説明

液体バイオ燃料混合物並びにそれを製造するための方法及び装置

本発明は、脂肪酸アルキルエステルの1分画、及びグリセリン骨格に対して1重量%以上の割合の複合グリセリンの少なくとも1分画から成るバイオ燃料混合物、並びにバイオ燃料混合物を製造するための方法及び装置に関する。
バイオ燃料混合物は安価に製造でき、更に加熱することなく燃料としてディーゼルエンジンにも利用でき、従来のディーゼル燃料に混合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸アルキルエステルに基づく液体バイオ燃料混合物、並びにそれを製造するための方法及び装置に関する。燃料は特に、ディーゼル又はガソリンのような従来の燃料用添加物として好適である。内燃機関用燃料として燃料混合物を直接利用することも同様に可能である。
【背景技術】
【0002】
以下、バイオ燃料とは、再生原料から得られる液体の燃料(Brenn und Kraftstoffe)と解釈する。例えばバイオ燃料は、脂肪及び油から触媒的エステル交換によって生じる脂肪酸アルキルエステル、デンプン、糖、又はセルロースの発酵から生じるバイオエタノールだけでなく、また脂肪原料、デンプン原料、糖原料、又はセルロース含有原料のガス化から生じるメタノールのような、植物性又は動物性の原料から製造される動物性の脂肪、植物性の油及び液体である。
【0003】
このような再生燃料の利用は、化石燃料の使用の経済的観点から好ましい。この理由から、今日既に所謂バイオ燃料の幾つかは、燃料の経済バランスを改善し、法的要求に答えるために、ディーゼル又はガソリンのような従来の燃料に添加物として混合されている。
【0004】
[従来技術]
植物油又は動物脂肪を基とするバイオ燃料及びバイオ燃料混合物は、例えばドイツ国特許第4116905号、PCT国際公開WO95/25152号、欧州特許第855436号、又は米国特許第5713965号に記載されている。これらの明細書では、特にナタネ油とガソリン又はディーゼルとの混合物が開示されており、その中には一種類の追加物質が加えられている。ドイツ国特許第4116905号では、この追加成分はアルコールであり、PCT国際公開WO95/25152号では、鎖長が最大6個の炭素原子である短鎖脂肪酸のアルキルエステルであり、欧州特許第855436号ではアセタールである。
【0005】
上記文献からは、生物学的な脂肪及び油が、技術的にはそのそれぞれの生産工程において付随的に生じることから、燃料としてそれほど利用できないことも明らかにされる。添加物が必要となり、且つ/又は化学的特性及び物理的特性が変化するであろう。とりわけ、その購入費用が従来の液体燃料のコストより明らかに高い高価な添加物がこれらのバイオ燃料のコストを押し上げ、収支を合わなくさせていることが多い。
【0006】
PCT国際公開WO01/29154号では、経済的解決策としての、動物脂肪の廃棄物の内燃機関への直接投入が記載されている。しかし技術水準からは、再生脂肪又は再生油を内燃機関に直接投入すると、高い粘性及び低いセタン価によって燃焼工程が妨害を受け、不完全燃焼によって沈着物を生じることも知られている。
【0007】
現在までに、植物油、動物脂肪、バイオエタノール、及びバイオディーゼルが液体バイオ燃料として利用されている。
【0008】
バイオエタノールは、植物に含まれる原料の発酵工程を通じて得られる。この時、炭水化物は微生物の助けを借りて切断され、複数の中間生成物を経てエタノールに変換される。この工程のエタノールは少なくとも5%の水を含んでいるため、発酵工程の最終段階で、通常はトリエンを用いて脱水化を行わなければならない。
【0009】
エタノール/トリエン混合物は、通常はバイオエタノールと呼ばれ、ガソリンの代替物である。もちろん純粋なバイオエタノールは従来のエンジンでは用いることはできない。燃焼させるためには変更が必要である。しかしながら、一般的には95%であるガソリンと5%のバイオエタノールとの混合物は問題なく利用できる。
【0010】
バイオエタノールにはオクタン価が高く、燃焼時の効率が高く、更に排出物が少ないという利点がある。
【0011】
バイオエタノールの欠点は、なによりもエネルギー密度が低く、エコバランスが悪く、発酵工程の効率が低く、そして芳香族トリエンを使用することである。これに加えて、バイオエタノールの製造では二酸化炭素防止のコストが高い。このような理由から、ガソリン添加物としてのバイオエタノールの利用は、生態学的だけでなく経済的にも議論のあるところである。
【0012】
植物油は、ディーゼル燃料の代替物となる。植物油は、全てのバイオ燃料のなかで最もエコバランスが高いと同時に38MJ/kgという比較的高いエネルギー密度を示す(ディーゼル:43MJ/kg)。それにも関わらず油はこれまで燃料として認められてこなかったが、それはディーゼルエンジンでの利用が技術的にコスト高であったためである。最も重大な問題は物質の粘度が高いことである。そのために、ポンプ内圧を高くし、噴射方法が変更される。それによってパッキング、燃焼室、グロープラグ、及びピストンが損傷することがある。高い粘度は更に、点火性が低い場合と同様に、燃料の不完全燃焼の原因になることもある。燃焼が不完全になることで、燃焼室内に油又は脂肪、及び不燃堆積物が残り、ピストン及びノズルに沈殿する。これに加えて、植物油を使って長時間作動すると樹脂化が起こる。
