説明

浮腫改善装置及び方法

【課題】使用者に生じる浮腫を効果的に改善する浮腫改善装置等を提供すること。
【解決手段】使用者の身体の一部に対して、少なくとも、マッサージ動作を行うマッサージ部27と、使用者の身体の状態を計測する計測部28と、を有し、計測部は、少なくとも、マッサージ部のマッサージ動作の前後に計測を行い、その測定結果情報を記憶する構成となっており、マッサージ動作後の計測結果情報を、既に記憶済みの計測結果情報である既登録計測結果情報と比較して、使用者の身体の浮腫状態が改善したか否かを判断する構成となっている浮腫改善装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、人体の腕や足等に生じる所謂「浮腫(むくみ)」を改善するための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、妊婦等には浮腫(むくみ)が見られる。この「浮腫」とは、例えば、「細胞内でも血管内でもない人体内の部分にあるいたるところの部分である間質部分に異常に病的に水分が増加する状態」等を指す。
このような、浮腫が妊婦等に生じたとき、従来、妊婦等は一般的なマッサージ装置を用いていた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−333978公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなマッサージ装置は、一般的なマッサージ装置であって、必ずしも「浮腫」に適したものとはならないという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、使用者に生じる浮腫を効果的に改善する浮腫改善装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明にあっては、使用者の身体の一部に対して、少なくとも、マッサージ動作を行うマッサージ部と、前記使用者の身体の状態を計測する計測部と、を有し、前記計測部は、少なくとも、前記マッサージ部の前記マッサージ動作の前後に前記計測を行い、その測定結果情報を記憶する構成となっており、前記マッサージ動作後の前記計測結果情報を、既に記憶済みの前記計測結果情報である既登録計測結果情報と比較して、使用者の身体の浮腫状態が改善したか否かを判断する構成となっていることを特徴とする浮腫改善装置により達成される。
【0007】
前記構成によれば、マッサージ動作後の計測結果情報を、既に記憶済みの計測結果情報である既登録計測結果情報と比較して、使用者の身体の浮腫状態が改善したか否かを判断する構成となっている。このため、マッサージ部によるマッサージ動作によって、使用者の身体の浮腫が改善したか否かを使用者が認識できる。
【0008】
好ましくは、前記計測部が、使用者の腕部及び/又は足部の周囲長さを計測する構成となっていることを特徴とする浮腫改善装置である。
【0009】
前記構成によれば、使用者の腕部及び/又は足部の周囲長さを計測するので、腕部及び/又は足部の周囲長さの変化により、使用者の浮腫の有無を判断することができる。
【0010】
好ましくは、前記計測部が、前記腕部を計測するときは、前記腕部の下腕部と上腕部をそれぞれ計測すると共に、前記足部を計測するときは、前記足部のふくらはぎ部と太もも部をそれぞれ計測する構成となっていることを特徴とする浮腫改善装置である。
【0011】
前記構成によれば、計測部が、腕部を計測するときは、腕部の下腕部と上腕部をそれぞれ計測すると共に、足部を計測するときは、足部のふくらはぎ部と太もも部をそれぞれ計測する構成となっているので、浮腫の発生部位等を精度良く把握することができる。
【0012】
好ましくは、前記計測部が、前記下腕部の下側部と上側部を計測するときは、それぞれ、前記上腕部及び前記下腕部の下側部と上側部をそれぞれ計測すると共に、前記足部の前記ふくらはぎ部と前記太もも部を計測するときは、それぞれ、前記ふくらはぎ部と前記太もも部の下側部と上側部を計測する構成となっていることを特徴とする浮腫改善装置である。
