説明

液体カートリッジ及び液体供給装置

【課題】液体貯留室内の液体の残量検出精度を向上させ、且つ、目視での液体貯留室内の液体の残量を把握しやすくする。
【解決手段】プリンタは、ホルダにインクカートリッジ6を着脱自在に装着可能となっている。インクカートリッジ6は、インクを貯留するインク貯留室31を有するカートリッジ本体30と、インク貯留室31内のインクの液量の変動に合わせて移動するフロート32と、フロート32が移動する移動経路37を形成する経路形成部材36と、を備えている。移動経路37は、インクカートリッジ6がカートリッジ装着部22に装着される状態において、鉛直方向に対して傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を貯留する液体カートリッジ、及び、この液体カートリッジを備えた液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な技術分野において、液体を貯留する液体カートリッジ内の液体の残量を検出する技術が知られている。例えば、特許文献1には、インクジェット記録装置における液体カートリッジ内のインクの残量を検出する技術が開示されている。特許文献1に記載のインクジェット記録装置のインクタンクは、タンク本体の内部において液体の液量の変動に合わせて移動する蓋と、蓋の上面に連結された棒部材とを有している。そして、タンク本体の上部には、棒部材の上部が摺動自在に挿入され、目盛りが記された筒体が設けられている。このインクジェット記録装置は、タンク本体内の液体の液量が変動するとそれにともない棒部材が鉛直方向に移動するが、このときに棒部材の先端と重なる筒体の目盛りからタンク本体内の液体の残量を検出している。
【0003】
【特許文献1】特開平5−96749号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット記録装置においては、棒部材はタンク本体内の液体の所定量の減少に合わせて鉛直方向に下降しているため、タンク内の液体の減少による液面の下降量と棒部材の移動量が一致している。そのため、タンク本体内の液体の残量を精度よく検出する場合には、目盛りの分解能を高くする必要があった。また、例えば、センサにより棒部材の先端位置を検出して、タンク本体内の液体の残量を検出するような場合であっても、センサの分解能を高くする必要があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、液体貯留室内の液体の液量の変動に合わせたフロートの移動量を大きくした液体カートリッジ及び液体供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体カートリッジは、液体供給装置のカートリッジ装着部に着脱自在に装着される液体カートリッジであって、液体を貯留する液体貯留室を有するカートリッジ本体と、前記液体貯留室内の液体の液量の変動に合わせて移動するフロートと、前記フロートが移動する移動経路を形成する経路形成部材と、を備えており、前記移動経路は、前記液体カートリッジが前記カートリッジ装着部に装着される状態において、鉛直方向に対して傾斜している。
【0007】
本発明の液体カートリッジによると、移動経路は、鉛直方向に対して傾斜しており、仮に鉛直方向に延在している場合に比べて、その長さが長い。このように、移動経路の長さが長くなったことで、フロートの移動量が大きくなる。したがって、例えば、センサにより液体貯留室内の液体の残量を検出している場合には、センサの分解能を上げることなく、液体貯留室内の液体の残量検出精度を向上させることができる。また、フロートの位置を目視で確認したときに、液体貯留室内の液体の残量を把握しやすくなる。
【0008】
また、前記移動経路は、前記液体カートリッジが前記カートリッジ装着部に装着される状態において、水平面との間でなす角度が45度未満であることが好ましい。
【0009】
フロートは、移動経路の傾斜に沿って、鉛直方向に加えて水平方向を含んだ方向に移動する。したがって、フロートの鉛直方向に関する位置に加えて、水平方向に関する位置及び移動経路に沿った方向に関する位置も検出可能となる。このとき、移動経路と水平面との間でなす角度が45度未満であるため、移動経路にあるフロートが鉛直方向に関して所定量移動した場合の液体貯留室内の液体の減少量よりも、移動経路にあるフロートが水平方向に関して所定量移動した場合の液体貯留室内の液体の減少量の方が少ない。また、当然であるが、移動経路にあるフロートが移動経路に沿った方向に関して所定量移動した場合の液体貯留室内の液体の減少量が最も少ない。したがって、フロートの鉛直方向に関する位置よりも、水平方向または移動経路に沿った方向に関する位置を検出した方が、残量検出精度がより向上する。
【0010】
このとき、前記液体貯留室は、前記液体カートリッジが前記カートリッジ装着部に装着される状態において、鉛直方向に沿った辺の長さが水平方向に沿った辺の長さよりも短い扁平形状であることが好ましい。
