説明

液体タンクおよびこれを用いる画像形成装置

【課題】 液体タンク自体の有無と液体タンク内の液体の有無とを光学的に検出する場合、液体タンク自体の有無を検出するための光学素子と、液体タンク内の液体の有無を検出するための光学素子とを液体タンクに組み込む必要があった。
【解決手段】 本発明によるインクタンク10は、インクが収容される筺体25と、この筺体25に組み込まれて当該筺体25の一部を構成する光透過性の窓部材22と、筺体25内に臨むように窓部材22に形成され、この窓部材22に入射する測定光を反射して当該窓部材22から筺体25の外に出射させる光反射面37,38と、この光反射面37,38か、または筺体25の外に臨む窓部材22の表面に設けられた光反射量制御部39,40とを具えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドに供給される液体を貯溜する液体タンクならびにこの液体タンクに貯溜された液体の有無および液体タンク自体の有無を検出し得る画像形成装置に関する。
【0002】
なお、本明細書において記述される「プリント」とは、文字や図形など有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広くプリント媒体上に画像,模様,パターンなどを形成したり、あるいはエッチングなどのようなプリント媒体の加工を行う場合も包含する。
【0003】
また「プリント媒体」とは、一般的なプリント装置で用いられる紙片のみならず、布帛,樹脂フィルム,金属板,ガラス,セラミックス,木材,皮革などの液体を受容可能なものであり、シート状物体以外の三次元立体、例えば球体や円筒体なども包含する。
【0004】
さらに「液体」とは、上記「プリント」の定義と同様広く解釈されるべきもので、プリント媒体上に付与されることによって、画像,模様,パターンなどの形成,エッチングなどのプリント媒体の加工,あるいはインクの処理、例えばプリント媒体に付与されるインク中の色材の凝固や不溶化に供され得る液体を指し、プリントに関して用いられるあらゆる液体を包含する。
【背景技術】
【0005】
液体吐出ヘッドに形成された吐出口から液体を吐出するための吐出エネルギー発生手段として、ピエゾ素子などの電気機械変換素子を用いたものや、液体を加熱して沸騰させる発熱抵抗体を有する電気熱変換素子を用い、プリント媒体に液滴を吐出して所望の画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置が知られている。この種の画像形成装置においては、液体吐出ヘッド、つまりインクジェットヘッドに供給すべきインクを貯溜したインクタンクが交換可能に組み込まれており、画像形成に伴うインクの消費に伴ってインクタンクの交換やインクタンクへのインクの補充を行う必要がある。このため、この種のインクジェットプリンタには、インクタンク内のインク残量を検出するシステムが組み込まれ、インクタンク内のインクの残量が僅少となった場合、使用者に対してインクタンクの交換を促したり、必要に応じてインクジェットプリンタのプリント動作を一時的に中断させるようにしている。
【0006】
従来、インクタンク内のインクの残量を検出する方法としては、光の反射を利用した光学的な方法が一般的であり、例えば特許文献1にあるように、インクタンクに形成されたインク室内に光反射板を設けてインクの有無を検知するようにしたものや、特許文献2または特許文献3にあるように、光反射部材を複数設けてインクタンクの有無およびインクタンク内のインク残量を検知するようにしたものが知られている。また、特許文献4には1つのフォトセンサによってインクタンクの有無とインクの有無とを検出可能なインクジェットプリンタが開示されている。さらに、光学的に測定したデータによってインクの残量が僅少か否かを判断するようにした技術が特許文献5に開示されている。
【0007】
このような従来のインクタンクの一例を図6に示し、その底部の断面構造を図7に示す。ポリプロピレンなどの光透過性の材料にて成形されたインクタンク1の底面には、インクタンク1内に貯溜されたインク残量を検出するためのプリズム2と、インクタンク1の有無を検出するための凹反射面3とが隣接して設けられている。図示しない発光素子と受光素子とを有する光検出ユニット4は、これらプリズム2と凹反射面3とに対向するように、図示しないインクジェットプリンタのシャシー側に固定され、発光素子および受光素子がインクタンク1の長手方向に対して直交する方向(図7の紙面に対して垂直な方向)に並んで配置されている。
【0008】
