消音システム
【課題】進入した音を消音することが可能で、繊維系吸音材を殆ど使用せずに吸音効果を高めることが可能な消音システムを得る。
【解決手段】一対の第一反射面の先端に鋭角部を一連に設けて構成されるルーバーユニットを、所定間隔を存して各々の第一反射面同士が対向配置するように併設し、所定範囲の入射角度で入射する外部からの入射音をもれなく反復反射レーンに進入させ、反射面に入射した音を対向配置される反射面間で複数回反射減衰させて消音する。更に、反復反射レーンの後端側には、配置され該後端側に到達した入射音を折り返し反射させて入力端側に向かう方向に反射させる第二反射面を有する。
【解決手段】一対の第一反射面の先端に鋭角部を一連に設けて構成されるルーバーユニットを、所定間隔を存して各々の第一反射面同士が対向配置するように併設し、所定範囲の入射角度で入射する外部からの入射音をもれなく反復反射レーンに進入させ、反射面に入射した音を対向配置される反射面間で複数回反射減衰させて消音する。更に、反復反射レーンの後端側には、配置され該後端側に到達した入射音を折り返し反射させて入力端側に向かう方向に反射させる第二反射面を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高架道路の桁下部等に配設される裏面吸音板や道路、鉄道、建造物、建築物等に係る騒音対策として適用される消音システムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路からの騒音を軽減する目的で吸音板と称す技術が開発され、特に高架道路の裏面に吸音板を配設することで高架道路付近における交通騒音の対策を図る裏面吸音板は、都心部や住宅地付近等で広く採用されている。
【0003】
従来の吸音板は、特許文献1に開示されているように、外部に向けられる意匠面を有するパネル部分を含んだ箱状に加工されるパネル部材と、このパネル部材の内側に配設される吸音材とを備え、これらがユニットのように組まれ、多数のユニットを連結して所望の面積の吸音板を構成することが出来るようになっている。パネル部分は、表裏に貫通した多数の孔を有し、所謂パンチングメタル状を成している。吸音材は、所謂グラスウールに代表されるようなガラス繊維集合体や特許文献2に開示されているように、ポリエステル製の不織布等で構成され、パネル部分のほぼ全域を覆い得る面状に広がったものである。騒音源から発せられ吸音板に入射した音は、パネル部分に貫設されている孔を通過してパネル部材内部に配設されている吸音材によって吸音され、低減される。
【0004】
この他、特許文献3や特許文献4に記載されているように、適宜間隔で配設される横梁の下面に、横梁に直交して横梁間に架設され横梁の長手方向において適宜間隔を存して複数が整列配置されるルーバーと称すパネル部材の代わりに採用される構成のものも普及している。この種の化粧部を含んで成る吸音装置は、ルーバーがパネル部分の意匠面に代わって意匠性をもたらすように意図され、公共物としての景観性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2953989号公報
【特許文献2】特許第3465622号公報
【特許文献3】意匠登録第1024537号公報
【特許文献4】意匠登録第1118521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来の吸音装置においては、意匠性を向上させることを主たる目的としつつ、吸音材を保持するためのパネル部分やこれに代わるルーバーには、吸音効果等の音を低減する効果はなく、寧ろ入射音を音源側に反射してしまうという問題があった。特に、パネル型吸音装置におけるパネル部分にあっては、パネル部分の表裏に亘って貫通した孔が穿設されている部分のみしか入射音が吸音材に到達せず、孔以外の領域では音源側に反射してしまう。これは、ルーバー型の吸音装置においても同様で、ルーバーの外端面による反射や台形状のルーバーの側面において反射した反射音は外方に向かってしまい、吸音材まで到達せず吸音しないという問題がある。
【0007】
また、このパネル部分に貫設された孔を有するパンチング孔付きパネル材やこれと同様に、孔付き材から構成されたルーバーは、孔無し材に比して強度が下がる上、穿孔加工コストが高くなるという問題がある。
【0008】
さらに、ルーバー型の吸音装置においては、吸音材を隠すため、ルーバー幅とルーバー間隔とをほぼ同等に設定しなければならず、吸音率が低下してしまうという問題があった。
【0009】
また、従来の吸音装置では、吸音効果をもたらす吸音材は必須不可欠な要素であるが高価である上、大量に使用するため吸音装置全体に締めるコスト比率が高く、全体コストを引き上げる要因となっている。
【0010】
本発明は、上述のような実情に鑑みて成されたものであり、入射音を音源側に直接反射させることなく、音源から発せられ吸音装置に向かって伝搬して来る全ての騒音を、吸音装置に洩れなく入射させ、その内部において入射音を著しく低減させて消音することを可能とする消音システムを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、吸音材を使用することなく入射音の音圧レベルを減衰させて消音させることが可能な消音システムを提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、吸音材を全く使用せずに若しくは少量使用であっても、入射音を著しく減衰させて消音することを可能としたことにより、吸音材の大量使用による高額化を改善し、著しくコストダウンすることを可能とする消音システムを提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の消音システムは、外部から音を入射させ得る入力端を有し、音の入射と共にこの入射した該音即ち入射音を反射させる第一反射面が適宜間隔を存して対向配置され、反射によって生じる反射音を高次の入射音として対向配置される第一反射面間において複数回反射させ得る反復反射レーンと、反復反射レーンの後端側に配置され後端側に到達した入射音を折り返し反射させて入力端側に向かう方向に反射させる第二反射面とを有することを特徴としている。
【0014】
また、第二反射面は、断面形状が適宜の曲線又は直線によって形成される単位形状を、幅方向に複数連接されて構成され、各連接点が節部を成し、且つ隣り合う節部同士の間の部分が腹部を成し、節部が前記第二反射面の間又は第二反射面の間の位置の後端側に対する延長線上に位置することを特徴としている。
【0015】
また、適宜間隔を存して隣接配置される第一反射面の先端に、この先端側から後端側に向かって鋭角状に形成された傾斜反射面を有して構成される鋭角部を設けることを特徴としている。
【0016】
第一反射面又は鋭角部の先端間を結ぶ仮想平面からの傾斜反射面の傾斜角αは、π/4より大きく、π/2より小さく設定されることを特徴としている。
【0017】
対向する第一反射面間の距離Wは、傾斜角をα、鋭角部の基端部から先端までの垂直距離をhとするとき、−(tan(2α)+cot(α))h以上に設定されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明を適用して成る吸音システムによれば、音に対する反射減衰性を有する第一反射面を対向配置し、且つ、それら第一反射面の後端側に第一反射面間を通過した音を第一反射面の先端側に向かって第一反射面に対して適宜範囲の入射角を以て折り返し反射させる第二反射面を設けたことにより、騒音源から発せられて入射した音を、対向配置された反射面間において複数回反射させ、漸次減衰させることによって高次の減衰効果を発揮させると共に、第一反射面に反射せずに第一反射面間を通過した音に対しても、第一反射面に向かって折り返し反射させ、これによって対向する第一反射面間を反復反射させるように構成したことにより、入射音を消音することが出来る。
【0019】
特に、第二反射面の断面形状を放物線状に構成した場合には、外部から進入する音が第二反射面に直達した場合、ほぼ全ての音が当該放物線状を成す第二反射面の焦点を通過させることが可能となり、従って、折り返し反射されて焦点を通過した音は、確実に第一反射面間で反復反射し、より確実な消音効果を得ることが可能となる。つまり、本発明の消音システムでは、吸音材による吸音を主たる吸音原理として構成されている吸音装置等に比して、少量の吸音材の使用によって、或いは、吸音材を全く使用せずに吸音又は消音することが可能となる。
【0020】
また、従来の吸音装置の構成部材であって意匠性を向上させるルーバーにあっては、吸音装置に入射した騒音に対する音圧レベルの低減効果は殆ど無く、寧ろ音源側を向いたルーバーの化粧面では入射音を外部に向かって反射してしまい吸音材まで音を到達させることが出来ないという問題があったが、本発明の第一反射面に鋭角部を設けてルーバー状に構成し傾斜反射面の傾斜角αの範囲をπ/4<α<π/2の範囲内に設定して反射面間の距離Wを−(tan(2α)+cot(α))hに設定した消音システムによれば、外部からの入射音を洩れなく吸音装置内に取り込むことが可能となる上、取り込まれた入射音は反復反射減衰効果により高次に減衰させて消音させることが可能となる。更に、本発明の消音システムによれば、側方から入射された入射光を鋭角部で外部に向けて反射することが可能であり、鋭角部表面やその周辺等を明るくすることが可能な上、外部をも明るくすることも可能となる。
【0021】
また、本発明の消音システムによれば、従来の吸音装置において大量使用が不可欠であったガラス繊維集合体やポリエステル繊維集合体等から成る吸音材の使用を皆無としながらも消音することが可能となる他、少量使用であっても従来同等以上の音圧レベルの低減効果を発揮させることが可能なので、吸音装置の高額化の主因の一つであった吸音材の使用を、ゼロ乃至少量化することが可能となり、低コスト化を図ることが可能となる。
【0022】
また、反射面を構成する部材をルーバー型とした本発明を適用して成る吸音装置においては、ルーバー構成部材にパンチング孔を設けないことにより、梁としての強度向上を図ることが出来る。また、ルーバー間隔に対するルーバー幅を広く設定することが可能であり、これによって、外部からの視認性において吸音材を隠し得る死角領域が広がり、吸音材の露出表面を広く設定することが可能となる。
【0023】
また、第二反射面を設定することにより、遮音壁や遮音天井としての効果を得ることも出来、遮音壁の代替技術とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用して成る実施形態の消音システムの構成を示す断面図であって、(A)は奥行き方向に対して並行に設定される複数の反射面が互いに並行に設定され、(B)は奥行き方向に対して傾斜して設定される複数の反射面が互いに並行に設定され、(C)は奥行き方向に対して傾斜して設定される複数の反射面のうち隣接する反射面同士が非平行に設定された一構成を示す図である。
【図2】(A)〜(I)は、図1に示す反射面の構造を示す拡大断面図である。
【図3】(A)〜(C)は、図1(A)〜(C)の各々に示す消音システムにおける入射音の反射の様子を示す模式図である。