【0011】
これによると、扁平形状の液体貯留室の液体カートリッジを横向きに装着して使用した方が、縦向きに装着して使用した場合に比べて、鉛直方向に関する液面の所定の下降量に対する液体の減少量が大きくなり、且つ、フロートの鉛直方向に関する移動量が小さくなる。このような場合には、フロートの鉛直方向に関する位置よりも、水平方向または移動経路に沿った方向に関する位置を検出して、残量検出精度を向上させることが効果的である。
【0012】
また、前記移動経路は、前記経路形成部材における水平方向の一方側から他方側へ向かう第1傾斜部と、前記第1傾斜部の前記他方側の端部と接続され、前記一方側に向かう第2傾斜部と、を含んでおり、前記液体貯留室内の液体の液量の減少にともなって、前記フロートが前記第1傾斜部を経て前記第2傾斜部を移動する経路であることが好ましい。
【0013】
これによると、移動経路の始点から終点までを一直線に形成する場合に比べて、移動経路の始点から終点までの長さを長くすることができ、フロートの移動量が大きくなり、残量検出精度が一層向上するとともに、フロートの位置を目視で確認したときに、液体貯留室内の液体の残量を一層把握しやすくなる。
【0014】
本発明の液体供給装置は、液体を供給する液体供給手段と、前記液体供給手段に供給される液体が貯留された液体カートリッジと、前記液体カートリッジが着脱自在に装着されるカートリッジ装着部と、前記液体カートリッジ内の液体の残量を検出する残量検出手段と、を備えており、前記液体カートリッジは、液体を貯留する液体貯留室を有するカートリッジ本体と、前記液体貯留室内の液体の液量の変動に合わせて移動するフロートと、前記フロートが移動する移動経路を形成する経路形成部材と、を有しており、前記移動経路は、前記液体カートリッジが前記カートリッジ装着部に装着される状態において、鉛直方向に対して傾斜しており、前記残量検出手段は、前記移動経路にある前記フロートの位置を検出して、前記液体貯留室内の液体の残量を検出する。
【0015】
本発明の液体供給装置によると、移動経路は、鉛直方向に対して傾斜しており、仮に鉛直方向に延在している場合に比べて、その長さが長い。このように、移動経路の長さが長くなったことで、フロートの移動量が大きくなる。したがって、残量検出手段の分解能を上げることなく、液体貯留室内の液体の残量検出精度を向上させることができる。また、仮に、残量検出手段による残量検出を利用しなくても、フロートの位置を目視で確認したときに、液体貯留室内の液体の残量を把握しやすくなる。
【0016】
また、前記移動経路は、前記液体カートリッジが前記カートリッジ装着部に装着される状態において、水平面との間でなす角度が45度未満であり、前記残量検出手段は、前記移動経路に向けて鉛直方向に沿って光を照射する発光素子と、前記光を受光する受光素子と、を有するフォトセンサであり、前記発光素子から前記移動経路に向けて光を照射し、前記受光素子の受光量から前記移動経路にある前記フロートの水平方向に関する位置を検出して、前記液体貯留室内の液体の残量を検出することが好ましい。
【0017】
フロートは、移動経路の傾斜に沿って、鉛直方向に加えて水平方向を含んだ方向に移動する。したがって、フロートの鉛直方向に関する位置に加えて、水平方向に関する位置及び移動経路に沿った方向に関する位置も検出可能となる。このとき、移動経路と水平面との間でなす角度が45度未満であるため、移動経路にあるフロートが鉛直方向に関して所定量移動した場合の液体貯留室内の液体の減少量よりも、移動経路にあるフロートが水平方向に関して所定量移動した場合の液体貯留室内の液体の減少量の方が少ない。したがって、フロートの鉛直方向に関する位置よりも水平方向に関する位置を検出した方が、残量検出手段による残量検出精度がより向上する。
【0018】
前記残量検出手段は、前記移動経路に向けて前記フロートの移動方向と直交する方向に沿って光を照射する発光素子と、前記光を受光する受光素子と、を有するフォトセンサであり、前記発光素子から前記移動経路に向けて光を照射し、前記受光素子の受光量から前記移動経路にある前記フロートの前記移動方向に関する位置を検出して、前記液体貯留室内の液体の残量を検出してもよい。
【0019】
上述したように、フロートは、移動経路の傾斜に沿って、鉛直方向に加えて水平方向を含んだ方向に移動する。したがって、フロートの鉛直方向に関する位置に加えて、水平方向に関する位置及び移動経路に沿った方向に関する位置も検出可能となる。このとき、移動経路にあるフロートが鉛直方向に関して所定量移動した場合の液体貯留室内の液体の減少量よりも、当然であるが、移動経路にあるフロートが移動方向に沿った方向に関して所定量移動した場合の液体貯留室内の液体の減少量の方が少ない。したがって、フロートの鉛直方向に関する位置よりも移動方向に沿った方向に関する位置を検出した方が、残量検出手段による残量検出精度がより向上する。
【発明の効果】
【0020】
