濾過手段5に原水を通水しているときに、第1濾過手段5の二次側の圧力や流量が所定値に満たなくなった場合にこれを検出し、第1濾過手段5の中空糸膜10のファウリングが進行していると判断して、第1〜第6制御弁V1〜V6の開閉状態を切り換えて、原水を処理する浄化モードから、膜洗浄を行う逆洗浄モードおよびエアスクラビングモードに移行するように設定されている。なお、ファウリングの進行は、流量や圧力以外に経過時間で判断するように設定してもよい。ここで、第1〜第6制御弁V1〜V6は、開閉信号により自動で開閉できるものであり、電動弁、電磁弁、空気作動弁等が用いられる。特に経済性の観点から、電磁弁を用いることが望ましい。
【0020】
次に、図2〜4に基づいて浄水モード、逆洗モード、エアスクラビングモードについて説明する。なお、図1〜4において、第1〜第6制御弁V1〜V6は、黒塗りが閉塞状態、白抜きが開放状態を示している。
【0021】
まず、処理水である浄水の利用が開始されると、制御部28は、待機状態である第1〜第6制御弁V1〜V6が全閉の状態(図1参照)から、図2に示すように、第2制御弁V2と第6制御弁V6とを開放状態、第1制御弁V1、第3〜5制御弁V3〜5を閉塞状態に制御する浄水モードに移行する。
【0022】
浄水モードに移行することで、浄水装置1に流入した原水は、主原水供給流路2から原水供給流路7を介して第1濾過手段5の入口ポート12に流入する。そして、原水は、入口ポート12からケーシング9内に入り、原水の圧力によって中空糸膜10の一次側から二次側に向かって通水されて濾過される。
【0023】
そして、原水が濾過されることで得られた浄水は、第1濾過手段5の出口ポート13から合流流路17と主浄水流路18とを介して外部に送り出されることとなる。ここで、主浄水流路18を流過する浄水は定流量弁27によってその吐出流量が調整される。
【0024】
次に、図3に示すように、逆洗モードに移行する場合、制御部28は、浄水が利用されていないときに、第3〜5制御弁V3〜5を開放状態とし、第1制御弁V1、第2制御弁V2、第6制御弁V6を閉塞状態に維持する逆洗モードに移行する。なお、ここで言う逆洗モードに移行する場合とは、浄水装置1の浄水モードの累積時間、予め設定された浄水モードの完了時間、浄水が利用されていない時間帯、或いはメイン濾過ユニット5の中空糸膜10のファウリングが進行して主浄水流路18での流量や圧力の低下が検出された場合等で、任意に設定することができる。
【0025】
逆洗モードに移行すると、浄水装置1に流入した原水は、主原水供給流路2と原水供給流路8とを介して入口ポート19から第2濾過手段6内に流入し、中空糸膜24で濾過される。そして、第2濾過手段6で濾過された浄水は出口ポート20から送り出され、合流流路26と合流流路17とを介して出口ポート13から第1濾過手段5に流入する。その後、この第1濾過手段5に流入した浄水は、中空糸膜10の二次側から一次側に向かって逆通水され、この際、中空糸膜10の一次側表面に付着している閉塞物質が剥離される。ここで、中空糸膜10の一次側では、浄水中に閉塞物質が浮遊して混在する状態となり、この閉塞物質が混在する浄水である濃縮排水は、排水ポート15、排出流路16を介して系外へ排出される。なお、濃縮排水の「濃縮」とは、第1濾過手段5の二次側から一次側に逆通水された浄水中の閉塞物質の濃度が通常の原水よりも高くなることを称している。
【0026】
さらに、上述した逆洗モードで除去しきれない閉塞物質を除去するため、逆洗モードの後にエアスクラビングモードに移行する。エアスクラビングモードへの移行は、図4に示すように、制御部28から信号を発することにより、第1制御弁V1と第2制御弁V2と第4制御弁V4とを開放状態とし、さらに、第3制御弁V3、第5制御弁V5、第6制御弁V6を閉塞状態とすることにより行う。
【0027】
エアスクラビングモードに移行すると、まず、浄水装置1に流入した原水は、原水供給流路7の途中でエジェクタ3によって空気の微小気泡が混入される。そして、この微小気泡が混入された原水は、原水供給流路7を介して入口ポート12から第1濾過手段5内に流入することにより、原水中の気泡が入口ポート12から拡散しながら上昇して中空糸膜10の一次側の表面に均一に踊動させる。この結果、逆洗モードでできなかった中空糸膜の一次側に残留している閉塞物質を中空糸膜10から剥離することができる。そして、この剥離した閉塞物質を含む原水が排水ポート15から排出流路16を経由して濃縮排水として系外に排出される。
【0028】
したがって、上述した第1の実施の形態によれば、原水を膜濾過する第1濾過手段5と第2濾過手段6とを並列接続して、第2濾過手段6から吐出される浄水を第1濾過手段5の中空糸膜10の二次側から一次側に逆通水して第1濾過手段5の膜洗浄を行うのに加え、さらに、エジェクタ3で原水供給流路7を流過する原水に対して気泡を混入して第1濾過手段5の中空糸膜10のスクラビング洗浄を行うことができるため、従来の逆通水だけを行う場合と比較して、効果的・効率的に膜の洗浄を行うことができるため、さらなる中空糸膜10の負担を軽減することができる。
【0029】