【0013】
前記構成によれば、計測部が、下腕部の下側部と上側部を計測するときは、それぞれ、上腕部及び下腕部の下側部と上側部をそれぞれ計測すると共に、足部のふくらはぎ部と太もも部を計測するときは、それぞれ、ふくらはぎ部と太もも部の下側部と上側部を計測する構成となっている。このため、浮腫の発生部位等をより精度良く把握することができる。
【0014】
好ましくは、前記マッサージ動作後の前記計測結果情報と比較すべき前記既登録計測結果情報が、前記既に記憶済みの前記計測結果情報のうち、最も計測数値が大の情報である最大計測結果情報であり、この最大計測結果情報と、前記マッサージ動作後の前記計測結果情報との差分情報に基づき浮腫の有無を判断することを特徴とする浮腫改善装置である。
【0015】
前記構成によれば、最大計測結果情報と、マッサージ動作後の計測結果情報との差分情報に基づき浮腫の有無を判断するので、浮腫の改善を容易且つ正確に把握することができる。
【0016】
好ましくは、前記計測結果情報を記憶するときに、その計測時刻情報と関連付けて記憶する構成となっていることを特徴とする浮腫改善装置である。
【0017】
前記構成によれば、計測結果情報を記憶するときに、その計測時刻情報と関連付けて記憶する構成となっているので、浮腫があるとされた計測結果情報の計測時刻情報から浮腫になり易い時間帯等を把握することができる。
【0018】
好ましくは、前記マッサージ部が前記マッサージ動作をするときに、血圧測定を行い、この血圧測定結果が、前記マッサージ動作の前後の前記計測部による前記計測結果情報と関連付けて記憶されることを特徴とする浮腫改善装置である。
【0019】
前記構成によれば、マッサージ部がマッサージ動作をするときに、血圧測定を行い、この血圧測定結果が、マッサージ動作の前後の計測部による計測結果情報と関連付けて記憶される構成となっている。このため、浮腫の有無と共に、血圧を計測することができると共に、血圧と浮腫との関係データも取得することできる。特に妊婦にとって、この関係データは有意性が高く、この関係データにより、前記使用者自身が自身の体調変化を把握することができるので、体調管理をし易くすると同時に、場合によっては、この関係データが医師による診断の有効な指標となり得る。
【0020】
前記目的は、本発明にあっては、使用者の身体の一部に対して、少なくとも、マッサージ動作を行うマッサージ部と、前記使用者の身体の状態を計測する計測部と、を有し、前記計測部は、少なくとも、前記マッサージ部の前記マッサージ動作の前後に前記計測を行い、その測定結果情報を記憶し、前記マッサージ動作後の前記計測結果情報を、既に記憶済みの前記計測結果情報である既登録計測結果情報と比較して、使用者の身体の浮腫状態が改善したか否かを判断する構成となっていることを特徴とする浮腫改善方法により達成される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、使用者に生じる浮腫を効果的に改善する浮腫改善装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る浮腫改善装置を示す概略図である。
【図2】図1のカフ装置のA―A‘線の概略断面図である。
【図3】カフ装置の動作例を示す概略図である。
【図4】浮腫改善装置の情報処理の主なハードウエア構成等を示す概略図である。
【図5】図1の浮腫改善装置の主な構成を示す概略ブロック図である。
【図6】本実施の形態にかかる浮腫改善装置の主な動作等を示す概略フローチャートである。
【図7】本実施の形態にかかる浮腫改善装置の主な動作等を示す他の概略フローチャートである。
【図8】カフ装置を使用者が装着した状態を示す概略図である。
【図9】本実施の形態に係る浮腫改善装置の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る浮腫改善装置10を示す概略図である。
