液体中における目的の分析物を検出及び定量する方法、並びに実施装置
本発明は、溶液中に存在する分析物を検出及び定量する方法であって、持ち運び可能で、迅速で、安価で、選択的で、超高感度である、方法を提供する。この目的のために、本発明の主題は、母液から得られる液体の検体1中における目的の分析物2を検出及び定量する方法であって、該液体は規定の蒸発条件下において雰囲気Atm中で蒸発することが可能であり、該方法は、以下の工程:b)検体1を、分析物捕捉プローブを規定するマイクロ構造化又はナノ構造化された表面20を有する基板10上に置く工程であって、液体検体が基板の構造化された表面を少なくとも部分的に覆うように、置く工程、c)検体に、液体/基板/雰囲気の三重線Tの近傍VTにおいて制御された蒸発5を行わせる工程であって、液体が雰囲気中に蒸発するにつれてこの三重線が基板の構造化された表面上を制御された速度で移動するように、並びに対流による集合及び有向性毛細管作用によってプローブにより標的分析物が捕捉されるように、行わせる工程、並びにd)工程c)の後に得られる基板の構造化された表面を分析する工程を含む、方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中における目的の分析物を検出及び定量する方法に、並びに実施装置に関する。
【0002】
所要の目的の分析物を、以下で「標的」と称する。
【0003】
本発明による方法により、1ミリリットル当たり最大5個のナノ物体、又はアトモル濃度未満の分子という分解能の限界に到達することが可能となる。液体は複合的であり得る、すなわち液体は、検出に関してその割合のみが関心の対象となる複数種の分析物を含み得る。
【背景技術】
【0004】
農薬(殺真菌剤、殺虫剤、除草剤)、殺鼠剤、軟体動物駆除剤、肥料、洗浄剤、ホルモン及び医薬品の使用の増大により、それらの組成に含まれる分子が環境中に、ひいては植物及び食品中に分散することが多数の研究において示されている。
【0005】
さらに、燃料の燃焼反応により、多数のナノ粒子、鉛及び黒鉛が大気中に排出される。
【0006】
機能性ナノ粒子の計画的な応用も、自然環境中へのそれらの分散という問題をもたらしている。
【0007】
環境に対する及びヒトに対するこれらの分子及びナノ粒子のリスクを評価するために、それらを検出すること、それらの移動性、それらの反応性、それらの生態毒性及びそれらの残留性を理解することが必要である。必要とされる重要なパラメータは特に、それらの存在の検出、及び上記存在の経時的な変化(evolution)のモニタリングである。
【0008】
実際に、水、空気、土壌、植物又は食品中に存在する分析物を検出及び分析することを可能とすることは、重要な環境上の課題である。
【0009】
それは医療上の課題でもある。非常に低い濃度レベルにおいて、ヒトの検体、例えば血清、血液又は器官の組成を迅速に得ること、DNA鎖、タンパク質及び循環バイオマーカー(循環バイオマーカーはがんの転移性再発の前駆物質である)を捕捉すること、細菌又はウイルスを捕捉すること、胞子を検出することを可能とすることは、医療診断法を確立するために必須であり、疾患の早期治療のための基礎を提供する。それらの発症の継続的なモニタリングは、医療処置の有効性を測定し必要に応じて該処置を修正するために、及びひいてはオーダーメード医療へと進歩させるために不可欠である。
【0010】
DNA配列の分析を利用することは、「プログノスティクス(prognostics)」(疾患の長期発症の可能性を高める遺伝子異常の特定を表す用語)の開発を始めるのに必要となる。
【0011】
したがって、分析回数を低減するために、血清中における例えばコピー数の小さい核酸配列を、その増幅のためにPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を利用することなく検出することも、医療分析又はウイルス学に関する主要な課題である。
【0012】
したがって、特異的かつ非常に高感度であり、複合的であり得る媒体中に分散した微量の多数の分析物(特定の分子、ナノ粒子又はマイクロ粒子、細菌、ウイルス、タンパク質、循環バイオマーカー、DNA、胞子等)の存在について簡単で、迅速で、ルーチン的なin situ及び低コストの検出を可能とする、感受性の高い測定技法を得ることが必須である。これらの分析物は例えば、その50%が優先的な除去を要する水法(指令76/464/EEC及び200/60/EEC)に列挙される33種類の有害物質である。
【0013】
水に関するこの総括指令は微量成分の実験室分析部門の開発の動機付けとなっているが、産業レベルで提唱されている技法はほとんどない。
【0014】
「ナノ材料:ヒトの健康に対する及び環境に対する影響」と題する仏国環境・労働衛生安全庁(French Agency for Environmental and Labor Health Safety)(AFSSET)により発表された研究(2006年)は、空気中のエアロゾル(排出ガス、煙)中における、水中における、及び土壌中におけるナノ粒子の検出技法及び検出限界に関する現況の調査結果を提示している。
【0015】
第1のカテゴリーは、分析前の分析物の濃縮を行わずに行う、非特異的な検出技法(すなわち、該技法は全ての粒子の全体的な特徴付けを提供する)を含む。これらは、米国TSI社により及び独国GRIMM社により市販されている「凝縮核計数器」(CNC)と称される技法である。これらは、粒子数を毎秒光学的に検出することからなる。粒子径は5nm〜1μmであることがあり、濃度は0.1粒子/ml〜106粒子/mlであることがある。これらは、特に空気及びエアロゾルの場合に、適用可能である。
【0016】
第2のカテゴリーは、非特異的ではあるが分析前の分析物の濃縮又は集積を伴って行う検出技法を含む。これらは、格子の連続体(succession)を介したエアロゾルの通過によって、分析物をサイズにより分類する拡散バッテリーである。粒子計数器と連結することにより、2nm〜200nmのサイズを有する分析物の各粒度分布の割合を決定することが可能となる。ELPI(電子式低圧インパクタ)技法は、7nm〜10μmのサイズを有する荷電した粒子を慣性により事前に選択し、その後該粒子を電気的に検出する。それらの濃度は非常に高くなければならない(1ml当たり1000個〜10000個の粒子)。移動度の電気的分析(走査型移動度粒子径測定器、すなわちSMPS)により、微分型移動度分析器(DMA)及び粒子計数器を用いて3nm〜50nmの直径を有する粒子を検出することが可能となる。
【0017】
別のカテゴリーは、一般的に分析前の濃縮を伴って行う、特異的な検出技法を含む。30nm〜300nmのサイズを有する大気中の又は土壌の粒子を溶液中に配置し、その後イオン交換クロマトグラフィにより又は質量分析により分析する。別の技法は、レーザー誘起蛍光法(LIBS)を使用する。最後に、或る特定のナノ粒子の活性表面を認識するナノトレーサーを事前に固定することにより、該粒子を特異的に検出することが可能となる。
【0018】
有機粒子の水溶液の場合においては、顕微鏡法(電子顕微鏡法又は原子間力顕微鏡法)により、サイズ分離(限外濾過、遠心分離、流動分別)により、クロマトグラフィにより、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)と称される検出技法を伴う結合分別(coupling fractionation)により、及びレーザー検出により、分析物の計数を利用する技法に言及することができる。
【0019】
また、無機ナノ粒子の場合においては、走査型電子顕微鏡(SEM)、光の拡散、X線の又は中性子の拡散、「流れ場(Flow Field)流動分別」(FFFF)、流体力学クロマトグラフィ(HDC)、エレクトロスプレー及び電気的移動度、ゼータ電位(又は表面電荷の測定)、原子吸光、並びに軽元素C−H−N−Sの分析による観察の技法に言及することができる。
【0020】
しかしながら、これらの技法は、サイズの、形状の、凝集の状態の、表面電荷の、及び軽元素の化学組成の分析にしか好適ではない。これらの技法が特異的である場合、それらの検出限界は濃縮後でも乏しく、1g/l〜10ng/l(又は108ナノ粒子/ml〜109ナノ粒子/ml)の範囲である。
【0021】
