説明

消火設備

【課題】 閉鎖型ヘッドを使用した場合にも消火剤水溶液のヘッドからの実放水試験を可能とする。
【解決手段】消火設備は、火災時に、消火ポンプ10により加圧供給される消火用水に薬剤タンク22から供給された消火剤を混合器20で混合し、分岐管28に接続された複数の閉鎖型ヘッド32の中の火災により作動した閉鎖型ヘッドに供給して消火剤水溶液を散水させる。分岐管28に、火災による熱を受けて作動する感熱ヘッド36と、感熱ヘッド36の作動により閉状態から開状態に動作して1次側に接続した分岐管の圧力水を2次側に供給する一斉開放弁34と、一斉開放弁34の2次側に接続された開放型ヘッド38を設け、一斉開放弁34に分岐口を介して感熱ヘッド36を接続すると共に、分岐口を試験弁40を介して排水管に接続し、試験弁40の開操作による排水で一斉開放弁34を開動作して開放型ヘッド38から消火剤水溶液を試験散水させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災による熱を受けて開放作動して消火用水を散水する閉鎖型ヘッドを使用した消火設備に関し、特に、火災による閉鎖型ヘッドの作動時に消火ポンプから加圧供給される消火用水に薬剤タンクから供給された消火剤を混合した消火剤水溶液を供給して散水させる消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消火用水に消火剤を混合した消火剤水溶液を放射する消火設備として予作動式の消火設備が知られている(特許文献1)。この従来の消火設備にあっては、ポンプからの配管を消火剤タンクからの水成膜消火剤を混合する混合器を通して予作動式の流水検知装置の1次側に接続し、その2次側配管に閉鎖型ヘッドを接続し、更に火災感知器を設置している。
【0003】
消火設備の使用開始時には、流水検知装置を開弁し、消火剤タンクの消火剤供給管に設けた開閉弁を閉じた状態でポンプを運転し、流水検知装置の2次側配管に消火用水だけを充填する。2次側配管への消火用水の充填が済んだら、流水検知装置を閉弁し、消火剤供給管の開閉弁は開いて消火剤を混合器に供給可能な状態とする。
【0004】
火災が発生すると、火災感知器からの火災信号により制御盤は流水検知装置に信号を送って開弁させると共にポンプを起動させ、この状態で閉鎖型ヘッドが火災を感知すると開放作動し、混合器により水成膜消火剤を消火用水に混合した消火剤水溶液が作動した噴霧ヘッドから散水される。
【0005】
また混合器で消火用水に泡消火剤を混合し、泡消火剤水溶液を火災により作動した閉鎖型ヘッドに供給して消火泡を放出させる泡消火設備も知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−291931号公報
【特許文献2】特開2001−238977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような火災時に作動した閉鎖型ヘッドから水成膜消火剤水溶液または泡消火剤水溶液を散水する消火設備にあっては、設備完成時や定期的な点検時などに、設備を運転してヘッドから実際に消火剤水溶液を散水させる散水試験を行うことが望ましいが、ヘッドが閉鎖型であるため、実際にヘッドからの散水試験は行うことができない。
【0007】
このため従来の消火設備の動作試験は、分岐管の末端に設けた試験弁を開いて閉鎖型ヘッドが作動したと同じ流水状態を作り出し、消火ポンプを起動して消火用水を加圧供給して混合器で薬剤タンクからの消火剤を混合し、分岐管を通して試験開放した試験弁から排水管に流しており、ヘッドからの実散水は確認することができなかった。
【0008】
本発明は、閉鎖型ヘッドを使用した場合にも消火剤水溶液のヘッドからの実放水試験を可能とする消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明は次のように構成する。本発明は、火災時に、消火ポンプにより加圧供給される消火用水に薬剤タンクから供給された消火剤を混合器で混合し、分岐管に接続された複数の閉鎖型ヘッドの中の火災により作動した閉鎖型ヘッドに供給して消火剤水溶液を散水させる消火設備を対象とする。