図1に示すように、浮腫改善装置10は、装置本体20とカフ装置30とを有し、このカフ装置30と装置本体20とを接続するための多孔管40が配置されている。この多孔管40には、図1の長手方向に、カフ装置30と装置本体20とを結ぶ、例えば3つの穴が形成され、これらは、それぞれ、空気を送気する穴、後述する受発光素子による受発光用のリード線が通る穴及び後述するコロトコフ音を取得するためのマイク用の穴として用いられる。そして、各穴はそれぞれ他の穴と独立した空間ともなっているので、例えば、コロトコフ音の取得が、送気や受発光用信号等によって干渉等されることがないという利点がある。さらに、トリプルルーメンを用いることで、複数のルーメンが一体となっているので外観も良好となるという利点もある。
【0025】
図2は、図1のカフ装置30のA―A‘線の概略断面図である。
図2に示すように、カフ装置30は、その外側にシャーシ31が配置され、その内側に空気袋32がシャーシ31に沿って例えば、4個配置されている。
また、シャーシ30の内側には、図1に示すような、4つのカフ構成部分30a、30b、30c、30dに区分されている。そして、これら各カフ構成部分30a等には、それぞれ空気袋32が、図2に示すように4つずつ形成されている。
このため、図1のカフ構成部分30a等は、それぞれ独立して動作可能な構成となっており、例えば、カフ構成部分30aの空気袋32等にのみ空気を満たすことができる構成となっている。
【0026】
このように、浮腫改善装置10は、基本的には、カフ装置30を、使用者の浮腫(むくみ)が生じていると思われる腕や足等に装着し、空気袋32に空気を満たし、図2の例えば、腕Mに対して、加圧減圧を交互に繰り返し、又は振動する(若しくは双方)ことでマッサージ動作等を実行させることができる構成となっている。
また、図2に示すように、各空気袋32には、発光素子33a及び受光素子33bが形成され、受光素子33bが発光素子33aの光量を検知することで、空気袋32の矢印L1乃至L4の距離を求め、これらのデータから図2に示す使用者の腕Mの周囲長さを計測することができる構成ともなっている。
【0027】
また、空気袋32には、図示しないマイク(集音器)が配置され、腕Mの血管における「コロトコフ音」を取得することができ、これにより血圧測定が可能な構成ともなっている。
【0028】
図3は、カフ装置30の動作例を示す概略図である。
図3に示すように、カフ装置30は、伸縮可能な構成となっている。したがって、必要に応じ、カフ装置30の長さを使用者の腕や足の長さに合致するように調整することができる構成ともなっている。
【0029】
また、図1に示すように、装置本体20は、各種情報を表示するための表示部21、浮腫改善装置10の開始ボタン22、スピーカ23等を有すると共に、各モードの切り替えボタン24a乃至24d等を有している。
【0030】
また、本実施の形態に係る浮腫改善装置10は、情報処理を行うための例えば、コンピュータを有している。
図4は、浮腫改善装置10の情報処理の主なハードウエア構成等を示す概略図である。
図4に示すように、浮腫改善装置10は、コンピュータ等を有し、コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)3、RAM(Random Access Memory)4、ROM(Read Only Memory)5等を有し、これらは、例えばバス2を介して配置されている。
【0031】
このバス2は、すべてのデバイスを接続する機能を有し、アドレスやデータバスを有する内部バスである。CPU3は所定のプログラムの処理を行う他、バス2に接続されたROM5等を制御している。ROM5は、各種プログラムや各種情報等を格納している。RAM4は、プログラム処理中のメモリの内容を対比すると共に、プログラムを実行するためのエリアとしての機能も有する。
【0032】
また、このバス2には、上述の表示部(ディスプレイ)21、切り替えボタン24a等、開始ボタン22、スピーカ23も接続されている。さらに、上述の空気袋32等の加圧減圧等により使用者の腕M等に対するマッサージ動作を行うマッサージ部である例えば、マッサージ装置27、図2の発光素子33aと受光素子33b等による使用者の腕M等の周囲長さを測る長さ計測装置28(計測部の一例)、そして、上述の血圧測定装置29も接続されている。
