説明

液体の増粘方法

【課題】第1液に第2液を添加して増粘させる際に生じる液の品質低下を抑制する。
【解決手段】液体の増粘方法は、第1液に、それを増粘させる第2液を添加するものであり、流路を層流条件下で流通する第1液に、その内部から第2液を添加し、それらを層流条件を保持した状態で混合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体の増粘方法及び増粘した油滴分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油滴の体積平均粒径が100μm以上である油滴分散液を化粧料等に用いる場合、油滴が視認されるために油滴径分布の単分散性が高いことが要求される。この要求を満足する油滴分散液の製造方法としていくつかの方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、交差するように設けられた一対のマイクロ流路の一方に水性成分及び他方に油性成分をそれぞれ流通させ、それらの交差部において水性成分に油性成分を分散させる油滴分散液の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、油性成分がカプセルの内容組成物として、平均粒子径が100μm以上の油性カプセルとしてカプセル化された状態で、水性溶媒中に分散しているカプセル含有組成物であって、(A)カプセルの内容組成物に、融点が45〜75℃の両親媒性物質がカプセルの内容組成物の5〜40質量%含有され、且つ(B)水性溶媒に水溶性高分子が含有されているカプセル含有組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−122107号公報
【特許文献2】特開2003−73230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大径の油滴の分散液を化粧品製剤として使用すれば、美観や使用感の向上を期待することができる一方、大径の油滴は、浮上速度が大きく、また、小さい剪断によっても容易に変形して分裂する。そのため、連続方式で製造した油滴分散液にアルカリ水溶液等を添加して増粘させる際に、油滴径分布の単分散性が損なわれて液の品質が低下するという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、第1液に第2液を添加して増粘させる際に生じる液の品質低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体の増粘方法は、第1液に、それを増粘させる第2液を添加するものであって、流路を層流条件下で流通する第1液に、該流路を流通する第1液の内部から第2液を添加し、それらを層流条件を保持した状態で混合させるものである。
【0009】
本発明の増粘した油滴分散液の製造方法は、成分Aを含有する水性成分からなる連続相に、体積平均粒径が100〜1000μmである液体の油性成分の油滴からなる分散相が分散した油滴分散液の第1液を層流条件下で流路に流通させると共に、該流路を流通する第1液に、該流路の内壁から離れた位置から成分Bを含有する第2液を添加し、それらを層流条件を保持した状態で混合させて成分Aと成分Bとの混合により第1液を増粘させるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1液の内部から第2液を添加し、それらを層流条件を保持した状態で混合させるので、流路の内壁近傍で第1液が増粘して付着するのが規制され、その結果、第1液及び第2液の合流体が流路をスムーズに流動して混合され、それによって液の品質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】増粘した油滴分散液(以下、「増粘油滴分散液」という。)の製造システムを示す図である。
【図2】構成例1の第2混合器の(a)斜視図、(b)縦断面図、及び(c)小径管の軸に沿った縦断面図である。
【図3】構成例2の第2混合器の縦断面図である。
【図4】構成例3の第2混合器の(a)斜視図、(b)縦断面図、及び(c)小径管の軸に沿った縦断面図である。
【図5】構成例4の第2混合器の(a)斜視図、(b)小径管の軸を含む縦断面図、及び(c)小径管の軸に沿った縦断面図である。
【図6】構成例5の第2混合器の(a)内部構造を示す斜視図、(b)小径管の軸に沿った縦断面図である。
【図7】実施例1等で用いた第1混合器の縦断面図である。
【図8】比較例1で用いた第2混合器の縦断面図である。
【図9】(a)は実施例1、(b)は実施例2、及び(c)は実施例3の光学顕微鏡観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る液体の増粘方法について、増粘油滴分散液の製造方法を事例として詳細に説明する。なお、実施形態に係る液体の増粘方法は本事例に限定されるものではない。
【0013】
(増粘油滴分散液の製造システム)
図1は増粘油滴分散液の製造システムSを示す。
【0014】
この増粘油滴分散液の製造システムSは、第1混合器100及びそれに続いて設けられた第2混合器200、並びにその他の液供給系等の付帯部とで構成されている。なお、第1混合器100及び第2混合器200のうち少なくともいずれか一方が複数並列して設けられていてもよい。
【0015】
第1混合器100は、水性成分液流入部101、油性成分液流入部102、及び第1液流出部103を有する。
【0016】