【0013】
植物油をディーゼルの代わりとして利用する場合の更なる問題は、遊離脂肪酸の高い腐食性である。遊離脂肪酸は、脂肪分子の化学的分解及び生物学的分解に際して生じ、特にチューブ及びパッキングを、更に長期間使用した場合には燃料システム内の金属部分をも腐食させる。
【0014】
これらの理由から植物油、及び植物油/ディーゼル混合物を、商業的に流通しているエンジンで燃焼させることは不可能である。この問題は、エンジンを改造することで対応できるが、それでも植物油を燃料とすることは経済的には魅力はない。
【0015】
動物性脂肪にも植物油と同じ欠点がある。動物脂肪は植物油の場合に比べて、遙かに高い粘性を有しているだけでなく、そこから遙かに速い速度で遊離脂肪酸が形成されるため、エネルギーとしての利用は、回転噴霧を用いる重油燃焼の場合にのみ有効である。
【0016】
上記の欠点は、植物油を1価のアルコールを用いて脂肪酸アルキルエステル(FSAE、バイオディーゼル)に化学的にエステル交換することでほとんど回避できる。バイオディーゼルは、植物油に近いエネルギー密度を有しており、ディーゼルにその粘度及びセタン価が近いことから、ほとんど全ての新構造のディーゼルエンジンで利用することができる。バイオディーゼルは、生物学的に分解可能であり、引火点が比較的高いことから有害物質の発生はない。
【0017】
FSAEの更なる利点は、化石ディーゼルに比べて排出値が明らかに優れていることである。とりわけ硫黄酸化物、炭水化物、及び粒状物質の排出量が大きく低下する。単に窒素酸化物の排出量が若干増加するだけである。
【0018】
バイオディーゼルの欠点は、なによりも製造方法のコストが高いことである。エネルギーの点で工程技術的にコストがかかる、生成物であるバイオディーゼル及びグリセリンの両方を再生する(Aufarbeitung)多数の段階によって、反応生成物の約89%(重量%)しか燃料として利用できないため、FSAEの製造のエコバランス及び経済性は大きく悪化する。バイオディーゼル製造の第2段階で生じる11%(重量%)のグリセリンは、コストをかけて分離し、取り除かねばならない。生成物を再生するためには、分散型の装置での製造は経済的に不可能である。その結果、バイオディーゼルは極短時間に装置の中にほぼ独占的に(fast ausschliesslich)10000t/aを超える流量で回収される。このことが、運送にかかるコストを無視できないものにしている。
【0019】
これに加えてFSAEの冬の間の安定性及び酸化安定性が低いことも問題である。
【0020】
バイオディーゼルは植物油の触媒的エステル交換によって製造される。この場合は、脱水、脱酸、及び粘着物を取り除かれた油に、1質量パーセントの触媒(多くはKOH)が加えられ、6:1の過剰量の1モルのアルコール(多くはメタノール)と一緒にアルコールの沸点より高い温度で反応器に送り込まれる。すると脂肪分子内に含まれる脂肪酸は触媒により切断され、共存するアルコールに反応して、脂肪酸アルキルエステルとなる。脂肪及び油はトリグリセリドであり、即ち1つの脂肪分子は、1つのグリセリン分子に結合している3つの脂肪酸分子を含んでいる。これにより、バイオディーゼル製造において実施されるようなエステル交換反応が完璧な形で行われた場合は、脂肪分子又は油分子あたり3分子のバイオディーゼルと1分子のグリセリンができる。
【0021】
反応中間生成物はモノグリセリド及びジグリセリドである。モノグリセリド及びジグリセリドは、以後グリセリン骨格とも呼ばれる、脂肪酸の1つ(モノグリセリド)又は2つ(ジグリセリド)が複合しているグリセリンの基本骨格から生じる。モノグリセリド及びジグリセリド中に、極性水酸化物基及び非極性炭水化物鎖の両方が存在する場合には、それらは両親媒性の特徴を有し、有機溶媒中では殆どの場合溶媒の極性を変える。
【0022】
エステル交換には約8時間の反応時間を必要とし、このとき約98%の交換率が達成される。
【0023】
反応終了時には、FSAE中に形成された非溶解性のグリセリンは、相分離法を用いてバイオディーゼルから取り除かれ、化学精製及び蒸留精製を経て工業向け原料又は薬学的原料として利用される。
【0024】
FSAEに含まれる過剰量のアルコールは蒸留によって分離されて、工程に戻される。続いてバイオディーゼルを水で洗浄して、生じた石鹸並びに触媒及びグリセリン残存物を取り除き、乾燥させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の課題は、従来技術の燃料の持つ上記欠点、特に高い製造コストを回避できるバイオ燃料混合物並びにそれを製造するための方法及び装置を提供することである。バイオ燃料混合物は、植物油に比べると粘性が低く、その結果燃料は、追加の加熱なしにディーゼルエンジンで利用することができ、且つ通常のディーゼル燃料に混合することもできる。その燃料は低い温度でも単一相の液体であり、保存安定性を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
