説明

消臭効果持続性に優れた消臭シート及びその消臭効果持続方法

【課題】消臭機能とその長期持続性に優れ、シートとしての強度や可撓性や耐摩耗性などの耐久性に優れ、屋外も含めた生活空間や産業資材用途など広範囲に用いられる消臭シート及び、それを用いる消臭効果持続方法。
【解決手段】繊維材料より形成された基布の少なくとも1面上に浸食崩壊性樹脂層が設けられ、メッシュ、帆布、又はターポリンの形態の可撓性繊維複合材料であって、前記浸食崩壊性樹脂層に、合成樹脂バインダーと、光触媒粒子、及び無機消臭性粒子とを含ませて、前記合成樹脂バインダーの質量に対する前記光触媒粒子の含有率を0.5〜5質量%とし、前記浸食崩壊性樹脂層表面部分に存在する前記消臭性粒子の一部が露出している消臭シート及び、それを用いる消臭効果持続方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消臭効果持続性に優れた消臭シート及びその消臭効果持続方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、消臭効果の持続性に優れ、且つシート自体の耐久性にも優れ、屋外も含めた生活空間用途及び産業資材用途など広範囲に利用できる消臭シート及び消臭効果持続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、悪臭除去の要求が増しており、生活空間用途及び産業資材用途を対象にした各種消臭シートが開発されている。消臭シートにも各種の使用状況がある。例えば生活空間では、壁紙などに用いる場合には、施工面から十分な可撓性が求められ、またユーザーには、自由なサイズ・形状に切断できる加工性が必要である。また、産業資材用途では、取り扱い性や施工性の面から、シートとしての十分な強度、高い可撓性及び表面の優れた耐摩耗性が必要である。また、屋外において使用される場合には、高い耐候性及び防汚性も必要であり、また消臭性能の長期持続性も望まれている。
これまでに開発された各種の消臭シートは、下記文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−72194号公報
【特許文献2】特開平1−176448号公報
【特許文献3】特開平4−156852号公報
【特許文献4】特開平11−319050号公報
【特許文献5】特開2003−265587号公報
【0004】
例えば、特許文献1には消臭剤を不織布などの間にはさんだシートが開示されているが、このシートでは消臭剤が表面に露出していないため消臭性能の発揮が困難であり、しかし、これを切断すると内部の消臭剤がこぼれてしまうので、ユーザーがこのシートを自由な大きさ・形状に加工することが難しい。特許文献2には消臭剤を繊維に混抄した繊維シートが開示されているが、このシートでは、消臭剤が脱落する可能性があり、十分な量の消臭剤を混抄するのが難しく、シート自体の表面耐摩耗性が低いという問題がある。特許文献3には消臭剤とバインダー樹脂の混合物を基材に塗布したシートが開示されているが、このシートでは消臭剤が表面に露出しにくくこのため消臭性能の発揮が難しく、かつ消臭性能を阻害しないバインダー樹脂の選定が難しい。特許文献4には消臭剤とバインダー樹脂との発泡剤の混合物をメッシュ基材に塗布し、被膜を発泡させたシートが開示されているが、このシートでは発泡しているため表面の耐摩耗性が不十分であり、また屋外で使用した場合にはその耐候性及び防汚性も不十分である。特許文献5には消臭剤と特定の有機物エマルジョンの混合物を可撓性の基材に塗布したシートが開示されているが、このシートではシートとしての強度や可撓性はある程度は得られる場合もあるが、消臭剤の消臭性能が飽和状態になった場合や、屋外での使用でシート表面に汚れが付着すると、消臭性能の発揮が困難になり、消臭性能が低下するため消臭性能の長期持続性は不十分である。
このように、消臭機能の長期持続性に優れ、且つシート自体の耐久性にも優れ、屋外も含めた生活空間や産業資材用途など広範囲に利用できる消臭シート提供は未だ実現していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、格別のメンテナンスを施すことがなくても消臭機能とその長期持続性に優れ、シートとしての強度や可撓性や耐摩耗性などの耐久性に優れ、屋外も含めた生活空間における用途並びに産業資材用途などの広範囲に用いられる消臭シート及び消臭効果持続方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するために、鋭意検討の結果、合成樹脂バインダー、消臭性粒子、及び特定量の光触媒粒子を含む浸食崩壊性樹脂層を基布上に形成することにより得られたシートが消臭機能及びその持続性に優れ、且つシート自体の耐久性にも優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明の消臭効果持続性に優れた消臭シートは、繊維材料より形成された基布と、この基布の少なくとも一面上に形成された浸食崩壊性樹脂層とを含み、かつメッシュ、帆布、及びターポリンの何れかの形態の可撓性繊維複合材料であって、前記浸食崩壊性樹脂層が、合成樹脂バインダー、光触媒粒子及び無機消臭性粒子を含み、前記光触媒粒子の含有量が、前記合成樹脂バインダーの重量に対して0.5〜5質量%であり、かつ前記無機消臭性粒子の一部分が、前記浸食崩壊性樹脂層の表面において外気に露出していることを特徴とするものである。