【図4】本発明の消音システムにおいて鋭角部を備えた実施形態を模式的に示す断面図であって、(A)は鋭角部の基端部から奥に向かって背合わせ状の一対の反射面が互いに並行に延設されて成り、(B)は鋭角部の基端部から奥に向かって背合わせ状の一対の反射面の間隔が漸次拡大するように延設されて成り、(C)は鋭角部の基端部から奥に向かって背合わせ状の一対の反射面の間隔が漸次縮小するように延設されて構成されている。
【図5】(A)〜(E)は図4に示す鋭角部を備えた断面構造の各種変形例を示す模式的な断面図である。
【図6】本発明の消音システムを構成する一ユニットの一実施形態を示す模式図であり、(A)は断面図、(B)は斜視図である。
【図7】(A)〜(C)は、図4(A)〜(C)の各々に示す消音システムにおける入射音の反射の様子を示す模式図である。
【図8】(A)は並行に対向配置される反射面の先端に内角90°に設定された三角部を設けた消音システムにおける入射音の反射の様子を示す模式図であり、(B)は奥に向かって互いの間隔が漸次拡大するように対向配置される反射面の先端に平坦面を設け、全体形状が略台形状に設定されて成る消音システムにおける入射音の反射の様子を示す模式図である。
【図9】本発明の反射面の間のピッチを一定としていない一例を示す断面図である。
【図10】本発明の鋭角部の一変形例を示す断面図である。
【図11】本発明の反射面がハニカム状に構成された場合の一例を示す消音システムの音の入射側から見た図である。
【図12】本発明の消音システムを示す断面図であって、入射音の反射の様子を示す模式図であり、入射側と反対側に断面放物線状を成す奥側反射面を有して構成され、特に(A)は先端に鋭角部が形成されていないタイプの消音システムの構成を示す図であり、(B)は先端に鋭角部が形成されているタイプの消音システムの構成を示す図である。
【図13】先端部側に鋭角部を有し、背部側に後部反射面を有する消音システムにおける各部の寸法を断面的に示す模式図である。
【図14】ルーバー幅wとルーバー間距離Wとの比を黄金比に設定した消音システムにおける入射音の反射の様子を示す模式図である。
【図15】本発明の消音システムを高架道路の桁の裏面に配設される裏面吸音装置に適用し、且つ、高架道路の側壁部に配設される遮音壁及び遮音天板に適用される例を模式的に示す橋軸方向視における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態の消音システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の消音システムは、騒音源から発せられた騒音を捉えて消音するシステム並びにこの消音システムを備えた消音装置や吸音装置に関するものであって、例えば、高架道路を構成する桁裏面に対して橋軸直角方向に延在する横梁を介して橋軸方向に沿って配設され、この高架下の道路を走行する車両等による騒音が桁下部で反射して道路周辺に対して騒音を拡散することを防止するための裏面吸音装置等に適用されるものである。
【0026】
<1 反復反射レーン>
本発明の消音システムにおける反復反射レーンについて、図1〜図3を参照しながら詳細に説明する。反復反射レーンを用いた消音システム1は、騒音源等から発せられた外部からの音を入射させ得、その入射音を減衰させつつ反射させ得る第一反射面としての反射面10を複数有する。各反射面10は、反射面10同士が適宜間隔を存して対向配置される。各反射面10の配置は、音が反射面10に入射してその反射によって生じる反射音が対向配置される反射面10間を複数回に亘って反射することが出来るように設定される。
【0027】
第一反射面としての反射面10は、入射音に対する反射音がより小さくなる性質、即ち音に対する反射減衰性を有し、この反射減衰性が高い程、より効率よく消音することが出来て好ましい。つまり、反射面10は、反射減衰性を有する素材を板状、若しくは筒状等に形成して構成することが出来る。反射減衰性を有する素材から成る反射面10を、例えば図1に示すように、互いに対向配置することで消音システム1を構成することが出来る。具体的に、図1に示す消音システム1は、反射面10を有する反射板11が反射減衰性
を有する素材から構成されるために表裏面のそれぞれが反射面10と成っている(図2(A),(B)参照)。
【0028】
図1(A)に示す消音システム1は、各反射板11が、その先端(図中の下端)10a側から後端(図中の上端)10b側にかけて互いに対向する反射面10間の距離がほぼ一定となるように設定されて構成される。そして、各反射板11の反射面10は、先端10a同士或いは後端10b同士を結ぶ仮想の直線に対して垂直に設定される。図1(B)に示す消音システム1は、各反射板11が、その先端10a側(図中の下端)から後端10b側(図中の上端)にかけて互いに対向する反射面10間の距離がほぼ一定となるように設定され、且つ、各反射板11の反射面10は、先端10a同士或いは後端10b同士を結ぶ仮想の直線に対して所定の角度に設定されて傾斜して配設される。図1(C)に示す消音システム1は、各反射板11が、その先端10a側(図中の下端)から後端10b側(図中の上端)にかけて互いに対向する反射面10間の距離が、後端10bに向かって漸次縮小する反射面10の対と、後端10bに向かって漸次拡大する反射面10の対とが交互に配置設定される。ここで、図1(C)の各反射板11間のより接近した端部同士は、有限の間隔を存して設定されているが、これに限らず当該端部同士を当接させたり、一体に構成することも可能である。
【0029】
なお、反射面10や反射板11の構成は、図2(A)及び図2(B)に示すように、反射減衰性を有する素材のみによって構成するだけでなく、図2(C)に示すように心材11cとして反射減衰性を有しない素材を採用し、その表面に反射減衰性を有する表面層11dを設け、積層構造のように構成すること、或いは、反射減衰性を有する塗料等によって心材11cに対して表面コーティングを施すことで反射減衰性の表面11dを設けることも可能である。ここで、図2(A)は平坦な表面若しくは滑らかな筒状の閉曲面状の表面を有する反射面10を示したものであり、図2(B)の反射減衰性素材は、発泡性や多孔性の素材を用いて構成された反射面10を示したものである。また、本発明の反射面10は、図2(D)に示すように、反射減衰性を有する薄い表面材11e,11e(反射面)二枚を一対として、それらの表面材11e,11e間に断面波形の中間材11fを介在させ、この中間材11fに対して表面材11e,11eを固設することで、反射面10を構成することも可能である。また、図2(E)に示すように、ゴムやスポンジ等のように可撓性を有する心材11gの表裏面を、反射減衰性を有する表面素材11h,11hで挟み込んで反射面10を構成することで、表面を構成する反射面10に入射した音の音圧を、中間に位置する可撓性の心材11gによっても緩衝することでより効果的に減衰させるように構成しても良い。また、反射面10は平滑な表面に構成するだけでなく、図2(F)に示すように、凹凸状に形成された反射減衰性を有する表面を設けても良い。この場合、この付近を通過する音波、即ち空気振動が凹部で減圧されて乱されて減衰される効果が得られる。また、図2(G)に示すように、反射減衰性を有する素材を用いて反射面10を構成すると共に、この反射面10の表面の凹凸化を図り、表面付近を通過する音波を散乱させることで減衰性の向上を図っても良い。また、図2(H)は、心材11iの表裏面に、当該面の面方向に向かって多数の音圧減衰用の毛11jが植設されて成る表面材を設けても良い。また、図2(I)に示す反射面10を構成する反射板11には、表裏に亘って貫通する多数の孔11kが穿設され、入射音がこの孔11k付近を通過する際に減圧等によって音圧レベルが低減されるように構成することも可能である。しかしながら多数の貫通孔11kを穿設するには、パンチング穿孔加工コストが必要となり、コスト高となるので穿孔しない方が好ましい。
【0030】
消音システム1は、以上説明のように様々な構成をとり得、入射音を対向配置された反射面10間において複数回反射させて、反射の度に入力音のレベルをより高次に減衰させて消音することが出来るように構成される。例えば、図1(A)〜図1(C)に示すように構成された消音システム1における入射音の反射の様子をそれぞれ図3(A)〜図3(C)に示す。
【0031】
図1(A)の構成の消音システム1においては、反射面10に対して並行に入射した音は反射面10に反射されることなく先端10a側から後端10b側に通り抜けることが出来る。従って、後端10b側にグラスウール等のようなガラス繊維集合体やポリエステル繊維集合体の如くの吸音材(不図示)を配置した場合には、入射音を直接吸音材に吸音させることが出来る。また、図3(A)に示すように、図1(A)の構成の消音システム1では、反射面10に対して傾斜した入射角で音が入射した場合には、反射面10の先端10a側から後端10b側に向かって対向配置された反射面10間を複数回に亘って反射し、その反射回数に応じて入力音のレベルを漸次減衰させることが可能となる。なお、入射音の初期入力レベルをP0、反射面10に固有の反射減衰係数をμ、反射回数をnとした場合のn次の減衰音の出力レベルPnは数1で与えられる。但し、反射減衰係数μは、0<μ<1を満たす。勿論、反射減衰係数μの値は、0に近い程、より少ない反射回数で音を減衰させることが可能となって好ましい。
【0032】
【数1】
【0033】
図1(B)の構成の消音システム1においては、図3(B)に示すように、反射面10の先端10a間を結ぶ仮想の直線に対してほぼ垂直に先端10a側から後端10b側に向かって入射した音、即ち反射面10に対して一定以上の傾斜角で入射した音は、反射面10の先端10a側から後端10b側に向かって対向配置された反射面10間を複数回に亘って反射し、その反射回数に応じて入力音のレベルを漸次減衰させることが可能となる。勿論、反射面10に対して並行に入射した音は、反射面10に反射されることなく先端10a側から後端10b側に通り抜けることが出来る。
【0034】
また、図1(C)の構成の消音システム1においては、図3(C)に示すように、反射面10の先端10a間を結ぶ仮想の直線に対して一定範囲の傾斜角で入射した音は、反射面10の先端10a側から後端10b側に向かって対向配置された反射面10間を複数回に亘って反射しつつ、その折り返しピッチが徐々に短くなりながらその反射回数に応じて入力音のレベルを漸次減衰させることが可能となる。従って、図1(A)のような反射面10の構成に比して、より短い奥行きでありながら反射回数を増やすことが可能となる。但し、反射面10の傾斜に対する音の入射角によっては、十分な反射減衰が成される前に高次の反射音の進行方向が逆転して先端10a側に向かって戻ってきてしまう場合があることに注意を要する。勿論、反射面10の先端10a部同士の間に進入した音は、反射面10に反射されることなく先端10a側から後端10b側に通り抜けることが出来る。
【0035】
以上説明したように、消音システム1においては、音源の位置と消音システム1を配置する位置との関係や消音対象となる音の入射角を考慮して反射面10の傾斜角等の構成を規定することが好ましい。また、反射面10の傾斜角や音の入射角によって、殆ど減衰させずに通過させる音と、高次に減衰させる音とを選択することも可能となる。
【0036】
<2 反復反射レーンの変形例1>
