説明

液体の収容容器、及びその排出方法

【課題】 容器内に収容した空気との接触を嫌う液体を、当該容器内に可及的に空気を侵入させることなく排出できる収容容器と、その液体の排出方法を提供することである。
【解決手段】 柔軟な樹脂材であるポリエチレンシートより、袋状で折り畳み可能な第1及び第2の内側容器1,2を成形する。第1内側容器1に水性塗料Pを満杯に収容するとともに第2内側容器2を収縮させ、各内側容器1,2を互いに接触させて外側容器3に収容する。水性塗料Pが使用されるのに伴い、第1内側容器1の容積が減少する。しかし、第2内側容器2に供給される空気Aの圧力により、第1内側容器1が圧迫されて収縮する。これにより、第1内側容器1の容積も減少するため、第1内側容器1に空気が侵入することが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気との接触を嫌う液体を収容し、該液体を排出するときに容器内に可及的に空気を侵入させずに排出する収容容器、及びその排出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば水性塗料を運搬したり保管したりする場合、水性塗料を所定の容器に収容している。水性塗料を収容可能な容器として、例えば特許文献1に開示されるものが存している。水性塗料を容器に収容したとき、水性塗料の液面が空気と接触していると、その部分が硬化して「皮張り」と称する膜が形成されてしまう。皮張りが形成された水性塗料を使用すると、塗膜の厚みが不均一になり、的確な塗装作業を行うことが困難になるばかりでなく、塗膜の乾燥が遅くなったり、塗装ガンの流路に塗料が詰まってしまったりするという不具合が発生し易い。
【0003】
上記した不具合を回避するため、特許文献2に開示される技術が存している。この技術では、容器に内装させた遮蔽部材を水性塗料の液面に接触させておき、使用に伴う水性塗料の減少に追随させて遮蔽部材を降下させるというものである。しかし、この技術では容器と遮蔽部材とに一定の強度が必要であるため、容器を折り畳んで小さくすることは困難である。この結果、塗料の量に拘わらず、容器の大きさ分の保管スペースを必要とする。また、容器と遮蔽部材との2つの部材を必要とするため、製造コストが高くなってしまう。
【0004】
また、特許文献3に開示される技術では、水性塗料が収容された容器に不活性ガスを充填することにより、水性塗料の液面が空気と接触することを防止している。この技術では、常に不活性ガスを用意しておかなければならない。
【特許文献1】特開平8−48364号公報
【特許文献2】特開2001−301832号公報
【特許文献3】特開平5−4681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑み、容器内に収容した空気との接触を嫌う液体を、当該容器内に可及的に空気を侵入させることなく排出できる収容容器と、その液体の排出方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、
空気との接触を嫌う液体を収容し、該液体を排出するときに容器内に可及的に空気を侵入させずに排出する収容容器であって、
容積が自在に変化する柔軟な袋状で、前記液体が給排される第1容器と、
前記第1容器に収容された液体を、該第1容器から押し出す押圧流体が給排される第2容器と、
前記液体が収容されて大容積状態となっている第1容器に小容積状態の第2容器を接触させて収容し、第1及び第2の容器の互いに押圧し合う方向以外への各容器の膨出を抑制する外側容器と、を備え、
前記外側容器に収容された第1及び第2の容器のうち、空気との接触を嫌う液体が収容された第1容器から該液体を排出するときに、小容積状態の前記第2容器に前記押圧流体を供給して該第2容器を膨出させ、その膨出の圧力で前記第1容器を圧迫して収縮させることにより、前記第1容器に可及的に空気を侵入させないようにして前記第1容器から前記液体を排出することを特徴としている。
【0007】
