説明

液体の連続式脱水方法

【課題】低コストで効率よく含水液体から水分を除去する連続式脱水方法を提供する。
【解決手段】(1)該原料液体または該原料液体由来の蒸気を、水分吸着剤を充填した吸着管の一端に供給し、該吸着管の他端から流出液を回収する工程、および(2)該流出液中の水分濃度を測定して累積水分濃度を算出する工程を含む方法であり、該工程(2)において、該流出液中の該累積水分濃度が所定濃度以上になった場合に、(3)該原料液体または該原料液体由来の蒸気の供給を停止し、該吸着管内の該吸着剤から水分を離脱させる工程、(4)該吸着管内に残存する蒸気が蒸留塔に供給され、該蒸留塔の塔頂から濃縮液が回収される工程、および(5)該工程(1)に戻る工程をさらに含む、水分を含む原料液体の連続式脱水方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤を利用した液体の連続式脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水分を含む液体(含水液体)から水分を除去する方法として、回分式の脱水方法または連続式の脱水方法がある。
【0003】
回分式の脱水方法は、例えば、フラスコ、試験管などにモレキュラーシーブおよび含水液体を入れ、モレキュラーシーブに水分のみを吸着させることにより、含水液体から水分を除去する方法である。回分式の脱水方法は、通常、必要量の液体を必要に応じて脱水するときに用いられるため、工業的に用いられることは少なく実験室で頻繁に用いられる。
【0004】
連続式の脱水方法は、回分式の脱水方法とは異なり、水分が除去された液体を工業的規模などで多量に得るために用いられる。例えば、特許文献1に記載の方法は、含水液体を蒸気の状態で加圧して脱水する方法であり、高温・高圧条件が必要である。含水液体を蒸気の状態にして加圧するには大量のエネルギーを要し、さらに加熱・加圧装置、耐熱・耐圧容器など特別な装置、容器が必要となり、コストアップにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−55386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低コストで効率よく含水液体から水分を除去する連続式脱水方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水分を含む原料液体の連続式脱水方法を提供し、該方法は、(1)該原料液体または該原料液体由来の蒸気を、水分吸着剤を充填した吸着管の一端に供給し、該吸着管の他端から流出液を回収する工程、および(2)該流出液中の水分濃度を測定して累積水分濃度を算出する工程を含む方法であり、該工程(2)において、該流出液中の該累積水分濃度が所定濃度以上になった場合に、(3)該原料液体または該原料液体由来の蒸気の供給を停止し、該吸着管内の該吸着剤から水分を離脱させる工程、(4)該吸着管内に残存する蒸気が蒸留塔に供給され、該蒸留塔の塔頂から濃縮液が回収される工程、および(5)該濃縮液が、該原料液体と混合され、該工程(1)に戻る工程をさらに含む。
【0008】
1つの実施態様では、上記工程(3)において、上記吸着管内の滞留液を抜き出し回収する工程、および上記工程(4)の後に、該滞留液を該吸着管の一端に供給する工程、をさらに含む。
【0009】
1つの実施態様では、上記工程(4)は、上記吸着管内を室温よりも高い温度に加温し、かつ減圧にして行われる。
【0010】
1つの実施態様では、上記工程(4)は、上記吸着管内をガスでパージした後、大気圧または減圧にして行われる。
【0011】
他の実施態様では、上記吸着管は、2つ以上用いられる
【0012】
ある実施態様では、上記吸着管は、3つ以上用いられ、上記工程(5)において、上記滞留液は、該滞留液を抜き出した吸着管とは異なる吸着管の一端に供給される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低コストで効率よく含水液体から水分を除去する連続式脱水方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の脱水方法に用いられる脱水システムの一実施態様を示す概略図である。
【図2】本発明の脱水方法に用いられる脱水システムの他の実施態様を示す概略図である。
