説明

液体を濃縮する装置及び差動ピストンポンプ

差動ピストンポンプ(K)により濃縮装置(3)を通して送られる液体(F)を濃縮する装置(V)であって、液体(F)が、濃縮物(F)として残留圧力を受けて、送り行程において少なくとも1つの差動ピストン(K)にこれを援助するように直接作用し、吸入−排出弁装置(A)の直線的に案内される少なくとも1つの弁制御部材(18)を操作する駆動軸(12)によって、差動ピストン(K)が駆動される。差動ピストンポンプがラジアルピストンポンプ(R)であり、駆動軸(12)上に差動ピストン(K)及び弁制御部材(18)用の偏心輪(13,14)が設けられ、差動ピストン(K)及び弁制御部材(18)が、引張り−押圧継手(S)により直接偏心輪(13,14)に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に示す種類の装置及び請求項2の上位概念に記載の差動ピストンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
液体の濃縮の際例えば海水脱塩(逆浸透)の際又は果物ジュース製造の際、プロセスにより、液体を給排するために多くの一次エネルギが使用され、その際生じる濃縮物は比較的高い残留圧力で生じる。特に海水脱塩の際、一次エネルギの大きい需要は以前から周知の欠点であり、例えば高い残留圧力のため濃縮物に含まれるエネルギを使用して、供給の際差動ピストンポンプを援助して一次エネルギを節約することによって、この欠点が高いエネルギ費に関して少なくされる。
【0003】
欧州特許第0450257号明細書から公知の海水脱塩装置及び欧州特許第0450257号明細書の図5に示す差動ピストンポンプにおいて差動ピストンは、ピストン棒から遠い方の側で濃縮すべき液体例えば海水を、吸入−排出弁により制御して、例えば逆浸透の原理に従って作用する膜を経て圧送し、この膜の後に高い残留圧力を持つ濃縮物及び透過物が生じる。残留圧力を受ける濃縮物は、吸入−排出弁装置により制御されて、差動ピストンのピストン棒側へ周期的にもたらされて、濃縮物が圧力なしに排出される前に、残留圧力により圧送を援助する。差動ピストンの直線的に案内される軸部は、連接棒を介して、クランク軸として構成される駆動軸のクランクピンに連結されている。差動ピストンのピストン棒側にある圧力室の吸入−排出弁装置は、別々の吸入弁及び排出弁を持ち、これらの弁が、直線的に案内される押し棒を介して、駆動軸に設けられる制御カムによりばね力に抗して操作される。
【0004】
ばねは丈夫で漸増的なので、望ましくない出力損失を生じる。クランク軸−連接棒装置は、差動ピストンポンプを大きくするだけでなく、例えば連接棒枢着のためあまり調和しないピストン棒運動を生じ、この運動の結果、更に出力損失及び圧送される液体の脈動が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎になっている課題は、最小の一次エネルギの使用で作動せしめられる最初にあげた種類の装置、及びこじんまりしかつ極めて効率的な差動ピストンポンプを提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
与えられた課題は、本発明によれば請求項1及び2の特徴によって解決される。
【0007】
その結果装置においてラジアルピストンポンプは小さくなり、作動に脈動が少なくなり、引張り−押圧継手のため最小の損失で高い効率が得られるので、非常に少ない一次エネルギで充分であり、濃縮物に含まれるエネルギが最適に特に直接利用される。引張り−押圧継手は、差動ピストン及び弁制御部材の極めて調和した往復過程を生じる。圧力室へ至る吸入弁及び排出弁の制御は、差動ピストンの往復過程に最適に合わせて、長い使用期間にわたって最小の摩耗で行われる。ラジアルピストンポンプは、海水脱塩の際、個々の建物又は建物群の需要にいわばぴったり合わせるこじんまりした装置を設置して使用するのを可能にし、少ない一次エネルギ使用のため例えば日当たりのよい海辺領域において、太陽電池の直流一次エネルギが大きい流量を供給することができる。従ってこのようなこじんまりした装置は、電源なしで、又は電流エネルギを全く又はまれにしか利用できないか又は家庭用にあまり高価でない領域においても使用することができる。
