説明

消音装置、建設機械および定置機械

【課題】 建設機械または定置機械が備える内燃機関からの排気により発生する騒音を低減するための消音装置、建設機械および定置機械を提供すること。
【解決手段】 本発明の消音装置20は、定置機械10の内燃機関からの排ガスを排気する排気マフラー12に連結するための入口部22Aと、排ガスを放出するための出口部22Bとを備える排気管22と、排気管22内に設けられる排気音計測マイク32と、排気音計測マイク32の下流側でかつ出口部22B前に設けられる消音スピーカ34と、排気音計測マイク32から入力されるアナログ信号を逆位相の信号として増幅し、消音スピーカ34に出力する増幅回路40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音の消音技術に関し、より詳細には、建設機械または定置機械が備える内燃機関からの排気により発生する騒音を低減するための消音装置、並びに該消音装置を備える建設機械および定置機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ショベルカーやクレーンなどの建設機械、コンプレッサや発電機などの定置機械(アイドリング時の車両を含む。)では、その内燃機関から発生する騒音が問題となっており、建設機械や定置機械のメーカにおいても、内燃機関を防音材料で覆ったりするなどの騒音対策を施し、騒音の低減に注意が払われている。一方、上記のように内燃機関本体は防音性能を有する材料で覆うこともできるが、内燃機関では排気をする必要があるため、排気部を直接覆うことができず、排気ガス中の有害成分を触媒により抑制し、排気音量を低減する役割を担うマフラー(消音器またはサイレンサーとも呼ばれる。)を取り付けることにより、内燃機関の排気による騒音を低減している。
【0003】
しかし、通常の内燃機関を搭載した建設機械や定置機械では、上述した防音材料やマフラーでは低減しきれない騒音が残っており、この排気音が機械の騒音レベルを決定づけているに等しい機械も多く存在する。つまり、内燃機関を搭載した建設機械および定置機械の最大の音源は、内燃機関の排気マフラー部であり、この排気マフラー部から発生する騒音を低減することができれば、建設機械および定置機械の全体の騒音レベルを好適に小さくすることができると考えられる。
【0004】
上記マフラー排気部の騒音を低減する従来技術としては、特開2010−24876号公報(特許文献1)に開示されている技術を挙げることができる。特許文献1は、従来の建設機械のエンジン騒音消音装置において、低コストで既存の建設機械にも容易に装着できる消音装置を提供する目的で、建設機械のエンジンマフラーの近傍にて、スピーカを着脱自在に設け、エンジンマフラーの音の出力の先にエンジン音計測用のマイクを設置し、スピーカとマイクとに電気的に接続した制御装置を建設機械に設け、エンジンマフラーからの騒音と逆位相の音をスピーカから出して、建設機械の騒音を低減させることを特徴とする建設機械のエンジン騒音消音装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−24876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示される従来技術は、マフラー外部に設けたエンジン音計測用のマイクからの信号を用いてフィードバック制御を行うアクティブ消音技術であるが、アクティブ消音技術は、原理が複雑であり、消音制御を行うための高速なデジタル・シグナル・プロセッサ、該プロセッサによる処理のためマイク信号をデジタル信号に変換するA/D(Analogue to Digital)コンバータ、処理後のデジタル信号を音出力するためアナログ信号へ変換するD/A(Digital to Analog)コンバータが必要であり、計装コストが嵩んでしまう。また、マイクおよびスピーカ配置が消音性能に大きく影響するため、マイクおよびスピーカを建設機械または定置機械上の適切な位置に適切な向きに設置および調整しなければならず、取り付けの容易性の観点からも充分なものではなかった。
【0007】