課題は、請求項1に記載のバイオ燃料混合物、請求項11及び21に記載の方法、並びに請求項24に記載の装置によって解決される。バイオ燃料混合物の組成並びにそれを製造するための方法及び装置の実施の形態は従属請求項の主題であることが好ましく、又は以下の記載及び実施例から知ることができる。
【0027】
本発明によるバイオ燃料混合物は少なくとも、脂肪酸アルキルエステルの分画、並びにモノグリセリド及び/又はジグリセリド及び/又はトリグリセリドの形態の複合グリセリンの分画を含む。燃料混合物中の複合グリセリンの割合は、グリセリン骨格(Glycerinrueckgrat)に対して少なくとも1重量%であり(グリセリン骨格の全体化学式:C3H5O3;モル質量:89g/モル)、好ましくは3重量%〜10重量%である。グリセリンを加えて濃度を上げることも可能であり、場合によっては望ましい。
【0028】
驚くべきことに、上記のモノグリセリド及び/又はジグリセリドの比率を有するこの種のバイオ燃料混合物では、FSAE中の遊離グリセリンの溶解性が2倍以上になることが可能なことが示される。脂肪及び油からアルキルエステルへの従来のエステル交換では、前述したように、グリセリンは第2段階でバイオ燃料から分離される。この段階では、アルキルエステルからの分離に大きなコストをかけなければならない。油及び脂肪の天然成分であるグリセリンは、本発明によるバイオ燃料混合物では、他の分画と一緒に燃焼工程に利用することができる。したがって、燃料にグリセリン(特にグリセリドの形で)を利用することで収量はおよそ10%増加し、これは、コスト的に明らかに有利である。
【0029】
本発明によるバイオ燃料混合物は更に、溶液中に40重量%を超える脂肪又は油を加えることができるため、これらの物質を、更なる段階が追加されるか、又は分割されることなく燃料混合物に混ぜて使用できる。
【0030】
これに加えてバイオ燃料混合物は、バイオディーゼルに比べて炭化水素、一酸化炭素、及び煤粒子のガス排出値が低い。
【0031】
メタノール又はエタノールのような一価アルコールもまた、本発明によるバイオ燃料混合物に極めて良好に溶解することが示される。それ故に、脂肪酸アルキルエステルの製造において完全に消費されなかったアルコールを、そのままバイオ燃料混合物内に残しておくことも、又は一価アルコールを混合物に加えることもできる。これは粘度を低下させ、低温安定性を向上させる。
【0032】
本方法の好ましい実施の形態では、バイオエタノールはエステル交換のためのアルコールとして用いられる。
【0033】
更には、バイオ燃料混合物と鉱物燃料との混合性は、含まれるモノグリセリド及びジグリセリドによって、従来のバイオディーゼルに比べて改善されていることが示されている。
【0034】
バイオ燃料混合物は、鉱物燃料又は従来のバイオディーゼルとどのような比率でも混合でき、その際に希釈して、燃料として利用することができる。これにより最終的に得られる燃料中の複合グリセリンの濃度を低くすることができる。
【0035】
更には、このようにして本発明による燃料混合物を希釈し、植物油をエステル交換する前に、ディーゼル燃料又はバイオディーゼルから成る添加物を混合することができる。
【0036】
酸化安定性及び低温での挙動を改善するために、従来技術に従って燃料に燃料添加物を加えることができる。
【0037】
また、バイオ燃料混合物中に、例えば植物油から脂肪酸アルキルエステルへのエステル交換時に形成されるモノグリセリド及びジグリセリドが与えられる。しかし、別の供給源の、又は元は合成されていたモノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドを利用することもでき、場合によっては有利である。こうしてまた、脂肪酸分子中に10個より少ない炭素原子を有する脂肪酸を含むバイオ燃料の中でモノグリセリド及びジグリセリドを利用することができる。このことは粘性低下にとって特に有利である。
【0038】
前述のバイオ燃料混合物の製造については、以下の2つの方法が提供される。
【0039】
1つの可能な製造方法は、トリグリセリドを部分的にエステル交換することに基づく。
【0040】
この場合は、精製された、場合によっては脱水された脂肪又は油を1価アルコールと混合し、少量の触媒を加えて反応させる。この時、自明であるが、脂肪、油、アルコール、及び触媒ではなく、異なる物質を混合することもできる。
【0041】
滞留時間、触媒及び用いられたアルコールの量に応じて、反応生成物中のFSAE、モノグリセリド、ジグリセリド、及び場合によってトリグリセリドの割合を決めることができる。
【0042】