表面にアルミニウムなどの金属薄膜を蒸着した凹反射面3は楕円球面の一部にて形成されており、このインクタンク1の凹反射面3をインクジェットヘッドの走査移動機構などを利用して光検出ユニット4の直上に移動させた状態においては、発光素子と受光素子とが楕円球面の2つの焦点に位置するようになっており、発光素子から出射した光が凹反射面3にて反射して受光素子に入射し、これによってインクタンク1の有無を確認することができる。また、インクタンク1のプリズム2を光検出ユニット4の直上に移動させた状態においては、インクタンク1内にインクが存在しない場合、発光素子から出射した光がプリズム2にて全反射して受光素子に入射するが、プリズム2がインクタンク1内のインクで覆われている場合、発光素子からプリズム2に入射した光がプリズム2を透過してインクタンク1内のインク内へ進行し、受光素子側へは反射しないので、これによってインクタンク1内のインクの有無を判定することができる。
【0009】
【特許文献1】特開平8−183183号公報
【特許文献2】特開平9−174877号公報
【特許文献3】特開平10−323993号公報
【特許文献4】特開平9−29989号公報
【特許文献5】特開2001−328273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図7に示した従来の検出システムにおいては、インクタンク1内のインクの有無を検出するための光学素子としてプリズム2をインクタンク1に設け、またインクタンク1自体の有無を検出するための光学素子として凹反射面3をインクタンク1に形成している。このため、1つの光検出ユニット4を用いてインクタンク1自体の有無やインクの有無を検出する場合には、光検出ユニット4に対してインクタンク1を少なくとも2回相対移動させなければならず、そのための位置決め機構なども必要となる。また、プリズム2と凹反射面3とを光検出ユニット4との相対移動方向に沿ってインクタンク1に並べて配置する必要があるため、小容量の小さなインクタンク1を企図した場合には、これらの光学素子自体の寸法も小さくしなければならず、これら光学素子と光検出ユニット4との相対位置をさらに厳密化させる必要が生ずる。この結果、これらの寸法精度や組み付け位置精度などの厳密化と相俟って、インクジェットプリンタの製造コストを押し上げてしまう問題点があった。
【0011】
このような問題点に関しては、使用する液体の多種類化および画像形成装置の小形化の要求と相俟って早期の解決が望まれている。
【0012】
本発明の目的は、複数の光学素子を組み込まずとも液体タンク自体の有無と液体タンク内の液体の有無とを検出可能な簡便な構成の液体タンクと、この液体タンクが搭載される画像形成装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の形態は、液体が収容される筺体と、この筺体に組み込まれて当該筺体の一部を構成する光透過性の窓部材と、前記筺体内に臨むように前記窓部材に形成され、この窓部材に入射する測定光を反射して当該窓部材から前記筺体の外に出射させる光反射面と、この光反射面か、または前記筺体の外に臨む前記窓部材の表面に設けられた光反射量制御部とを具えたことを特徴とする液体タンクにある。
【0014】
本発明による液体タンクにおいて、光反射量制御部が光反射面の一部か、または筺体の外に臨む窓部材の表面の一部に配されて測定光をほぼ100%反射するものであってよい。この場合、光反射量制御部が光反射面に分散状態で複数配されていることが好ましい。
【0015】
本発明において、光反射量制御部が光反射面に設けられている場合、窓部材から入射してその光反射面に達した光は、光反射面が液体で覆われている状態ではその一部が光反射面から液体内に進行し、残りが光反射面にて反射し、窓部材の外に導かれる。また、光反射量制御部に入射した光も正反射してその大部分が窓部材の外に導かれる。これに対し、光反射面が液体で覆われていない状態では、光反射面と液体タンク内の空隙との界面にて全反射が起こり、また光反射量制御部に入射した光も正反射して入射光のほぼ全部が窓部材の外に導かれる。
【0016】
一方、光反射量制御部が筺体の外に臨む窓部材の表面の一部に配されている場合、光反射量制御部に入射する光は、そのまま正反射して反射光となる。また、窓部材から入射してその光反射面に達した光は、光反射面が液体で覆われている状態ではその一部が光反射面から液体内に進行し、残りがこの光反射面にて反射し、窓部材の外に導かれる。これに対し、光反射面が液体で覆われていない状態では、光反射面と液体タンク内の空隙との界面にて全反射が起こり、入射光のほぼ全部が窓部材の外に導かれる。
【0017】