本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、本発明は、建設機械または定置機械の内燃機関からの排気マフラー部に簡便に取り付けが可能であり、簡素な原理で低コストかつ効果的に排気の騒音を低減することができる消音装置、建設機械および定置機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討した結果、定置機械または建設機械の排気マフラーに排気管を有する消音装置を連結させて、消音装置の排気管内に音力発電装置、排気音を計測するマイクおよび計測された排気音の信号と逆位相の信号にて打消音を出力するスピーカを設けて、排気管内での消音制御とすることにより、簡素な構成で充分な排気音の消音性能を達成することができることを見出し、本発明に至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明では、上記課題を解決するために、以下の特徴を有する消音装置を提供する。本発明の消音装置は、建設機械または定置機械の内燃機関からの排ガスを排気する排気マフラーに連結される消音装置であって、排気マフラーに連結するための入口部と、排ガスを放出するための出口部とを備える排気管を備える。排気管の内部には、音力発電装置と、この音力発電装置の下流側に設けられて排気音を計測する排気音計測マイクと、この排気音計測マイクの下流側でかつ上記出口部前に設けられて排気音を打ち消すための打消音を発生させる消音スピーカとが備えられ、さらに、排気音計測マイクから入力されるアナログ信号を逆位相の信号として増幅し、上記消音スピーカに出力する増幅回路とを備える。
【0010】
上記音力発電装置は、排気音の音響エネルギーを吸収することで、騒音レベルを低下させる。また音力発電装置は、音響エネルギーから変換して取り出した電力エネルギーを上記増幅回路に提供し、電力源とも機能することができる。上記消音スピーカは、排気音とは逆位相の打消音を出力することにより、排気音を相殺し、最終的に排出される排気音の騒音レベルを低下させる。
【0011】
さらに本発明によれば、内燃機関と、この内燃機関からの排ガスを排気する排気マフラーと、この排気マフラーに連結される上記消音装置とを備える建設機械または定置機械を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、内燃機関の排気マフラーに、該排気マフラーと共に排気経路を構成する消音装置を連結させ、この消音装置の内部に、排気音の一部の音響エネルギーを吸収する音力発電装置、排気音を計測するマイクおよび、排気音を相殺するための打消音を出力するスピーカを設けることにより、排気管内での消音制御とし、マイクからのアナログ信号をアンプ回路にて逆位相で増幅し、そのままスピーカから出力するという簡素な構成で、上記音力発電装置による排気音の音響エネルギーの吸収とあいまって、充分な消音性能を達成することができ、ひいては計装コストを削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態による消音装置を備えるエンジン式コンプレッサを示す外観図。
【図2】本発明の実施形態による消音装置を示す概略構成図。
【図3】本発明の他の実施形態による消音装置における、排気音計測マイクおよび消音スピーカ周辺のより詳細な構成を示す平面図。
【図4】本発明の実施形態による消音装置における消音制御に関する回路構成を示すブロック図。
【図5】従来技術のアクティブ消音における消音制御に関する回路構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明の実施形態は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
以下、図1〜図4を参照しながら、本発明の実施形態による消音装置および該消音装置を備える定置機械について説明する。図1は、本発明の実施形態による消音装置を備える定置機械の外観を示す。図1に示す定置機械10は、エンジン式コンプレッサを例示しており、その内部に図示しないディーゼル・エンジンなどの内燃機関を備える。定置機械10は、また、内燃機関から排気される排ガスを装置外部へ放出するための排気マフラー12を備える。
【0016】
図1に示す定置機械では、本発明の実施形態による消音装置20が排気マフラー12の先端部に着脱自在に連結されている。排気マフラー12から放出される排ガスは、消音装置20を通過して、消音装置20内部で消音処理が施された上で放出される。定置機械10が備える内燃機関は、それ自体は好適には防音材料により覆われ、排気マフラーが取り付けられ、通常の騒音対策が施されており、本発明の実施形態による消音装置20は、主として防音材料で覆うことができない排気経路、すなわち排気マフラーから発生する排気騒音をさらに低減することを目的とする。