触媒としては、好ましくは1つ又は複数の部位特異的リパーゼ(regiospezifische Lipase)が利用される。s−1,3部位特異的リパーゼを触媒として使用することが特に好ましい。この種のリパーゼは、トリグリセリドの第1脂肪酸及び第3脂肪酸を優先的に切断する。こうしてアルコールの存在下に、FSAEと共にモノグリセリド及びジグリセリドから成る混合物が生じる。
【0043】
しかしながら、所望の燃料特性、例えば粘性を調整するために、非特異的触媒を加えることも可能であり、例えば予定より早く反応を停止させるか、アルコール添加量を化学量より少なくして、反応生成物中のモノグリセリド及び/又はジグリセリドについて必要比率を得ることができる。溶液中にはモノグリセリド及びジグリセリドから生じたグリセリンが残るが、必要であれば適切な分離法により燃料から分離できる。この反応と平行してFSAEが形成される。反応生成物のこの成分は、バイオ燃料混合物の粘度を下げる。
【0044】
更には、バイオ燃料混合物中にはアルコールグリセリンが残って、置換される必要がないために、従来のバイオディーゼルの製造に比べてアルコール消費量が約33%〜50%減少することが示される。
【0045】
触媒若しくは触媒混合物は、遊離型だけでなく担体に結合する系としても存在できる。担体結合触媒には、それらを複数回の反応サイクルに利用できるという利点がある。このことは、とりわけ触媒としてリパーゼを利用する場合に、それが比較的高価であるという理由から有利である。
【0046】
バイオ燃料の製造用の装置は、トリグリセリドをアルコールと混合するための混合装置に加えて、混合物を入れるための反応器を備えており、当該反応器には、1つ又は複数の部位特異的リパーゼが固定されている1つ又は複数の担体が入っている。反応器としては、例えば攪拌反応器、又は固定床反応器がある。
【0047】
一実施の形態では、反応器に、反応によって得られる産物から、複合グリセリン及び/又はアルコールを含む分画を分離するための分離装置が接続されている。この分離された分画は、混合装置に戻されて製造工程からは廃棄物が生じないことが好ましい。分離された分画を別個に利用するために供給することもできる。分離装置としては、例えば蒸留分離装置、膜分離装置、結晶化分離装置、吸着分離装置、又は抽出分離装置が利用できる。
【0048】
バイオ燃料混合物を製造するための工程温度は、混入する触媒及び混入するトリグリセリドに依存する。しかしながら、工程温度は一般的には20℃〜120℃の間である。
【0049】
反応速度は、触媒濃度及び使用する触媒に依存する。反応時間、又は滞留時間は所望の燃料の性質に従って選択される。
【0050】
脂肪酸アルキルエステル収量を上げるためには、システム内に存在しており且つ反応中にエステル交換工程で発生する水を従来技術による方法によって取り除くことは有利である。従来技術による方法としては、例えば分子篩若しくは硫酸ナトリウムを用いた乾燥、或いは透析蒸発による脱水が挙げられる。エステル交換工程中の脱水には、更に、遊離脂肪酸の形成を小さくする利点がある。
【0051】
後に続く燃料の精製は、遊離状態の又は担体に結合している触媒の除去も含め必要ない。しかしながら、例えば残存アルコールを除去することで粘性を高めるといった特定の性質に適合させるために、精製を実施できる。更には、粘度を小さくするために、複合グリセリンの一部を燃料混合物から分離することも有益であろう。これは、例えばメンブレン法、結晶化法、吸着、又は水若しくはその他の極性若しくは両親媒性の液体を用いる抽出といった従来技術による方法を利用して実施できる。
【0052】
部位特異的リパーゼ処理後に、分離されたジグリセリド又はトリグリセリドの一部を非特異的にエステル交換することもできる。これによって、場合により、モノグリセリドの割合を高く維持することができる。
【0053】
部分的なエステル交換によるバイオ燃料混合物の製造に加えて、バイオ燃料混合物は、純粋な、即ち市販のFSAEにモノグリセリド及びジグリセリド、場合によってはアルコール及びトリグリセリドを添加することによっても得ることができる。混入するグリセリドとアルコールの比率は、所望の性質に依存する。最も好都合な燃料の性質、即ち低い粘性及び高いセタン価を得るためには、FSAEの割合が>50重量%であることが好ましく、特に好ましくは>60重量%であり、幾つかの例では>80重量%のこともある。溶媒として用いる場合は、FSAEの割合はより高く、好ましくは>50重量%であり、モノグリセリドの割合はより高く、好ましくは>25重量%にすることが望ましい。この応用では、残存脂肪の割合は可能な限り低くすべきであり、<2重量%であることが好ましい。
【0054】
燃料中にモノグリセリドだけでなくジグリセリドも含まれると有利である。モノグリセリドだけが存在すると、例えばモノグリセリドの結晶化が起こることがある。ジグリセリド及び/又はトリグリセリドの添加はこの結晶化を阻止し、その結果高い保存安定性が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下に2つの例でアルキルエステルを基本とする燃料について説明する。
【実施例】
【0056】
〔実施例1〕