移動経路が鉛直方向に対して傾斜しているため、フロートの移動量が大きくなる。したがって、センサの分解能を上げることなく、液体貯留室内の液体の残量検出精度を向上させることができる。また、フロートの位置を目視で確認したときに、液体貯留室内の液体の残量を把握しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略平面図である。
【図2】カートリッジ装着部とインクカートリッジの概略斜視図である。
【図3】インクカートリッジの斜視図であり、(a)はインクが十分にある状態であり、(b)はインク量がニアエンプティとなった状態である。
【図4】インクカートリッジの装着方向に沿った縦断面図である。
【図5】フロートの検出方向に対する検出位置の誤差について説明する図であり、(a)は、本実施形態に対応しており、発光素子を鉛直方向に向けて照射してフロートを検出している場合であり、(b)は、一例として、発光素子を水平方向に向けて照射してフロートを検出している場合である。
【図6】変形例1におけるインク貯留室内のインクの残量検出精度について説明する図であり、(a)はインクカートリッジの平面図であり、(b)は発光素子を移動経路の延在方向と直交する方向に向けて照射してフロートを検出している場合である。
【図7】変形例2におけるインクカートリッジの平面図である。
【図8】変形例5におけるインクカートリッジの平面図であり、(a)は横向きでカートリッジ装着部に装着されて使用されるインクカートリッジであり、(b)は縦向きでカートリッジ装着部に装着されて使用されるインクカートリッジである。
【図9】変形例6におけるインクカートリッジについて説明する図であり、(a)はインクカートリッジの斜視図であり、(b)はインクカートリッジの装着方向に沿った縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、インクジェットプリンタに装着されて、インクジェットヘッドにインクを供給するインクカートリッジに、本発明を適用したものである。
【0023】
まず、プリンタ1の概略構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略平面図である。図1に示すように、プリンタ1(液体供給装置)は、一方向に沿って往復移動可能に構成されたキャリッジ2と、このキャリッジ2に搭載されたインクジェットヘッド3(液体供給手段)及びサブタンク4と、インクカートリッジ6(液体カートリッジ)を着脱自在に装着可能なホルダ10などを備えている。
【0024】
プリンタ1には、水平な一方向(図1の左右方向:走査方向)に平行に延びるとともに、走査方向と直交する紙送り方向に間隔を空けて配置された2本のガイドフレーム17a、17bが設けられており、これら2本のガイドフレーム17a、17bにキャリッジ2が取り付けられている。そして、キャリッジ2は、2本のガイドフレーム17a、17bによって案内されつつ、キャリッジ駆動機構12によって走査方向に往復駆動される。キャリッジ駆動機構12は、キャリッジ2に連結された無端ベルト18と、無端ベルト18を走行させるキャリッジ駆動モータ19を含んでいる。そして、キャリッジ駆動モータ19によって無端ベルト18が走行駆動されたときに、キャリッジ2が、無端ベルト18の走行にともなって走査方向に往復移動するようになっている。
【0025】
キャリッジ2には、インクジェットヘッド3と4つのサブタンク4が搭載されている。4つのサブタンク4は、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のインクにそれぞれ対応しており、走査方向に並べて配置され、これら4つのサブタンク4の下方にはインクジェットヘッド3が設けられている。各サブタンク4は、インクカートリッジ6から供給されたインクを一時貯留する。また、4つのサブタンク4の一方端部にはチューブジョイント21が一体的に設けられており、4つのサブタンク4は、チューブジョイント21に連結された4本の可撓性のチューブ11をそれぞれ介して、ホルダ10に接続されている。一方、4つのサブタンク4の他方端部は、インクジェットヘッド3の上面に設けられたインク供給口(図示省略)に接続されている。これにより、ホルダ10に装着されたインクカートリッジ6からチューブ11を介して供給されたインクが、サブタンク4で一時貯留され、さらに、サブタンク4内のインクはインクジェットヘッド3へ供給される。
【0026】
インクジェットヘッド3の下面には、図示しない複数のノズルが形成されている。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動しつつ、図示しない搬送機構により紙送り方向(図1の下方)に搬送される記録用紙Pに向けて、サブタンク4から供給されたインクを複数のノズルからそれぞれ噴射する。これにより、記録用紙Pに所望の文字や画像などが記録される。
【0027】