第1の発明に係る液体の収容容器は、上記したように構成されていて、容積が自在に変化する袋状の第1容器と、第1容器に収容された液体を押し出す押圧流体が給排される第2容器の2つの容器が外側容器に収容されている。そして、空気との接触を嫌う液体が収容された第1容器が、第2容器に供給される押圧流体によって圧迫されて膨出することにより、液体の液面が空気に可及的に接触しないように液体が排出される。即ち、第1容器に液体を収容し、第2容器に押圧流体を供給してそれらを外側容器に収容するという極めて簡単な構成で、第1容器から排出される液体と空気との接触が回避される。これにより、液体の表面に「皮張り」を生ずることが防止される。また、上記した構成とすることにより、第1容器に可及的に空気を侵入させることなく(換言すれば、液体に皮張りを生じさせることなく)、液体を搬送したり保管したりすることもできる。
【0008】
前記第1及び第2の容器は膨出状態で立方体形状となり、所定の折り畳み線で折り畳まれて収縮する。この折り畳み線は、前記各容器において対向配置される一対の面の対角線と、前記対角線と接続する稜線に形成されている。
【0009】
第1及び第2の容器は、折り畳み線で折り畳まれることにより収縮される。即ち、容器に折り畳み線が形成されているため、容器を確実に膨出させたり収縮させたりすることができる。また、膨出状態で立方体形状となるため、液体を収容した容器の搬送や保管が簡単になる。また、容器を折り畳み線で折り畳むことにより、容器のみの搬送や保管も容易である。
【0010】
前記第1及び第2の容器は折り畳み状態で凹部が形成され、前記第1及び第2の容器は、折り畳み状態の一方の容器の凹部に、前記液体が供給されて大容積状態となった他方の容器が嵌合されて、前記外側容器に収容される。そして、前記第1及び第2の容器は、それらの折り畳み線を重ね合わせる形で嵌合され。
【0011】
これにより、第1及び第2の容器を嵌合させた状態で、それらの大きさをコンパクトなものになる。この結果、外側容器の大きさもコンパクトなものとすることができる。
【0012】
前記第1及び第2の容器を、シート状の軟質樹脂材より成るようにできる。
【0013】
これにより、第1及び第2の容器を軽量とすることができる。
【0014】
前記第1及び第2の容器には、前記押圧流体を給排するための口部が設けられ、
前記外側容器には、前記第1及び第2の容器を収容した状態で前記口部を嵌合する孔部が設けられ、
前記外側容器に前記第1及び第2の容器を収容させたとき、それらの口部は前記外側容器の孔部に嵌合されて前記外側容器の外壁面よりも外側に突出するようにできる。
【0015】
外側容器に収容された第1及び第2の容器は、それらの口部が外側容器の孔部に嵌合されて収容される。これにより、第1及び第2の容器が外側容器の内部でずれるおそれが小さくなり、第2容器に給排される押圧流体により第2容器を膨出させて、第1容器を確実に圧迫することができる。
【0016】
前記外側容器に収容された第1及び第2の容器の口部には、前記押圧流体の出入りを許容・遮断する開閉バルブを取り付けてもよい。
【0017】
開閉バルブを操作することにより、第1容器に収容した液体と第2容器に供給した押圧流体との出入りを許容したり、遮断したりできる。これにより、第1容器に空気を侵入させることが確実に防止され、その液面に空気を接触させることなく、液体を搬送したり保管したりすることができる。
【0018】
そして、上記課題を解決するための第2の発明は、
空気との接触を嫌う液体を収容し、該液体を排出するときに容器内に可及的に空気を侵入させずに排出する収容容器であって、
空気との接触を嫌う液体が給排される第1室と、前記第1室に収容された液体を押圧する押圧流体が給排される第2室とが設けられ、前記第1室と第2室とは、一方の室に前記押圧流体を供給することにより他方の室を圧迫してその内容積を小さくする隔膜によって分離され、
前記第1室に収容された前記液体を排出させるときに、小容積状態の前記第2室に前記押圧流体を供給して前記隔膜が第1室を圧迫するように膨出させることにより、前記第1室の容積を減少させて該第1室に可及的に空気を侵入させないようにして前記第1室から前記液体を排出することを特徴としている。
【0019】
そして、全体が柔軟な袋状で、その内部に柔軟な隔膜を有して設けられた前記第1室及び第2室の容積が自在に変化可能であり、かつ前記第1室及び第2室のいずれか一方の容積が極大のときに、他方の容積が極小となるように折り畳み可能とすることができる。
【0020】
また、前記第1及び第2の室の外周面との隙間を小にして収容可能な外側容器を備えていてもよい。
【0021】
