説明

浸水検知センサ、及び浸水検知センサを用いた電気転てつ機

【課題】簡単小型な構造で確実に浸水状態を検出し、且つその検出状態を保持しうる浸水検知センサおよび浸水検知センサを用いた電気転てつ機を提供すること。
【解決手段】内部に浸水可能な中空のケーシング12と、ケーシング12内に摺動可能に収納された浮水性フロート15と、浮水性フロート15の浮上方向端部に取り付けられたマグネット14と、ケーシング12内への浸水による浮水性フロート15の浮上時にマグネット14が吸着してその吸着状態を保持し、このマグネット14の吸着時に互いに電気的に離間又は接触する一対の電気接点13A、13Bを有するリードスイッチ13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸水検知センサ、及び浸水検知センサを用いた電気転てつ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、列車の進路を切り替える電気転てつ機が知られている。電気転てつ機は、中央制御指令所(上位装置)からの指令信号に基づいて電動モータ等の駆動力によりトングレールを動作させて線路切替えを行う。
【0003】
電気転てつ機の故障の要因は、必ずしも一様ではなく、種々の要因がある。大別すると、設置場所の環境要因等に起因する故障要因と、設置場所とは関連しないその他の故障要因、例えば上位装置との通信回線の不調等がある。電気転てつ機の保守点検にあたっては、故障要因の態様ごとに切り分けて行うことが効率的であり、且つ経済的である。
設置場所の環境要因等に起因する故障要因としては、例えば、トングレールとストックレールとの間に小石等の物が挟まったり、電気転てつ機内への雨水等の浸水が挙げられる。
現在のところ、電気転てつ機に浸水があったか否かの確認・点検は、列車の乗務員からの線路状況に関する情報や、電気転てつ機の過去の浸水状況に関する情報に基づいて行われている。また、台風等の大雨の後では多数の保安要員を動員して個別に点検を行っている。仮に浸水した電気転てつ機を見逃した場合は、内部装置が錆付いて作動不良を引き起こす可能性があるため、確実な点検が必要である。
しかしながら、電気転てつ機は線路上に多数配置されているため、多数の保安要員を動員して個々の電気転てつ機をひとつひとつ点検する作業は極めて多くの時間と労力を必要とする。
一案として、電気転てつ機自体を防水構造として浸水による不具合を解消しようとする提案がある(例えば、特許文献1参照)。また、別の提案として、浸水センサを取り付けて浸水を検出する技術もある(例えば、特許文献2参照。)
【特許文献1】特開平10−18201号公報
【特許文献2】特開平6−186121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1の電気転てつ機は、防水性に優れているが、防水構造とするための製造コストが大幅に上昇する可能性がある。また、多数の既存電気転てつ機の全てを防水型のものに交換することは相当なコストの負担を強いることになり、現実的ではない。
【0005】
また、特許文献2の浸水検知センサは、接点が水位の上昇/下降に連動してON/OFFするものであるため、浸水状態にあるときは浸水状態にあることを検知することができる。しかし、水が引いて下降した場合、接点は元の位置に自動復帰してしまうので事後的に浸水があったか否かを知ることはできない。この浸水検知センサの動作を保持するためには別途複雑な電気回路を設置しなければならず、構成の煩雑化、工事費の増大は避けられない。
【0006】
本発明の課題は、簡単小型な構造で確実に浸水状態を検出し、且つその検出状態を保持しうる浸水検知センサおよび浸水検知センサを用いた電気転てつ機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明の浸水検知センサは、
内部に浸水可能な中空のケーシングと、
前記ケーシング内に摺動可能に収納された浮水性フロートと、
前記浮水性フロートの浮上方向端部に取り付けられたマグネットと、
前記ケーシング内への浸水による前記浮水性フロートの浮上時に前記マグネットが吸着してその吸着状態を保持し、前記マグネットの吸着時に互いに電気的に離間又は接触する一対の電気接点を有するリードスイッチと、を備えた。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の浸水検知センサにおいて、
前記リードスイッチは、封水構造を有し、前記ケーシング内の前記浮水性フロートの浮上方向上端において前記マグネットに対向する位置に設けられ、導電性の固定接点及びこの固定接点に常時接触する磁性体からなる可動接点を有し、この磁性体からなる可動接点が前記マグネットの磁力により前記固定接点から離間動作する向きで配置されている。