水性成分液流入部101には、水性成分を貯蔵するための水性成分貯槽31aから延びた水性成分供給管32aが接続されている。水性成分供給管32aには、水性成分を流通させるためのポンプ33a、その流量を検知するための流量計34a、及び夾雑物を除去するためのフィルタ35aが上流側から順に介設されており、流量計34aとフィルタ35aとの間の部分に水性成分の圧力を検知するための圧力計36aが取り付けられている。ポンプ33a、流量計34a、及び圧力計36aのそれぞれは、図示しない流量コントローラに電気的に接続されている。流量コントローラは、水性成分の設定流量及び設定圧力の入力が可能に構成されていると共に演算素子が組み込まれており、水性成分の設定流量情報、流量計34aで検知された流量情報、及び圧力計36aで検知された圧力情報に基づいてポンプ33aを運転制御するように構成されている。
【0017】
油性成分液流入部102には、油性成分を貯蔵するための油性成分貯槽31bから延びた油性成分供給管32bが接続されている。油性成分供給管32bには、油性成分を流通させるためのポンプ33b、その流量を検知するための流量計34b、及び夾雑物を除去するためのフィルタ35bが上流側から順に介設されており、流量計34bとフィルタ35bとの間の部分に油性成分の圧力を検知するための圧力計36bが取り付けられている。ポンプ33b、流量計34b、及び圧力計36bのそれぞれも、図示しない流量コントローラに電気的に接続されている。流量コントローラは、油性成分の設定流量及び設定圧力の入力も可能に構成されており、油性成分の設定流量情報、流量計34bで検知された流量情報、及び圧力計36bで検知された圧力情報に基づいてポンプ33bを運転制御するように構成されている。
【0018】
第1混合器100の第1液流出部103からは第1液供給管37が延びている。
【0019】
第1混合器100は、公知の液液混合器で構成されていてもよい。具体的には、例えば、体積平均粒径が100〜1000μmの増粘前の油滴分散液(以下、「増粘前油滴分散液」という。)を調製可能な装置として、特開2004−122107号公報に開示されたマイクロ流路が交差して設けられた構造のもの、非特許文献Shoji Takeuchi et al., Advanced Materials 2005, 17, No.8, 1067-1072に開示された同心軸の2重管構造のもの、特開2006−110505号公報に開示された細孔とスロット状孔との2段の貫通孔の構造のもの等が挙げられる。
【0020】
第2混合器200は、第1液流入部201、第2液流入部202、及び製品流出部203を有する。
【0021】
第1液流入部201には、第1混合器100の第1液流出部103から延びた第1液供給管37が接続されている。
【0022】
第2液流入部202には、第2液を貯蔵するための第2液貯槽31cから延びた第2液供給管32cが接続されている。第2液供給管32cには、第2液を流通させるためのポンプ33c、その流量を検知するための流量計34c、及び夾雑物を除去するためのフィルタ35cが上流側から順に介設されており、流量計34cとフィルタ35cとの間の部分に第2液の圧力を検知するための圧力計36cが取り付けられている。ポンプ33c、流量計34c、及び圧力計36cのそれぞれも、図示しない流量コントローラに電気的に接続されている。流量コントローラは、第2液の設定流量及び設定圧力の入力も可能に構成されており、第2液の設定流量情報、流量計34cで検知された流量情報、及び圧力計36cで検知された圧力情報に基づいてポンプ33cを運転制御するように構成されている。
【0023】
第2混合器200の製品流出部203からは製品回収管38が延びており、その製品回収管38は製品貯槽39に接続されている。製品貯槽39には熱交換器や温調ジャケット等の冷却手段が設けられていてもよい。
【0024】
第2混合器200は、第1液の内部から第2液を添加する構成を有する。以下、第2混合器200の具体的な構成例について説明する。
【0025】
<構成例1>
図2(a)〜(c)は構成例1の第2混合器200を示す。
【0026】
構成例1の第2混合器200は、液流通管210とその側壁を貫通して導入された1本の小径管220とを有する。なお、液流通管210の上流端部が第1液流入部201に、また、小径管220の液流通管210の外部に露出した端部が第2液流入部202に、さらに、液流通管210の下流端部が製品流出部203にそれぞれ構成されている。また、小径管220の液流通管210の内部の先端の開口が第2液流出部221に構成されている。なお、小径管220の第2液流出部221は小径管220の側面に穿孔された開口で構成されていてもよい。
【0027】
液流通管210は、特に限定されるものではないが、液流動方向に均一な流路断面を有する直管で構成されていることが好ましい。直管の液流通管210は、上流端部の第1液流入部201が上及び下流端部の製品流出部203が下となるように鉛直乃至傾斜配置とされていてもよく、また、その逆に、上流端部の第1液流入部201が下及び下流端部の製品流出部203が上となるように鉛直乃至傾斜配置とされていてもよく、さらに、上流端部の第1液流入部201及び下流端部の製品流出部203が同じ高さの水平配置とされていてもよい。
【0028】
液流通管210の流路断面形状としては、特に限定されるものではないが、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、円環形、星形、不定形等が挙げられ、これらのうち円形が好ましい。液流通管210の内径D1は例えば1〜10mmであり、好ましくは1〜6mmである。なお、ここでいう内径とは水力相当直径(=4×(流路断面積)/(浸辺長))を意味する(以下同様)。
【0029】
