説明

消臭剤組成物

【課題】汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を低減させることができ、水系消臭剤の調製も容易であり、かつ人体に触れても安全な消臭剤組成物、及び消臭方法を提供する。
【解決手段】特定の構造を有するポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、及び陽イオン性界面活性剤(b)を含有する組成物であって、該陽イオン性界面活性剤(b)が、エステル基等で分断されていてもよい炭素数12〜36の飽和又は不飽和の炭化水素基を分子内に1つ以上有し、かつ第3級アミノ基又はその塩、又は第4級アンモニウム基を有する化合物等である消臭剤組成物、並びにそれを用いる消臭方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤組成物に関し、詳しくは、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の低減効果に優れ、人体に安全である消臭剤組成物、及び消臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消臭剤は、芳香剤と共に不快な匂いを和らげるものであり、快適な生活を送る上で重要な部分を担っている。消臭に関する近年のニーズは、強い芳香で悪臭をマスキングする芳香剤から、微香性又は無香性で臭い自体を消す消臭剤へと変化している。
また、肌に直接触れない衣類は着てもすぐに洗わないという洗濯習慣が増えているが、その一方で洗わない衣類の匂いを気にしている。生活環境における不快な臭いの殆どは複合臭であり、この複合臭に効果的な消臭剤が求められている。
【0003】
従来、特定の悪臭成分に対する消臭技術は知られているが、複合臭に対して効果的なものは少ない。
例えば、特許文献1には、陽イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤とキレート剤を併用することにより,汗臭やタバコ臭を消臭する液体消臭剤が開示され、特許文献2には,香料等の消臭基剤と陽イオン界面活性剤と特定の溶剤を併用することにより,汗臭を消臭する液体消臭剤が開示されている。しかしながら、これらの液体消臭剤は、アルデヒド類等に対する消臭性能は充分ではない。
特許文献3には、植物からの抽出物を主成分とする消臭基材、香料、エタノール及び界面活性剤を併用することにより、腐敗臭を抑制する消臭剤組成物が開示され、特許文献4には、シクロデキストリン、ポリエーテル変性シリコーン(界面活性剤)、第1級アミン(緩衝剤)等からなる消臭性組成物が開示され、特許文献5には、ベタイン型両性化合物、非イオン性界面活性剤、及び陰イオン界面活性剤からなる処理剤で処理することにより、アンモニア臭等を消臭しうる消臭性繊維が開示されている。しかしながら、これらも汗臭やアルデヒド類に対する消臭性能は充分ではない。
【0004】
特許文献6には、トリエタノールアミンやトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等から選ばれる1種以上を塩として含む陰イオン界面活性剤により、低級脂肪酸、アミン類が共存する複合臭を抑制できることが開示されている。しかしながら、陰イオン界面活性剤のアミン塩はアルデヒド類に対する効果が充分でなく、水に対する溶解性が悪いものもあるため、消臭剤組成物を調製するには適さない。
特許文献7には、有機二塩基酸又はその塩により、酢酸、イソ吉草酸等の低級脂肪酸類やアンモニア、トリメチルアミン等のアミン類等を消臭できることが開示されているが、有機二塩基酸又はその塩は、アルデヒド類に対する消臭効果が充分でない。
特許文献8には、中高年以降に認められる加齢臭の原因物質の一つとされるノネナール等の不飽和アルデヒドの消臭について、エタノールアミンが効果的であることが開示されている。しかしながら、汗臭等に対する効果が不明であり、またエタノールアミンは刺激性があり、人体に触れる可能性のある形態での使用には適さない。
かかる状況から、特に汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を低減させることができ、人体に安全である消臭剤組成物の開発が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開2001−40581号公報
【特許文献2】特開2001−70423号公報
【特許文献3】特開2001−178806号公報
【特許文献4】特開2003−533588号公報
【特許文献5】特開2004−176225号公報
【特許文献6】特開2004−49889号公報
【特許文献7】特開2001−95907号公報
【特許文献8】特開2001−97838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を低減させることができ、水系消臭剤の調製も容易であり、かつ人体に触れても安全な消臭剤組成物、及び消臭方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のポリヒドロキシアミン類が汗臭やアルデヒド類等に由来する複合臭の消臭に有効であり、しかも人体に対する刺激が少なく、また、特定の陽イオン性界面活性剤と併用することにより消臭性能を更に高め得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)を提供する。
(1)下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、及び陽イオン性界面活性剤(b)を含有する組成物であって、該陽イオン性界面活性剤(b)が、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されていてもよい炭素数12〜36の飽和又は不飽和の炭化水素基を分子内に1つ以上有し、かつ第3級アミノ基又はその塩、又は第4級アンモニウム基を有する化合物である、消臭剤組成物。