第2の発明に係る液体の収容容器では、1つの容器の内側が隔膜によって第1室と第2室とに分離されている。第1室に収容された液体は、第2室に供給される押圧流体によって膨出する隔膜に圧迫される。このため、第1室に収容された液体を排出するときに第1室に空気を侵入させることが可及的に防止される。この発明の場合、容器が1つで済む。更に、外側容器がなくても済むという利点がある。
【0022】
更に、上記課題を解決するための第3の発明は、
容器内に収容した空気との接触を嫌う液体を排出するときに、前記容器内に可及的に空気を侵入させずに排出する方法であって、
容積が自在に変化する柔軟な袋状の第1容器に前記液体を収容するとともに、前記第1容器に該第1容器内の液体を押し出す押圧流体が給排される第2容器を接触させて外側容器に収容し、
前記第2容器に前記押圧流体を供給しながら、前記外側容器により前記第1及び第2の容器が互いに押圧し合う方向以外への膨出を抑制し、
小容積状態の前記第2容器を前記押圧流体で膨出させ、前記第1容器を圧迫させることにより、前記第1容器から前記液体を排出するときに該第1容器に可及的に空気を侵入させないようにしたことを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施例を説明する。図1は第1実施例の収容容器101の側面断面図、図2は第1内側容器1の膨出状態の斜視図、図3は同じく折り畳み状態の斜視図である。
【実施例1】
【0024】
最初に、第1実施例の収容容器101について説明する。図1に示されるように、第1実施例の収容容器101は、空気との接触を嫌う液体(本実施例の場合、水性塗料P)を収容する第1内側容器1(第1容器)と、押圧流体としての空気、水等(本実施例の場合、空気A)が給排される第2内側容器2(第2容器)と、第1及び第2の内側容器1,2とを収容する外側容器3とを備えている。第1及び第2の内側容器1,2の所定位置には、各内側容器1,2に水性塗料P又は空気Aを給排するための口部4,5が設けられていて、各口部4,5に各開閉バルブ6が取り付けられている。この開閉バルブ6は、ハンドル6aを回動させることにより、第1及び第2の内側容器1,2の内部と外部とを連通したり、遮断したりすることができる。第1内側容器1に取り付けられた開閉バルブ6の出口は、塗料ホース7を介して塗装ガン8に接続されている。また、第2内側容器3の口部5に取り付けられた開閉バルブ6の出口は、空気ホース9を介してエアコンプレッサ11に接続されている。そして、塗装ガン8は、別の空気ホース12を介して別のエアコンプレッサ13に接続されている。開閉バルブ6の開状態(即ち、第1内側容器1と塗料ホース7とが連通した状態)で塗装ガン8のトリガ(引き金8a)を操作すると、空気ホース12を介してエアコンプレッサ13から空気が供給される。これにより、塗装ガン8の内部が負圧になり、塗料ホース7を介して第1内側容器1内の水性塗料Pが吸い上げられ、塗装ガン8から噴霧される。なお、図1において14は、水性塗料Pを吸い込むための吸込みホースである。
【0025】
第1及び第2の内側容器1,2について説明する。ここで、第1及び第2の内側容器1,2は同一形状なので、本明細書では第1内側容器1についてのみ説明する。図2に示されるように、本実施例の第1内側容器1は柔軟な樹脂製のシート(例えば、ポリエチレンシート)を折り曲げて成り、膨出状態(水性塗料Pを満杯に収容した状態、大容積状態)で略立方体形状となる。そして、膨出して立方体形状となったときの第1内側容器1の上面部15に、前述した口部4が設けられている。口部4の周辺部は凹状に窪んでいて、リング状の窪み部16が形成されている。何らかの原因で第1内側容器1内の圧力が上昇したときに、この窪み部16が膨出することにより、圧力の上昇分を逃がすことができる。
【0026】
そして、膨出状態(立方体形状となった状態)における第1内側容器1の上面部15と正面部17とを接合する上側稜線18、同じく背面部19(正面部17と対向する面)と底面部20(上面部15と対向する面)とを接合する下側稜線21及び対向配置される一対の側面部22の対角線23は、第1内側容器1を折り畳むための折り畳み線となっている。即ち、第1内側容器1の口部4を開いた状態で、各折り畳み線(上下の稜線18,21及び一対の対角線23)を基準として、それよりも下方に形成された部分(正面部17、底面部20及び一対の側面部22の斜め下方の部分で形成される部分。以下、「斜め下半部24」と記載する。)を、それよりも上方に形成された部分(上面部15、背面部19及び一対の側面部22の斜め上方の部分で形成される部分。