液流通管210の少なくとも内壁部分を形成する材質としては、特に限定されるものではないが、安定した増粘操作を行う観点から、油滴を構成する油性成分に濡れにくい物性を有することが好ましく、具体的には、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)などのフッ素樹脂;ステンレスやガラスなどの水との接触角が90°以下の材質等が挙げられ、これらのうち得られる油滴径分布の単分散性が優れるという観点から、ガラスが好ましい。
【0030】
液流通管210の内部は、上流端部の第1液流入部201から小径管220の第2液流出部221までの領域が第1液流路211に、また、小径管220の第2液流出部221から下流端部の製品流出部203までの領域が液混合流路212にそれぞれ構成されている。液混合流路212の液流動方向の長さLは例えば50〜500mmである。
【0031】
第1液流路211及び液混合流路212は、液流動方向に断面形状や内径が変化しない連続した構成であることが好ましく、また、それらの液流動方向が同一であることが好ましい。
【0032】
小径管220は、特に限定されるものではないが、液流動方向に均一な流路断面を有する直管で構成されていることが好ましい。直管の小径管220は、水平配置された直管の液流通管210の上方から導入されていてもよく、また、下方から導入されていてもよく、さらに、側方乃至斜め側方から導入されていてもよい。
【0033】
小径管220の流路断面形状としては、特に限定されるものではないが、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、円環形、星形、不定形等が挙げられ、これらのうち円形が好ましい。小径管220の外径D2は例えば0.5〜5mmである。なお、ここでいう外径とは、水力相当直径に相当するものであって、小径管220の断面積を外周長で除して4倍したものである(以下同様)。
【0034】
小径管220の少なくとも内壁部分を形成する材質も特に限定されるものではなく、液流通管210と同様のものが挙げられる。
【0035】
小径管220は、液流通管210の内部において第1液流路211及び液混合流路212側に突出した部分を有し、先端の開口の第2液流出部221が第1液流路211及び液混合流路212の内壁から離れて位置し、これによって第1液の内部から第2液を添加するように構成されている。小径管220の先端の第2液流出部の第1液流路211及び液混合流路212の内壁からの距離hは、第1液流路211及び液混合流路212の内径D1(水力相当直径)に対して10〜50%であることが好ましく、20〜50%であることがより好ましく、25〜50%であることがさらに好ましい。
【0036】
小径管220の先端の第2液流出部221は、第1液流路211を流通する第1液に、その液流動方向に対して直交乃至所定の角度を有するように第2液を添加するように構成されていてもよく、第1液に対する第2液の流出角度は任意である。
【0037】
以上の通り、構成例1の第2混合器200は、液流通管210内の第1液流路211を流通する第1液に、その内部から小径管220より第2液を添加し、それらを混合させるように構成されている。
【0038】
<構成例2>
図3は構成例2の第2混合器200を示す。なお、構成例1と同一名称の部分は構成例1と同一符号で示す。
【0039】
構成例2の第2混合器200は、液流通管210とその側壁を貫通して導入された1本の小径管220とを有する。
【0040】
小径管220は、液流通管210の側壁を貫通して第1液流路211及び液混合流路212の中央まで延び、それに続いて下流側に屈曲して液流動方向に沿って延び、そして、先端の開口が第2液流出部221に構成されている。この小径管220の先端の第2液流出部221は、第1液流路211を流通する第1液に、その液流動方向に沿って第2液を添加するように構成されている。
【0041】
その他の各部の詳細な構成は構成例1と同一である。
【0042】
以上の通り、構成例2の第2混合器200は、液流通管210内の第1液流路211を流通する第1液に、その内部から小径管220より第2液を添加し、それらを混合させるように構成されている。
【0043】
<構成例3>
図4(a)〜(c)は構成例3の第2混合器200を示す。なお、構成例1と同一名称の部分は構成例1と同一符号で示す。
【0044】
構成例3の第2混合器200は、液流通管210と、各々、その側壁を貫通して導入された複数本(図4では3本)の小径管220とを有する。なお、液流通管210の上流端部が第1液流入部201に、また、各小径管220の液流通管210の外部に露出した端部が第2液流入部202に、さらに、液流通管210の下流端部が製品流出部203にそれぞれ構成されている。また、各小径管220の液流通管210の内部の先端の開口が第2液流出部221に構成されている。
【0045】
複数本の小径管220は、図4(a)に示すように液流通管210における液流動方向の同一位置に周方向に間隔(好ましくは等間隔)をおいて設けられている。なお、複数本の小径管220は、液流動方向に間隔をおいて周方向に規則的に又は不規則に設けられていてもよい。
【0046】
その他の各部の詳細な構成は構成例1と同一である。
【0047】
以上の通り、構成例3の第2混合器200は、液流通管210内の第1液流路211を流通する第1液に、その内部から複数の小径管220のそれぞれより第2液を添加し、それらを混合させるように構成されている。
【0048】
<構成例4>
図5(a)〜(c)は構成例4の第2混合器200を示す。なお、構成例1と同一名称の部分は構成例1と同一符号で示す。
【0049】
構成例4の第2混合器200は、横断面が横長矩形状に形成された液流通管210と、各々、その上面壁を貫通して導入された複数本(図5では6本)の小径管220とを有する。
【0050】