【0008】
ラジアルピストンを持つ差動ピストンポンプは、連接棒なしに特にエネルギを消費する強力な弁ばねなしに、こじんまりした大きさ及び高い効率のため、すべての使用事例に対してすぐれて、液体を圧送せねばならない海水脱塩に適しているだけでなく、同じ液体又は濃縮される液体又は残留圧力を持つ他の液体も利用可能である。
【0009】
適切な実施形態では、エネルギ損失を最小にするため、吸入−排出弁装置のためにただ1つの弁制御部材が設けられている。駆動軸上の偏心輪と引張り−押圧連結するため、エネルギを消費する弁ばねがなくなり、それが効率及び寿命を改善する。なぜならば、吸入−排出弁装置は比較的少ない力で動作し、損傷し易い部品を含んでいないからである。
【0010】
適切な実施形態では、偏心輪上に支持される牽引体が設けられ、この牽引体に軸部の端部が確実伝動するように連結されているので、偏心輪の回転運動が調和するように伝達される。滑り案内装置は、回転する偏心輪と直線運動可能な軸部との間の横ずれ運動を、大した摩耗や騒音又は振動なしに可能にする。
【0011】
回転する偏心輪と直線的に案内される軸部との間に介在する滑り案内装置は、軸部のねじり止めを適切に形成している。その代わりに、軸部が摩耗分布のため回転できるように、滑り案内装置を設計することができる。
【0012】
牽引体が、組立て上の理由から組合わされるは半体から構成されるか又は一体に構成され、外方へ開く軸部用ポケットを持ち、このポケットが確実伝動のため軸部の外側幅より狭い。確実伝動する共同作用は、比較的大きく設計可能な面の間で行われ、それにより局部的摩耗が回避される。
【0013】
作動中に軸部への横方向負荷を回避するため、ハウジングに固定した摺動案内装置内に軸部を設けるのが有利である。摺動案内装置は滑りブシュであってもよい。更に一体に形成される支持殻を持つ摺動案内装置は、できるだけ大きい長さにわたって軸部を支持するため、滑りばめでポケットにはまっている。
【0014】
この場合組立て上の理由から、軸部又は支持殻、又は両方が、偏心輪上の牽引体を軸線方向に位置ぎめしていると有利である。
【0015】
ポケットの底面は軸部の端部用の押圧面を形成し(押圧継手)、この押圧面が、必要な滑り運動のため軸部端部の外側幅より長い。軸部端部から間隔をおいて、平行な溝が軸部に形成され、これらの溝がポケットの内側幅にほぼ等しい幅を規定し、軸部端部に係合部材として外方へ突出する連行体を(軸部の片側又は両側に)形成し、これらの連行体がポケットのくり抜き部に係合している(引張り継手)。軸部端部と牽引体との間の滑り運動は、偏心輪の近くで最適に行われ、それが静かな運転に寄与する。
【0016】
最適な実施形態では、ポケットにあるくり抜き部が、偏心輪の接線に対して平行に延び、この方向においてくり抜き部が連行体より長いので、相対滑り運動を妨げない。くり抜き部は連続的に構成され、それにより牽引体への軸部端部の取付けが簡単になるので、牽引体は場合によっては1片から構成可能である。
【0017】
差動ピストンのピストン棒側に、送り行程にわたって精確に制御されて残留圧力を加え、これに反し差動ピストンの戻り行程では残留圧力を敏速に低下するため、差動ピストンに付属する吸入−排出弁装置の弁制御部材用偏心輪が、差動ピストン用偏心輪に対して、駆動軸の中心軸線の回りに約90°だけ駆動回転方向に進むようにずらされている。
【0018】
騒音及び脈動が少ない運転のために、3つ以上の差動ピストンを駆動軸の中心軸線の回りに星型に分布し、これらの差動ピストンに、共通な偏心輪及び共通な牽引体を付属させると、好都合である。それにより可動質量が減少し、構造空間が節約される。駆動軸に沿って、複数のこのような差動ピストン群を設けることも可能である。
【0019】
複数の差動ピストンの吸入−排出弁装置用弁制御部材が、駆動軸の中心軸線の回りに星型に規則正しく分布し、構造上の理由から弁制御部材に、共通な偏心輪及び共通な牽引体が付属しているのがよい。
【0020】
好都合な実施形態では、吸入−排出弁装置が、ハウジングに固定して吸入弁座及び排出弁座を持ち、これらの弁座が駆動軸の中心軸線に関して半径方向に整列しかつ同軸的であり、排出弁座が吸入弁座より駆動軸の近くに位置している。この配置により、高い残留圧力が長い時間作用する範囲は、駆動軸からできるだけ大きく離れており、吸入弁座と駆動軸との間の密封部が、高い残留圧力を殆ど受けないが、又は短時間しか受けない。弁座の配置は、駆動軸の中心軸線の方向に僅かな構造空間しか必要としない。
