説明

海水からのCO2ガスの電気透析分離

【課題】CO2の分離のためよりコンパクトなシステムを提供する。
【解決手段】BPMED装置の中に処理溶液と電極溶液とを流すことと、処理溶液が酸性化および塩基性化され、溶解されたCOが、生成されるように電圧を印加することと、装置から処理溶液を流すことと、処理溶液からCOを脱着することとを含む。海洋からCOを脱着する方法は、BPMED装置の中に海水と電極溶液とを流すことと、溶解されたCOが、生成されるように電圧を印加することと、装置から海水を流すことと、海水からCOを脱着することとを含む。脱塩された溶液とCOガスとを産出する方法は、1つ以上の3コンパートメントセルを含むBPMED装置の中に処理溶液と電極溶液とを流すことと、処理溶液が、酸性化、塩基性化、および脱塩されるように電圧を印加することと、装置から処理溶液を流すことと、処理溶液からCOを脱着することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国国防総省の一部局であるDARPAによって認められた契約HR0011−10−C−0147号の下で、米国政府の支援で行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
大気二酸化炭素(CO)の濃度は、上昇し続けている。大気COの濃度は、毎年約2パーツ・パー・ミリオン(ppm/yr)の速度で上昇している。大気中のCOの濃度は、約385ppmである。
【0003】
世界の海洋は、長い間、大気COを吸収したり、放出したりしてきている。大気COは、海洋の水に溶解し、海水と反応して炭酸を形成する。次に、炭酸が、水素イオン(H)を放出し、重炭酸イオン(HCO)および炭酸イオン(CO−2)を形成する。溶解されたCO、HCO、およびCO−2の相対分率を決定する海水のpHは、典型的には、約8.3であり、海水に溶解された全炭素の大部分が、HCOの形態であることを意味する。海水中のCOの体積濃度は、比較的に、大気中のものよりもかなり高く、空気1リットル中に存在する量よりも約100倍も多くの量のCOが、海水1リットル中に存在する。
【0004】
混合気体の流れからCOを分離する技術、例えば、大気からCOを分離することは、典型的には、捕獲、および脱着/再生の二段階のプロセスを含む。最初に、気体は、混合気体流におけるCOガスと反応する「捕獲前水溶液」と接触させられ、それから、「捕獲後溶液」と呼ばれるものの中にCOを「捕獲」する。次に、純粋なCOガスの流れが、COが豊富な捕獲後水溶液から脱着されると同時に、さらなる捕獲サイクルのために再使用されることが出来る捕獲前溶液に捕獲後溶液を再生することが出来る。
【0005】
捕獲前溶液は、COが捕獲前溶液を用いて分離される混合気体流と接触する構造物である「接触器」に含有される。水酸化カリウム(KOH)または水酸化ナトリウム(NaOH)などの水酸化物捕獲前水溶液、炭酸カリウム(KCO)または炭酸ナトリウム(NaCO)などの炭酸塩捕獲前水溶液、および炭酸水素カリウム(KHCO)または炭酸水素ナトリウム(NaHCO)などの重炭酸塩捕獲前水溶液を含む様々な捕獲前溶液が存在する。例えば、煙道ガスからCOを除去するために、ガス流を洗浄する用途に使用されるモノエタノールアミン(MEA)などの他の捕獲前溶液が公知である。水酸化物/炭酸塩/重炭酸塩の捕獲前溶液へのCOガスの捕獲は、例えば、水酸化物(KOHまたはNaOH)捕獲後溶液、炭酸塩(KCOまたはNaCO)捕獲後溶液、および/または炭酸水素カリウム(KHCO)または炭酸水素ナトリウム(NaHCO)の捕獲後溶液の混合物からなるより酸性の捕獲後溶液に、元々の捕獲前溶液を転換する。
【0006】
COの捕獲および脱着/再生の後、分離後のCOは、例えば、地理的に隔離されるか、またはコンクリートなどの有用な製品に組み込まれることが出来る。
【0007】
混合気体流から分離されたCOからの液体炭化水素燃料、例えば、ガソリン、ディーゼル、またはJP−8の生成は、遠隔の現場作業において特に重要であり得る。しかしながら、従来のCO分離ために必要とされる接触器は、サイズが大きいので、液体炭化水素燃料を遠隔の現場で生成することは、これまでのところ実現されていない。
【0008】
バイポーラ膜電気透析(BPMED)は、他の化学物質を添加することなく、酸と塩基とに塩類水溶液を転換するために使用されることが出来る。BPMEDデバイスは、電圧が、イオン交換膜のスタックを横断して印加された時に、溶液中のイオン種を分離するためにイオン交換膜を使用する。周囲圧力よりも高い圧力における炭酸塩水溶液のBPMEDは、捕獲後溶液からCOガスを効率的に脱着することを示された。大気中ではCOの濃度が、非常に低い(385ppm)ので、大量の空気が、大気から炭酸塩水溶液システムにCOを捕獲するように処理されなければならない。これが、遠隔の場所での配備などの特定の用途に対して必要とされるほどにはコンパクトではないことがあり得るシステムという結果になる。海洋の表面は、実質的に、接触器として働くので、海面から直接的にCOを脱着することは、接触器の必要性を排除し、COの分離のためのよりコンパクトなシステムをもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施形態のプロセスによる処理溶液からCOを抽出するために使用される、「バッチ」モードで動作されるBPMEDシステムの概略図である。
【図2】図2は、実施形態のプロセスによる処理溶液からCOを抽出するために使用される、「貫流」モードで動作されるBPMEDシステムの概略図である。
【図3】図3は、「2コンパートメント」のBPMEDスタックを使用して処理溶液からCOガスを生成するために使用されるBPMED膜スタックの動作の概略図である。
【図4】図4は、「3コンパートメント」のBPMEDスタックを使用して処理溶液からCOガスを生成するために使用されるBPMED膜スタックの動作の概略図である。
【図5】図5は、電気透析を使用して、処理溶液からCOガスを分離する実施形態のプロセスをテストする実験のために使用されるBPMEDシステムの概略図である。