次に、本発明の消音システムにおける更に別の構成の反復反射レーンについて、図4〜図9を参照しながら詳細に説明する。消音システム20は、互いに背中合わせ向きの二つの反射面10の先端10aに鋭角部21が設けられて構成される。鋭角部21の先端21aの内角は、好ましくは90°未満に設定される。より好ましくは、55°〜80°程度の範囲に設定される。なお、ここで、鋭角部21は名称上、鋭角即ち90°未満としなければならないが、必ずしも鋭角である必要はなく、入射する音の代表的な入射角によって規定することが望ましく、外部からの入射音を外部に洩らすことなく進入させるように設定することが重要である。なお、鋭角部21の表面は、音に対する反射減衰性を有することが好ましい。
【0037】
本実施形態の消音システム20は、図4(A)に示すように、互いに平行で背中合わせ向きの二つの反射面10の先端10aに、これらの反射面10と一連の鋭角部21を一体に設けて所謂ルーバー状のルーバーユニット22を構成している。複数のルーバーユニット22同士は、各々の反射面10同士が互いに並行となるように適宜間隔を存して併設される。このルーバーユニット22間の幅は後に詳述するが、反射面10の先端10aから鋭角部21の先端21aまでの垂直距離とルーバーユニット幅等に応じて規定される一定以上の間隔に設定することが好ましい。なお、この既定値を下回るルーバーユニット間幅に設定すると、鋭角部21に対して反射面10に平行に入射した音が上手く消音システム20内に取り込まれず、外部に反射されてしまうことがあることに注意する必要がある。
【0038】
ルーバーユニット22は、図5(A)に示すように、音に対する反射減衰性を有する素材から成る中実の部材22aの先端形状を略鋭角に形成して鋭角部21とすることが可能である。この場合、ルーバーユニット22を構成する部材の表裏面が反射面10と成る。また、図5(B)に示すように音に対する反射減衰性を有しない素材から成る中実の部材22bを心材として基礎形状を形成し、その表面に反射減衰性を有する層22cを形成することでルーバーユニット22を構成することも出来る。また、図5(C)に示すように、音に対する反射減衰性を有しない素材から成る内部が中空状の部材22dを心材として基礎形状を形成し、その表面に反射減衰性を有する層22eを形成することでルーバーユニット22を構成することも出来る。勿論、図5(D)に示すように、音に対する反射減衰性を有する素材から成る中空状の部材22fによって一対の反射面10と鋭角部21とを一連に形成してルーバーユニット22を構成することも可能である。この他、図5(E)に示すように、中空状の部材22gによって一対の反射面10と鋭角部21とを一連に形成しつつ、その内側面と外側面にそれぞれ音に対する反射減衰性を有する層22h,22iを形成することによって、内外で音に対する反射減衰性を有するルーバーユニット22を構成することも可能である。
【0039】
この他、ルーバーユニット22は、例えば、音に対する反射減衰性を有する素材を、図6(A)に示すような断面形状、即ち互いに平行な一対の反射面10のそれぞれの先端10aに鋭角に形成した鋭角部21を一連に形成し、且つ、反射面10のそれぞれの後端10b側を、ルーバーユニット22の内側に向けて反射面10に対して直角に形成された後端部23を設け、この後端部23の端部をさらに鋭角部21の内側頂部に向かって90°未満の角度で傾斜させて係止部24を形成することが出来る。このルーバーユニット22は、図6(B)に示すように、ほぼ同じ断面形状で奥行き方向に所定長さだけ延在されて構成される。
【0040】
また、本実施形態のルーバーユニット22の一対の反射面10は、必ずしも互いに並行でなければならないというものではなく、例えば、図4(B)に示すように、鋭角部21の基端部21bの位置から後端10b側に向かって反射面10間の距離が漸次拡大するように構成することや、図4(C)に示すように、鋭角部21の基端部21bの位置から後端10b側に向かって反射面10間の距離が漸次縮小するように構成することも可能である。勿論、ルーバーユニット22の構成は、図4(B)や図4(C)のような断面形状に構成した場合にも図4(A)の断面構造として示した図5(A)〜図5(E)のように構成することも可能である。
【0041】
図4(A)〜図4(C)に示す各ルーバーユニット22において、各々のルーバーユニット22の先端21a間を結ぶ仮想の直線に対して垂直な方向から各鋭角部21に対して音を入射させた場合の反射の様子をそれぞれ図7(A)〜図7(C)に示す。図7に示すように、このようにして鋭角部21に対して入射した音は、入射側の外部空間に跳ね返されることなく、全ての音が隣接して配設されるルーバーユニット22同士の互いに対向する反射面10間に入射し、反射面10間において複数回反射されながら漸次減衰されるように構成される。勿論、図7(A)に示すように、対向する反射面10同士が並行に設定される場合には、反射音は一定の反射ピッチで反射されながら反射面10の後端10b側に向かって進行する。対向する反射面10同士の距離が後端10b側に向かって縮小する設定の場合には、図7(B)に示すように、反射音は漸次反射ピッチが縮小して反射されながら反射面10の後端10b側に向かって進行する。逆に、対向する反射面10同士の距離が後端10b側に向かって拡大する設定の場合には、図7(C)に示すように、反射音は漸次反射ピッチが拡大して反射されながら反射面10の後端10b側に向かって進行する。勿論、反射回数が、反射面10の反射減衰係数μで示される反射減衰性能に対して、十分に多ければ、本実施例の消音システム20に対する入射音は、後端10b側に到達する以前に極度に減衰されて消音される。更に、ルーバーユニット22は、先端21aに鋭角部21が設けられているので、側方から入射された太陽光等の光を鋭角部21で反射させることで鋭角部21表面やその周辺、高架道路裏面等を明るくすることが可能な上、高架下の道路側に反射光を導くことが出来、高架道路や高架下の道路を明るくすることも出来る。
【0042】
ここで、図4(A)〜図4(C)に示すルーバーユニット22の鋭角部21は、90°未満に設定されていたが、鈍角、例えば、90°に設定されていた場合には、図7と同様な条件で入射した入射音は、図8(A)に示すように、鈍角に設定されたルーバーユニット122の先端121aの傾斜面121cで反射され、その反射音が対向して隣接するルーバーユニット122の先端121aの傾斜面121cに到達して反射され、その反射音が、元々の入射側の外部空間に戻されてしまい、消音システムの内部に取り込むことが出来なくなる。
【0043】
また、図4(B)に示すルーバーユニット22の鋭角部21を無くして平坦面とした略台形状のユーバーユニット222を構成した場合、図8(B)に示すように、この平坦面221aに入射した音は全て入射側の外部空間に反射されてしまい、消音率や吸音率を低下させる一因となる。勿論、この入射音は平坦面221aに対して垂直に入射した音に限らず、何れの方向から入射した音であっても外部空間に反射してしまう。このことからも反射面10の先端10aに設定するのは、鋭角の先端21aを有する鋭角部21であることが有利であって好ましいが、必ずしも鋭角に設定しなければならないというものではなく、意匠の観点や加工上、コスト上の理由等から鈍角状や台形状、円弧状などとすることも出来る。
【0044】
また、ルーバーユニット22の先端21aの内角を適宜の値に設定した場合において、このルーバーユニット22の先端21aの傾斜面21cの延長線上から隣接するルーバーユニット22の基端部21bを目視した際には、互いに隣接する当該ルーバーユニット22同士の基端部21b間の距離、即ちルーバーユニット間幅は死角領域となる。この場合、例えば、ルーバーユニット22の後端10b側(基端部側)にルーバーユニット22間に亘る吸音材(不図示)を配設した場合、ルーバーユニット22の傾斜面21cの傾斜角より低い確度位置からは後端部23側に配設された吸音材は死角領域に入って目視し得なくなり意匠上好ましい。
【0045】
<3 反復反射レーンの変形例2>
以上では、対向する反射面10間の距離、或いはルーバーユニット間幅は、一定として説明してきたが、勿論、この間隔は必ずしも一定である必要はなく、例えば、図9に示すように、反射面10間距離方向に順次間隔が狭まったり、逆に広がったりするように設定することも可能である。このように設定した場合、反射面10間隔の狭い領域を反復反射して通過して減衰された音と、反射面10間隔の広い領域を反復反射して通過して減衰された音とでは、狭い間隔の領域を通過した音の方が、減衰レベルが高くなって不均一性を得ることが出来る。
【0046】
また、鋭角部21は、例えば、図10に示すように、先端10aから後端10bに向かって鋭角状に拡開した鋭角先端部21dと、この鋭角先端部21dの後端部から後端10bに向かって並行に延在した並行部21eが形成され、この並行部21eの後端部から延在し鋭角先端部21dの片側の傾斜面とほぼ平行な傾斜面21fが形成されるというように傾斜面21fが段状に形成されて構成されるものであってもよい。すなわち、鋭角部21の先端21aから基端、即ち反射面10の先端部10aまでの間が直線的な断面形状になっていなければならないというものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で所望の形状に設定することが可能である。
【0047】
また、本発明の消音システム20では、進入した入射音を当該消音システム20の内部において反復反射させて高次に減衰させることが出来るように対向して設けられる反射面10が設けられていればよく、図6(B)に示すようなルーバー型のものだけでなく、例えば、図11に示すように、多数の正六角形状の筒を側面方向に隙間無く並べて構成したような略ハニカム状に設けたものであっても良い。勿論、この場合の反射面10は各正六角形状の筒の内側面に相当し、先端は隣接する正六角形状の筒同士の周縁部が一体を成して鋭角部21を構成していて、先端側から後端側に切断した際の断面形状が鋭角をなすものである。なお、図11は、ハニカム状に構成された消音システム20の先端側から見た模式図である。勿論、ここでは、互いに対向する反射面10を成しているのは、正六角形状の筒を組み合わせたようなハニカム状の構成であるが、これに限らず正三角形状や正四角形状の筒形状、或いは円筒状等任意の形状に設定することが可能であって特に限定されるものではない。
【0048】
<4 本発明の消音システム>