本発明の消臭シートにおいて、前記基布が、前記光触媒粒子を含まない合成樹脂によって含浸または被覆、もしくは含浸および被覆されていることが好ましい。
本発明の消臭シートにおいて、前記無機消臭性粒子が、発臭物質に対して、物理的吸着性を有する無機多孔性物質、化学反応性を有する無機酸化・還元性物質及び無機分解反応触媒物質から選ばれた1種以上からなることが好ましい。
本発明の消臭シートにおいて、前記浸食崩壊性樹脂層が発泡セルを含み、前記発泡セルの合計体積が、前記浸食崩壊性樹脂層の全体積に対して、20〜50体積%であることが好ましい。
本発明の消臭シートの消臭効果持続方法は、繊維材料から形成された基布と、この基布の少なくとも1面上に形成され、かつ合成樹脂バインダー及び無機消臭性粒子を含む樹脂層とを有し、メッシュ、帆布及びターポリンのいずれか1種の形態にあり、前記樹脂層表面において消臭作用を発揮する可撓性消臭シートに対し、その前記樹脂層中に、予め前記合成樹脂バインダーの含有質量に対して0.5〜5質量%の光触媒粒子を均一に分散含有させ、前記消臭シートの光を受ける表面において、この表面部分に分布している光触媒粒子の光触媒作用により、それに接している前記合成樹脂バインダーを分解し、それによって前記樹脂層の前記表面部分を浸食崩壊させ、かつ脱落させて、新たなる樹脂層表面を現出させ、この新たに現出した樹脂表面部分において、前記消臭作用及び光触媒作用を発現することを繰り返して、前記消臭効果を持続することを特徴とするものである。
本発明の消臭シートの効果持続方法において、前記基布が、前記光触媒粒子を含まない合成樹脂によって含浸または被覆、或は含浸および被覆されていることが好ましい。
本発明の消臭シートの効果持続方法において、前記無機消臭性粒子が発臭物質に対して、物理的吸着性を有する無機多孔性物質、化学反応性を有する無機酸化・還元性物質、及び無機分解反応触媒物質から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。
本発明の消臭シートの効果持続方法において、前記樹脂層がさらに発泡セルを含み、前記発泡セルの合計体積が前記樹脂層の全体積に対して、20〜50体積%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の消臭シートは、強度や可撓性や耐摩耗性などの耐久性に優れ、しかもメンテナンスを施すことなしに高い消臭機能とその長期持続性を発揮し、かつ大型で長尺のメッシュ、帆布、及びターポリンの形状を有しているので、テント、日除け、間仕切、トラック幌、野積シート、フレキシブルコンテナなどの産業資材として、特に畜産業、水産加工業、産業廃棄物処理業、汚水処理業などの工場や施設に用いることができる。またこれらの消臭シートを任意のサイズに加工して、公共施設の待合所、トイレ、喫煙所などの壁、天井、床などに自在に設置可能であり、またこれらのシートを任意のサイズに裁断して、家庭のトイレ、下駄箱、ゴミ置き場、ペット用敷物などにも広く利用可能である。また本発明の消臭シートの消臭効果持続方法は、上記の用途に用いられる消臭シートの優れた消臭効果を長期にわたって持続させることを可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の消臭シートの一例の構成を示す断面説明図。
【図2】図2−(A)は、本発明の消臭シートの浸食崩壊性樹脂層の初期状態における構成を示す断面説明図。図2−(B)は、上記浸食崩壊性樹脂層の浸食崩壊の進行状態における構成を示す断面説明図。
【図3】本発明の消臭シートの他の一例の構成を示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の消臭シートの構成の一例を図1により説明する。図1は、本発明の消臭シートの一例の構成が示されており、消臭シート1は、基布2と、その1面上に形成された浸食崩壊性能樹脂層3とにより構成されている。
【0011】
本発明の消臭シートに使用される基布は、繊維材料より形成された、この基布形成用繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維、木綿、麻などの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維が挙げられ、これらは単独または2種以上からなる混用繊維によって構成されていてもよく、その形状はマルチフィラメント糸条、短繊維紡績糸条、モノフィラメント糸条、スプリットヤーン糸条、テープヤーン糸条などいずれであってもよい。本発明に使用される基布の組織は、織布、編布、不織布のいずれであってもよい、基布として織布を用いる場合、平織、綾織、繻子織、模紗織などいずれの構造をとるものでもよいが、粗目状の織物は、得られる消臭シートをメッシュシート状として、フィルター効果を発揮して消臭機能を効率的に増進させるために好ましく用いられる。基布として編布を用いるときには、ラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。これら編織物には、少なくともそれぞれ、糸間間隙をおいて配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目状の編織物(空隙率は最大80%、好ましくは5〜50%)、及び非粗目状編織物(糸条間に実質上間隙が形成されていない編織物)が包含される。基布として不織布を用いるときはスパンポンド不織布、フェルトなどが使用できる。これらの繊維基布には必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などが予じめ施されていてもよい。