【0033】
図5は、図1の浮腫改善装置10の主な構成を示す概略ブロック図である。
図5に示すように浮腫改善装置10は、制御部50を有し、この制御部50により、上述のマッサージ動作装置27、長さ計測装置28、血圧測定装置29、表示装置21、切り替えボタン24a等、開始ボタン22及びスピーカ23等が制御されている。
また、図5に示すように、制御部50には、各種プログラム及び記憶部等が接続されているが、これらの内容については後述する。
【0034】
図6及び図7は、本実施の形態にかかる浮腫改善装置10の主な動作等を示す概略フローチャートである。
以下、図6及び図7のフローチャートに沿って浮腫改善装置10の動作等を説明すると共に、図1乃至図5等の構成等も併せて説明する。
【0035】
従来から、妊婦に妊娠中毒症の症状が見られることがある。この妊娠中毒症は、従来、高血圧、尿タンパク、浮腫のうちの1つ又は2つ以上の症状が見られ、その症状が妊娠前から持っている症状でないものを指していた。
ここで、「浮腫」とは、例えば、「細胞内でも血管内でもない人体内の部分のいたるところの部分である間質部分に異常に病的に水分が増加する状態」等を指す。
現在は、「妊娠中毒症」の名称を「妊娠高血圧症候群」へと変更し、浮腫は、「妊娠高血圧症候群」の判定基準から外されている。
しかし、浮腫は、現在でも妊婦等にとって重要な症状であることから精度の高い浮腫の有無の判断及び改善等が必要となっている。
したがって、以下、妊婦が本実施の形態の浮腫改善装置10を使用する場合を例に説明する。
【0036】
まず、例えば、腕Mに浮腫を感じた妊婦は、図1の浮腫改善装置10の切り替えボタン24a等を操作し、自己の氏名等を浮腫改善装置10に登録する。
その後、浮腫改善装置10を使用する身体の一部である例えば、腕又は足を切り替えボタン24a等を用いて選択する。本実施の形態では、例えば、腕を選択する。
【0037】
その後、妊婦は、図1のカフ装置30の伸縮部分(蛇腹部分)を伸ばし、図8に示すように、自己の腕Mの上腕と下腕を覆う。
図8は、カフ装置30を使用者が装着した状態を示す概略図である。
カフ装置30のカフ構成部分30aが使用者である妊婦の腕Mの下腕の下側、カフ構成部分30bが下腕の上側、カフ構成部分30cが上腕の下側、そして、カフ構成部分30dが上腕の上側に、それぞれ配置される。
【0038】
この状態で、妊婦が図1の装置本体20の開始ボタン22を押下すると、先ず、図6のST1の「腕周囲長さ計測工程、血圧測定工程及び実行時刻記憶工程」が開始される。
すなわち、マッサージ動作が実施される前に、妊婦の腕周囲長さの計測、血圧測定及びこれらの計測時刻の記憶等が行われる。
図7は、図1のST1の「腕周囲長さ計測工程、血圧測定工程及び実行時刻記憶工程」の内容を示すフローチャートである。
【0039】
以下、図7のフローチャートに従い、その動作等を説明する。
先ず、ST11に示すように、図5のマッサージ動作装置27が動作し、図8のカフ構成部分30aである下腕下側の4つの空気袋32に空気が注入され加圧される。
【0040】
次いで、ST12へ進む。ST12では、上述のように、図2の空気袋32に形成される発光素子33aからの光量を受光素子33bが判断し、この光量に基づいて図2の矢印L1等の距離を求め、この距離L1等に基づき、妊婦の腕M等の周囲長さを計測する。
これは、図5の長さ計測装置28が実行する。
【0041】
次いで、ST13へ進む。ST13では、下腕下側の空気袋32の空気を抜いて減圧し、ST12の測定結果(計測結果情報の一例)を測定者情報、時刻情報(例えば、日付時刻等)(計測時間情報の一例)及び測定部位情報(例えば、下腕下側)と関連付けて、図5の測定結果記憶部51に記憶させる。
【0042】
次いで、ST14へ進む。ST14では、図8のカフ構成部分30bである下腕上側の4つの空気袋32に空気が注入され加圧される。