【0021】
弁制御部材は、充分な遊隙をもって排出弁座を通って吸入弁座の中まで延びるようにし、両方の弁座の間に密封範囲が設けられている。弁制御部材にある第1及び第2の肩部は、それぞれの弁体を弁座から離すのに役立ち、弁体を離す運動は互いに逆向きに行われる。即ち弁制御部材は上昇の際吸入弁を開き、下降の際排出弁を開く。
【0022】
組立て技術上好都合なように、両方の肩部が弁制御部材上に固定されなるべくねじ止めされる管の端部により、できるだけ大きい面積の接触範囲を得る。
【0023】
弁体が弱いばねにより弁座へ押付けられ、吸入弁がばねにより心出し可能な円板又は皿である。これに反し排出弁体は環状板又は円環状皿であり、弁制御部材上に案内され、かつこれに対して可動である。この場合排出弁体を迂回して排出弁座へ至る漏れを回避するため、弁制御部材と排出弁体との間に滑り密封装置が設けられている。
【0024】
弁体が載る際申し分のない圧力状態のために、円錐状又は球状密封面を弁体に設けることができ、円錐状又は球状密封面を持つ弁座も構成することができる。
【0025】
排出弁と吸入弁との間に重なりが起こらず、即ちまず他方の弁が開いた時に初めて、各弁が開くのを確実にするため、弁制御部材の長手方向において両方の肩部の間隔を、弁座に載る弁体の間の間隔より小さく構成することが重要である。この場合差動ピストンの上死点と下死点において両方の弁体が載り、弁制御部材のそれぞれの肩部に対して遊隙が存在するように、寸法設定が行なわれる。この遊隙は約0.1〜0,4mmとすることができる。
【0026】
弁制御部材は、その長さにわたって数回案内される。
【0027】
弁座及び弁制御部材用案内装置がスリーブ体内に設けられ、これらのスリーブ体が、ハウジング室内で、駆動軸に隣接するハウジング壁とハウジング蓋との間に締付けられるようにすることができる。これらのスリーブ体は1つの入口及び2つの出口を持ち、別の入口がハウジング壁に設けられている。この構成は組立てを簡単化し、構造空間を少なくするため、流入弁と排出弁を互いに近く位置させるのを可能にする。
【0028】
好都合な実施形態では、差動ピストン用偏心輪及び弁制御部材用偏心輪が、少なくとも実質的に同じ寸法にされ、同じ偏心距離を持つように構成されている。
【0029】
特に好都合な構成では、供給能力及び/又は作動特性を必要に応じて合わせることができるようにするため、駆動軸の中心軸線に対する偏心距離が調節される。これは例えば、内外にはまりかつ互いにねじり可能で任意の相対位置に固定可能な2つの偏心スリーブから成ることによって実現可能である。その代わりに、偏心輪を交換可能に駆動軸上に取付けることができるので、偏心輪の交換によって偏心距離の変化が行われる。
【0030】
図面により本発明の実施例を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
例えば純粋な液体Fを同時に形成しながら、液体Fを濃縮物又は濃縮液体Fに濃縮するための図1に示す装置Vは、逆浸透の原理に従って動作する海水脱塩装置、又は天然果汁を濃縮する装置である。原理的に装置Vにおいて、液体FをラジアルピストンポンプRにより送り、圧力をかけ、濃縮装置3を通して導くことが行われ、この濃縮装置3から、著しい残留圧力を持つ濃縮された液体Fが生じ、一方純粋な液体Fは、ほぼ圧力なしに例えば海水脱塩において純粋透過物として集められる。著しい残留圧力を持つ濃縮された液体Fは、含まれているエネルギにより液体Fの搬送を直接援助するためラジアルピストンポンプRにおいて使用されて、ラジアルピストンポンプRの作動のために、僅かな一次エネルギ例えば電動機Pの電流又は電力しか消費しないようにする。海水脱塩の場合、濃縮装置3は、例えば逆浸透の原理に従って動作する膜システムである。
【0032】
図1におけるラジアルピストンポンプRは、場合によっては僅かな予備圧力で準備される液体Fを、導管1及び供給弁16を経て、少なくとも1つの差動ピストンKにより吸入し(吸入行程)、送り行程において排出弁17を経て導管2へ送る。導管2は濃縮装置3へ通じ、この濃縮装置3から純粋な液体Fが流出し、導管4において濃縮された液体Fが残留圧力を受けて入口5へ送られる。濃縮された液体Fは、圧力室36内で送り行程において差動ピストンKに作用するために使用された後、出口6からほぼ圧力なしに流出する。