複数本の小径管220は、図5(a)に示すように液流通管210の上面壁における液流動方向の同一位置に間隔(好ましくは等間隔)をおいて並列に設けられている。なお、複数本の小径管220は、液流動方向に間隔をおいて設けられていてもよく、また、液流通管210の上面壁以外に設けられていてもよい。
【0051】
その他の各部の詳細な構成は構成例1と同一である。
【0052】
以上の通り、構成例4の第2混合器200は、液流通管210内の第1液流路211を流通する第1液に、その内部から複数の小径管220のそれぞれより第2液を添加し、それらを混合させるように構成されている。
【0053】
<構成例5>
図6(a)及び(b)は構成例5の第2混合器200を示す。なお、構成例1と同一名称の部分は構成例1と同一符号で示す。
【0054】
構成例5の第2混合器200は、液流通管210とその内部に同軸に設けられた第2液流通管230とを備えた二重管構造を有し、液流通管210と第2液流通管230との間の部分が第1液流路211及び液混合流路212に構成されている。そして、第2液流通管230には、各々、第1液流路211及び液混合流路212側に突出した複数本(図6では12本)の小径管220が設けられている。
【0055】
複数本の小径管220は、図6(a)に示すように液流動方向の同一位置に周方向に間隔(好ましくは等間隔)をおいて放射状に設けられている。なお、複数本の小径管220は、液流動方向に間隔をおいて周方向に規則的に又は不規則に設けられていてもよい。
【0056】
その他の各部の詳細な構成は構成例1と同一である。
【0057】
以上の通り、構成例5の第2混合器200は、液流通管210と第2液流通管230との間の第1液流路211を流通する第1液に、その内部から複数の小径管220のそれぞれより第2液を添加し、それらを混合させるように構成されている。
【0058】
(増粘油滴分散液の製造方法)
次に、この増粘油滴分散液の製造システムSを用いた増粘油滴分散液の製造方法について説明する。
【0059】
<第1液>
第1液は、成分Aを含有する水性成分からなる連続相に、体積平均粒径が100〜1000μmである油性成分の油滴からなる分散相が分散した増粘前油滴分散液である。
【0060】
−水性成分−
水性成分からなる連続相に含有される成分Aは、後に説明する成分Bとの混合により増粘前油滴分散液を増粘させる性質を有するものである。成分Aとしては、例えば、水溶性高分子及び/又は界面活性剤が挙げられる。
【0061】
水溶性高分子は、合成高分子であってもよく、また、天然高分子であってもよい。かかる水溶性高分子としては、水への溶解の容易さ、粘度調整の容易さの観点から、カルボキシル基を有するものが好ましく、カルボキシル基を有するアクリル系高分子やアルギン酸アルカリ金属塩、カルボキシルメチルセルロースなどの多糖類等が挙げられる。アクリル系高分子としては、例えば、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))共重合体(例えば、日光ケミカルズ社製 商品名:CARBOPOL)、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(例えば、日光ケミカルズ社製 商品名:PEMULEN)、アクリル酸系共重合体(例えば、ローム&ハース社製 商品名:ACULYN)等が挙げられる。これらのうち、得られる増粘前油滴分散液のpHを調整することにより容易に増粘安定化を図ることができるという観点からカルボキシル基を有するアクリル系高分子が好ましく、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(例えば、日光ケミカルズ社製 商品名:PEMULEN)が最も好ましい。水溶性高分子は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。
【0062】
水性成分中の水溶性高分子の濃度は、第1混合器100において体積平均粒径が100〜1000μmの増粘前油滴分散液が生成されるのであれば特に限定されないが、例えば0.02〜5質量%である。
【0063】
界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤であってもよく、また、陽イオン性界面活性剤であってもよい。かかる界面活性剤としては、化粧料等への応用の汎用性、粘度調整の容易さの観点から、アルキル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤や、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、N,N−ジメチルオクタデキロシキプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミンなどの陽イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、粘度調整の容易さの観点から、(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、N,N−ジメチル−3−オクタデシルオキシプロピルアミンが最も好ましい。界面活性剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。
【0064】
水性成分中の界面活性剤の濃度は、第1混合器100において体積平均粒径が100〜1000μmの増粘前油滴分散液が生成されるのであれば特に限定されないが、例えば1〜15質量%である。
【0065】
水性成分の溶媒は水であり、水は、例えば、イオン交換水、蒸留水等である。
【0066】
水性成分の粘度は、粒径分布の狭い増粘前油滴分散液を生成することができる観点から、10〜200mPa・sの範囲にあることが好ましい。
【0067】
