説明

消雪ブロック及びその製造方法

【課題】路面に埋設設置されて路面消雪を実施する消雪ブロックの製造コストの低減を実現し、また路面露出部分(ノズル体上面)の経年変化や損傷への対策(部材の変更)が安価に且つ作業を容易に実施することができる消雪ブロックを提供する。
【解決手段】通水管2及び立ち上がり管3をコンクリートブロック本体1内に設け、立ち上がり管の上方部分のブロック本体に、上部が開口した水室部41を形成し、前記水室部の上部を密閉する蓋部(蓋体42)、及び立ち上がり管と連通すると共に開閉弁機構を内装した筒部(中央弁体43)を備え、上面に散水部(散水孔421)を設けた散水部材を、水室部内に装着してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消雪道路に埋設設置する消雪ブロック及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
路面の雪を散水で融かす消雪道路は、一般に道路中央に溝を穿設し、溝底に給水管を配置すると共に、給水管と連結した散水ノズルを適当間隔毎に配置し、しかる後散水ノズルの散水口(上面部分)が路面に露出するように溝内にコンクリートを打設していたものである。しかし、前記の工事は道路の交通事情を悪化させるので、工事期間を短縮することを目的として、溝に埋設する給水管となる通水管及び散水ノズルをコンクリート等で一体化した長尺の消雪ブロックを予め用意しておき、道路に堀穿した溝内に前記ブロックを埋設し、ブロック間を連結して消雪道路を形成することが知られている(特許文献1:特開平10−311013号公報、特許文献2:特開2002−356824号公報)。
【0003】
前記の消雪ブロックは、基本的に所定の型枠に両端に接続部を有する通水管を配置すると共に、前記通水管に所定間隔で立ち上げ管を連結し、立ち上げ管の先端にノズル体を装着し、適宜な鉄筋を配置して、ノズル体の上面が露出するように生コンクリートを充填し、コンクリートが固化することで製出されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−311013号公報。
【特許文献2】特開2002−356824号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の消雪用ブロックは、通常4個の散水ノズル体を組み込んでおり、前記の散水ノズル体は周知のとおり、一般的には所定の立ち上がり管と連結する水室を備えると共に、散水孔を備え、ステンレス鋳物で製造されている本体(本体部と蓋体部で構成される場合もある)と、前記水室内への通水量を制御する開閉弁機構を内設した中央弁体とで形成されている。
【0006】
従って従前の消雪ブロックは、通水管、立ち上がり管、散水ノズル体が必要とする部品であり、通水管及び立ち上がり管には塩ビ管などの安価材を採用することでコストダウンを実現することができるが、散水ノズル体を省略することができなかったので、より有効なコストダウンを実現することができなかった。
【0007】
また消雪道路においては、経年変化によって散水ノズル体の表面が摩耗したり、損傷した場合にその取り換えが必要であるが、その取り換え作業は非常に煩瑣であった。
【0008】
即ち散水ノズル体の取り換え作業は、取り換え対象の散水ノズル体の周りのコンクリート部分をコアカッターで切断し、その後ハツリ機などでノズル本体の周りのコンクリート部分を除去し、古いノズル本体を取り外して新しいノズル体を装着し、新規のノズル体周囲にモルタルを充填し、モルタルの固化で改修作業の終了となる。このように散水ノズル体の取り換え作業は非常に煩瑣であった。
【0009】
そこで本発明は、低コスト化が実現し、また散水露出部分(ノズル体上面)の経年変化や損傷への対策(部材の変更)がより簡単に実施することのできる新規な消雪ブロック及びその製造方法を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る消雪ブロックは、通水管を内装貫通し、所定間隔で前記通水管と接続した立ち上がり管を、コンクリートブロック本体内に設けると共に、立ち上がり管の上方部分のブロック本体に、上部が開口した水室部を形成し、前記水室部の上部を密閉する蓋部、及び立ち上がり管と連通接続すると共に開閉弁機構を内装した筒部を備え、上面に散水部を設けた散水部材を、水室部内に装着してなることを特徴とするものである。