【0033】
装置の始動を簡単にできるようにするため、導管2に弁装置7が設けられ、導管8を介して直接入口5への送出しを行うが、通常の差動では殆ど使用されないか又は特定の場合にのみ使用される。
【0034】
ラジアルピストンポンプRは、送り及び動作範囲を駆動軸12の室11から隔離するハウジング壁10及び例えば取外し可能なハウジング蓋9を持っている。
【0035】
駆動軸12上に、差動ピストンKを駆動する偏心輪13、及び吸入−排出弁装置Aを操作する別の偏心輪14が設けられ、偏心輪14は、駆動軸12の中心軸線38の回りに駆動回転方向14に、偏心輪13に対して約90°だけずれている。図示した実施例では、両方の偏心輪13,14は異なる大きさに設計され、異なる偏心距離で駆動軸12上に設けられている。しかし両方の偏心輪13,14を同じに設計し、同じ偏心距離で設けることも可能である。偏心輪13,14は駆動軸12に固定するように構成するか、又は交換可能にキー止めすることができる。図示しない別の実施例では、駆動軸12の中心軸線38に対する各偏心輪の偏心距離を、例えば交換により、又は互いにねじり可能で選択可能な相対位置に固定可能な2つの偏心スリーブから偏心輪13,14を構成することによって、変化することができる。図1において偏心輪13の中心軸線は37で、偏心輪14の中心軸線は38で示されている。
【0036】
差動ピストンKはピストン棒側に軸部15を持ち、この軸部15は引張り−押圧継手Sを介して直接偏心輪13に結合され、ハウジング壁10に直接又は間接に37の所で直線的に案内され、かつ密封されている。差動ピストンKは、ポンプ室を圧力室36から隔離する密封装置を含んでいる。
【0037】
吸入−排出弁装置Aは、弁体32及び弁座27から成る吸入弁、及び弁体29及び弁座28から成る排出弁を含んでいる。弁座27,28は駆動軸12の中心軸線38に対して半径方向に整列され、かつ同軸的であり、排出弁座28は駆動軸12の方を向き、駆動軸12から離れるように向く吸入弁座27より駆動軸12に近く設けられている。両方の弁に共通な弁制御部材18が付属して、少なくとも1回ハウジング壁10に直接又は間接に直線的に案内されかつ密封され、引張り−押圧継手Sを介して偏心輪14に直接連結され、弁制御部材18の軸部19は、引張り−押圧継手Sから半径方向遊隙をもって排出弁座28を通って吸入弁座27の中まで延びている。密封片29は排出弁と室11との間及び出口6と吸入弁との間を密封する。更に両方の弁座27,28の間に、弁制御部材18用の別の案内装置21が設けられている。弁制御部材18の段付けされた軸部部分上には管22が固定例えばねじ止めされて、排出弁体29の方へ向く第1の肩部23及び吸入弁体32の方へ向く第2の肩部24を形成している。肩部23,24の間の間隔は、弁座27,28に載る時の弁体29,32の間の間隔より小さいので、両方の弁が閉じた場合、例えば各肩部23又は24と隣接する弁体32又は29との間に、0.1〜約0.4mmの遊隙が存在する。吸入弁体32は円板又は皿であって、弱いばね33により心出しされかつ吸入弁座27の方へ押される。弁体29は環状板又は環状皿であって、ばね31により排出弁座28の方へ押される。排出弁体29と弁制御部材18の軸部19との間に、滑り環密封片30を設けることができる。弁体32,29は、弁座27,29と同様に円錐状又は丸められた座面を持つことができる。吸入弁座27はスリーブ体25に形成し、案内装置21、密封片29及び排出弁座28は、別のスリーブ体26に形成することができる。スリーブ体25,26は、ハウジング内でハウジング壁10とハウジング蓋9との間に締付けられている。吸入弁座27の下流でスリーブ体26にある出口が、圧力室36への入口35に通じている。入口35は、スリーブ体26より下にあって排出弁体29を含む室に、排出弁座28の所で接続されている。
【0038】
作用:
