説明

消火栓装置

【課題】 扉下降開放式の消火栓装置において、組立作業を容易に行うことができる様にし、又メンテナンス作業を容易に行うことができる様にし、又筐体の奥行き寸法を小さくすることができる様にする。
【解決手段】 筐体2の前面開口部20を下降することで開口させる下降扉19を備えた消火栓装置1において、該筐体2と該下降扉19との間に、該下降扉19の下降により伸長して、該下降扉19の下降に対して抵抗を与えるダンパ25を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、消火栓装置に関し、更に述べれば、消火用ホース等が格納される筐体の前面を下降することにより開口させる下降扉を備えた消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消火栓装置における筐体の前面を開口させる扉の開放方式には種々のものがあるが、従来より知られている方式として、扉が下降することにより筐体の前面を開口させる扉下降開放式のものがある。
【0003】
特開平8−57075号公報(特許文献1)には、その図8及び9に、消火栓箱52の高さ内で上下して、ホース51の引き出し及び消火栓弁54の操作のためのホース引出口55を閉鎖又は開放可能にする扉53を備えた消火栓装置が開示されており、当該消火栓装置において扉53は下降することによりホース引出口55を開口させる構成となっている。即ち、特許文献1には扉下降開放式の消火栓装置が開示されている。
【特許文献1】特開平8−57075号公報
【0004】
上記の如き扉下降開放式の消火栓装置によれば、扉開放時でも、扉が消火栓装置筐体の前方に突出することがないので、例えば監査路の狭いトンネルに設置したとしても、扉の開放が走行車両の邪魔になることはない。
【0005】
又、上記の如き扉下降開放式の消火栓装置によれば、扉を開放させるのに、扉がその自重により落下する力を利用することができるので、その操作を迅速且つ容易に行うことができる。
【0006】
ところで、上記の如き扉下降開放式の消火栓装置においては、その筐体が扉を開放位置で停止させるストッパ機能を有しており、この筐体の損傷を防止する目的で、扉の落下速度を制御するために、従来より一般に、末端にウェイトを吊るしたワイヤの其端を滑車を介して下降扉に係止し、そのウェイトが下降扉の落下動作に対してカウンターウェイトとなる機構、即ち下降扉にカウンターウェイト機構が設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の扉下降開放式の消火栓装置においては、下降扉にカウンターウェイト機構が設けられているために、当該機構の部品点数が多く、組立作業が困難である、又、当該機構に可動部分が多いことから、メンテナンスすべき対象が多く、メンテナンス作業が困難である、又、当該機構における滑車とウェイトを消火栓装置の奥行き方向に前後させた配置とする必要があることから、当該機構が消火栓装置の奥行き方向に厚みの大きなものとなってしまい、結果消火栓装置筐体の奥行き寸法を大きなものとしてしまう、等の問題点が存する。
【0008】
上記事情に鑑み、この発明は、扉下降開放式の消火栓装置において、組立作業を容易に行うことができる様にし、又メンテナンス作業を容易に行うことができる様にし、又筐体の奥行き寸法を小さくすることができる様にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するこの発明について述べれば、それは、筐体の前面開口部を下降することで開口させる下降扉を備えた消火栓装置において、該筐体と該下降扉との間に、該下降扉の下降により伸長して、該下降扉の下降に対して抵抗を与えるダンパを設けたことを特徴とする消火栓装置、である。
【0010】
前記消火栓装置において、該ダンパは、該下降扉の下降の初期から該下降扉の下降に対して抵抗を与えるものとすることができる。
【0011】
前記消火栓装置において、該ダンパは、該下降扉が所定の位置まで下降してから該下降扉の下降に対して抵抗を与えるものとすることができる。
