説明

浴用剤組成物

【課題】入浴中のあたたまり感に優れる浴用剤組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)炭酸ガス発生物 50〜95質量%、
(B)脂肪酸 0.05〜1質量%、
(C)脂肪酸グリセリド、及び
(D)非イオン界面活性剤
を含有し、成分(B)及び成分(C)の合計含有量が組成物中の0.1〜10質量%であり、かつ(C)/(B)(質量比)が1〜100である浴用剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浴用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガス発生物を配合した入浴剤が、血行促進効果に優れ、風呂上りの湯冷めを惹起し難いことは知られている(特許文献1参照)。血行促進によるあたたまり感以外に肌に対する感触を向上させるために、炭酸ガス発生物に油性成分を配合した入浴剤(特許文献2参照)や、炭酸ガス発生物に脂肪酸エステルを60%以上含む油性成分及び非イオン界面活性剤を配合した入浴剤(特許文献3参照)や、炭酸ガス発生物、炭酸ガスの油相/水相の分配比を1.1以上とする油性成分、水溶性高分子及び非イオン界面活性剤を配合した浴用剤組成物(特許文献4)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−70609号公報
【特許文献2】特開昭63−93711号公報
【特許文献3】特開平2-115116号公報
【特許文献4】特開2005−97128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年の「ぬるめの湯に入浴することが健康上好ましい」という情報の広がりや節約志向や環境配慮の傾向に伴い、36〜38℃といった低温での入浴を行う家庭が増えている。しかしながら、このようなぬるめ入浴では入浴中のあたたまり感に物足りなさを感じる人も多かった。
【0005】
ところが従来の浴用剤は、入浴後に感じる身体のポカポカ感や湯冷め防止に対して効果を奏するよう血行促進によるあたたまり感に着目し設計されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、新たに入浴中のあたたまり感向上に着目して鋭意検討を重ねた結果、炭酸ガス発生物を含む浴用剤組成物に対し特定量の脂肪酸と脂肪酸グリセリド、更に非イオン界面活性剤を配合すると、入浴中に浴水から感じるあたたまり感が、浴用剤組成物を浴水に投入した直後から顕著に向上し、ぬるめの湯に入浴した場合でも優れたあたたまり感が奏される浴用剤組成物が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)炭酸ガス発生物 50〜95質量%、
(B)脂肪酸 0.05〜1質量%、
(C)脂肪酸グリセリド、及び
(D)非イオン界面活性剤
を含有し、成分(B)及び成分(C)の合計含有量が組成物中の0.1〜10質量%であり、かつ(C)/(B)(質量比)が1〜100である浴用剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の浴用剤組成物を用いて入浴すれば、入浴中のあたたまり感が浴水に浴用剤組成物を投入した直後から顕著に向上する。また、脂肪酸特有の匂いやスカムの発生も抑えられており好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の浴用剤組成物において、成分(A)炭酸ガス発生物は、浴用剤組成物を浴湯に投入したとき炭酸ガスを発生させるものであれば何れでも良いが、酸と炭酸塩とを組み合せたものが好ましい。酸としては、有機酸及び無機酸の何れでも使用できるが、水溶性で固体のものが好ましく、この中でも、例えばコハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸などの有機酸が特に好ましい。とりわけ、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸が良く、フマル酸が特に好ましい。無機酸としてはホウ酸、メタケイ酸、無水ケイ酸等が挙げられる。また炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウムなどが好ましい。これらの酸及び炭酸塩はそれぞれから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0010】
炭酸ガス発生物の含有量、例えば酸及び炭酸塩の合計含有量は、優れた入浴中のあたたまり感を得る観点から、浴用剤組成物中に50〜95質量%であり、さらに75〜95質量%が好ましい。浴湯のpHが5〜7(0.01質量%水溶液)となるようにすれば浴湯中の炭酸ガスを溶解した状態で存在せしめることができることを考慮すると、好ましい炭酸塩と酸の含有割合は質量比で1:0.9〜1:1.5、より好ましくは1:1〜1:1.3である。
【0011】