【0010】
このような消火設備として発明は、分岐管に、火災による熱を受けて作動する感熱ヘッドと、感熱ヘッドの作動により閉状態から開状態に動作して1次側に接続した分岐管の圧力水を2次側に供給する一斉開放弁と、一斉開放弁の2次側に接続された開放型ヘッドとを設け、一斉開放弁に分岐口を介して感熱ヘッドを接続すると共に、分岐口を試験弁を介して排水管に接続し、試験弁の開操作による排水で一斉開放弁を開動作して開放型ヘッドから消火剤水溶液を試験散水させることを特徴とする。
【0011】
ここで、一斉開放弁は、
分岐管を接続して圧力水を導入する1次側ポートと、
開放型ヘッドを接続し、弁開放時に1次側ポートから導入した圧力水を流出する2次側ポートと、
感熱ヘッドを接続する感熱ポートと、
1次側ポートと2次側ポートを仕切る仕切壁の開口に形成した弁座を開閉する弁部を一体に備えたピストン弁体と、
ピストン弁体を摺動自在に収納し、感熱ポートに連通したシリンダ室と、
ピストン弁体を閉鎖方向に付勢するスプリングと、
ピストン弁体を貫通してシリンダ室に1次ポートからの圧力水を導入するパイロット流路と、
パイロット流路のシリンダ室開口部に設けられ、シリンダ室から1次側ポートへの逆流を阻止するチェック弁と、
を備える。
【0012】
本発明の消火設備は、消火ポンプにより加圧供給される消火用水に薬剤タンクから供給された泡消火剤を混合器で混合して分岐管に接続された複数の閉鎖型ヘッドに泡消火剤水溶液を供給して消火泡を放出させる。
【0013】
本発明の消火設備は、消火ポンプにより加圧供給される消火用水に薬剤タンクから供給された水成膜消火剤を混合器で混合して分岐管に接続された複数の閉鎖型ヘッドに供給して水成膜消火剤水溶液を散水させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の消火設備によれば、分岐管の末端に設けた一斉開放弁と感熱ヘッドとの間に試験弁を接続し、試験弁を開放操作することによって、感熱ヘッドが火災により作動したと同じ状態を擬似的に作り出し、一斉開放弁を開放して分岐管の圧力水を開放型ヘッドに流して実散水試験を簡単に行うことができる。
【0015】
また試験弁を閉鎖すれば、一斉開放弁は閉鎖位置に戻り、実散水試験を終了して監視状態に簡単に復旧させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明による消火設備の実施形態を示した説明図である。図1において、建物の地下階などのポンプ室に消火ポンプ10が設置され、モータ12により駆動される。モータ12はポンプ制御盤14により起動、停止の運転制御を受ける。消火ポンプ10はモータ12による駆動され、水源水槽15からの消火用水を吸入し、建物の高さ方向に配置した給水本管16に加圧消火用水を供給する。
【0017】
消火ポンプ10に対しては呼水槽17が設けられる。また消火ポンプ10を起動するため圧力タンク18が設けられる。圧力タンク18は給水本管16に接続され、配管内の加圧消火用水を導入して内部の空気を圧縮している。圧力タンク18には圧力スイッチ19が設けられ、圧力スイッチ19は給水本管16の管内圧力が規定圧力以下に低下したことを検出してポンプ制御盤14に圧力低下検出信号を出力し、これによりモータ12を駆動して消火ポンプ10を起動するようにしている。
【0018】
給水本管16には混合器20が設けられ、混合器20に対しては薬剤タンク22から例えば水成膜消火剤が供給されて混合される。薬剤タンク22は、この実施形態にあっては開放型のタンクを使用しており、タンク内に充填している水成膜消火剤の原液は薬剤ポンプ24により送り出され、混合器20に供給される。薬剤ポンプ24はモータ25により駆動され、モータ25に対してはポンプ制御盤26が設けられている。
【0019】