それらの定量は容易ではなく、それらの感度は不十分であり(すなわち、それらの検出限界の濃度の低さは不十分であり)、特に、一般的に複合的な媒体における検出が必要とされる粒子に対して特異性が不十分である。これらは過度に高価でもあり、これらは現場の条件において持ち運び可能で(portable)なく、これらは日常的な使用にとって実用的でなく、実験室において高度に専門化された操作技術者を必要とする。
【0022】
生体由来の分子の検出(又は生体診断法(biodiagnostics))に関する研究により、はるかに正確な検出限界が得られる。例えば、「生体診断法におけるナノ構造」(非特許文献1)では、第1表が、核酸に関して到達した検出限界を示している。それらは、使用する技法に応じて、ナノモーラー(nM又は10−9mol/l)とフェムトモーラー(fM又は10−15mol/l)との間で変動する。PCR反応の産物を使用する一つの方法によってのみ、0.1fMに到達することが可能となる。しかしながら、この方法は、ヌクレオチド鎖を増幅するのに必要とされる時間のために、長時間を要する。第2表がタンパク質の検出限界を示しており、この限界もnMとfMとの間で変動する。バーコード増幅技法のみが0.030fM(30aM)に到達することを可能とするが、この技法は複雑であり実施が困難である。
【0023】
この検証により、溶液に対する検出及び分析のための実に様々な技法が存在することが示される。「最も高感度な」技法は、実験室において開発されており、高価であり、速度が遅く、あまり持ち運び可能ではなく、多くの場合非特異的である。環境汚染及び生体診断法の分野に関して信頼できるものであるためには、微量成分を検出するためのいかなる技法も、低コストで、迅速で、持ち運び可能で、選択的であり、1ミリリットル当たり105個〜106個のナノ物体の検出閾値、又は分析物が分子である場合フェムトモーラーの検出閾値に到達し、可能であればこれを下回るように十分な分解能を有するものでなければならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】N Chem. Rev. 105 (2005) 1547-1562
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の包括的な目的は、複合的な溶液中に存在する分析物を検出及び定量する方法であって、持ち運び可能で、迅速で、選択的であり、多数種の分析物に対して使用することができ、経済的であり、1ミリリットル当たり6×105個のナノ物体若しくはマイクロ物体の、又は分析物が分子である場合フェムトモルオーダーの検出閾値に到達する又はさらにはこれを超えることを可能とする方法を提供することである。
【0026】
より具体的には、本発明の目的は、単純な又は複合的な溶液中におけるナノ粒子又はマイクロ粒子の分析物の、特定の分子の分析物の、及びヌクレオチドの検出を可能とすることである。本発明は、単純な又は複合的な溶液中における胞子、ウイルス又は細菌等の分析物の検出を可能とすることも目的とする。複合的な溶液を、空気、水、土壌、食品、生物等に存在する分析物を表すように、事前に調整することができる。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、溶液中に存在する又は配置された目的の標的分析物を検出する方法であって、検体中における目的の標的分析物の自然濃縮の段階、及びプローブを備えた表面上における対流による有向性毛細管集合による目的の分析物の捕捉の段階を組み合わせた、並びに構造化された表面の分析の段階を含む、方法を提唱する。これらのプローブは、形態学的(topographic)単位、化学的単位、生物学的単位、静電的単位又は磁気的単位である。
【0028】
この目的で、本発明は、親溶液から得られる液体検体中における目的の標的分析物を検出及び定量する方法であって、該液体は特定の蒸発の条件において雰囲気中で蒸発することが可能であり、該方法は、以下の工程:
b)前記検体(1)を、分析物捕捉プローブを規定するマイクロ構造化又はナノ構造化された表面(20)を有する基板(10)上に、該液体検体が該基板の該構造化された表面を少なくとも部分的に覆うように置く工程、
c)液体/基板/雰囲気の三重線の近傍において該検体の制御された蒸発を行わせる工程であって、該液体が該雰囲気中に蒸発するにつれてこの三重線が前記基板の前記構造化された表面上を制御された速度で移動するように、及び前記プローブに向かう対流による毛細管集合により前記標的分析物が捕捉されるように、行わせる工程、
d)工程c)の後に得られる前記基板の前記構造化された表面を分析する工程
を含む、方法に関する。
【0029】
慣例により、上記の方法の工程は、アルファベット順に行う。
【0030】
高感度、すなわち非常に低濃度の標的分析物を検出する可能性を達成するために、本発明は、基板の表面の分析の自動化を可能とする、基板の表面上に配置される「プローブ」と称される組織化された部位における目的の標的分析物の特異的なトラップと併せた、親溶液の自然濃縮の効果的で再現可能な技法の組合せの使用を提唱する。
【0031】
したがって、三重線の近傍における検体の制御された蒸発により対流性流れが生成され、それによりその近傍において分析物が濃縮される。さらに、液体が雰囲気中に蒸発するにつれて三重線が基板の構造化された表面上を移動すると、標的分析物は構造化された表面に向かって毛細管力により押し動かされ、その後プローブにより発揮される特異的な力により捕捉される(固定化される)。
【0032】
他の実施の形態によれば:
工程d)は、前記基板の前記マイクロ構造化又はナノ構造化された表面により工程c)で捕捉された前記分析物を計数すること、及び前記親溶液中における分析物の濃度を得るために捕捉された標的分析物の数を換算表と比較することにより実施することができる;
工程d)は、工程c)で捕捉された前記分析物を計数すること(該分析物はその濃度が既知である基準分析物、及びその濃度が未知であるが該基準分析物の濃度に比例する目的の分析物を含む)、並びに該基準分析物と該目的の分析物との割合を比較することにより実施することができる;
工程b)は、前記基板と該プレートとの間に該液体検体を封入するように前記液体検体と接触させてプレートを置くことをさらに含み得る;
前記検体の制御された蒸発の間、前記プレート及び前記基板を、該基板とおよそ平行に並進(translation)の方向に互いに相対的に移動させることができる;
前記基板及び前記検体を、制御された雰囲気を有する封入体中に閉じ込めることができる;
工程c)の間、前記制御された雰囲気中における前記液体の成分の分圧を調節することが可能である;
前記三重線における前記液体の蒸発を行わせる及びこれを制御するのに十分な量のエネルギーを供給することにより工程c)を適用することができる;
該方法は、前記親溶液の事前調整の工程a)を含み得る;
前記親溶液の前記事前調整が、該親溶液から不要な分析物を除去することから、新たな標的分析物を添加することから、及び/又は前記構造化された表面上における対流による毛細管集合を促進する溶媒若しくは新たな分子を添加することからなっていてもよい;
該方法は、前記基板の前記表面上に前記標的分析物に特異的なプローブ分子を含む液体の液滴を該液滴が該基板の該表面を少なくとも部分的に覆うように置くこと、その後液滴/基板/雰囲気の三重線の近傍において該液体が該雰囲気中に蒸発するにつれてこの三重線が前記基板の前記構造化された表面上を制御された速度で移動するように前記液滴の制御された蒸発を行わせること、及び前記プローブ分子が前記基板の前記表面と結合して該基板の該表面上にプローブネットワーク構造を作り出すように、行わせることからなる前記構造化された表面の調製の予備工程を含み得る;
該方法は、工程d)において蛍光光度法により計数することを可能とするための前記捕捉された標的分析物上へのフルオロフォアの固定の中間工程を工程c)と工程d)との間に含み得る;
該方法は、1つ又は複数の機能化された捕捉表面上に工程c)の後に得られる前記基板を適用することによる、工程c)でトラップされた前記分析物の特異的分別の、少なくとも1つの工程を工程c)と工程d)との間にさらに含み得る;
工程c)の間、前記三重線が一定速度で移動するように蒸発を制御することができる;
工程c)の間、前記三重線が可変速度で移動するように蒸発を制御することができる;
前記表面上の前記プローブが各々、或る光学スペクトルを有するネットワークを規定し、工程c)での前記分析物の捕捉後における各ネットワークの該光学スペクトルを分析することにより工程d)を行うことができる;並びに/又は