駆動軸12が一次駆動源P例えば電動機又は内燃機関により駆動されて、継手Sを介して差動ピストンK及び弁制御部材18を往復駆動する。吸入行程において差動ピストンKは、ピストン棒から遠い方の側を介して液体Fを、開かれる供給弁16を経て吸入する。吸入行程中に吸入弁32,27は閉じられ、排出弁29,28は開かれている。濃縮された液体Fは、ほぼ圧力なしに圧力室36から出口6を通って排出される。差動ピストンKの下死点又は一般にその範囲に達する直前に排出弁29,28が閉じられ、弁の重なりなしにそれから初めて吸入弁27,32が開かれる。送り行程の開始と共に、残留圧力を受けている圧力室6内の濃縮液体Fが、差動ピストンKのピストン棒側に作用して、送り行程において共同作用する。差動ピストンKの上死点又はその範囲に達する直前に吸入弁32,27が再び閉じられ、弁の重なりなしにそれから初めて排出弁29,28が開かれる。
【0039】
好都合なように駆動軸12の周りに複数例えば少なくとも3つ以上の差動ピストンK及び複数の吸入−排出弁装置Aが、星型に規則正しく分布されている。
【0040】
残留圧力を持つ濃縮液体Fによる援助のため、ラジアルピストンポンプRを作動させるために、僅かな一次エネルギしか必要とされないので、例えば建物又は設備の飲料水需要に対して海水を脱塩するための装置Vを、太陽電池により直流電動機を介して自立的に作動させることができる。
【0041】
差動ピストンKのピストン棒から遠い方の側とピストン棒側との面積比が、圧送すべき液体と濃縮液体との量比に合わされて、濃縮液体のエネルギを援助のため最適に利用することができる。差動ピストンKの密封装置における圧力差は比較的小さく、密封範囲20も送り行程中に短時間残留圧力を受けるだけである。ハウジング室1内に油浴を設けることができる。
【0042】
図2はラジアルピストンポンプRの差動ピストンKの吸入行程を示す。圧力室36内の濃縮液体Fは、開かれる排出弁28,29を介して圧力を除かれ、出口6へ押出され、一方入口5においては、閉じられる吸入弁27,32の所に残留圧力が生じる。肩部23は排出弁28,29を開いた状態に保ち、肩部24は吸入弁体32から離れている。入口5における例えば68barの残留圧力において、圧力室36には約1barの圧力しか存在しない。閉じられえた排出弁17の下流には約70barの送り圧力が存在し、開かれる供給弁16における吸入圧力は約1barである。従って差動ピストンKの両側にはほぼ同じ圧力が存在する。
【0043】
図3はラジアルピストンポンプRの送り行程を示し、差動ピストンKは上死点の方へ動く。弁制御部材18は吸入弁32,27を開いており、排出弁28,29は閉じられている。濃縮液体Fは、例えば68barの残留圧力により圧力室36へ流入して、差動ピストンKを援助する。排出弁28,29はこの圧力により閉じた状態に保たれる。圧送すべき液体は、約70barの圧力を受け、供給弁16は閉じられ、排出弁17は開かれている。差動ピストンKの密封装置における圧力差は約2barにすぎない。
【0044】
図4及び5は、例えば軸部15と偏心輪13との間の引張り−押圧継手Sの実施例を示す。図4及び5において、図1の案内装置37はハウジング壁10にある滑りブシュ41のより形成され、この滑りブシュ41は2つの支持殻42により室11へ入り込み、軸部15を偏心輪13の回転方向に横力に抗して支持し、かつ案内している。支持殻42は牽引体44のポケット45の中まではまり、牽引体44は偏心輪13上の滑り軸受ブシュ又は針軸受43上に回転可能に支持され、例えば軸部15及び/又は支持殻42により、偏心輪13上に軸線方向に位置ぎめされている。ポケット45は支持殻42の外側寸法にほぼ等しい内側幅を持っているので、ここに軽い滑りばめが生じる。ポケット45内には軸部15の端部用の押圧面49が形成され、くり抜き部46においてポケット45の側壁には軸部端部用の引張り面50(引張り継手)が形成されている。軸部端部は互いに平行な2つの溝47を含んでいるので、軸部端部には外方で係合する係合部材としての2つの連行体48が形成されて、くり抜き部46は軸部15の端部の外側幅より長く、場合によっては牽引体44の周囲の所まで延びている。
【0045】
牽引体44は1片から構成されるか、又は(図5)2つのはんたい44a及び44bがら組合わされることができる。連行体48とくり抜き部46との確実伝動係合は、軸部15に対する回り止めも行う。場合によっては溝47は1つの周囲溝にまとめられ、両方の連行体48が周方向に丸いフランジを形成するので、軸部15は継手S内で回ることができる。