光反射量制御部が光反射面の全域に亙って形成される光透過性の薄膜であってよい。この場合、光透過性の薄膜を構成する材料が窓部材を構成する材料の測定光に対する屈折率とほぼ等しいか、あるいはそれよりも小さな屈折率を有することが好ましい。
【0018】
本発明において、窓部材から入射してその光反射面に達した光は、光反射面が液体で覆われている状態ではその一部が光反射面から光反射量制御部を通過して液体内に進行し、残りが光反射面および/または光反射量制御部にて反射し、窓部材の外に導かれる。これに対し、光反射面が液体で覆われていない状態では、光反射量制御部と液体タンク内の空隙との界面にて全反射が起こり、入射光のほぼ全部が窓部材の外に導かれる。
【0019】
窓部材が少なくとも2つの光反射面を有するプリズム体であってよい。
【0020】
本発明の第2の形態は、液体吐出ヘッドから液体を吐出してプリント媒体に画像を形成するための画像形成装置であって、液体吐出ヘッドに供給される液体を貯溜する本発明の第1の形態による液体タンクの搭載部と、この搭載部に搭載された前記液体タンクの窓部材に向けて測定光を照射する測定光源と、この測定光源からの反射光を検出する光検出器と、この光検出器による検出光量に応じて液体タンクの有無および液体タンク内の液体の有無を判定する判定手段とを具えたことを特徴とするものである。
【0021】
本発明においては、測定光源からの測定光を液体タンクの窓部材に向けて照射し、その反射光を光検出器によって検出し、検出される反射光量に応じて液体タンクの有無と液体タンク中の液体の有無とが判定手段によって判定される。この判定手段は、最少光量の場合に液体タンクが存在しないと判断し、最大光量の場合に液体タンク中に液体が存在しないと判断し、最少光量と最大光量との間の中間の光量の場合に液体タンク中に液体があると判断する。
【0022】
本発明にかかる画像形成装置の形態としては、コンピュータや光ディスク装置などの情報処理機器の出力端末として用いられるものの他、リーダなどと組合せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置や捺染装置、あるいはエッチング装置の形態を採るものなどであっても良く、プリント媒体としては、シート状あるいは長尺の紙や布帛、あるいは板状をなす木材や皮革,石材,樹脂,ガラス,金属などの他に、3次元立体構造物などを挙げることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の液体タンクによると、液体が収容される筺体に組み込まれてこの筺体の一部を構成する光透過性の窓部材と、筺体内に臨むように窓部材に形成され、この窓部材に入射する測定光を反射して当該窓部材から筺体の外に出射させる光反射面と、この光反射面か、または筺体の外に臨む窓部材の表面に設けられた光反射量制御部とを具えているので、液体タンクが存在しない場合に最少となる検出光量と、液体タンク内に液体が存在しない場合に最大となる検出光量と、液体タンク内に液体が存在する場合にこれら最少および最大の検出光量の中間となる検出光量とを明確に分けることができ、単一の光学素子を組み込んだだけでも液体タンクの有無と液体タンク中の液体の有無とを確実に判定することができる。
【0024】
光反射量制御部が光反射面の一部か、または筺体の外に臨む窓部材の表面の一部に配されて測定光をほぼ100%反射する場合、特に光反射量制御部が光反射面に分散状態で複数配されている場合、光反射面に対する光反射量制御部の割合を変更することによって、液体タンク中に液体が存在する際に窓部材から出射する反射光の割合を容易に調整することができる。
【0025】
光反射量制御部が光反射面の全域に亙って形成される光透過性の薄膜の場合、特に光透過性の薄膜を構成する材料が窓部材を構成する材料の測定光に対する屈折率とほぼ等しいか、あるいはそれよりも小さな屈折率を有する場合、この薄膜の厚みを変更することによって液体タンク中に液体が存在する際に光反射量制御部を透過する測定光の割合(透過率/反射率)を容易に調整することができる。
【0026】
窓部材が少なくとも2つの光反射面を有するプリズム体である場合、液体タンク中に液体が存在しないことを測定光の全反射を利用して検出することができる。
【0027】