【0012】
前記消火栓装置において、該ダンパは、該下降扉の上昇により縮長し、該下降扉の上昇に対しては抵抗を与えないものとすることができる。
【0013】
前記消火栓装置において、該ダンパは、シリンダと、該シリンダ内部を縮側シリンダ室と伸側シリンダ室に区画するピストンと、該ピストンに接続され、該シリンダから外部に延出されたピストンロッドと、該ピストンに形成され、該縮側シリンダ室と該伸側シリンダ室とを連通させる連通路とを有するものとし、シリンダ其端側の取付部を該筐体の前面パネル背面に取り付け、ピストンロッド延出端側の取付部を該下降扉背面に取り付けるものとすることができ、ここで、該ダンパは、該シリンダ内部がオイルにより満たされているものとすることができ、又、該ダンパを、該シリンダ内部がオイルとガスとにより満たされているものとし、該シリンダ内部にオイル層とガス層が形成されるものとすることができ、又、該ピストンロッド延出端側の取付部を該下降扉に該ピストンロッドの伸縮方向に沿って摺動自在に取り付けるものとすることができ、又、該ダンパは、該ピストンに形成され、該縮側シリンダ室から伸側シリンダ室への流通は許容し、該伸側シリンダ室から該縮側シリンダ室への流通は阻止する逆止流通路、例えば逆止弁を有する流通路を有するものとすることができる。
【0014】
前記消火栓装置において、該筐体は、該下降扉によって開口される該前面開口部を有し、該筐体に着脱自在に取り付けられる前面パネルを有するものとし、該ダンパは該前面パネルと該下降扉との間に設けられるものとし、該前面パネルを、該下降扉と、該下降扉によって開口される該前面開口部と、該ダンパとを含み、該筐体に着脱自在に取り付けられる扉ユニットを構成するものとすることができる。
【0015】
前記消火栓装置において、該筐体は、消火用ホースが内巻きに巻回されて収容されるものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、該筐体と該下降扉との間に、該下降扉の下降により伸長して、該下降扉の下降に対して抵抗を与える該ダンパを設けることで、下降扉の落下速度の制御機構を有しつつも、上記従来例に比すれば、組立作業が容易な消火栓装置を得ることができ、又、メンテナンス作業が容易な消火栓装置を得ることができ、又、筐体の奥行き寸法を小さくすることができる消火栓装置を得ることができる。
【0017】
又、この発明によれば、該ダンパを該下降扉の下降の初期から該下降扉の下降に対して抵抗を与えるものとすることで、該下降扉の下降初期からその落下速度を制御することができ、筐体の損傷を防止することができる。具体的には、例えば、該ダンパをそのシリンダ内部がオイルにより満たされているものとすることで、該ダンパにより該下降扉の下降初期からその落下速度を制御することができる。
【0018】
又、この発明によれば、該ダンパを該下降扉が所定の位置まで下降してから該下降扉の下降に対して抵抗を与えるものとすることで、該下降扉を所定位置までは早く下降させ、所定位置からは速度を制御しつつ下降させることができ、筐体の損傷を防止しつつ、迅速に前面開口部を開口させて、消火作業を行うことができる。具体的には、例えば、該ダンパを、そのシリンダ内部がオイルとガスにより満たされているものとして、そのシリンダ内部にオイル層とガス層が形成されるものとし、そのピストンがガス層を通過する際には該下降扉の下降に対してほとんど抵抗を与えずに、そのピストンがオイル層を通過する際には該下降扉の下降に対して抵抗を与えるものとすることで、該下降扉を所定位置までは減衰力を作用させずに自由落下により早く下降させ、所定位置からは減衰力を作用させて速度を制御しつつ下降させることができる。
【0019】