ホルダ10は、走査方向に並んだ4つのカートリッジ装着部22を有しており、この4つのカートリッジ装着部22にブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のインクをそれぞれ貯留する4つのインクカートリッジ6が取り外し自在に装着される。
【0028】
次に、インクカートリッジ6について説明する。なお、4色のインクをそれぞれ貯留する4つのインクカートリッジ6は同じ構成であるため、以下では、それらのうちの1つについて説明する。図2は、カートリッジ装着部とインクカートリッジの概略斜視図である。図3は、インクカートリッジの斜視図であり、(a)はインクが十分にある状態であり、(b)はインク量がニアエンプティとなった状態である。図4は、インクカートリッジの装着方向に沿った縦断面図である。
【0029】
図2〜4に示すように、インクカートリッジ6は、インクを貯留するインク貯留室31(液体貯留室)を有するカートリッジ本体30と、移動経路37が形成された経路形成部材36と、経路形成部材36内に設けられ、移動経路37に沿って移動するインク残量検出用のフロート32とを備えている。
【0030】
カートリッジ本体30は、カートリッジ装着部22に装着される状態において、鉛直方向に沿った辺の長さが水平方向に沿った全ての辺の長さよりも短く、中空の扁平な直方体形状をしており、透光性を有する合成樹脂材料などで形成されている。このカートリッジ本体30内には、インク貯留室31が形成されており、インクが貯留されている。カートリッジ本体30の前壁部33の下端部には、インク貯留室31の下部空間と連通し、このインク貯留室31からインクを導出するためのインク導出孔34が設けられている。前壁部33のインク導出孔34が設けられた部分には、ゴムなどからなる環状のシール部材35が取り付けられている。さらに、前壁部33の上端部には、インク貯留室31の上部空間と連通し、インク貯留室31に大気を導入する大気連通孔39が設けられている。
【0031】
インクカートリッジ6がカートリッジ装着部22に装着され、インクがインクカートリッジ6の外部に供給されているときには、大気連通孔39がインク貯留室31の上端付近に位置しているとともに、インク導出孔34がインク貯留室31の下端付近に位置している。そのため、大気連通孔39によりインク貯留室31の上部空間にエアをスムーズに導入して、インク貯留室31内の下部空間に残留するインクをできるだけ最後まで排出することができる。
【0032】
経路形成部材36は、カートリッジ本体30の前壁部33から突出して配置されており、光透過性を有する合成樹脂材料などで形成されている。経路形成部材36内には、前壁部33と平行であり、鉛直方向に対して傾斜した移動経路37が形成されており、この移動経路37には遮光性を有するフロート32が収容されている。移動経路37は、前壁部33の幅方向に関する一端の上端(図3(a)の左上端部)の始点から幅方向に関する他端の下端(図3(a)の右下端部)の終点まで斜めに延在しており、前壁部33に形成された開口38を介してインク貯留室31と連通している。この移動経路37は、カートリッジ装着部22に装着される状態において、水平面との間でなす角度が45度未満となっており、その始点から終点までの長さは、前壁部33の幅方向の長さ、及び、前壁部33の鉛直方向の長さよりも長くなっている。
【0033】
また、インク貯留室31と移動経路37を連通させる前壁部33の開口38は、経路形成部材36内に収容されたフロート32がインク貯留室31内に移動しないような大きさとなっている。そして、経路形成部材36内に収容されたフロート32は、インク貯留室31内のインクの液量の変動に合わせて、移動経路37に沿って斜めに移動する。
【0034】
図3(a)に示すように、インク貯留室31内に十分なインクがある状態では、フロート32は、移動経路37の始点近傍に位置している。一方、インク貯留室31内のインク残量が減少し、インクの液面が下がった場合には、フロート32は、インクの液量の変動に合わせて移動経路37を終点側に移動する。そして、図3(b)に示すように、インク貯留室31内のインクがある程度少なくなった状態(ニアエンプティ)では、フロート32は、移動経路37の終点近傍に位置している。
【0035】
次に、インクカートリッジ6が装着されるホルダ10について説明する。図1に示すように、ホルダ10は、走査方向に配列されて、4つのインクカートリッジ6が装着される4つのカートリッジ装着部22を有している。なお、4つのカートリッジ装着部22は、同じ構成であるため、以下では、それらのうちの1つについて説明する。
【0036】
図2に示すように、ホルダ10の1つのカートリッジ装着部22は、コの字状をしており、インクカートリッジ6が前壁部33側から水平方向に挿入される。カートリッジ装着部22を形成する前壁部24には、図1に示すチューブ11を介してインクジェットヘッド3と接続されたインク導出路(図示せず)が形成されている。このインク導出路は、カートリッジ装着部22に装着されたインクカートリッジ6のインク導出孔34とシール部材35を介して連通し、インクカートリッジ6のインク貯留室31からインク導出路を介して導入されたインクは、チューブ11によってインクジェットヘッド3へ送られる。