【0046】
図6の簡単化した実施例では、軸部15の端部に拡張部が一体に形成されて1つ又は2つの連行体48’を形成して、牽引体44のくり抜き部46’にはまっている。図6において横方向に、連行体48’とくり抜き部46’との間及び軸部15とくり抜き部46’への入口との間に充分な遊隙が設けられて、中心軸線37の周りにおける偏心輪13の回転運動の際軸部15の両方向矢印で示す滑り運動を可能にする。
【0047】
図7の実施例では、牽引体44に支持台脚51が形成され、この台脚に摺動ピン52がはまり、この摺動ピン52が軸部15の端部を貫通している。支持台脚51の間には充分な遊隙が設けられて、中心軸線37の周りにおける偏心輪の回転の際、軸部15の滑り案内装置において、図7に両方向矢印で示す軸部15の滑り運動を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】 部分断面で示されるラジアルピストンポンプを持つ、圧送される液体を濃縮する装置を概略図で示し、差動ピストンが上死点の位置を占めている。
【図2】 吸入行程におけるラジアルピストンポンプを示す。
【図3】 送り行程におけるラジアルピストンポンプを示す。
【図4】 図5の切断面IV−IVにおけるラジアルピストンポンプの構造細部の断面を示す。
【図5】 図4の細部の切断面V−Vにおける軸線に沿う断面を示す。
【図6】 別の構造細部を概略的に示す。
【図7】 別の構造細部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動ピストンポンプ(K)により濃縮装置(3)を通して送られる液体(F)を濃縮する装置(V)であって、液体(F)が、濃縮物(F)として残留圧力を受けて、送り行程において少なくとも1つの差動ピストン(K)にこれを援助するように直接作用し、吸入−排出弁装置(A)の直線的に案内される少なくとも1つの弁制御部材(18)を操作する駆動軸(12)によって、差動ピストン(K)が駆動されるものにおいて、差動ピストンポンプがラジアルピストンポンプ(R)であり、駆動軸(12)上に差動ピストン(K)及び弁制御部材(18)用の偏心輪(13,14)が設けられ、差動ピストン(K)及び弁制御部材(18)が、引張り一押圧継手(S)により直接偏心輪(13,14)に連結されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
液体(F)用差動ピストンポンプであって、給排すべき液体(F)用の導入口及び導出口と残留圧力を受ける液体(F)用の入口(5)及び出口(6)を持つハウジング、液体(F)を導入口から導出口へ送るため駆動軸(12)により駆動可能でかつ送り行程において残留圧力によっても直接駆動可能でポンプ室を圧力室(36)から隔離する少なくとも1つの差動ピストン(K)、圧力室(36)用の吸入−排出弁装置(A)、及び直線的に案内されかつ駆動軸(12)により操作される吸入−排出弁装置(A)の弁制御部材(18)を有するものにおいて、差動ピストンポンプがラジアルピストンポンプ(R)であり、駆動軸(12)上に差動ピストン(K)及び弁制御部材(18)用の偏心輪(13,14)が設けられ、差動ピストン(K)及び弁制御部材(18)が、引張り−押圧継手(S)により直接偏心輪(13,14)に連結されていることを特徴とする、差動ピストンポンプ。
【請求項3】
吸入−排出弁装置(A)のためにただ1つの弁制御部材(18)が設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項4】
引張り−押圧継手(S)が、偏心輪(13,14)上に支持される牽引体(44)、及び差動ピストン(K)又は弁制御部材(18)の軸部(15,19)の一端に設けられる係合部材(48)を持ち、係合部材(48)と牽引体(44)との間に、実質的に半径方向に有効な確実伝動係合装置が設けられ、周方向特に偏心輪(13,14)の接線に対して平行に滑り案内装置が設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項5】
