説明

液を供給する装置

【課題】電解液の注入量をさらに精度よく制御できる装置を提供する。
【解決手段】注入装置1は、シリンダ11内の計量空間Sをピストン12が動く計量ユニット10と、電解液19を注入するディスペンサ20と、計量空間Sの上端部とディスペンサ20とをつなぐ第1の管路41と、第1の管路41に配置され、ピストン12の動作に伴う背圧の変化により作動する背圧弁50と、第2の管路42を介して計量空間Sへ流入する液をオンオフする入口弁5と、操作棒61により背圧弁50を一時的に開にセットする開放ユニット60とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に液を供給する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高額な設備コストのかかる低湿度の作業環境が不要であり、安価で高性能のリチウム二次電池を製造できるリチウム二次電池の製造方法を提供することが記載されている。そのため、特許文献1には、内部の気体を排気する及び/又は内部に電解液を注入するためのバルブを有する管を少なくとも1本備えた電池容器の内部に、正極と負極をセパレータにて電気的に絶縁してなる電池素子を封入する封入工程と、前記管を介して前記電池容器の内部の気体を減圧下で排気すると共に、前記電池容器の内部を加熱乾燥する水分除去工程と、前記管を介して前記電池容器内に電解液を注入する注液工程と、前記管を封止する管封止工程とを有し、注液工程において、電解液を収容するタンク、該タンクに接続された定量ポンプおよび該定量ポンプに接続された排気装置を備えた注液装置の前記定量ポンプを前記管に接続した後に、前記管のバルブと注液装置の間の気体を排気することを特徴とする二次電池の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−62163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリ容器(電池ケース)への電解液の注入量をさらに精度よく制御するためには、注入経路に空気などの泡が存在しないようにすることが望ましい。そのためには、事前に、注入経路から空気などの圧縮性の流体を除去しておくことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、容器に液を供給する装置である。この装置は、シリンダ内の計量空間をピストンが動く計量ユニットと、容器に液を注入するディスペンサと、計量ユニットの計量空間とディスペンサとを接続する第1の管路と、第1の管路に配置され、ピストンの動作に伴う背圧の変化により作動する背圧弁と、第2の管路を介して前記計量空間へ流入する液をオンオフする入口弁と、背圧弁を一時的に開にする開放装置とを有する。
【0006】
この装置(供給装置)においては、背圧弁がピストンの動作に伴う背圧の変化に連動して作動し、ディスペンサに対する液の供給をオンオフする。したがって、ディスペンサが閉め切る差圧を小さくでき、ディスペンサの先端が負圧雰囲気であってもディスペンサにおける液切れを改善でき、精度の高い注液が可能となる。
【0007】
さらに、開放装置により、液を容器に注入する前に背圧弁を強制的に開に一時的にセットできる。このため、ディスペンサの先端を負圧にすることにより、背圧弁を通して供給装置から空気を抜くことができ、一時的に開に固定された背圧弁を含めて空気を抜くことができる。したがって、その後、供給装置に液を充填して容器に液を供給する際に液中に泡が発生するのを抑制でき、注入量をいっそう精度よく制御できる。
【0008】
第1の管路は、背圧弁が下側に設けられた上下に延びる直管部を含み、開放装置は、直管部を通って背圧弁の弁体を操作する操作棒を含むことが好ましい。背圧弁自体に解放装置を設ける代わりに、背圧弁の操作を第1の管路を介して操作棒により行うことができる。
【0009】
さらに、第1の管路は、直管部と計量空間とを連通する連結管を含み、直管部が上方に延びる様に設けられたガイド管であって、内部に操作棒が挿入されたガイド管を有することが好ましい。背圧弁を開に固定する必要がないときは操作棒をガイド管に退避させることができ、操作棒により第1の管路の圧力損失が増えるのを抑制できる。また、背圧弁を開に固定する必要がないときに操作棒の一部を第1の管路に突出させることにより第1の管路の圧力損失を調整することも可能となる。
【0010】