【0009】
請求項3に記載の発明の電気転てつ機は、
請求項1又は2に記載の浸水検知センサが筐体内に設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単小型な構造で確実に浸水状態を検出し、且つその検出状態を保持しうる浸水検知センサおよび浸水検知センサを用いた電気転てつ機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明に実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0012】
[電気転てつ機]
先ず、図1を参照して電気転てつ機1の概要構成を説明する。電気転てつ機1は、列車の進路を切り替える装置である。具体的には、電気転てつ機1は、筐体2の一端側に駆動源としてのモータMを有している。筐体2内には、モータMの駆動力を伝達する伝達機構、減速歯車、転換歯車、動作かん、鎖錠かん(いずれも図示省略)が設けられている。
【0013】
電気転てつ機1は、図1に示すように屋外又は屋内(地下鉄を含む)の線路R上に設置される。
【0014】
[浸水検知センサ]
次に、図2(A)(B)を参照して、浸水検知センサ11の概略構成を説明する。図2(A)に示す浸水検知センサ11は、ケーシング12と、リードスイッチ(磁気近接スイッチ)13と、マグネット14と、浮水性のフロート15と、吸水孔16と、を備えて構成される。
【0015】
ケーシング12は、非磁性体により構成され、内部が中空であり、リードスイッチ13、マグネット14、及びフロート15を収納する。ケーシング12は、例えば、プラスチックにより構成される。また、ケーシング12は、導水孔16を複数個有する。導水孔16は、雨水等をケーシング12内に導水するための貫通孔である。導水孔16により雨水等が導水されると、ケーシング12の内部が浸水される。
【0016】
リードスイッチ13は、いわゆる常閉接点(ノーマルクローズ)型のスイッチであり、ケーシング12内への浸水によるフロート15の浮上時にマグネット14が吸着してその吸着状態を保持し、このマグネット15の吸着時に互いに離間(又は接触)する一対の電気接点である固定接点13A及び可動接点13B(図3参照)を有する。リードスイッチ13は、外囲器内に固定接点13A及び可動接点13Bを封入した封水構造を有し、ケーシング12内のフロート15の浮上方向上端においてマグネット14に対向する位置に設けられている。固定接点13A及び可動接点13Bについては後述する。リードスイッチ13は正常時すなわちケーシング12内への浸水がない場合、ONとなっている。
【0017】
マグネット14は、フロート15の浮上方向端部に取り付けられている。また、マグネット14は、ケーシング12内への浸水によるフロート15の浮上時にリードスイッチ13に吸着した状態で保持される。
【0018】
フロート15は、設置したときの状態で浮上可能にケーシング12内に摺動可能に収納されている。フロート15は、浸水検知センサ11自体を小型化するために、極力軽量であることが好ましく、例えば、発砲スチロール等の材料を用いて構成される。
【0019】
図2(B)に示すように、ケーシング12の上面に貫通孔17が穿孔されている。この
貫通孔17は、浸水検知センサ11の点検を終了した後で、浸水検知センサ11を元の状態すなわちON状態に復帰させるために用いるものである。つまり、ケーシング12内に雨水が浸水し、マグネット14及びフロート15が浮上して固定接点13Aと可動接点13Bとが離間し、この状態が保持されるので、点検終了後に保安員が棒21を貫通孔17に差し込んで、マグネット14及びフロート15を押し下げてもとの位置(図3A参照)に戻すためである。
【0020】
次に、図3(A)(B)を参照して、正常時、浸水時における浸水検知センサ11の構成及び動作を説明する。図3(A)(B)は、図2(A)のA−A断面図である。
図3(A)は、正常時における浸水検知センサ11を示した図である。正常時とは、ケーシング12が浸水していない状態、すなわち、マグネット14及びフロート15が浮上する以前の状態である。この場合、マグネット14はリードスイッチ13から離れており、マグネット14の磁力はリードスイッチ13に作用せず、したがって可動接点13Bは固定接点13Aに接触した状態を維持する。すなわちリードスイッチ13はON状態である。