更に、この実施形態にあっては、混合器20の1次側と2次側に圧力センサ45,46を設けており、更に薬剤ポンプ24からの消火剤供給管に圧力センサ48と制御弁50を設けている。圧力センサ45,46,48の圧力検出信号は制御盤44に入力され、制御盤44は混合器20における差圧と圧力センサ48からの消火剤供給圧力との比率が一定比率となるように制御弁50を開閉制御し、これによって混合器20から供給する消火剤水溶液の濃度を予め設定した一定濃度に保つように制御する。
【0020】
混合器20の2次側の給水本管16からは分岐管28が消火対象区画、例えば建物の駐車場などに引き出されている。分岐管28の分岐部分には流水検知装置30が設けられている。流水検知装置30は分岐管28にヘッドからの散水に伴う流動が生じると、この流動により流水検知信号を制御盤42に出力する。
【0021】
流水検知装置30の2次側の分岐管28には閉鎖型ヘッド32が複数設置されている。閉鎖型ヘッド32は感熱ヘッドと感熱ヘッドの作動により消火用水を散水する弁機構を一体に備えている。
【0022】
分岐管28の末端側には本発明による実放水試験部11が設けられている。実放水試験部11は一斉開放弁34、感熱ヘッド36、開放型ヘッド38及び試験弁40で構成されている。
【0023】
一斉開放弁34は通常時は1次側の分岐管28からの圧力水を受けて開放型ヘッド38を接続した2次側に対する流路を閉鎖しているが、火災による熱を受けて感熱ヘッド36が作動すると弁の開放動作が行われ、分岐管28からの圧力水を2次側の開放型ヘッド38に供給して消火用水液を散水させる。
【0024】
このような火災時の散水機能に加え、開放型ヘッド38を使用した実放水試験を行うため、一斉開放弁34と感熱ヘッド36の接続部分から排水側に配管を引き出し、ここに試験弁40を設けている。開放型ヘッド38による実放水試験は試験弁40を開放操作することで行うことができる。
【0025】
試験弁40を開放すると、一斉開放弁34に接続している感熱ヘッド36が火災による熱を受けて作動したと同等な加圧水の排水側への流出が行われ、一斉開放弁34の感熱ヘッド36の接続側から圧力水が抜けることで一斉開放弁34が開状態に動作する。一斉開放弁34が開放されると分岐管28内の加圧消火用水が開放型ヘッド38から散水され、その後、消火ポンプ10及び薬剤ポンプ24が起動し、混合器20から供給された消火剤水溶液が開放型ヘッド38から散水される実散水試験ができる。
【0026】
即ち、図1の消火設備にあっては、設備の使用開始時に制御弁50の閉鎖による消火剤の供給停止状態で消火ポンプ10を運転し、給水本管16及び分岐管28に加圧消火用水を充填しており、このため監視中は流水検知装置30の2次側の分岐管28には消火用水のみが充填されている。
【0027】
このため試験弁40の開操作による一斉開放弁34の開放で開放型ヘッド38は消火用水を実散水試験を行うと、最初は分岐管28に充填していた消火用水のみの散水であるが、開放型ヘッド38からの散水により給水本管16の管内圧力が規定圧力以下に低下すると、消火ポンプ10及び薬剤ポンプ24が起動し、混合器20で加圧消火用水に消火剤を一定濃度になるように混合した消火剤水溶液が供給されて開放型ヘッド38から散水されるようになる。
【0028】
ここで消火ポンプ10の起動は給水本管16の管内圧力が規定圧力以下に低下したことを圧力タンク18の圧力スイッチ19で検知してポンプ制御盤14に圧力低下検出信号を出力することでモータ12により起動している。ポンプ制御盤14により消火ポンプ10が起動すると、この起動信号は制御盤42を介して制御盤44に伝えられ、制御盤44はポンプ制御盤26によりモータ25を駆動して薬剤ポンプ24の運転を開始し、開放型の薬剤タンク22より消火剤を混合器20に加圧供給する。
【0029】
制御盤44は混合器20の給水本管16における1次側と2次側の差圧と消火剤供給管の圧力との比が一定比率となるように制御弁50の開度をフィードバック制御しており、混合器20から供給される消火剤水溶液の薬剤濃度は規定濃度に正確に制御されている。