本発明の画像形成装置によると、本発明による液体タンクの搭載部と、この搭載部に搭載された液体タンクの窓部材に向けて測定光を照射する測定光源と、この測定光源からの反射光を検出する光検出器と、この光検出器による検出光量に応じて液体タンクの有無および液体タンク内の液体の有無を判定する判定手段とを具えているので、液体タンクの有無と液体タンク中の液体の有無とを確実に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明による画像形成装置をシリアルスキャンタイプのインクジェットプリンタに応用した実施形態について、図1〜図5を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限らず、これらをさらに組み合わせたり、特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が可能であり、従って本発明の精神に帰属する他の技術にも当然応用することができる。
【0029】
本実施形態の外観を図1に示し、そのインクタンクの断面構造を図2に示し、その窓部材の部分の抽出拡大断面構造を図3に示す。すなわち、本実施形態におけるインクジェットプリンタ10は、図示しないインクジェットヘッドに形成された吐出口からインク滴を吐出させ、このインク滴を図示しない紙などのプリント媒体の所定個所に正確に付着させることにより、プリント媒体に所望の画像を形成するものである。
【0030】
インクジェットヘッドは、このインクジェットヘッドに供給するインクを収容するインクタンク11に対して分離可能に連結され、図1中、下向きにインク滴を吐出する姿勢でインクタンク11と共にキャリッジ12に着脱自在に搭載される。キャリッジ12は、このインクジェットプリンタ10のフレーム13に固定された走査案内軸14に対して摺動自在に支持されている。また、キャリッジ12には、キャリッジ駆動モータ15の回転により駆動される歯付きベルトの両端部が連結され、キャリッジ駆動モータ15を正回転および逆回転させることにより、キャリッジ12は走査案内軸14に沿って走査移動する。このキャリッジ12を走査移動させながらインクジェットヘッドからインク滴を吐出させることでプリント媒体に対するプリントが行われる。
【0031】
キャリッジ12の走査移動領域の一端にはホームポジションが設定され、このホームポジションにキャリッジ12が位置している状態において、図示しないインクジェットヘッドの吐出口が開口する吐出口面と対向する部分には、インクジェットヘッドの吐出口からのインクの吐出状態を良好に保つためのヘッド回復機構16が設けられている。このヘッド回復機構16は、インクジェットヘッドの吐出口面を覆うキャップ部材17と、インクジェットヘッドの吐出口面を払拭する払拭部材18と、インクジェットヘッドの吐出口からキャップ部材17を介してインクジェットヘッド内のインクを吸引するための図示しない吸引ポンプなどを有する。
【0032】
このヘッド回復機構16に隣接して光検出ユニット19が配置されている。この光検出ユニット19は、約300nmの波長の測定光を出射するLEDなどを用いた発光素子20と、この発光素子20からの反射光を受光するためのフォトトランジスタなどを用いた受光素子21とを有するが、発光素子20および受光素子21を1つの光検出ユニット19として設ける必要はなく、別々に配設することも可能である。光検出ユニット19には図示しない判定手段が接続し、この判定手段は受光素子21の受光量に応じてキャリッジ12にインクタンク11が搭載されているか否か、キャリッジ12に搭載されたインクタンク11内にインクがあるか否かを判定する。光検出ユニット19は、キャリッジ12がその真上に移動してきた時、発光素子20がキャリッジ12に搭載されているインクタンク11の後述する窓部材22に対して光を照射するようになっている。
【0033】
本実施形態におけるインクタンク11は、本体23と蓋24とからなる筺体25を有し、この筺体25内におよそ1.3程度の屈折率を一般的に有するインクが収容される。本体23は、光透過性の部材、具体的には屈折率がおよそ1.5の光学的に透明なポリプロピレンにて形成されている。本体23の内部は、2つの空間に仕切る仕切り壁26によって仕切られ、この仕切り壁26の下端に形成された連通部27を介して2つの空間が連通状態となっている。2つの空間のうちの一方は、インクを収容するインク収容室28であり、他方は、毛細管力を利用してインクを吸収保持するインク保持部材29が収納された負圧発生室30である。この負圧発生室30に臨む本体23には、インクジェットヘッドにインクを供給するためのインク供給ポート31が設けられ、さらにこのインクタンク11内に貯溜されたインクの消費に伴って外部からインクタンク11内へ大気を導入するための大気連通路32が形成されている。負圧発生室30に面する仕切り壁26の表面には、負圧発生室30からインク収容室28への大気の導入を促進するため、連通部27から上向きに延在する調圧溝33が形成されている。また、負圧発生室30に臨む大気連通路32の開口端の周囲は、蓋24の内側から下方に延在するリブ34によって、インク保持部材29が存在しないバッファ部35が形成されている。