直管部の上端は連結管により計量空間の上端と連通されていることが望ましい。空気抜き後、万一、計量空間に気泡が発生しやすい状況になったときでも、計量空間の上端の気泡が発生しやすい状態の液を、直管部を含む第1の管路を介して吐出できる。このため、注液中に供給装置に気泡が発生することを抑制できる。
【0011】
供給装置は、操作棒が弁体を下に押して背圧弁を開に固定する第1の位置に操作棒を固定する第1の固定装置と、操作棒が直管部からガイド管に退避した第2の位置に操作棒を固定する第2の固定装置とを有することが好ましい。第1および第2の固定装置により操作棒の位置をロックできる。
【0012】
この装置においては、ディスペンサは、容器内または容器の上端近傍に配置される吐出ノズルと、吐出ノズルの内側に配置され、吐出ノズルを開閉するニードル弁と、吐出ノズルが下端に装着され、上下に延びたシリンジと、を含むことが好ましい。ピストンの動作と連動して、ニードル弁をオンオフすることにより、電解液の注入量の精度をさらに向上できる。また、ニードル弁をオンオフすることにより液切れをさらに改善できるので注液時間を短縮できる。また、吐出ノズルを減圧環境にして、空気抜きのために背圧弁を開にするとともに、吐出ノズルに繋がるニードル弁を開にすることにより、ニードル弁を介して、ディスペンサ、背圧弁、第1の管路、計量ユニットを含めた供給装置から空気を抜くことができる。
【0013】
ディスペンサの先端が減圧室内に配置されている場合は、減圧室の負圧により空気抜きが可能である。ディスペンサの先端が減圧室以外に設置されている場合は、空気抜きのときにディスペンサの先端を減圧雰囲気にすることにより空気抜きできる。
【0014】
本発明の他の態様は、液を注入する供給装置における液を注入することを有する方法である。この方法は、液を注入することの前にディスペンサの先端を減圧雰囲気にして空気抜きすることを有し、この空気抜きすることは、入口弁を閉じて開放装置により背圧弁を一時的に開放することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一例を示す電解液供給装置(注液装置)の概略構成を示す図。
【図2】図2(a)は開放装置の操作棒が第2の位置にある状態を拡大して示す図、図2(b)は操作棒が第1の位置にある状態を拡大して示す図。
【図3】注入方法の概要を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に本発明の一実施形態にかかる装置の概略構成を示している。この装置1は、バッテリ容器150に電解液19を供給する装置(電解液供給装置、注液装置、供給装置)であり、以下において注液装置と称する。この例では、バッテリ容器150は、減圧室100の内部に配置され、減圧室100の内部は真空ポンプ110により所定の圧力(負圧、減圧雰囲気)になるように減圧される。
【0017】
注液装置1は、減圧室100の上壁(天板)101の上に配置された計量ユニット10と、計量ユニット10の上流に配置されたリザーバー(リザーバータンク)2と、計量ユニット10の下流に配置されたディスペンサ20と、注液装置1による電解液19の注入を制御する制御ユニット30とを備えている。典型的な制御ユニット30は、CPUおよびメモリを含むハードウェア資源を備え、プログラム(プログラム製品)を実行することにより注液装置1を制御し、バッテリを製造する過程においてバッテリ容器150に電解液19を供給する。図1において、斜線付きの細線は制御用の電気信号を伝達する配線を示す。
【0018】
計量ユニット10の上流のリザーバー2は、電解液供給手段のヘッダー3に接続され、計量ユニット10が数回、分注する液量を一時的に確保する。リザーバー2は、ヘッダー3と計量ユニット10と間のバッファとなり、ヘッダー3の供給能力に対して計量ユニット10の消費量が一時的にオーバーすることをカバーする。
【0019】
計量ユニット10は、シリンダ11と、ピストン12と、サーボモータ13とを有する。シリンダ11は上下に延びており、シリンダ内をピストン12が上下方向(鉛直方向)に沿って動く。細い破線で示すようにシリンダ11の内部のピストン12が出入りする領域が計量空間Sとなっており、ピストン12の出入りする量(ストローク)を制御することにより計量空間Sで計量される電解液19の量を自在に制御(調整)できる。サーボモータ13の一例はステッピングモータであり、回転量、回転速度および回転方向を制御ユニット30により制御し、ピストン12のストロークを変え、ピストン12を上下に移動する。サーボモータ13をパルス制御することにより注入量を精度よく制御できる。計量ユニット10として、ストロークを可変制御可能なプランジャーポンプを用いることができる。