【0017】
なお、説明する実施形態では、本発明の実施形態による消音装置が取り付けられる機械としては、エンジン式コンプレッサを例示するが、エンジン式発電機、エンジン式溶接機、エンジン式高圧水ポンプなどの内燃機関を備える他の如何なる定置機械、および掘削機、クレーン、ブルドーザ、基礎工事用機械、せん孔機械、トンネル工事用機械などの内燃機関を備える如何なる建設機械を挙げることができる。
【0018】
図2は、本発明の実施形態による消音装置の概略構成を示す。図2に示す消音装置20は、排気マフラー12に連結される排気管22を備える。排気管22は、排気マフラー12に連結するための入口部22Aと、排ガスを外部に放出するための出口部22Bとを備え、排気管22内部にさらに、音力発電装置30と、排気音計測マイク32と、消音スピーカ34とを備えている。入口部22Aは、排気マフラー12に嵌合する形状および大きさを有しており、消音装置20は、排気マフラー12に着脱自在に取り付け可能とされている。
【0019】
排気管22内部に設けられる音力発電装置30は、入力される排気音の音響エネルギーを吸収して電気エネルギーに変換する装置である。音力発電装置30は、特に限定されるものではないが、一般的なスピーカを用いることができ、スピーカの電気回路を逆に設定することで音力発電装置30を構成することができる。例えば圧電素子型のスピーカであれば、入力される音で圧電素子を振動させて電気に変換することができる。
【0020】
音力発電装置30は、発電効率をあまり考慮しなければ、いかなるスピーカを用いることができるが、変換効率が高いスピーカを用いることが好ましい。音力発電装置30は、排気音の少なくとも一部が入力される限り、その向きは特に限定されるものではないが、排気音を効率的に吸収して電気エネルギーを取り出す観点からは、排気管22内を伝播する排気音の伝播方向に対向するよう配向して設けることが好ましい。
【0021】
排気管22内部に設けられる排気音計測マイク32は、排気管22内を伝播する排気音を測定し、音を電気信号に変換して出力する。排気音計測マイク32は、特に限定されるものではないが、エンジンの排気音に特徴的な低音域に感度が高いマイクロフォンを採用することが好ましい。排気音計測マイク32は、排気管22内において、排気音の一部の音響エネルギーを吸収している上記音力発生装置30の下流側に配置される。
【0022】
消音スピーカ34は、入力される電気信号を音に変換して出力する装置であり、本実施形態の消音装置20においては、排気音を相殺して騒音レベルを低減するための打消音を出力する装置である。消音スピーカ34としては、特に限定されるものではないが、一般的なスピーカを採用することができ、排気音が低音域に特徴を有することから、好ましくは低音域に特化されたウーファ、サブウーファスピーカを採用することができる。
【0023】
消音スピーカ34は、排気管22内において、排気音を計測する上記排気音計測マイク32の下流側に配置される。消音スピーカ34の向きは、特に限定されるものではないが、消音装置20の排気管22の出口部22Bからの排気音を効果的に低減する観点からは、排気管22内を伝播する排気音の伝播方向に沿うように打消音が発生するよう配向して設けることが好ましい。
【0024】
消音装置20は、さらに、排気音計測マイク32から入力されるアナログ電気信号(電圧信号)を逆位相の信号として増幅し、消音スピーカ34に出力するアンプ回路40を備える。アンプ回路40は、排気音計測マイク32から入力された排気音のアナログ電気信号の位相を反転させて、排気音を相殺するための打消音の電気信号を発生し、消音スピーカ34に対して打消音を出力させる。アンプ回路40は、例えば、オペアンプを含んで構成される。打消音は、排気音に対して逆位相の音である。
【0025】
なお、排気音の騒音レベルが音力発電装置30に入力される音響エネルギーと相関しているため、好適な実施形態では、アンプ回路40は、音力発電装置30が発生する電力エネルギーに相関した利得にてアナログ信号を増幅して消音スピーカ34に出力する。なお、音力発電装置30が発生する電気エネルギーに相関する利得は、例えば、予め一定の騒音レベルを消音装置20に入力し、その際に発生する電力に対し、どの程度の音量の打消音を発生させる必要であるかを事前に試験することで、求めることができる。