以下、「斜め上半部25」と記載する。)に向かって押し込むことにより、第1内側容器1に収容されている空気を口部4から排出しながら第1内側容器1を折り畳むことができる。すると、図3に示されるように、折り畳み状態の第1内側容器1に凹部26が形成される。このとき、折り畳み状態の第1内側容器1の斜め下半部24と斜め上半部25とは、それらの外壁面を近接させた重なり状態に配置される。そして、図4に示されるように、この凹部26(図4においては、第2内側容器2の凹部26)に、折り畳み状態の第1内側容器1の斜め下半部24を嵌合させて、重ね合わせることができる。図5に、重なり状態の第1及び第2の内側容器1,2を示す。複数個の第1及び/又は第2の内側容器1,2を重ね合わせることができるため、それらを保管したり搬送したりするときのスペースが小さくて済む。なお、図2において27は、口部4を閉じるためのキャップである。
【0027】
次に、外側容器3について説明する。図5に示されるように、本実施例の外側容器3は、変形することが困難な材質(例えば、ステンレス等の金属板)より成り、上部が開口した有底角筒状の外側容器本体28と、外側容器本体28の上端縁に回動可能にヒンジ連結され、その開口を閉塞可能な蓋体29とを備えている。外側容器本体28は、重なり状態の第1及び第2の内側容器1,2を収容可能である。そして、第1及び第2の内側容器1,2が外側容器本体3に収容されて蓋体29が閉じられたとき、第1及び第2の内側容器1,2と外側容器本体28及び蓋体29の内壁面との隙間は僅かである。
【0028】
外側容器本体28の正面部には、外側容器本体28に収容された第2内側容器2の口部5を突出させるための孔部31が設けられている。また、蓋体29には、外側容器本体28に収容された第1内側容器1の口部4を突出させるための孔部32が設けられている。重なり状態で外側容器本体28に収容された第1及び第2の内側容器1,2は、蓋体29が閉じられた状態で、それらの口部4,5を対応する孔部31,32から突出させて配置される。これにより、外側容器3に収容された第1及び第2の内側容器1,2がずれることはない。
【0029】
第1実施例の収容容器101を使用して、水性塗料Pで塗装作業を行うときの作用について説明する。図4に示されるように、折り畳み線で折り畳まれた第2内側容器2の凹部26に、膨出状態の第1内側容器1の斜め下半部24を嵌合させる。重なり状態の第1及び第2の内側容器1,2は、それらのほぼ1個分の大きさとなる。図5に示されるように、重なり状態の第1及び第2の内側容器1,2を外側容器本体28に収容し、蓋体29を閉じる。第1内側容器1の口部4は蓋体29の孔部32から突出し、第2内側容器2の口部5は外側容器本体28の正面部の孔部31から突出する。これにより、第1及び第2の内側容器1,2が外側容器3内でずれることが抑止される。
【0030】
第1内側容器1に水性塗料Pを供給して収容する。皮張りを防止するため、水性塗料Pを第1内側容器1に満杯(大容積状態)に収容することが望ましい。また、第2内側容器2の口部5を開いておくことにより、第2内側容器2内の空気が抜けて、第2内側容器2は収縮状態となる。
【0031】
第1及び第2の内側容器1,2の口部4,5に開閉バルブ6を取り付ける。各開閉バルブ6のハンドル6aを操作することにより、開閉バルブ6の出口と第1及び第2の内側容器1,2の内部とを連通させる。
【0032】
続いて、第1内側容器1の開閉バルブ6の出口と塗装ガン8の塗料供給口とを塗料ホース7で連結する。塗装ガン8の空気供給口は、空気ホース12によってエアコンプレッサ13と連結されている。また、第2内側容器2の開閉バルブ6の出口は、空気ホース9によってエアコンプレッサ11と連結されている。なお、エアコンプレッサ11,13を1つにして、いずれかのエアコンプレッサ11,13から第2内側容器2と塗装ガン8の双方に空気を供給させるようにしてもよい。
【0033】
エアコンプレッサ11,13を作動させ、塗装ガン8の引き金8aを引いて塗装作業を開始する。塗料ホース7を介して塗装ガン8に水性塗料Pが供給され、塗装ガン8のノズルから水性塗料Pが噴霧される。
【0034】