【0030】
このような試験弁40の開放動作により火災時と同じ状態に設備の運転を行い、分岐管28に送られてくる消火剤水溶液を開放型ヘッド38から実際に試験散水して設備が正常に動作することを確認できる。開放型ヘッド38からの実放水試験により設備の正常機能が確認できたならば、試験弁40を閉じることで実放水試験を終了する。
【0031】
実放水試験の終了の詳細は、まず制御盤44からの指示で制御弁50を閉鎖して混合器20に対して消火剤の供給を停止し、これによって給水本管16及び分岐管28に消火ポンプ10から消火用水のみを加圧供給し、混合器20の2次側の給水本管16及び分岐管28から消火剤水溶液を押し出して開放型ヘッド38から完全に排出した後に試験弁40を閉じて実放水試験を終了する。
【0032】
したがって実放水試験を終了したときには試験前と同様、流水検知装置30の2次側の分岐管28には消火用水のみが充填された状態となり、消火剤水溶液が残留することによる人的な被害の恐れを確実に防止できる。具体的な試験終了方法としては、制御盤44で制御弁48を閉制御してから2次側消火剤水溶液が十分に排出される一定時間後に試験弁40を閉じればよい。
【0033】
なお、試験開始前に制御弁50の開放を禁止する設定を制御盤42や制御盤44に設定し、消火用水のみで試験を行うようにしても良い。
【0034】
図2は図1の分岐管末端に設けた実放水試験部11の実施形態を示した断面図である。図2において、一斉開放弁34はボディ51を有し、ボディ51は天井面35に沿った横方向に1次側ポート52を設け、ここに分岐管28を接続している。ボディ51の下側には2次側ポート54が設けられ、ここに接続管70を介して開放型ヘッド38を接続している。
【0035】
ボディ51の右側にはシリンダ室62が形成され、シリンダ室62の先端部に弁部60を一体に備えたピストン弁体58を摺動自在に組み込んでいる。シリンダ室62に組み込んだピストン弁体58はスプリング64により閉鎖方向に付勢されている。ピストン弁体58の左側の弁部60は、ボディ51の1次側ポート52と2次側ポート54を仕切る仕切壁に形成した弁座56に対し、開閉自在に配置されている。
【0036】
この弁部60には1次側ポート52からシリンダ室62に向けて連通したパイロット流路66が形成されている。パイロット流路66のシリンダ室62に対する開口部にはチェック弁68が配置され、1次側ポート52から圧力水のシリンダ室62に対する流入は支持するが、シリンダ室62から1次側ポート52に対する流出を阻止するようにしている。
【0037】
一斉開放弁34のシリンダ室62の背後には感熱ポート55が形成され、感熱ポート55にはT字継手72の一端が連結され、他端に感熱ヘッド36を接続している。またT字継手72の分岐口75には末端分岐管84が接続され、末端分岐管84に試験弁40が設けられ、試験弁40の2次側は排水管に接続されている。
【0038】
T字継手72を介して接続された感熱ヘッド36は、T字継手72に連結した連通穴73の開口部に弁体76を配置し、弁体76とフレーム74の先端側に設けたロックネジ82との間にグラスバルブ78を配置している。即ち、T字継手72に対する連通穴73の開口部に配置した弁体76をグラスバルブ78を介してロックネジ82で押圧して開口部を閉鎖している。またフレーム74の先端には集熱板80が取り付けている。
【0039】
このような図2の実放水試験部11にあっては、通常状態では試験弁40が閉鎖しているため分岐管28からの圧力水は1次側ポート52から弁部60のパイロット流路66を通ってシリンダ室62に流入され、更にT字継手72に導入される。T字継手72の右側は感熱ヘッド36で閉鎖されるため、シリンダ室62に導入した圧力水及びスプリング64の力によりピストン弁体58は左側に押圧され、弁部60を弁座56に当接し、1次側ポート52と2次側ポート54の流路を遮断した閉鎖状態となっている。
【0040】