前記表面上の前記プローブが種々のサイズを有する腔であり、工程c)が種々のサイズを有する腔中にトラップされた種々のサイズを有するマイクロ液滴又はナノ液滴中の前記標的分析物の捕捉をもたらし、工程d)を各マイクロ液滴又はナノ液滴に関する少なくとも1つの物理的特性又は化学的特性の強度の変化を測定すること、いかなる分析物をも含有しない「限界」マイクロ液滴又はナノ液滴の体積を決定すること(前記親溶液中における前記分析物の濃度は該限界マイクロ液滴又はナノ液滴の体積により除算すると1に等しい)により適用することができる。
【0033】
本発明は、
前記目的の分析物を含有する親溶液の検体を受容することを意図した構造化された表面を有する基板、
前記溶液の蒸発を制御する手段、
前記基板の前記マイクロ構造化又はナノ構造化された表面を分析する手段
を含む、上記の方法を実施するための分析物を検出及び定量する集合体にも関する。
【0034】
他の実施の形態によれば:
前記分析の手段が、前記基板の前記構造化された表面によりトラップされた分析物を計数すること、及び前記親溶液中における分析物の濃度を得るために先に得られた分析物の数を換算表と比較することが可能である;
該検出集合体は、前記基板と前記プレートとの間に該検体を封入するように溶液の前記検体と接触させて設置することを意図したプレートをさらに含み得る;
前記基板及び前記プレートを、並進の方向に移動可能なように及び互いとおよそ平行に取り付けることができる;
前記基板及び前記プレートを並進の方向に互いに相対的に移動可能なように取り付け、該プレートを、前記構造化された基板上に溶液の前記検体を適用するように該基板に対して傾斜させることができる;
前記プレートは柔軟性を有していてもよい;
前記プレートを機能化及び/又は構造化することができる;
該検出集合体は、前記基板及び前記検体を取り囲む制御された雰囲気を有する封入体をさらに含み得る;
前記封入体が前記雰囲気中における前記液体の成分の分圧の調節手段を含む;
該検出集合体は、気体の又は気体混合物の流れをポンプ送り及び/又は注入するためのチャネルをさらに含み得る;
該検出集合体は、熱エネルギー及び/又は電磁気エネルギーを供給するための装置をさらに含み得る;
前記制御手段を、前記基板の前記構造化された表面上における蒸発の制御を修正し、前記三重線の変位の速度を少なくとも1つの所望の値に調整するための、前記三重線の観察のための少なくとも1つの装置と結合する;
前記分圧の調節手段を、前記雰囲気中における前記液体の成分の分圧を修正するための及び前記三重線の変位の速度を少なくとも1つの所望の値に調整するための、前記三重線の観察のための少なくとも1つの装置と結合することができる;
前記基板の前記表面が、形態学的構造、生物学的構造、化学的構造、静電的構造、磁気的構造、又はこれらの構造の組合せから選択される構造を含み得る;
前記親溶液が、コロイド溶液、事前調整した溶液、事前濾過した溶液、界面活性剤及び較正標的を有する溶液、色により、蛍光により、若しくは集積バーコードにより標識した標的を包含する溶液、又は溶液中において既に結合した標的プローブ結合物を包含する溶液であってもよい;並びに/又は
前記親溶液及び/又は前記検体が複数種の溶媒を含み得る。
【0035】
本発明の他の特徴を、以下に示す詳細な説明において、添付した図面を参照して提示する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】基板上に置き、自然蒸発させている検体の概略側面図である。
【図2】三重線の近傍における蒸発を制御する手段を含む、本発明による装置の第1の実施の形態の概略側面図である。
【図3】検体を閉じ込める上部プレートを含む、本発明による装置の第2の実施の形態の概略側面図である。
【図4】基板よりも湿潤性が低い、検体を閉じ込める上部プレートを含む、図3における実施の形態の変形形態の概略側面図である。
【図5】検体を閉じ込めるための移動可能な上部プレートを含む、本発明による装置の第3の実施の形態の概略側面図である。
【図6】制御された雰囲気を有する封入体を含む、本発明による装置の第4の実施の形態の概略側面図である。
【図7】本発明による装置の基板の表面上でトラップされた分析物の2工程の特異的分別を含む、本発明による方法の有利な実施の形態の概略図である。
【図8】本発明による方法の適用後における分析物を検出するための基板の遠近図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の説明では、分析物は、マイクロ物体(細胞、細菌等)、ナノ物体(ナノ粒子、特定の分子(医薬品、農薬等))、生体分子(DNA、タンパク質等)、又はウイルス、胞子等であり得る。
【0038】
本発明は、表面上に植え付けられ組織化された機能的及び特異的な部位(すなわちプローブ)上で所要の標的分析物をトラップするために、対流による毛細管集合の技法と、マイクロエレクトロニクス及び表面機能化の技法を組み合わせたものである。この組織化されたトラップにより、単純な工程でのプローブ/標的結合の区域(zones)の検出、ひいては単純な工程での分析が可能となる。
【0039】
本方法は、概して3つの段階で行われる。
1)マイクロエレクトロニクスの技法により高密度化及び組織化された所定のプローブ部位による表面の機能化。これらのプローブは特異的な固定化力を発揮して、標的の特異的なサンプリングを可能とする。
2)必要に応じて事前に調整される、標的分析物を含有するコロイド溶液の対流による毛細管集合。これにより、基板の表面上で溶液が自然に濃縮される。
3)標的により占有されたプローブ部位の割合の検出。これにより、事前の較正に基づき、試験した溶液中における標的分析物の濃度が得られる。
【0040】
プローブ部位により機能化された表面は、図1において腔21により概略的に表される。
【0041】
より具体的には、本発明による方法の原理は、較正された液体の検体を分析対象の親溶液からサンプリングすること、すなわちランダムに採取することからなる。この親溶液は、未知濃度の決定対象のナノ物体を有する。引き続き、本発明による方法は、構造化された基板上で分析物を濃縮及び捕捉すること、並びに捕捉された分析物の数を計数することからなる。次に、これらの捕捉物の1つ又は複数に関する統計解析により、或る特定の信頼区間で初期溶液の濃度を推定することが可能となる。固定量の採取では、親溶液が濃縮されるにつれて、捕捉物はより多くの所要の分析物を含有するようになる。さらに、得られる捕捉部位の数が大きくなると、分析結果は親溶液の組成をより表すようになる。
【0042】
本発明は、三重線と称される特定の区域において検体の蒸発を制御することに基づいている。この線は、検体の液体と、特定の蒸発の条件(分圧、温度、基板の湿潤性)において液体が蒸発することが可能である雰囲気と、検体を置く固体基板との間の界面である。この制御により、基板の構造化された表面上の三重線の変位を制御することが可能となる(図2〜図5を参照されたい)。
【0043】
したがって、本発明による方法は、分析物をトラップする基板であって、その表面の少なくとも1部分がマイクロ構造化又はナノ構造化される、分析物をトラップする基板上に検体を置く工程b)を含む。このようにして、液体検体は、基板の構造化された表面を少なくとも部分的に覆う。
【0044】
この表面を形態学的に構造化することができる、すなわちこの表面は、その間に分析物が固定化されるレリーフ22を含む。しかしながら、この表面を機能的に構造化することもできる。換言すれば、この表面は、化学的な、生物学的な、静電的な、電気的な又は磁気的なトラップ部位を含み得る。これらの部位はそれぞれ、目的の分析物をトラップするための、表面上に固定された化学的な若しくは生物学的なプローブにより、又は静電場、電場若しくは磁場を供給する電極の存在により得られる。表面を、試験対象の溶液と比較して異なる湿潤性(又は溶解性)を有する区域により構造化することもできる。
【0045】
好ましくは、表面の構造を、秩序だったランダムでないパターンにより組織化して、その後の基板の自動分析を容易にする。
【0046】
次に、本発明による方法は、液体/基板/雰囲気の三重線付近における、検体からの液体(又は溶媒)の制御された蒸発の工程c)であって、液体(又は溶媒)が雰囲気中に蒸発するにつれてこの三重線が基板上を連続的に移動するような、蒸発の工程を含む。
【0047】