【図3】従来の脱水方法に用いられる脱水システムの実施態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の脱水方法は、(1)原料液体または原料液体由来の蒸気を、水分吸着剤を充填した吸着管の一端に供給し、吸着管の他端から流出液を回収する工程、および(2)流出液を定期的にサンプリングし、流出液中の水分濃度を測定して累積水分濃度を算出する工程を含む方法であり、工程(2)において、流出液中の累積水分濃度が所定濃度以上になった場合に、(3)原料液体または原料液体由来の蒸気の供給を停止し、吸着管内の吸着剤から水分を離脱させる工程、(4)吸着管内に残存する蒸気が蒸留塔に供給され、蒸留塔の塔頂から濃縮液が回収される工程、および(5)濃縮液が、原料液体と混合され、該工程(1)に戻る工程をさらに含む。
【0016】
(工程(1))
工程(1)では、水分を含む原料液体または原料液体由来の蒸気(以下、単に「原料液体」と記載する場合がある)を、水分吸着剤(以下、単に「吸着剤」と記載する場合がある)を充填した吸着管の一端に供給し、吸着管の他端から流出液を回収する。
【0017】
水分を含む原料液体としては、特に限定されず、例えば有機溶媒と水との混合液が挙げられる。好ましくは、蒸留では水分が完全に除去できない共沸混合物が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール類;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ギ酸、酢酸などの有機酸類などが挙げられる。
【0018】
原料液体中の水分濃度は特に限定されず、好ましくは1質量%〜15質量%である。本発明の脱水方法を用いると、原料液体から、効率よく無水(例えば、水分濃度が0.5質量%未満)の流出液(製品)が得られる。
【0019】
吸着剤としては、水分を吸着し得る吸着剤であれば特に限定されず、例えば、ゼオライト(モレキュラーシーブ)、シリカゲルなどが挙げられる。特許文献1に記載のハニカム形状の吸着剤なども用い得る。市販されている吸着剤としては、例えば、モレキュラーシーブ13X(ユニオン昭和株式会社製)、モレキュラーシーブ3Aペレット1.6(ユニオン昭和株式会社製)、ハニクルMSXおよびMSA(ニチアス株式会社製)などが挙げられる。
【0020】
吸着管は、吸着剤が充填され、原料液体と吸着剤とが接触し得るように構成されている。吸着管は、例えば、円筒形など中空の柱状の構造を有する。
【0021】
原料液体を吸着管の一端に供給する方法は、特に限定されない。例えば、ポンプ、バルブなどを用いて、供給し得る。吸着管を地面に対して垂直に設置して使用する場合、原料液体は、吸着管の下端から供給されることが好ましい。
【0022】
原料液体の供給速度は、原料液体中の水分濃度、吸着管の大きさなどに応じて、適宜設定され得る。液体の状態で供給する場合は、好ましくは、吸着剤1gあたり0.5mL/h〜4mL/hの流量で吸着管に供給される。蒸気の状態で供給する場合は、好ましくは、吸着剤1gあたり0.1mL/h〜4mL/hの流量で吸着管に供給される。例えば、含水エタノールの脱水を行う場合は、吸着剤1gあたり約1mL/hの流量(液体の状態)、または吸着剤1gあたり約0.19mL/hの流量(蒸気の状態)が好ましい。
【0023】
原料の供給は、液体の状態では室温で行われ、蒸気の状態では供給される原料の沸点以上の温度で行われる。原料を蒸気の状態にするために、例えば、図1に示すような全蒸発器が用いられる。水分の吸着は、原料の供給が液体の状態で行われる場合、室温で行ってもよく、加温して行ってもよい。好ましくは、20℃〜98℃程度で行う。
【0024】
吸着管内の吸着剤によって水分が除去された流出液(製品)は、吸着管の他端から流出し回収される。
【0025】
(工程(2))
工程(2)では、工程(1)で吸着管の他端から流出する流出液中の水分濃度を測定して累積水分濃度を算出する。水分濃度を測定する方法としては、例えば、密度計(センサー)を流出口に設置して連続的に流出液の密度を測定し、水分濃度を求める方法、流出液を定期的にサンプリングしてカールフィッシャー水分計、ポータブル密度比重計などで測定する方法などが挙げられる。水分濃度の測定値から累積水分濃度を算出する。累積水分濃度は、測定した水分濃度の積算値を、測定開始から経過した時間で除した値である。流出液を定期的にサンプリングして水分濃度を測定する場合は、サンプリング開始からの測定値の平均値である。
