説明

浸漬ノズル

本発明は鉄鋼業に、特に、浸漬ノズルを使用するスラブの連続鋳造に関する。
本発明の浸漬ノズルは、底部と、側面の抜け口と、
前記抜け口の排出口の上で、前記ノズルの下部に固定され、円筒形状の面によってその端部で徐々に接合する二つの平行な平面により形成される囲いと、を備え、
前記ノズルは前記囲いの中心に配置され、前記囲いの前記平行な平面と20°〜45°の範囲の鋭角をなす共通の長手軸を有する二つの同様の反対向きに設置された側面の抜け口を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄冶金、特に、鉄冶金による連続鋳造でのスラブ製造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造において、重要な技術課題は、鋳型内での鋼の結晶化の第一段階における樹枝状結晶の形成の際の連なりの破壊である。
【0003】
取鍋から鋳型への移し替えのための浸漬ノズルの使用は、連続鋳造法(一例として、ロシア特許公開公報第2165825号、IPC B22D41/50、2001年4月27日公開 No.12 参照)の明細書で周知である。
【0004】
前記既知の浸漬ノズルの主な問題点は、この場合、実施される技術は多かれ少なかれ、B:h比の低い空間での鋼の鋳造に適応するという事実にある。hは空間の断面の高さ、Bは空間の断面の幅とする。したがって、Bがhよりかなり大きい場合は、前記既知の浸漬ノズルの使用は、鋼の連続鋳造によるスラブ製造時には、効率的ではない。
【0005】
金属の流動方向が、底の閉じた浸漬ノズルから出て鋳型に入るように変えられ、金属が側面の抜け口を通過して方形の鋳型の角に向けられる、連続鋳造のための浸漬ノズル(一例として、ロシア特許公開公報第2148469号、IPC B22D11/10、2000年5月10日公開 No.13 参照)の明細書が周知である。以下の問題点が該既知の浸漬ノズルには内在している。ノズルの側面の抜け口から出る金属の噴流は、鋳型の壁に直接に衝突する。このことは、結晶化した金属の焼結表面層形成の破壊の可能性が増加するといったような好ましいことではない。金属の偶発的な混入の恐れが生じる。金属は、結晶化中の樹枝状結晶の形成への能動的な影響を許さないものである鋳型内では、渦巻いたりはせず、空間の質を損ねる。したがって、前記浸漬ノズルは方形の形状の鋳造のみに使用されるよう意図されている。
【0006】
底部と、円周方向に放射状に配置され、前記浸漬ノズルの長手軸に対して自分自身の長手軸が変位し屈曲する側面の抜け口と、を下部に備えた浸漬ノズルが、周知である。(一例として、ロシア特許公開公報第2167031号、IPC B22D41/50、2001年5月20日公開 No.14 参照)
スラブの連続鋳造において生じる前記の課題の全面的な解決を妨げる問題点は、前記既知の浸漬ノズルに内在している。それらの問題点とは、以下のとおりである。ノズルのデザインは、鋳型の壁への、ノズルから出る金属の噴流の直接的な接触を排除してはいない。それは金属の結晶化の条件に配慮するには極めて好ましくない。前記ノズルの側面の抜け口のデザインは、当該抜け口の高さより下に位置する鋼の集中的な被覆を回転によって取り除く。したがって、鋳型内の溶融している金属の大部分を被覆するようには、回転が原因でなり難い。
【0007】
取鍋から鋳型の中への移し替えのための浸漬ノズルで、底部と、側面の抜け口と、前記抜け口の排出口の上で下部に固定される囲いと、を下部に備えた浸漬ノズルが、周知である。(一例として、ロシア特許公開公報第2236326号、優先日2002年11月4日 参照)
一連の基本的な特徴に基づけば、前記特定の浸漬ノズルは本願の浸漬ノズルに最も類似している。したがって、それは先行技術であると受け取られる。
【発明の概要】
【0008】
前記既知の浸漬ノズルは、Bがhよりかなり大きい場合は、このケースでは、鋳型の中の大量の鋼の被覆が回転によって取り除かれるように、スラブの連続鋳造の際には、効率的に使用することができない、という事実の中に基本的な問題点を抱えている。接続ギアのように鋼を渦巻かせる、二つの囲い付の浸漬ノズルを使用して、鋳型に供給される鋼を渦巻かせる、審査中の特許で検討された提案はB/h(最大2.5〜3)のわずかな超過の範囲、連続鋳造のスラブの主要寸法が特徴的ではない、B/h比が4.4〜7.4またはより大きい値ではない範囲、においては効率的である。
【0009】
本願の浸漬ノズルは、前記既知の浸漬ノズルの明記された問題点から解放されている。本願の浸漬ノズルの使用は、渦巻いている大量の鋼と、比率がB/h比が3よりかなり大きい全範囲の主要寸法のスラブを連続鋳造によって製造する鋳型への渦巻く状態での供給と、の準備を行なう。
【0010】