【図6】図6は、電気透析を使用して、処理溶液からCOガスを分離する実施形態のプロセスをテストする実験のために使用されるBPMEDシステムの概略図である。
【図7】図7は、様々な酸性溶液の最終的なpH値と、真正の海水に対する流速とにおけるエネルギー消費に関するグラフである。
【図8】図8は、様々な酸性溶液の最終的なpH値と、真正の海水に対する流速とにおけるCO分離の効率に関するグラフである。
【図9】図9は、様々な処理溶液に関する様々な酸性溶液の最終的なpHで、流速3.1lpmにおいて、COを分離する効率に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記で考察されたように、液体炭化水素燃料を遠隔の現場で生成するための開発を行う必要性がある。大気からCOを捕獲して再生し、それから、液体炭化水素燃料を含む様々な有用な製品に組み込まれることが出来るような試みが、行われている。しかしながら、大気からCOを捕獲して再生するためには、本質的に、大きい「接触器」を使用して、大量の空気が、処理されなければならず、システムが、一部の用途において必要とされるほどにはコンパクトではないことがあり得るという結果になる。
【0011】
これらの不利な点は、バイポーラ膜電気透析(BPMED)を使用して、処理溶液から直接的にCOを獲得する例示的な実施形態によって克服されることが出来る。処理溶液は、「理想的」な(二価カチオンのない)海水溶液、もしくは理想的ではない(海洋において見つけられるような、二価カチオンを有する)海水溶液、逆浸透(RO)ブライン溶液、または溶解されたCOガス、もしくはHCOイオンあるいはCO−2イオンを含有するその他任意の溶液のいずれかであり得る。理想的ではない海水溶液は、Instant Ocean(登録商標)Sea Saltなどの二価カチオンを含有する溶液から作られるか、または海洋から取られた真正の海水であるかのいずれかであってよい。海水溶液である処理溶液の場合、主に重炭酸イオンの形態である、海水1リットル中のCOの量が、空気1リットル中の量の約100倍であることだけでなく、海水から直接的にCOを抽出することは、海水システムにおいては、海洋の表面が、1つの大きな接触器として効果的に働くので、空気からCOを捕獲するときに固有の接触器の必要性を排除する。これが、空気からCOを取得するシステムと比較して、海水からCOを取得するシステムの設置容積を非常に減少させる。さらに、海水からCOを取得するシステムに関して、電極洗滌溶液以外の外部の化学物質は、必要とされない。海水および電力だけが、システムへの入力である。
【0012】
例示的な実施形態が、どのように働くかを理解するためには、最初に、BPMEDを理解することが、必要である。BPMEDは、酸と塩基とに塩類水溶液を転換する。現在利用可能なBPMED装置は、少なくとも1つの電気透析セルで作成された電気透析膜スタックを含む。電気透析セルは、電位がセルを横断して印加された時に、水素イオン(H)と水酸化物イオン(OH)への水の電離が生じるような、少なくとも1つのバイポーラ膜(BPM)を含む。
【0013】
BMPは、アニオン交換層と共に積層されたカチオン交換層から形成されるだけでなく、カチオン層とアニオン層との間の接合層から形成される。水は、接合層の中に拡散し、その解離定数に従った、HイオンおよびOHイオンとの通常の平衡に到達する。典型的には、BPMは、アニオン交換層が、BPMED装置のアノード(正極)端に面し、カチオン交換膜が、装置のカソード(負極)端に面するように配向される。この配向は、電位が膜スタックを横断して印加された時に、OHイオンがアニオン交換層を横断して運ばれ、Hアニオンがカチオン交換層を横断して運ばれることを可能にする。同時に、投入された塩類溶液の構成要素であるカチオンとアニオンとは、アニオン交換膜(AEM)、カチオン交換膜(CEM)、またはそれら2つの何らかの組み合わせのいずれかであるイオン交換膜を介して、電位を印加された条件下で分離される。次に、BMPによって「産出」されたOH(H)イオンは、投入された塩の親酸と親塩基とを含有する塩基(酸)性産出溶液を産出するように、投入された塩類溶液から分離されたカチオン(アニオン)と組み合わされる。1つ以上の「3コンパートメント」セルから構成される膜スタックなどの膜構成に従って、希釈された塩類溶液もまた、酸性の産出溶液および塩基性の産出溶液に加えて、産出物として産出されてもよい。
【0014】
図1および図2は、例えば、海水溶液またはROブラインなどの処理溶液からCOを抽出するために使用されるBPMEDシステムの概略図を示す。システムは、BPMED膜スタックを含むBPMED装置101/201を含む。膜スタックは、1つ以上の2コンパートメントセル(例えば、図3)、または1つ以上の3コンパートメントセル(例えば、図4)のいずれかからなることが出来る。
【0015】
図1は、「バッチ」モードで動作されるBPMEDシステムを描く。図2は、「貫流」モードで動作されるBPMEDシステムを描く。「バッチ」モードで動作されるBPMEDシステムと、「貫流」モードで動作されるBPMEDシステムとの間の差は、これらの図を参照して以下で記載される。
【0016】
図1は、実施形態のプロセスに従った、処理溶液からCOを抽出するために使用される、「バッチ」モードで動作されるBPMEDシステムの概略図である。バッチモードにおいては、処理溶液が、2回以上、装置を通って流される。海水の場合、海水は、海洋から装置の中に直接的にポンプで汲み上げられ、記載されたプロセスのうちの1つを受けるために、複数回、装置101を通ってポンプで流され、そして、海に直接的に戻されてもよい。
【0017】