【0026】
アンプ回路40は、1次電池または2次電池など直流電源である内部電池36からの電力の供給を受け、本実施形態では、さらにその補助として、音力発電装置30が発生する電力の供給を受けることができる。音力発電装置30が排気音から吸収して発生した電気エネルギーをさらに打消音を発生するための電力として有効利用することにより、電源36の消費電力を低減することができ、さらに、消音装置20の動作時間を延長することができる。なお、上記内蔵電池36としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池を好適に用いることができる。また、上記内部電池36に代えて、交流電源に接続される電源装置を備えていてもよく、この場合、電源装置としては、交流電圧からアンプ回路40電源端子に適合する直流電圧に変換する、変圧器や整流器、安定化回路などからなる電源回路を好適に用いることができる。
【0027】
また、本発明の好適な実施形態では、消音装置20は、さらに、排気管22内を流れる排ガスと、消音装置20外部の大気との間の温度差を駆動力して電気エネルギーを生成する熱電変換素子38を備えることができる。熱電変換素子38は、両端に温度差を生じさせると起電力が生じるゼーベック効果を利用したものであり、熱電変換素子38の一方の部位を外気に熱的に接触させ、他方の部位を直接または排気管22の側壁を介して排ガスに熱的に接触させるように配置されている。好適な実施形態では、熱電変換素子38をアンプ回路40の補助電力源として利用することにより、排ガスが有する熱エネルギーを利用して、さらに、電源36の消費電力を低減し、さらに消音装置20の動作時間を延長することができる。
【0028】
本発明の実施形態による消音装置20では、まず入口部から入力された排気音は、一旦、音力発電装置30にてその一部の音響エネルギーが吸収され、低減される。続いて、排気音測定マイク32にて排気音が計測され、消音スピーカ34から排気音と逆位相の打消音が出力され、これにより排気音が低減される。この打消音を発生させるために必要な電力は、好適には、音力発電装置30および熱電変換素子38が発生する電力でその一部がまかなわれる。
【0029】
したがって、定置機械10内の内燃機関が発生する音響エネルギーおよび熱エネルギーを有効利用して、その排気音を消音するために使用することができるため、本発明の実施形態による消音装置20は、内燃機関を備えるという定置機械または建設機械で使用するのに適した消音装置であるといえる。特に、定置機械10の内燃機関が発生する排気音および熱はかなり大きなものとなるため、上記音力発電装置30および熱電変換素子38は、打消音を発生させるための有用な補助の電力源として期待することができる。
【0030】
以下、排気音計測マイクおよび消音スピーカのより詳細な配置について説明する。図3は、本発明の他の実施形態による消音装置における、排気音計測マイクおよび消音スピーカ周辺のより詳細な構成を示す。図3に示す排気管22は、Y字型構造を有しており、入口部22A側の排気音計測マイク32が配置される第1管路22Cと、消音スピーカ34が配置される第2管路22Dと、出口部22Bを備える第3管路22EとがY字に接続された構造を有する。なお、第1管路22C内には、排気音計測マイク32の上流側に、図示しない音力発電装置30が設けられている点に留意されたい。
【0031】
排気音は、排気マフラーから第1管路22Cへ入力され、第3管路22Eを通って出口22Bから放出される。一方、消音スピーカ34から出力される打消音は、消音スピーカ34が設けられている第2配管を通って、上記第1管路22Cおよび第3管路22Eによる排気音の経路に合流し、排気音と同様に第3管路22Eを通って出口22Bから放出される。
【0032】
消音スピーカ34の位置は、つまり消音スピーカ34から第3管路との合流点までの距離は、排気音計測マイク32で計測された排気音が伝播して出口22Bから放出される際に、当該排気音と、消音スピーカ34から逆位相で出力され伝播してきた打消音とが、音波の粗の部分と密の部分とがちょうど反対となり、好適に相殺し合うよう予め調整される。
【0033】