【0011】
然して従前と同様に消雪ブロックを路面に埋設しながら順次連結して、所定の消雪道路が施工されるもので、通水管に供給された消雪用水は、立ち上がり管から開閉弁機構を通って水室部に入り、散水孔から路面上に散水される。また散水部材は、前記水室部に着脱自在に装着することになるので、容易に変更することができる。
【0012】
また本発明(請求項2)に係る消雪ブロックは前記の消雪ブロックにおいて、特に水室部の内壁面を樹脂壁としてなるもので、地下水の鉄分や通水管や立ち上がり管、その他の消雪用水供給管に金属管を採用している場合における金属管の錆び等が水室部の内壁に付着するのを防止できる。
【0013】
また本発明に係る消雪ブロックの製造方法は、所定の型枠内に、所定間隔で立ち上がり管を接続した通水管を長尺方向に配置すると共に、立ち上がり管に所定形状の水室部を形成する水室型部材を、上面が型枠面と当接するように装着し、前記型枠内にコンクリートを充填固化させた後に、水室型部材を取り外し、形成された水室部の上部を密閉する蓋部、及び立ち上がり管と連通すると共に開閉弁機構を内装した筒部を備え、上面に散水孔を設けた散水部材を、前記水室部内に装着してなることを特徴とするもので、前記した散水ノズル体を使用しない消雪ブロックを製出できたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記したとおり消雪ブロックにおいて、ブロック本体で水室部を形成するので、従前のような散水ノズル体を使用することなく、散水部材を採用することで消雪ブロック製造コストの低廉化が実現でき、また散水部材が着脱可能であるから、経年変化に対応する補修も容易にできるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した消雪ブロックは、基本的に従前と同様の構成で、長尺棒状のコンクリート製のブロック本体1内に、通水管2を貫通配置し、通水管2の両端には隣接接続される次の消雪ブロックの通水管と連結する適宜な連結部21を設け、通水管2には所定間隔で立ち上がり管3を連結し、立ち上がり管3に散水部4を設けてなるものである。
【0016】
この従前の散水ノズル体と対応する散水部4が本発明の特徴で、散水部4は、本体1に形成された所定形状の水室部41と、散水部材となる蓋体42及び中央弁体43で構成されるものである。
【0017】
水室部41は、径小の下方水室411、径大の上方水室412と、開口部分の段差部413を備えた形状であり、さらに内壁は樹脂で被覆されているものであり、ブロック本体1の製造時に形成される。
【0018】
このブロック本体1の製造は、従前と同様に所定の型枠5内に、所定間隔で立ち上がり管3を接続した通水管2を長尺方向に配置する。特に本発明においては、立ち上がり管3に水室部41の形状に対応する水室型部材6を装着し、所定の鉄筋7を配置して、型枠5内に生コンクリート液を充填固化させた後に、水室型部材6を取り外して水室部41を形成するものである。
【0019】
前記の水室型部材6の立ち上がり管3への装着は、後述する散水部材(中央弁体43)の立ち上がり管3への装着構造と対応して定められるものである。
【0020】
例えば立ち上がり管3の上端に連結部31を装着するもので、連結部31は上方部分に螺孔32を形成し、下方部分には立ち上がり管3の上端に外嵌挿する下筒部33に形成し、下筒部33の内方に水密性を確保するためのOリング34を配置し、更に連結部31の外周面全体は粗面に形成しているものである。
【0021】
水室型部材6は、下端に前記螺孔32に螺合装着される螺軸部61を備え、胴部は、水室部41の形状に対応して下方径小部62、上方径大部63、上方鍔部64を備え、螺孔32に螺軸部61を螺合装着して、水室型部材6をその上面が型枠5に当接させる状態(生コンクリート液が流入しない状態)で、立ち上がり管3と連結する。尚水室型部材6の上面に凹部を形成したり、埋設型ハンドルを装備させたり、或いは着脱式ハンドルを設けるなどの着脱操作機構を付設しておくものである。
【0022】
また水室型部材6の螺軸部61以外の周面に対応する多段筒形状で、外周面を粗面とした樹脂被覆材8を用意し、予め水室型部材6に装着しておく。
【0023】