図1のBPMEDシステムは、1つ以上の2コンパートメントセル(図3を参照のこと)、または1つ以上の3コンパートメントセル(図4を参照のこと)のいずれかを有する膜スタックを有するBPMED装置101を含む。BPMED装置101が、1つ以上の2コンパートメントセルを有する膜スタックを含むシステムにおいて、海水溶液またはROブラインなどの処理溶液が、溶液タンク104および105に装填される。処理溶液の「バッチ」が、タンクに装填されると、次に、溶液は、タンク104および105からBPMED装置101の中にポンプで流される。電圧が、電力供給源(図示せず)によってBPMED装置101に印加される。電極溶液103もまた、BPMED装置101のいずれかの端において、装置を通って流され、電極溶液103は、BPMED装置101の電極だけを横断して流される。処理溶液が、BPMED装置101を通って流れると、BPMEDが、生じる。処理溶液は、膜スタックの酸性化される溶液のコンパートメントにおいて酸性化され、膜スタックの塩基性化される溶液のコンパートメントにおいて塩基性化される(図3を参照のこと)。2つの溶液流が、装置101を離れ、酸性化された溶液流は、タンク105の中に流れ、塩基性化された溶液流は、タンク104の中に流れる。
【0018】
BPMED装置101が、1つ以上の3コンパートメントセル(図4を参照のこと)を有する膜スタックを含むシステムにおいて、全般的に同じプロセスが、生じる。処理溶液が、装置101の中に流され、電極溶液103が、いずれかの端において、電極を横断して装置101の中に流され、電圧が、電極供給源を使用して印加され、そして、処理溶液が、装置101を通って流れると、BPMEDが、生じる。2コンパートメントセルに関しては、処理溶液は、膜スタックの酸性化される溶液のコンパートメントにおいて酸性化され、膜スタックの塩基性化される溶液のコンパートメントにおいて塩基性化される(図3を参照のこと)。さらに、3コンパートメントセルの場合において、処理溶液は、膜スタックの第3のコンパートメントにおいて脱塩される(図4を参照のこと)。それから、3つの溶液流が、装置101を離れ、酸性化された溶液の流れ、は、タンク105の中に流れ、塩基性化された溶液の流れは、タンク104の中に流れ、そして、脱塩された溶液は、第3のタンク(図示せず)の中に流れる。脱塩された溶液は、例えば、飲料水として使用されてもよい。
【0019】
一実施形態において、酸性化された溶液の流れは、装置101から、酸性化された溶液のタンク105には直接的には流ないが、むしろ、最初に、CO脱着ユニット108を通って流れる。CO脱着ユニット108は、COガスがCO脱着ユニット108を通過すると、COガスが、酸性化された溶液から能動的に抽出されることが出来るように、真空ポンプ109に接続される。COが、酸性化された溶液から抽出されると、酸性化された溶液は、CO脱着ユニット108を出て、酸性化された溶液のタンク105に流れる。真空ポンプ109は、抽出されたCOを収集する、タンクなどのCO収集ユニット111に接続されてもよい。システムはまた、酸性化された溶液から抽出されたCOガスの流れを監視するために、CO脱着ユニット108と真空管ポンプ109との間に、CO流量計110を含んでもよい。CO脱着ユニット108と真空ポンプ109とは、2コンパートメントまたは3コンパートメントいずれかのBPMEDユニット101と共に使用されてもよい。
【0020】
一実施形態において、CO脱着ユニット108は、直列した1つ以上の膜接触器(例えば、http://www.liquicel.com/applications/CO2.cfm(2011年6月20日現在)のLiqui−Cel, Carbon Dioxide Removal from Waterを参照のこと)からなる。別の実施形態において、CO脱着ユニット108は、溶液を撹拌する手段、例えば、シャワーヘッド設備を有するタンクである。酸性化された溶液を攪拌し、および/または酸性化された溶液のタンク105における気体の上部空間を混合する他の手段もまた、使用されてもよいことが理解される。
【0021】
別の実施形態において、システムは、酸性化された溶液の流れが、酸性化された溶液のタンク105にBPMED装置101から直接的に流れるように、CO脱着ユニット108を含まない。COガスは、酸性化された溶液のタンク105における酸性化された溶液から受動的に放出し、酸性化された溶液のタンク105に取り付けられたCO収集ユニット115に収集されてもよい。あるいは、システムは、COガスが、酸性化された溶液から能動的に放出されるように、酸性化された溶液において、酸性化された溶液を撹拌する手段、例えば、シャワーヘッド設備または真空ポンプを含んでもよい。能動的に放出されたCOガスは、酸性化された溶液タンク105に取り付けられたCO収集ユニット115によって制御されてもよい。
【0022】
酸性化された溶液および塩基性化された溶液が、BPMED装置101から流れて、酸性化された溶液のタンク105および塩基性化された溶液のタンク104に流れ込むと、酸性化された溶液および塩基性化された溶液は、BPMED装置に戻ってもよい。このようにして、処理溶液は、2回以上、装置を通って流される。
【0023】
一実施形態において、システムは、再結合ユニット114を含む。再結合ユニット114は、例えば、溶液が、BPMED装置を所望の回数通過した後、酸性化された溶液のタンク105および塩基性化された溶液のタンク104から酸性化された溶液および塩基性化された溶液を受け取る別個のタンクであってもよい。酸性化された溶液および塩基性化された溶液が、再結合された時、それらは、再び中和され、そして、海水の場合には、海の中に直接的にポンプで戻されることが出来る。追加の化学物質が、溶液に添加される必要がないので、中和された溶液を海の中にポンプで戻すことは、有害な影響が、ほとんどないか、または全くない。それはまた、システムが、地球の海洋からCOを「洗浄」する方法として使用されることを可能にする。
【0024】
一実施形態において、BPMEDユニット101は、そのユニットを通って酸性化された溶液を定期的に流すことによって湯垢を除去されることが出来る。使用される酸性溶液は、BPMEDプロセスから生じる産出物の酸性溶液であってもよい。このようにして、処理溶液に存在する塩基性化された溶液におけるあらゆる二価のカチオン、例えば、Mg2+およびCa2+から生じるあらゆる湯垢が、酸性溶液との接触を介して定期的にきれいにされる。
【0025】