滑り案内装置が軸部(15,19)用の回り止めを形成していることを特徴とする、請求項4に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項6】
なるべく軸線方向に組合わされる2つの半体(44a,44b)から成るか又は1片から成る牽引体(44)が、軸部(15,19)のために、外方へ開きかつ滑り案内装置にくり抜かれたポケット(45)を持ち、このポケット(45)の軸線方向に見た内側幅が軸部(15,19)の外側幅より小さいことを特徴とする、請求項4に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項7】
差動ピストン(K)及び/又は弁制御部材(18)の軸部(15,19)がハウジングに固定した摺動案内装置(37)内に設けられ、摺動案内装置(37)が滑りブシュ(41)を持ち、滑りブシュ(41)が、一体に形成されて偏心輪(13,14)の回転方向に互いに整列する支持殻(42)により、滑りばめでポケット(45)の側壁の間に係合していることを特徴とする、請求項6に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項8】
牽引体(44)が、滑り案内装置及び/又は支持殻(42)を介して、偏心輪(13,14)上に軸線方向に位置ぎめされていることを特徴とする、請求項6に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項9】
ポケット(45)の底が、軸部の端部の外側幅より長い軸部端部用押圧面(49)を形成し、軸部端部から間隔をおいて、直径上で対向する平行な2つの溝又は環状溝が軸部に形成され、これらの平行溝又は環状溝がポケット(45)の内側幅にほぼ一致する幅を規定し、軸部端部が、平行溝又は環状溝に隣接して、係合部材(48)として、外方へ突出する連行体を形成し、この連行体がポケット側壁に形成されるくり抜き部(46)に係合していることを特徴とする、請求項6に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項10】
くり抜き部(46)が、偏心輪(13,14)の接線に対して平行に延び、この方向において連行体より長いことを特徴とする、請求項9に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項11】
差動ピストン(K)に付属する吸入−排出弁装置(A)の弁制御部材(18)用偏心輪(14)が、差動ピストン(K)用偏心輪(13)に対して、駆動軸(12)の中心軸線(38)の回りに約90°だけ駆動回転方向(40)に進むようにずらされていることを特徴とする、請求項2に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項12】
3つ以上の差動ピストン(K)が、駆動軸(12)の中心軸線(38)の回りに星型に分布しており、これらの差動ピストン(K)に、共通な偏心輪(13)及び共通な牽引体(44)が付属していることを特徴とする、請求項2に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項13】
差動ピストン(K)の吸入−排出弁装置(A)用弁制御部材(18)が、差動ピストン(K)に対してそれぞれなるべく約90°のずれで、駆動軸(12)の中心軸線(38)の回りに星型に規則正しく分布し、弁制御部材(18)に、共通な偏心輪(14)及び共通な牽引体(44)が付属していることを特徴とする、請求項12に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項14】
吸入−排出弁装置(A)が、ハウジングに固定して吸入弁座(27)及び排出弁座(28)を持ち、これらの弁座(27,28)が駆動軸(12)の中心軸線(38)に関して半径方向に整列しかつ同軸的であり、排出弁座(28)が吸入弁座(27)より駆動軸の近くに位置し、排出弁座(28)が駆動軸(12)の方へ向き、吸入弁座(27)から離れる方向に向いていることを特徴とする、請求項2に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項15】