【0037】
また、カートリッジ装着部22の前壁部24には、凹部25が形成されており、インクカートリッジ6が装着されたときに、この凹部25にインクカートリッジ6の経路形成部材36が挿入される。また、カートリッジ装着部22の前壁部24の凹部25には、装着されたインクカートリッジ6の移動経路37に向けて鉛直方向に沿って上方へ光を照射する発光素子26と、移動経路37を挟んで、発光素子26から照射された光を受光する受光素子27とからなるフォトセンサ28、及び、インクカートリッジ6の装着を検知する図示しないセンサが設けられている。インクカートリッジ6がカートリッジ装着部22に装着された際に、凹部25と経路形成部材36が係合し、インクカートリッジ6の装着を検知する。
【0038】
この発光素子26と受光素子27は、移動経路37の終点よりも若干始点側を挟むように配置されており、発光素子26が照射される移動経路37の位置にフロート32が位置するときに、ニアエンプティとなる。フロート32は、発光素子26と受光素子27の間に位置するときに、発光素子26から照射された光を遮断する。
【0039】
次に、インク貯留室31内のインクの残量検出方法について説明する。カートリッジ装着部22に十分なインクがあるインクカートリッジ6が装着されている場合には、インクカートリッジ6のフロート32は、移動経路37の始点近傍に位置している。このとき、発光素子26から照射された光は、インクを透過して、受光素子27によって受光される。一方、カートリッジ装着部22にインクがある程度少なくなったニアエンプティの状態のインクカートリッジ6が装着されている場合には、インクカートリッジ6のフロート32は、移動経路37の発光素子26と受光素子27の間に位置している。このとき、発光素子26から照射された光は、フロート32によって遮断されることになり、受光素子27で受光されない。このように、発光素子26から照射された光を受光素子27が受光するか否かによって、インク貯留室31内のインク残量が少なく、インクカートリッジ6の交換時期が迫っているニアエンプティの状態よりもインク貯留室31内のインク残量が多いか少ないかを検出することができる。
【0040】
次に、インク貯留室31内のインクの残量検出精度について説明する。図5は、フロートの検出方向に対する検出位置の誤差について説明する図であり、(a)は、本実施形態に対応しており、発光素子を鉛直方向に向けて照射してフロートを検出している場合であり、(b)は、一例として、発光素子を水平方向に向けて照射してフロートを検出している場合である。
【0041】
本実施形態においては、図5(a)に示すように、移動経路37を挟んで、発光素子26と受光素子27を鉛直方向に並べて配置しており、フロート32の水平方向に関する移動にともなう受光素子27の受光の有無を検出している。このとき、フロート32の半径を半径r、移動経路37と水平面との間でなす45度未満の角度を角度θとすると、フロート32で発光素子26から照射される光の遮断を開始したときから、インクが消費されてフロート32が斜め下に移動して、受光素子27による光の受光が再開されるまでに、インクの液面は鉛直方向に関して2r・tanθ移動したことになる。
【0042】
一方、仮に、図5(b)に示すように、移動経路37を挟んで、発光素子26と受光素子27を水平方向に並べて配置して、フロート32の鉛直方向に関する移動にともなう受光素子27の受光の有無を検出したとする。このとき、フロート32で発光素子26から照射される光の遮断を開始したときから、インクが消費されてフロート32が斜め下に移動して、受光素子27による光の受光が再開されるまでに、インクの液面は鉛直方向に関して2r移動したことになる。
【0043】
なお、0度<θ<45度のとき、0<tanθ<1であることから、本実施例においては、2r・tanθ<2rである。したがって、移動経路37を挟んで、発光素子26と受光素子27を鉛直方向に並べて配置し、フロート32の水平方向に関する移動にともなう受光素子27の受光の有無を検出すると、フロート32の位置(液面高さ)の検出誤差が小さくなる。
【0044】
また、本実施形態では、移動経路37が鉛直方向に対して傾斜しているため、鉛直方向に延在している場合に比べて、移動経路37の長さが長く、フロート32の移動量が大きくなる。そして、フロート32の鉛直方向に関する位置に加えて、水平方向に関する位置も検出可能である。そのため、インク貯留室31内のインクが所定量減少したときのフロート32の移動量が大きい方向に関する位置(本実施形態では、水平方向に関する位置)を検出することで、フォトセンサ28の分解能を上げることなく、インク貯留室31内のインクの残量検出精度を向上させることができる。また、インク貯留室31内のインクが所定量減少したときのフロート32の移動量が大きくなることで、フロート32の位置を目視で確認したときに、インク貯留室31内のインクの残量を把握しやすくなる。