この制御により、液体(又は溶媒)の蒸発が三重線付近に局在化する。対照的に、自然蒸発、すなわち制御されない蒸発(図1において点線による波型の矢印3により表される)によると、液体/基板/雰囲気の三重線の領域だけでなく雰囲気と接触した液体の表面Sの全体が、蒸発の対象となる。
【0048】
言うまでもなく、実際には、蒸発の制御は、三重線よりも広い隣接する区域VTにおいて、可能な限り三重線の近くで行われる。重要なことは、液体(又は溶媒)の蒸発の現象が、雰囲気に曝された検体1の表面Sの残りと比較して近傍VTにおいて、特に三重線T上で優勢であるはずであることである。
【0049】
本発明による方法により、検体中に存在する分析物が、液体検体内の対流性流れのために三重線で自然に、また非常に効果的に濃縮される。これらの対流性流れは、三重線から開始され優勢である蒸発が潜熱の供給を必要とするにつれて自然に現れ、これにより大量の熱交換が生じる。これらの対流性流れは、三重線Tの近傍VTへと分析物を移送し、ひいてはこれを強く濃縮する。
【0050】
次に、本発明による方法により、形態学的に、化学的に、生物学的に、静電的に、電気的に又は磁気的にマイクロ構造化又はナノ構造化された表面を含む基板上で、三重線の近傍VTにおいて濃縮された目的の分析物が捕捉される。
【0051】
トラップは、ナノ構造化された表面上における分析物を含有する溶媒の蒸発前線(すなわち三重線)の連続的な制御された変位の間に行われる。この三重線の位置に存在する毛細管力により、蒸発時の三重線の変位の間に、これらの分析物が、構造化により規定される基板の正確な点(プローブ)へと方向付けられる。プローブは、特異的な力により、所要の標的分析物を選択及び固定化する。換言すれば、三重線は、分析物を濃縮し、これらを拡散させ、基板の表面20の構造中にこれらをプレーティングする自然なスクレイパー又はブラシの端部としての働きをする。
【0052】
基板の表面は好ましくは、主に非湿潤性(液体が水である場合には疎水性、液体が溶媒である場合には疎溶媒性(solvophobic))となるように処理される。これにより、基板の表面の構造に向かう毛細管力による分析物の閉じ込めが促進される。
【0053】
基板の表面上における分析物をトラップする構造の数により、本方法の分解能及び感度が決定される。この数を非常に高くすることができるので、本方法は非常に高感度である。部位の寸法設計、及び/又はそれらの機能化により、形状、電荷、又は化学的な、生物学的な若しくは磁気的な機能に基づいて選択的である分析を想定することが可能となる。例えば、2mm×2mmの上に百万個を超える部位を作り出し、これにより基板上で検体の分析物を多数採取することを可能とし、この数を初期溶液における標的の濃度と直接関連付けることが可能である。
【0054】
したがって、本発明による方法は、その実行の自動化を容易にする組織化された捕捉を行うものである。
【0055】
この方法により、工程d)において、構造化された表面を分析することが可能となる。この分析は、迅速な2進検出(タイプ0又はタイプ1の)、及びひいては検体中における濃度の統計的測定であり得る。捕捉物を、光学的に(反射、位相差、暗視野、蛍光、落射蛍光、LIBS、レーザービーム回折、表面プラズモン共鳴(SPR)、ナノトレーサーの使用)、又は静電場、電場若しくは磁場により、検出することができる。トラップされた標的上における蛍光粒子の固定、及びその後従来の分析スキャナーを使用して表面を分析することを、想定することもできる。
【0056】
分析物の捕捉物を、トラップすることによりその光学スペクトルが変化するプローブ単位を(例えば、回折格子として、又はジナノ粒子若しくはトリナノ粒子のクラスターとして)個別に構造化することにより、位置決めすることもできる。
【0057】
したがって、マイクロ構造化又はナノ構造化された表面のプローブは各々、或る光学スペクトルを有する回折格子を規定する。その後工程d)を、工程c)での分析物の捕捉後における各回折格子の光学スペクトルを分析することにより実行する。
【0058】
親溶液中における分析物の濃度を、換算表を使用して、基板上で検出された分析物の数から推定する。この表は、基板の表面上における構造の所定の数に関して、分析物により占有された部位の数を、親溶液中における初期濃度と関連付けるものである。
【0059】
この濃度の推定に関しても、複数の変形形態が考え得る。
【0060】
例えば、親溶液中における分析物の濃度を、親溶液に添加することができ、その色により、集積(integrated)量子箱により規定される光学バーコードを読み取ることにより、又はその蛍光により検出可能である既知濃度の別の分析物との関係において、比較により得ることができる。基板の機能化された表面に対するそれらの割合が、所要の分析物の濃度を直接与える。
【0061】
親溶液中における分析物の濃度を、同一の標的分析物の種々の標準溶液から、同じ蒸発の条件におけるサンプリングの方法を較正することにより、得ることもできる。
【0062】
親溶液中における分析物の濃度を、事前に同じ実験条件において、標準溶液の分析物の閾値濃度(その濃度から、標的受容部位の最初の充填欠損が現れる)を見出すことにより、得ることもできる。
【0063】
親溶液中における分析物の濃度を、全ての部位の充填をもたらす限界濃度を最小化する標準溶液から標的のトラップの実験条件を事前に決定することにより、得ることもできる。これらの条件は、超高感度分析に好適であると考えられる。
【0064】
親溶液中における分析物の濃度を、各トラップによりもたらされる強度測定により、得ることもできる。
【0065】
この目的のために、分析物を、(例えばサイズにおいて)異なるプローブ単位により捕捉することができる。その後、1単位当たり複数の標的分析物を、疎水性又は疎溶媒性の区間により隔てられた親水性単位又は親溶媒性(solvophilic)単位上で、その上における三重線の迅速な変位により、例えば較正された液体の液滴(必要に応じて異なる体積を有する)をトラップすることにより捕捉する。後者の場合には、溶媒の蒸発により、分析物のクラスターも作り出される。
【0066】
より正確には、マイクロ構造化又はナノ構造化された表面は好ましくは、種々のサイズの腔を有する。三重線によるこの表面の迅速な走査により、種々の体積を有するマイクロ液滴又はナノ液滴が種々のサイズを有するこれらの腔中に残される。したがって、マイクロ液滴又はナノ液滴の体積が小さいほど、そこに分析物が見出される可能性は統計的に低い。
【0067】
その後、各マイクロ液滴又はナノ液滴に関する少なくとも1つの物理的特性又は化学的特性の強度の変化を測定する。例えば、各腔の光学特性の強度の変化をマイクロ液滴又はナノ液滴の蒸発後に測定し、マイクロ液滴又はナノ液滴の体積の関数として強度を表す曲線をプロットする。
【0068】
この曲線により、いかなる分析物をも含まないいわゆる「限界」マイクロ液滴又はナノ液滴の体積を決定することが可能となる。したがって、親溶液中における分析物の濃度は、限界マイクロ液滴又はナノ液滴の体積により除算すると1に等しい。
【0069】
トラップの種々の段階(phases)の収率(yield)が既知であれば、親溶液中における分析物の濃度を最終的に得ることができる。
【0070】
好ましくは、本発明による方法は、工程c)の前に、無駄な(parasitic)捕捉物を除去するための洗浄工程を含む。
【0071】
以下に記載する計算の一例により、本発明による方法の性能を評価することが可能となる。
【0072】
100nmの直径を有するナノ粒子をトラップするのに好適な寸法の形態学的構造を有する2mm×2mmの表面を有する基板10を作製する。例えば、表面20は、2μmの間隔で100nmの直径を有する腔21を有する。したがってこの基板10は、トラップ腔21の形態の106個のプローブを有する。
【0073】
検体を、該検体が含有するナノ粒子の直径におよそ等しい厚みでこの表面上に置く。検体は、既知濃度(1ml当たり1011個)の標的ナノ粒子を含む。各ナノ粒子の直径は100nmである。
【0074】
したがって、置かれた検体の体積は4×10−7cm3(又はml)(10−5×4×10−2)であり、該検体は1011×4×10−7=40000個のナノ粒子を有する。
【0075】
液体の自然な制御されない蒸発(図1に示したもののような)によれば、これらのナノ粒子が動かないと仮定すると、統計的には、それらが完全に位置付けられる腔のみに充填されるはずである。106個の腔によるランダムなこのサンプリングは、4×10−7mlの層から106×10−5×10−5×10−5ml(すなわち400中にナノ粒子1個分)の体積を奪う(すなわち検体中では100(40000/400)個のナノ粒子)。