次に、本発明の消音システムについて、図12及び図13を参照しながら詳細に説明する。この消音システム30は、反射面10の先端10aに鋭角部21を設けるだけでなく、図12に示すように、後端側に、後部反射面を併設することが可能である。より具体的には、外部から音を入射させ得る先端側の入力端を有し、所定範囲の入射角による音の入射と共にこの入射した該音、即ち入射音を反射させる第一反射面31が適宜間隔を存して対向配置される。第一反射面31に対する反射によって生じる反射音は、より高次の入射音として対向配置される第一反射面31に反射されながらこれら対向配置される第一反射面31間において複数回反射させ得るように設定される反復反射レーン32間で漸次より高次に反射減衰される。反復反射レーン32の奥側には、奥側に到達した入射音を折り返し反射させて入力端側に向かう方向に反射させる第二反射面33が配設されて構成される。この第二反射面33は、第一反射面31の先端31a側から後端31b側に延在する方向に対して概ね直交方向に広がって設けられ、好ましくは第一反射面31の先端31a側から後端31b側に向かって凹状に設定される湾曲形状が幅方向に複数連接して形成される。つまり、第二反射面33は、第一反射面31の後端31b側位置に、連接点、即ち節部33aと、湾曲した腹部33bとが、適宜間隔を存して複数の第一反射面31が併設される幅方向に亘って配設される。より好ましくは、隣り合う節部33aの位置は、一方の節部33aが或る反復反射レーン32の中間位置に設定され、他方の節部33aが当該反復反射レーン32から一つ置き以上離れた反復反射レーン32の中間位置に設定される。また、腹部33bの頂点位置は、節部33aが配置された反復反射レーン32の間に位置する反復反射レーン32の中間位置とすることが好ましい。また望ましくは、第二反射面33の隣接する節部32a間の断面形状は、放物線状に設定し、その焦点を腹部33bが位置する反復反射レーン32の中央位置に設定する。
【0049】
このように第一反射面31と第二反射面33とによって消音システム30を構成した場合には、図12(A)に示すように、第一反射面31に対して外部から所定範囲の角度で入射した音は、第一反射面31によって反射されながら反復反射レーン32間を反復反射しながら次第に後端31b側に向かって進行し、後端31bから抜けた高次に反射減衰された音が第二反射面33によって先端31a側に折り返し反射され、別の反復反射レーン32に導出される。こうして、入射音は、進入時とは異なる反復反射レーン32において対向する第一反射面31間でさらに反復反射しつつ、より高次に反射減衰されながら消音される。
【0050】
勿論、図12(B)に示すように、図12(A)の構成に加えて、隣接する一対の第一反射面31の先端31aに鋭角部34を設けることが出来る。鋭角部34を設けた場合には、所定の範囲の入射角で進入した音は、著しく反射回数が多くなり、極めて高次の反射減衰効果が得られるようになる。図12(B)からも判るとおり、隣接する鋭角部34の間の反復反射レーン32を第一反射面31と並行に進入した音は、全て放物線状の断面を有する第二反射面33で反射され、且つ、その反射音は全て当該放物線の焦点Fを通過して、鋭角部34を有する別の反復反射レーン32に入射してこの反復反射レーン32内の対向する第一反射面31間を反復反射しながら高次に反射減衰されて消音される。更に、鋭角部34を設けた場合には、側方から入射された太陽光等の光を鋭角部34で反射させることで鋭角部34表面やその周辺、高架道路裏面を明るくすることが可能な上、高架下の道路側に反射光を導くことが出来、高架道路や高架下の道路を明るくすることも出来る。
【0051】
以上説明の消音システム30をより好ましく構成するには、所定の寸法関係に則ることが不可欠であり、その好ましい設定を、図13を参照しながら説明する。本実施形態の消音システム30は、一対の第一反射面31が間隔wで並行に配設され、それらの先端31aに鋭角部34が一連に設けられて成るルーバーユニット35を有する。つまり、鋭角部幅はwに等しい。また、このルーバーユニット35同士は、幅Wを存して幅方向に複数並行配置される。即ち、反復幅はWに等しい。ここで、ルーバーユニット35の先端34a同士を結ぶ仮想の直線からの鋭角部反射面34cの傾斜角をαとし、鋭角部34の基端部34bから先端部34aまでの垂直距離をhとし、また第一反射面31の先端31aから後端31bまでの長さ、即ち反復反射部長さをHとしたとき、鋭角部幅wは、次の数2で与えられる。
【0052】
【数2】
【0053】
ここで勿論、鋭角部反射面34cの傾斜角αは、適当なパラメータκを用いて次の数3を満たす必要がある。但し、πは円周率であり、κは0<κ<2を満たす。
【0054】
【数3】
【0055】
また、第一反射面31に対して並行に入射する音のうち、鋭角部34に反射される音が全て第一反射面31に進入する条件は、ルーバーユニット間幅Wが次の数4を満たす場合に限られる。つまり、ルーバーユニット間隔Wは、数4を満たすように設定されることが好ましい。
【0056】
【数4】
【0057】
このような条件を満たすように設定された隣接するルーバーユニット35間、即ち反復反射レーン32を反射しながら進行する音は、初期に鋭角部34で反射されたところから後端31b側に抜けて第二反射面33に至るまでの間に第一反射面31で反射される反射回数をn*とするとき、ほぼ次の数5で与えられる。なお、第二反射面33で反射され別の反復反射レーン32で反復反射して外部に抜け出るまでの全反復反射回数はnとする。
【0058】
【数5】
【0059】
次に、上記条件を満たす消音システム30の具体例を示し、図14を参照しながらその消音性について説明する。本例は、鋭角部反射面34cの傾斜角α=54°、鋭角部幅w=50、反復反射部長さH=150に設定しつつ、反復反射係数μの値を0.9とした。また、反復反射幅Wは、鋭角部反射面34cの傾斜角αの値と、鋭角部幅wの値とを数4に代入して得られる最小値とした。
【0060】
この場合、第一反射面31に対して並行に鋭角部34に入射した入力音P0は、図14に示すとおり、全反復反射回数nが少なくとも20回となり、数1より、入力音P0に対する20次の出力音P20の比が約10%以下になることが判る。勿論、反復反射係数μの値をさらに小さなものに設定すれば、反復反射減衰効果、即ち消音効果はより大きなものとなる。
【0061】
なお、本例における鋭角部反射面34cの傾斜角αを規定しているパラメータκの値は、κ=1.2であって、数2よりα=κ・π/4=54°となっていて、これは上記条件の下に鋭角部幅に対するルーバーユニット間隔の比W/wが丁度黄金比となっていて意匠的にも優れたものであることが判る。
【0062】
また、上記条件では詳細設定していないが、図14中のFは第二反射面33の断面形状である放物線の焦点であり、Pは放物線の中点と焦点Fとの距離、即ち焦点距離であり、dは第二反射面33の連接点即ち節部33aと第一反射面31の後端部31bとの間の距離であり、Dは放物線の中点と第一反射面31の後端部31bとの間の距離である。図14からも判るとおり、焦点距離Pが長過ぎると断面形状が放物線状を成す第二反射面33で反射された反射音はその後の第一反射面31に対する入射角が小さくなり過ぎて反復反射回数を多くとることが出来なくなるので、焦点距離Pは短めに設定することが好ましい。またP<Dに設定すると第二反射面33で反射された音の一部が鋭角部34を有する反復反射レーン32に入射することなく隣の反復反射レーン32に抜け出して少ない反復反射回数で外部に抜け出てしまい、P>Dの場合には第二反射面33で反射した反射音が鋭角部34を有する反復反射レーン32に入射せずに元の反復反射レーン32に入射してしまうので、P=Dに近いP≧Dに設定することが好ましい。但し、これらのような第二反射面33における反射音の鋭角部34を有する反復反射レーン32に対する入射不良は、dの値を調整することである程度解消することが可能である。
【0063】
以上説明したように構成される本発明の消音システム30は、例えば、騒音源から発せられた騒音を入射させて消音する消音装置や吸音材との併用で吸音する吸音装置等に応用することが可能である。これら消音装置や吸音装置は、例えば、図15に示すように高速道路40等の高架の桁下面41側に付設することで所謂裏面吸音効果を発現させることが可能となる。この場合、高架下の道路を走行する車両の騒音が、本発明を適用して成る吸音装置のルーバーユニット35の先端部34aを構成する傾斜面34cで反射しても、鉛直な側面の側、即ち対向配置される第一反射面31によって構成される反復反射レーン32に進入し、入射側の空間、すなわち高架下の道路側に戻らないようにすることが可能である。また、反復反射レーン32に入射した音は、隣接するルーバーの垂直な側面との間で反射を繰り返し、反射減衰されながらルーバーユニット35の後端側に配設される吸音材によって吸音される。更に、ルーバーユニット35は、先端34aに鋭角部34が設けられているので、側方から入射された太陽光等の光を鋭角部34で反射させることで鋭角部34表面やその周辺、高架道路裏面を明るくすることが可能な上、高架下の道路側に反射光を導くことが出来、高架道路40や高架下の道路を明るくすることも出来る。
【0064】
また、高架道路を走行する車両から発せられる騒音を高架道路の周囲に洩れ出すことを防止することを目的として、高架道路の側部42に、本発明の消音システム30を適用して成る消音壁を配設することが可能である。この消音壁には、高架道路の側部42に沿って立設される鉛直部42aと、この鉛直部42aの上端から一連に形成される天井部42bとを有して構成される。この場合、騒音の洩れ出しを防止するという消極的な効果に加え、騒音自体を消音してしまうというより積極的な効果を得ることが可能となる。
【0065】
この他、エンジン周りで発生する騒音や工事現場等で発生する騒音対策として、本発明の消音システム30を応用したパネル状装置や箱状装置等を用いることも可能である。なお、上述の説明では、本発明による消音システム30について代表的な構成を説明したが、これらに限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で様々な形態や構成をとることが出来る。
【符号の説明】
【0066】
1 消音システム、10 反射面、11 反射板、20 消音システム、21 鋭角部、22 ルーバーユニット、30 消音システム、31 第1の反射面、32 反復反射レーン、33 第二反射面、33a 節部、33b 腹部、34 鋭角部、35 ルーバーユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高架道路の桁下部等に配設される裏面吸音板や道路、鉄道、建造物、建築物等に係る騒音対策として適用される消音システムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路からの騒音を軽減する目的で吸音板と称す技術が開発され、特に高架道路の裏面に吸音板を配設することで高架道路付近における交通騒音の対策を図る裏面吸音板は、都心部や住宅地付近等で広く採用されている。
【0003】
従来の吸音板は、特許文献1に開示されているように、外部に向けられる意匠面を有するパネル部分を含んだ箱状に加工されるパネル部材と、このパネル部材の内側に配設される吸音材とを備え、これらがユニットのように組まれ、多数のユニットを連結して所望の面積の吸音板を構成することが出来るようになっている。パネル部分は、表裏に貫通した多数の孔を有し、所謂パンチングメタル状を成している。吸音材は、所謂グラスウールに代表されるようなガラス繊維集合体や特許文献2に開示されているように、ポリエステル製の不織布等で構成され、パネル部分のほぼ全域を覆い得る面状に広がったものである。騒音源から発せられ吸音板に入射した音は、パネル部分に貫設されている孔を通過してパネル部材内部に配設されている吸音材によって吸音され、低減される。
【0004】