又、この発明によれば、該ダンパを、該下降扉の上昇により縮長し、該下降扉の上昇に対しては抵抗を与えないものとすることで、該下降扉の下降に対しては抵抗を与えつつも、該下降扉の上昇、即ち復帰に対しては抵抗を与えないものとすることができ、前面開口部を閉口させる復帰作業を容易に行うことができる。具体的には、例えば、該ダンパを、そのピストンが、縮側シリンダ室と伸側シリンダ室とを連通させる連通路、例えばオリフィスに加えて、縮側シリンダ室から伸側シリンダ室への流通は許容し、伸側シリンダ室から縮側シリンダ室への流通は阻止する逆止流通路、例えば逆止弁を有する逆止流通路を有するものとし、該下降扉を下降させる際には、オリフィスのみをピストンの移動を許容する流路とし、下降扉を上昇させる際には、オリフィスに加えて逆止弁を有する逆止流通路をもピストンの移動を許容する流路とすることで、ピストンの伸側への移動には抵抗を与えつつも、ピストンの縮側への移動にはほとんど抵抗を与えないものとすることができ、該下降扉の下降に対しては抵抗を与えつつも、該下降扉の上昇、即ち復帰に対してほとんど抵抗を与えないものとすることができる。
【0020】
又、この発明によれば、該筐体を、該下降扉によって開口される該前面開口部を有し、該筐体に着脱自在に取り付けられる該前面パネルを有するものとし、該ダンパを該前面パネルと該下降扉との間に設けられるものとし、該前面パネルを、該下降扉と、該下降扉によって開口される該前面開口部と、該ダンパとを含み、該筐体に着脱自在に取り付けられる該扉ユニットを構成するものとすることで、該扉ユニットを、該下降扉と、該下降扉によって開口される該前面開口部と、該下降扉の落下速度を制御する機構とを含みつつも、該筐体に対しては一体で着脱自在のものとすることができ、組立作業及びメンテナンス作業が更に容易な消火栓装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明の実施の形態を図1乃至8に基づき説明する。尚、図1はこの発明の消火栓装置全体の正面図、図2はこの発明の消火栓装置における扉ユニットの背面図、図3は同上の扉ユニットの平面図、図4は同上の扉ユニットの側面図、図5は図3の一部拡大図、図6は、この発明の消火栓装置における下降扉の開閉状態を示す扉ユニットの正面図、図7は、この発明の消火栓装置に用いられれるダンパを示し、その2つの類型を示す断面図、図8は、同上の他の2つの類型を示す断面図、図9は、この発明の消火栓装置における他の類型の開閉状態を示す扉ユニットの正面図である。
【0022】
図1はこの発明の消火栓装置1の全体を示している。同図に示される様に、消火栓装置1の筐体2内には消火用の各種機器が格納されている。消火栓装置1は、例えばトンネルの監査路等に設置されるものであり、火災発生時には、筐体2内部に内巻き式に収容されている消火用ホース3を引き出して、その消火用ノズル3aから消火用泡を放出して消火活動を行うことができるものである。
【0023】
筐体2内には、その中央格納部2a内に、消火用ノズル3aを有する消火用ホース3、消火用ホース3が内巻きに収容されるバケット式のホース収容部4、放出点検口5を有するメンテナンス弁6、圧力調整弁7、消火栓弁8、泡原液タンク9、泡原液導入弁10、泡原液導入点検口11aを有する泡原液導入点検弁11等が格納されている。
【0024】
筐体2の前面には、その中央格納部2aを覆う如く、筐体前面に着脱自在に取り付けられる前面パネルの一例としての前面パネル13が取り付けられている。
【0025】
尚、中央格納部2aの側方には、その一方の側に消火器格納部14及び火災報知器等の電気機器格納部15が、他の一方の側に消防隊用給水栓17の格納部18が設けられている。
【0026】
筐体2に着脱自在に取り付けられる前面パネル13は、下降扉19が下降することで開口する前面開口部の一例としての前面開口部20が形成されている。下降扉19が下降し、前面開口部20が開口すると、ホース収容部4のホース引出口4a、図示しない支持部によって支持されている消火用ノズル3a、消火栓弁8が露出する様になっており、即ち、下降扉19を下降させ、前面開口部20を開口させると、消火用ノズル3aを把持して、ホース収容部4のホース引出口4aから消火用ホース3を引き出し、消火栓弁8を開栓する操作ができる様になっている。
【0027】