【0020】
計量ユニット10により計量された電解液19は、ディスペンサ20によりバッテリ容器150に対し上方から注入される。ディスペンサ20は、バッテリ容器150内またはバッテリ容器150の上端近傍に配置される吐出ノズル21と、この吐出ノズル21が下端に装着された単管(円筒またはシリンジ、以降においてはシリンジ)22と、吐出ノズル21の内側に配置されてこの吐出ノズル21の先端を開閉するニードル弁(ストップ弁)23と、シリンジ22の内部を上下に貫通するように設けられた弁制御棒25と、弁制御棒25を介してニードル弁23を上下に駆動し、ニードル弁23を開閉制御するエンコーダ付きのアクチュエータ24とを含む。ニードル弁23はノーマルオフ(ノーマル閉)であり、弁制御棒25を介してニードル弁23を吐出ノズル21の先端に付勢する手段(例えば、コイルばね)26を含む。
【0021】
シリンジ22は、減圧室100の上壁101を貫通して上下に延びており、先端は減圧室100の内部102に配置されたバッテリ容器150に到達している。したがって、ディスペンサ20の先端となるシリンジ22の下端は、上壁101の上に配置された計量ユニット10の計量空間Sの下端部S1よりも下側まで延びており、計量空間Sに充填された電解液19は、静圧(スタティックヘッド)でバッテリ容器150まで流れる。さらに、シリンジ22の先端(下端)となる吐出ノズル21の周りは減圧雰囲気となっており、圧力差により電解液19を減圧室100のバッテリ容器150に注入できる。また、シリンジ22の内部に設けられたニードル弁23により吐出ノズル21の直上を閉じることにより、吐出ノズル21が減圧雰囲気に面している場合においても、吐出ノズル21からの電解液19の液漏れを抑制でき、液切れ性を改善できる。さらに、注入前に、ニードル弁23を開にすることにより、減圧室100の負圧を用いて計量空間Sを含めた注液装置1の内部から空気などの気体を抜くことができる。
【0022】
注液装置1は、計量ユニット10の計量空間Sの上端部S2に設けられた出口ポートP2とディスペンサ20とを接続(連通)する第1の管路41と、計量空間Sへの電解液19の流入をオンオフ(開閉)する入口弁5と、計量ユニット10の計量空間Sの下端部S1に設けられた入口ポートP1と入口弁5とを接続(連通)する第2の管路42とを含む。入口弁5とリザーバー2とは第3の管路43により接続(連通)されている。
【0023】
図2(a)および(b)に第1の管路41の近傍を拡大して示している。第1の管路41は、出口ポートP2から水平に延びた第1の連結部45と、第1の連結部45により上端が計量空間Sに接続され、計量空間Sの下端部の近傍まで鉛直方向(上下)に延びた直管部44と、直管部44の下端からディスペンサ20の上端に向かって水平方向に延びた第2の連結部47とを含む。
【0024】
注液装置1は、さらに、第1の管路41の途中であって、第1の管路41の計量空間Sの下端部の近傍に相当する位置に配置された背圧弁50を含む。本例では、背圧弁50は、第1の管路41の直管部44と第2の連結部47とのコーナ部分、すなわち、上下に延びた直管部44の下端に配置されている。
【0025】
背圧弁50は、弁体であるボール51と、このボール51を上方に付勢し、背圧弁50を閉(オフ)に維持するコイルばね52とを含む。コイルばね52は、計量ユニット10のピストン12が動作(ストローク、この場合は下側に移動)しない限り、背圧弁50を介して電解液19が流れない程度の圧力をボール51に与えるように設定されている。たとえば、減圧室内102の最大負圧(真空度)と大気圧との差圧が背圧として加わっても電解液19が流れない設定になっている。
【0026】
この背圧弁50は、減圧室内102に容器150が配置されている場合は、減圧室内102の負圧がブレークして大気圧となる異常事態が発生したときに逆止弁として作用する。また、注液装置1を用いて減圧室100以外で、たとえば、大気圧で容器150に液を注入する場合は、シリンジ22の内圧が計量空間Sの内圧よりも高くなる異常事態が発生したときに逆止弁として作用する。
【0027】
注液装置1は、さらに、背圧弁50を一時的に開にセット(固定)する開放ユニット60を含む。開放ユニット60は、第1の管路41の直管部44を通って背圧弁50の弁体であるボール51を操作する操作棒61を含む。操作棒61の下端69はボール51に接してボール51を確実に下側へ押せるように細くなっており、操作棒61の上端62には操作棒61をオペレータ(ユーザー)が手で操作棒61を操作できるように六角柱状のノブ(レバー)62が設けられている。背圧弁50は直管部44にボール51とコイルばね52とが直線的に配置されているので、操作棒61により弁体であるボール51を操作して背圧弁50を開にセットできる。