100gの脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル)に50gのモノグリセリド(45重量%)、ジグリセリド(20重量%)、及びトリグリセリド(35重量%)から成る混合物を加える。このグリセリド混合物は市販品でよい。バイオ燃料混合物は燃料として利用できる。
【0057】
〔実施例2〕
100gの植物油に3.5gのメタノール(他の一価アルコール又は二価アルコールでもよい)及び1gのsn−1,3部位特異的リパーゼを加える。混合物を、リパーゼ活性が最高となる温度で9時間混合する。9時間後、新たに3.5gのメタノールを加える。全体を更に15時間、上記リパーゼに最適な温度で攪拌する。ごく低重量%のメタノールが溶解しているモノグリセリド、ジグリセリド、FSAE、及び植物油から成る、澄んだ溶液が出来る。
【0058】
図面は、バイオ燃料混合物を製造するための例示的な装置の構成要素及び製造工程でのこれらの構成要素の協働関係を非常に概略的に示す図である。最初にトリグリセリド及びアルコールが混合装置1に与えられ、その中で混合される。トリグリセリド及びアルコールから成る混合物は、次に攪拌反応器又は固定床反応器2に移される。移動は混合装置と反応器2とを結ぶ管により行うことができる。反応器2では、混合物は触媒であるsn−1,3部位特異的リパーゼと接触させられ、部分的なエステル交換が起こる。部位特異的リパーゼは、1つ又は複数の担体に固定されている形態で反応器の中に存在している。脂肪酸アルキルエステル及びモノグリセリドから成る混合物が反応生成物として生じるが、これは場合によってはジグリセリド及びトリグリセリドも含んでいることがある。
【0059】
任意選択で反応器2が接続されている分離装置3では、反応生成物からアルコール及びトリグリセリドの残存物が蒸留又はメンブレン技術を使って分離され、混合装置1の工程に新たに戻される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】バイオ燃料混合物を製造するための例示的な装置の構成要素及び製造工程でのこれらの構成要素の協働関係を非常に概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸アルキルエステルの1分画、及びグリセリン骨格に対して1重量%以上の割合の複合グリセリンの少なくとも1分画から成る、バイオ燃料混合物。
【請求項2】
前記複合グリセリンの分画の割合が、前記バイオ燃料混合物の3重量%〜10重量%の間であることを特徴とする、請求項1に記載のバイオ燃料混合物。
【請求項3】
前記脂肪酸アルキルエステルの分画の割合が、前記バイオ燃料混合物の50重量%を超えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバイオ燃料混合物。
【請求項4】
前記脂肪酸アルキルエステルの分画の割合が、前記バイオ燃料混合物の60重量%を超えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバイオ燃料混合物。
【請求項5】
前記脂肪酸アルキルエステルの分画の割合が、前記バイオ燃料混合物の80重量%を超えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバイオ燃料混合物。
【請求項6】
前記バイオ燃料混合物に或る割合でグリセリンが溶解されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバイオ燃料混合物。
【請求項7】
前記バイオ燃料混合物に或る割合で脂肪及び/又は油が溶解されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のバイオ燃料混合物。
【請求項8】
前記バイオ燃料混合物に10重量%未満の割合で残存脂肪及び/又は残存油が溶解されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のバイオ燃料混合物。
【請求項9】
前記バイオ燃料混合物に或る割合で一価アルコールが溶解されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のバイオ燃料混合物。
【請求項10】
鉱物燃料又はバイオ燃料と混合されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のバイオ燃料混合物。
【請求項11】
アルコールを添加することでトリグリセリドを部分的にエステル交換することによる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のバイオ燃料混合物を製造するための方法。
【請求項12】