【0076】
本発明による制御された蒸発によると、同一の検体を用いた場合、全てのナノ粒子が基板の腔によりトラップされることが実験的に観察される。したがって、三重線の近傍における対流性流れにより、ナノ粒子のトラップが改善される。したがって、このような基板を用いると、検体の濃度が許せば、最大106個のナノ粒子をトラップすることが可能である。したがって本発明による方法は、自然な制御されない蒸発の最大10000(106/100)倍の効率をもたらす。
【0077】
引き続き、種々の濃度の親溶液により較正を行う。例えば、濃度を低くしていくことができる。これにより、分析物により占有された部位の数と初期濃度との間の換算表を作成することができる。
【0078】
したがって本発明による方法は極めて高感度である。
【0079】
したがって、1ミリリットル当たり6×105個のナノ粒子(又はフェムトモーラー)の検出限界を達成するためには、106個の単位のうち、捕捉された(106/1011)×(6×105)個のクラスター、すなわち6個のナノ物体を検出することが可能であれば十分である。全ての単位を充填するのに109個/mlという検体の出発濃度で十分であったならば、この数は600まで増大する。したがって、1ミリリットル当たり5×108個のナノ粒子の濃度により、106個の形態学的単位を全て充填することが可能となることが実験的に決定された。106個のうちの1個の捕捉物は、1ml当たり5×108/106=500個未満のナノ物体、又はナノ物体が分子である場合(500/(6.02×1023))×103=8×10−19mol/l=0.8アトモーラー未満の分子という分析物の濃度に対応すると考えられる。
【0080】
4cm2上に分布させた捕捉部位が108個の場合、検出限界は、1ml当たり5個のナノ物体、又は0.01アトモーラーとなると考えられる。
【0081】
この算出は、本発明による方法により、簡単に及び経済的に、並びに非常に小さい捕捉表面を使用して、したがって小さい試料体積を用いて、従来の技法の検出限界を超えることが可能となることを実証している。本方法により、4mm2上に分布させた106個の捕捉部位により1ml当たり500個のナノ物体、又はアトモーラーの、及び4cm2上に分布させた108個の構造により100倍低い(1ml当たり5個のナノ物体、又は0.01アトモーラー)検出限界に到達することが可能となる。
【0082】
本発明による方法により、非常に複合的な液体環境(水、血清等)中に、また親溶液で分析物を懸濁した後で、空気、土壌、食品中に置かれた分析物の検出/分析が可能となる。
【0083】
この方法は、使用するのが簡単であり、迅速で、経済的で、持ち運び可能で、非常に高感度である。この方法は、ナノ毒物学、生体診断法、ナノ生体医療、薬理学からナノセキュリティまで広がる広い範囲の用途を開く。
【0084】
本発明による方法の適用のための、分析物を検出するための集合体を、図2〜図5に示す。
【0085】
図2における実施の形態は最も単純である。目的の分析物2を含む検体1又は液滴を、標的分析物をトラップするためのマイクロ構造化又はナノ構造化された表面20(すなわちプローブ)を有する基板10上に置く。
【0086】
三重線における液滴1の蒸発を、基板中に温度勾配を作り出すことにより促進することができる。
【0087】
したがって、この集合体を、三重線Tの近傍VT付近において検体の制御された蒸発(点線による波型の矢印5により表される)を行わせるように設置される、検体の蒸発の制御手段30と一体化させることができる。換言すれば、制御手段により、雰囲気Atmに曝された検体の表面の残りにおいて起こり得る自然蒸発(点線による波型の矢印3により表される)の現象と比較して優勢である三重線Tの近傍VTにおける蒸発が促進される。
【0088】
制御手段30は例えば、三重線Tの近傍VTにおいて液体を気化させるのに十分な量のエネルギーを供給するために好適なかつ較正された放射線Rを放射することができる。代替的には、制御手段30は、液体の限界層を迅速に排除する気体流であり得る。
【0089】
液体が雰囲気中に蒸発するにつれて、三重線Tは基板上を移動する。図2では、三重線は左から右へと移動する。
【0090】
三重線Tの近傍VTにおける蒸発の現象を維持するために、制御手段30を、並進的に又は回転的に(on a pivot)移動可能なように取り付けることができる。
【0091】
制御手段30を、制御手段30及び/又は放射された放射線による蒸発の制御を修正し(adapting)、ひいては基板の構造化された表面上における三重線の変位の速度を所望の値に調節するために、三重線Tの少なくとも1つの観察装置(示していない)と結合することもできる。これにより、プローブ上への標的分析物の堆積の速度を制御することが可能となる。
【0092】
しかしながら、検体が開放環境にある、すなわち検体が雰囲気と接触する面積が大きいため、三重線における蒸発の制御はこの構成では困難であると判明することがある。実際に、自然蒸発の現象が、雰囲気の状態に応じて、分析物の濃縮の及びひいてはそのトラップの現象の低減に極めて重要な役割を果たすことがある。さらに、蒸発は液滴の輪状線に従って起こる。
【0093】
図3に示した第2の実施の形態によれば、本発明による方法は、基板上に検体を置いた後であって検体の制御された蒸発を誘導する前に、液体検体1と接触させてプレート40を置く工程であって、基板10とプレート40との間に液体検体1を封入するように、置く工程を含む。したがって、前述の装置においては雰囲気に曝されている液体表面の部分が、覆われる。プレートは好ましくは、三重線の移動を観察すること、及びその近傍における蒸発を制御することが可能であるように透明である。例えば、検体溶媒が水である場合、プレートをガラスから作製することができる。
【0094】
この集合体は、閉じ込めた環境における蒸発を可能とするマイクロ流体セルを形成する。換言すれば、三重線Tの近傍VTのみが雰囲気Atmに曝される。この集合体は、より良好な蒸発の制御をもたらし、プローブ捕捉部位の充填に関するより高い再現性をもたらす。
【0095】
制御手段30は、プレート40と基板10との間で、及び三重線Tの近傍VTにおいて検体1にメニスカスを形成する蒸発を行わせる。このメニスカスの図3において右に向かう後方移動は、蒸発が進行するにつれて、これも図3において右に向かう三重線Tの変位をもたらす。この集合体においては、検体と、雰囲気と、プレート40との間にも三重線が存在する。しかしながら、このプレート40は構造化されていないため、分析物はプレート40と結合しない。プレート40を構造化して、分析物がこれと結合するのを防止することもできる。対流性流れF1のために、分析物は基板10の構造化された表面に向かって濃縮される。
【0096】
基板10が部分的な湿潤性のみを有し、毛細管力を使用して単位に向かって分析物を集合させるように、基板10を処理する。単位は、それらの特異的な力の作用下で標的を固定することにより標的を選択する。
【0097】
図4に示した実施の形態では、プレート40は、プレート40を基板よりも湿潤性が低いものとする表面処理を施されている。その後プレート40が、蒸発が進行するにつれて、図4において右に向かって三重線を引っ張り、基板10上における三重線の変位を方向付ける。集合は準静的である。
【0098】
基板の湿潤性と上部プレートの湿潤性との間のこの平衡は繊細である。基板は、構造の間における純粋な対流による緻密な集合を回避できぬほど過度の親水性を有するものであってはならない。困難が生じる場合には、基板の二重の機能化(単位の中では引力、及び単位の外側では反発力)が効果的な変形形態であろう。別の解決策は、プレートを構造化することである。
【0099】
図5に示した前述のマイクロ流体セルの変形形態は、上部プレート40の矢印F2aの方向への制御された並進が追加されたものである。並進の方向(矢印F2a)は、基板10の平面とほぼ平行である。この並進は、三重線の近くにおけるメニスカスの拡散、及びひいては表面20の構造における分析物のトラップを制御するという利点をもたらす。代替的には又は組合せとしては、制御された並進は、基板10の矢印F2bの方向への制御された並進であり得る。この実施の形態において重要なことは、基板10とプレート40との間の相対移動が適用されることである。
【0100】