【0028】
注液装置1は、また、第1の管路41の直管部44が上方に延びる様に設けられたガイド管71を含む。ガイド管71の内部に操作棒61が挿入されており、ガイド管71に操作棒61を退避させることにより直管部44から操作棒61を完全に退避させることができる。本例の注液装置1では、直管部44およびガイド管71が1つの管(管状部材)79により構成されている。すなわち、管状部材79が、第1の管路41の第1の連結部45とT字状に接続されており、その接続部分78より上側がガイド管71となり、下側が第1の管路41の直管部44となっている。
【0029】
ガイド管71の上端72は0リング73または他のタイプのパッキンなどにより、操作棒61が上下に動くようにシールされている。したがって、ガイド管71を介して電解液19が漏れ出したり、外界から空気などが入り込んだりし難い構造となっている。また、バッテリ容器150に注入される電解液19は直管部44を介して供給されるが、その前の捨て打ちあるいは試し打ちの段階で、ガイド管71に電解液19が入る。したがって、直管部44を流れる電解液19はガイド管71に封入された電解液19により外界からシールされる。このため、直管部44を流れる電解液19をガイド管71およびガイド管71に封入された電解液19により保護でき、空気の侵入も抑制できる。
【0030】
ガイド管71に封入された電解液19は、注液作業が終了した後に、以下で説明する空気抜きと同じ方法で除去することができる。また、操作棒61をガイド管71から引き抜くと、直管部44およびガイド管71は1つの管状部材79により構成されているので、極めて簡単にガイド管71および直管部44を洗浄することができる。
【0031】
さらに、注液する際に、操作棒61はガイド管71へ完全に退避させてもよく、操作棒61の先端69が直管部44に入っていてもよい。操作棒61を直管部44から引き上げて、操作棒61の先端69を背圧弁50のボール51から外すことにより背圧弁50は通常に動作する。操作棒61の一部を直管部44に挿入しておくことにより、直管部44の電解液19が通過する断面積が小さくなるので、直管部44を電解液19が通過するときの圧力損失を制御できる。たとえば、減圧室内102の圧力が何らかの要因で変わると背圧弁50に加わる力が多少なりといえども変化する可能性がある。そのようなときに、計量空間Sを動くピストン12の位置と背圧弁50が開閉するタイミングを操作棒61の位置により制御することが可能である。
【0032】
さらに、注液装置1は、操作棒61の先端69が弁体であるボール51を下に押して背圧弁50を開に固定する第1の位置POS1(図2(b)参照)に操作棒61を固定する第1の固定装置81と、操作棒61が直管部44からガイド管71に退避した第2の位置POS2(図2(a)参照)に操作棒61を固定する第2の固定装置82とを有する。この例では、第1の固定装置81はガイド管71の上端72に設けられたネジ穴83であり、操作棒61のノブ62の下側に設けられたネジ63をガイド管71の上部のネジ穴83にねじ込むことにより操作棒61を第1の位置POS1に固定できる。第2の固定装置82は、計量ユニット10のシリンダ11に取り付けられたアーム85と、アーム85に設けられたネジ穴86であり、操作棒61のノブ62の上側に設けられたネジ64をアーム85のネジ穴86にねじ込むことにより操作棒61を第2の位置POS2に固定できる。
【0033】
図2(a)に、バッテリを製造する過程において、制御ユニット30の制御により、注液装置1がバッテリ容器150に電解液19を供給する過程(供給する状態)を示している。この例においては、注液装置1は、バッテリ容器150に電解液19を複数回に分けて注入(分注)する。まず、分注を開始するときにいったんベント弁4を開閉し、リザーバー2をベントする。リザーバー2は供給装置1の上流の配管系における空気抜き機能を備えている。リザーバー2と供給装置1とを繋ぐ第3の管路43はリザーバー2に向かって上方に延びており管路43などで発生した気泡あるいは気体はリザーバー2の上部に溜まり、溜まった気体はベント弁4から排出できる。
【0034】