弁制御部材(18)が、半径方向間隔をとって、排出弁座(28)を通って吸入弁座(27)の中まで延び、駆動軸(12)に対しかつ両方の弁座(27,28)の間で密封され、かつ排出弁座(28)の駆動軸(12)へ向く側に可動に設けられる排出弁体を離す第1の肩部(23)、及び吸入弁座(27)の駆動軸(12)から離れる方向を向く側に可動に設けられる吸入弁体を離す第2の肩部(24)を持っていることを特徴とする、請求項14に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項16】
両方の肩部(23,24)が、弁制御部材(18)上に固定されなるべくねじ止めされる管(22)の端部により形成されていることを特徴とする、請求項15に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項17】
吸入弁体(32)が、ばね(33)により吸入弁座(27)へ押付けられかつなるべくばね(33)により心出しされる円板であり排出弁体(29)が、ばね(31)により排出弁座(28)へ押付けられかつ弁制御部材(18)上に可動に案内される環状板であり、なるべく弁制御部材(18)と環状板との間の滑り密封片(30)を持っていることを特徴とする、請求項15に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項18】
環状板及び円板が円錐状又は球状座面を持ち、かつなるべく弁座(27,28)が円錐状又は球状に構成されていることを特徴とする、請求項17に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項19】
弁制御部材(18)の長手方向に見た両方の肩部(23,24)の間隔が、弁座(27,28)上に載る弁体(29,32)の間隔より小さく、吸入−排出弁装置(A)に付属する差動ピストン(K)の上死点及び下死点において、両方の弁体(29,32)が載り、それぞれの肩部(23,24)に対してそれぞれなるべく約0.1〜0.4mmの遊隙が存在するようにしていることを特徴とする、請求項15に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項20】
弁制御部材(18)が、排出弁座(28)と駆動軸(12)との間及び両方の弁座(27,28)の間で、ハウジングに固定した案内装置(21,37)を通って延びていることを特徴とする、請求項15に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項21】
弁座(27,28)及び一方の案内装置(21)がスリーブ体(25,26)内に設けられ、これらのスリーブ体(25,26)が、ハウジング室内で、駆動軸(12)に隣接するハウジング壁(10)とハウジング蓋(9)との間に締付けられ、1つの入口(5)及び2つの出口(34,6)を持ち、別の入口がハウジング壁(10)に設けられていることを特徴とする、請求項14に記載の差動ピストンポンプ。
【請求項22】
差動ピストン(K)用偏心輪(13)及び弁制御部材(18)用偏心輪(14)が、少なくとも実質的に同じ寸法にされ、同じ偏心距離(e)を持つように構成されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の差動ピストンポンプ。
【請求項23】
偏心輪(13,14)の偏心距離(e)の程度が調節可能であり、かつ/又は偏心輪(13,14)が駆動軸(12)上に交換可能に設けられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の差動ピストンポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2009−504992(P2009−504992A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528359(P2008−528359)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005573
【国際公開番号】WO2007/016988
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(508065433)セネカ・ソシエテ・アノニム (1)
【Fターム(参考)】