【0012】
また前記基布として、合成樹脂(光触媒粒子非含有)によって含浸されたもの、被覆されたもの、含浸かつ被覆されたもの、さらにこれらを積層した多重布などを用いることができる。前記合成樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂及びこれらの2種以上の共重合樹脂などを単独で、もしくは、2種以上を混合して用いることができる。
【0013】
本発明の消臭シートの浸食崩壊性樹脂層を構成する合成樹脂バインダーは、光触媒粒子、及び無機消臭性粒子を担持するマトリックスとして機能する。前記合成樹脂バインダーは、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーを包含し、例えば塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリエステル系共重合体樹脂、フッ素樹脂、フッ素系共重合体樹脂、シリコン樹脂、シリコン系共重合体樹脂などを、単独で用いてもよくもしくは、2種以上を併用してもよい。本発明においては、合成樹脂バインダーとして塩化ビニル樹脂(可塑剤、安定剤等を配合した軟質〜半硬質塩化ビニル樹脂を包含する)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、およびポリエステル系共重合体樹脂等の1種以上を用いることが好ましい。本発明の消臭シートの浸食崩壊性樹脂層は、有機顔料、無機顔料により着色することが可能であり、必要に応じて可塑剤、安定剤、充填剤、紫外線吸収剤、接着剤、防炎剤、防黴剤、滑剤等を含むことができる。
【0014】
本発明の消臭シートの前記浸食崩壊性樹脂層に含まれる光触媒粒子は、浸食崩壊性樹脂層中に入射した光による光触媒作用により、それに接する合成樹脂バインダーを徐々に分解するものであって、この樹脂層に浸食崩壊性を付与する重要な構成要素である。この光触媒作用により、浸食崩壊性樹脂層は、その表面から徐々に浸食崩壊される。樹脂層表面の消臭性粒子近傍の合成樹脂バインダーが分解されると、消臭性粒子が露出して外気に触れ、その露出表面積が増大して消臭性能が向上する。また、消臭性粒子の消臭性能が飽和状態になっても、合成樹脂バインダーが徐々に分解脱落して消臭シートの表面を更新するため、経時的に新たな消臭性粒子が浸食崩壊性樹脂層の表面に露出して消臭性能を回復する。また、合成樹脂バインダーの分解は表面から徐々に進むため、長期間に亘って新たな消臭性粒子の表面露出が繰り返され、消臭機能を長期間にわたって持続する効果をもたらす。また、経時的に樹脂層表面が更新されて新しい表面が露出するために汚れが樹脂層表面上に蓄積され難く、このため消臭性粒子表面を阻害する汚れ付着を回避することができ、消臭性能を経時的に安定化することが可能となる。
【0015】
図2−(A)に示されているように、本発明の消臭シートの浸食崩壊樹脂層3の初期状態(浸食崩壊樹脂層3の浸食崩壊が開始される前の状態)においては、合成樹脂バインダー4からなるマトリックス中に無機消臭性粒子5及び光触媒粒子6が、分散して分布しており、浸食崩壊樹脂層の表面7において、一部露出している無機消臭性粒子5は、消臭効果を発揮する。光触媒粒子6は、浸食崩壊樹脂層3中に入射した光により、光触媒作用を発揮して、それに接する合成樹脂バインダー4を分解し、浸食崩壊樹脂層3を、その表面部分から、図2−(B)に示すように内部に向って漸次浸食崩壊して脱落させ、それによって形成された新たな浸食崩壊表面7aに露出した新たな無機消臭性粒子5が、消臭性能を発揮し、また浸食崩壊表面7aに露出している、又はそれに近い位置にある光触媒粒子6は、さらに合成樹脂バインダー4を浸食崩壊させる。このようにして、本発明の消臭シートは、その樹脂層表面を繰り返して更新し、その消臭効果を長期間にわたって持続する。
【0016】
本発明の消臭シートの防臭効果持続方法においては、繊維材料から形成された基布と、この基布の少なくとも1面上に形成され、かつ合成樹脂バインダー及び無機消臭性粒子を含む樹脂層とを有し、メッシュ、帆布及びターポリンのいずれか1種の形態にあり、前記樹脂層表面において消臭作用を発揮する可撓性消臭シートに対し、その前記樹脂層中に、予め前記合成樹脂バインダーの含有質量に対して0.5〜5質量%の光触媒粒子を均一に分散含有させておく。このような消臭シートは、その光を受ける表面において、この表面部分に分布している光触媒粒子の光触媒作用により、それに接している前記合成樹脂バインダーを分解し、それによって前記樹脂層の前記表面部分を浸食崩壊させ、かつ脱落させて、新たなる樹脂層表面を現出させる。このようにして、新たに現出した樹脂表面部分において、前記消臭作用及び光触媒作用を発現することを繰り返すことにより、連続的に更新される樹脂層表面に現出する消臭性粒子により、消臭シートの高い消臭性能が、長期間にわたって持続される。
【0017】