次に型枠5内に生コンクリート液Aを流し入れ、固化した後にブロック本体1を型枠5から外し、更に水室型部材6を取り外すと、ブロック本体1の上面に所定の水室部41が形成されることになる。
【0024】
そしてこの水室部41に散水部材である蓋体42と中央弁体43を装着するもので、蓋体42は、段差部413に密嵌合する外形で、表裏貫通する散水孔421を設けてなると共に、中央に段落周面を備えた中央装着孔(上方装着孔422と下方装着孔423)を設けたもので、段差部413上に密閉用リングパッキン424を介在させて載置する。
【0025】
中央弁体43は、基本的に従前の散水ノズル体に採用されているものと同一構造で、径大の頭部431と筒部432からなる。頭部431は、上方装着孔422に対応する外形で、中央上面に矩形孔433と、筒部432の上部開口部434が形成されており、筒部432は、内部に回転可能で且つ筒部周壁に形成した通水孔435を開閉する弁棒436を水密状態で挿着しており、筒部432の下方部分外周に螺孔32に螺合するネジ部437を形成してなるもので、弁棒436によって開閉される通水孔435は、装着時に下方水室411に位置するように形成しているものである。
【0026】
そして蓋体42を段差部413に嵌合載置し、下方装着孔423から筒部432を差し入れ、頭部431を上方装着孔422に係止し、矩形孔433に工具を嵌合して中央弁体43を回転させて、螺孔32にネジ部437を螺合して、蓋体42で水室部41の上面開口部分を閉塞し、消雪ブロックが完成するものである。尚矩形孔433には、必要に応じてゴム栓を装着しておくものである
【0027】
この消雪ブロックは、従前のブロックと同様に路面に埋設しながら順次連結して、所定の消雪道路を構築するもので、散水時(消雪を必要とする季節)には、ゴム栓を外して、弁棒436を回動操作して、通水孔435を開口し、通水管2に消雪用水を供給するものである。
【0028】
通水管2に供給された消雪用水は、立ち上がり管3から中央弁体43の筒部432に入り、弁棒436で開閉制御される通水孔435から噴射して下方水室411の壁面に衝突して攪拌状態となり、上方水室412で水流が安定し、各散水孔421から均一に路面に噴射されることになり、従前と同様の消雪効果が発揮されるものである。
【0029】
特に上記の消雪ブロックにおいては、従前必要とされていた散水ノズル体の水室形成のためのノズル本体部分(通常はステンレス鋳物)を必要としないので、製造コストが格段に低減されるものであり、経年変化による摩耗や車両の走行による損傷に対しても、散水部材(蓋体42及び中央弁体43)を取り換えるのみで対応できる大きな利点も有するものである。
【0030】
尚本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、散水孔421を蓋体42に形成せずに、例えば図6に例示するように、蓋体42bの上面に散水傾斜面425を形成し、中央弁体43aの頭部431aに散水孔438を形成しても良い。
【0031】
更には図7に例示するように、蓋体42bの上面に散水傾斜溝部426を形成し、中央弁体43bの頭部431bに、前記散水傾斜溝部426の一部上方を塞ぐ鍔部439を設けて散水孔を形成しても良い。
【0032】
勿論散水部材を蓋体42と中央弁体43の独立した二部材で形成するものに限定されず、単一部材としても良いし、三部材以上の組み合わせで散水部材を構成するようにしても良い。
【0033】
また立ち上がり管3と中央弁体43との連結構造についても、前記した螺孔32を有する連結部31の採用に限定されるものでは無く、図8に例示するように、立ち上がり管3aの上端外周にネジ部35を周設し、当該ネジ部35に立ち上がり管3aの上部を包むように水室型部材を装着し、ブロック本体1の固化後に前記水室型部材を取り外すと、前記のネジ部35が水室部41aに突出することになるので、水室部41aに突出したネジ部35に、筒部の下方内周面にネジ部を設けた散水部材を装着するようにしても本発明の目的は達成される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態のブロックの要部断面図。
【図2】同外観図。
【図3】同全体散水部材の組み込み説明図で、(イ)は組み込み前(ロ)は組み込み後を示す。