この他、特許文献3や特許文献4に記載されているように、適宜間隔で配設される横梁の下面に、横梁に直交して横梁間に架設され横梁の長手方向において適宜間隔を存して複数が整列配置されるルーバーと称すパネル部材の代わりに採用される構成のものも普及している。この種の化粧部を含んで成る吸音装置は、ルーバーがパネル部分の意匠面に代わって意匠性をもたらすように意図され、公共物としての景観性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2953989号公報
【特許文献2】特許第3465622号公報
【特許文献3】意匠登録第1024537号公報
【特許文献4】意匠登録第1118521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来の吸音装置においては、意匠性を向上させることを主たる目的としつつ、吸音材を保持するためのパネル部分やこれに代わるルーバーには、吸音効果等の音を低減する効果はなく、寧ろ入射音を音源側に反射してしまうという問題があった。特に、パネル型吸音装置におけるパネル部分にあっては、パネル部分の表裏に亘って貫通した孔が穿設されている部分のみしか入射音が吸音材に到達せず、孔以外の領域では音源側に反射してしまう。これは、ルーバー型の吸音装置においても同様で、ルーバーの外端面による反射や台形状のルーバーの側面において反射した反射音は外方に向かってしまい、吸音材まで到達せず吸音しないという問題がある。
【0007】
また、このパネル部分に貫設された孔を有するパンチング孔付きパネル材やこれと同様に、孔付き材から構成されたルーバーは、孔無し材に比して強度が下がる上、穿孔加工コストが高くなるという問題がある。
【0008】
さらに、ルーバー型の吸音装置においては、吸音材を隠すため、ルーバー幅とルーバー間隔とをほぼ同等に設定しなければならず、吸音率が低下してしまうという問題があった。
【0009】
また、従来の吸音装置では、吸音効果をもたらす吸音材は必須不可欠な要素であるが高価である上、大量に使用するため吸音装置全体に締めるコスト比率が高く、全体コストを引き上げる要因となっている。
【0010】
本発明は、上述のような実情に鑑みて成されたものであり、入射音を音源側に直接反射させることなく、音源から発せられ吸音装置に向かって伝搬して来る全ての騒音を、吸音装置に洩れなく入射させ、その内部において入射音を著しく低減させて消音することを可能とする消音システムを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、吸音材を使用することなく入射音の音圧レベルを減衰させて消音させることが可能な消音システムを提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、吸音材を全く使用せずに若しくは少量使用であっても、入射音を著しく減衰させて消音することを可能としたことにより、吸音材の大量使用による高額化を改善し、著しくコストダウンすることを可能とする消音システムを提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の消音システムは、外部から音を入射させ得る入力端を有し、音の入射と共にこの入射した該音即ち入射音を反射させる第一反射面が適宜間隔を存して対向配置され、反射によって生じる反射音を高次の入射音として対向配置される第一反射面間において複数回反射させ得る反復反射レーンと、反復反射レーンの後端側に配置され後端側に到達した入射音を折り返し反射させて入力端側に向かう方向に反射させる第二反射面とを有することを特徴としている。
【0014】
また、第二反射面は、断面形状が適宜の曲線又は直線によって形成される単位形状を、幅方向に複数連接されて構成され、各連接点が節部を成し、且つ隣り合う節部同士の間の部分が腹部を成し、節部が前記第二反射面の間又は第二反射面の間の位置の後端側に対する延長線上に位置することを特徴としている。
【0015】
また、適宜間隔を存して隣接配置される第一反射面の先端に、この先端側から後端側に向かって鋭角状に形成された傾斜反射面を有して構成される鋭角部を設けることを特徴としている。
【0016】
第一反射面又は鋭角部の先端間を結ぶ仮想平面からの傾斜反射面の傾斜角αは、π/4より大きく、π/2より小さく設定されることを特徴としている。
【0017】
対向する第一反射面間の距離Wは、傾斜角をα、鋭角部の基端部から先端までの垂直距離をhとするとき、−(tan(2α)+cot(α))h以上に設定されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明を適用して成る吸音システムによれば、音に対する反射減衰性を有する第一反射面を対向配置し、且つ、それら第一反射面の後端側に第一反射面間を通過した音を第一反射面の先端側に向かって第一反射面に対して適宜範囲の入射角を以て折り返し反射させる第二反射面を設けたことにより、騒音源から発せられて入射した音を、対向配置された反射面間において複数回反射させ、漸次減衰させることによって高次の減衰効果を発揮させると共に、第一反射面に反射せずに第一反射面間を通過した音に対しても、第一反射面に向かって折り返し反射させ、これによって対向する第一反射面間を反復反射させるように構成したことにより、入射音を消音することが出来る。
【0019】
特に、第二反射面の断面形状を放物線状に構成した場合には、外部から進入する音が第二反射面に直達した場合、ほぼ全ての音が当該放物線状を成す第二反射面の焦点を通過させることが可能となり、従って、折り返し反射されて焦点を通過した音は、確実に第一反射面間で反復反射し、より確実な消音効果を得ることが可能となる。つまり、本発明の消音システムでは、吸音材による吸音を主たる吸音原理として構成されている吸音装置等に比して、少量の吸音材の使用によって、或いは、吸音材を全く使用せずに吸音又は消音することが可能となる。
【0020】
また、従来の吸音装置の構成部材であって意匠性を向上させるルーバーにあっては、吸音装置に入射した騒音に対する音圧レベルの低減効果は殆ど無く、寧ろ音源側を向いたルーバーの化粧面では入射音を外部に向かって反射してしまい吸音材まで音を到達させることが出来ないという問題があったが、本発明の第一反射面に鋭角部を設けてルーバー状に構成し傾斜反射面の傾斜角αの範囲をπ/4<α<π/2の範囲内に設定して反射面間の距離Wを−(tan(2α)+cot(α))hに設定した消音システムによれば、外部からの入射音を洩れなく吸音装置内に取り込むことが可能となる上、取り込まれた入射音は反復反射減衰効果により高次に減衰させて消音させることが可能となる。更に、本発明の消音システムによれば、側方から入射された入射光を鋭角部で外部に向けて反射することが可能であり、鋭角部表面やその周辺等を明るくすることが可能な上、外部をも明るくすることも可能となる。
【0021】
また、本発明の消音システムによれば、従来の吸音装置において大量使用が不可欠であったガラス繊維集合体やポリエステル繊維集合体等から成る吸音材の使用を皆無としながらも消音することが可能となる他、少量使用であっても従来同等以上の音圧レベルの低減効果を発揮させることが可能なので、吸音装置の高額化の主因の一つであった吸音材の使用を、ゼロ乃至少量化することが可能となり、低コスト化を図ることが可能となる。
【0022】
また、反射面を構成する部材をルーバー型とした本発明を適用して成る吸音装置においては、ルーバー構成部材にパンチング孔を設けないことにより、梁としての強度向上を図ることが出来る。また、ルーバー間隔に対するルーバー幅を広く設定することが可能であり、これによって、外部からの視認性において吸音材を隠し得る死角領域が広がり、吸音材の露出表面を広く設定することが可能となる。
【0023】
また、第二反射面を設定することにより、遮音壁や遮音天井としての効果を得ることも出来、遮音壁の代替技術とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用して成る実施形態の消音システムの構成を示す断面図であって、(A)は奥行き方向に対して並行に設定される複数の反射面が互いに並行に設定され、(B)は奥行き方向に対して傾斜して設定される複数の反射面が互いに並行に設定され、(C)は奥行き方向に対して傾斜して設定される複数の反射面のうち隣接する反射面同士が非平行に設定された一構成を示す図である。
【図2】(A)〜(I)は、図1に示す反射面の構造を示す拡大断面図である。
【図3】(A)〜(C)は、図1(A)〜(C)の各々に示す消音システムにおける入射音の反射の様子を示す模式図である。
【図4】本発明の消音システムにおいて鋭角部を備えた実施形態を模式的に示す断面図であって、(A)は鋭角部の基端部から奥に向かって背合わせ状の一対の反射面が互いに並行に延設されて成り、(B)は鋭角部の基端部から奥に向かって背合わせ状の一対の反射面の間隔が漸次拡大するように延設されて成り、(C)は鋭角部の基端部から奥に向かって背合わせ状の一対の反射面の間隔が漸次縮小するように延設されて構成されている。
【図5】(A)〜(E)は図4に示す鋭角部を備えた断面構造の各種変形例を示す模式的な断面図である。
【図6】本発明の消音システムを構成する一ユニットの一実施形態を示す模式図であり、(A)は断面図、(B)は斜視図である。
【図7】(A)〜(C)は、図4(A)〜(C)の各々に示す消音システムにおける入射音の反射の様子を示す模式図である。
【図8】(A)は並行に対向配置される反射面の先端に内角90°に設定された三角部を設けた消音システムにおける入射音の反射の様子を示す模式図であり、(B)は奥に向かって互いの間隔が漸次拡大するように対向配置される反射面の先端に平坦面を設け、全体形状が略台形状に設定されて成る消音システムにおける入射音の反射の様子を示す模式図である。
【図9】本発明の反射面の間のピッチを一定としていない一例を示す断面図である。
【図10】本発明の鋭角部の一変形例を示す断面図である。
【図11】本発明の反射面がハニカム状に構成された場合の一例を示す消音システムの音の入射側から見た図である。
【図12】本発明の消音システムを示す断面図であって、入射音の反射の様子を示す模式図であり、入射側と反対側に断面放物線状を成す奥側反射面を有して構成され、特に(A)は先端に鋭角部が形成されていないタイプの消音システムの構成を示す図であり、(B)は先端に鋭角部が形成されているタイプの消音システムの構成を示す図である。
【図13】先端部側に鋭角部を有し、背部側に後部反射面を有する消音システムにおける各部の寸法を断面的に示す模式図である。
【図14】ルーバー幅wとルーバー間距離Wとの比を黄金比に設定した消音システムにおける入射音の反射の様子を示す模式図である。
【図15】本発明の消音システムを高架道路の桁の裏面に配設される裏面吸音装置に適用し、且つ、高架道路の側壁部に配設される遮音壁及び遮音天板に適用される例を模式的に示す橋軸方向視における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態の消音システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の消音システムは、騒音源から発せられた騒音を捉えて消音するシステム並びにこの消音システムを備えた消音装置や吸音装置に関するものであって、例えば、高架道路を構成する桁裏面に対して橋軸直角方向に延在する横梁を介して橋軸方向に沿って配設され、この高架下の道路を走行する車両等による騒音が桁下部で反射して道路周辺に対して騒音を拡散することを防止するための裏面吸音装置等に適用されるものである。