塗装作業が行われるのに伴い、第1内側容器1内の水性塗料Pが減少する。従来の収容容器の場合、水性塗料Pの減少に伴って第1内側容器1内に空気が侵入し、水性塗料Pの液面が空気と接触してしまう。これにより、水性塗料Pの液面に皮張りが形成されるおそれがある。しかし、本実施例の収容容器101の場合、第2内側容器2に空気Aが供給され、その圧力によって第2内側容器2が徐々に膨出する。以下、第2内側容器2に供給される押圧流体としての空気を、「空気A」と記載する。即ち、図6に示されるように、第2内側容器2において凹部26に押し込まれていた斜め上半部25が徐々に膨出して第1内側容器1の斜め下半部24を圧迫し、第1内側容器1を折り畳むように収縮させる。このとき、外側容器3によって第1及び第2の内側容器1,2が、互いに押圧し合う方向以外へ膨出すること(第1内側容器1の斜め下半部24以外の部分が膨出したり、第2内側容器2の斜め上半部25以外の部分が膨出したりすること)が抑制される。これにより、水性塗料Pが減少しても、それに伴って第1内側容器1の容積も減少し、第1内側容器1は、内部に水性塗料Pを満杯にしたままの状態で収縮する。この結果、第1内側容器1に空気が侵入するおそれはない。
【0035】
第1内側容器1に水性塗料Pが残った状態で作業を終了する場合、第1及び第2の内側容器1,2の口部4,5に取り付けられた開閉バルブ6のハンドル6aを閉じて、第1及び第2の内側容器1,2の内部と外部とを遮断する。これにより、第2内側容器2内の空気Aの圧力が維持される。この結果、第1内側容器1に水性塗料Pが満杯になった状態が維持され、第1内側容器1に空気が侵入するおそれはない。
【実施例2】
【0036】
次に、第2実施例の収容容器102について説明する。第1実施例の収容容器101は、第2内側容器2に供給する空気Aにより、第1内側容器1に空気を侵入させずに、収容した水性塗料Pを排出させるようにするものである。これに対して第2実施例の収容容器102では、図7に示されるように、1つの内側容器33の場合である。内側容器33の内部は、柔軟なシート状の隔膜34によって第1室35と第2室36とに分割されている。第1室35に満杯に水性塗料Pが収容されているとき、第2室36内の空気は追い出され、隔膜34は第2室36にほぼ密着状態で配置される。これにより、第2室36は小容積状態となっている。
【0037】
図8に示されるように、水性塗料Pが減少するのに伴い、第2室36に押圧流体としての空気Aが供給される。これにより第2室36が膨出し、空気Aの圧力によって隔膜34が第1室35を圧迫する。第1室35内の水性塗料Pが減少しても、第2室36が膨出することによって第1室35の容積が減少するため、第1室35に空気が侵入することが防止され、水性塗料Pが満杯の状態が維持され、その液面が空気に触れるおそれが小さくなる。
【0038】
第2実施例の収容容器102の場合、隔膜34の配置が変化するだけであり、収容容器33の外壁は変化しないため、外側容器3はなくてもよい。
【0039】
上記した各実施例の場合、第1内側容器1又は内側容器33の第1室35に収容される液体は水性塗料Pである。しかし、水性塗料P以外の液体で空気との接触を嫌うもの、例えば飲料、薬液等であってもよい。また、第2の内側容器2又は内側容器33の第2室36に供給される押圧流体は空気Aであるが、空気A以外の流体、例えば水であってもよい。
【0040】
本発明に係る収容容器101,102では、第1及び第2の内側容器1,2又は内側容器33の第1及び第2室35,36は、向きが異なるだけで同一形状(同一容積)である。このため、例えば、第1内側容器1に水性塗料Pを収容し、第2内側容器2に空気Aを供給して塗装作業を行った後、第1及び第2の内側容器1,2を交換し、第2内側容器2に別の色の水性塗料Pを収容し、第1内側容器1に空気Aを供給して塗装作業を行うことができる。これにより、第1及び第2の内側容器1,2の洗浄作業をすることなく連続して作業できるため、塗装効率が高まる。また、塗装作業終了後に、第1及び第2の内側容器1,2をそのまま廃棄することができる。
【0041】
本発明に係る収容容器101,102は、外側容器3に第1及び第2の内側容器1,2又は内側容器33を収容させた形態であり、第1及び第2の内側容器1,2または内側容器33と外側容器3とは分離可能である。しかし、第1及び第2の内側容器1,2又は内側容器33を外側容器3に貼り付けた形態(バッグインカートン)としてもよい。
【0042】
また、第1実施例の収容容器101において、第1及び第2の内側容器1,2を重なり状態とさせた後、それらの折り畳み線の部分を溶着等の手段によって接合させてもよい。これにより、第1及び第2の内側容器1,2を一体にすることができ、保管や搬送が一層容易になる。