メニスカスの高さを調整するために、上部プレート40と基板10との間の間隔を調整するための装置を提供することも可能である。
【0101】
上部プレート40を、構造化された基板上にコロイド溶液を適用するスクレイパーの(又はブラシの)役割を果たすように、わずかに傾斜させることができ、柔軟性を有する材料から作製することができ、並進の方向F2aに変位させることができる。
【0102】
プレート40の傾斜は、調整可能であり得る。
【0103】
図2〜図5に示した検出集合体を、三重線の移動の速度を制御するために等温である又は温度勾配を有する、制御された雰囲気を有する封入体中に配置することができる。
【0104】
図6に示した1つの実施の形態は、基板10、プレート40及び検体1を取り囲む封入体50と、図5に示した移動可能な上部プレート40を備えた(及び/又は移動可能な基板10を備えた)マイクロ流体セルとを組み合わせたものである。封入体50により、マイクロ流体セルを単独で用いた場合のように雰囲気を閉じ込めることだけでなく、雰囲気を制御することが可能となる。
【0105】
より単純な1つの実施の形態(示していない)では、上部プレートは移動可能でない。そうすると、封入体が、検体1と接触することができる覆い51を含むことにより同じ機能を提供すれば、上部プレートは不必要であり得る。
【0106】
封入体を好ましくは、雰囲気中における検体の液体の成分(溶媒及び溶質)の分圧の調節手段60と組み合わせる。
【0107】
例えば、検体の溶媒が水である場合、検体が三重線の近傍において蒸発すると、雰囲気中における水の分圧が増大する。したがって、溶媒が蒸発するのがより困難になるにつれて、相転移の速度論(kinetics)は変化する。
【0108】
調節手段60は、分圧を水の飽和蒸気圧の閾値未満に維持することができる。その場合、調節手段60は(矢印F3に従って)蒸気の形態の幾らかの水の排除を行い、それにより検体は蒸発し続けることができる。そうして三重線Tは、この排除により、基板10の表面20上を制御下で移動する。
【0109】
調節手段60は、分圧を上述した閾値より上に維持することもできる。その場合、調節手段60は蒸気の形態の水の排除を阻止し、検体の蒸発を停止させる。したがって、封入体中における水の分圧の選択により、基板10の表面20上における三重線Tの移動の速度が調節される。複数の溶媒を含む溶液の場合には、このメカニズムにより、該溶媒のうちの1つの蒸発を阻止することが可能である。
【0110】
調節手段60を、分圧の選択により基板の構造化された表面上における三重線の移動の速度を所望の値に調整するために、三重線Tの観察装置(示していない)と結合することもできる。
【0111】
したがって、雰囲気の分圧を調節することにより、基板上における三重線の移動の速度に影響を与えることが可能である。そうして基板10の構造化された表面20による分析物のトラップが最適化される。
【0112】
調節手段60は、雰囲気の温度を制御する、又は基板上に勾配を作り出すこともできる。
【0113】
プレートと一体化させた、気体を吸引する又は吹き飛ばす(blowing)ための装置も、蒸発の限界層のより急速な排除(溶媒の気化した分子の排除)により、三重線の移動の速度を制御することができる。
【0114】
したがって、毛細管現象及び特異的な力の作用により、マイクロ物体(細菌細胞等)の、ナノ物体(ナノ粒子、特定の分子、例えば医薬品又は農薬)の、生体分子(DNA、タンパク質等)の、又はウイルス、胞子等の捕捉を行わせることが可能である。
【0115】
本発明による方法は、表面の分析の工程c)の前に、1つ又は複数の事前に機能化された表面上に工程b)の後に得られる基板を適用することによる、トラップされた分析物の特異的分別の、1つ又は複数の付加的な工程を含み得る。そうして、使用した事前に機能化された表面の特定の標的分析物を、基板から取り出すことが可能である。その後、そのようにして得られる表面を、上述した工程c)により分析する。トラップされた分析物の特異的分別のこの工程を、図7a〜図7fに示す。
【0116】
図7aは、工程b)の後に得られる基板10を示す。3種類の分析物2a、2b及び2cが、基板10の機能化された表面20により捕捉されている。
【0117】
基板10の表面20を、分析物2aを特異的に固定することが可能な機能化された表面20aを備えた基板10aに対して、矢印F4の方向に適用する(図7b及び図7c)。
【0118】
その後、基板10を、基板10aから矢印F5の方向に引き上げる。それにより基板10aは、基板10の表面20から分析物2aを引き抜く(図7d)。
【0119】
分析物2bを特異的に固定することが可能な機能化された表面20bを備えた基板10bを用いて、操作を繰り返す。
【0120】
図7b〜図7dに示した特異的分別の工程の後に得られる基板10の表面20を、基板10bに対して適用する(図7e)。
【0121】
その後、基板10を、基板10bから矢印F5の方向に引き上げる。それにより基板10bは、基板10の表面20から分析物2bを引き抜き、ここで表面20は分析物2cのみを含む。
【0122】
最後に、そのようにして得られる基板10、10a及び10bの表面を、上述した工程c)により分析する。
【0123】
表面20a〜表面20bの移動力、すなわち引力が、基板10の表面20の単位中における分析物2a〜分析物2bの保持力よりも大きくなるように、表面20a〜表面20bの機能化を修正しなければならない。有利には、基板10に関しては、PDMSのように表面20a及び表面20bより低い表面エネルギーを有する基板を使用する。
【0124】
これらの、トラップされた分析物の特異的分別の付加的な工程(複数可)により、各種の分析物の自動的な特異的分析が可能となる。
【0125】
図8は、本発明による方法を実施した後における分析物検出基板の構造化された表面を示す。この図では、100nmの直径を有するナノ粒子2が、基板10の構造化された表面20上における2μmの間隔での腔中にトラップされ、その後ガラス基板10a上に移される。
【0126】
本発明による方法を、産業の多くの部門において適用することができる。より具体的には、
ナノ毒物学(すなわち、ヒトにより人工的に作製され、環境中に分散したナノ物体の検出):特定の分子(農薬、医薬品、洗浄剤等)の、ナノ粒子の、又は燃焼産物(灰、ダイオキシン等)の検出;これは必要に応じて、それらの有害な効果を研究することを可能とする。
ナノ生体医療、すなわち医療分析、生物学的異常(DNA、タンパク質等)の検出、ウイルス又は細菌の検出をより早期化するのに好適なマイクロ技法及びナノ技法の開発、分析「ベクター」としてのナノ粒子の使用、ウイルスの及び細菌の増殖に好ましい又は好ましくない媒体の調査等。
医薬品をスクリーニングするための薬理学。
胞子、ウイルス、細菌等の超高感度検出によるナノセキュリティ。
表面処理、特にそれらの表面欠陥の修復。
【0127】
他の実施の形態によれば、
・基板の表面の機能化は、以下を含み得る:
表面上における分析物の緻密な集合を得るための、「対流による集合」と称される非常に親水性の高い表面の全体的な機能化;
(ナノ物体をサイズにより選別するための)異なる直径を有する、(別の基板上で緩衝すること(buffering)により目的の標的の回収を可能とするための)異なる高さを有する、(より良好な高密度化のための、及び/又は全体読み取り(total reading)技法を開発するための)異なる間隔及び幾何学的配置を有する、形態学的単位の製造;
共有結合型(チオール型)及び/若しくは水素結合型の、並びに/又はファンデルワールス力(炭素を含有する基)、アミン結合、イオン結合による、双極子/双極子相互作用による標的との相互作用を促進する、並びに/又は(化学的コントラスト、例えばオクタデシルトリメトキシシラン(OTS)、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTES)等により、親水性/疎水性−親溶媒性/疎溶媒性コントラストにより)単位の間の空間においてこれらの相互作用を促進しない化学的コントラストによるプローブ単位の製造;
生物学的コントラスト、例えばビオチン、ストレプトアビジン、ポリエチレングリコール等によるプローブ単位の製造;
単位の間における抗体の、ペプチドの及びDNAのトラップを妨げるための、或る特定の区域の不動態化(passivating)表面化学(例えばOTS、PEG(ポリエチレングリコール)又はBSA(ウシ血清アルブミン)等)の使用;
分極した又は分極可能な分析物をトラップするための、正の又は負の電荷の局所注入;