本発明に使用される光触媒粒子は、光触媒作用による分解力を有する酸化物半導体等であり、具体的には、酸化チタン、BaTiO3,SrTiO3,CaTiO3,ZnO,SiC,GaP,CdS,CdSe,MoS3,SnO2,WO3,Fe23,Bi23,V25などが使用できるが、特に好ましくは酸化チタンである。勿論、これらの光触媒は、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いることもできる。この酸化チタンとは、アナターゼ型酸化チタン、ルチン型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸などの他に、水酸化チタン、酸化チタン水和物なども包含するが、特に安価で高い活性をもつアナターゼ型酸化チタンを用いることが好ましい。また、光触媒作用を更に向上させるために、光触媒粒子の表面に白金、金、銀、銅、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の金属や酸化ルテニウム、酸化ニッケルなどの金属酸化物を担持させたものであってもよい。尚、上記の光触媒は、光触媒作用を高めるために、造粒したり、他の物質を混合して多孔質にしたものを使用してもよい。また、本発明に使用する光触媒粒子は、酸化タングステンに白金触媒を担持させた光触媒、窒素ドープ型光触媒など、400nmから800nmの波長の可視光を吸収して活性を示す可視光応答型光触媒も好ましく使用できる。
【0018】
本発明の消臭シートにおいて、前記浸食崩壊性樹脂層中の光触媒粒子の含有量は、前記合成樹脂バインダーの質量に対して、0.5〜5質量%である。この含有量が0.5質量%未満の場合は、合成樹脂バインダーに対する光触媒作用の分解力が不十分であるため、樹脂層の浸食崩壊性が低下して消臭性粒子の消臭効果とその持続性を十分に発揮させることができず、消臭性能およびその持続性が不十分となる。前記含有量が5質量%を越える場合は、前記合成樹脂バインダーに対する光触媒作用による分解力が過多となり、樹脂層の浸食崩壊が過度に加速され、短期間のうちに合成樹脂バインダーが崩落してしまい、新規に露出した消臭性粒子ごと脱落するようになり、このため消臭性能の持続期間が短くなり、また、経時的に樹脂層の浸食崩壊が進むため樹脂強度が低下し、浸食崩壊性樹脂層の耐摩耗性も低下し、シートとしての耐久性も不十分なものとなる。
【0019】
本発明の消臭シートの浸食崩壊性樹脂層に含まれる無機消臭性粒子は、発臭物質、例えば、アンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メチルメルカプタン、及びホルムアルデヒドなどに対して物理的吸着性を有する無機多孔性物質、並びに前記発臭物質に対して化学反応性を有する無機酸化・還元性物質、及び無機触媒物質から選ばれた1種以上の無機系消臭性粒子が使用される。前記無機系消臭性粒子のうち、物理的吸着によって消臭する多孔性物質としては、活性炭、添着活性炭、活性白土、天然ゼオライト、合成ゼオライト(親水・疎水)、ベントナイト、セピオライト、シリカ、シリカ−マグネシアなどの粒子が用いられる。また、無機系消臭性粒子のうち、化学反応によって無臭化する酸化・還元性物質、及び触媒物質としては、酸化亜鉛系、白金系、鉄−マンガン系、チタン系、シリカ−アルミナ系、トルマリン系等の酸化鉱石類などの粒子が用いられる。また、これらの無機消臭性粒子を、単独で用いてもよくもしくは、2種以上を併用してもよい。無機消臭性粒子の含有量は、樹脂100質量部に対し10〜70質量部であることが好ましい。一方、人工酵素、天然酵素、例えばフィトンチット、フラボノイド、タンニン、カテキンなどの有機系消臭物質を本発明の消臭シートに使用した場合は、有機消臭物質自体が光触媒粒子の光触媒分解作用により経時的に分解されてしまうため、消臭性能の持続性は不十分なものとなる。
【0020】
本発明の消臭シートにおいて、前記浸食崩壊性樹脂層が発泡セルを含有していてもよい。発泡セルを浸食崩壊性樹脂層の全体積に対して20〜50体積%の合計含有量で含有することにより、浸食崩壊性樹脂層の表面の浸食崩壊に伴って露出する新しい表面の面積が増大し、同時に消臭性粒子の露出表面積が増大することにより、消臭性能が向上する。浸食崩壊性樹脂層に発泡セルを含有させるには、化学発泡剤の熱分解ガスによる方法、粘性樹脂の攪拌による空気巻込みによる機械発泡、ガス内包マイクロカプセルを発泡させた樹脂バルーン粒子の添加などの方法が挙げられる。化学発泡剤としては、アゾジカルボアミド(ADCA)、オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド(OBSH)、ベンゼンスルフォニルヒドラジド(BSH)、p−トルエンスルフォニルヒドラジド(TSH)、ジアゾアミノベンゼン(DAB)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の熱分解型化学発泡剤がある。これらの発泡剤は単独で使用することもできるし、複数の熱分解型化学発泡剤を併用することもできる。本発明の消臭シートの浸食崩壊性樹脂層が発泡セルを、20〜50体積%含有することが好ましい。発泡セルの含有率が20体積%未満の場合は、発泡セル含有による消臭効果の飛躍的向上が認められないことがあり、また、発泡セル含有率が50体積%を超えると浸食崩壊性樹脂層の強度が低下し、摩耗により消臭性粒子が脱落しやすくなることがある。発泡セルを含有する浸食崩壊性樹脂層の厚さは、0.1〜1.0mmであることが好ましく、特に0.2〜0.5mmであることがより好ましい。層の厚さが0.1mm未満であると、消臭効果の飛躍的向上効果が認められないことがあり、また、層の厚さが1.0mmを超えると得られる消臭シートの重さが過大になり、取り扱い性が悪化することがある。
【0021】