(2)前記(1)に記載の消臭剤組成物を対象物に付着させることにより、対象物の臭いを低減させる消臭方法。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を表す。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の消臭剤組成物は、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を消臭でき、水系消臭剤の調製も容易であり、かつ人体に触れても安全である。また、繊維製品等の固体表面に付着した複合臭について優れた消臭効果を発揮する。
また、本発明の消臭方法によれば、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を簡便かつ効果的に消臭することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の消臭剤組成物は、下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、及び陽イオン性界面活性剤(b)を含有する組成物であって、該陽イオン性界面活性剤(b)が、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されていてもよい炭素数12〜36の飽和又は不飽和の炭化水素基を分子内に1つ以上有し、かつ第3級アミノ基又はその塩、又は第4級アンモニウム基を有する化合物であることを特徴とする。
【0012】
ポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)
本発明で用いられるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)(以下、「ポリヒドロキシアミン化合物類(a)」という)は、下記一般式(1)で表される。
【0013】
【化2】

【0014】
一般式(1)において、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。
炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。また、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
1は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0015】
2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。
炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、上記のものが挙げられる。
2は、消臭性能及び入手性の観点から、上記の中では水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を表す。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜5のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等が好ましく、特にメチレン基が好ましい。
【0016】
ポリヒドロキシアミン化合物類(a)の具体例としては、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−4−ヒドロキシプロピル−1,7−ヘプタンジオール、2−(N−エチル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−エチル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等、及びそれらと無機酸又は有機酸で中和した酸塩が挙げられる。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、炭素数1〜12の脂肪酸、炭素数1〜3のアルキル硫酸から選ばれる1種以上が好ましい。
これらの中では、消臭性能等の観点から、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、及びそれらと塩酸等の無機酸との塩から選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0017】
一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物を塩酸等の塩として用いる場合は、塩基を添加することによりpHを調整することができる。用いることができる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
上記のポリヒドロキシアミン化合物類(a)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、ポリヒドロキシアミン化合物類(a)は、常法により製造することができる。
【0018】
ポリヒドロキシアミン化合物類(a)は、単独でも混合物でも、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭に対して消臭性能を発揮するが、陽イオン性界面活性剤(b)を併用することにより、消臭性能を更に高めることができる。
すなわち、通常、臭気成分は、布地、衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品等の固体表面に付着するが、陽イオン性界面活性剤(b)は、固体表面に付着した臭気成分の揮発を抑制するばかりでなく、消臭成分であるポリヒドロキシアミン化合物類(a)を安定に分散させ、繊維製品等に対する接触性を向上させて、消臭性能を更に高めることができる。
【0019】
陽イオン性界面活性剤(b)
本発明に用いられる陽イオン性界面活性剤(b)は、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されていてもよい炭素数12〜36の飽和又は不飽和の炭化水素基を分子内に1つ以上有し、かつ第3級アミノ基又はその塩、又は第4級アンモニウム基を有する化合物であり、特に下記一般式(2)〜(5)で表される化合物が好ましい。
【0020】
【化3】

【0021】