【0026】
<1 反復反射レーン>
本発明の消音システムにおける反復反射レーンについて、図1〜図3を参照しながら詳細に説明する。反復反射レーンを用いた消音システム1は、騒音源等から発せられた外部からの音を入射させ得、その入射音を減衰させつつ反射させ得る第一反射面としての反射面10を複数有する。各反射面10は、反射面10同士が適宜間隔を存して対向配置される。各反射面10の配置は、音が反射面10に入射してその反射によって生じる反射音が対向配置される反射面10間を複数回に亘って反射することが出来るように設定される。
【0027】
第一反射面としての反射面10は、入射音に対する反射音がより小さくなる性質、即ち音に対する反射減衰性を有し、この反射減衰性が高い程、より効率よく消音することが出来て好ましい。つまり、反射面10は、反射減衰性を有する素材を板状、若しくは筒状等に形成して構成することが出来る。反射減衰性を有する素材から成る反射面10を、例えば図1に示すように、互いに対向配置することで消音システム1を構成することが出来る。具体的に、図1に示す消音システム1は、反射面10を有する反射板11が反射減衰性
を有する素材から構成されるために表裏面のそれぞれが反射面10と成っている(図2(A),(B)参照)。
【0028】
図1(A)に示す消音システム1は、各反射板11が、その先端(図中の下端)10a側から後端(図中の上端)10b側にかけて互いに対向する反射面10間の距離がほぼ一定となるように設定されて構成される。そして、各反射板11の反射面10は、先端10a同士或いは後端10b同士を結ぶ仮想の直線に対して垂直に設定される。図1(B)に示す消音システム1は、各反射板11が、その先端10a側(図中の下端)から後端10b側(図中の上端)にかけて互いに対向する反射面10間の距離がほぼ一定となるように設定され、且つ、各反射板11の反射面10は、先端10a同士或いは後端10b同士を結ぶ仮想の直線に対して所定の角度に設定されて傾斜して配設される。図1(C)に示す消音システム1は、各反射板11が、その先端10a側(図中の下端)から後端10b側(図中の上端)にかけて互いに対向する反射面10間の距離が、後端10bに向かって漸次縮小する反射面10の対と、後端10bに向かって漸次拡大する反射面10の対とが交互に配置設定される。ここで、図1(C)の各反射板11間のより接近した端部同士は、有限の間隔を存して設定されているが、これに限らず当該端部同士を当接させたり、一体に構成することも可能である。
【0029】
なお、反射面10や反射板11の構成は、図2(A)及び図2(B)に示すように、反射減衰性を有する素材のみによって構成するだけでなく、図2(C)に示すように心材11cとして反射減衰性を有しない素材を採用し、その表面に反射減衰性を有する表面層11dを設け、積層構造のように構成すること、或いは、反射減衰性を有する塗料等によって心材11cに対して表面コーティングを施すことで反射減衰性の表面11dを設けることも可能である。ここで、図2(A)は平坦な表面若しくは滑らかな筒状の閉曲面状の表面を有する反射面10を示したものであり、図2(B)の反射減衰性素材は、発泡性や多孔性の素材を用いて構成された反射面10を示したものである。また、本発明の反射面10は、図2(D)に示すように、反射減衰性を有する薄い表面材11e,11e(反射面)二枚を一対として、それらの表面材11e,11e間に断面波形の中間材11fを介在させ、この中間材11fに対して表面材11e,11eを固設することで、反射面10を構成することも可能である。また、図2(E)に示すように、ゴムやスポンジ等のように可撓性を有する心材11gの表裏面を、反射減衰性を有する表面素材11h,11hで挟み込んで反射面10を構成することで、表面を構成する反射面10に入射した音の音圧を、中間に位置する可撓性の心材11gによっても緩衝することでより効果的に減衰させるように構成しても良い。また、反射面10は平滑な表面に構成するだけでなく、図2(F)に示すように、凹凸状に形成された反射減衰性を有する表面を設けても良い。この場合、この付近を通過する音波、即ち空気振動が凹部で減圧されて乱されて減衰される効果が得られる。また、図2(G)に示すように、反射減衰性を有する素材を用いて反射面10を構成すると共に、この反射面10の表面の凹凸化を図り、表面付近を通過する音波を散乱させることで減衰性の向上を図っても良い。また、図2(H)は、心材11iの表裏面に、当該面の面方向に向かって多数の音圧減衰用の毛11jが植設されて成る表面材を設けても良い。また、図2(I)に示す反射面10を構成する反射板11には、表裏に亘って貫通する多数の孔11kが穿設され、入射音がこの孔11k付近を通過する際に減圧等によって音圧レベルが低減されるように構成することも可能である。しかしながら多数の貫通孔11kを穿設するには、パンチング穿孔加工コストが必要となり、コスト高となるので穿孔しない方が好ましい。
【0030】
消音システム1は、以上説明のように様々な構成をとり得、入射音を対向配置された反射面10間において複数回反射させて、反射の度に入力音のレベルをより高次に減衰させて消音することが出来るように構成される。例えば、図1(A)〜図1(C)に示すように構成された消音システム1における入射音の反射の様子をそれぞれ図3(A)〜図3(C)に示す。
【0031】
図1(A)の構成の消音システム1においては、反射面10に対して並行に入射した音は反射面10に反射されることなく先端10a側から後端10b側に通り抜けることが出来る。従って、後端10b側にグラスウール等のようなガラス繊維集合体やポリエステル繊維集合体の如くの吸音材(不図示)を配置した場合には、入射音を直接吸音材に吸音させることが出来る。また、図3(A)に示すように、図1(A)の構成の消音システム1では、反射面10に対して傾斜した入射角で音が入射した場合には、反射面10の先端10a側から後端10b側に向かって対向配置された反射面10間を複数回に亘って反射し、その反射回数に応じて入力音のレベルを漸次減衰させることが可能となる。なお、入射音の初期入力レベルをP0、反射面10に固有の反射減衰係数をμ、反射回数をnとした場合のn次の減衰音の出力レベルPnは数1で与えられる。但し、反射減衰係数μは、0<μ<1を満たす。勿論、反射減衰係数μの値は、0に近い程、より少ない反射回数で音を減衰させることが可能となって好ましい。
【0032】
【数1】
【0033】
図1(B)の構成の消音システム1においては、図3(B)に示すように、反射面10の先端10a間を結ぶ仮想の直線に対してほぼ垂直に先端10a側から後端10b側に向かって入射した音、即ち反射面10に対して一定以上の傾斜角で入射した音は、反射面10の先端10a側から後端10b側に向かって対向配置された反射面10間を複数回に亘って反射し、その反射回数に応じて入力音のレベルを漸次減衰させることが可能となる。勿論、反射面10に対して並行に入射した音は、反射面10に反射されることなく先端10a側から後端10b側に通り抜けることが出来る。
【0034】
また、図1(C)の構成の消音システム1においては、図3(C)に示すように、反射面10の先端10a間を結ぶ仮想の直線に対して一定範囲の傾斜角で入射した音は、反射面10の先端10a側から後端10b側に向かって対向配置された反射面10間を複数回に亘って反射しつつ、その折り返しピッチが徐々に短くなりながらその反射回数に応じて入力音のレベルを漸次減衰させることが可能となる。従って、図1(A)のような反射面10の構成に比して、より短い奥行きでありながら反射回数を増やすことが可能となる。但し、反射面10の傾斜に対する音の入射角によっては、十分な反射減衰が成される前に高次の反射音の進行方向が逆転して先端10a側に向かって戻ってきてしまう場合があることに注意を要する。勿論、反射面10の先端10a部同士の間に進入した音は、反射面10に反射されることなく先端10a側から後端10b側に通り抜けることが出来る。
【0035】
以上説明したように、消音システム1においては、音源の位置と消音システム1を配置する位置との関係や消音対象となる音の入射角を考慮して反射面10の傾斜角等の構成を規定することが好ましい。また、反射面10の傾斜角や音の入射角によって、殆ど減衰させずに通過させる音と、高次に減衰させる音とを選択することも可能となる。
【0036】
<2 反復反射レーンの変形例1>
次に、本発明の消音システムにおける更に別の構成の反復反射レーンについて、図4〜図9を参照しながら詳細に説明する。消音システム20は、互いに背中合わせ向きの二つの反射面10の先端10aに鋭角部21が設けられて構成される。鋭角部21の先端21aの内角は、好ましくは90°未満に設定される。より好ましくは、55°〜80°程度の範囲に設定される。なお、ここで、鋭角部21は名称上、鋭角即ち90°未満としなければならないが、必ずしも鋭角である必要はなく、入射する音の代表的な入射角によって規定することが望ましく、外部からの入射音を外部に洩らすことなく進入させるように設定することが重要である。なお、鋭角部21の表面は、音に対する反射減衰性を有することが好ましい。
【0037】
本実施形態の消音システム20は、図4(A)に示すように、互いに平行で背中合わせ向きの二つの反射面10の先端10aに、これらの反射面10と一連の鋭角部21を一体に設けて所謂ルーバー状のルーバーユニット22を構成している。複数のルーバーユニット22同士は、各々の反射面10同士が互いに並行となるように適宜間隔を存して併設される。このルーバーユニット22間の幅は後に詳述するが、反射面10の先端10aから鋭角部21の先端21aまでの垂直距離とルーバーユニット幅等に応じて規定される一定以上の間隔に設定することが好ましい。なお、この既定値を下回るルーバーユニット間幅に設定すると、鋭角部21に対して反射面10に平行に入射した音が上手く消音システム20内に取り込まれず、外部に反射されてしまうことがあることに注意する必要がある。
【0038】
ルーバーユニット22は、図5(A)に示すように、音に対する反射減衰性を有する素材から成る中実の部材22aの先端形状を略鋭角に形成して鋭角部21とすることが可能である。この場合、ルーバーユニット22を構成する部材の表裏面が反射面10と成る。また、図5(B)に示すように音に対する反射減衰性を有しない素材から成る中実の部材22bを心材として基礎形状を形成し、その表面に反射減衰性を有する層22cを形成することでルーバーユニット22を構成することも出来る。また、図5(C)に示すように、音に対する反射減衰性を有しない素材から成る内部が中空状の部材22dを心材として基礎形状を形成し、その表面に反射減衰性を有する層22eを形成することでルーバーユニット22を構成することも出来る。勿論、図5(D)に示すように、音に対する反射減衰性を有する素材から成る中空状の部材22fによって一対の反射面10と鋭角部21とを一連に形成してルーバーユニット22を構成することも可能である。この他、図5(E)に示すように、中空状の部材22gによって一対の反射面10と鋭角部21とを一連に形成しつつ、その内側面と外側面にそれぞれ音に対する反射減衰性を有する層22h,22iを形成することによって、内外で音に対する反射減衰性を有するルーバーユニット22を構成することも可能である。