本発明の浴用剤組成物において、成分(B)脂肪酸の種類は特に制限されるものではないが、炭素数4〜24の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸であると良い。このような脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、パルミトレイン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。特に36℃にて液体の性質を有する脂肪酸が好ましい。36℃で液状の成分(B)としては、融点が36℃未満の脂肪酸単品であっても良いが、融点が36℃以上の脂肪酸と融点が36℃未満の脂肪酸とを適宜混合することで36℃で液体の性質を有するよう調製したものであっても良い。このような脂肪酸を用いることにより、浴用剤組成物を浴水へ添加した際の分散性が優れているため入浴中のあたたまり感が顕著に向上し、好ましい。
成分(B)の含有量は、優れた入浴中のあたたまり感を得る観点から、浴用剤組成物中に0.05〜1質量%であり、さらに0.1〜0.9質量%、特に0.2〜0.8質量%が好ましい。このような量で含有させることで入浴中のあたたまり感が十分得られ、特有の匂いが発生することもなく好ましい。
【0012】
本発明の浴用剤組成物において、成分(C)脂肪酸グリセリドを成分(B)に対して特定の割合で含有させることにより、成分(B)を浴湯中に均一に分散させることができ、その結果優れたあたたまり感が得られる。また、脂肪酸由来のスカムの発生を抑えることができ好ましい。
成分(C)脂肪酸グリセリドとしては、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドが挙げられる。このうち、成分(B)を浴湯中に均一に分散させ、入浴中のあたたまり感向上効果が得られる点から、トリグリセリドが好ましい。なお、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドを構成する脂肪酸に制限はないが、例えば炭素数2〜24の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸、好ましくは炭素数4〜18の飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸である。特に、成分(C)は36℃で液状であると好ましく、このような成分(C)としては、融点が36℃未満の脂肪酸グリセリド単品であっても良いが、融点が36℃以上の脂肪酸グリセリドと融点が36℃未満の脂肪酸グリセリドとを適宜混合することで36℃で液体の性質を有するよう調製したものであっても良い。このような脂肪酸グリセリドを用いることにより、浴用剤組成物を浴水へ添加した際の分散性が優れているため入浴中のあたたまり感が顕著に向上し、好ましい。
【0013】
成分(B)と成分(C)の合計含有量は、入浴中のあたたまり感向上効果の点から浴用剤組成物中0.1〜10質量%であり、さらに0.2〜8質量%が好ましい。成分(C)と成分(B)の質量比(C/B)は、1〜100であり、さらに1〜50が好ましい。成分(B)及び(C)の合計量と比率がこの範囲であれば浴水中での脂肪酸の均一分散ができ、入浴中のあたたまり感が顕著に向上する。
【0014】
本発明の浴用剤組成物において、成分(D)非イオン界面活性剤は、浴用剤組成物を浴湯に投入したときに、成分(B)及び(C)を浴湯中に均一に分散させる作用を有する。非イオン界面活性剤は1種でも良いが2種以上用いることにより、浴用剤組成物の均一分散性及び経時的な分散安定性を維持できるため好ましい。
【0015】
用いられる非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上を組み合せて配合すればよいが、特にポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤と、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤を組み合せるのが特に好ましい。
【0016】
これら成分(D)の本発明浴用剤組成物中の含有量は、均一分散性及び経時的な分散安定性の点から合計で0.01〜20質量%、特に0.1〜10質量%が好ましい。
【0017】
本発明の浴用剤組成物は、さらに、浴用剤組成物を浴湯中に投入した際に成分(B)や成分(C)の分散性を高め、入浴中のあたたまり感をより向上させる点、さらには肌感触向上の点から水溶性高分子を含有させても良い。当該水溶性高分子としては、分子量200〜20000のポリエチレングリコール、デキストリン、炭素数10〜40の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテル及び/又はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数1〜5のスルホアルキルで修飾された多糖類、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、及びメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等の水溶性非イオン性セルロースエーテル、カチオン化セルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース等のイオン性セルロース、グアーガム、ヒドロキシエチルグアーガム、メチルグアーガム、エチルグアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、スターチ、ヒドロキシエチルスターチ、メチルスターチ、エチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルスターチ及びヒドロキシプロピルメチルスターチが挙げられる。