また、原水を排出する排出流路16が第1濾過手段5の排水ポート15に接続されていることで、中空糸膜10のスクラビング洗浄によって剥離した閉塞物質が速やかに系外に排出されるため、剥離された閉塞物質が入口ポートに接続された原水供給流路7の表面などに付着するのを低減することができる。
【0030】
さらに、中空糸膜の内側が一次側(ダーティー側)、外側が二次側(クリーン側)に設定されているような場合、エアスクラビングによって剥離した閉塞物質が中空糸膜の管状に形成された内側面に接触して再度中空糸膜の内側面に付着する可能性が高くなり閉塞物質が中空糸膜の外部に排出され難くなるが、上述した実施の形態のように中空糸膜10の外側面を一次側に設定していることで、エアスクラビングによって剥離した閉塞物質が水流によって速やかに中空糸膜10から離脱し排水ポート15側に向かって移動するため、再び閉塞物質が中空糸膜10に付着して膜のファウリングが進行するのを防止することができる。
【0031】
そして、第1濾過手段5の側壁14に排水ポート15が形成されていることで、エアスクラビングや逆洗によって剥離した閉塞物質が入口ポート12から原水供給流路7側に流出することがないため、原水供給流路7や主原水供給流路2に剥離した閉塞物質が付着するのを防止することができ、この結果メンテナンスの頻度を低減することができる。
【0032】
次に図5,6に基づいて、この発明の第2の実施の形態を説明する。なお、この第2の実施の形態は、上述した第1の実施の形態における第2濾過手段6の入口ポート19に、滅菌・洗浄剤を添加する構成を加えたものである。よって、同一部分に同一符号を付して重複する部分の説明を省略する。
【0033】
図5に示すように、浄水装置1bには、第1濾過手段5と第2濾過手段6とが並列的に接続されている。そして、主原水供給流路2と第2濾過手段6の入口ポート19とを接続する原水供給流路8には、滅菌・洗浄剤添加手段40が接続されている。より具体的には、滅菌・洗浄剤添加手段40は、滅菌・洗浄剤(例えば、次亜塩素酸ソーダなどの次亜塩素酸塩)41を貯留する貯留槽42を備え、この貯留槽42が滅菌・洗浄剤41を圧送するポンプ(P)43と逆止弁44とを途中に備えた流路45を介して原水供給流路8に合流接続されている。ここで、逆止弁44により、原水供給流路8からポンプ43に向かう方向への原水の流入が規制される。
【0034】
ポンプ43は、制御部28に接続され、この制御部28によって駆動制御されるようになっている。この制御部28からの制御指令に基づいてポンプ43が駆動されると、貯留槽42内の滅菌・洗浄剤41が流路45を通じて原水供給流路8に圧送されて滅菌・洗浄剤41が原水に添加されるようになっている。また、制御部28は、上述した第1の実施の形態の浄化モード、逆洗モード、エアスクラビングモードに加えてさらに滅菌モードが実行可能になっている。なお、上述した滅菌・洗浄剤41は次亜塩素酸塩以外に、例えば、オゾン含有水、過酸化水素水、過マンガン酸カリウム水溶液、過マンガン酸ナトリウム水溶液等、中空糸膜10,24の膜を透過するものであればよい。
【0035】
制御部28は、例えば、逆洗モードやエアスクラビングモードによって中空糸膜10の表面に付着している閉塞物質が除去された後に、中空糸膜10上に残留している雑菌を除去するためのモードである滅菌・洗浄モードに移行するように設定されている。より具体的には、図6に示すように、制御部28は滅菌・洗浄モードに移行するべく、第1制御弁V1、第2制御弁V2、第6制御弁V6を閉塞状態とし、第3〜5制御弁V3〜5を開放状態とする。そして、ポンプ43を駆動制御して、原水供給流路8を流過する原水に対して滅菌・洗浄剤41を添加する。
【0036】
この滅菌・洗浄剤41が添加された原水は、入口ポート19から第2濾過手段6内に流入して中空糸膜24の一次側から二次側に向かって通水された後、出口ポート20から合流流路26に送り出され、さらに合流流路17に回り込んで出口ポート13から第1濾過手段5に流入する。そして、中空糸膜10の二次側から一次側に向かって通水された後に排水ポート15を介して系外に排出される。
【0037】
すなわち、滅菌・洗浄剤41を添加した原水が、原水供給流路8、第2濾過手段6、合流流路17,26、第1濾過手段5、排出流路16の内面に接触することで当該箇所の滅菌・洗浄がなされることとなる。また、滅菌・洗浄剤41が浄水装置1の系内に残留しないように、制御部28は、ポンプ43を停止した後しばらくの間原水を流し続け、滅菌・洗浄剤41の残留が解消される所定の時間後に滅菌・洗浄モードを終了して待機状態、すなわち第1〜6制御弁V1〜6を全て閉塞状態にする。
【0038】
したがって、上述した第2の実施の形態によれば、第1濾過手段5に逆通水する際に、第2濾過手段6の一次側に設けられた滅菌・洗浄剤添加手段40により滅菌・洗浄剤41を添加することができるため、第2濾過手段6の中空糸膜24と、第1濾過手段5の中空糸膜10とを同時に滅菌することができる。この結果、中空糸膜10をより清浄状態にして、膜の負担をさらに軽減することができる。
【0039】
なお、上述した各実施の形態では、排水ポート15を、ポッティング材11のやや下方の第1濾過手段5の側壁14に設けた場合について説明したが、これに限られるものではなく、例えば、ポッティング材11のやや下方に加えて、入口ポート12のやや上方に出口ポートを設けるようにしてもよい。このように構成することで、比重の重い閉塞物質が剥離して下方に沈む場合でも、入口ポート12のやや上方すなわち第1濾過手段5の下部から比重の重い閉塞物質を排出することができる。