ST15では、ST12と同様の方法で、下腕上側の周囲長さが測定され、ST16では、ST13と同様の方法で、下腕上側の測定結果が、測定結果記憶部51に記憶される。
【0043】
次いで、ST17乃至ST19は、測定部位が上腕下側(図8のカフ構成部分30c)に変わるのみで、上述のST14乃至ST16とほぼ同様の工程を経て、上腕下側の測定結果が測定結果記憶部51に記憶される。
【0044】
次いで、ST20乃至ST22は、測定部位が上腕上側(図8のカフ構成部分30d)に変わるのみで、上述のST14乃至ST16とほぼ同様の工程を経て、上腕上側の測定結果が測定結果記憶部51に記憶される。
【0045】
以上で、妊婦の腕の下腕下側、下腕上側、上腕下側、そして上腕上側の周囲長さのデータが、時刻情報と共に、測定結果記憶部51に記憶される。
【0046】
次いで、ST23へ進む。ST23では、図5の血圧測定装置29が動作し、血圧測定を行う。具体的には、図8のカフ構成部分30c(上腕下側)の空気袋32に空気を注入し加圧した後、マイク(不図示)でコロトコフ音を取得し、これにより血圧を測定する。その後、測定した血圧データ(血圧測定結果)を上記ST13、ST16、ST19及びST22の測定結果と関連付けて、測定結果記憶部51に記憶する。
【0047】
以上で、図6のST1が終了し、ST2へ進む。ST2では、浮腫を改善するためのマッサージ動作が実行される。具体的には、図5のマッサージ動作装置27が動作し、マッサージ動作、すなわち、空気袋32への空気の注入加圧及び減圧が交互に行われる。
具体的には、各カフ構成部分がそれぞれ独立して動作可能な構成になるように、多孔管40の空気を送気する穴がさらに4つに分割されており、各カフ構成部分に送気できるようにする。
このとき、空気袋32への空気の注入加圧及び減圧の制御は、制御部50で行う。他にも、例えば、圧力センサーと切替弁を各カフ構成部分に配置(不図示)し、カフ構成部分30aに空気の注入加圧をはじめてから圧力が所定値に達したことを圧力センサーが検知した場合、切替弁によって注入加圧をカフ構成部分30bへ切替える、という動作を行い、この動作をカフ構成部分30c及びカフ構成部分30dにおいても同様に順次行う方法でも良い。
この動作の代わりに、または、この動作に加えて、振動動作が行われる。振動動作には、例えば、主に携帯電話や無線呼出に使われる機能と同様に、モータの軸に重心を偏らせた重りを取り付け、回転させることで振動を生む方式の振動モータを用いる。
上述のマッサージ動作は、例えば、図8の下腕下側、下腕上側、上腕下側及び上腕上側の順に実施されるが、これに限定されず、例えば、各モードの切り替えボタン等の操作で、空気の注入加圧及び減圧の順序を、さらにはマッサージの強弱等を好みによって変更することも可能である。
【0048】
次いで、ST3へ進む。ST3は、ST1と同様の工程が行われ、マッサージ動作後の妊婦の下腕下側、下腕上側、上腕下側及び上腕上側の周囲長さのデータが時間情報や血圧情報等と共に記憶される。
【0049】
次いで、ST4へ進む。ST4では、図5の腕周囲長さ差分データ生成部(プログラム)52が動作し、図5の測定結果記憶部51を参照し、当該測定者である妊婦の測定者情報と関連付けられている過去(既に記憶済み)の腕の周囲長さの測定結果データ(既登録計測結果情報)の内、最も数値が大きい測定結果データ(最大計測結果情報の一例)と、直近の測定結果の腕の周囲長さを比較し、その差分情報(長さの差)を図5の腕周囲長さ差分データ記憶部53に記憶させる。
【0050】
次いで、ST5へ進む。ST5では、図5の浮腫改善判断部(プログラム)54が動作して、直近の腕の周囲長さの測定結果データから浮腫が改善されたか否かが判断される。
具体的には、図5の腕周囲長さ差分データ記憶部53に、記憶されている差分データ(下腕下側、下腕上側、上腕下側及び上腕上側の各差分データ)が、図5の浮腫改善基準データ記憶部55内の基準データ(例えば、1mm以上)であるか否かが判断される。本実施の形態では、基準データを1mmとしているが、例えば、足に装着する場合、基準データを2mmと設定することや、足首やふくらはぎといった部位ごと、さらには、腕又は足の左右でも変更可能であり、本実施の形態の限定されるものではない。