【0045】
さらに、本実施形態では、インクカートリッジ6が、横向きに装着されて使用されているが、縦向きに装着されて使用される場合に比べて、同じ量のインクが消費されたとしても、鉛直方向に関するインクの液面の降下量が少なく、そのため、フロート32の鉛直方向に関する移動量が小さくなる。このような場合には、フロート32の鉛直方向に関する位置よりも水平方向に関する位置を検出して、残量検出精度を向上させることが効果的である。
【0046】
また、移動経路37は、カートリッジ装着部22に装着される状態において、水平面との間でなす角度が45度未満となっている。そのため、移動経路37にあるフロート32が鉛直方向に関して所定量移動した場合のインク貯留室31内のインクの減少量よりも、移動経路37にあるフロート32が水平方向に関して所定量移動した場合のインク貯留室31内のインクの減少量の方が少ない。したがって、フロート32の鉛直方向に関する位置よりも水平方向に関する位置を検出した方が、残量検出精度が向上する。
【0047】
さらに、本実施形態におけるインクカートリッジ6は、横向きだけではなく、前壁部33のインク導出孔34が下端になるように縦向きにし、縦向きのインクカートリッジ6を装着可能なカートリッジ装着部にも使用可能である。
【0048】
次に、上述した実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。ただし、上述した実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0049】
1]フォトセンサ28は、カートリッジ装着部22に固定的に設けられていたが、図示しない移動機構により、発光素子26と受光素子27との間に移動経路37を挟んだ状態で、移動経路37の始点から終点まで移動経路37に沿った方向に移動可能であってもよい(変形例1)。これにより、発光素子26から照射された光を受光素子27で受光している状態から受光しない状態になった後、再度受光する状態になる位置を検出することで、インク貯留室31内のインクの残量を複数箇所で検出することができる。
【0050】
2]フォトセンサ28の発光素子26は、移動経路37に向かって鉛直方向に光を照射しており、移動経路37を鉛直方向に通過した光を受光素子27により受光していたが、図6(a)に示すように、発光素子26が、移動経路37に向けて移動経路37でのフロート32の移動方向と直交する方向に光を照射し、移動経路37を垂直に通過した光を受光素子27により受光してもよい(変形例2)。
【0051】
このときの、インク貯留室31内のインクの残量検出精度について説明する。本変形例では、図6(b)に示すように、移動経路37を挟んで、発光素子26と受光素子27を移動経路37の延在方向と直交する方向に並べて配置して、発光素子26から照射された光の受光素子27での受光の有無を検出している。このとき、フロート32の半径を半径r、移動経路37と水平面との間でなす角度を角度θとすると、フロート32で発光素子26から照射される光の遮断を開始したときから、インクが消費されてフロート32が移動して、受光素子27による光の受光が再開されるまでに、インクの液面は鉛直方向に関して2r・sinθ移動したことになる。
【0052】
0度<θ<90度においては、0<sinθ<1であるため、2r・sinθ<2rとなり、移動経路37を挟んで、発光素子26と受光素子27を移動経路37の延在方向と直交する方向に並べて配置して、発光素子26から照射された光の受光素子27での受光の有無を検出すると、移動経路37が鉛直方向に平行に形成されている場合に比べて、フォトセンサ28の分解能を上げることなく、フローと32の位置(液面高さ)の検出誤差を小さくすることができる。さらに、0度<θ<45度では、上述した実施形態と比較しても、2r・sinθ<2r・tanθであるため、フォトセンサ28の分解能を上げることなく、フロート32の位置(液面高さ)の検出誤差を小さくすることができ、インク貯留室31内のインクの残量検出精度をさらに向上させることができる。なお、変形例2においては、0度<θ<90度であれば、いかなる角度であってもよい。
【0053】
3]上述した変形例2のように、フォトセンサ28の発光素子26が、移動経路37に向かって移動経路37でのフロート32の移動方向と直交する方向に沿って光を照射し、移動経路37を垂直に通過した光を受光素子27により受光する構成において、上述した変形例1のように、フォトセンサ28が、図示しない移動機構により、発光素子26と受光素子27との間に移動経路37を挟んだ状態で、移動経路37の始点から終点まで移動経路37に沿った方向に移動可能であってもよい(変形例3)。
【0054】