尚、図1の消火栓装置1はこの発明の一例であり、即ち、この発明は、図1の如き消火栓装置に限定されるものではなく、筐体の前面開口部を下降することで開口させる下降扉を備えた消火栓装置であれば適用は可能である。
【0028】
前面開口部20が形成された前面パネル13は、下降扉19と、下降扉19の上下動をガイドする機構と、下降扉19の下降に対して抵抗を与える機構等が取り付けられ、筐体2に着脱自在の扉ユニット27を構成している。図2乃至図5は扉ユニット27の詳細を示している。同図に示される様に、下降扉19の両側縁には、それぞれに上下に2個、即ち計4個のローラユニット23,23,23,23が設けられており、このローラユニット23,23,23,23は、前面パネル背面13の背面に下降扉19の両側方に位置して設けられた走行ガイド部21,21内に収容されている。従って、下降扉19は、前面パネル13の背面側において、ローラユニット23,23,23,23及び走行ガイド部21,21によって上下動可能となっている。更に、下降扉19の背面側には、前面パネル13と下降扉19との間に2本のダンパ25,25が設けられており、このダンパ25,25は、ピストンロッド25c,25cが、下降扉19の下降に連れて伸側に移動し、下降扉19の上昇に連れて縮側に移動する如く、シリンダ25a,25aの其端側取付部25g,25gが前面パネル13の背面に取り付けられ、ピストンロッド25c,25cの延出端側取付部25h,25hが下降扉19の背面下側に取り付けられている。従って、ダンパ25,25は、下降扉19の下降によりピストンロッド25c,25cが伸長し、下降扉19の上昇によりピストンロッド25c,25cが縮長する様になっている。尚、24は下降扉19が下降した際に戸袋を形成する下降扉収容部であり、26は下降扉19の閉止状態を保持と解除のためのラッチ機構であり、28は前面パネル13の背面に設けられた下降扉19のストッパである。又、30は前面パネル13の背面の四隅に設けられた固定部材であり、この固定部材30は、中央格納部2aの図示しない被固定部材に着脱自在に固定される。
【0029】
ローラユニット23は、直交する2つの水平軸回りのローラ23a,23bを有しており、下降扉19の幅方向に沿う水平軸回りに回転するローラ23aが、前面パネル13の背面とそれと対向する走行ガイド部21における背板部21a内面との間を走行し、ローラ23aよりも小径に形成され、下降扉19の厚み方向に沿う水平軸回りに回転するローラ23bが、下降扉19の側縁とそれと対向する走行ガイド部21における側板部21bとの間を走行する様になっている。これにより、下降扉19を、その前後左右への移動を規制しつつ、上下に移動させることができる様になっており、例えば、消火栓装置1の設置状態において前後左右方向に若干の傾きがあったとしても、下降扉19をスムーズに上下に移動させることができる。尚、走行ガイド部21は、その全長に亘って、下降扉収容部24と一体的に形成される走行ガイドカバー部24a,24aによって覆われており、又、この走行ガイドカバー部24a,24aの背板部は、走行ガイド部21,21における背板部21a,21aも兼ねるものである。
【0030】
図6は下降扉19の開閉状態を示す扉ユニット27の正面図であり、図6(a)が下降扉19の全閉状態を示し、図6(b)が下降扉19の全開状態を示している。図6(a)に示す様に、全閉状態の下降扉19は、前面開口部20を閉鎖する如く上方に位置し、ラッチ機構26によってその状態が保持されており、このときダンパ25,25はそのピストンロッド25c,25cが最縮長位置に位置している。ラッチ機構26のハンドル26aを操作し、下降扉19の閉止状態を解除すると、下降扉19はその自重により落下し、その下降により前面開口部20を開口させる。そして、図6(b)に示す様に、全開状態の下降扉19は、前面開口部20を開口させる如く下方に位置し、ストッパ28,28によって停止されており、このときダンパ25,25はそのピストンロッド25c最伸長位置に位置している。
【0031】