一般式(2)中、R5及びR6は、それぞれ独立にエステル基、エーテル基又はアミド基で分断されていてもよい炭素数12〜26のアルキル基又はアルケニル基を示し、R7及びR8は、それぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシアルキル基又は−(CH2CH2O)aH(ここで、aは平均付加モル数を示し、1〜15の数である。)を示し、Yは陰イオンを示す。
【0022】
一般式(2)において、R5及びR6は、好ましくは炭素数12〜22、より好ましくは12〜20、特に好ましくは12〜18のアルキル基又はアルケニル基、又はR21−(B−R22) b−(ここで、bは平均付加モル数を示し、1〜15の数である。)である。
式R21−(B−R22)b−において、R21は、炭素数13〜19、好ましくは13〜17のアルキル基又はアルケニル基、Bは−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基、好ましくは−COO−又は−CONH−から選ばれる基であり、R22は、炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルカンジイル基、より好ましくはエチレン基、トリメチレン基、又はプロパン−1,2−ジイル基である。b個の(B−R22)は同じでも異なっていてもよい。
【0023】
7及びR8の−(CH2CH2O)aHにおいて、aは好ましくは1〜5である。R7及びR8は、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシアルキル基である。
-は無機又は有機の陰イオンであり、好ましくはハロゲンイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換してもよいベンゼンスルホン酸イオン、炭素数1〜12の1〜3価の脂肪族カルボン酸イオンである。これらの中では、塩素イオン等のハロゲンイオン、硫酸イオンがより好ましく、塩素イオンが特に好ましい。
【0024】
【化4】

【0025】
一般式(3)及び(4)中、R9は、炭素数14〜36のアルキル基又はアルケニル基を示し、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R13は、炭素数1〜6のアルカンジイル基を示し、Xは、−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基を示し、pは平均付加モル数を示し、0又は1の数であり、Y-は陰イオンを示す。
【0026】
一般式(3)及び(4)において、R9は、好ましくは炭素数14〜24のアルキル基又はアルケニル基であり、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に、好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基、より好ましくはメチル基又はヒドロキシエチル基である。
13は、好ましくは炭素数1〜4のアルカンジイル基、より好ましくはエチレン基、トリメチレン基、又はプロパン−1,2−ジイル基である。Xは、好ましくは−COO−又は−CONH−から選ばれる基である。好ましいY-は、前記と同じである。
【0027】
【化5】

【0028】
一般式(5)中、R14は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は−(CH2CH2O)cH(ここでcは平均付加モル数を示し、1〜3の数である。)を示し、R15及びR16は、それぞれ独立にエステル基、アミド基又はエーテル基で分断されていてもよい炭素数11〜26のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは2〜3の数であり、Zは−O−基又は−NH−基を示し、Y-は陰イオンを示す。
一般式(5)において、R14は、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、又は−(CH2CH2O)cH(ここでcは1〜3の数である。)であり、R15及びR16は、好ましくは炭素数11〜22、より好ましくは11〜20、更に好ましくは11〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、nは2が好ましい。好ましいY-は、前記と同じである。
【0029】
前記一般式(2)〜(5)で表される陽イオン性界面活性剤(b)の中でも、特に一般式(2)及び/又は(4)で表される化合物が好適である。これらの中では、一般式(2)において、R5及びR6が、それぞれ独立にエステル基、エーテル基又はアミド基で分断されていてもよい炭素数12〜14のアルキル基、又はそれぞれ独立にエステル基、エーテル基又はアミド基で分断されていてもよい炭素数16〜18のアルケニル基である化合物、及び/又は、一般式(4)において、R9が炭素数14〜18のアルキル基又はアルケニル基である化合物が特に好ましい。
【0030】
本発明の消臭剤組成物中のポリヒドロキシアミン化合物類(a)と陽イオン性界面活性剤(b)の含有量は、消臭する悪臭の濃度、使用形態、繊維製品の種類によって適宜調整することができる。
(a)成分は、通常0.02質量%以上、好ましくは0.02〜10質量%、より好ましくは0.02〜8質量%、更に好ましくは0.02〜5質量%、更に好ましくは0.02〜3質量%、更に好ましくは0.02〜2質量%、特に好ましくは0.02〜1質量%である。
(b)成分は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.01〜15質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%、更に好ましくは0.02〜10質量%、更に好ましくは0.02〜7質量%、特に好ましくは0.02〜5質量%である。
(a)成分の効果を更に高める観点から、(a)成分と(b)成分の配合比率は、〔(a)/(b)〕の質量比で、好ましくは10/1〜1/10、より好ましくは8/1〜1/8、更に好ましくは5/1〜1/5、更に好ましくは4/1〜1/4、特に好ましくは3/1〜1/3である。