本発明の消臭シートにおいて、前記浸食崩壊性樹脂層を形成するには、繊維材料より形成された基布に対して前記浸食性崩壊樹脂層形成用成分の溶解分散液をディッピング(含浸、含浸・被覆)、コーティング(含浸、被覆、含浸・被覆)、ラミネート(積層被覆)などの加工によって付与される。本発明の消臭シートはメッシュ、帆布、及びターポリンの何れかの形態にあり、その基布としては、空隙率5〜80%、好ましくは5〜50%の粗目編織物、及び基布の糸条間に実質上間隙が形成されていない非粗目編織物を用いることができ、このうちメッシュ形態の消臭シート用基布としては、空隙率5〜50%の粗目編織物が好適に用いられ、帆布形態の消臭シート用基布としては非粗目編織物が好適に用いられる。メッシュ形態の消臭シート、及び帆布形態の消臭シートの場合、前記の基布に対して、合成樹脂バインダー、光触媒粒子、及び無機消臭性粒子とを含む液状の熱可塑性樹脂液を用いて、ディッピング加工(繊維基布への両面加工)、及びコーティング加工(繊維基布への片面加工、または両面加工)等を施すことによって消臭シートを製造することができる。バインダー用の液状熱可塑性樹脂としては、有機溶剤に可溶化した熱可塑性樹脂、水中で乳化重合された熱可塑性樹脂エマルジョン(ラテックス)、あるいは、熱可塑性樹脂を水中に強制分散させ安定化したディスパージョン樹脂などの水分散樹脂、ペースト塩化ビニル樹脂ゾルがあげられる。特に消臭機能を効率的に発揮させる目的には、空気流に対するフィルター効果に優れているメッシュ形態の消臭シートであることが好ましい。ターポリン形態のシートは、光触媒粒子、及び無機消臭性粒子とを含むフィルム又はシートを、カレンダー成形法、またはTダイス押出法により成形し、このフィルム又はシートを、前記基布の片面または両面に接着剤層を介して又は熱ラミネートする方法、あるいは空隙率が5〜80%、好ましくは5〜50%の粗目織物からなる基布の両面上に、目抜け空隙部を介して熱ラミネート又は接着剤ラミネートする方法により製造することができる。さらに前記ターポリン形態の消臭シートは、基布上に、ディッピング加工またはコーティング加工と、フィルムラミネート加工工程の組み合わせからなる方法により浸食崩壊性樹脂層の形成することによっても製造が可能である。
【0022】
また、本発明の消臭シートのもう1つの態様は、光触媒粒子を含まない合成樹脂によって含浸または被覆、もしくは含浸および被覆された基布に対して、その片面、もしくは両面に浸食崩壊性樹脂層が設けられている、メッシュ、帆布、及びターポリンの何れかの形態である。図3に示された消臭シート1において、基布2の一面上に、光触媒粒子を含まない合成樹脂による形成された合成樹脂層8が配置され、その上に浸食崩壊性樹脂層3が形成されている。このような合成樹脂層8には、無機消臭性粒子は含まれていてもよく、また、含まれていなくてもよい。また、光触媒粒子を含まない合成樹脂は、前述の浸食崩壊性樹脂層を形成する合成樹脂バインダーから選ばれていてもよく、好ましくは、前述の浸食崩壊性樹脂層を形成する合成樹脂バインダーと同一の合成樹脂バインダーから選ばれる。このような、「光触媒粒子を含まない合成樹脂層/浸食崩壊性樹脂層」による2層構造を形成することによって、浸食崩壊性樹脂層が全て消失して消臭機能持続期間を終えた後は、光触媒粒子を含まない合成樹脂で含浸・被覆された繊維基布が残留し、それによって、従来のメッシュ、帆布、またはターポリンとして使用することが可能となる。光触媒粒子を含まない合成樹脂層と、浸食崩壊性樹脂層との目付け(g/m2)の質量比は、10:1〜1:3、好ましくは10:3〜1:2であることが好ましい。前記質量比が10:1に満たないと、充分な消臭効果と持続性とが得られないことがあり、また前記質量比が1:3を越えると、消臭効期間を終えた後のシートに、十分な機械的物性、および耐久性が得られないことがある。
【実施例】
【0023】
本発明を下記実施例によりさらに説明する。
試験方法の説明
下記実施例において、初期および6ヶ月間実用試験後の試料について実施した消臭性能試験、耐摩耗性試験、および6ヶ月間の実用試験の試験方法は下記の通りである。
(1)消臭性能試験
容積5LのTedlar(登録商標)バッグに、寸法:10cm×10cmのシート試料を入れ、これに濃度10ppmに調整されたアンモニアガス3リットルを注入し、2時間後および24時間後のアンモニアガス濃度を検知管で測定した。
(2)耐摩耗性試験
日本工業規格JIS L 1096 B法スコット形法に従って、供試シート試料と荷重1kgで1000回の往復摩擦試験を施し、供試試料の樹脂層の状態を目視評価した。
(3)6ヶ月間の実用試験
養鶏場の外側の囲いに垂直にシート試料を設置し、6ヶ月間大気中に曝露後に試料を採取し、6ヶ月間実用試験後のシート試料として、前記消臭性能試験及び、耐摩耗性試験に供した。
【0024】
実施例1
基布として、下記組織のポリエステルフィラメント粗目状織物を用いた。
(1111dtex/3×1111dtex/3)/
(7本/25.4mm×7本/25.4mm) 質量:200g/m2
この基布を、合成樹脂バインダーとしてペースト塩化ビニル樹脂、無機消臭性粒子として活性アルミナ粉末、光触媒粒子としてアナターゼ型酸化チタン光触媒粉末を含む下記配合1の樹脂組成物の溶剤希釈液中にディッピングして、基布に樹脂液を含浸し、絞り、150℃で1分間乾燥後、185℃で1分間熱処理し、基布両面に対し樹脂を合計250g/m2付着させて、合計重量450g/m2の消臭シート(メッシュシート)を作製した。