このうち、肌感触及び浴用剤組成物を錠剤、顆粒等の固形状とした場合の保形性の点で、分子量6000〜20000のポリエチレングリコール及びデキストリンが特に好ましい。
【0018】
これらの水溶性高分子の本発明浴用剤組成物中の含有量は、1〜25質量%、さらに2〜20質量%、特に2.5〜20質量%、殊更5〜20質量%であるのが好ましい。
【0019】
本発明の浴用剤組成物には、さらに通常浴用剤に配合されている公知の浴用剤原料を本発明の効果を害さない範囲で配合することができ、例えば塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、ポリリン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸鉄、燐酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硼酸、メタ珪酸、無水珪酸等の無機塩類;ソウジュツ、ビャクジュツ、カノコソウ、ケイガイ、コウボク、センキュウ、橙皮、トウキ、ショウキョウ末、ニンジン、ケイヒ、シャクヤク、ハッカ葉、オウゴン、サンシシ、ブクリョウ、ドクカツ、ショウブ、ガイヨウ、マツブサ、ビャクシ、ジュウヤク、リュウノウ、サフラン、オウバクエキス、チンピ、ウイキョウ、チンピ末、カミツレ、メリッサ、ローズマリー、マロニエ、西洋ノコギリ草、アルニカ等の生薬類;エタノール、ステアリルアルコール、イソプロピルアルコール、セチルアルコール、ヘキサデシルアルコール等のアルコール類;グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール類;酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、イオウ、鉱砂、湯の花、カゼイン、中性白土、サリチル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、卵黄末、イリ糠、雲母末、脱脂粉乳、殺菌防腐剤、保湿剤、金属封鎖剤、香料、色素、その他製剤上必要な成分などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明の浴用剤組成物は常法に従って製造することができ、その形態は粉末、顆粒、粒状、ブリケット錠、錠剤、錠剤と液体の2剤型等、何れの形態であっても良い。
【実施例】
【0021】
実施例1〜5及び比較例1〜6
表1及び表2記載の配合の浴用剤を常法に従い製造した。
【0022】
<評価方法>
(1)入浴中のあたたまり評価
38℃の温湯25Lに片腕を沈めた後、浴用剤12.5gを添加し、添加直後のあたたかさについて、下記の基準で評価し5人の平均値を評価点とした。なお、均一分散性が著しく悪い場合は、浴用剤組成物として不適であるため、あたたまりの評価を実施しなかった。
【0023】
4:とてもあたたかく感じる
3:あたたかく感じる
2:ややあたたかく感じる
1:変化なし
【0024】
(2)均一分散性
○:良好な均一分散性
×:均一分散せず
(3)水面のスカムの発生
○:スカムが発生せず
×:スカムが発生する
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
表1及び表2から明らかなように、本発明の浴用剤組成物を用いると、良好な均一分散性が達成され、浴用剤組成物を添加した直後から高いあたたまり感が得られた。また、本発明の浴用剤組成物は浴水中に添加したときにスカムの発生がなく、良好な浴用剤組成物であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)炭酸ガス発生物 50〜95質量%、
(B)脂肪酸 0.05〜1質量%、
(C)脂肪酸グリセリド、及び
(D)非イオン界面活性剤
を含有し、成分(B)及び成分(C)の合計含有量が組成物中の0.1〜10質量%であり、かつ(C)/(B)(質量比)が1〜100である浴用剤組成物。
【請求項2】
成分(C)がトリグリセリドである請求項1記載の浴用剤組成物。
【請求項3】
成分(D)が2種以上の非イオン界面活性剤である請求項1又は2記載の浴用剤組成物。

【公開番号】特開2010−215551(P2010−215551A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62893(P2009−62893)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】