このときのインク貯留室31内のインクの残量検出精度について以下説明する。図7に示すように、インク貯留室31内に十分なインクがある状態におけるフロート32の位置(図7の2点鎖線の位置)から、インク貯留室31内のインク残量が少なく、ニアエンプティの状態におけるフロート32の位置(図7の実線の位置)まで、フロート32は、鉛直方向に関して長さX1だけ移動し、また、水平方向に関して長さX2だけ移動し、移動経路37に沿った方向に関して長さX3だけ移動している。そして、移動経路37は、カートリッジ装着部22に装着される状態において、水平面との間でなす角度が角度θとなっている。したがって、0度<θ<45度においては、長さX3>長さX2>長さX1となっており、45度<θ<90度においては、長さX3>長さX1>長さX2となっている。図7は、0度<θ<45度の場合を図示している。インク貯留室31内のインクが所定量減少したときの、フロート32の移動量は、鉛直方向及び水平方向と比較して移動経路37に沿った方向について最も大きい。これにより、フロート32の移動経路37に沿った位置を検出することで、フォトセンサ28の分解能を上げることなく、インク貯留室31内のインクの残量検出精度を向上させることができる。
【0055】
4]上述した変形例1、変形例3では、1つのフォトセンサ28が、図示しない移動機構により移動して、移動経路37のフロート32の位置を連続的に検出可能であったが、移動経路37に沿って、複数のフォトセンサ28が、離散して配置されていてもよい(変形例4)。
【0056】
5]フロート32が移動する移動経路37は、一直線に形成されずに、折り返されて形成されてもよい(変形例5)。例えば、図8(a)に示すように、移動経路137は、経路形成部材136における幅方向の一方側から他方側(図8(a)の左方側から右方側)へ向かう第1傾斜部138と、第1傾斜部138の他方側の端部と接続され、一方側に向かう第2傾斜部139と有していてもよい。そして、この移動経路137は、インク貯留室31内のインクの液量の減少にともなって、フロート32が第1傾斜部138を経て第2傾斜部139を移動する経路となっている。
【0057】
また、図8(b)に示すように、移動経路147は、経路形成部材146における第1傾斜部148と第2傾斜部149が、鉛直方向に交互に並んで形成されてもよい。どちらの変形例についても、移動経路137、147の始点から終点までの延在する長さは、始点と終点を結ぶ直線距離よりも長くなっている。これによると、移動経路を一直線に形成する場合に比べて、移動経路の長さを長くすることができ、フロート32の移動量が大きくなり、残量検出精度が一層向上するとともに、フロート32の位置を目視で確認したときに、インク貯留室131内のインクの残量を一層把握しやすくなる。
【0058】
さらに、経路形成部材136(146)が形成する移動経路137(147)が、4つのインクカートリッジ6において互いに異なるようにインクカートリッジ6から突出して形成されており、カートリッジ装着部22の凹部25には、インクカートリッジ6がカートリッジ装着部22に装着され凹部25と経路形成部材136(146)が係合したときに、インクカートリッジ6の装着を検知する図示しないセンサが形成されていてもよい。これによれば、4つのインクカートリッジ6における経路形成部材136(146)が互いに異なるため、凹部25と経路形成部材136(146)が係合可能なインクカートリッジ6のみを装着可能であり、インクカートリッジ6の誤装着を防止することができる。すなわち、経路形成部材136(146)が、移動経路を一直線に形成する場合に比べて、移動経路の長さを長くするとともに、インクカートリッジ6の誤装着を防止する機能も果たす。
【0059】
6]フロート32が移動する移動経路37を形成する経路形成部材36は、インク貯留室31を構成するカートリッジ本体30の外側に設けられずに、カートリッジ本体30内に設けられてもよい(変形例6)。例えば、図9(a)、(b)に示すように、カートリッジ本体230内に鉛直方向に対して傾斜した移動経路237を形成する経路形成部材236が設けられてもよい。
【0060】
7]上述した実施形態や変形例2のように、移動経路37のニアエンプティを示す1点を通過するフロート32のみを検出する構成のときには、インク貯留室31内のインクが十分ある状態からニアエンプティとなる状態までフロート32が全範囲移動するような移動経路ではなく、その検出位置を含む短い移動経路を形成してもよい(変形例7)。
【0061】
8]以上説明した実施形態及びその変形形態において、経路形成部材36は、インクカートリッジ6のカートリッジ装着部22への装着方向側に形成されていたが、装着方向と反対側に形成されていてもよい。これによれば、カートリッジ装着部22へインクカートリッジ6を装着しても、ユーザが経路形成部材36を目視で容易に確認できるため、インクカートリッジ6内のインクの残量を確認しやすい。さらに、インクカートリッジ6をカートリッジ装着部22に装着する際に、経路形成部材36を把持することで、装着動作が容易になる。