【0043】
水性塗料Pは、樹脂(アクリル樹脂等で、塗膜を形成する粒子)と顔料(色を出す粒子)と溶剤(水)を備えている。水性塗料P中の樹脂と顔料は重いため、第1内側容器1の底に沈殿し易い。この状態で塗装を行うと、塗膜に厚みや色のムラが生じるおそれがある。これを防止するため、第1内側容器1に収容されている水性塗料Pを攪拌することが望ましい。
【0044】
図9の(a),(b)に示される攪拌装置201は、第1内側容器1に収容されている水性塗料Pに沈めたねじれ金属棒37を連続回転(自転)させることにより、水性塗料Pを攪拌させるものである。このねじれ金属棒37の外周面には、螺旋溝38が設けられている。また、上端部には、このねじれ金属棒37を水性塗料P内に直立状態で浮遊させるためのフロート39が取り付けられている。また、第1内側容器1の底部には、電磁プレート41が設置されている。この電磁プレート41は、極性が異なる複数個の電磁石42の集合体である。電磁プレート41に通電すると、各電磁石42が順に異なる極性を帯びる。これにより、ねじれ金属棒37が電磁プレート41に引き付けられたり反発したりするため、回転(自転)する。この結果、水性塗料Pが攪拌される。
【0045】
この攪拌装置201は、水性塗料P内に沈ませたねじれ金属棒37を回転させる構成であるため、攪拌を行うに当たってキャップ27を外す必要がない。このため、第1内側容器1に水性塗料Pが満杯に収容されていても、水性塗料Pをこぼすことなく攪拌をすることができる。
【0046】
また、図10に示される攪拌装置202では、門形に設けられたフレーム43の天井部に複数本のばね44を高さ方向に取り付け、各ばね44によって第1内側容器1を宙吊り状態で取り付けている。第1内側容器1に収容された水性塗料Pは、各ばね44を伸縮させることにより高さ方向に振動する。これにより、水性塗料Pが攪拌される。この攪拌装置202は、ばね44の伸縮を利用しているため、動力源が不要であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施例の収容容器101の側面断面図である。
【図2】第1内側容器1の膨出状態の斜視図である。
【図3】同じく折り畳み状態の斜視図である。
【図4】膨出状態の第1内側容器1を折り畳み状態の第2内側容器2の凹部26に嵌合させる状態の作用説明図である。
【図5】嵌合状態の第1及び第2の内側容器1,2を外側容器3に収容する状態の作用説明図である。
【図6】第1実施例の収容容器101の作用説明図である。
【図7】第2実施例の収容容器102の側面断面図である。
【図8】第2実施例の収容容器102の作用説明図である。
【図9】(a)は攪拌装置201の正面断面図、(b)は同じく平面図である。
【図10】攪拌装置202の正面断面図である。
【符号の説明】
【0048】
101,102 収容容器
1 第1内側容器(第1容器)
2 第2内側容器(第2容器)
3 外側容器
4,5 口部
6 開閉バルブ
18 上側稜線(折り畳み線)
21 下側稜線(折り畳み線)
23 対角線(折り畳み線)
24 斜め下半部(凸状部)
26 凹部
31,32 孔部
33 内側容器(容器)
34 隔膜
35 第1室
36 第2室
A 空気(押圧流体)
P 水性塗料(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気との接触を嫌う液体を収容し、該液体を排出するときに容器内に可及的に空気を侵入させずに排出する収容容器であって、
容積が自在に変化する柔軟な袋状で、前記液体が給排される第1容器と、
前記第1容器に収容された液体を、該第1容器から押し出す押圧流体が給排される第2容器と、
前記液体が収容されて大容積状態となっている第1容器に小容積状態の第2容器を接触させて収容し、第1及び第2の容器の互いに押圧し合う方向以外への各容器の膨出を抑制する外側容器と、を備え、
前記外側容器に収容された第1及び第2の容器のうち、空気との接触を嫌う液体が収容された第1容器から該液体を排出するときに、小容積状態の前記第2容器に前記押圧流体を供給して該第2容器を膨出させ、その膨出の圧力で前記第1容器を圧迫して収縮させることにより、前記第1容器に可及的に空気を侵入させないようにして前記第1容器から前記液体を排出することを特徴とする液体の収容容器。
【請求項2】