ダンパ25,25は、そのピストンロッド25b,25bが伸長する際、その伸側への移動に対して抵抗が与えられる様に構成されており、従って、下降扉19が下降する際には、その下降に対してダンパ25,25が抵抗を与える様になっており、これにより、下降扉19の下降速度を制御することができる様になっている。
【0032】
図7及び図8は、この発明の消火栓措置に用いられるダンパの4つの類型を示している。尚、4つの類型は、シリンダ25aと、シリンダ25a内部を縮側シリンダ室25dと伸側シリンダ室25eに区画するピストン25bと、ピストン25bに接続され、シリンダ25aから外部に延出されたピストンロッド25cと、ピストン25bに形成され、縮側シリンダ室25dと伸側シリンダ室25eとを連通させる連通路の一例としてのオリフィス25fと、シリンダ其端側取付部25gと、ピストンロッド延出端側取付部25hとを有する点においては共通している。
【0033】
図7(a)のダンパ25−1は、シリンダ25a内がオイル25kにより満たされている類型を示している。この類型のダンパ25−1においては、オリフィス25fを流動するオイル25kによる流動抵抗がピストン25bにその伸側及び縮側への移動の全ストロークに亘って与えられることとなる。従って、この類型のダンパ25−1を消火栓措置1に用いた場合、ダンパ25−1は、下降扉19の下降及び上昇に対してその全ストロークに亘って抵抗を与えることとなり、即ち、下降扉19の下降の初期からその下降に対して抵抗を与えるものである。尚、ダンパ25−1は、下降扉19の上昇に対しては抵抗を与えるものである。
【0034】
図7(b)のダンパ25−2は、シリンダ25a内がオイル25kとガス(単に空気、或いは窒素等でもよい)25mとにより満たされている類型を示している。この類型のダンパ25−2においては、シリンダ25b内にオイル25kの層とガス25mの層とが形成されることとなり、ピストン25bへの流動抵抗は、ガス25mの層を通るときには発生はせず、オイル25kの層をピストン25bが通るときのみに発生することとなり、又、境界25mkを境にして、上方にガス25mの層が形成され、下方にオイル25kの層が形成されることとなるので、ピストン25bが最縮長位置から伸側に移動するときは、流動抵抗のないガス25mの層を通ってからオイル25kによる流動抵抗のあるオイル25kの層を通ることとなる。従って、この類型のダンパ25−2を消火栓装置1に用いた場合、ダンパ25−2は、下降扉19の下降の初期から抵抗は与えずに、即ち先ずは下降扉19をほぼ自由落下させて早く下降させ、次いでピストン25bがオイル25kの層に至ってから、下降扉19の下降に対して抵抗を与えることとなる。このダンパ25−2において、下降扉19の下降に対して抵抗を与えるタイミングは、境界25mkの位置を変えることにより、即ちオイル25kの量を加減することにより所望のものとすることができ、即ち、このダンパ25−2によれば、下降扉19が所定の位置まで下降してから抵抗を与えるものとすることができる。尚、ダンパ25−2も、下降扉19の上昇に対しては抵抗を与えるものである。
【0035】
図8(a)のダンパ25−3は、ダンパ25−1と同様にシリンダ25a内がオイル25kにより満たされているものであるが、更に、ピストン25bに、縮側シリンダ室25dから伸側シリンダ室25eへの流通は許容し、伸側シリンダ室eから縮側シリンダ室dへの流通は阻止する逆止流通路の一例としての逆止弁25nを有する逆止流通路25pを有している類型を示している。この類型のダンパ25−3は、ピストン25bが伸側に移動する際には、逆止弁25nが閉鎖状態にあり、縮側シリンダ室25dと伸側シリンダ室25eとを連通させる流動通路はオリフィス25fのみであるので、ダンパ25−1と同様の作用を呈するが、ピストン25bが縮側に移動する際には、逆止弁25nが開放状態にあり、オリフィス25fに加えて逆止流通路25pも縮側シリンダ室25dと伸側シリンダ室25eとを連通させる流動通路となるので、オイル25kはオリフィス25fに加えて逆止流通路25pを通って、縮側シリンダ室25dから伸側シリンダ室25eに流動することとなり、逆止流通路25pをピストン25bの移動に対して流動抵抗を与えない程度の大きさのものとすることで、ピストン25bの縮側への移動に対して抵抗を与えないものとすることができる。従って、この類型のダンパ25−3を消火栓装置1に用いた場合は、下降扉19の下降に対してはダンパ25−1と同様にその下降の初期から抵抗を与えるものとしつつ、下降扉19の上昇に対しては抵抗を与えないものとすることができる。