図2は、実施形態のプロセスによる処理溶液からCOを抽出するために使用される、「貫流」モードで動作されるBPMEDシステムの概略図である。貫流モードにおいては、処理溶液は、1回だけ装置を通って流される。海水の場合、海水が、海洋から装置の中に直接的にポンプで汲み上げられ、記載されたプロセスのうちの1つ受け、そして、海に直接的にポンプで戻される。
【0026】
図2のBPMEDシステムは、図1のBPMEDシステムと同様に、1つ以上の2コンパートメントセル(図3を参照のこと)、または1つ以上の3コンパートメントセル(図4を参照のこと)のいずれかを有する膜スタックを有するBPMED装置201を含む。
【0027】
「貫流」モードで動作されるBPMEDシステムは、「バッチ」モード(図1)で動作されるBPMEDシステムと同様に動作する。処理溶液が、装置201の中に流され、電圧が、印加され、電極溶液203が、いずれかの端においてBPMED装置201の中に流され、そして、溶液が、装置201を通って流れると、BPMEDが、生じる。1つ以上の2コンパートメントセルから構成された膜スタックを有するBPMED装置101の場合において、酸性化された溶液の流れおよび塩基性化された溶液の流れが、装置201を離れる。1つ以上の3コンパートメントセルから構成された膜スタックを有するBPMED装置201の場合において、酸性化された溶液の流れ、塩基性化された溶液の流れ、および脱塩された溶液の流れが、装置201を離れる。
【0028】
バッチモード(図1)で動作されるBPMEDシステムとまた同様に、酸性化された溶液の流れは、酸性化された溶液のタンク205に装置201から直接的に流れることが出来るか、または最初にCO脱着ユニット208を通って流れることが出来るかのいずれかである。CO脱着ユニット208は、COガスが、能動的に抽出されることが出来るように、真空ポンプ209に接続されてもよい。真空ポンプ209は、抽出されたCOを収集する、タンクなどのCO収集ユニット211に接続されることが出来る。システムはまた、酸性化された溶液から抽出されたCOガスの流れを監視するために、CO脱着ユニット208と真空ユニット209との間に、CO流量計210を含んでもよい。あるいは、CO脱着ユニット208は、直列した1つ以上の膜接触器からなってもよく、または溶液を撹拌する手段、例えば、シャワーヘッド設備を有するタンクであってもよい。別の実施形態において、システムは、CO脱着ユニット208を含まず、酸性化された溶液が、酸性化された溶液のタンク205の中に装置201から直接的に流れ、COが、タンク205において受動的に放出されるか、またはタンク205において能動的に放出されるかのいずれであってもよい。受動的に放出されたガスであっても、能動的に放出されたガスであっても、酸性化された溶液のタンク205に取り付けられたCO収集ユニット215によって収集されてよい。
【0029】
「貫流」モード(図2)において動作されるBPMED装置と、「バッチ」モード(図1)において動作されるBPMED装置との間の差は、「貫流」モードにおいて動作されたシステムに関しては、酸性化された溶液および塩基性かされた溶液が、酸性化された溶液のタンク205および塩基性かされた溶液のタンク204の中に装置201から流れると、酸性化された溶液および塩基性かされた溶液は、BPMED装置の中に戻されないということである。このように、処理溶液は、装置201を通って1回流されるだけである。
【0030】
一実施形態において、システムは、例えば、溶液が、BPMED装置を貫流した後、酸性化された溶液のタンク205および塩基性化された溶液のタンク204から酸性化された溶液および塩基性化された溶液を受け取る別個のタンクなどの再結合ユニット214を含む。酸性化された溶液および塩基性化された溶液が、再結合された時、それらは、再び中和され、そして、海水の場合には、海の中に直接的にポンプで戻されることが出来る。追加の化学物質が、溶液に添加される必要がないので、中和された溶液を海の中にポンプで戻すことは、有害な影響が、ほとんどないか、または全くない。それはまた、システムが、地球の海洋からCOを「洗浄」する方法として使用されることを可能にする。
【0031】
「バッチ」モード(図1)で動作されるBPMEDシステムに関して、BPMEDユニット201は、そのユニットを通って酸性溶液を定期的に流すことによって、湯垢が除去されることが出来る。使用される酸性溶液は、BPMEDプロセスから生じる産出物の酸性溶液であってもよい。このようにして、処理溶液に存在する塩基性化された溶液におけるあらゆる二価カチオン、例えば、Mg2+およびCa2+から生じるあらゆる湯垢が、酸性溶液との接触を介して定期的にきれいにされる。
【0032】
図3は、「2コンパートメント」のBPMEDスタックを使用して、海水溶液またはROブラインなどの単一の処理溶液からCOガスを生成するために使用されるBPMED膜スタックの動作の概略図を示す。電圧は、BPM304とAEM305との交互のスタックを横断して印加される。酸性化される溶液のコンパートメント306は、BPM304と、隣接するAEM305との間に形成され、塩基性化される溶液のコンパートメント307は、AEM305と、隣接するBPM304との間に形成される。所与の電気透析スタック308における酸性化される溶液のコンパートメント306および塩基性化される溶液のコンパートメント307の数は、スタック308における電気透析セル309の数の関数である。電気透析装置は、任意の数の電気透析セル309を受け入れるように適合されることが出来る。電気透析スタック308はまた、2つの端膜(図示せず)を含み、BPMEDスタック308のいずれかの端に1つの端膜を含む。これらの端膜のそれぞれが、使用される膜スタックの構成、使用される処理溶液、および使用される条件に従って、BPM、AEM、またはCEMとなり得る。
【0033】