水性成分には、粘度や界面張力に悪影響を与えない範囲で、水との混和性のある有機溶剤、防腐剤、塩類、界面活性剤、その他有効成分が含まれていてもよい。
【0068】
−油性成分−
油性成分は、水と混じりあわない液体である。なお、油性成分は、常温固体のものであってもよく、その場合、操作時に温度を融点以上とすることにより液体として扱う。
【0069】
油性成分は、水との界面張力が10mN/m以上であり、粘度が40mPa・s以下である物性を有するものが好ましい。かかる油性成分としては、具体的には、常温液体のものでは、ジメチコーン、環状シリコーン、スクワラン、植物油、エステル油等が挙げられ、常温固体のものでは、パーム油、牛脂、炭素数14〜22の高級アルコール、セレシンなどの鉱物油等が挙げられる。油性成分は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種の混合物で構成されていてもよい。
【0070】
油性成分には、その他に親油性界面活性剤や有機溶剤が含まれていてもよい。
【0071】
−第1液の調整−
上記の増粘油滴分散液の製造システムSを稼働させると、ポンプ33aは、水性成分を、水性成分貯槽31aから水性成分供給管32aを介し、流量計34a、及びフィルタ35aを順に経由させて第1混合器100の水性成分液流入部101に継続的に供給する。流量計34aは、検知した水性成分の流量情報を流量コントローラに送る。また、圧力計36aは、検知した圧力計36aの圧力情報を流量コントローラに送る。
【0072】
ポンプ33bは、油性成分を、油性成分貯槽31bから油性成分供給管32bを介し、流量計34b、及びフィルタ35bを順に経由させて第1混合器100の油性成分液流入部102に継続的に供給する。流量計34bは、検知した油性成分の流量情報を流量コントローラに送る。また、圧力計36bは、検知した圧力計36bの圧力情報を流量コントローラに送る。
【0073】
続いて、流量コントローラは、水性成分の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、流量計34aで検知された流量情報、及び圧力計36aで検知された圧力情報に基づいて、水性成分の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるようにポンプ33aを運転制御する。それと共に、流量コントローラは、油性成分の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、流量計34bで検知された流量情報、及び圧力計36bで検知された圧力情報に基づいて、油性成分の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるようにポンプ33bを運転制御する。
【0074】
ここで、水性成分の温度は、例えば5〜95℃とすることが好ましい。油性成分の温度は、油性成分が液体状態となる温度とすることが好ましく、例えば5〜95℃とすることが好ましい。このとき、必要に応じて増粘油滴分散液の製造システムS全体を加温してもよい。
【0075】
水性成分及び油性成分のそれぞれの圧力設定は、送液の圧力が例えば0.005〜0.5MPaとなるようにすることが好ましい。
【0076】
水性成分及び油性成分のそれぞれの流量設定は、生産性及び流動安定性の観点から、水性成分及び油性成分の合計流量を0.2〜20L/hとすることが好ましく、0.3〜8L/hとすることがより好ましい。また、水性成分に対する油性成分の体積比は、好ましい油滴の体積平均粒径及び粒径分布を得ることができるという観点から、油性成分/水性成分=1/99〜40/60とすることが好ましく、3/97〜20/80とすることがより好ましい。
【0077】
第1液の粘度は、増粘前油滴分散液の状態を維持しつつ第1液を第2混合器200に供給させることができる観点から、10〜200mPa・sの範囲であることが好ましい。粘度は、B型粘度計を用いて回転数60r/mの条件で測定されるものである(参照 JIS Z8803、K7117−1等)。
【0078】
そして、第1混合器100の第1液流出部103からは油滴の体積平均粒径が100〜1000μm(好ましくは100〜600μm)である増粘前油滴分散液の第1液が得られる。なお、後述のように得られた第1液は第1液供給管37を介して続く第2混合器200の第1液供給部201に継続的に供給される。また、このとき、必要に応じて第1液流出部103から流出する増粘前油滴分散液を冷却してもよく、その冷却操作は、例えば、第1液供給管37に二重管ジャケット式の熱交換器などを設け、それに冷媒を流通させることにより行うことができる。
【0079】
<第2液>
第2液は成分Bを含有する液体成分である。
【0080】
成分Bは、第1液の連続相に含まれる成分Aとの混合により第1液の増粘前油滴分散液を増粘させる性質を有するものであり、成分Aの種類に応じて選択することができる。
【0081】
成分Aがカルボキシル基を有するアクリル系高分子である場合には、成分Bとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属塩、アンモニア、トリメチルアンモニウム等が挙げられる。これらのうち、取り扱いの簡便さ、粘度調整の容易さの観点から、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが最も好ましい。
【0082】
成分Aがアルギン酸アルカリ金属塩である場合には、成分Bとしては、例えば、乳酸カルシウム、炭酸亜鉛、硫酸アルミニウムなどの多価金属塩等が挙げられる。これらのうち、取り扱いの簡便さ、粘度調整の容易さの観点から、乳酸カルシウムが最も好ましい。
【0083】