【0040】
また、第1濾過手段5と第2濾過手段6とが同等の構成である場合について説明したが、例えば、第2濾過手段6を第1濾過手段5の洗浄時のみ使用する場合には、第2濾過手段6をより小型のものに置き換えてもよく、このようにすると浄水装置1を小型化することもできる。
【0041】
さらに、上述の各実施の形態では、浄水モードにおいて、第1濾過手段5にのみ原水を通水して濾過する構成について説明したが、何らかの理由で第1濾過手段5が使用できなくなった場合に第2濾過手段6に通水して浄水モードを実行するようにしてもよい。
そして、上述の実施の形態では、第1濾過手段5にのみ排出流路16を接続していたが、上述した第1濾過手段5と同様に、第2濾過手段6の排水ポート21に排出流路を接続して、第2濾過手段6において逆洗やエアスクラビングが可能な構成にしてもよい。
【0042】
また、エジェクタ3により原水中に空気の気泡を混入する場合について説明したが、原水中に混入する気泡は空気に限られるものではない。
さらに、上述の各実施の形態では、逆洗中に制御弁V6を閉塞する一例について説明したが、逆洗中であっても利用者が第2濾過手段6で処理された浄水を利用することができるように、利用者の要求に応じて制御弁V6を開放するようにしてもよい。このように構成する場合、浄水が第1濾過手段5と主浄水流路18とに分流し、主浄水流路18の流量が低下するため、主原水供給流路2の水道圧をポンプ(図示せず)などで増圧するのが好ましい。
【0043】
さらに、上述した第1の実施形態の他の態様として、例えば、図7に示すように、エジェクタを主原水供給流路2に介装するようにしてもよい。このように構成することで、第1濾過手段5および第2濾過手段6に対して選択的に気泡を供給することができるため、第2濾過手段6に対してもエアスクラビングを行うことができ、この結果、中空糸膜24の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態における浄水装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における浄水モード時の図1に相当する概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における逆洗モード時の図1に相当する概略構成図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるエアスクラビングモード時の図1に相当する概略構成図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における浄水装置の概略構成図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における滅菌モード時の図5に相当する概略構成図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の他の態様における図1に相当する概略構成図である。
【符号の説明】
【0045】
3 エジェクタ
5 第1濾過手段
6 第2濾過手段
7,8 原水供給流路
10 中空糸膜
16 排出流路
17,26 合流流路
18 主浄水流路
40 滅菌剤添加手段
41 滅菌剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を濾過する第1濾過手段および第2濾過手段と、
前記第1濾過手段および前記第2濾過手段のうち、少なくともいずれか一方に設けられた排出流路と、
前記第1濾過手段および前記第2濾過手段に対して選択的に前記原水を供給する原水供給流路と、
前記第1濾過手段および前記第2濾過手段から得られる浄水を系外に吐出させる主浄水流路と、
前記第1濾過手段および前記第2濾過手段のうち、いずれか一方で得られた浄水を他方の2次側から1次側に逆通水することが可能な合流流路と、
前記原水供給流路に設けられ、少なくとも前記第1濾過手段に対して気泡を供給するエジェクタと、
を備える浄水装置。
【請求項2】
前記第1濾過手段は中空糸膜であり、該中空糸膜を構成する中空糸の外側が一次側、前記中空糸の内側が二次側に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の浄水装置。
【請求項3】
前記第1濾過手段の膜洗浄を行う際に、前記第2濾過手段の一次側に滅菌・洗浄剤を添加する滅菌・洗浄剤添加手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の浄水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−207158(P2008−207158A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49033(P2007−49033)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(504346204)エムアールシー・ホームプロダクツ株式会社 (57)
【Fターム(参考)】