【0036】
図8(b)のダンパ25−4は、ダンパ25−2と同様にシリンダ25a内がオイル25kとガス25mとにより満たされており、且つダンパ25−3と同様にピストン25bが逆止弁25nを有する逆止流通路25pを有している類型を示している。従って、この類型のダンパ25−4を消火栓装置1に用いた場合は、下降扉19の下降に対してはダンパ25−2と同様に下降扉19が所定の位置まで下降してから抵抗を与えるものとしつつ、下降扉19の上昇に対しては抵抗を与えないものとすることができる。
【0037】
図9は、ダンパ25,25を下降扉19が所定の位置まで下降してから抵抗を与えるものとした場合の、即ちダンパ25として前記ダンパ25−2又は25−4を用いた場合の、下降扉19の開閉状態を示す扉ユニット27の正面図であり、図9(a)が下降扉19の全閉状態を示し、図9(b)が下降扉19が所定位置まで下降し、ダンパ25,25が下降扉19の下降に対し抵抗を与え始める状態を示している。下降扉19が図9(a)の位置から図9(b)の位置まで下降する間、即ち区間Aを下降する間、下降扉19は、ダンパ25,25による抵抗を受けないので、ほぼ自由落下の状態で下降することとなる。下降扉19が図9(b)の位置まで下降し、更に下降する間、即ち区間Bを下降する間、下降扉19は、ダンパ25,25による抵抗を受けることとなるので、その下降速度が制御されて下降することとなる。従って、ダンパ25,25を下降扉19が所定位置まで下降してから抵抗を与えるものとすることで、下降扉19を先ずはほぼ自由落下の状態でいち早く下降させて、その後下降速度を制御しつつ下降を停止させることができ、下降扉19の開扉操作において、下降扉19を速やかに下降させつつも、緩やかに下降扉19の下降を停止させることができる。
【0038】
尚、図9に示す如くダンパ25,25を下降扉19が所定の位置まで下降してから抵抗を与えるものとする場合に、ダンパ25としてダンパ25−1又は25−3の如きダンパを用いることも可能である。即ち、図示は省略するが、ピストンロッド延出端側取付部25hを下降扉19にピストンロッド25cの伸縮方向に沿って一定範囲で摺動自在に取り付け、下降扉19が閉止状態にあるときは、ピストンロッド延出端側取付部25hを前記摺動の範囲の下端に位置させ、下降扉19を閉止状態から下降させて開口状態にするときに、先ずは、下降扉19の下降とともに、ピストンロッド延出端側取付部25hを前記摺動の範囲の下端から上端に移動させ、この摺動の間は、ピストンロッド25cを延出させずに、即ち下降扉19の下降に対してはダンパ25による減衰力は作用させずに、下降扉19を下降させ、ピストンロッド延出端側取付部25hが前記摺動範囲の上端に至ってから、下降扉19の下降とともに、ピストンロッド25cを延出させて、下降扉19の下降に対してダンパ25による減衰力を作用させる様にすることも可能である。この場合に、下降扉19の下降に対して抵抗を与えるタイミングは、前記摺動の範囲の上端の位置を上下に変えることにより所望のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の消火栓装置全体の正面図である。
【図2】この発明の消火栓装置における扉ユニットの背面図である。
【図3】同上の扉ユニットの平面図である。
【図4】同上の扉ユニットの側面図である。
【図5】図3の一部拡大図である。
【図6】この発明の消火栓装置における下降扉の開閉の状態を示す扉ユニットの正面図である。
【図7】この発明の消火栓装置に用いられれるダンパを示し、その2つの類型を示す断面図である。