前記部分的エステル変換のために、精製されている脂肪又は油を一価及び/又は二価のアルコールと混合し、脂肪酸の開裂に適した触媒を添加して反応させ、一定の割合の脂肪酸アルキルエステル並びに少なくともモノグリセリド及び/又はジグリセリドから成る混合物を反応生成物として得ることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記部分的エステル変換のために、精製された脂肪又は油を一価及び/又は二価のアルコールと混合し、脂肪酸の開裂に適した触媒を添加して反応させ、一定の割合の脂肪酸アルキルエステル、モノグリセリド及び/又はジグリセリド、並びに少なくとも前記トリグリセリドから成る混合物を反応生成物として得ることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記反応生成物の前記割合が、前記脂肪又は前記油が前記一価及び/又は二価のアルコール、並びに前記触媒と接触する滞留時間の間に調節されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記反応生成物の前記割合が、前記脂肪又は前記油に混合される前記一価及び/又は二価のアルコールの量によって調節されることを特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応生成物の前記割合が、前記触媒の種類及び/又は量によって調節されることを特徴とする、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
一つ又は複数の部位特異的リパーゼを触媒として用いることを特徴とする、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
一つ又は複数の非特異的触媒及び/又は非特異的酵素を用いることを特徴とする、請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒を担体に結合させて用いることを特徴とする、請求項12〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記部分的エステル変換の前及び/又は間に脱水を行うことを特徴とする、請求項11〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
脂肪酸アルキルエステルをして、モノグリセリド及び/又はジグリセリドを添加して、該脂肪酸アルキルエステル並びに該モノグリセリド及び/又は該ジグリセリドから成る混合物を製造することによる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のバイオ燃料混合物を製造するための方法。
【請求項22】
前記混合物に一価及び/又は多価のアルコールを添加することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記混合物に複合グリセリンを添加することを特徴とする、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
トリグリセリドとアルコールを混合するための混合装置、及び1つ又は複数の固定化されている部位特異的リパーゼを有する1つ又は複数の担体が入っている、前記混合物を入れるための反応器を具備する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のバイオ燃料混合物を製造するための装置。
【請求項25】
前記反応器の後ろに、脂肪及び/又は油及び/又は及び/又はモノグリセリド及び/又はジグリセリド及び/又はアルコールを含有する分画を分離するための分離装置が接続されていることを特徴とする、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記分離装置が前記脂肪及び/又は前記油及び/又は前記アルコールを含有する分画のための少なくとも1つの出口を具備し、該出口が前記混合装置の入口に接続されていることを特徴とする、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記分離装置が、蒸留分離装置、膜分離装置、結晶化分離装置、吸着分離装置、又は抽出分離装置であることを特徴とする、請求項25又は26に記載の装置。
【請求項28】
前記反応器が攪拌反応器又は固定床反応器であることを特徴とする、請求項24〜27のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2008−530318(P2008−530318A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555445(P2007−555445)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【国際出願番号】PCT/DE2005/002156
【国際公開番号】WO2006/086936
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(591037214)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ (259)
【Fターム(参考)】