【0034】
従って、インクジェットヘッドからインクの吐出に伴ってインク保持部材29に保持された負圧発生室30内のインクが消費され、その液面の上端、つまり気液界面36が調圧溝33の上端に達すると、これ以降に大気連通路32から負圧発生室30内に導入される空気は、調圧溝33を介して連通部27からインク収容室28に吸い込まれるようになっている。このようにしてインク収容室28に大気が導入されることにより、インク収容室28内のインクが連通部27を介して負圧発生室30のインク保持部材29に充填される。つまり、インクジェットヘッドによるインクの消費に伴って負圧発生室30内のインクがインクジェットヘッド側に供給されても、その供給量に見合う分のインクがインク収容室28から負圧発生室30に充填され、負圧発生室30内での気液界面36がほぼ一定の高さに維持される結果、インクジェットヘッドに対するインクタンク11側の負圧がほぼ一定に保たれ、インクジェットヘッドに対する安定したインク供給が可能となる。
【0035】
インク収容室28の底部には本体23と一体に窓部材22が形成されており、本実施形態における窓部材22は一対の光反射面37,38のなす角を90度に設定した直角プリズム形状を有する。この窓部材22の一対の光反射面37,38の大きさは、上述した光検出ユニット19の発光素子20と受光素子21との間隔に応じて適切に設定されている。具体的には、窓部材22が光検出ユニット19の直上に位置した時、光検出ユニット19の発光素子20の光軸が一方の光反射面37に対して45度傾斜した状態でその中央部を通ると共に受光素子21の光軸が他方の光反射面38に対して45度傾斜した状態でその中央部を通り、発光素子20からの測定光が窓部材22に入射して一対の光反射面37,38にて全反射し、最終的に窓部材22から出射する反射光が受光素子21に入射するように設定される。
【0036】
なお、インクタンク11はキャリッジ12に搭載された状態となっているため、窓部材22と対向するキャリッジ12の部分には、発光素子20からの測定光およびその反射光を通過させるための図示しない開口部が形成されている。
【0037】
これら一対の光反射面37,38には本発明の光反射量制御部としての銀薄膜39がその全域に亙って形成されており、本実施形態における銀薄膜39は半透明鏡としての機能を有する。この銀薄膜39の膜厚を適切な値に設定することにより、この銀薄膜39および光反射面37,38がインクで覆われている場合に、ここで反射する測定光の割合を銀薄膜39が全くない場合よりも高めることができるようになっている。
【0038】
従って、インクタンク11がキャリッジ12に搭載されていない状態では、光検出ユニット19の発光素子20から出射した測定光はそのまま直進し、インクジェットプリンタ10内で散乱して受光素子21には返ってこない。このときの受光素子21が受け取る光の強度をAとする。この光強度Aは基本的にはゼロに近いが、インクジェットプリンタ10内での散乱光や外部からの迷光などによって僅かなバックグラウンド光量を有する。
【0039】
一方、インク収容室28内のインクを空にしたインクタンク11がキャリッジ12に搭載されている場合、発光素子20から出射した測定光は図3中の矢印で示すようにインクタンク11の窓部材22に入射して一方の光反射面37に到達し、その一部が表面反射によって他方の光反射面38側へと反射し、残りが銀薄膜39内に入射するが、銀薄膜39とインク収容室28との空気界面にて全反射を起こす。一方の光反射面37から反射した反射光に対し、同様な現象が他方の光反射面38でも起こり、最終的に窓部材22に入射した測定光のほぼすべてが反射光となって窓部材22から受光素子21へと導かれる。このときの受光素子21が受け取る光の強度をBとする。この光強度Bは受光素子21が受ける最大光量を基本的に示す。
【0040】
これに対し、光反射面37,38を覆う程度以上のインクをインク収容室28に収容したインクタンク11がキャリッジ12に搭載されている場合、発光素子20から出射した測定光はインクタンク11の窓部材22に入射して一方の光反射面37に到達し、その一部が銀薄膜39との界面反射によって他方の光反射面38側へと反射し、残りが銀薄膜39内に入射してインク収容室28内のインクとの界面にて一部が反射し、残りが銀薄膜39を通過してインク収容室28へと進む。一方の光反射面37から反射した反射光に対し、同様な現象が他方の光反射面38でも起こり、この結果、窓部材22に入射した測定光の一部が反射光となって窓部材22から受光素子21へと導かれる。このときの受光素子21が受け取る光の強度をCとする。この光強度Cは上述した光強度Aよりも大きく、光強度Bよりも小さい。
