説明

浄水装置

【課題】簡素な構造で、優れた浄水作用を発揮し、濾過材の製造も容易な浄水装置を提供する。
【解決手段】浄水装置10は、処理対象である汚濁水DWが通過可能な箱体状のケーシング13内に、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を固化させて形成した第一浄化層11と、籾殻炭Cを含む第二浄化層12と、を配置して形成されている。第二浄化層12はケーシング13の底部13b側に配置され、第一浄化層11は第二浄化層12上に積層配置されている。汚濁水DWをケーシング13内へ送給する送水管14がケーシング13上方の開口部13aに配管され、ケーシング13内で浄化された清澄水CWを排出する排水管15がケーシング13外周の底部13b近傍に設けられている。排水管15の下方には、清澄水CWを一時貯留するための貯水タンク16が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場で発生する汚濁水、生活排水あるいは溜め池の水、河川の水、雨水などの各種汚濁水を浄化して清澄水を得ることのできる浄水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する従来の浄化装置として、例えば、特許文献1,2に記載されたものがある。特許文献1記載の浄化装置は、地下水の浄水汚泥を造粒した後、400℃〜1000℃で加熱焼成した団粒構造の水質浄化材を備えている。特許文献2記載の浄化装置においては、籾殻、木またはパルプ用紙管を加熱した状態で加圧した後、非酸素雰囲気下において約600℃以上の温度で焼成して得られる固形物を粉砕した加工活性炭の粉が濾過材として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−230674号公報
【特許文献2】特開2004−8869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2記載の浄化装置は、それぞれ優れた浄化作用を発揮するものであるが、これらの浄化装置を構成する濾過材の製造には、大がかりな設備と多大な労力とを必要とする。即ち、特許文献1記載の団粒構造の水質浄化材は、浄水汚泥の造粒設備及び加熱焼成設備が必要であり、特許文献2記載の加工活性炭は籾殻や木などの加熱加圧設備、非酸素雰囲気の焼成設備及び粉砕設備が必要である。
【0005】
従って、特許文献1記載の水質浄化材や特許文献2記載の加工活性炭は高価なものとなり、濾過材を大量に消費する廃水処理設備においては導入が困難となっている。そのほか、特許文献1,2記載の浄化装置は、装置自体を製造するのに高度な技術や設備が必要であるため、簡単に製造することができない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、簡素な構造で、優れた浄水作用を発揮し、濾過材の製造も容易な浄水装置を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の浄水装置は、液体が通過可能なケーシング内に、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を固化させて形成した第一浄化層と、籾殻炭を含む第二浄化層と、を配置したことを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物中では、団粒化剤に含まれるイオンの作用により、土材の粒子とセメント系固化材の粒子とが立体的な団粒構造を形成し、連続した微細な空隙が発生するため、これらの混合物を固化させて形成した第一浄化層は優れた濾過機能を有する。また、第二浄化層に含まれる籾殻炭は微細な粒子などを吸着する作用を有する。従って、第一浄化層及び第二浄化層により、優れた浄水作用を発揮する。
【0009】
また、本発明の浄水装置はケーシング内に第一浄化層と第二浄化層とを配置するだけで形成することができるため、構造は極めて簡素である。さらに、第一浄化層は、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を固化させれば形成可能であり、第二浄化層は籾殻炭を含むものであれば良いので、濾過材の製造も容易である。
【0010】
ここで、前記団粒化剤として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体を含む高分子化合物を用いることが望ましい。このような構成とすれば、第一浄化層内に比較的強固な団粒構造を形成することができるため、長期間に渡って安定した濾過機能を得ることができる。
【0011】
一方、前記第一浄化層及び前記第二浄化層を上下方向に積層配置することもできる。このような構成とすれば、ポンプを使用することなく、自然落下を利用して、汚濁水を、前記第一浄化層及び前記第二浄化層に通すことができる。
【0012】
また、前記第二浄化層を構成する前記籾殻炭として、透水性袋体に充填されたものを使用することもできる。このような構成とすれば、第二浄化層を構成する籾殻炭のケーシング内への配置作業や取替作業は透水性袋体単位で行うことができるので、取り扱い性及び作業性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、簡素な構造で、優れた浄水作用を発揮し、濾過材の製造も容易な浄水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態である浄水装置を示す垂直断面図である。
【図2】図1に示す浄化装置を構成する第一浄化層の形成工程を示す図である。