技術的な成果は、本願において、底部と、側面の抜け口と、前記抜け口の排出口の上で下部に固定される囲いを備えた浸漬ノズルの該囲いは、円筒形状の面によって端部を滑らかにつながれた、二つの平行な平面により形成され、さらに、前記ノズルは前記囲いの中心に位置し、前記囲いの前記平行な平面と鋭角をなす共通の長手軸に沿う、二つの同一で反対向きの側面の抜け口を有するという事実によってもたらされる。さらに、前記鋭角は、20°〜45°とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本願の浸漬ノズルを図1〜4によって図示する。
【図1】前記浸漬ノズルの長手方向の断面を示す。
【図2】図1のA−A断面を示す。
【図3】図1の囲いを伴う前記浸漬ノズルのB−B断面と、作業中における前記鋳型との位置関係を示す。
【図4】数個の浸漬ノズルを使用する場合の前記浸漬ノズルの配置と、作業中における前記鋳型との位置関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
浸漬ノズル1(図1および図2参照)はノズル底部2と、中間の取鍋から鋳型の中へ流れる溶融している金属のための穴3と、前記ノズルの下部に固定される囲い4と、逆向きで共通の長手軸7を有する二つの同一の側面の抜け口5および6(図3参照)と、からなる。前記囲いは、その切断面に沿って、円筒形状の面10および11によって端部が接合される二つの平行な平面8および9からなり、かつ、平行な平面8および9間の距離Hの半分に等しい半径R(図3参照)が形成される。長手軸7は平面8および9に対して鋭角を成す。角α(図3参照)の角度は20°〜45°である。前記浸漬ノズルはスラブ鋳型12に差し込まれる(図3および図4参照)。
【0013】
αが20°より小さい場合は、側面の抜け口の金属の出口から前記平行する平面(図4参照)までの間隔Lの増加が、前記側面の抜け口から出る溶融している金属の流れの運動量の損失の著しい上昇を引き起こし、前記囲いの前記平面に接触する流れにおける回転モーメントの減少に至る。すなわち、前記囲いから共通の鋳型の容量の中への金属の流れの回転は減少する。
【0014】
αが45°より大きい場合は、溶融している金属の流れの、前記側面の抜け口から出る、前記囲いの平面8および9に沿った成分は、著しく減少する。したがって、前記囲い内、および、その後の共通の鋳型の容量内での、金属の流れの回転の回転モーメントが減少する。
【0015】
したがって、どちらの場合(α<20° の場合と α>45° の場合)においても、鋳型の容量のうちの湾曲部に供給される金属をらせん状に流すために使用される前記囲いの効率性は減少する。
【0016】
Bとhの比の大きい幅広のスラブの鋳造の過程において、提案の浸漬ノズルを利用する場合には、数個の前記浸漬ノズルを使用し、さらに、別々のノズルの側面の抜け口の長手軸7は、互いに向かい合って設置される。(図4中の7’と7’’を参照)。そのようにして、鋼の連続鋳造時に、ロシア特許公開公報第2236226号に記載された、接続ギアのように鋼を渦巻かせる技術が実現される。
【0017】
最後に本浸漬ノズルの出願は、制限された鋳型(囲いの内側)で渦巻いている金属の流れ、および、スラブの連続鋳造時に前記鋳型の容量の中への渦巻きながらの金属供給の効果を最大限に活用できる。上記の知識は、その回転において、金属のメニスカスに対する最小限の影響での、直進して前記鋳型の容量に混入する鋼のための環境の創造に貢献し、結晶化金属の長手軸方向(高さ方向)の鋼の激しい流れを、ほとんど完全に取り除き、前記金属の噴流が金属の結晶化表層に衝突することを許さない。本願の浸漬ノズルを使用することによる一連の明記した効果は、高品質の連続鋳造されたスラブの製造のための必要十分条件を創出する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、側面の抜け口と、前記抜け口の排出口の上で下部に固定される囲いを、下部に備えた浸漬ノズルにおいて、
前記囲いは、円筒形の表面によって、端部を滑らかに繋げられている二つの平行な平面によって形成され、さらに、前記ノズルは、前記囲いの中心に位置し、前記囲いの前記平行な平面と鋭角をなす共通の長手軸に沿う、二つの同一で反対向きの側面の抜け口を有することを特徴とする浸漬ノズル。
【請求項2】
前記鋭角は、20°〜45°であることを特徴とする、請求項1に記載の浸漬ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−504416(P2011−504416A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514177(P2010−514177)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001753
【国際公開番号】WO2009/016442
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(510004365)テクコム ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】