<配合1>ペースト塩化ビニル樹脂の配合組成
合計樹脂バインダー:光触媒粒子質量比=97:3
組成
合成樹脂バインダー 176質量部
ペースト塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 70質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
光触媒粒子 5.44質量部
無機消臭性粒子 50質量部
溶剤(トルエン) 30質量部
(註)光触媒粒子:アナターゼ型酸化チタン光触媒粉末(平均粒子径1μ)
(註)無機消臭性粒子:活性アルミナ粉末、平均粒子径10μ
この消臭メッシュシートを前記試験に供した。試験結果を表1に示す。
【0025】
実施例2
実施例1と同様にして消臭シートを作製した。但し、基布として下記織物のポリエステルスパン織物を用い、無機消臭性粒子として疎水性ゼオライト粉末を用いた。
(20番手/2×10番手/1)/
(49本/25.4mm×47本/25.4mm) 質量:250g/m2
この基布に両面に、ペースト塩化ビニル樹脂を含む下記配合2の樹脂組成物の溶剤希釈液をコーティングし、150℃で1分間乾燥後、185℃で1分間熱処理し、基布に対し樹脂300g/m2を付着させて、合計重量550g/m2の消臭シート(帆布)を作製した。
<配合2>ペースト塩化ビニル樹脂配合組成
合成樹脂バインダー:光触媒粒子質量比=97:3
組成
合成樹脂バインダー 166質量部
ペースト塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 60質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
光触媒粒子 5.13質量部
無機消臭性粒子 40質量部
溶剤(トルエン) 10質量部
(註)光触媒粒子:アナターゼ型酸化チタン光触媒粉末(平均粒子径1μ)
(註)無機消臭性粒子:疎水性ゼオライト粉末;平均粒子径3μ
この消臭シートを前記試験に供した。試験結果を表1に示す。
【0026】
実施例3
実施例1と同様にして消臭シートを作製した。但し、基布として下記組織のポリエステルフィラメント織物を用い、無機消臭性粒子として酸化亜鉛粉末を用いた。
(555dtex/1×555dtex/1)/
(19本/25.4mm×19本/25.4mm) 質量:90g/m2
ストレート塩化ビニル樹脂を含む下記配合3の樹脂組成物からなる樹脂フィルム(0.16mm厚)をカレンダーで作成し、この基布の両面に、熱ラミネートして、片面200g/m2の樹脂層を形成し(両面で400g/m2)、合計重量490g/m2の消臭シート(ターポリン)を作製した。
<配合3>ストレート塩化ビニル樹脂配合組成
合成樹脂バインダー:光触媒粒子質量比=97:3
組成
合成樹脂バインダー 161質量部
ストレート塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 55質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
光触媒粒子 4.98質量部
無機消臭性粒子 40質量部
(註)光触媒粒子:アナターゼ型酸化チタン光触媒粉末(平均粒子径1μ)
(註)消臭性粒子:酸化亜鉛粉末、平均粒子径10μ
この消臭シートを前記試験に供した。試験結果を表1に示す。
【0027】
実施例4
実施例1と同様にして消臭シートを作製した。但し、樹脂配合をポリウレタン樹脂を含む下記配合4の樹脂組成物に変更し、無機消臭性粒子としてトルマリン粉末を用いた。
<配合4>ポリウレタン樹脂配合組成
合成樹脂バインダー:光触媒粒子質量比=97:3
組成
合成樹脂バインダー (固形分)35質量部
ポリウレタン樹脂 100質量部
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂ディスパージョン、固形分30質量%)
カルボジイミド化合物 5質量部
光触媒粒子 1.08質量部
無機消臭性粒子 20質量部
(註)光触媒粒子:アナターゼ型酸化チタン光触媒粉末(平均粒子径1μ)
(註)無機消臭性粒子:トルマリン粉末、珪酸塩鉱物粉末(平均粒子径10μ)
この消臭シートを前記試験に供した。試験結果を表1に示す。
【0028】
実施例5
実施例1と同様にして消臭シートを作製した。但し、ペースト塩化ビニル樹脂を含む樹脂組成物にオキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド(OBSH系)発泡剤を添加し、下記配合5の樹脂組成物に変更した。
<配合5>ペースト塩化ビニル樹脂配合組成
合成樹脂バインダー:光触媒粒子質量比=97:3
組成
合成樹脂バインダー 176質量部
ペースト塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 70質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
光触媒粒子 5.44質量部
無機消臭性粒子 50質量部
発泡剤(OBSH系) 4質量%部
溶剤(トルエン) 20質量%部
(註)光触媒粒子:アナターゼ型酸化チタン光触媒粉末(平均粒子径1μ)
(註)無機消臭性粒子:活性アルミナ粉末、平均粒子径10μ
この消臭シートを前記試験に供した。試験結果を表1に示す。
【0029】
実施例6