【0051】
ST5で、妊婦の腕の下腕下側、下腕上側、上腕下側、上腕上側の少なくとも、いずれかが、基準データ以上、例えば、1mm以上の差分がある、すなわち、1mm以上浮腫が減少したと判断された場合は、浮腫が改善されたとして、ST6へ進む。
ST6では、図1の表示部21に「浮腫改善」と表示され、上記ST4の最も数値が大きい測定結果データに対応する時刻情報を「浮腫易い時刻」として表示する。さらに、最も数値が大きい測定結果データに対応する「血圧値」を「むくむときの血圧値」として表示する。
なお、このとき、上述の情報を表示部21に表示すると共に、スピーカ23から音声でも報知される。
【0052】
一方、ST5で、浮腫が改善されないと判断されたときは、ST7で「浮腫非改善の表示」が表示部21等になされる。
【0053】
このように、本実施の形態では、浮腫改善装置10で、マッサージ動作の前後で腕の周囲長さを測定することで、自動的に、浮腫を改善でき、また、その効果を判断することもできる。
特に、腕の周囲長さの測定は、下腕下側、下腕上側、上腕下側、上腕上側と、きめ細かく行うので、浮腫の改善を精度良く判断することができる。
また、浮腫に関し、上述したように、浮腫があるとされた計測結果情報の計測時刻情報から浮腫になり易い時間帯等を把握することにより、浮腫になり易い時刻情報も併せて、妊婦等の使用者に報知するので、妊婦等は,浮腫になり易い時刻等を知り、以後、注意することができる。
さらに、浮腫になり易い時刻における「血圧値」が表示部21に表示されるので、妊婦等は、浮腫と血圧との関係を把握することができる。
【0054】
なお、上述の説明では、妊婦等の使用者が腕にカフ装置30を装着した場合について説明したが、足にカフ装置30を装着することもできる。
この場合、図8のカフ構成部分30aは足のふくらはぎ下側、カフ構成部分30bは足のふくらはぎ上側、カフ構成部分30cは足の太もも下側、カフ構成部分30dは足の太もも上側に配置され、空気袋32に空気が注入され加圧等される。このとき、足首による血圧測定の工程を行うことで、足首の血圧を把握することができ、その結果、上腕の血圧値と足首の血圧値をデータ管理することで、ABI(下肢と上肢の血圧の比)測定が可能となる。
【0055】
図9は、本実施の形態に係る浮腫改善装置の変形例を示す概略図である。
図9に示すように、本変形例にかかる浮腫改善装置のカフ装置300は、上述の実施の形態にかかる浮腫改善装置10のカフ装置30と異なり、空気袋32がなく、代わりにベルト301が設けられている。
そして、このベルト301が巻き取られ、使用者の腕M等にベルト301を密着させることで、巻き取られたベルト301の長さから、腕M等の周囲長さを測定する構成となっている。
本変形例では、腕M等の周囲長さの測定機構が簡易で取扱易いという利点がある。
【0056】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。例えば、本実施の形態では、カフ構成部分30cで上腕の血圧測定を行ったが、それに限定せず、手首式の血圧計のように、カフ構成部分30a先端に血圧測定装置29を配置することで、マッサージ動作による影響を受けることなく血圧測定が行える。また、本発明は妊婦を使用者の例に挙げて説明したが、立ち仕事の方や、オフィスワークのように長時間席に座っての仕事の方にも浮腫は生じやすく、特に男性よりも女性にとって浮腫は悩みの1つでもある。美容の観点から鑑みても自分自身の浮腫を把握/管理することは重要なことであり、浮腫改善に関しては、女性全般から求められることである。すなわち、本発明の使用者は妊婦に限定されず、使用するものであれば、男女を問うものでもない。
【符号の説明】
【0057】