【0039】
この他、ルーバーユニット22は、例えば、音に対する反射減衰性を有する素材を、図6(A)に示すような断面形状、即ち互いに平行な一対の反射面10のそれぞれの先端10aに鋭角に形成した鋭角部21を一連に形成し、且つ、反射面10のそれぞれの後端10b側を、ルーバーユニット22の内側に向けて反射面10に対して直角に形成された後端部23を設け、この後端部23の端部をさらに鋭角部21の内側頂部に向かって90°未満の角度で傾斜させて係止部24を形成することが出来る。このルーバーユニット22は、図6(B)に示すように、ほぼ同じ断面形状で奥行き方向に所定長さだけ延在されて構成される。
【0040】
また、本実施形態のルーバーユニット22の一対の反射面10は、必ずしも互いに並行でなければならないというものではなく、例えば、図4(B)に示すように、鋭角部21の基端部21bの位置から後端10b側に向かって反射面10間の距離が漸次拡大するように構成することや、図4(C)に示すように、鋭角部21の基端部21bの位置から後端10b側に向かって反射面10間の距離が漸次縮小するように構成することも可能である。勿論、ルーバーユニット22の構成は、図4(B)や図4(C)のような断面形状に構成した場合にも図4(A)の断面構造として示した図5(A)〜図5(E)のように構成することも可能である。
【0041】
図4(A)〜図4(C)に示す各ルーバーユニット22において、各々のルーバーユニット22の先端21a間を結ぶ仮想の直線に対して垂直な方向から各鋭角部21に対して音を入射させた場合の反射の様子をそれぞれ図7(A)〜図7(C)に示す。図7に示すように、このようにして鋭角部21に対して入射した音は、入射側の外部空間に跳ね返されることなく、全ての音が隣接して配設されるルーバーユニット22同士の互いに対向する反射面10間に入射し、反射面10間において複数回反射されながら漸次減衰されるように構成される。勿論、図7(A)に示すように、対向する反射面10同士が並行に設定される場合には、反射音は一定の反射ピッチで反射されながら反射面10の後端10b側に向かって進行する。対向する反射面10同士の距離が後端10b側に向かって縮小する設定の場合には、図7(B)に示すように、反射音は漸次反射ピッチが縮小して反射されながら反射面10の後端10b側に向かって進行する。逆に、対向する反射面10同士の距離が後端10b側に向かって拡大する設定の場合には、図7(C)に示すように、反射音は漸次反射ピッチが拡大して反射されながら反射面10の後端10b側に向かって進行する。勿論、反射回数が、反射面10の反射減衰係数μで示される反射減衰性能に対して、十分に多ければ、本実施例の消音システム20に対する入射音は、後端10b側に到達する以前に極度に減衰されて消音される。更に、ルーバーユニット22は、先端21aに鋭角部21が設けられているので、側方から入射された太陽光等の光を鋭角部21で反射させることで鋭角部21表面やその周辺、高架道路裏面等を明るくすることが可能な上、高架下の道路側に反射光を導くことが出来、高架道路や高架下の道路を明るくすることも出来る。
【0042】
ここで、図4(A)〜図4(C)に示すルーバーユニット22の鋭角部21は、90°未満に設定されていたが、鈍角、例えば、90°に設定されていた場合には、図7と同様な条件で入射した入射音は、図8(A)に示すように、鈍角に設定されたルーバーユニット122の先端121aの傾斜面121cで反射され、その反射音が対向して隣接するルーバーユニット122の先端121aの傾斜面121cに到達して反射され、その反射音が、元々の入射側の外部空間に戻されてしまい、消音システムの内部に取り込むことが出来なくなる。
【0043】
また、図4(B)に示すルーバーユニット22の鋭角部21を無くして平坦面とした略台形状のユーバーユニット222を構成した場合、図8(B)に示すように、この平坦面221aに入射した音は全て入射側の外部空間に反射されてしまい、消音率や吸音率を低下させる一因となる。勿論、この入射音は平坦面221aに対して垂直に入射した音に限らず、何れの方向から入射した音であっても外部空間に反射してしまう。このことからも反射面10の先端10aに設定するのは、鋭角の先端21aを有する鋭角部21であることが有利であって好ましいが、必ずしも鋭角に設定しなければならないというものではなく、意匠の観点や加工上、コスト上の理由等から鈍角状や台形状、円弧状などとすることも出来る。
【0044】
また、ルーバーユニット22の先端21aの内角を適宜の値に設定した場合において、このルーバーユニット22の先端21aの傾斜面21cの延長線上から隣接するルーバーユニット22の基端部21bを目視した際には、互いに隣接する当該ルーバーユニット22同士の基端部21b間の距離、即ちルーバーユニット間幅は死角領域となる。この場合、例えば、ルーバーユニット22の後端10b側(基端部側)にルーバーユニット22間に亘る吸音材(不図示)を配設した場合、ルーバーユニット22の傾斜面21cの傾斜角より低い確度位置からは後端部23側に配設された吸音材は死角領域に入って目視し得なくなり意匠上好ましい。
【0045】
<3 反復反射レーンの変形例2>
以上では、対向する反射面10間の距離、或いはルーバーユニット間幅は、一定として説明してきたが、勿論、この間隔は必ずしも一定である必要はなく、例えば、図9に示すように、反射面10間距離方向に順次間隔が狭まったり、逆に広がったりするように設定することも可能である。このように設定した場合、反射面10間隔の狭い領域を反復反射して通過して減衰された音と、反射面10間隔の広い領域を反復反射して通過して減衰された音とでは、狭い間隔の領域を通過した音の方が、減衰レベルが高くなって不均一性を得ることが出来る。
【0046】
また、鋭角部21は、例えば、図10に示すように、先端10aから後端10bに向かって鋭角状に拡開した鋭角先端部21dと、この鋭角先端部21dの後端部から後端10bに向かって並行に延在した並行部21eが形成され、この並行部21eの後端部から延在し鋭角先端部21dの片側の傾斜面とほぼ平行な傾斜面21fが形成されるというように傾斜面21fが段状に形成されて構成されるものであってもよい。すなわち、鋭角部21の先端21aから基端、即ち反射面10の先端部10aまでの間が直線的な断面形状になっていなければならないというものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で所望の形状に設定することが可能である。
【0047】
また、本発明の消音システム20では、進入した入射音を当該消音システム20の内部において反復反射させて高次に減衰させることが出来るように対向して設けられる反射面10が設けられていればよく、図6(B)に示すようなルーバー型のものだけでなく、例えば、図11に示すように、多数の正六角形状の筒を側面方向に隙間無く並べて構成したような略ハニカム状に設けたものであっても良い。勿論、この場合の反射面10は各正六角形状の筒の内側面に相当し、先端は隣接する正六角形状の筒同士の周縁部が一体を成して鋭角部21を構成していて、先端側から後端側に切断した際の断面形状が鋭角をなすものである。なお、図11は、ハニカム状に構成された消音システム20の先端側から見た模式図である。勿論、ここでは、互いに対向する反射面10を成しているのは、正六角形状の筒を組み合わせたようなハニカム状の構成であるが、これに限らず正三角形状や正四角形状の筒形状、或いは円筒状等任意の形状に設定することが可能であって特に限定されるものではない。
【0048】
<4 本発明の消音システム>
次に、本発明の消音システムについて、図12及び図13を参照しながら詳細に説明する。この消音システム30は、反射面10の先端10aに鋭角部21を設けるだけでなく、図12に示すように、後端側に、後部反射面を併設することが可能である。より具体的には、外部から音を入射させ得る先端側の入力端を有し、所定範囲の入射角による音の入射と共にこの入射した該音、即ち入射音を反射させる第一反射面31が適宜間隔を存して対向配置される。第一反射面31に対する反射によって生じる反射音は、より高次の入射音として対向配置される第一反射面31に反射されながらこれら対向配置される第一反射面31間において複数回反射させ得るように設定される反復反射レーン32間で漸次より高次に反射減衰される。反復反射レーン32の奥側には、奥側に到達した入射音を折り返し反射させて入力端側に向かう方向に反射させる第二反射面33が配設されて構成される。この第二反射面33は、第一反射面31の先端31a側から後端31b側に延在する方向に対して概ね直交方向に広がって設けられ、好ましくは第一反射面31の先端31a側から後端31b側に向かって凹状に設定される湾曲形状が幅方向に複数連接して形成される。つまり、第二反射面33は、第一反射面31の後端31b側位置に、連接点、即ち節部33aと、湾曲した腹部33bとが、適宜間隔を存して複数の第一反射面31が併設される幅方向に亘って配設される。より好ましくは、隣り合う節部33aの位置は、一方の節部33aが或る反復反射レーン32の中間位置に設定され、他方の節部33aが当該反復反射レーン32から一つ置き以上離れた反復反射レーン32の中間位置に設定される。また、腹部33bの頂点位置は、節部33aが配置された反復反射レーン32の間に位置する反復反射レーン32の中間位置とすることが好ましい。また望ましくは、第二反射面33の隣接する節部32a間の断面形状は、放物線状に設定し、その焦点を腹部33bが位置する反復反射レーン32の中央位置に設定する。
【0049】
このように第一反射面31と第二反射面33とによって消音システム30を構成した場合には、図12(A)に示すように、第一反射面31に対して外部から所定範囲の角度で入射した音は、第一反射面31によって反射されながら反復反射レーン32間を反復反射しながら次第に後端31b側に向かって進行し、後端31bから抜けた高次に反射減衰された音が第二反射面33によって先端31a側に折り返し反射され、別の反復反射レーン32に導出される。こうして、入射音は、進入時とは異なる反復反射レーン32において対向する第一反射面31間でさらに反復反射しつつ、より高次に反射減衰されながら消音される。
【0050】
勿論、図12(B)に示すように、図12(A)の構成に加えて、隣接する一対の第一反射面31の先端31aに鋭角部34を設けることが出来る。鋭角部34を設けた場合には、所定の範囲の入射角で進入した音は、著しく反射回数が多くなり、極めて高次の反射減衰効果が得られるようになる。図12(B)からも判るとおり、隣接する鋭角部34の間の反復反射レーン32を第一反射面31と並行に進入した音は、全て放物線状の断面を有する第二反射面33で反射され、且つ、その反射音は全て当該放物線の焦点Fを通過して、鋭角部34を有する別の反復反射レーン32に入射してこの反復反射レーン32内の対向する第一反射面31間を反復反射しながら高次に反射減衰されて消音される。更に、鋭角部34を設けた場合には、側方から入射された太陽光等の光を鋭角部34で反射させることで鋭角部34表面やその周辺、高架道路裏面を明るくすることが可能な上、高架下の道路側に反射光を導くことが出来、高架道路や高架下の道路を明るくすることも出来る。
【0051】