実施例1と同様にして消臭シートを作製した。但し、基布として、下記配合6のペースト塩化ビニル樹脂を含む樹脂組成物の溶剤希釈液を含浸被覆し、基布に対し塩化ビニル樹脂を100g/m2付着させたポリエステルフィラメント粗目状織物を用いた。
<配合6>基布を含浸被覆するためのペースト塩化ビニル樹脂配合組成
ペースト塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 60質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
顔料(酸化チタン) 5質量部
トルエン(溶剤) 10質量部
この消臭シートを前記試験に供した。試験結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示されているように、実施例1〜6で得られたシートは初期の消臭性能に優れ、6ヶ月の実用試験後も初期と同様の消臭性能を持続しており、また表面の耐摩耗性に優れた消臭シートであった。特に6ヶ月の実用試験後の試料は、光触媒粒子の分解作用の効果によって汚れも殆ど付着せず優れた防汚性を示していた。また、実施例5ではさらに樹脂層に発泡剤を含有し適度に発泡させることにより、耐摩耗性を維持した状態で実施例1に比べ消臭性能が向上していた。
【0032】
比較例1
実施例1と同様にして消臭シートを作製した。但し、光触媒粒子を用いず、実施例1のペースト塩化ビニル樹脂配合を下記配合7のように変更し、消臭シートを作製した。
<配合7>ペースト塩化ビニル樹脂配合組成
光触媒粒子を含まず
組成
合成樹脂バインダー 176質量部
ペースト塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 70質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
無機消臭性粒子 50質量部
溶剤(トルエン) 30質量部
(註)無機消臭性粒子:活性アルミナ粉末、平均粒子径10μ
このシートを前記試験に供した。試験結果を表2に示す。
得られたシートは、実施例1で得られたシートに比べ、6ヶ月の実用試験後の消臭性能が低下しており、消臭性能の持続がないシートであった。これは、光触媒粒子を添加してないため、合成樹脂バインダーの経時的分解がなく、シート表面に露出した消臭性粒子が経時的に変わらないため、消臭性粒子の消臭性能が飽和状態になり、消臭性能を持続できないと考えられる。
【0033】
比較例2
実施例1と同様にして消臭シートを作製した。但し、実施例1のペースト塩化ビニル樹脂配合を下記配合8のように変更し、光触媒粒子を0.3質量%配合しシートを作製した。試験結果を表2に示す
<配合8>ペースト塩化ビニル樹脂配合組成
合成樹脂バインダー:光触媒粒子質量比=99.7:0.3
組成
合成樹脂バインダー 176質量部
ペースト塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 70質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
光触媒粒子 0.53質量部
無機消臭性粒子 50質量部
溶剤(トルエン) 20質量部
(註)光触媒粒子:アナターゼ型酸化チタン光触媒粉末(平均粒子径1μ)
(註)消臭性粒子:活性アルミナ粉末、平均粒子径10μ
このシートを前記試験に供した。試験結果を表2に示す。
得られたシートは、実施例1で得られたシートに比べ、6ヶ月の実用試験後の消臭性能が低下しており、消臭性能の持続がないシートであった。これは、光触媒粒子の含有量が0.3質量%と少なく、光触媒作用による分解力が小さいため、シート表面に露出した消臭性粒子が経時的に変わらないため、消臭性粒子の消臭性能が飽和状態になり、消臭性能を持続できないと考えられる。
【0034】
比較例3
実施例1と同様にして消臭シートを作製した。但し、実施例1のペースト塩化ビニル樹脂配合を下記配合9のように変更し、光触媒粒子を10質量%配合しシートを作製した。試験結果を表2に示す
<配合9>ペースト塩化ビニル樹脂配合組成
合成樹脂バインダー:光触媒粒子質量比=90:10
組成
合成樹脂バインダー 176質量部
ペースト塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 70質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
光触媒粒子 19.6質量部
無機消臭性粒子 50質量部
溶剤(トルエン) 20質量部
(註)光触媒粒子:アナターゼ型酸化チタン光触媒粉末(平均粒子径1μ)
(註)消臭性粒子:活性アルミナ粉末、平均粒子径10μ
このシートを前記試験に供した。試験結果を表2に示す。
得られたシートは、実施例1で得られたシートに比べ、6ヶ月の実用試験後の消臭性能が低下しており、消臭性能の持続がなく、また、実用試験後の耐摩耗性も低下しているシートであった。これは、光触媒粒子の含有量が10質量%と高く、経時的に光触媒作用による合成樹脂バインダーである塩ビ樹脂の分解が進み、消臭性粒子が脱落し樹脂強度も低下したと考えられる。
【0035】
比較例4
実施例1と同様にして消臭シートを作製した。但し、実施例1のペースト塩化ビニル樹脂配合を下記配合10のように変更し、無機系消臭性粒子の代わりに有機系消臭性粒子(カテキン粉末)を配合し、シートを作製した。
<配合10>ペースト塩化ビニル樹脂配合組成
合成樹脂バインダー:光触媒粒子質量比=97:3
組成
合成樹脂バインダー 176質量部