【図4】同各部材の説明図(分解斜視図)。
【図5】同製造過程の説明図。
【図6】同散水部材の別例図。
【図7】同図
【図8】同立ち上がり管の連結構造の別例図。
【符号の説明】
【0035】
1 ブロック本体
2 通水管
21 連結部
3,3a 立ち上がり管
31 連結部
32 螺孔
33 下筒部
34 Oリング
35 ネジ部
4 散水部
41 水室部
411 下方水室
412 上方水室
413 段差部
42,42a,42b 蓋体
421 散水孔
422 上方装着孔
423 下方装着孔
424 密閉用リングパッキン
425 散水傾斜面
426 散水傾斜溝部
43,43a,43b 中央弁体
431,431a,431b 頭部
432 筒部
433 矩形孔
434 上部開口部
435 通水孔
436 弁棒
437 ネジ部
438 散水孔
439 鍔部
5 型枠
6 水室型部材
61 螺軸部
62 下方径小部
63 上方径大部
64 上方鍔部
7 鉄筋
8 樹脂被覆材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水管を内装貫通し、所定間隔で前記通水管と接続した立ち上がり管を、コンクリートブロック本体内に設けると共に、立ち上がり管の上方部分のブロック本体に、上部が開口した水室部を形成し、前記水室部の上部を密閉する蓋部、及び立ち上がり管と連通接続すると共に開閉弁機構を内装した筒部を備え、上面に散水孔を設けた散水部材を、水室部内に装着してなることを特徴とする消雪ブロック。
【請求項2】
水室部の内壁面を樹脂壁としてなる請求項1記載の消雪ブロック。
【請求項3】
水室部の上縁部分に蓋部載置用の段差部を形成し、散水部材の筒部の下方外周面にネジ部を設けると共に、立ち上がり管の上端内周面にネジ部を設けるか、又は散水部材の筒部の下方内周面にネジ部を設けると共に、水室部に突出した立ち上がり管の上端外周面にネジ部を設け、筒部を立ち上がり管に螺合装着することで、段差部と蓋部を密着させて水室部の上部を密閉するように散水部材を装着してなる請求項1又は2記載の消雪ブロック。
【請求項4】
散水部材を、蓋部を備えると共に中央部に装着孔を設けた蓋体と、筒部を備えると共に、筒部より径大で前記装着孔に装着する頭部を備えた中央弁体で構成し、中央弁体を立ち上がり管に螺合装着することで蓋体を段差部に密着させてなる請求項3記載の消雪ブロック。
【請求項5】
蓋体に散水孔を形成してなる請求項4記載の消雪ブロック。
【請求項6】
中央弁体に散水孔を形成してなる請求項4記載の消雪ブロック。
【請求項7】
蓋体の中央の装着孔の周面に溝部を形成し、中央弁体の頭部で前記溝部の一部を塞いで散水孔を形成してなる請求項4記載の消雪ブロック。
【請求項8】
所定の型枠内に、所定間隔で立ち上がり管を接続した通水管を長尺方向に配置すると共に、立ち上がり管に所定形状の水室部を形成する水室型部材を、上面が型枠面と当接するように装着し、前記型枠内にコンクリートを充填固化させた後に、水室型部材を取り外し、形成された水室部の上部を密閉する蓋部、及び立ち上がり管と連通すると共に開閉弁機構を内装した筒部を備え、上面に散水孔を設けた散水部材を、前記水室部内に装着してなることを特徴とする消雪ブロックの製造方法。
【請求項9】
水室型部材の外周面に樹脂板で形成した内壁部材を装着し、形成される水室部の内壁面を樹脂壁としてなる請求項8記載の消雪ブロックの製造方法。
【請求項10】
立ち上がり管の上端内周面にネジ部を設けると共に、前記ネジ部に水室型部材の下方部分を螺合装着して立ち上がり管に水室型部材を装着してなる請求項8又は9記載の消雪ブロックの製造方法。
【請求項11】
立ち上がり管の上端外周面にネジ部を設けると共に、前記ネジ部に水室型部材の下方部分を螺合装着して立ち上がり管に水室型部材を装着してなる請求項8又は9記載の消雪ブロックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−59667(P2010−59667A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225673(P2008−225673)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(593206148)株式会社ユーテック (5)
【Fターム(参考)】