以上説明の消音システム30をより好ましく構成するには、所定の寸法関係に則ることが不可欠であり、その好ましい設定を、図13を参照しながら説明する。本実施形態の消音システム30は、一対の第一反射面31が間隔wで並行に配設され、それらの先端31aに鋭角部34が一連に設けられて成るルーバーユニット35を有する。つまり、鋭角部幅はwに等しい。また、このルーバーユニット35同士は、幅Wを存して幅方向に複数並行配置される。即ち、反復幅はWに等しい。ここで、ルーバーユニット35の先端34a同士を結ぶ仮想の直線からの鋭角部反射面34cの傾斜角をαとし、鋭角部34の基端部34bから先端部34aまでの垂直距離をhとし、また第一反射面31の先端31aから後端31bまでの長さ、即ち反復反射部長さをHとしたとき、鋭角部幅wは、次の数2で与えられる。
【0052】
【数2】
【0053】
ここで勿論、鋭角部反射面34cの傾斜角αは、適当なパラメータκを用いて次の数3を満たす必要がある。但し、πは円周率であり、κは0<κ<2を満たす。
【0054】
【数3】
【0055】
また、第一反射面31に対して並行に入射する音のうち、鋭角部34に反射される音が全て第一反射面31に進入する条件は、ルーバーユニット間幅Wが次の数4を満たす場合に限られる。つまり、ルーバーユニット間隔Wは、数4を満たすように設定されることが好ましい。
【0056】
【数4】
【0057】
このような条件を満たすように設定された隣接するルーバーユニット35間、即ち反復反射レーン32を反射しながら進行する音は、初期に鋭角部34で反射されたところから後端31b側に抜けて第二反射面33に至るまでの間に第一反射面31で反射される反射回数をn*とするとき、ほぼ次の数5で与えられる。なお、第二反射面33で反射され別の反復反射レーン32で反復反射して外部に抜け出るまでの全反復反射回数はnとする。
【0058】
【数5】
【0059】
次に、上記条件を満たす消音システム30の具体例を示し、図14を参照しながらその消音性について説明する。本例は、鋭角部反射面34cの傾斜角α=54°、鋭角部幅w=50、反復反射部長さH=150に設定しつつ、反復反射係数μの値を0.9とした。また、反復反射幅Wは、鋭角部反射面34cの傾斜角αの値と、鋭角部幅wの値とを数4に代入して得られる最小値とした。
【0060】
この場合、第一反射面31に対して並行に鋭角部34に入射した入力音P0は、図14に示すとおり、全反復反射回数nが少なくとも20回となり、数1より、入力音P0に対する20次の出力音P20の比が約10%以下になることが判る。勿論、反復反射係数μの値をさらに小さなものに設定すれば、反復反射減衰効果、即ち消音効果はより大きなものとなる。
【0061】
なお、本例における鋭角部反射面34cの傾斜角αを規定しているパラメータκの値は、κ=1.2であって、数2よりα=κ・π/4=54°となっていて、これは上記条件の下に鋭角部幅に対するルーバーユニット間隔の比W/wが丁度黄金比となっていて意匠的にも優れたものであることが判る。
【0062】
また、上記条件では詳細設定していないが、図14中のFは第二反射面33の断面形状である放物線の焦点であり、Pは放物線の中点と焦点Fとの距離、即ち焦点距離であり、dは第二反射面33の連接点即ち節部33aと第一反射面31の後端部31bとの間の距離であり、Dは放物線の中点と第一反射面31の後端部31bとの間の距離である。図14からも判るとおり、焦点距離Pが長過ぎると断面形状が放物線状を成す第二反射面33で反射された反射音はその後の第一反射面31に対する入射角が小さくなり過ぎて反復反射回数を多くとることが出来なくなるので、焦点距離Pは短めに設定することが好ましい。またP<Dに設定すると第二反射面33で反射された音の一部が鋭角部34を有する反復反射レーン32に入射することなく隣の反復反射レーン32に抜け出して少ない反復反射回数で外部に抜け出てしまい、P>Dの場合には第二反射面33で反射した反射音が鋭角部34を有する反復反射レーン32に入射せずに元の反復反射レーン32に入射してしまうので、P=Dに近いP≧Dに設定することが好ましい。但し、これらのような第二反射面33における反射音の鋭角部34を有する反復反射レーン32に対する入射不良は、dの値を調整することである程度解消することが可能である。
【0063】
以上説明したように構成される本発明の消音システム30は、例えば、騒音源から発せられた騒音を入射させて消音する消音装置や吸音材との併用で吸音する吸音装置等に応用することが可能である。これら消音装置や吸音装置は、例えば、図15に示すように高速道路40等の高架の桁下面41側に付設することで所謂裏面吸音効果を発現させることが可能となる。この場合、高架下の道路を走行する車両の騒音が、本発明を適用して成る吸音装置のルーバーユニット35の先端部34aを構成する傾斜面34cで反射しても、鉛直な側面の側、即ち対向配置される第一反射面31によって構成される反復反射レーン32に進入し、入射側の空間、すなわち高架下の道路側に戻らないようにすることが可能である。また、反復反射レーン32に入射した音は、隣接するルーバーの垂直な側面との間で反射を繰り返し、反射減衰されながらルーバーユニット35の後端側に配設される吸音材によって吸音される。更に、ルーバーユニット35は、先端34aに鋭角部34が設けられているので、側方から入射された太陽光等の光を鋭角部34で反射させることで鋭角部34表面やその周辺、高架道路裏面を明るくすることが可能な上、高架下の道路側に反射光を導くことが出来、高架道路40や高架下の道路を明るくすることも出来る。
【0064】
また、高架道路を走行する車両から発せられる騒音を高架道路の周囲に洩れ出すことを防止することを目的として、高架道路の側部42に、本発明の消音システム30を適用して成る消音壁を配設することが可能である。この消音壁には、高架道路の側部42に沿って立設される鉛直部42aと、この鉛直部42aの上端から一連に形成される天井部42bとを有して構成される。この場合、騒音の洩れ出しを防止するという消極的な効果に加え、騒音自体を消音してしまうというより積極的な効果を得ることが可能となる。
【0065】
この他、エンジン周りで発生する騒音や工事現場等で発生する騒音対策として、本発明の消音システム30を応用したパネル状装置や箱状装置等を用いることも可能である。なお、上述の説明では、本発明による消音システム30について代表的な構成を説明したが、これらに限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で様々な形態や構成をとることが出来る。
【符号の説明】
【0066】
1 消音システム、10 反射面、11 反射板、20 消音システム、21 鋭角部、22 ルーバーユニット、30 消音システム、31 第1の反射面、32 反復反射レーン、33 第二反射面、33a 節部、33b 腹部、34 鋭角部、35 ルーバーユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から音を入射させ得る入力端を有し、上記音の入射と共にこの入射した該音即ち入射音を反射させる第一反射面が適宜間隔を存して対向配置され、上記反射によって生じる反射音を高次の入射音として対向配置される上記第一反射面間において複数回反射させ得る反復反射レーンと、
上記反復反射レーンの後端側に配置され該後端側に到達した入射音を折り返し反射させて上記入力端側に向かう方向に反射させる第二反射面と
を有することを特徴とする消音システム。
【請求項2】
前記第二反射面は、断面形状が適宜の曲線又は直線によって形成される単位形状を、幅方向に複数連接されて構成され、各連接点が節部を成し、且つ隣り合う節部同士の間の部分が腹部を成し、上記節部が前記第二反射面の間又は前記第二反射面の間の位置の後端側に対する延長線上に位置することを特徴とする請求項1に記載の消音システム。
【請求項3】
適宜間隔を存して隣接配置される前記第一反射面の先端に、この先端側から後端側に向かって鋭角状に形成された傾斜反射面を有して構成される鋭角部を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の消音システム。
【請求項4】
前記第一反射面又は前記鋭角部の先端間を結ぶ仮想平面からの前記傾斜反射面の傾斜角αは、π/4より大きく、π/2より小さく設定されることを特徴とする請求項3に記載の消音システム。
【請求項5】
対向する前記第一反射面間の距離Wは、前記傾斜角をα、前記鋭角部の基端部から先端までの垂直距離をhとするとき、−(tan(2α)+cot(α))h以上に設定されることを特徴とする請求項3又は4に記載の消音システム。
【請求項1】
外部から音を入射させ得る入力端を有し、上記音の入射と共にこの入射した該音即ち入射音を反射させる第一反射面が適宜間隔を存して対向配置され、上記反射によって生じる反射音を高次の入射音として対向配置される上記第一反射面間において複数回反射させ得る反復反射レーンと、
上記反復反射レーンの後端側に配置され該後端側に到達した入射音を折り返し反射させて上記入力端側に向かう方向に反射させる第二反射面と
を有することを特徴とする消音システム。
【請求項2】
前記第二反射面は、断面形状が適宜の曲線又は直線によって形成される単位形状を、幅方向に複数連接されて構成され、各連接点が節部を成し、且つ隣り合う節部同士の間の部分が腹部を成し、上記節部が前記第二反射面の間又は前記第二反射面の間の位置の後端側に対する延長線上に位置することを特徴とする請求項1に記載の消音システム。
【請求項3】
適宜間隔を存して隣接配置される前記第一反射面の先端に、この先端側から後端側に向かって鋭角状に形成された傾斜反射面を有して構成される鋭角部を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の消音システム。
【請求項4】
前記第一反射面又は前記鋭角部の先端間を結ぶ仮想平面からの前記傾斜反射面の傾斜角αは、π/4より大きく、π/2より小さく設定されることを特徴とする請求項3に記載の消音システム。
【請求項5】
対向する前記第一反射面間の距離Wは、前記傾斜角をα、前記鋭角部の基端部から先端までの垂直距離をhとするとき、−(tan(2α)+cot(α))h以上に設定されることを特徴とする請求項3又は4に記載の消音システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−237990(P2012−237990A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−98634(P2012−98634)
【出願日】平成24年4月24日(2012.4.24)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(510202167)Next Innovation合同会社 (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月24日(2012.4.24)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(510202167)Next Innovation合同会社 (30)
【Fターム(参考)】
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