前記第1及び第2の容器は膨出状態で立方体形状となり、所定の折り畳み線で折り畳まれて収縮することを特徴とする請求項1に記載の液体の収容容器。
【請求項3】
前記折り畳み線は、前記各容器において対向配置される一対の面の対角線と、前記対角線と接続する稜線に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液体の収容容器。
【請求項4】
前記第1及び第2の容器は折り畳み状態で凹部が形成され、
前記第1及び第2の容器は、折り畳み状態の一方の容器の凹部に、前記液体が供給されて大容積状態となった他方の容器が嵌合されて、前記外側容器に収容されることを特徴とする請求項2又は3に記載の液体の収容容器。
【請求項5】
前記第1及び第2の容器は、それらの折り畳み線を重ね合わせる形で嵌合されることを特徴とする請求項4に記載の液体の収容容器。
【請求項6】
前記第1及び第2の容器は、シート状の軟質樹脂材より成ることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液体の収容容器。
【請求項7】
前記第1及び第2の容器には、前記押圧流体を給排するための口部が設けられ、
前記外側容器には、前記第1及び第2の容器を収容した状態で前記口部を嵌合する孔部が設けられ、
前記外側容器に前記第1及び第2の容器を収容させたとき、それらの口部は前記外側容器の孔部に嵌合されて前記外側容器の外壁面よりも外側に突出することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の液体の収容容器。
【請求項8】
前記外側容器に収容された第1及び第2の容器の口部には、前記押圧流体の出入りを許容・遮断する開閉バルブが取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の液体の収容容器。
【請求項9】
空気との接触を嫌う液体を収容し、該液体を排出するときに容器内に可及的に空気を侵入させずに排出する収容容器であって、
空気との接触を嫌う液体が給排される第1室と、前記第1室に収容された液体を押圧する押圧流体が給排される第2室とが設けられ、前記第1室と第2室とは、一方の室に前記押圧流体を供給することにより他方の室を圧迫してその内容積を小さくする隔膜によって分離され、
前記第1室に収容された前記液体を排出させるときに、小容積状態の前記第2室に前記押圧流体を供給して前記隔膜が第1室を圧迫するように膨出させることにより、前記第1室の容積を減少させて該第1室に可及的に空気を侵入させないようにして前記第1室から前記液体を排出することを特徴とする液体の収容容器。
【請求項10】
全体が柔軟な袋状で、その内部に柔軟な隔膜を有して設けられた前記第1室及び第2室の容積が自在に変化可能であり、かつ前記第1室及び第2室のいずれか一方の容積が極大のときに、他方の容積が極小となるように折り畳み可能であることを特徴とする請求項9に記載の空気との接触を嫌う液体の収容容器。
【請求項11】
前記第1及び第2の室の外周面との隙間を小にして収容可能な外側容器を備えることを特徴とする請求項9又は10に記載の空気との接触を嫌う液体の収容容器。
【請求項12】
容器内に収容した空気との接触を嫌う液体を排出するときに、前記容器内に可及的に空気を侵入させずに排出する方法であって、
容積が自在に変化する柔軟な袋状の第1容器に前記液体を収容するとともに、前記第1容器に該第1容器内の液体を押し出す押圧流体が給排される第2容器を接触させて外側容器に収容し、
前記第2容器に前記押圧流体を供給しながら、前記外側容器により前記第1及び第2の容器が互いに押圧し合う方向以外への膨出を抑制し、
小容積状態の前記第2容器を前記押圧流体で膨出させ、前記第1容器を圧迫させることにより、前記第1容器から前記液体を排出するときに該第1容器に可及的に空気を侵入させないようにしたことを特徴とする液体の排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−208818(P2009−208818A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53709(P2008−53709)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(508105278)
【Fターム(参考)】