【図3】第一浄化層に関するその他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】第二浄化層に関するその他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態の浄水装置10は、処理対象である汚濁水DWが通過可能な箱体状のケーシング13内に、図2に示すような土材21、セメント系固化材22及び団粒化剤23を含む混合物20を固化させて形成した第一浄化層11と、籾殻炭Cを含む第二浄化層12と、を配置して形成されている。第二浄化層12はケーシング13の底部13b側に配置され、第一浄化層11は第二浄化層12上に積層配置されている。他の場所で発生した汚濁水DWをケーシング13内へ送給する送水管14がケーシング13上方の開口部13aに配管され、第一浄化層11及び第二浄化層12を通過することによって浄化された清澄水CWを排出する排水管15がケーシング13外周の底部13b近傍に設けられている。排水管15の下方には、清澄水CWを一時貯留するための貯水タンク16が配置されている。
【0016】
図2に示すように、土材21、セメント系固化材22及び団粒化剤23を含む混合物20中では、団粒化剤23に含まれるイオンの作用により、土材21の粒子とセメント系固化材22の粒子とが立体的な団粒構造を形成し、連続した微細な空隙が発生する。このため、これらの混合物20を固化させて形成した第一浄化層11(図1参照)は優れた濾過機能を有するとともに、第二浄化層12に含まれる籾殻炭Cは微細な粒子などを吸着する作用を有する。従って、第一浄化層11及び第二浄化層12の相乗効果により、浄水装置10は、優れた浄水作用を発揮する。
【0017】
即ち、図1に示すように、送水管14からケーシング13内の第一浄化層11上面に向かって投入された汚濁水DWは、積層配置された第一浄化層11及び第二浄化層12をこの順番で通過することにより、汚濁成分が第一浄化層11や第二浄化層12によって捕捉されるため、最終的にケーシング13の最下部に位置する排水管15から清澄水CWとなって排出され、貯水タンク16に貯留される。
【0018】
また、浄水装置10はケーシング13内に第一浄化層11と第二浄化層12とを積層配置するだけで形成することができるため、構造は極めて簡素である。さらに、第二浄化層は籾殻炭Cを含むものをケーシング13内の底部13上に適切な厚さ充填すれば形成可能であり、第一浄化層11は、土材21、セメント系固化材22及び団粒化剤23を含む混合物20を、ケーシング13内に充填された第二浄化層12上に打設して、固化させれば形成可能であるため、濾過材の製造は極めて容易である。
【0019】
本実施形態の浄水装置10においては、図2に示す団粒化剤23として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体を含む高分子化合物を用いている。これにより、第一浄化層11内に比較的強固な団粒構造を形成することができるため、長期間に渡って安定した濾過機能を得ることができる。
【0020】
また、浄水装置10においては、第一浄化層11及び第二浄化層12をケーシング13内において上下方向に積層配置しているため、ポンプを使用することなく、自然落下を利用して、汚濁水DWを、第一浄化層11及び第二浄化層12に通すことができる。
【0021】
次に、図3,図4に基づいて、第一浄化層及び第二浄化層に関するその他の実施形態について説明する。図1に示す第一浄化層11は、第二浄化層12上に図2に示す混合物20を打設、固化させることによって形成しているが、図2に示す混合物20を所定の型枠(図示せず)内に充填、固化させることにより、図3に示すような一定形状の第一浄化層31を形成し、この第一浄化層31をケーシング13内に配置する構成とすることもできる。このような構成とすれば、第一浄化層31のケーシング13内への配置作業や交換作業が容易となる。
【0022】
一方、図1に示す第二浄化層12は、ケーシング13内の底部13b上に籾殻炭Cを直接充填することによって形成されているが、図4に示すように、第二浄化層32として、籾殻炭Cを透水性袋体33に充填したものをケーシング13内に配置することもできる。このような構成とすれば、第二浄化層32を構成する籾殻炭Cのケーシング13内への配置作業や取替作業は透水性袋体33単位で行うことができるので、取り扱い性及び作業性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の浄水装置は、様々な産業活動あるいは日常生活などにおいて発生する各種汚濁水の浄化手段として、排水処理の分野のほか、建設業分野、工業分野、商業分野や農業分野などにおいて広く利用することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 浄水装置
11,31 第一浄化層
12,32 第二浄化層
13 ケーシング
13a 開口部
13b 底部
14 送水管
15 排水管
16 貯水タンク
20 混合物
21 土材
22 セメント系固化材
23 団粒化剤
C 籾殻炭
CW 清澄水
DW 汚濁水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が通過可能なケーシング内に、土材、セメント系固化材及び団粒化剤を含む混合物を固化させて形成した第一浄化層と、籾殻炭を含む第二浄化層と、を配置したことを特徴とする浄水装置。
【請求項2】
前記団粒化剤として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体を含む高分子化合物を用いた請求項1記載の浄水装置。
【請求項3】
前記第一浄化層及び前記第二浄化層を上下方向に積層配置した請求項1または2記載の浄水装置。
【請求項4】
前記第二浄化層を構成する前記籾殻炭が透水性袋体に充填されたものである請求項1〜3のいずれかに記載の浄水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−62629(P2011−62629A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214862(P2009−214862)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(500305380)株式会社シーマコンサルタント (30)
【Fターム(参考)】