成分Aが陰イオン性界面活性剤である場合には、成分Bとしては、例えば、ヤシ油モノエタノールアミド、ヤシ油メチルモノエタノールアミド、脂肪酸アルカノールアミドなどの非イオン性界面活性剤、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩等が挙げられる。これらのうち、取り扱いの簡便さ、粘度調整の容易さの観点から、ヤシ油モノエタノールアミド、ヤシ油メチルモノエタノールアミド、塩化ナトリウムが最も好ましい。
【0084】
成分Aが陽イオン性界面活性剤の場合には、成分Bとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール等が挙げられる。これらのうち、取り扱いの簡便さ、粘度調整の容易さの観点から、セチルアルコール、ステアリルアルコールが最も好ましい。
【0085】
これらの成分Bは、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。
【0086】
第2液は成分Bの溶液であってよい。その溶媒としては、例えば水、水との混和性のある有機溶剤、及びそれらの混合物が挙げられる。これらのうち、取り扱いの簡便さの観点から、溶媒としては水、エタノールが最も好ましい。第2液が成分Bの溶液である場合、第2液中の成分Bの濃度は、第2液の流動性が確保される限り特に限定されないが、例えば0.1〜50質量%である。
【0087】
第2液には、粘度や界面張力に悪影響を与えない範囲で、水との混和性のある有機溶剤、防腐剤、塩類、界面活性剤、その他有効成分が含まれていてもよい。
【0088】
<第1液と第2液との混合>
上記の増粘油滴分散液の製造システムSを稼働させると、第1液の調整と共に、第1液と第2液とを混合することによる増粘油滴分散液の製造が行われる。
【0089】
具体的には、ポンプ33cは、第2液を、第2液貯槽31cから第2液供給管32cを介し、流量計34c、及びフィルタ35cを順に経由させて第2混合器200の第2液流入部202に継続的に供給する。流量計34cは、検知した第2液の流量情報を流量コントローラに送る。また、圧力計36cは、検知した圧力計36cの圧力情報を流量コントローラに送る。
【0090】
続いて、流量コントローラは、第2液の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、流量計34cで検知された流量情報、及び圧力計36cで検知された圧力情報に基づいて、第2液の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるようにポンプ33cを運転制御する。
【0091】
流量コントローラによる制御は、第2混合器200において、第1液流路211を流通した第1液と小径管220を流通した第2液とが、小径管220の第2液流出部221において、層流条件で流動する第1液の内部から第2液が添加され、それによって第1液で周囲が覆われるように第2液が合流することとなり、その後、それらの合流体が液混合流路212において、層流条件を保持して流通しつつ、第1液と第2液との混合が進行すると共に成分Aと成分Bとの混合も進行して第1液の増粘前油滴分散液が増粘し、製品回収管38を介して製品貯槽39において、油滴径分布の単分散性を損なわずに増粘され、油滴の体積平均粒径が100〜1000μmである増粘油滴分散液が回収されるように行う。
【0092】
ここで、「層流条件」とは、下記式で定義されるレイノルズ数(Re)が2300よりも小さくなる流動条件である。
【0093】
レイゾルズ数(Re)
=第1液密度[kg/m]×合流体平均流速[m/s]×代表径[m]÷第1液の粘度[Pa・s]
代表径[m]は液混合流路212の水力相当直径[m]である。
【0094】
第1液流路211での第1液、及び液混合流路212での第1液及び第2液の合流体のそれぞれのレイノルズ数(Re)は、安定な層流状態を実現する観点から、0.5〜200であることが好ましく、1〜100であることがより好ましく、3〜20であることが更に好ましい。
【0095】
第1液の温度は、例えば5〜95℃とすることが好ましい。第2液の温度は、成分Bの溶解度や融点によって調整して扱うことが好ましく、第2液が液体状態となる温度であって、例えば5〜95℃とすることが好ましい。このとき、必要に応じて増粘油滴分散液の製造システムS全体を加温してもよい。
【0096】
第2液の圧力設定は、送液の圧力が例えば0.005〜0.5MPaとなるようにすることが好ましい。
【0097】
第2混合器200に流通させる第1液及び第2液のそれぞれの流量設定は、液混合流路212を層流条件で流通させる観点から、液混合流路212を流通する第1液及び第2液の合計流量を0.2〜20L/hとすることが好ましく、0.3〜8L/hとすることがより好ましい。また、第1液に対する第2液の体積比は、液混合流路212を好ましい流動状態で流通させることができるという観点から、第2液/第1液=0.1/99.9〜20/80とすることが好ましく、1/99〜10/90とすることがより好ましい。
【0098】
なお、必要に応じて製品流出部203から流出して回収される増粘油滴分散液を冷却してもよく、その冷却操作は、例えば、製品回収管38或いは製品貯槽39において、ジャケットに冷媒を流通させることにより行うことができる。
【0099】
回収される増粘油滴分散液の粘度は、第1液の粘度の5〜1000であることが好ましく、10〜500倍であることがより好ましく、具体的には、1000〜100000mPa・sであることが好ましく、2000〜20000mPa・sであることがより好ましい。粘度は、B型粘度計を用いて回転数12r/mの条件で測定されるものである。増粘油滴分散液がこのような粘度範囲であることにより、静置保存時に油滴の浮上分離(クリーミング)を防止することが可能となり、化粧品等に適用することができる。