なお、18Aは固定接点13Aに接続されたリード線である。可動接点13Bは、マグネット14の磁力により開閉動作させる必要があるから磁性体材料が用いられている。リードスイッチ13は可動接点13Bをマグネット14の磁力により固定接点13Aとの間で離間・接触動作させるために、図面上横向きに配置されている。
【0021】
次に、図3(B)を参照して、浸水時における浸水検知センサ11の概略構成を説明する。いま、雨水Qが導水孔16からケーシング12内に入り、ケーシング12の底面から所定水位Sに達したとする。この場合、図3(B)に示すように、フロート15が浮上し、フロート15の浮上方向端部に取り付けられたマグネット14がリードスイッチ13と吸着する。マグネット14がリードスイッチ13と吸着すると、マグネット14の磁力によりリードスイッチ13の可動接点13Bが吸引され、固定接点13Aから引き離される。すなわち、リードスイッチ13がOFFとなる。リードスイッチ13がOFFとなると、リード線18A及び18Bに電気的に接続された上位装置43(図4参照)において警報が出力される。
次に、例えば、雨が止んでケーシング12内の浸水が引いて、水位が下降した場合、マグネット14のリードスイッチ13への吸着状態は依然として保持され、リードスイッチ13のOFF状態が保持される。これは、マグネット14とフローと15の合計の重さとマグネット14の磁力によるリードスイッチ13への吸着力とのバランスを考慮して設計される。
このように浸水がなくなった後でもリードスイッチ13のOFF状態が保持されので、後述する警報により確実に電気転てつ機1内に浸水があったことを知ることができる。
また、このリードスイッチ13のOFF状態の保持動作は、マグネット14の吸着動作による機械的な動作であるため電気的な保持回路を必要としないので構成の簡素化、施工の手間を大幅に軽減できる。
点検が終了した後は、棒21を貫通孔17に挿入し、マグネット14及びフロート15をもとの位置(図3(A))に戻してリセットする。
【0022】
次に、図4を参照して、浸水時に浸水検知センサ11が上位装置43の警報回路(図示せず)を作動させるしくみについて説明する。図4は、線路に多数設置される電気転てつ機1A〜1Cの配線図例を示した図である。電気転てつ機1A〜1Cは、ロック狂い検出回路41A〜41Cと、浸水検知センサ11A〜11Cと、リード線18A〜18Fと、をそれぞれ備える。
【0023】
ロック狂い検出回路41A〜41Cは、トングレール(図示省略)の切り替え動作の後、鎖錠かん(図示省略)がロック(固定)されているのか否かを検出する回路である。ロック狂い検出回路41A〜41Cは、警報接点42A〜42Cをそれぞれ備える。警報接点42A〜42Cは、警報回路を作動させるための接点である。警報接点42A〜42CがON又はOFFすることにより上位装置43の警報が出力される。本実施の形態では、警報接点42A〜42CがOFFした場合、上位装置43の警報回路が作動するものとする。
【0024】
いま、ロック狂い検出回路41Aにより鎖錠かんがロックされていないことが検出されたとする。この場合、警報接点42Aを介して上位装置43の警報が出力される。ここで、警報としては、例えば、上位装置43に備えられている警報ランプ(図示省略)が挙げられ、必要に応じてランプを点滅させる等の注意を喚起する形態を採用する。警報ランプは、電気転てつ機1A〜1Cのそれぞれに対応して上位装置43に備えられている。したがって、多数設置されている電気転てつ機1の中から、鎖錠かんがロックされていない電気転てつ機1A〜1Cのいずれかを確実に特定することができる。
【0025】
図4において、浸水検知センサ11A〜11Cのそれぞれの構成は上述した通りである。浸水検知センサ11A〜11Cは、ロック狂い検出回路41A〜41Cの警報接点42A〜42Cの配線ループのそれぞれに直列に接続されている。リード線18A〜18Fは、図3で説明したリード線18A、18Bに該当する。
いま、例えば電気転てつ機1Aに浸水が発生し、浸水検知センサ11AがOFFになったとする。この場合、リード線18A、18B、及び警報接点42Aを介して上位装置43の浸水警報回路が作動し、浸水表示ランプの点滅等により電気転てつ機1Aに浸水があったことを告知する。このようにして多数設置されている電気転てつ機1A〜1Cの中から、浸水した電気転てつ機1Aを特定することができる。すなわち、電気転てつ機の故障の要因を確実に特定することができる。他の電気転てつ機1B、1Cの浸水検知センサ11B、11Cについても上記同様な動作が行われる。
【0026】