単一の処理溶液301が、電気透析スタック308の全てのコンパートメント306および307を通って流される。一実施形態において、処理溶液301は、海水溶液である。例えば、電気透析装置は、海の船舶上で使用されてもよく、海水が、海洋から直接的に取られ、電気透析装置の中に流されてもよい。あるいは、海水溶液は、Instant Ocean(登録商標)Sea Saltを用いて作成した人工海水溶液などの人工海水溶液であってもよい。あるいは、処理溶液301は、ROブラインなどの濃縮処理溶液であってもよい。電気透析装置の中に流される唯一の他の溶液は、KOHまたはHSO/NaSOなどの電極溶液であり、電極溶液は、電極溶液が、スタック308の各端に配置された電極302および303を横断して流れるように、電気透析スタック308の各端に配置された2つの電極コンパートメント(図示せず)に流される。
【0034】
電極302および303において印加された電圧の下で、AEM305は、負に帯電されたアニオンが、負極303から正極302まで膜を横断して通過することを可能にする。海水溶液の場合において、AEM305を横断したイオンの移動のほとんど全てが、Clイオンの形態である。なぜならば、Clイオンは、海水において高い割合(約546mM)を占めるからである。BPM304は、印加された電圧の下で、HイオンおよびOHイオンに水を効果的に解離させ、Hイオンは、BPM304の中間から負極303に向かって移動させられ、OHイオンは、BPM304の中間から正極302に向かって移動させられる。このプロセスを介して、処理溶液301は、酸性化される溶液のコンパートメント306へのHイオンの移動により、酸性化される溶液のコンパートメント306において酸性化される。処理溶液301はまた、塩基性化される溶液のコンパートメント307へのOHイオンの移動により、塩基性化される溶液のコンパートメント307において塩基性化される。
【0035】
塩基性化される溶液のコンパートメント307から酸性化される溶液のコンパートメント306へ移動させられた各Clイオンのため、Hイオンは、隣接するBPM304の中間から酸性化される溶液のコンパートメント306に移動させられ、OHイオンは、隣接するBPM304中間から塩基性化される溶液のコンパートメント307に移動させられる。このようにして、電気透析装置の動作は、酸性化される溶液のコンパートメント306のpHを減少させ、塩基性化される溶液のコンパートメント307のpHを増加させる。投入から産出までのpHの変化は、処理溶液301の組成と、印加される電流およびシステム効率によって調節されるイオンの移動速度と、装置を通る溶液301の流速とに依存する。
【0036】
COは、酸性化される溶液のコンパートメント306のpHが、減少すると、溶解されたCOへの重炭酸塩(HCO)の転換を介して、酸性化される溶液のコンパートメント306を通って流れる処理溶液301から抽出される。酸性化される溶液のコンパートメント306を通って流れる処理溶液301は、本質的に、HClによって滴定されている。単一の溶液301のpHが、約pH4まで減少させられた時には、約99%のHCOイオンが、COに転換される(例えば、James N. Butler、Carbon Dioxide Equilibria and Their Applications、Addison−Wesley Publishing Company、Menlo Park、CA、1982、p.123、Figure 5.1を参照のこと)。
【0037】
図4は、「3コンパートメント」のBPMEDスタックを使用して、海水溶液またはROブラインなどの処理溶液からCOガスを生成するために使用されるBPMED膜スタック構成411の概略図を示す。電圧が、BPM404、AEM405、およびCEM406の交互のスタックを横断して印加される。図4に示された実施形態において、交互のBPM404、AEM405、およびCEM406が、「3コンパートメント」のBPMEDスタックを形成する。酸性化される溶液のコンパートメント407が、BPM404と、隣接するAEM405との間に形成され、塩基性化される溶液のコンパートメント409が、CEM406と、隣接するBPM404との間に形成され、そして、脱塩された溶液が、AEM405と、隣接するCEM406との間の中央のコンパートメント408において産出される。このように、図4に示された実施形態においては、BPMED膜スタック411は、海水溶液401からCOガスを生成するだけでなく、飲料水として使用されることが出来る脱塩された水も生成する。ROブラインだけでなく、他の塩類水溶液もまた、中央のコンパートメント408において、脱塩された溶液を生成するが、処理溶液401が脱塩される程度は、処理溶液401の流速、印加される電流の密度、およびイオンの移動効率に依存する。
【0038】
所与のBPMEDスタック411における、酸性化される溶液のコンパートメント407、塩基性化される溶液のコンパートメント409、および中央のコンパートメント408の数は、スタック411におけるセル410の数の関数である。BPMED装置は、あらゆる数のセル410を受け入れるように適合されることが出来る。BPMEDスタック411もまた、2つの端膜を含み、BPMEDスタック411のいずれかの端に1つの端膜(図示せず)を含む。各端膜は、膜スタックの構成、ならびに処理溶液、および処理条件に従って、BPM、AEM、またはCEMであってもよい。
【0039】
電圧が、電極402および403において印加された時に、AEM405は、海水である処理溶液401の場合においてはほとんどの場合にClイオンである負に帯電されたアニオンが、負極403から正極402まで膜を横断して通過することを可能にする。BMP404は、印加された電圧の下で、HイオンおよびOHイオンに水を効果的に解離させ、Hイオンは、BPM404の中間から負極403に向かって移動させられ、OHイオンは、BPM404の中間から正極402に向かって移動させられる。CEM406は、NaおよびKなどの正に帯電されたアニオンが、正極402から負極403まで膜を横断して通過することを可能にする。このプロセスを介して、処理溶液401は、酸性化される溶液のコンパートメント407において酸性化され、塩基性化される溶液のコンパートメント409において塩基性化され、そして、脱塩された溶液が、中央のコンパートメント408において生成される。
【0040】