【0041】
判定手段は、受光素子21が受光する反射光の強度に基づき、インクタンク11の有無とインクタンク11がキャリッジ12に搭載されている場合のインクタンク11内のインクの有無とを判定する。判定手段による誤判定を回避すべく、光強度A,B,Cを明確に区別するため、銀薄膜39が入射光の一部を通過すると共に残りを反射する半透明鏡として具合よく機能する必要がある。ここで、銀薄膜39に対する入射光量をI,透過光量をO,光反射量制御部を構成する材料(本実施形態では銀)固有の吸光係数をkとすると、ランバートの法則から log(O/I)=−k・tとなり、O=I・10-k・tの関係から透過光量Oは銀薄膜39の膜厚tが厚くなるに連れて次第に減少することが分かる。
【0042】
従って、光反射量制御部の構成材料や、発光素子20の光量,受光素子21の感度,発光素子20から光反射面37,38を介して受光素子21に達する光路長などに基づき、光反射量制御部の膜厚tを適切に設定することが必要である。この場合、2つの光反射面37,38の何れか一方に形成される銀薄膜39の膜厚tを充分に厚く設定し、ここに入射する光をほぼ100%反射させるようにしてもよく、光反射面37,38の少なくとも一方が半透明鏡を構成していさえすればよい。
【0043】
光反射量制御部として金属ではなく、フッ化マグネシウムなどの誘電体を使用する場合には、光の干渉を利用して半透明鏡を形成するため、複数の誘電体の薄膜を積層してこれらの屈折率,積層薄膜数,各膜厚などを適宜設定する必要がある。なお、銀薄膜39がインクと化学的に反応する可能性がある場合には、インクに対して耐蝕性のある保護膜を銀薄膜39に重ねてさらに被覆することが有効であるが、この保護膜による測定光の影響を加味する必要があることは言うまでもない。
【0044】
上述した実施形態では、窓部材22を本体23と一体に形成したが、窓部材22のみ光透過性を有していれば良いので、本体23を遮光性のある有色材料にて形成し、窓部材22を別部材として本体23に接合するようにしてもよい。
【0045】
このような本発明による液体タンクの他の実施形態の主要部の構造を図4に示すが、先の実施形態と同一機能の要素にはこれと同一符号を記すに止め、重複する説明は省略するものとする。すなわち、本実施形態では光学的に透明なアクリル樹脂などで形成した窓部材22をインクタンク11の本体23に嵌め込んでこれらを一体的に接合したものである。この窓部材22の一対の光反射面37,38には、光反射量制御部としてそれぞれ多数の光反射膜40が所定間隔で形成されている。この光反射膜40は、アルミニウムや銀などを所定パターンにて光反射面37,38に蒸着することにより形成したものであり、光反射面37,38との界面にて光をぼぼ100%反射させるような膜厚をそれぞれ有する。
【0046】
従って、インクタンク11がキャリッジ12に搭載されていない状態では、先の実施形態と同様に光検出ユニット19の発光素子20から出射した測定光はそのまま直進し、インクジェットプリンタ10内で散乱して受光素子21には返ってこない。このときの受光素子21が受け取る光の強度はAとなる。
【0047】
一方、インク収容室28内のインクを空にしたインクタンク11がキャリッジ12に搭載されている場合、発光素子20から出射した測定光は、図4中の矢印で示すようにインクタンク11の窓部材22に入射して一方の光反射面37に到達し、その一部がインク収容室28との空気界面にて全反射を起こす。また、光反射膜40に達した測定光は、その界面反射によって他方の光反射面38側へ反射する。このようにして一方の光反射面37側から反射した反射光に対し、同様な現象が他方の光反射面38でも起こり、最終的に窓部材22に入射した測定光のほぼすべてが反射光となって窓部材22から受光素子21へと導かれる。このときの受光素子21が受け取る光の強度はBとなる。
【0048】
これに対し、光反射面37,38を覆う程度以上のインクをインク収容室28に収容したインクタンク11がキャリッジ12に搭載されている場合、発光素子20から出射した測定光はインクタンク11の窓部材22に入射して一方の光反射面37に到達し、その一部が光反射膜40との界面反射によって他方の光反射面38側へ反射する。また、光反射膜40が存在しない領域ではインクと窓部材22との屈折率差に応じて一部が反射すると共に残りがインク収容室28内のインク中へと進む。このようにして一方の光反射面37側から反射した反射光に対し、同様な現象が他方の光反射面38側でも起こり、この結果、窓部材22に入射した測定光の一部が反射光となって窓部材22から受光素子21へと導かれる。このときの受光素子21が受け取る光の強度がCとなる。この光強度Cは上述した光強度Aよりも大きく、光強度Bよりも小さい。
