説明

浮き杭を用いた基礎の施工方法及び不同沈下修復方法

【課題】浮き杭の上に基礎を施工するまでの間の杭の抜け上がりを防ぐことができ、それでいて、浮力によって大きな支持力を得ることができる浮き杭を用いた基礎の施工方法、及び、修復後の再度の不同沈下を防ぐことができ、それでいて、その施工を容易に行うことができる不同沈下修復方法を提供する。
【解決手段】浮き杭1が水密な中空体からなり、中空部3内に水6を入れた状態で杭1の上に基礎8を施工し、該基礎8の施工後、水6の全部又は一部を中空部3内から除去する。また、建物の不同沈下修復において、杭1の中空体3内に対して水6の出入れを行い、水を含む杭の重量を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮き杭を用いた基礎の施工方法及び不同沈下修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水位の高い軟弱地盤では、地盤中の地下水から受ける浮力を杭支持力の一部として有効利用するため、図4(イ)に示すように、地盤51に孔52を掘り、そこに、発泡スチロールビーズを練り込んだコンクリートや気泡コンクリート53を打設することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような浮き杭53では、浮力によって大きな支持力を得ようとすると、杭上にコンクリート基礎を施工するまでの間に、杭53が地下水から受ける浮力によってもち上げられ、杭に抜け上がりを生じてしまいやすいという問題がある。
【0004】
また、上記のような浮き杭53を用いた建物において、不同沈下を生じた場合、その原因が地下水から受ける浮力の変化などにある場合には、ジャッキなどを用いて修復をしても、再び不同沈下を起こしてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、浮き杭の上に基礎を施工するまでの間の杭の抜け上がりを防ぐことができ、それでいて、浮力によって大きな支持力を得ることができる浮き杭を用いた基礎の施工方法、及び、修復後の再度の不同沈下を防ぐことができ、それでいて、その施工を容易に行うことができる不同沈下修復方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、地盤中の地下水からの浮力を支持力の一部として利用する浮き杭を用いた基礎の施工方法であって、
浮き杭が水密な中空体からなり、中空部内に質量材を入れた状態で杭上に基礎を施工し、該基礎の施工後、質量材の全部又は一部を中空部内から除去することを特徴とする、浮き杭を用いた基礎の施工方法によって解決される。
【0007】
この施工方法では、浮き杭として中空体を用いているので、中空部内に質量材を入れることで浮き杭の重量を大きくすることができ、杭上に基礎を施工するまでの間に杭が浮力によって抜け上がってしまうのを防ぐことができる。
【0008】
しかも、基礎の施工後は、質量材の全部又は一部を中空部内から除去するので、浮き杭が水密な中空体からなることも相俟って、浮力によって大きな支持力を得ることができる。
【0009】
また、上記の課題は、地盤中の地下水からの浮力を支持力の一部として利用する浮き杭を用いた建物であって、浮き杭が水密な中空体からなり、建物の不同沈下修復において、杭の中空体内に対して質量材の出入れを行い、質量材を含む杭の重量を変化させることを特徴とする不同沈下修復方法によって解決される。
【0010】
この修復方法では、質量材の出入れによって浮力とのつり合い関係が調整されることにより再度の不同沈下を防ぐことができ、しかも、水密な中空体からなる杭を用い、その中空部内に対して質量体の出し入れを行うことによりそれを実現するものであるから、その施工を容易に行うことができる。
【0011】
また、上記の課題は、水密な中空体からなることを特徴とする浮き杭によって、同様に解決される。更に、上記の浮き杭がプラスチック杭からなる場合は、水密で軽量な浮き杭用中空体を成形容易に製作することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のとおりのものであるから、浮き杭の上に基礎を施工するまでの間の杭の抜け上がりを防ぐことができ、それでいて、浮力によって大きな支持力を得ることができる。また、修復後の建物の再度の不同沈下を防ぐことができ、それでいて、その施工を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1及び図2に示す第1実施形態の施工方法において、1は浮き杭であり、該浮き杭1は、軽量なプラスチック杭からなっていて、基端側から先端側に向けて細くなった円錐カップ状の杭軸部2を備え、その内部3を水密な、即ち、地盤中の地下水の侵入を許さない中空部とし、外周側に螺旋翼4が設けられたものからなっている。
【0015】