【0026】
工程(2)で、累積水分濃度が所定濃度を超えた場合に、後述する工程(3)〜(5)に進む。
【0027】
後述の工程(3)〜(5)に進むか否かを判断するための累積水分濃度の所定濃度は特に限定されず、流出液(製品)の用途に応じて適宜設定され得る。例えば、液体を無水物の製品として用いる場合、累積水分濃度の所定濃度は、好ましくは0.5質量%未満に設定される。
【0028】
(工程(3))
工程(3)では、原料液体または原料液体由来の蒸気の供給を停止し、吸着管内の吸着剤から水分を離脱させる。原料液体の供給が進むにつれて、吸着剤に吸着される水分も増加し、吸着剤の水分吸着能が低下する。その結果、工程(1)で回収される流出液中の水分濃度が増加する。
【0029】
吸着剤から水分を離脱させる方法は、特に限定されない。例えば、吸着管内を室温よりも高い温度に加温(例えば、100℃〜140℃)し、かつ最終的に50mmHg程度まで減圧して吸着剤から水分を離脱させる方法;吸着管内をガス(例えば、窒素などの不活性ガス)でパージした後、大気圧または最終的に50mmHg程度まで減圧して吸着剤から水分を離脱させる方法などが挙げられる。
【0030】
吸着管内を加温するために、吸着管の外壁面に蒸気などの熱媒が供給され得る加熱装置(ジャケット)などが用いられ得る。
【0031】
吸着管内を減圧にするために、真空ポンプ、ブロアーなどが用いられる。装置が小型の場合、好ましくは真空ポンプが用いられ、装置が大型の場合、好ましくは数台直列に並べたブロアーが用いられる。
【0032】
このように、吸着剤から水分を離脱させることによって、吸着剤の水分吸収能を回復させることができる。
【0033】
好ましくは、回収される流出液中の累積水分濃度が設定した所定濃度を超えると、吸着管への原料液体の供給を停止し、吸着管内に残存する滞留液を抜き出し回収する。滞留液を抜き出し回収する方法は、特に限定されない。例えば、ポンプ、バルブなどを用いて抜き出し回収し得る。また、吸着管内に窒素ガスを導入して、窒素ガスの圧力によって吸着管内に残存する滞留液を押し出してもよい。
【0034】
(工程(4))
工程(4)では、吸着管内に残存する蒸気が蒸留塔に供給され、蒸留塔の塔頂から濃縮液が回収される。
【0035】
吸着管内に残存する蒸気(原料液体の蒸気および水蒸気)は、蒸留塔に供給される。蒸気は、蒸留塔の底部(塔底)に供給されて蒸留され、原料液体の蒸気を主として含む蒸気が蒸留塔の上部(塔頂)のコンデンサー(例えば、冷却器など)で液化されて蒸留塔に還流され、水蒸気を主として含む蒸気が液化して塔底に滞留する。
【0036】
原料液体の蒸気を主として含む蒸気は、上記のように、コンデンサー(例えば、冷却器など)で液化されて蒸留塔に還流されることによって濃縮され、濃縮液として回収される。この濃縮液は、再度、原料液体として用いられる。
【0037】
このように、濃縮液を、再度原料液体として用いることによって、含水液体から高収率で無水物が得られる。
【0038】
(工程(5))
工程(5)では、濃縮液が、原料液体と混合され、工程(1)に戻る。
【0039】
好ましくは、工程(3)で回収される滞留液を吸着管の一端に供給し、滞留液の供給後、工程(1)に戻り、濃縮液と混合された原料液体を吸着管の一端に供給する。滞留液についても、原料液体と同様、バルブなどで供給速度(流量)を調節して供給することが好ましい。
【0040】
本発明の脱水方法では、上記工程(1)〜(5)によって、原料液体を連続的に脱水することが可能である。
【0041】
本発明の脱水方法は、好ましくは図1に示すように、2つ以上の吸着管を用いる。特に、図1に示すような2つの吸着管を用いる方法は、原料液体を蒸気として用いる場合に好ましく用いられる。
【0042】
本発明の脱水方法は、より好ましくは3つ以上の吸着管を用いる。この場合、工程(5)において、滞留液は、該滞留液を抜き出した吸着管とは異なる吸着管の一端に供給される。
【0043】