磁気的トラップ、例えば球状のナノ粒子、ロッド、テープ、トーラス及び/又はそのスタックの使用;
上述した手順のうちの2つ以上の組合せ;
その光学特性、例えば反射性が分析の要素となる(prepare)高い又は低い表面エネルギーを有する種々の材料、例えばガラス、ケイ素、酸化ケイ素、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、ITO(酸化インジウムスズ)の標的基板の使用;
4mm2と異なる表面積を有する、及び106と異なるトラップ部位の数を有する基板の使用。
【0128】
・親溶液を、以下から選択することができる:
標的の天然コロイド溶液;
水系(water-based)溶液;
異なる性質を有する溶媒:有機溶媒、エーテル、アセトン、クロロホルム、オクタン、ヘプタン、ノナン、デカン、トリクロロエチレンに基づく溶液;
血清の、血液の、生物学的器官の検体;
好適な溶媒中における固体の溶液;
空気中に、エアロゾル中に、又は任意の複合的な媒体中に存在する分析物の、好適な溶媒中への蓄積による回収物及び事前濃縮物;
所要の標的/プローブのトラップが既に実施された溶液(プローブに、色、蛍光等により規定される一体化したバーコード(量子箱により規定される)を有するナノ粒子を支持(事前に基板に固定(pre-substrated))することができる);
蛍光マーカーで標識した標的;
複合的な溶液;
不必要な標的を濾過することにより、これの除去により事前に調整した溶液。
【0129】
・集合を容易にするための、親溶液中への界面活性剤(Triton X等)の、及び溶媒の導入(これは事前調整でもある);
【0130】
・相対濃度を決定することができるようにするための、親溶液中への濃度及び挙動が既知である較正標的の導入。
【0131】
・基板上に親溶液の検体を置くことは、以下のものを利用することができる:
置かれた液滴を拡散させるための、基板の湿潤性の(水に対しては親水性の、溶媒に対しては親溶媒性の)特徴、又は逆に、基板上における構造化された区域外への拡散を制限するための、中間の湿潤性/脱湿潤性(dewetting)の(水に対しては部分的に疎水性の)特徴。
制御された厚みを有する液体の層を規定する、及び三重線以外での溶媒の蒸発を防止する目的で、液滴上に上部プレートを置くこと。
この上部プレートを機能化して、自然に三重線の変位を行わせる(引っ張る)目的で、非湿潤性の(水に対しては基板より疎水性の)ものとすることができる;
このプレートをわずかに傾斜させて、準直線的な蒸発の三重線を規定すること、その端部で十分に規定されたメニスカスを形成すること、及び空気との接触面を最小化することができる。
この上部プレートを構造化することができる。
【0132】
・制御された蒸発の工程b)は、以下を利用することができる:
対流性流れにより、液滴の残りの量においてよりも三重線で効果的であり、この三重線上で分析物を濃縮する自然蒸発;この自然蒸発を、三重線と液滴の残りとの間における温度勾配を適用することにより制御することができる。
溶媒の分圧の局所的な低減(ポンプ送り)、蒸発させた限界層のより急速な排除(気体流による)、又は吸引、加熱、レーザー照射、基板上に温度勾配を作り出す基板の対応する部分の加熱等による、この三重線の近傍における溶媒の強制的な蒸発;
液体の液滴と接触させてプレートを置くこと。これにより、基板とプレートとの間に液体の液滴が封入され、三重線の近くの領域に蒸発が制限され閉じ込められる;
【0133】
・制御された蒸発の工程b)を、以下のもののために使用することができる:
最初にプローブを集合させ、引き続き繰り返してこれらのプローブ上に標的を集合させること;
三重線の迅速な変位により溶液のマイクロ液滴又はナノ液滴を採取し、そうして分析物の配置物をトラップすること、又はマイクロ−ナノサンプリング若しくはマイクロ−ナノ実験を行うこと。
【0134】
・三重線の変位を追跡するための装置を、画像解析と組み合わせたフィードバックエレクトロニクスに基づき、基板上における液体検体の堆積を自動化するために、一体化させることができる;
【0135】
・基板は、第1の材料のものであってもよく、異なる材料からなる構造化された捕捉層により完全に又は部分的に覆われていてもよい。
【0136】
・分析物検出集合体は、気体流のポンプ送り及び/又は注入のためのチャネルをさらに含んでいてもよい。特に、図3〜図6に示した実施の形態では、プレート40は、これらの気体流のポンプ送り及び/又は注入のためのこれらのチャネルを支持することができる。
【0137】
・親溶液は、コロイド溶液、界面活性剤及び較正標的を包含する溶液、蛍光標識した標的を包含する溶液、又は溶液中において既に結合した(effected)標的プローブ結合物を包含する溶液であり得る。後者の場合においては、基板10の構造化された表面が、プローブ、標的又は集合体を選択的に又は順次固定するために、選択され得る;
【0138】
・親溶液及び/又は検体は、複数の溶媒を含み得る。
【0139】
本発明の新規な特徴のうちの1つは、三重線の近傍において溶媒の蒸発を制御することであり、これにより緻密な配置においてこの三重線上で所要の標的分析物が自然に濃縮される。この濃縮の現象は、蒸発する液体中における対流性流れの発生(その役割は蒸発に必要とされる熱エネルギー(すなわち潜熱)を供給することである)から生じるものである。構造化された表面上に置かれた検体の制御された蒸発の使用により、分析物のサイズによる、又は化学的特性、生物学的特性、静電的特性、電気的特性及び/若しくは磁気的特性による分析が可能となる。
【0140】
別の新規な特徴は、非常に小さい表面積を占有する多数の機能的な又は選択的な受容性プローブ部位上におけるサンプリングを達成することにより、非常に低い検出限界に到達することからなる。したがって本発明は、100分の数マイクロリットルの検体の分析に好適である。
【0141】
さらに、プローブの組織化により、プローブ−標的の捕捉を検出するための自動化された技法を使用することが可能となる。したがって本発明により、所要の分析物により占有された及び占有されていない部位の十分に規定されたパターン、並びに単純であり自動化することができる分析を得ることが可能となる。
【0142】
したがって本発明は、分析の速度を増大させ、分析の費用を低下させ、多数の分析を並行して行うことを可能とするラボオンチップ(laboratory on a chip)を提唱する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中における目的の分析物を検出及び定量する方法に、並びに実施装置に関する。
【0002】
所要の目的の分析物を、以下で「標的」と称する。
【0003】
本発明による方法により、1ミリリットル当たり最大5個のナノ物体、又はアトモル濃度未満の分子という分解能の限界に到達することが可能となる。液体は複合的であり得る、すなわち液体は、検出に関してその割合のみが関心の対象となる複数種の分析物を含み得る。
【背景技術】
【0004】
農薬(殺真菌剤、殺虫剤、除草剤)、殺鼠剤、軟体動物駆除剤、肥料、洗浄剤、ホルモン及び医薬品の使用の増大により、それらの組成に含まれる分子が環境中に、ひいては植物及び食品中に分散することが多数の研究において示されている。
【0005】
さらに、燃料の燃焼反応により、多数のナノ粒子、鉛及び黒鉛が大気中に排出される。
【0006】
機能性ナノ粒子の計画的な応用も、自然環境中へのそれらの分散という問題をもたらしている。
【0007】
環境に対する及びヒトに対するこれらの分子及びナノ粒子のリスクを評価するために、それらを検出すること、それらの移動性、それらの反応性、それらの生態毒性及びそれらの残留性を理解することが必要である。必要とされる重要なパラメータは特に、それらの存在の検出、及び上記存在の経時的な変化(evolution)のモニタリングである。
【0008】
実際に、水、空気、土壌、植物又は食品中に存在する分析物を検出及び分析することを可能とすることは、重要な環境上の課題である。
【0009】
それは医療上の課題でもある。非常に低い濃度レベルにおいて、ヒトの検体、例えば血清、血液又は器官の組成を迅速に得ること、DNA鎖、タンパク質及び循環バイオマーカー(循環バイオマーカーはがんの転移性再発の前駆物質である)を捕捉すること、細菌又はウイルスを捕捉すること、胞子を検出することを可能とすることは、医療診断法を確立するために必須であり、疾患の早期治療のための基礎を提供する。それらの発症の継続的なモニタリングは、医療処置の有効性を測定し必要に応じて該処置を修正するために、及びひいてはオーダーメード医療へと進歩させるために不可欠である。