【0049】
判定手段は、受光素子21が受光する反射光の強度に基づき、インクタンク11の有無とインクタンク11がキャリッジ12に搭載されている場合のインクタンク11内のインクの有無とを判定する。この判定手段による誤判定を回避すべく、光強度A,B,Cを明確に区別するため、光反射面37,38に対する光反射膜40の形成割合を適切に設定することが望ましい。
【0050】
本実施形態による光反射膜40を薄膜化して上述した実施形態と同じ半透明鏡として機能させることも有効であり、ほぼ同様な効果を得ることができる。また、先の実施形態と同様に何れか一方の光反射面37,38の全域を、ここに入射する光がほぼ100%反射するような光反射膜で被覆することも可能であり、これによって2つの光強度A,Bの差を明確化させることができる。
【0051】
上述した2つの実施形態では、窓部材22の光反射面37,38、つまりインクタンク11の内面側に光反射量制御部を形成する必要があるため、窓部材22とインクタンク11の本体23とを一体成形したものでは、そのための加工が面倒であるが、窓部材22の表面、つまりインクタンク11の外側に光反射量制御部を形成した場合には、より簡単に光反射量制御部を形成することができる。
【0052】
このような本発明による液体タンクの他の実施形態の主要部の構造を図5に示すが、先の実施形態と同一機能の要素にはこれと同一符号を記すに止め、重複する説明は省略するものとする。すなわち、窓部材22の表面には光反射量制御部としての光反射膜40が形成され、ここに入射する光をほぼ100%反射して受光素子21へと導くようになっている。この光反射膜40に代えて最初の実施形態の如き半透明鏡の如き薄膜にて形成することも可能であり、何れにしろ受光素子21に入射する光量を増大させるものであればよい。ただし、測定光の一部が光反射量制御部を介さずに窓部材22の一方の光反射面37に到達し、その反射光が他方の光反射面38から光反射量制御部を介さずに受光素子21へと出射できるように、光反射量制御部を窓部材22の表面の中央部にのみ形成することが好ましい。
【0053】
従って、インクタンク11がキャリッジ12に搭載されていない状態では、先の2つの実施形態と同様に光検出ユニット19の発光素子20から出射した測定光はそのまま直進し、インクジェットプリンタ10内で散乱して受光素子21には返ってこない。このときの受光素子21が受け取る光の強度はAである。
【0054】
一方、インク収容室28内のインクが空になったインクタンク11がキャリッジ12に搭載されている場合、図5中の矢印で示すように、発光素子20から出射した測定光の一部が光反射膜40によってそのまま受光素子21に反射し、残りがインクタンク11の窓部材22に入射して一方の光反射面37に到達し、ここでインク収容室28との空気界面にて全反射を起こし、他方の光反射面38側へと導かれる。このようにして一方の光反射面37から反射した反射光に対し、同様な現象が他方の光反射面38でも起こり、最終的に窓部材22に入射した測定光のほぼすべてが反射光となって窓部材22から受光素子21へと導かれる。このときの受光素子21が受け取る光の強度はBとなる。
【0055】
これに対し、光反射面37,38を覆う程度以上のインクをインク収容室28に収容したインクタンク11がキャリッジ12に搭載されている場合、発光素子20から出射した測定光の一部が光反射膜40によってそのまま受光素子21に反射し、残りがインクタンク11の窓部材22に入射して一方の光反射面37に到達する。ここで、インクと窓部材22との屈折率差に応じて一部が反射すると共に残りがインク収容室28内のインク中へと進む。このようにして一方の光反射面37から反射した反射光に対し、同様な現象が他方の光反射面37,38側でも起こり、この結果、窓部材22に入射した測定光の一部が反射光となって窓部材22から受光素子21へと導かれる。このときの受光素子21が受け取る光の強度がCとなる。この光強度Cは上述した光強度Aよりも大きく、光強度Bよりも小さい。
【0056】
判定手段は、受光素子21が受光する反射光の強度に基づき、インクタンク11の有無とインクタンク11がキャリッジ12に搭載されている場合のインクタンク11内のインクの有無とを判定する。この判定手段による誤判定を回避すべく、光強度A,B,Cを明確に区別するため、光反射膜40の面積が適切に設定されている。