例えば、3つの吸着管(第1の吸着管、第2の吸着管および第3の吸着管)を用いる場合、第1の吸着管から回収された滞留液を第2の吸着管に供給し、第2の吸着管から回収された滞留液を第3の吸着管に供給し、そして第3の吸着管から回収された滞留液を第1の吸着管に供給することが好ましい。このように、回収された滞留液を回収した吸着管とは異なる吸着管に供給することによって、より連続的に脱水することが可能となる。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
以下、本発明の脱水方法の一実施態様を、図2に示す脱水システムを参照して説明する。
【0045】
図2に示す脱水システムは、吸着塔を3本用いたシステムであり、吸着塔21、31、41、原料タンク11、中間タンク12、流出液タンク13、真空ポンプ14、コンデンサー15、凝縮液タンク16、蒸留塔17および水タンクを備える。
【0046】
吸着塔21、31、41は、吸着剤を充填する内側の円筒管および内側の円筒管を覆う外側の円筒管でなる二重管構造を有する。内側の円筒管は、内径が200mmであり、長さが700mmである。外側の円筒管は、内径が250mmであり、長さが700mmである。内側の円筒管と外側の円筒管との隙間に、蒸気、温水などの熱媒が供給され得、内側の円筒管を加熱できるように構成されている。
【0047】
吸着塔21、31、41の内側の円筒管の下部に網を設置し、その上に約3500gの吸着剤(ユニオン昭和株式会社製:モレキュラーシーブ3Aペレット1.6)を充填した。吸着剤の充填後、内側の円筒管内を窒素で満たした。
【0048】
(前処理)
原料液体を脱水する前に、吸着剤に吸着している水分を離脱させた。バルブ285を開き、バルブ286を閉じて、吸着塔21の内側の円筒管と外側の円筒管との隙間に0.45Mpaの蒸気を供給し、吸着塔21を加熱した。次いで、バルブ281をa−c方向に開き、バルブ282をb−a方向に開き、バルブ283を閉じ、そしてバルブ284を開いて、真空ポンプ14を運転した。真空ポンプ14は、蒸留塔17とバルブ282との間に備えられている。真空ポンプ14によって、窒素ガスと共に水蒸気を吸引して蒸留塔17に供給し、凝縮された水を水タンクに溜めた。
【0049】
蒸留塔17は、塔の内径が50mmおよび高さが1000mmの円筒形であり、内部にステンレス製のマクマホン充填物が、底から500mmの高さまで充填されている。
【0050】
なお、吸着塔21の内部温度は100℃〜120℃で推移し、水分の離脱終了時の温度は、吸着塔21の上部付近が約100℃であり、下部付近が約20℃であった。
【0051】
吸着塔31、41についても、吸着塔21と同様の手順で吸着剤に吸着している水分を離脱させた。
【0052】
(吸着塔21の運転)
次いで、バルブ284を閉じて、吸着塔21の圧力を減圧し、原料液体の供給を行った。また、バルブ285を閉じて、バルブ286を開き、蒸気の供給を停止した。原料液体として、エタノール90質量%および水10質量%の含水エタノールを用いた。
【0053】
バルブ281をa−b方向に開き、ポンプ191を用いて、原料タンク11から含水エタノールを吸着塔21に供給した。
【0054】
吸着塔21の圧力が常圧になれば、バルブ283を開いて流出液を回収した。流出液が流出液タンク13に回収される前に、数回、3〜5mLずつサンプリングを行い、カールフィッシャー水分計(平沼産業株式会社製、AQV−2100S)によって流出液中の水分濃度を測定し、累積水分濃度を算出した。また、瞬時にエタノール濃度が測定できるポータブル密度比重計(京都電子工業株式会社製、DA−130N)でエタノール濃度を監視した。なお、流出液を流出液タンク13に回収するか否かを判断するための累積水分濃度の所定濃度は、0.5質量%未満と設定した。
【0055】
累積水分濃度が0.5質量%を超えた時点で、流出液の回収を停止し、バルブ283を閉じて、含水エタノールの供給を停止した。
【0056】
次いで、バルブ289をa−c方向に開き、バルブ282をb−c方向に開いて、吸着塔21内の滞留液を抜き出し中間タンク12に回収した。
【0057】
滞留液を抜き出した後、バルブ285を開き、バルブ286を閉じて、吸着塔21の内側の円筒管と外側の円筒管との隙間に0.45Mpaの蒸気を供給し、吸着塔21を加熱した。次いで、バルブ281をa−c方向に開き、バルブ282をb−a方向に開き、そしてバルブ284を開いて、真空ポンプ14を運転した。真空ポンプ14によって、吸着塔21内に残存するエタノールの蒸気および水蒸気が蒸留塔17に供給し、蒸留を行った。