ペースト塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(可塑剤) 70質量部
エポキシ化大豆油 4質量部
Ba−Zn系安定剤 2質量部
光触媒粒子 5.44質量部
有機消臭性粒子 20質量部
溶剤(トルエン) 20質量部
(註)光触媒粒子:アナターゼ型酸化チタン光触媒粉末(平均粒子径1μ)
(註)有機消臭性粒子:カテキン粉末、平均粒子径5μ
このシートを前記試験に供した。試験結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
上記比較例1〜4において得られたシートは、実施例1で得られたシートに比べ、6ヶ月の実用試験後の消臭性能が低下しており、消臭性能の持続性がないシートであった。これは、光触媒粒子の光触媒分解作用により有機系消臭性粒子であるカテキン粉末自体が経時的に分解されるため消臭性能が低下したと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明により得られる消臭シートは、強度や可撓性や耐摩耗性などの耐久性に優れ、しかもメンテナンスフリーによる消臭機能とその長期持続性を有する、大型で長尺のメッシュ、帆布、及びターポリンを得ることができるので、テント、日除け、間仕切、トラック幌、野積シート、フレキシブルコンテナなどの産業資材として、特に畜産業、水産加工業、産業廃棄物処理業、汚水処理業などの工場や施設に用いることができる。またこれらのシートを任意のサイズに加工して、公共施設の待合所、トイレ、喫煙所などの壁、天井、床などに自在に設置可能であり、またこれらのシートを任意のサイズに裁断して、家庭のトイレ、下駄箱、ゴミ置き場、ペット用敷物などにも広く利用可能である。さらに本発明方法は、本発明の消臭シートを用いることにより、その優れた消臭性能を長期間にわたって持続することを可能にする。
【符号の説明】
【0039】
1 消臭シート
2 基布
3 浸食崩壊性樹脂層
4 合成樹脂バインダー
5 無機消臭性粒子
6 光触媒粒子
7,7a 浸食崩壊性樹脂層の表面
8 光触媒粒子を含まない合成樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料より形成された基布と、この基布の少なくとも一面上に形成された浸食崩壊性樹脂層とを含み、かつメッシュ、帆布、及びターポリンの何れかの形態の可撓性繊維複合材料であって、前記浸食崩壊性樹脂層が、合成樹脂バインダー、光触媒粒子、及び無機消臭性粒子を含み、前記光触媒粒子の含有量が、前記合成樹脂バインダーの質量に対して0.5〜5質量%であり、かつ、前記消臭性粒子の一部分が、前記浸食崩壊性樹脂層の表面において、外気に露出していることを特徴とする消臭効果持続性に優れた消臭シート。
【請求項2】
前記基布が、前記光触媒粒子を含まない合成樹脂によって含浸または被覆、或は含浸および被覆されている、請求項1に記載の消臭シート。
【請求項3】
前記無機消臭性粒子が、発臭物質に対して物理的吸着性を有する無機多孔性物質、化学反応性を有する無機酸化・還元性物質、及び無機分解反応触媒物質から選ばれた1種以上からなる、請求項1または2に記載の消臭シート。
【請求項4】
前記浸食崩壊性樹脂層が発泡セルを含み、前記発泡セルの合計体積が前記浸食崩壊性樹脂層の全体積に対して、20〜50体積%である、請求項1〜3何れか1項に記載の消臭シート。
【請求項5】
繊維材料から形成された基布と、この基布の少なくとも1面上に形成され、かつ合成樹脂バインダー及び無機消臭性粒子を含む樹脂層とを有し、メッシュ、帆布及びターポリンのいずれか1種の形態にあり、前記樹脂層表面において消臭作用を発揮する可撓性消臭シートに対し、その前記樹脂層中に、予め前記合成樹脂バインダーの含有質量に対して0.5〜5質量%の光触媒粒子を均一に分散含有させ、前記消臭シートの光を受ける表面において、この表面部分に分布している光触媒粒子の光触媒作用により、それに接している前記合成樹脂バインダーを分解し、それによって前記樹脂層の前記表面部分を浸食崩壊させ、かつ脱落させて、新たなる樹脂層表面を現出させ、この新たに現出した樹脂表面部分において、前記消臭作用及び光触媒作用を発現することを繰り返して、前記消臭効果を持続することを特徴とする消臭シートの消臭効果持続方法。
【請求項6】
前記基布が、前記光触媒粒子を含まない合成樹脂によって含浸または被覆、或は含浸および被覆されている、請求項5に記載の消臭シートの効果持続方法。
【請求項7】
前記無機消臭性粒子が発臭物質に対して、物理的吸着性を有する無機多孔性物質、化学反応性を有する無機酸化・還元性物質、及び無機分解反応触媒物質から選ばれた1種以上を含む請求項5または6に記載の消臭シートの効果持続方法。
【請求項8】
前記樹脂層がさらに発泡セルを含み、前記発泡セルの合計体積が前記樹脂層の全体積に対して、20〜50体積%である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の消臭シートの効果持続方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−264137(P2010−264137A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119289(P2009−119289)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】