【0100】
以上の本実施形態に係る液体の増粘方法である増粘油滴分散液の製造方法によれば、第1液の内部から第2液を添加し、それらを層流条件を保持した状態で混合させるので、液混合流路212の内壁近傍で第1液が増粘して付着するのが規制され、その結果、第1液及び第2液の合流体が液混合流路212をスムーズに流動して混合され、それによって液の品質低下を抑制することができる。
【0101】
また、大径の油滴の分散液を化粧品製剤として使用すれば、美観や使用感の向上を期待することができる一方、大径の油滴は、浮上速度が大きく、また、小さい剪断によっても容易に変形して分裂する。例えば、上記特許文献1に開示された方法で製造された油滴分散液では、連続相となる水性成分にポリビニルアルコールなどの高分子分散剤が含有されているが、静置保存時に油滴の浮上分離(クリーミング)を防止することが困難であり、化粧品等に応用することができない。上記特許文献2に開示された方法で製造された油滴分散液では、連続相となる水性溶媒がアルキル変性カルボキシビニルポリマーを含有しており十分高い粘度を有するため、化粧料等に応用可能であるが、バッチ式の攪拌槽を用いて製造するため、攪拌翼近傍では強い剪断を受け、油滴が液体の場合には分裂や合一が生じやすく、その結果油滴径分布の単分散性が損なわれ、化粧料等に応用する場合、視認性を訴求する商品に適さないこととなる。
【0102】
しかしながら、本実施形態に係る液体の増粘方法である増粘油滴分散液の製造方法によれば、第1液である増粘前油滴分散液と第2液とを一定の層流条件下に液混合流路212内で連続的に混合することにより増粘前油滴分散液を増粘させるため、油滴径が大きく、また、特に油滴が液体であったとしても、油滴が剪断を受けて分裂や合一するのを抑制することができる。また、第1液の内部から第2液を添加するので、混合進行中の部分的な粘度上昇に起因する偏流の発生を抑制でき、増粘前油滴分散液の安定な増粘操作が可能である。つまり、油滴の体積平均粒径が100〜1000μmである増粘油滴分散液を、油滴径分布の単分散性を損なわず、安定操作で得ることができる。
【0103】
なお、本実施形態では、増粘油滴分散液の製造方法を事例としたが、特にこれに限定されるものではなく、第1液を陽イオン活性剤水溶液及び第2液を高級アルコールとしたコンディショナーの製造方法等であってもよい。
【実施例】
【0104】
以下の試験評価を行った。その内容については表1及び2にも示す。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
(増粘油滴分散液の製造)
<実施例1>
図1に示すのと同様の構成の増粘油滴分散液の製造システムを準備した。
【0108】
第1混合器100として、図7に示すようなガラス製の二重管構造を有するものを用いた。この第1混合器100は、大径管110の内径d1が4.4mmであり、小径管120の外径d2が3.2mm及び内径d3が1.6mmである。第1混合器100は、液合流部130におけるマイクロ流路140に連続する部分が、流路径が不連続に縮小した構成を有し、また、流路拡大部150におけるマイクロ流路140から連続する部分も、流路径が不連続に拡大した構成を有する。マイクロ流路140は、流路断面形状が円形に形成されており、内径φが0.5mm(流路面積sが0.20mm)、流路長さlが30mm、及び流路長さ/内径(l/φ)が60である。また、流路拡大部150は、流路断面形状が円形に形成されており、内径d4が4.4mmであり、マイクロ流路140に続いて接続された透明ビニールホースにより構成されている。
【0109】
第2混合器200として、図2(a)〜(c)に示すのと同様の構造を有するものを用いた。第2混合器200は、液流通管210が、内径D1が5.0mmであるPTFE製の円筒管で形成され、また、小径管220が、外径D2が0.5mmで及び内径が0.2mmであるステンレス製の円筒管で形成され、そして、小径管220の先端が液流通管210の中心軸付近(h=約2.4mm)に位置付けられ、液混合流路212の液流動方向の長さLが200mmである。
【0110】
なお、水性成分用のポンプ33a及び油性成分用のポンプ33bとしてギアポンプ(Zenith社製)を用い、第2液用のポンプ33cとしてシリンジポンプ(HARVARD社製)を用いた。
【0111】
水性成分として、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(日光ケミカルズ社製
商品名:PEMULEN TR-2)の0.11質量%高分子水溶液を準備して仕込んだ。この水性成分の高分子水溶液は、B型粘度計を用いて回転数60r/mの条件で測定した粘度が40mPa・sであった。また、水性成分を20℃に調温した。
【0112】
油性成分としてスクワランを準備して仕込んだ。油性成分を20℃に調温した。
【0113】
第2液として0.5Mの水酸化カリウム水溶液を準備して仕込んだ。
【0114】
そして、増粘油滴分散液の製造システムを稼働させて、第1混合器100に対し、上記水性成分及び油性成分を、体積割合(油性成分/水性成分)=12/88、並びにマイクロ流路140を流通する水性成分及び油性成分の合計流量が2.0L/hとなるように供給したところ、第1混合器100から増粘前油滴分散液の第1液が得られ、第2混合器200に対し、その第1液の流量を2.0L/h及び第2液の流量を0.027L/hで供給することで増粘油滴分散液が得られた。以上の操作を実施例1とした。
【0115】