【0062】
9]以上説明した実施形態及びその変形形態において、インクカートリッジ6のカートリッジ装着部22への装着方向は、水平方向に限られず、例えば、鉛直方向に装着される場合にもおいても本発明を適用可能である。
【0063】
以上説明した実施形態及びその変更形態は、プリンタに装着されて、インクジェットヘッドにインクを供給するインクカートリッジに本発明を適用したが、本発明の適用対象はこのようなインクカートリッジに限られず、用途や貯留される液体の種類に関わらず、様々な技術分野で用いられる装置に対して液体を供給する液体カートリッジに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 プリンタ
3 インクジェットヘッド
6 インクカートリッジ
22 カートリッジ装着部
30 カートリッジ本体
31 インク貯留室
32 フロート
36 経路形成部材
37 移動経路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給装置のカートリッジ装着部に着脱自在に装着される液体カートリッジであって、
液体を貯留する液体貯留室を有するカートリッジ本体と、
前記液体貯留室内の液体の液量の変動に合わせて移動するフロートと、
前記フロートが移動する移動経路を形成する経路形成部材と、を備えており、
前記移動経路は、前記液体カートリッジが前記カートリッジ装着部に装着される状態において、鉛直方向に対して傾斜していることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項2】
前記移動経路は、前記液体カートリッジが前記カートリッジ装着部に装着される状態において、水平面との間でなす角度が45度未満であることを特徴とする請求項1に記載の液体カートリッジ。
【請求項3】
前記液体貯留室は、前記液体カートリッジが前記カートリッジ装着部に装着される状態において、鉛直方向に沿った辺の長さが水平方向に沿った辺の長さよりも短い扁平形状であることを特徴とする請求項2に記載の液体カートリッジ。
【請求項4】
前記移動経路は、
前記経路形成部材における水平方向の一方側から他方側へ向かう第1傾斜部と、前記第1傾斜部の前記他方側の端部と接続され、前記一方側に向かう第2傾斜部と、を含んでおり、
前記液体貯留室内の液体の液量の減少にともなって、前記フロートが前記第1傾斜部を経て前記第2傾斜部を移動する経路であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体カートリッジ。
【請求項5】
液体を供給する液体供給手段と、
前記液体供給手段に供給される液体が貯留された液体カートリッジと、
前記液体カートリッジが着脱自在に装着されるカートリッジ装着部と、
前記液体カートリッジ内の液体の残量を検出する残量検出手段と、を備えており、
前記液体カートリッジは、液体を貯留する液体貯留室を有するカートリッジ本体と、前記液体貯留室内の液体の液量の変動に合わせて移動するフロートと、前記フロートが移動する移動経路を形成する経路形成部材と、を有しており、
前記移動経路は、前記液体カートリッジが前記カートリッジ装着部に装着される状態において、鉛直方向に対して傾斜しており、
前記残量検出手段は、前記移動経路にある前記フロートの位置を検出して、前記液体貯留室内の液体の残量を検出することを特徴とする液体供給装置。
【請求項6】
前記移動経路は、前記液体カートリッジが前記カートリッジ装着部に装着される状態において、水平面との間でなす角度が45度未満であり、
前記残量検出手段は、
前記移動経路に向けて鉛直方向に沿って光を照射する発光素子と、前記光を受光する受光素子と、を有するフォトセンサであり、
前記発光素子から前記移動経路に向けて光を照射し、前記受光素子の受光量から前記移動経路にある前記フロートの水平方向に関する位置を検出して、前記液体貯留室内の液体の残量を検出することを特徴とする請求項5に記載の液体供給装置。
【請求項7】
前記残量検出手段は、
前記移動経路に向けて前記フロートの移動方向と直交する方向に沿って光を照射する発光素子と、前記光を受光する受光素子と、を有するフォトセンサであり、
前記発光素子から前記移動経路に向けて光を照射し、前記受光素子の受光量から前記移動経路にある前記フロートの前記移動方向に関する位置を検出して、前記液体貯留室内の液体の残量を検出することを特徴とする請求項5に記載の液体供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−30485(P2012−30485A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172041(P2010−172041)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】