次に、入口弁5を開き、ニードル弁(カット弁、ストップ弁)23が閉じた状態で、リザーバー2と計量ユニット10の計量空間Sとを連通させ、ピストン12を上方にストロークさせることにより所定の量の電解液19を計量空間S内に流入させる。入口弁5は、入口ポートP1の近傍に配置され、第2の管路42をできるだけ短くし、計量空間Sにおける計量精度の低下を防いでいる。
【0035】
ピストン12が上方へストロークしている間は、背圧弁50を開にする背圧が背圧弁50には加わらず、背圧弁50は閉じた状態に維持される。電解液19は、入口弁5および第2の管路42を経由して計量空間Sの下端部S1の入口ポートP1から流入する。したがって、電解液19は比較的スムーズに、乱流が起こりにくい状況で計量空間Sに流入するので、計量空間Sの内部で気液分離が起こりにくい。
【0036】
次に、ピストン12を停止し、入口弁5を閉じた後、ニードル弁23を開く。計量空間Sは入口弁5の上流の系から遮断され、入口弁5より上流のシステムの静圧が印加されない。シリンダ11およびピストン12により構成される計量空間Sの断面積は配管の断面積の1桁以上、通常は2桁〜3桁以上大きい。分注する電解液19を断面積の大きな計量空間Sにいったん蓄積することにより、分注する電解液19の静圧(液柱による圧力)がニードル弁23に印加されるのを最小限に抑える。さらに、背圧弁50によりニードル弁23に加わる圧力を抑制している。
【0037】
ニードル弁23を開いた後、ピストン12を下側へストロークさせ、背圧弁50に所定の背圧が加わると背圧弁50が開き、ピストン12の動きに対応する量の電解液19が吐出ノズル21の先端から安定して吐出される。背圧弁50が設けられた第1の管路41は、計量空間Sの上端部S2の出口ポートP2に接続されており、出口ポートP2に加わる静圧(液柱による圧力)は基本的にはゼロであり、ピストン12の位置(上下の位置)が変化しても変動しない。したがって、背圧弁50には、背圧弁50の上流の第1の管路(配管)41の内部の電解液19の静圧と、ピストン12の動き(下側へのストローク)による圧力のみが加わる。背圧弁50の上流の第1の管路41の内部の電解液19の静圧(管路の静圧)は一定なので、この管路の静圧、あるいは管路の静圧よりも若干高い圧力に対抗するように背圧弁50を設定しておくことにより、背圧弁50はピストン12の動きに瞬時(即座)に反応して開かれる。
【0038】
したがって、ピストン12がストロークを停止すると、背圧弁50により、非常に短い時間で、ほぼ瞬時に計量ユニット10とディスペンサ20とを圧力的に分離できる。このため、ディスペンサ20の先端が減圧(真空)状態に置かれていても、計量空間Sの電解液19が減圧に引っ張られて大量に流出してしまう事態を未然に防止できる。
【0039】
しかしながら、計量空間Sおよび第1の管路41を含む供給装置1の内部に空気などを含む気泡が存在すると、液体19に対し気泡は圧縮性が高いので、計量空間Sで計量する際の精度に影響を与える。さらに、供給装置1に気泡が存在すると、ピストン12の動きによる圧力の変化が背圧弁50に伝達されるのが遅れる可能性がある。たとえば、圧力伝播の遅れにより背圧弁50が開いたときの計量空間Sの圧力が若干高くなると、ディスペンサ20の吐出ノズル21から急激に電解液19が放出されて飛び散る可能性がある。また、吐出ノズル21における電解液19の圧力が高くなるとキャビテーションが発生する要因になったり、圧力伝播の遅れにより背圧弁50が閉じるのが遅れると注入量を精度よく制御できない要因になる。いずれの場合も、バッテリ容器150への電解液19の注入量の精度が低下する要因となる。
【0040】
したがって、注液装置1から空気が完全に除去されることが望ましく、注液装置1において計量ユニット10の計量空間Sおよび第1の管路41から空気を除去する空気抜きの作業が必要となる。この注液装置1においては、注液装置1の上流ではリザーバー2により空気抜きが行われる。また、計量ユニット10の計量空間Sにおいては、下側の第1のポートP1から電解液19を流入させ、最も上部にある第2のポートP2から電解液19を流出させるようにしているので、計量空間Sの内部に気泡は溜まりにくい。したがって、計量空間Sに最初に電解液19を流入させる際に気泡を排出しやすい。さらに、ピストン12を動かしてディスペンサ20から電解液19を捨て打ちすることにより注液装置1から空気を電解液19とともに排出しやすい。
【0041】
しかしながら、電解液19の注入量の精度をさらに高めることを要望された場合、電解液19を注入する前に何度も捨て打ちを繰り返す必要が発生し、作業時間が増加し、電解液19が浪費される要因となる。特に、捨て打ちでは、背圧弁50のような、他の部分より構造が複雑な個所で気泡が溜まり易いところでは、気泡を除去することは容易ではないと推測される。