【0058】
蒸留塔17の塔頂に滞留する蒸気をコンデンサー15(5℃の冷却水)で冷却し、凝縮液を凝縮液タンク16に回収しながら、溜まった液を蒸留塔17に還流液として戻した。回収された凝縮液のエタノール濃度を、ポータブル密度比重計で測定すると、約90質量%であった。この凝縮液を原料として再利用するため、原料タンク11に戻した。
【0059】
蒸留塔17の塔底に滞留する蒸気の凝縮液を、水タンクに回収した。回収された凝縮液のエタノール濃度は、約30質量%であった。
【0060】
(吸着塔31の運転)
バルブ384を閉じて、吸着塔31の圧力を減圧した。また、バルブ385を閉じて、バルブ386を開き、蒸気の供給を停止した。バルブ381をa−c方向に開き、バルブ382および389をb−c方向に開き、吸着塔21内から抜き出し中間タンク12に回収した滞留液を、ポンプ192を用いて吸着塔31に供給した。
【0061】
滞留液を全て吸着塔31に供給し終わると、バルブ389をa−b方向に開いた。次いで、バルブ381をa−b方向に開き、ポンプ191を用いて、原料タンク11から含水エタノールを吸着塔31に供給した。
【0062】
吸着塔31の圧力が常圧になれば、バルブ383を開いて流出液を回収した。流出液が流出液タンク13に回収される前に、数回、3〜5mLずつサンプリングを行い、カールフィッシャー水分計によって流出液中の水分濃度を測定し、累積水分濃度を算出した。なお、流出液を流出液タンク13に回収するか否かを判断するための累積水分濃度の所定濃度は、0.5質量%未満と設定した。
【0063】
累積水分濃度が0.5質量%を超えた時点で、流出液の回収を停止し、バルブ381をa−c方向に開き、そしてバルブ383を閉じて、含水エタノールの供給を停止した。
【0064】
次いで、バルブ389をa−c方向に開き、バルブ382をb−c方向に開いて、吸着塔31内の滞留液を抜き出し中間タンク12に回収した。
【0065】
滞留液を抜き出した後、上記の吸着塔21の場合と同様に、吸着塔31に残存する蒸気を蒸留塔17に供給し、蒸留を行った。蒸留塔17の塔頂から回収された凝縮液のエタノール濃度は約90質量%であった。この凝縮液を、原料タンク11に戻した。蒸留塔17の塔底から回収された凝縮液のエタノール濃度は30質量%であった。
【0066】
(吸着塔41の運転)
バルブ484を閉じて、吸着塔41の圧力を減圧した。また、バルブ485を閉じて、バルブ486を開き、蒸気の供給を停止した。バルブ481をa−c方向に開き、バルブ482および489をb−c方向に開き、吸着塔31内から抜き出し中間タンク12に回収した滞留液を、ポンプ192を用いて吸着塔41に供給した。
【0067】
滞留液を全て吸着塔41に供給し終わると、バルブ489をa−b方向に開いた。次いで、バルブ481をa−b方向に開き、ポンプ191を用いて、原料タンク11から含水エタノールを吸着塔41に供給した。
【0068】
吸着塔41の圧力が常圧になれば、バルブ483を開いて流出液を回収した。流出液が流出液タンク13に回収される前に、数回、3〜5mLずつサンプリングを行い、カールフィッシャー水分計によって流出液中の水分濃度を測定し、累積水分濃度を算出した。なお、流出液を流出液タンク13に回収するか否かを判断するための累積水分濃度の所定濃度は、0.5質量%未満と設定した。
【0069】
累積水分濃度が0.5質量%を超えた時点で、流出液の回収を停止し、バルブ483を閉じて、含水エタノールの供給を停止した。
【0070】
次いで、バルブ489をa−c方向に開き、バルブ482をb−c方向に開いて、吸着塔41内の滞留液を抜き出し中間タンク12に回収した。
【0071】
滞留液を抜き出した後、上記の吸着塔21の場合と同様に、吸着塔41に残存する蒸気を蒸留塔17に供給し、蒸留を行った。蒸留塔17の塔頂から回収された凝縮液のエタノール濃度は約90質量%であった。この凝縮液を、原料タンク11に戻した。蒸留塔17の塔底から回収された凝縮液のエタノール濃度は30質量%であった。
【0072】
(吸着塔21の運転)
バルブ284を閉じて、吸着塔21の圧力を減圧した。また、バルブ285を閉じて、バルブ286を開き、蒸気の供給を停止した。バルブ281をa−c方向に開き、バルブ282および289をb−c方向に開き、吸着塔41内から抜き出し中間タンク12に回収した滞留液を、ポンプ192を用いて吸着塔21に供給した。