この状態で実放水試験のために試験弁40を開放すると、T字型継手72内の圧力水が排水管に流れて一斉開放弁34のシリンダ室62の圧力がなくなり、ピストン弁体58はスプリング64に移行して1次側ポート52の圧力水の力で右側に送られてストロークし、弁部60が弁座56から離れることで1次側ポート52が2次側ポート54に弁通し、分岐管28からの圧力水を開放型ヘッド38に供給し試験放出させる。
【0041】
開放型ヘッド38はヘッド本体85を貫通してノズル穴86を設けており、ノズル穴86の開口側にデフレクター88を設け、デフレクター88の外側に発泡網92を配置している。デフレクター88は斜めの傾斜部に円周方向に放射穴90を複数形成しており、放射穴90から消火剤水溶液が四方に放出されて発泡網92に当たり、発泡網92に当たった消火剤水溶液は空気を巻き込んで発泡し、これにより消火泡を周囲に放出することになる。
【0042】
実試験放水を止める場合には試験弁40を閉じる。試験弁40を閉じるとT字継手72内の排水がとまり、パイロット流路66からの圧力水の導入でシリンダ室62の圧力が上昇し、スプリング64及びシリンダ室62の圧力水の力を受けてピストン弁体58が左側にストロークし、弁座56に弁部60を当接して1次側ポート52と2次側ポート54を遮断し、これによって開放型ヘッド38からの消火剤水溶液の散水を停止することができる。
【0043】
図3は図1の消火設備に設けた閉鎖型ヘッドの説明図である。図3において、閉鎖型ヘッド32は左側に接続ネジ部96を設け、その下に放射散布部100を配置しており、放射散布部100には発泡網120が設けられている。閉鎖型ヘッド32の上部には感熱ヘッド104が設けられ、グラスバルブ122を使用し、集熱板108により天井面に沿って流れてくる火災初期の熱を受けて分解破壊できるようにしている。
【0044】
図4は図3の閉鎖型ヘッド32の内部構造の断面図である。図4において、閉鎖型ヘッド32は接続ネジ部96側に流入路110を形成し、続いて弁座112を形成し、その下側に流出路114を形成している。流出路114の下側にはノズル穴116を備えたヘッド部材115を固定し、ノズル穴116の開口部の外側にデフレクター118を固定し、更にその外側に発泡網120を固定している。この放射散水部100の詳細構造は図2に示した開放型ヘッド38と基本的に同じになる。
【0045】
閉鎖型ヘッド32の上部には感熱ヘッド104が固定される。閉鎖型ヘッド32の弁座112には弁体113が設けられ、弁体113と一体に上部に軸121が設けられ、軸121の先端と感熱板108の取付け部分にネジ込んだロックネジ124との間にグラスバルブ122を挟みこんでいる。弁体113の軸121はスプリング126によりグラスバルブ122を押す方向に付されている。
【0046】
このような閉鎖型ヘッド32にあっては、火災初期の天井面に沿った熱気流を感熱ヘッド104の集熱板108で受け、グラスバルブ122に加わった既定の火災察知温度に達するとグラフバルブ122内に浮遊している液の膨張によってグラスバルブ122が破裂分解する。
【0047】
このためグラスバルブ122による弁体113の閉鎖状態の支持が解除され、スプリング126の力によって軸121を介して弁体113を押し上げることで弁座112を開き、流入路110からの消火剤水溶液を放射散布部100に供給し、ノズル穴116からデフレクター118に送り込んで周囲に飛散させ、外側に位置する発泡網120で空気を巻き込んで消火剤を外部に放出させる。
【0048】
図5は図1の分岐管末端に設けた本発明による実放水試験部の他の実施形態を示した断面図であり、この実施形態にあっては図2の実施形態が一斉開放弁34を天井面35に沿った横置きとしているのに対し、天井面35に対して一斉開放弁34を垂直方向に立てた縦置きとしたことを特徴とする。
【0049】
このように図2のような一斉開放弁34を横配置とするか、図5のように縦配置とするかは、分岐管末端の実放水試験部を設置する天井回りの状態などに応じて適宜に選択することができる。
【0050】