また好適な実施形態では、排気音が伝播する第1管路22Cには、グラスウール、ロックウール、ウレタンスポンジなどの吸音材が設けられており、吸音材により排気音の音響エネルギーを吸収し、排気音を低減することができる。吸音材は、排気音から電力を取り出す観点からは上記音力発電装置30の下流側に設けることが好ましく、排気音を精度良く計測する観点からは、排気音計測マイク32の下流側に設けることがより好ましい。さらに好適な実施形態では、さらに、打消音で消音しきれない排気音を低減する観点から、第3管路22Eの出口部22B近傍の内壁にも上記吸音材を周設することができる。
【0034】
図3に示す実施形態の排気音計測マイクおよび消音スピーカ周辺の構成によれば、排気音計測マイク32および消音スピーカ34が最適な位置関係で予め配管内に設置されているため、消音装置20は、排気マフラーの先端に連結するだけで、最適化されたパフォーマンスで消音することが可能となる。
【0035】
以下、本発明の実施形態による消音装置20の回路構成について説明する。図4は、本発明の実施形態による消音装置における消音制御に関する回路構成を示す。これに対して、図5は、従来技術のアクティブ消音における消音制御に関する回路構成を示す。
【0036】
図5に示す従来技術の回路構成100は、マフラーの排気口から所定の位置に配置されるエラーマイク102と、エラーマイク102のアナログ電圧信号をサンプリングしてデジタル信号に変換するA/Dコンバータ104と、エラーマイク102からのデジタル信号に応じて位相制御された打消音のデジタル信号を生成する位相制御用プロセッサ106と、位相制御用プロセッサ106が出力するデジタル信号をスピーカ出力用にアナログ信号に変換するD/Aコンバータ108と、位相制御された打消音を発音する消音スピーカ110とを含んで構成される。したがって、マイクとスピーカ以外に、A/Dコンバータ104、位相制御用プロセッサ106およびD/Aコンバータ108を必要とする。
【0037】
これに対して、本発明の実施形態による消音装置20は、マイクとスピーカ以外には、図4(A)に示すように、排気音計測マイク32および消音スピーカ34と接続するアンプ回路40が設けられているだけであり、簡素な回路構成となっている。さらに、アンプ回路40自体も、図4(B)に示すような簡素な構成とすることができる。
【0038】
図4(B)に示すアンプ回路40は、排気音計測マイク32からの微小な信号を電圧増幅する電圧信号増幅回路42と、排気音計測マイク32からの電圧信号増幅回路42により増幅された電圧信号を、その位相を反転して出力する位相反転回路44と、位相反転回路44が出力する位相が反転された信号を電力増幅して、排気音を打ち消すために充分なエネルギーを有する打消音を消音スピーカ34に発生させるための電力増幅回路46とから構成することができる。
【0039】
上述した本発明の実施形態による消音装置20は、排気マフラー12に連結される消音装置20の排気管22内の制御としているため、図4に示すように、従来のアクティブ消音技術と比較してより簡素な構成で、同等の消音性能を達成することができる。つまり、従来技術のアクティブ消音技術で必要であった、A/Dコンバータ、デジタル・シグナル・プロセッサおよびD/Aコンバータを不要とし、それに伴い計装コストを削減することができる。
【0040】
また、本発明の実施形態による消音装置20は、排気マフラー12に連結させるだけで所望の効果を発揮させることができ、また、同一形状のマフラーであれば、他の定置機械や、建設機械などに転用することができるため、汎用性も高い。さらに、適宜、排気音の音響エネルギーおよび排ガスの熱エネルギーを利用して電力を補助することが可能であるため、低炭素化に貢献することもできる。
【0041】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、建設機械または定置機械の内燃機関からの排気マフラー部に簡便に取り付けが可能であり、簡素な原理で低コストかつ効果的に排気の騒音を低減することができる消音装置、建設機械および定置機械を提供することができる。
【0042】
これまで本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の実施形態は上述した実施形態または実施例に限定されるものではなく、他の実施形態または実施例、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