図3に示された2コンパートメント構成に関して、酸性化される溶液のコンパートメント407のpHが減少すると、COが、溶解されたCOへのHCOイオンの転換を介して、酸性化される溶液のコンパートメント407を通って流れる単一の処理溶液401から抽出される。酸性化される溶液のコンパートメント407を通って流れる処理溶液401は、本質的に、HClによって滴定されている。処理の溶液401のpHが、約pH4まで減少させられた時には、約99%のHCOイオンが、COに転換される。
【0041】
図3及び図4において示された処理によって生成された、酸性化された溶液と塩基性化された溶液とは、COガスが、酸性化された溶液から抽出された後に、再結合されることが出来る。酸性化された溶液と塩基性化された溶液とが、再結合された時には、それらは、中和される。海水溶液である溶液301/401の場合において、この再結合された溶液は、そのまま海洋にポンプで戻されることが出来る。追加の化学物質が、プロセスのためには必要とされないので、処理後に再結合された溶液は、追加された化学物質を含有する処理後の溶液が、生態学的に有害であり得るようには、生態学的には有害ではない。
【0042】
図3および図4において示された実施形態に対して、COガスは、酸性化された溶液から再生される。BPM304/404を横断して、酸性化される溶液のコンパートメント306/407の中に入るHイオンの移動により、処理溶液は、酸性化される溶液のコンパートメント306/407において酸性化する。海水50mLのpHをpH8からpH4に低下させることは、海水1リットル当たり2.5mmolのHClの添加に対応する0.025MのHClを5mL必要とする。HCOイオンは、2.2mM〜2.5mMの濃度で海水中に見つけられるので、酸性化を介して、海水中の全てのHCOを転換させることが、海水1リットル当たり49.2mL〜56mLのCOと等しい、海水1リットル当たり約2.2mmol〜2.5mmolのCOを生成する。10−1.536モル/リットル気圧である海水中のCOに対するヘンリーの法則の定数と組み合わされた、海水中のHCOの最初の濃度(2.2mM〜2.5mM)は、HCOから転換された溶解されたCOが、0.076気圧〜0.086気圧の気圧における純粋なCO大気と平衡状態にあることを意味する。従って、純粋なCOの流れを抽出するために、酸性化された溶液は、酸性化された溶液から溶解されたCOガスを抽出するために、真空ポンプを用いてポンプで汲み上げられることが出来る。別の実施形態において、酸性化された溶液は、撹拌され、酸性化された溶液のタンクにおける気体の上部空間が、溶解されたCOガスを抽出するために混合される。別の実施形態において、酸性化された溶液は、溶解されたCOを抽出するために真空ポンプまたはスイープガスを使用する少なくとも1つの膜接触器の上を少なくとも一度通過させられる。あるいは、COガスは、単に、膜接触器に溶液をポンプで汲み上げたり、攪拌したり、混合したり、または流したりすることなく、COガスが、溶液から出てき得るあらゆるレベルにおいて、溶液から受動的に放出されることを可能にされることが出来る。
【実施例】
【0043】
バッチモード(図1)で動作する、図3に示された膜スタック構成を以下の処理溶液からのCOの除去のためのBPMEDの性能を特徴付けるための一組の実験を行うために使用した。脱イオン水、0.5MのNaCl、および2.5mMのNaHCOを使用するが、Mg2+およびCa2+などの二価カチオンを使用することなく調製された「理想的」な海水、Mg2+およびCa2+などの二価カチオンを含むInstant Ocean(登録商標)Sea Saltを使用して調製された「真正」の海水、および2倍のInstant Ocean(登録商標)Sea Saltを使用して調製された「真正」のROブライン。「理想的」な海水から二価カチオンおよび他のイオンを排除することが、Mg2+およびCa2+などの他のイオンの存在による移動効率の低下や、湯垢の除去という追加の効果を伴うことなく、性能を決定することを可能にした。これらの実験に対して、BPMEDユニットおよび膜接触器ユニットという2つの別個のユニットを使用した。2つのユニットは、図5の概略図によって表されるように、時間によって分離した。
【0044】
各実験に対して、CEM端膜を有するBPM−AEM−BPM−AEM型の8セルの2コンパートメント電気透析スタックを使用した。各膜の断面積は、約180cmであった。任意の数であるn個のセルから構成される電気透析スタックが、使用されることが出来、これらの実験において使用される8セルのスタックは、考えられる唯一の構成ではないことが、理解される。さらに、図4に示された構成などの、任意の数であるn個の3コンパートメントのスタックが、代替え的に使用されることが出来ることが、理解される。異なる断面積の膜が、使用されてもよいことも、理解される。
【0045】
実験において、使用されるAEM/CEM/BPMは、Ameridia Corporationから入手可能なNeosepta AMX/C66−10F/BP−1Eであった。電極溶液は、ニッケルの電極を有する2MのNaOHであった。他の製造業者から入手可能な他のAEM/CEM/BPM型が、使用されることが出来ることが、理解される。異なる金属で作られた電極を有する他の濃度の他の電極溶液が、使用されることが出来ることも、理解される。例えば、以下で記載されるように、HSO/NaSO電極溶液を有する、イリジウム−ルテニウムで被覆されたTiで作られた電極が、使用されることが出来る。
【0046】
表1は、行われた異なる実験を要約する。
【表1】

【0047】
表1が示すように、流速3.75lpm、4.5Aの印加電流、25mA/cmの電流密度において「理想的」な海水と「真正」の海水との間で比較を行った(実験1および実験3)。膜接触器502/503においてCOを抽出する前に、電気透析ユニット501から出てくる溶液の任意の混合に関する効果を評価するために、電気透析ユニット501を通って溶液を流すことと、膜接触器502/503を通って溶液を流すこととの間に30秒間の休止を伴って、5lpmおよび6Aの電流(33mA/cmの電流密度)において、追加の実験を行った(実験10)。目的はまた、pHの変化における混合の効果があれば、それを見ることであった。