以上、本実施の形態によれば、ケーシング12内への浸水によりフロート15が浮上すると、マグネット14がリードスイッチ13に吸着して吸着状態を保持し、この吸着時にリードスイッチ13の固定接点13Aと可動接点13Bとが離間することにより、上位装置43の警報が作動する。これにより、簡単小型な構造で確実に浸水状態を検出し、且つその検出状態を保持しうる浸水検知センサを提供することができる。
【0027】
また、リードスイッチ13は、封水構造を有し、ケーシング12内のフロート15の浮上方向上端においてマグネット14に対向する位置に設けられ、固定接点13A及び可動接点13Bを有し、可動接点13Bは、マグネット14の磁力により固定接点13Aから離間動作する向きに配置される。これにより、リードスイッチ13をノーマルクローズ型のスイッチとして用いることができる。
【0028】
また、電気転てつ機1は、浸水検知センサ11を備える。これにより、電気転てつ機1に浸水が発生した場合、浸水検知センサ11により浸水を検知するので、電気転てつ機1の故障の要因を確実に特定することができる。
【0029】
また、マグネット14の磁力により吸着状態を保持するので、電気転てつ機1が振動しても、吸着状態を保持することができる。
【0030】
また、浸水検知センサ11は、簡単小型な構造であるので、内部スペースに余裕のない既存電気転てつ機に容易に組み込むことができる。
【0031】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る浸水検知センサ、及び電気転てつ機の一例であり、これに限定されるものではない。
【0032】
例えば、上記実施の形態では、リードスイッチ13をノーマルクローズ型のスイッチとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ノーマルオープン型のスイッチとしてもよい。この場合、マグネット14がリードスイッチ13を吸着した場合、リードスイッチ13の固定接点13Aと可動設定13Bとは接触することとなる。
【0033】
また、上位装置43の警報ランプ及び浸水表示ランプを点滅表示することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、上位装置43の警報ランプ及び浸水表示ランプの色を変化させることとしてもよい。
【0034】
その他、本実施の形態における浸水検知センサ及び電気転てつ機の細部構造及び詳細動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る電気転てつ機の概略構成を示した図である。
【図2】図2(A)は、浸水検知センサの概略構成を示した図である。図2(B)は、ケーシングの上面にある孔を示した図である。
【図3】図3(A)は、通常時の浸水検知センサを示した図である。図3(B)は、浸水時の浸水検知センサを示した図である。
【図4】電気転てつ機の配線図例を示した図である。
【符号の説明】
【0036】
1 電気転てつ機
2 筐体
11 浸水検知センサ
12 ケーシング
13 リードスイッチ
14 マグネット
15 フロート
16 導水孔
17 貫通孔
43 上位装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に浸水可能な中空のケーシングと、
前記ケーシング内に摺動可能に収納された浮水性フロートと、
前記浮水性フロートの浮上方向端部に取り付けられたマグネットと、
前記ケーシング内への浸水による前記浮水性フロートの浮上時に前記マグネットが吸着してその吸着状態を保持し、前記マグネットの吸着時に互いに電気的に離間又は接触する一対の電気接点を有するリードスイッチと、
を備えた浸水検知センサ。
【請求項2】
前記リードスイッチは、封水構造を有し、前記ケーシング内の前記浮水性フロートの浮上方向上端において前記マグネットに対向する位置に設けられ、導電性の固定接点及びこの固定接点に常時接触する磁性体からなる可動接点を有し、この磁性体からなる可動接点が前記マグネットの磁力により前記固定接点から離間動作する向きで配置されている請求項1に記載の浸水検知センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の浸水検知センサが筐体内に設けられている電気転てつ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−19908(P2009−19908A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181101(P2007−181101)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】