【0042】
そこで、図2(b)に示すように、この注液装置1においては、注液装置1に電解液19を流入させる前に、開放ユニット60を用いて背圧弁50を一時的に開にセットし、減圧室内102の負圧を利用して注液装置1を減圧する。これにより、電解液19を流入させる前に注液装置1から空気などの気体を除去でき、電解液19を注液装置1に流入させたときに注液装置1の内部で気泡が発生するのを抑制できる。
【0043】
注液装置1の空気抜きが効率よくできることにより、捨て打ちの回数が少なくて済み、背圧弁50の動作が安定するので、注液量の精度が向上する。また、ピストン12の動きに連動して、同時にあるいはほとんど時間差なくニードル弁23を閉じることにより、ニードル弁23で電解液19を容易に遮断でき、液切れ性を改善できる。このため、注液装置1の注液精度を改善できる。さらに液だれが止まるのを待つ時間が基本的には不要であるので、注液時間も短縮できる。
【0044】
減圧室内102に複数のバッテリ容器150がセットされている場合には、バッテリ容器150とディスペンサ20とを相対的に移動させ、ディスペンサ20の下に次のバッテリ容器150を移動することにより、注液装置1により複数のバッテリ容器150に対し分注を短時間に次々と行うことができる。
【0045】
図3に、バッテリを製造する過程において、注液装置1がバッテリ容器150に電解液19を供給する方法の一例を示している。この方法は、注液装置1におりバッテリ容器150に電解液19を複数回に分けて注入(分注)する工程200と、注入する工程200の前に空気抜きする工程210とを有する。
【0046】
空気抜きする工程210では、まず、ステップ211において入口弁5を閉じ、注液装置1を上流のシステムから分離し、ステップ212において開放ユニット60により背圧弁50を開にセットする。具体的には、図2(b)に示すように、操作棒61を第1の位置POS1までガイド管71に挿入して第1の固定装置81に固定する。操作棒61の先端69が背圧弁50のボール51をコイルばね52の方向に押し、背圧弁50は強制的に開にセットされる。背圧弁50を開にセットするのと同時に、あるいは前後して、ディスペンサ20のニードル弁23を開にする。
【0047】
ディスペンサ20の先端の吐出ノズル21は減圧室内102にあるので、ニードル弁23、シリンジ22を含むディスペンサ20が減圧され、背圧弁50を含む第1の管路41が減圧され、計量ユニット10の計量空間Sが減圧され、さらに、第2の管路42が減圧される。したがって、注液装置1の内部が減圧され、注液装置1の内部から空気が除去される。特に、背圧弁50が開の状態で背圧弁50を通って減圧されるので、背圧弁50あるいはその近傍の配管(管路)に空気が残る可能性が低い。このため、注液中に背圧弁50の近傍などに気泡が発生したり、存在したりする可能性を小さくでき、気泡の存在により注液量の精度が悪化するのを抑制できる。
【0048】
ステップ213で所定の時間が経過し、注液装置1から空気抜きを行った後、ステップ214で背圧弁50のセットを解除し、ニードル弁23をいったん閉にして空気抜きを終了する。具体的には、操作棒61を第2の位置POS2までガイド管71から引き出して第2の固定装置82に固定する。操作棒61の先端69が背圧弁50のボール51から離れるので、ボール51がコイルばね52に押されて背圧弁50は閉になる。
【0049】
続いて、ステップ200において、制御ユニット30の制御により、注液装置1がバッテリ容器150に電解液19を供給する。
【0050】
なお、上記は、ディスペンサ20の先端の吐出ノズル21が減圧室内102に配置されているので、減圧室内102の負圧を用いて空気抜きする例であるが、大気圧で容器に液を注入する注液装置1においては、空気抜きする工程のときに吐出ノズル21の先端を減圧雰囲気にすることにより上記の例と同様に空気抜きできる。たとえば、ディスペンサ20の先端をキャップなどの適当な治具を用いて真空ポンプに接続することによりディスペンサ20の吐出口を一時的に負圧にできる。
【0051】
ボールタイプの背圧弁50は簡易な構造で配管への組み込みが容易であり、動作も安定しているので注液装置1には好適なものである。一方、背圧弁50はダイアフラムタイプなどの他のタイプであってもよい。
【0052】