図5において、一斉開放弁34はボディ51の横方向に1次側ポート52を形成し、ここに分岐管28を接続している。ボディ51の下部には2次側ポート54が設けられ、ここに接続管70を介して開放型ヘッド38を接続している。
【0051】
ボディ51の上部にはシリンダ室62が形成され、ここにピストン弁体58を摺動自在に組み込み、スプリング64により閉鎖方向に付勢している。ピストン弁体58は下部に弁部60を一体に形成し、ボディ51の仕切壁に形成した弁座56に対し開閉自在に配置している。
【0052】
ピストン弁体58の弁部60には1次側ポート52からシリンダ室62に圧力水を導入するパイロット流路67が形成されている。このパイロット流路67はピストン弁体58の加工の都合上、横方向に通し穴を貫通した後、上部のピストン弁体の内側から直角方向に穴を開けて、1次側ポート52からシリンダ室62に至るパイロット流路67を形成している。
【0053】
シリンダ室62におけるパイロット流路67の開口部にはチェック弁68が設けられ、1次側ポート52からシリンダ室62に対する圧力水の流入は許容するが、逆にシリンダ室62から1次側ポート52に対する圧力水の流出は阻止するようにしている。
【0054】
シリンダ室62の背後には感熱ポート55が形成され、ここにT字継手72の一端を接続し、T字継手72の上部となる他端には感熱ヘッド36が接続されている。T字継手72の分岐口75からは末端分岐管84が引き出され、その途中に試験弁40を設け、試験弁40の2次側は排水管に接続されている。
【0055】
このような図5の実放水試験部についても、放水試験を行う際には、試験弁40を開く。試験弁40を開くとT字型継手72、一斉開放弁34のシリンダ室62の圧力水が排出され、シリンダ室62の圧力水がなくなるとピストン弁体58の下側の外周部58aに1次側ポート52からの圧力水が加わり、ピストン弁体58が上方にストロークし、弁部60が弁座58を開放し、1次側ポート52からの圧力水が2次側ポート54に流れ、2次側ポート54に接続している開放型ヘッド38から消火泡を放出させることができる。
【0056】
尚、上記の実施形態は閉鎖型ヘッド32及び実放水試験部の開放型ヘッド38として消火泡を放出させる泡ヘッドを使用した泡消火設備を例にとるものであるが、発泡網を持たない通常のヘッド構造とすることで、例えば水成膜消火剤水溶液を散水する消火設備としてもよい。
【0057】
また図1の実施形態にあっては、開放型の薬剤タンク22を設置し、薬剤ポンプ24により混合器20に消火剤を加圧供給して消火剤水溶液を2次側に供給する場合を例にとっているが、閉鎖型の薬剤タンクを使用し、給水本管16の加圧消火用水を導入してタンク内の消火剤をダイアフラグを介して加圧することで消火薬剤を混合器20に押し出す薬剤ポンプを持たない構造の消火剤供給設備についても同様に適用することができる。
【0058】
更に本発明の実施形態にあっては、実放水試験部11として感熱ヘッド36を設けることによって試験時以外通常の火災に対しても開放型ヘッド38から散水をできるようにしているが、実放水試験のみを行う場合には感熱ヘッド36を設ける必要はなく、一斉開放弁34の感熱ポートに末端分岐管84を直接接続し、そこに試験弁40を設けるようにしてもよい。
【0059】
また、T字継手72と一斉開放弁34は一体に設けても良い。また、実放水試験部11は分岐管の末端に設けているが、必ずしも末端でなくても配管の途中から分岐させて設けても良い。
【0060】
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明による消火設備の実施形態を示した説明図
【図2】図1の分岐管末端に設けた実放水試験部の実施形態を示した断面図
【図3】図1の閉鎖型ヘッドの説明図
【図4】図3の閉鎖型ヘッドの断面図
【図5】図1の分岐管末端に設けた実試験放水部の他の実施形態を示した断面図
【符号の説明】
【0062】
10:消火ポンプ
11:実放水試験部
12,25:モータ