【図8】同上を示し、他の2つの類型を示す断面図である。
【図9】この発明の消火栓装置における他の類型の開閉状態を示す扉ユニットの正面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 消火栓装置
2 筐体
2a 中央格納部
3 消火用ホース
3a 消火用ノズル
4 ホース収容部
4a ホース引出口
5 放出点検口
6 メンテナンス弁
7 圧力調整弁
8 消火栓弁
9 泡原液タンク
10 泡原液導入弁
11 泡原液導入点検弁
11a 泡原液導入点検口
13 前面パネル
14 消火器格納部
15 電気機器格納部
17 消防隊用給水栓
18 消防隊給水栓格納部
19 下降扉
20 前面開口部
21 走行ガイド部
21a 背板部
21b 側板部
23 ローラユニット
23a ローラ
23b ローラ
24 下降扉収容部
24a 走行ガイドカバー部
25 ダンパ
25a シリンダ
25b ピストン
25c ピストンロッド
25d 縮側シリンダ室
25e 伸側シリンダ室
25f オリフィス
25g シリンダ其端側取付部
25h ピストンロッド延出端側取付部
25k オイル
25m ガス
25n 逆止弁
25p 逆止流通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の前面開口部を下降することで開口させる下降扉を備えた消火栓装置において、
該筐体と該下降扉との間に、該下降扉の下降により伸長して、該下降扉の下降に対して抵抗を与えるダンパを設けたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
該ダンパは、シリンダと、該シリンダ内部を縮側シリンダ室と伸側シリンダ室に区画するピストンと、該ピストンに接続され、該シリンダから外部に延出されたピストンロッドと、該ピストンに形成され、該縮側シリンダ室と該伸側シリンダ室とを連通させる連通路とを有するものとし、
更に該ダンパは、該シリンダの内部がオイルにより満たされているものとすることを特徴とする請求項1記載の消火栓装置。
【請求項3】
該ダンパは、該下降扉が所定の位置まで下降してから該下降扉の下降に対して抵抗を与えるものとすることを特徴とする請求項1記載の消火栓装置。
【請求項4】
該ダンパは、シリンダと、該シリンダ内部を縮側シリンダ室と伸側シリンダ室に区画するピストンと、該ピストンに接続され、該シリンダから外部に延出されたピストンロッドと、該ピストンに形成され、該縮側シリンダ室と該伸側シリンダ室とを連通させる連通路とを有するものとし、
更に該ダンパは、該シリンダの内部がオイルとガスにより満たされており、該シリンダの内部にオイル層とガス層が形成されるものとすることを特徴とする請求項3記載の消火栓装置。
【請求項5】
該ダンパは、該ピストンに形成され、該縮側シリンダ室から該伸側シリンダ室への流通は許容し、該伸側シリンダ室から該縮側シリンダ室への流通は阻止する逆止流通路を有するものとすることを特徴とする請求項2又は4記載の消火栓装置。
【請求項6】
該筐体は、該下降扉によって開口される該前面開口部を有し、該筐体に着脱自在に取り付けられる前面パネルを有するものとし、
該ダンパは、該前面パネルと該下降扉との間に設けられるものとし、
該前面パネルを、該下降扉と、該下降扉によって開口される該前面開口部と、該ダンパとを含み、該筐体に着脱自在に取り付けられる扉ユニットを構成するものとすることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の消火栓装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−181057(P2006−181057A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377015(P2004−377015)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】