【0048】
図5は、電気透析ユニット501と膜接触器502/503の組み合わせの流れ図を示すが、簡潔さのために、電解液タンクおよび塩基タンクは、示していない。酸タンク505および塩基タンクをそれぞれ、実験(表1を参照のこと)に従って、「理想的」な海水溶液または「真正」の海水溶液のいずれか5Lで満たした。電解液タンクを2MのNaOH溶液5Lで満たした。次に、海水溶液をBPMEDユニット501に通すが、膜接触器502/503には通さず流し、オフセット値を記録するために、真空ポンプ504を始動させた。一度与えられた体積流量で正確に電気透析ユニット501を通って5Lの海水溶液を流すために必要とされる時間として定義される「貫流」時間の間、BPMEDユニット501を通って海水溶液を流すことによって、海水溶液のpHを約pH4に下げた。これを、「貫流」時間においてpH4に到達するために必要とされる電流を印加することによって行った。
【0049】
電気透析ユニット501に対する電極供給源を切断し、そして、真空ポンプ504を停止することなく貫流時間の直後に、溶液の流れをバイパスモードに切り替え、それにより、海水溶液を膜接触器502および503に向けた。電解液および塩基の流れもまた、貫流時間に到達した後にバイパスモードに転換した。実験10(表1)に関しては、電力供給源を停止した後の30秒間の休止後、溶液の流れを膜接触器502および503に切り替え、酸タンク505において溶液を適切に混合させるために、バイパスモードでシステムを走らせた。
【0050】
CO流量計506を通る産出物に関しては、膜接触器502および503を真空ポンプ504によって既にポンプで汲み出していたので、一旦、流れを膜接触器502および503に切り替えてしまうと、膜接触器502および503によって抽出された全てのCOを記録した。図5に示されたシステムで行った実験の結果が、表2に要約される。実験1(理想的な海水溶液)に対する項目と、実験3(真正の海水溶液)に対する項目とは、理想的な海水溶液と真正の海水溶液との間の差が、あまり大きくなかったことを示す。
【表2】

【0051】
印加電流と流速との異なる組み合わせもまた、調査した(実験2、4〜9)。約4lpmの流速は、膜接触器の抽出効率を最も高くした。従って、3lpm、3.75lpm、4.25lpm、および5lpmなどの約4lpmの流速範囲を、BPMEDプロセスの終わりにおいて、酸性化された溶液において約4のpHを達成するための印加電流の対応する値と共にテストした。3.75lpmの流速と4Aの電流(22mA/cmの電流密度)との組み合わせ(実験2)が、電気透析システムに対して500kJ/molの最小のエネルギー消費を有し、76%の効率(COガスとして抽出されるHCOの形態の投入溶液に存在するCOの割合)を有する。実験2のために使用される条件もまた、0.157lpmの貫流条件において5Lの溶液に対して平均的なCO抽出率を作り出した。3lpmの流速と、4Aの電流(22mA/cmの電流密度)を使用した実験5は、COの抽出の点ではわずかに高い効率性(77%)を作り出したが、流速が遅いことにより貫流時間が増加したので、総エネルギー消費は、増加した(709kJ/mol)。COを抽出するための、海水のBPMEDのために選択された流速と電流とは、3.75lpmと4Aとである必要はなく、表2の結果が示すように、流速と電流との多くの他の組み合わせ(表2に示されていない組み合わせを含む)が、海水からCOを抽出することが出来ることが、理解される。
【0052】
表3は、「理想的」な海水溶液または「真正」の海水溶液ではなく、概ねROのブライン溶液を使用して行われた同様な実験の結果を要約する。多くのROブラインは、海水でみられる濃度のほぼ2倍である濃度を有するので、概ねROのブライン溶液を、Instant Ocean(登録商標)Sea Saltの濃度を2倍にすることによって調製した。
【表3】

【0053】
表3が示すように、ROブライン溶液の場合、システムは、さらに遅い流速で動作するが、より効率的であった。3lpmの流速および7Aの電流(39mA/cmの電流密度)においては、62%の効率と分かった。エネルギー要件は、2.5lpmの流速と5.5Aの電流(31mA/cmの電流密度)とにおいて最も低い。海水溶液に対して見られる滴定(表2)と同様な滴定のためには、ほぼ2倍の電流の大きさを必要とし、ROブラインに対しては、電圧を増加したことにより、抽出されたCO1mol当たりのエネルギー要件が、海水溶液よりも高いこととなる。
【0054】
貫流モードで動作するシステムの性能を特徴付けるために、以下の溶液を使用して実験を行った。脱イオン水、0.5MのNaCl、および2.5mMのNaHCOを使用するが、Mg2+およびCa2+などの二価カチオンを使用することなく調製された「理想的」な海水、Mg2+およびCa2+などの二価カチオンを含むInstant Ocean(登録商標)Sea Saltを使用して調製された「真正」の海水、および2倍のInstant Ocean(登録商標)Sea Saltを使用して調製された「真正」のROブライン。
【0055】
各実験に対して、CEM端膜を有するBPM−AEM−BPM−AEM型の8セルの2コンパートメント電気透析スタックを使用した。各膜の断面積は、約180cmであった。任意の数のセルから構成される電気透析スタックが、使用されることが出来、これらの実験において使用される8セルのスタックは、考えられる唯一の構成ではないことを理解されたい。さらに、図4に示された構成などの、任意の数であるn個の3コンパートメントのスタックが、代替え的に使用されることが出来ることを理解されたい。異なる断面積の膜が、使用されてもよいことも、理解されたい。
【0056】