14,26:ポンプ制御盤
15:水源水槽
16:給水本管
17:呼水槽
18:圧力タンク
19:圧力スイッチ
20:混合器
22:薬剤タンク
23:レベル計
24:薬剤ポンプ
28:分岐管
30:流水検知装置
32:閉鎖型ヘッド
34:一斉開放弁
35:天井面
36:感熱ヘッド
38:開放型ヘッド
40:試験弁
42,44:制御盤
45,46,48:圧力センサ
50:制御弁
51:ボディ
52:1次側ポート
54:2次側ポート
55:感熱ポート
56,112:弁座
58:ピストン弁体
60:弁部
62:シリンダ室
64,126:スプリング
66:パイロット流路
68:チェック弁
70:接続管
72:T字継手
73:連通穴
74:フレーム
75:分岐口
76:弁体
78,106,122:グラスバルブ
80,108:集熱板
82,124:ロックネジ
84:末端分岐管
85:ヘッド本体
86,116:ノズル穴
88,118:デフレクター
90:放射穴
92,120:発泡網
96:接続ネジ部
100:放射散水部
110:流入路
114:流出路
115:ヘッド部材
121:軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災時に、消火ポンプにより加圧供給される消火用水に薬剤タンクから供給された消火剤を混合器で混合し、分岐管に接続された複数の閉鎖型ヘッドの中の火災により作動した閉鎖型ヘッドに消火剤水溶液を供給して散水させる消火設備に於いて、
前記分岐管に、火災による熱を受けて作動する感熱ヘッドと、前記感熱ヘッドの作動により閉状態から開状態に動作して1次側に接続した前記分岐管の圧力水を2次側に供給する一斉開放弁と、前記一斉開放弁の2次側に接続された開放型ヘッドとを設け、
前記一斉開放弁に分岐口を介して前記感熱ヘッドを接続すると共に、前記分岐口を試験弁を介して排水管に接続し、
前記試験弁の開操作による排水で前記一斉開放弁を開動作して前記開放型ヘッドから消火剤水溶液を試験散水させることを特徴とする消火設備。
【請求項2】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記一斉開放弁は、
前記分岐管を接続して圧力水を導入する1次側ポートと、
前記開放型ヘッドを接続し、弁開放時に1次側ポートから導入した圧力水を流出する2次側ポートと、
前記感熱ヘッドを接続する感熱ポートと、
前記1次側ポートと2次側ポートを仕切る仕切壁の開口に形成した弁座を開閉する弁部を一体に備えたピストン弁体と、
前記ピストン弁体を摺動自在に収納し,前記感熱ポートに連通したシリンダ室と、
前記ピストン弁体を閉鎖方向に付勢するスプリングと、
前記ピストン弁体を貫通して前記シリンダ室に前記1次側ポートからの圧力水を導入するパイロット流路と、
前記パイロット流路のシリンダ室開口部に設けられ、シリンダ室から1次側ポートへの逆流を阻止するチェック弁と、
を備えたことを特徴とする消火設備。
【請求項3】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記消火ポンプにより加圧供給される消火用水に薬剤タンクから供給された泡消火剤を混合器で混合して分岐管に接続された複数の閉鎖型ヘッドに泡消火剤水溶液を供給して消火泡を放出させることを特徴とする消火設備。
【請求項4】
請求項1記載の消火設備に於いて、消火ポンプにより加圧供給される消火用水に薬剤タンクから供給された水成膜消火剤を混合器で混合して分岐管に接続された複数の閉鎖型ヘッドに供給して水成膜消火剤水溶液を散水させることを特徴とする消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−93191(P2008−93191A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278667(P2006−278667)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】