施工は、図1(イ)(ロ)に示すように、上記の杭1を用い、これを地下水位の高い軟弱地盤5に回転嵌入し、地下水から受ける浮力によって杭1が浮き上がらない程度に、図1(ハ)に示すように、杭1の中空部3内に質量材としての水6を入れる。これにより、浮き杭1の重量が水6によって大きくなり、杭1上に基礎を施工するまでの間に杭1が地下水から受ける浮力によって抜け上がってしまうのが防がれる。なお、水6は、杭1を地盤5に打ち込む前に中空部3内に入れておいてもよいし、打ち込みながら入れていくようにしてもよいし、打込み完了後に入れるようにしてもよい。
【0016】
その状態で、図2(ニ)に示すように、水抜き用のホース7を杭1の中空部3内に差し込んだ状態にすると共に、杭1の上にコンクリート基礎8を施工する。基礎8はプレキャスト品であってもよいし、場所打ちのコンクリート基礎であってもよく、後者の場合は、基礎の施工において、杭1の上端に図示しない蓋を設置しておくとよい。
【0017】
こうして基礎8の施工を完了した後、図2(ホ)に示すように、ホース7を通じて中空部3内の水6の全部又は一部を抜く。これにより、杭1には、地盤5との摩擦力、並びに、円錐状の杭軸部2及び螺旋翼4による支持力のほか、地下水から受ける浮力によって大きな支持力が作用し、地下水位の高い軟弱地盤において建物をしっかりと支えることができ、残土も生じない。
【0018】
そして、建てられた建物において不同沈下を生じた場合には、その修復は、ジャッキなどを用いて建物を水平に戻すだけでなく、杭1の中空部3内に対して水6の出入れを行うことによって杭1の重量を変化させるようにする。
【0019】
即ち、杭1の中空部3内の水6を図3(イ)に示す状態から図3(ロ)に示すような状態に増量すれば、杭1は地下水から受ける浮力によって浮き上がろうとするのが抑制される。また、図3(イ)に示す状態から図3(ハ)に示すような状態に減量すれば、杭1に浮き上がる方向の力が大きく作用するようになる。これを利用し、杭中空部3に対する水6の出入れを行って水6を含む杭1の重量を変化させ、地下水から受ける浮力とのつり合い関係を調整することを、不同沈下の修復において行えば、再度の不同沈下を生じさせない確実な修復を実現することができる。しかも、施工は、杭中空部3に対する水6の出入れを行うだけでよく、施工も容易である。なお、基礎下の杭は一本であってもよいし、複数本であってもよい。複数本である場合には、水6の出入れを行う杭はそのうちの一部の杭であってもよいし、全部の杭であってもよい。
【0020】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、質量材として水6を用いた場合を示したが、砂であってもよく、要は、杭の中空部に対して出し入れを容易に行うことができるようなものであればよい。なお、質量材として砂を用いる場合は、中空部からの砂の取出しは、水を中空部内に送り込んでいくことなどにより容易に行うことができる。また、上記の実施形態では、杭軸部2が円錐状をし、外周側に螺旋翼4が備えられた杭1を用いた場合を示したが、螺旋翼がなく、円筒状をして先端部が水密状態に閉じられた杭など、水密な中空部を備えた各種形態の杭であってよいし、材質もプラスチックに限らない。また、上記の実施形態では、杭1を地盤5に回転嵌入により打ち込んだ場合を示したが、回転嵌入方式によらずに、杭を地盤5に掘った孔に差し込んで設置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図(イ)〜図(ハ)は、図2(ニ)(ホ)と共に、実施形態の施工方法を順次に示す断面正面図である。
【図2】図(ニ)及び図(ホ)は、図1(イ)〜(ハ)と共に、実施形態の施工方法を順次に示す断面正面図である。
【図3】図(イ)〜図(ハ)は、不同沈下修復方法において用いる杭重量の調整方法の一例を示す断面正面図である。
【図4】図(イ)及び図(ロ)は従来の浮き杭の施工方法を順次に示す断面正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1…浮き杭
3…中空部
5…軟弱地盤
6…水(質量材)
8…基礎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中の地下水からの浮力を支持力の一部として利用する浮き杭を用いた基礎の施工方法であって、
浮き杭が水密な中空体からなり、中空部内に質量材を入れた状態で杭上に基礎を施工し、該基礎の施工後、質量材の全部又は一部を中空部内から除去することを特徴とする、浮き杭を用いた基礎の施工方法。
【請求項2】
前記浮き杭がプラスチック杭からなる請求項1に記載の、浮き杭を用いた基礎の施工方法。
【請求項3】
地盤中の地下水からの浮力を支持力の一部として利用する浮き杭を用いた建物であって、浮き杭が水密な中空体からなり、建物の不同沈下修復において、杭の中空体内に対して質量材の出入れを行い、質量材を含む杭の重量を変化させることを特徴とする不同沈下修復方法。
【請求項4】
水密な中空体からなることを特徴とする浮き杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−92420(P2007−92420A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284164(P2005−284164)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】