第1混合器100から得られた増粘前油滴分散液について、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所社製 LA−910)を用いて油滴の体積平均粒径を求めたところ433μmであった。また、実施例1での液混合流路212におけるレイノルズ数(Re)は3.4であった。実施例1で得られた増粘油滴分散液の粘度は2600mPa・sであった。増粘油滴分散液の粘度は、B型粘度計を用いて回転数12r/mの条件で測定したものである(以下同様)。
【0116】
<実施例2>
第2混合器200として、液流通管210の内径D1が3.2mm、液混合流路212の内壁からの距離hが約1.5mmであるものを用いたことを除いて実施例1と同条件の操作により増粘油滴分散液を得た。この操作を実施例2とした。
【0117】
実施例2での液混合流路212におけるレイノルズ数(Re)は5.4であった。実施例2で得られた増粘油滴分散液の粘度は2500mPa・sであった。
【0118】
<実施例3>
第2混合器200として、液流通管210の内径D1が1.6mm、液混合流路212の内壁からの距離hが約0.7mmであるものを用いたことを除いて実施例1と同条件の操作により増粘油滴分散液を得た。この操作を実施例3とした。
【0119】
実施例3での液混合流路212におけるレイノルズ数(Re)は10.7であった。実施例3で得られた増粘油滴分散液の粘度は2600mPa・sであった。
【0120】
<比較例1>
第2混合器200’として、図8に示すようなガラス製の二重管構造を有し、外側の液流通管210’の内径D1’が2.5mm、内側の小径管220’の外径D2’が1.6mm及び内径D3’が1.1mm、液混合流路212の内径D4’が2.5mm、並びに液混合流路212’の液流動方向の長さL’が200mmであるものを用いたこと、更に第1液を内側の小径管220’から、第2液を外側の液流通管210’からそれぞれ供給したことを除いて実施例1と同条件の操作により増粘油滴分散液を得た。この操作を比較例1とした。
【0121】
比較例1での液混合流路212におけるレイノルズ数(Re)は2.9であった。比較例1で得られた増粘油滴分散液の粘度は2400mPa・sであった。
【0122】
<比較例2>
100mLビーカーに実施例1と同様にして得られた第1液の油滴分散液を74mL仕込み、プロペラ翼で200r/mの回転数で攪拌しながら、実施例1で用いたのと同じ第2液1mLを滴下して混合したところ増粘油滴分散液が得られた。この操作を比較例2とした。
【0123】
比較例2で得られた増粘油滴分散液の粘度は2800mPa・sであった。
【0124】
(試験評価及び結果)
<増粘油滴分散液の外観>
実施例1〜3及び比較例1〜2のそれぞれで得られた増粘油滴分散液をガラス試験管にとって目視観察した。
【0125】
実施例1〜3のいずれも、粗大な油滴は認められるものの、数mm程度もある粗大な油滴は観察されず、また分散液の上液面に油浮きは観察されなかった。一方、比較例1及び2では、数mm程度の粗大な油滴が目立ち、また分散液の上液面に油浮きが観察された。
【0126】
<油滴分散液の顕微鏡観察>
実施例1〜3のそれぞれで得られた増粘油滴分散液をスライドガラスにとり、カバーグラスを載せて光学顕微鏡で観察した。
【0127】
図9(a)〜(c)はそれぞれ実施例1〜3の観察写真である。いずれも1mmを大きく上回るほどの粗大な油滴は観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は液体の増粘方法及び増粘油滴分散液の製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0129】
212 液混合流路
220 小径管
221 第2液流出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液に、それを増粘させる第2液を添加する液体の増粘方法であって、
流路を層流条件下で流通する第1液に、該流路を流通する第1液の内部から第2液を添加し、それらを層流条件を保持した状態で混合させる、液体の増粘方法。
【請求項2】
上記流路の水力相当直径が1〜10mmである、請求項1に記載された液体の増粘方法。
【請求項3】
上記第2液の添加を、上記流路側に突出して設けられた管から行う、請求項1又は2に記載された液体の増粘方法。
【請求項4】
上記管の第2液流出部の上記流路の内壁からの距離が該流路の水力相当直径の10%以上である、請求項3に記載された液体の増粘方法。
【請求項5】
第1液は、成分Aを含有する水性成分からなる連続相に、体積平均粒径が100〜1000μmである液体の油性成分の油滴からなる分散相が分散した油滴分散液であり、
第2液は、成分Aとの混合により第1液を増粘させる成分Bを含有する、請求項1乃至4のいずれかに記載された液体の増粘方法。
【請求項6】
第1液に対する第2液の体積比(第2液/第1液)が0.1/99.9〜20/80である、請求項5に記載された液体の増粘方法。
【請求項7】
成分Aを含有する水性成分からなる連続相に、体積平均粒径が100〜1000μmである液体の油性成分の油滴からなる分散相が分散した油滴分散液の第1液を層流条件下で流路に流通させると共に、該流路を流通する第1液に、該流路の内壁から離れた位置から成分Bを含有する第2液を添加し、それらを層流条件を保持した状態で混合させて成分Aと成分Bとの混合により第1液を増粘させる、増粘した油滴分散液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−98273(P2011−98273A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253912(P2009−253912)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】