【0057】
なお、本体23を構成する材料との関係で、窓部材22として屈折率の小さな材料を使用せざるを得ない場合、光反射面37,38で全反射するための臨界角が45度を越える可能性があるので、このような場合には光反射面に対する入射角が60度となるような3つの光反射面を持つ台形プリズムを用いることが有効であり、窓部材22に形成すべき光反射面は必要に応じて4つ以上にすることも当然可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による画像形成装置の一実施形態の外観を模式的に表す立体投影図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に搭載される本発明による液体タンクの一実施形態の概略構造を表す断面図である。
【図3】図2に示した液体タンクの窓部材の部分の抽出拡大断面図であり、液体タンクおよび液体の検出原理を模式的に表す。
【図4】本発明による液体タンクの他の実施形態における窓部材の部分の拡大断面図であり、液体タンクおよび液体の検出原理を模式的に表す。
【図5】本発明による液体タンクの別な実施形態における窓部材の部分の拡大断面図であり、液体タンクおよび液体の検出原理を模式的に表す。
【図6】従来のインクタンクの外観を表す立体投影図である。
【図7】図6に示したインクタンクの底部を抽出拡大して表す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 インクジェットプリンタ
11 インクタンク
12 キャリッジ
13 フレーム
14 走査案内軸
15 キャリッジ駆動モータ
16 ヘッド回復機構
17 キャップ部材
18 払拭部材
19 光検出ユニット
20 発光素子
21 受光素子
22 窓部材
23 本体
24 蓋
25 筺体
26 仕切り壁
27 連通部
28 インク収容室
29 インク保持部材
30 負圧発生室
31 インク供給ポート
32 大気連通路
33 調圧溝
34 リブ
35 バッファ部
36 気液界面
37,38 光反射面
39 銀薄膜
40 光反射膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が収容される筺体と、
この筺体に組み込まれて当該筺体の一部を構成する光透過性の窓部材と、
前記筺体内に臨むように前記窓部材に形成され、この窓部材に入射する測定光を反射して当該窓部材から前記筺体の外に出射させる光反射面と、
この光反射面か、または前記筺体の外に臨む前記窓部材の表面に設けられた光反射量制御部と
を具えたことを特徴とする液体タンク。
【請求項2】
前記光反射量制御部は、前記光反射面の一部か、または前記筺体の外に臨む前記窓部材の表面の一部に配されて測定光をほぼ100%反射するものであることを特徴とする請求項1に記載の液体タンク。
【請求項3】
前記光反射量制御部が前記光反射面に分散状態で複数配されていることを特徴とする請求項2に記載の液体タンク。
【請求項4】
前記光反射量制御部が前記光反射面の全域に亙って形成される光透過性の薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の液体タンク。
【請求項5】
前記光透過性の薄膜を構成する材料が前記窓部材を構成する材料の測定光に対する屈折率とほぼ等しいか、あるいはそれよりも小さな屈折率を有することを特徴とする請求項4に記載の液体タンク。
【請求項6】
前記窓部材が少なくとも2つの光反射面を有するプリズム体であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の液体タンク。
【請求項7】
液体吐出ヘッドから液体を吐出してプリント媒体に画像を形成するための画像形成装置であって、
液体吐出ヘッドに供給される液体を貯溜する請求項1から請求項6の何れかに記載の液体タンクの搭載部と、
この搭載部に搭載された前記液体タンクの窓部材に向けて測定光を照射する測定光源と、
この測定光源からの反射光を検出する光検出器と、
この光検出器による検出光量に応じて液体タンクの有無および液体タンク内の液体の有無を判定する判定手段と
を具えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−159874(P2006−159874A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−358835(P2004−358835)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】