【0031】
本発明の消臭剤組成物において、(a)及び(b)成分以外の残部は水とすることができる。使用する水は、蒸留水やイオン交換水等からイオン成分を除去したものが好ましい。また必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、界面活性剤、及び一般に添加される各種の他の消臭剤、溶剤、油剤、ゲル化剤、硫酸ナトリウムやN,N,N−トリメチルグリシン等の塩、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌・抗菌剤、香料、色素、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。
【0032】
界面活性剤としては特に制限はなく、非イオン性界面活性剤、前記(b)成分以外の陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤の中から選ばれる1種種以上が挙げられる。これらの中では、非イオン性界面活性剤が好ましく、下記一般式(6)で表される化合物が、消臭性能の点から、特に好ましい。
17−A-(DO)d−R18 (6)
式(6)中、R17は、炭素数10〜22、好ましくは炭素数10〜22、より好ましくは炭素数10〜16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R18は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。Aは、−O−基又は−COO−基を示し、Dは、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基から選ばれる1種以上の基を示し、dは平均付加モル数であり、5〜15の数である。d個の(DO)は同じでも異なっていてもよい。
消臭性能向上の観点から、一般式(6)のR17は、好ましくは炭素数10〜18、より好ましくは炭素数10〜16、更に好ましくは炭素数10〜14のアルキル基又はアルケニル基であり、R18は、好ましくは水素原子、又は炭素数1〜2のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基、更に好ましくは水素原子である。
dは、好ましくは5〜14、より好ましくは5〜13、更に好ましくは5〜12であり、ポリオキシエチレン(オキシエチレン基の平均付加モル数n=6〜12。以下のかっこ内の数字も同じである。)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=5〜12)モノアルキル(炭素数12〜14の2級の炭化水素基)エーテル、ラウリン酸ポリオキシチレン(n=6〜13)メチルエーテルから選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0033】
溶剤としては、水、エタノール、イソプロパノール等の低級(炭素数3〜4)アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類(炭素数2〜12)、エチレングリコールやプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールやジプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノール性化合物のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0034】
本発明の消臭剤組成物のpHは6.0〜9.5に調整することが好ましい。pH6.0以上で汗臭やアルデヒド類に対する効果が優れ、またpH9.5以下でアミン類等に対する効果が優れる。
汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭の全てに対する効果、及び皮膚刺激低減の観点から、pHは6.5〜9.5が好ましく、6.8〜9.0が更に好ましい。
本発明の消臭剤組成物のpHは、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより調整することができる。
【0035】
本発明の消臭剤組成物の使用形態は、液状、ゲル状、粉状、粒状等の固体状とすることができる。液状の場合には、特にスプレー、ローション等として用いることができる。本発明の消臭剤組成物は、特に水系消臭剤組成物としてミストタイプのスプレー容器に充填し、一回の噴霧量を0.1〜1mlに調整したものが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器等の公知のスプレー容器を用いることができる。
ゲル状、固体状の場合には、人体、毛髪、ペット等に部分的に使用するのに適している。また、例えば、紙や不織布等に浸漬、噴霧させて空気清浄器のフィルターとして用いる等、据え置き型として使用することもできる。
本発明の消臭剤組成物を用いる消臭方法の対象物は、固体表面を有するものであれば特に制限はない。例えば、カーテン等の布地、スーツ、セーター等の衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品、食器、ゴミ箱、調理台、室内の床、天井、壁等の硬質表面を有する対象物に本発明の消臭剤組成物を付着させ、対象物の臭いを効果的に低減させることができる。特に、繊維製品のような消臭対象の表面積が広い対象物において効果的である。
【実施例】
【0036】
実施例1〜4及び比較例1〜2
<消臭剤組成物の調製>
表1に示す配合処方の消臭剤組成物を調製した。なお、非イオン性界面活性剤としては、炭素数12の直鎖第1級アルコールにエチレンオキサイドを平均8モル付加させたものを使用し、抗菌剤としてはプロキセルBDN(アビシア株式会社製、10%水溶液)を使用し、得られた組成物は、1規定の塩酸又は1/10規定の水酸化ナトリウム水溶液でpH8.0に調整した。
表1中の記号の成分は下記のとおりである。
(a)成分
(a)−1:トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
(a)−2:2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール
(a)−3:2−アミノ−1,3−プロパンジオール
(b)成分
(b)−1:セチルトリメチルアンモニウムクロライド
(b)−2:ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド
(b)−3:下記方法で得た、N,N−ジオレオイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート(37質量%)を主成分とする組成物
【0037】
オレイン酸(含有量77.7重量%、内トランス体含有量21.1重量%;特開平8−99036号公報の比較例3の組成を有するオレイン酸)とトリエタノールアミンとを、オレイン酸/アミン(モル比)=1.7/1で常法により脱水縮合反応して、N,N−ジオレオイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートが37%、N−オレオイルオキシエチル−N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートが27%、N,N,N−トリオレオイルオキシエチルアミンが16%、N,N,N−トリ(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートが5%、未反応脂肪酸が5%、反応溶媒としてエタノールを5%含んだ組成物を得た。
(b)−4:N−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミン塩酸塩(アルカノイル基はステアロイル基/パルミトイル基がモル比で95/5)
【0038】
実施例5
実施例1で得られた消臭剤組成物に香料0.01%を配合し、消臭剤組成物を調製した。なお、香料としては、ケイ皮酸エチル5部、酢酸リナリル10部、リラール部15部、ヘキシルシンナミックアルデヒド10部、パーライド10部、フェニルエチルアルデヒド20部、セダーアルコール10部、及びリモネン20部からなる調合香料を使用した。
【0039】
<消臭対象物の調製>
木綿メリアス布(10cm×10cm)に、臭気成分として、イソ吉草酸の10ppmエタノール溶液、又はノナナールの1%エタノール溶液をスプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて1回スプレーし、30分間乾燥させた後、試験片とした。
<消臭方法>
上記方法にて得た試験片に、表1に示す配合処方の消臭剤組成物をスプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて6回スプレーし、1時間乾燥させた。
<消臭性能評価>
30歳代の男性5人及び女性5人の計10人のパネラーに、試験片の臭いを嗅いでもらい、下記の6段階の臭気強度表示法で評価し、その平均値を求めた。
0:無臭
1:何の臭いか分からないが、ややかすかに何かを感じる強さ(検知閾値のレベル)
2:何の臭いか分かる、容易に感じる弱い臭い(認知閾値のレベル)
3:明らかに感じる臭い
4:強い臭い
5:耐えられないほど強い臭い
平均値0以上1未満を◎、平均値1以上2未満を○、平均値2以上3未満を△、平均値3以上5以下を×として評価した。評価は◎又は○が好ましい。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1から、比較例1及び2の組成物は、汗臭及びアルデヒド臭に対しての消臭性能が不十分であるのに対し、実施例1〜4の消臭剤組成物は、汗臭及びアルデヒド臭のいずれに対しても消臭性能が高いことが分かる。
また、実施例5の消臭剤組成物は、汗臭及びアルデヒド臭のいずれに対しても消臭性能が高く、且つ配合した香料の香調は維持されていた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の消臭剤組成物は、汗臭及びアルデヒド類等に由来する複合臭を消臭でき、水系消臭剤の調製も容易であり、かつ人体に触れても安全である。このため、本発明の消臭剤組成物は、布地、衣類、カーペット、ソファー等の繊維製品、食器、ゴミ箱、調理台、室内の床、天井、壁等の硬質表面を有する対象物に付着した複合臭の消臭剤組成物として、好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)、及び陽イオン性界面活性剤(b)を含有する組成物であって、該陽イオン性界面活性剤(b)が、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されていてもよい炭素数12〜36の飽和又は不飽和の炭化水素基を分子内に1つ以上有し、かつ第3級アミノ基又はその塩、又は第4級アンモニウム基を有する化合物である、消臭剤組成物。
【化1】

(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を表す。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、及び2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオールから選ばれる1種以上である請求項1に記載の消臭剤組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物及び/又はその塩(a)の含有量が0.02〜10質量%であり、陽イオン性界面活性剤(b)の含有量が0.01〜20質量%である、請求項1又は2に記載の消臭剤組成物。
【請求項4】
消臭剤組成物が水系組成物である、請求項1〜3のいずれかに記載の消臭剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の消臭剤組成物を対象物に付着させることにより、対象物の臭いを低減させる消臭方法。

【公開番号】特開2007−229356(P2007−229356A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57441(P2006−57441)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】