図6は、使用された実験の構成に関する概略図を示す。システムは、BPMED装置601を含んだ。装置601は、チタン電極を使用したので、酸性の電極溶液602(0.1MのHSO/0.25MのNaSO)を使用した。溶液からCOを能動的または受動的に引き出す他の方法が、使用されることが出来ることが、理解されるが、使用されたシステムはまた、直列した2つの膜接触器603および604だけでなく、酸性化された溶液から抽出されたCOガスの流れを監視するためのCO流量計605も含んだ。システムはさらに、処理溶液がポンプで汲み上げられる投入タンク606と、BPMED装置601から酸性化された溶液の産出物と塩基性化された溶液の産出物とを受け入れるための収集タンク607とを含んだ。
【0057】
最初に、理想的な海水をテストした。全ての実験に対して、酸性溶液に対して3.1lpmの流速を使用し、塩基溶液に対して4.0lpmの流速を使用した。膜接触器は、塩基溶液の流路と比較して酸性溶液の流路において余分の圧力低下を引き起こすので、両溶液の圧力を等しくするために、体積流量のより多い塩基溶液を使用した。電極において、電極溶液602をBPMED装置601の中に流し、投入タンク606から装置601の中に理想的な海水溶液を流した。膜接触器603および604に接続された真空ポンプ(図示せず)をバイパスモードで始動させ、それから、流量計605を通って流れるように切り替えた。定電流モードにおいて手動で電力を装置601の膜スタックに供給した。
【0058】
pH値が定常になると、定常状態の測定値を取り、異なる定電流値において定常状態の測定を行い、全ての他のパラメータを一定に維持した。実験の結果が、表4に示される。
【表4】

【0059】
「貫流」ユニットの使用を介して、定常状態の条件が、達成されることが出来る。これが、酸のpHを調節するために、一定の流速に対する電流を変更することを容易にする。このようにして、電流は、最少のエネルギー量でCOの多くを抽出するように最適化されることが出来る。例えば、表4の結果は、1.5Aの印加電流(8mA/cmの電流密度)において、213kJ/molのCOの投入で0.13lpmのCOを抽出し、2A(11mA/cmの電流密度)において285kJ/molのCOの投入で0.14lpmのCOを抽出したことを示す。
【0060】
次に、「真正」の海水およびROブラインをテストした。3つの異なる流速をテストした。各流速に対して、3つの異なる溶液(理想的な海水、真正の海水、およびROブライン)を、選んだ溶液およびその流速に対して適切な電流を印加することによって、4、5、および6のpH値に近づけるために滴定した。
【0061】
「真正」の海水をテストする実験の結果が、表5に示される。図7は、様々な酸溶液の最終的なpH値と流速とにおけるエネルギー消費を示す、「真正」の海水に対する実験結果のグラフである。
【表5】

【0062】
表5および図7は、真正の海水を用いた実験に対する実験結果を示す。図7は、1)3.1lpm〜4.1lpmの流速範囲内では、溶液の流速は、結果に顕著な影響を与えないことと、2)分離されたCO1mol当たりに消費されるエネルギーを最小化するために最適な最終的なpHは、pH約4.5であることとを示す。図7における最適条件は、高いpH値(pH=約6)において抽出されるCOの量が、より少ないことと、低いpH値においては、投入された海水をpH3に酸性化させるために必要とされるエネルギーをさらに消費するため、CO抽出という点では収穫逓減することとの間のトレードオフに起因する。これはまた、図8に描かれた効率(投入された溶液に含有された総COによって除された抽出されたCO)によって説明される。
【0063】
図9は、3.1lpmの流速に対する異なる溶液(理想的な海水、真正の海水、およびROブライン)に対するCO分離の効率を示す。図9は、分離の効率が、酸性溶液の最終的なpHに依存するが、所与の最終的なpHに対しては、効率は、理想的な海水、真正の海水、およびROブラインに対してほぼ同じであることを示す。
【0064】
本発明における、現在予期されないか、または現在予測されない様々な代替案、改変、変化形、または改善が、当業者によって後に行われてもよく、それらもまた、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BPMED装置の中に処理溶液を流すことと、
前記BPMED装置の中に電極溶液を流すことと、
前記処理溶液が、酸性化および塩基性化され、溶解されたCOが、酸性化された処理溶液において生成されるように、前記BPMED装置に電圧を印加することと、
前記BPMED装置から前記酸性化された処理溶液および前記塩基性化された処理溶液を流すことと、
前記酸性化された処理溶液から前記COを脱着することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記酸性化された処理溶液は、前記脱着がCO脱着ユニットにおいて生じるように、酸性化された溶液のタンクに流される前に、前記CO脱着ユニットを通って前記BPMED装置から流される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸性化された処理溶液は、前記脱着が酸性化された溶液のタンクにおいて生じるように、前記酸性化された溶液のタンクの中に、前記BPMED装置から流される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記BPMED装置の湯垢を取るために、前記BPMED装置を通って戻るように前記酸性化された処理溶液を流すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処理溶液が、ほぼ中性のpHであるように、前記COを脱着した後、前記酸性化された処理溶液と前記塩基性化された処理溶液とを再結合することをさらに含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−13889(P2013−13889A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140125(P2012−140125)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】