【0073】
滞留液を全て吸着塔21に供給し終わると、バルブ289をa−b方向に開いた。次いで、バルブ281をa−b方向に開き、ポンプ191を用いて、原料タンク11から含水エタノールを吸着塔21に供給した。
【0074】
次いで、上記の流出液の回収、流出液中の水分濃度の測定、累積水分濃度の算出、滞留液の抜き出しおよび回収を繰り返した。
【0075】
3本の吸着塔21、31、41を用いることにより、原料供給工程、流出液回収工程、水分離脱工程、濃縮液回収工程および原料再供給工程を、それぞれの吸着塔で時間差を設けて行うことによって、99.5質量%の無水エタノールが約90%の回収率で得られた。このように、本発明の方法を用いることによって、効率よく連続的に液体の脱水を行うことができる。
【0076】
(比較例1)
従来の脱水方法、すなわち蒸留塔17を有さない図3の脱水システムを用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で、エタノール90質量%および水10質量%の含水エタノールの脱水を行った。無水エタノールの回収率は、約60%であった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、低コストで効率よく含水液体から水分を除去する連続式脱水方法を提供することができる。したがって、本発明の方法は、溶媒の精製などの分野で有用である。
【符号の説明】
【0078】
11 原料タンク
12 中間タンク
13 流出液タンク
14 真空ポンプ
15 コンデンサー
16 凝縮液タンク
17 蒸留塔
191、192 ポンプ
21 吸着塔
281〜286、289 バルブ
31 吸着塔
381〜386、389 バルブ
41 吸着塔
481〜486、489 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含む原料液体の連続式脱水方法であって、
(1)該原料液体または該原料液体由来の蒸気を、水分吸着剤を充填した吸着管の一端に供給し、該吸着管の他端から流出液を回収する工程、および
(2)該流出液中の水分濃度を測定して累積水分濃度を算出する工程、
を含む方法であり、
該工程(2)において、該流出液中の該累積水分濃度が所定濃度以上になった場合に、
(3)該原料液体または該原料液体由来の蒸気の供給を停止し、該吸着管内の該吸着剤から水分を離脱させる工程、
(4)該吸着管内に残存する蒸気が蒸留塔に供給され、該蒸留塔の塔頂から濃縮液が回収される工程、および
(5)該濃縮液が、該原料液体と混合され、該工程(1)に戻る工程、
をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記工程(3)において、前記吸着管内の滞留液を抜き出し回収する工程、および前記工程(4)の後に、該滞留液を該吸着管の一端に供給する工程、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(4)が、前記吸着管内を室温よりも高い温度に加温し、かつ減圧にして行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(4)が、前記吸着管内をガスでパージした後、大気圧または減圧にして行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着管が、2つ以上用いられる、請求項1から4のいずれかの項に記載の方法。
【請求項6】
前記吸着管が、3つ以上用いられ、前記工程(5)において、前記滞留液が、該滞留液を抜き出した吸着管とは異なる吸着管の一端に供給される、請求項1から4のいずれかの項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−45507(P2012−45507A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191677(P2010−191677)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(390006264)関西化学機械製作株式会社 (20)
【Fターム(参考)】