2・・・パス、3・・・CPU、4・・・RAM、5・・・ROM、10・・・浮腫改善装置、20・・・装置本体、21・・・表示部、22・・・開始ボタン、23・・・スピーカ、24a乃至24d・・・切り替えボタン、27・・・マッサージ装置、28・・・長さ計測装置、29・・・血圧測定装置、30、300・・・カフ装置、30a乃至30d・・・カフ構成部分、31・・・シャーシ、32・・・空気袋、33a・・・発光素子、33b・・・受光素子、40・・・多孔管、50・・・制御部、51・・・測定結果記憶部、52・・・腕周囲長さ差分データ生成部(プログラム)、53・・・腕周囲長さ差分データ記憶部、54・・・浮腫改善判断部(プログラム)、55・・・浮腫改善基準データ記憶部、301・・・ベルト、M・・・腕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体の一部に対して、少なくとも、マッサージ動作を行うマッサージ部と
前記使用者の身体の状態を計測する計測部と、を有し、
前記計測部は、少なくとも、前記マッサージ部の前記マッサージ動作の前後に前記計測を行い、その測定結果情報を記憶する構成となっており、
前記マッサージ動作後の前記計測結果情報を、既に記憶済みの前記計測結果情報である既登録計測結果情報と比較して、使用者の身体の浮腫状態が改善したか否かを判断する構成となっていることを特徴とする浮腫改善装置。
【請求項2】
前記計測部が、使用者の腕部及び/又は足部の周囲長さを計測する構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の浮腫改善装置。
【請求項3】
前記計測部が、前記腕部を計測するときは、前記腕部の下腕部と上腕部をそれぞれ計測すると共に、前記足部を計測するときは、前記足部のふくらはぎ部と太もも部をそれぞれ計測する構成となっていることを特徴とする請求項2に記載の浮腫改善装置。
【請求項4】
前記計測部が、前記下腕部の下側部と上側部を計測するときは、それぞれ、前記上腕部及び前記下腕部の下側部と上側部をそれぞれ計測すると共に、前記足部の前記ふくらはぎ部と前記太もも部を計測するときは、それぞれ、前記ふくらはぎ部と前記太もも部の下側部と上側部を計測する構成となっていることを特徴とする請求項3に記載の浮腫改善装置。
【請求項5】
前記マッサージ動作後の前記計測結果情報と比較すべき前記既登録計測結果情報が、前記既に記憶済みの前記計測結果情報のうち、最も計測数値が大の情報である最大計測結果情報であり、
この最大計測結果情報と、前記マッサージ動作後の前記計測結果情報との差分情報に基づき浮腫の有無を判断することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の浮腫改善装置。
【請求項6】
前記計測結果情報を記憶するときに、その計測時刻情報と関連付けて記憶する構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の浮腫改善装置。
【請求項7】
前記マッサージ部が前記マッサージ動作をするときに、血圧測定を行い、この血圧測定結果が、前記マッサージ動作の前後の前記計測部による前記計測結果情報と関連付けて記憶されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかの記載の浮腫改善装置。
【請求項8】
使用者の身体の一部に対して、少なくとも、マッサージ動作を行うマッサージ部と
前記使用者の身体の状態を計測する計測部と、を有し、
前記計測部は、少なくとも、前記マッサージ部の前記マッサージ動作の前後に前記計測を行い、その測定結果情報を記憶し、
前記マッサージ動作後の前記計測結果情報を、既に記憶済みの前記計測結果情報である既登録計測結果情報と比較して、使用者の身体の浮腫状態が改善したか否かを判断する構成となっていることを特徴とする浮腫改善方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−65805(P2012−65805A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212545(P2010−212545)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】