また、上記の注液装置1では、操作棒61の移動を手動で行うようにしているが、ソレノイドやモーターなどのアクチュエータを用いて操作棒61を制御ユニット30で制御し、空気抜きする工程210も含めて自動化することも可能である。また、操作棒61を固定する方法はネジに限定されず、磁石などの他の方法で固定してもよい。
【0053】
また、上記の計量ユニット10は、シリンダ11が上下に延び、ピストン12が上下に移動するタイプであるが、シリンダ11が左右方向(水平方向)に沿って配置され、ピストン12を左右方向(水平方向)に沿って移動するタイプであってもよい。計量空間Sへの電解液19の流入および流出をスムーズに行えるように配管をアレンジする必要があるが、上下方向の寸法を小さくできるので、よりコンパクトな注液装置に適している。
【0054】
計量ユニット10の駆動方式もサーボモータに限定されない。注液量をフレキシブルに可変させる要求がなければ、ピストンをソレノイドタイプのアクチュエータで駆動することも可能である。さらに、上記の入口弁、ベント弁およびニードル弁には、電動アクチュエータを採用しているが、ソレノイドタイプのアクチュエータを採用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 注液装置、 5 入口弁
10 計量ユニット、 11 シリンダ、 12 ピストン
20 ディスペンサ、 21 吐出ノズル、 23 ニードル弁
41 第1の管路、 44 直管部
50 背圧弁、 51 ボール、 52 コイルばね
60 開放装置、 61 操作棒、 71 ガイド管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に液を供給する装置であって、
シリンダ内の計量空間をピストンが動く計量ユニットと、
前記容器に液を注入するディスペンサと、
前記計量ユニットの前記計量空間と前記ディスペンサとを接続する第1の管路と、
前記第1の管路に配置され、前記ピストンの動作に伴う背圧の変化により作動する背圧弁と、
第2の管路を介して前記計量空間へ流入する液をオンオフする入口弁と、
前記背圧弁を一時的に開にする開放装置とを有する、装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の管路は、前記背圧弁が下側に設けられた上下に延びる直管部を含み、
前記開放装置は、前記直管部を通って前記背圧弁の弁体を操作する操作棒を含む、装置。
【請求項3】
請求項2において、前記第1の管路は、前記直管部と前記計量空間とを連通する連結部を含み、
さらに、前記直管部が上方に延びる様に設けられたガイド管であって、内部に前記操作棒が挿入されたガイド管を有する、装置。
【請求項4】
請求項2または3において、前記操作棒が前記弁体を下に押して前記背圧弁を開にする第1の位置に前記操作棒を固定する第1の固定装置と、
前記操作棒が前記直管部から前記ガイド管に退避した第2の位置に前記操作棒を固定する第2の固定装置とを有する、装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記ディスペンサは、前記容器内または前記容器の上端近傍に配置される吐出ノズルと、前記吐出ノズルの内側に配置され、前記吐出ノズルを開閉するニードル弁と、前記吐出ノズルが下端に装着され、上下に延びたシリンジとを含む、装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記ディスペンサの先端が減圧室内に配置されている、装置。
【請求項7】
液を注入する装置における液を注入することを有する方法であって、
前記装置は、シリンダ内の計量空間をピストンが動く計量ユニットと、液を注入するディスペンサと、前記計量空間と前記ディスペンサとを接続する第1の管路と、前記第1の管路に配置された背圧弁と、前記計量空間へ流入する液をオンオフする入口弁と、前記背圧弁を操作する開放装置とを有し、
当該方法は、
前記液を注入することの前に前記ディスペンサの先端を減圧雰囲気にして空気抜きすることを有し、
前記空気抜きすることは、前記入口弁を閉じて前記開放装置により前記背圧弁を一時的に開放することを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−12340(P2013−12340A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143163(P2011−143163)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(598142014)長野オートメーション株式会社 (14)
【Fターム(参考)】