10…定置機械、12…排気マフラー、20…消音装置、22…排気管、24,26…吸音材、30…音力発電装置、32…排気音計測マイク、34…消音スピーカ、36…電池、38…熱電変換素子、40…アンプ回路、42…電圧信号増幅回路、44…位相反転回路、46…電力増幅回路、100…アクティブ消音装置、102…エラーマイク、104…A/Dコンバータ、106…プロセッサ、108…D/Aコンバータ、110…消音スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械または定置機械の内燃機関からの排ガスを排気する排気マフラーに連結するための入口部と、排ガスを放出するための出口部とを備える排気管と、
前記排気管内に設けられる音力発電装置と、
前記排気管内の前記音力発電装置の下流側に設けられる排気音計測マイクと、
前記排気管内の前記排気音計測マイクの下流側でかつ前記出口部前に設けられる消音スピーカと、
前記排気音計測マイクから入力されるアナログ信号を逆位相の信号として増幅し、前記消音スピーカに出力する増幅回路と
を備える、消音装置。
【請求項2】
前記音力発電装置は、前記排気マフラーから入力される排気音の音響エネルギーを電力エネルギーに変換し、前記増幅回路へ電力を供給することを特徴とする、請求項1に記載の消音装置。
【請求項3】
前記排気管は、前記入口部を備え前記排気音計測マイクが配置される第1管路と、前記消音スピーカが配置される第2管路と、前記出口部を備える第3管路とがY字に接続された構造を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の消音装置。
【請求項4】
前記排気管の出口部周辺の内壁に吸音材が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の消音装置。
【請求項5】
前記消音装置は、前記排気管内を流れる排ガスと大気との温度差を駆動力として電力エネルギーを生成し、前記増幅回路に電力を供給する熱電変換素子をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の消音装置。
【請求項6】
前記増幅回路は、前記音力発電装置が発生する電力エネルギーに相関した利得にて前記アナログ信号を増幅して前記消音スピーカに出力することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の消音装置。
【請求項7】
内燃機関と、
前記内燃機関からの排ガスを排気する排気マフラーと、
前記排気マフラーに連結される入口部と、排ガスを放出するための出口部とを備える排気管と、
前記排気管内に設けられる音力発電装置と、
前記排気管内の前記音力発電装置の下流側に設けられる排気音計測マイクと、
前記排気管内の前記排気音計測マイクの下流側でかつ前記出口部前に設けられる消音スピーカと、
前記排気音計測マイクから入力されるアナログ信号を逆位相の信号として増幅し、前記消音スピーカに出力する増幅回路と
を備える、建設機械。
【請求項8】
前記音力発電装置は、前記排気マフラーから入力される排気音の音響エネルギーを電力エネルギーに変換し、前記増幅回路へ電力を供給することを特徴とする、請求項7に記載の建設機械。
【請求項9】
内燃機関と、
前記内燃機関からの排ガスを排気する排気マフラーと、
前記排気マフラーに連結される入口部と、排ガスを放出するための出口部とを備える排気管と、
前記排気管内に設けられる音力発電装置と、
前記排気管内の前記音力発電装置の下流側に設けられる排気音計測マイクと、
前記排気管内の前記排気音計測マイクの下流側でかつ前記出口部前に設けられる消音スピーカと、
前記排気音計測マイクから入力されるアナログ信号を逆位相の信号として増幅し、前記消音スピーカに出力する増幅回路と
を備える、定置機械。
【請求項10】
前記音力発電装置は、前記排気マフラーから入力される排気音の音響エネルギーを電力エネルギーに変換し、前記増幅回路へ電力を供給することを特徴とする、請求項9に記載の定置機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−107545(P2012−107545A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255682(P2010−255682)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】