【0010】
DNA配列の分析を利用することは、「プログノスティクス(prognostics)」(疾患の長期発症の可能性を高める遺伝子異常の特定を表す用語)の開発を始めるのに必要となる。
【0011】
したがって、分析回数を低減するために、血清中における例えばコピー数の小さい核酸配列を、その増幅のためにPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を利用することなく検出することも、医療分析又はウイルス学に関する主要な課題である。
【0012】
したがって、特異的かつ非常に高感度であり、複合的であり得る媒体中に分散した微量の多数の分析物(特定の分子、ナノ粒子又はマイクロ粒子、細菌、ウイルス、タンパク質、循環バイオマーカー、DNA、胞子等)の存在について簡単で、迅速で、ルーチン的なin situ及び低コストの検出を可能とする、感受性の高い測定技法を得ることが必須である。これらの分析物は例えば、その50%が優先的な除去を要する水法(指令76/464/EEC及び200/60/EEC)に列挙される33種類の有害物質である。
【0013】
水に関するこの総括指令は微量成分の実験室分析部門の開発の動機付けとなっているが、産業レベルで提唱されている技法はほとんどない。
【0014】
「ナノ材料:ヒトの健康に対する及び環境に対する影響」と題する仏国環境・労働衛生安全庁(French Agency for Environmental and Labor Health Safety)(AFSSET)により発表された研究(2006年)は、空気中のエアロゾル(排出ガス、煙)中における、水中における、及び土壌中におけるナノ粒子の検出技法及び検出限界に関する現況の調査結果を提示している。
【0015】
第1のカテゴリーは、分析前の分析物の濃縮を行わずに行う、非特異的な検出技法(すなわち、該技法は全ての粒子の全体的な特徴付けを提供する)を含む。これらは、米国TSI社により及び独国GRIMM社により市販されている「凝縮核計数器」(CNC)と称される技法である。これらは、粒子数を毎秒光学的に検出することからなる。粒子径は5nm〜1μmであることがあり、濃度は0.1粒子/ml〜106粒子/mlであることがある。これらは、特に空気及びエアロゾルの場合に、適用可能である。
【0016】
第2のカテゴリーは、非特異的ではあるが分析前の分析物の濃縮又は集積を伴って行う検出技法を含む。これらは、格子の連続体(succession)を介したエアロゾルの通過によって、分析物をサイズにより分類する拡散バッテリーである。粒子計数器と連結することにより、2nm〜200nmのサイズを有する分析物の各粒度分布の割合を決定することが可能となる。ELPI(電子式低圧インパクタ)技法は、7nm〜10μmのサイズを有する荷電した粒子を慣性により事前に選択し、その後該粒子を電気的に検出する。それらの濃度は非常に高くなければならない(1ml当たり1000個〜10000個の粒子)。移動度の電気的分析(走査型移動度粒子径測定器、すなわちSMPS)により、微分型移動度分析器(DMA)及び粒子計数器を用いて3nm〜50nmの直径を有する粒子を検出することが可能となる。
【0017】
別のカテゴリーは、一般的に分析前の濃縮を伴って行う、特異的な検出技法を含む。30nm〜300nmのサイズを有する大気中の又は土壌の粒子を溶液中に配置し、その後イオン交換クロマトグラフィにより又は質量分析により分析する。別の技法は、レーザー誘起蛍光法(LIBS)を使用する。最後に、或る特定のナノ粒子の活性表面を認識するナノトレーサーを事前に固定することにより、該粒子を特異的に検出することが可能となる。
【0018】
有機粒子の水溶液の場合においては、顕微鏡法(電子顕微鏡法又は原子間力顕微鏡法)により、サイズ分離(限外濾過、遠心分離、流動分別)により、クロマトグラフィにより、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)と称される検出技法を伴う結合分別(coupling fractionation)により、及びレーザー検出により、分析物の計数を利用する技法に言及することができる。
【0019】
また、無機ナノ粒子の場合においては、走査型電子顕微鏡(SEM)、光の拡散、X線の又は中性子の拡散、「流れ場(Flow Field)流動分別」(FFFF)、流体力学クロマトグラフィ(HDC)、エレクトロスプレー及び電気的移動度、ゼータ電位(又は表面電荷の測定)、原子吸光、並びに軽元素C−H−N−Sの分析による観察の技法に言及することができる。
【0020】
しかしながら、これらの技法は、サイズの、形状の、凝集の状態の、表面電荷の、及び軽元素の化学組成の分析にしか好適ではない。これらの技法が特異的である場合、それらの検出限界は濃縮後でも乏しく、1g/l〜10ng/l(又は108ナノ粒子/ml〜109ナノ粒子/ml)の範囲である。
【0021】
それらの定量は容易ではなく、それらの感度は不十分であり(すなわち、それらの検出限界の濃度の低さは不十分であり)、特に、一般的に複合的な媒体における検出が必要とされる粒子に対して特異性が不十分である。これらは過度に高価でもあり、これらは現場の条件において持ち運び可能で(portable)なく、これらは日常的な使用にとって実用的でなく、実験室において高度に専門化された操作技術者を必要とする。
【0022】
生体由来の分子の検出(又は生体診断法(biodiagnostics))に関する研究により、はるかに正確な検出限界が得られる。例えば、「生体診断法におけるナノ構造」(非特許文献1)では、第1表が、核酸に関して到達した検出限界を示している。それらは、使用する技法に応じて、ナノモーラー(nM又は10−9mol/l)とフェムトモーラー(fM又は10−15mol/l)との間で変動する。PCR反応の産物を使用する一つの方法によってのみ、0.1fMに到達することが可能となる。しかしながら、この方法は、ヌクレオチド鎖を増幅するのに必要とされる時間のために、長時間を要する。第2表がタンパク質の検出限界を示しており、この限界もnMとfMとの間で変動する。バーコード増幅技法のみが0.030fM(30aM)に到達することを可能とするが、この技法は複雑であり実施が困難である。
【0023】
この検証により、溶液に対する検出及び分析のための実に様々な技法が存在することが示される。「最も高感度な」技法は、実験室において開発されており、高価であり、速度が遅く、あまり持ち運び可能ではなく、多くの場合非特異的である。環境汚染及び生体診断法の分野に関して信頼できるものであるためには、微量成分を検出するためのいかなる技法も、低コストで、迅速で、持ち運び可能で、選択的であり、1ミリリットル当たり105個〜106個のナノ物体の検出閾値、又は分析物が分子である場合フェムトモーラーの検出閾値に到達し、可能であればこれを下回るように十分な分解能を有するものでなければならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】N Chem. Rev. 105 (2005) 1547-1562
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の包括的な目的は、複合的な溶液中に存在する分析物を検出及び定量する方法であって、持ち運び可能で、迅速で、選択的であり、多数種の分析物に対して使用することができ、経済的であり、1ミリリットル当たり6×105個のナノ物体若しくはマイクロ物体の、又は分析物が分子である場合フェムトモルオーダーの検出閾値に到達する又はさらにはこれを超えることを可能とする方法を提供することである。
【0026】
より具体的には、本発明の目的は、単純な又は複合的な溶液中におけるナノ粒子又はマイクロ粒子の分析物の、特定の分子の分析物の、及びヌクレオチドの検出を可能とすることである。本発明は、単純な又は複合的な溶液中における胞子、ウイルス又は細菌等の分析物の検出を可能とすることも目的とする。複合的な溶液を、空気、水、土壌、食品、生物等に存在する分析物を表すように、事前に調整することができる。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、溶液中に存在する又は配置された目的の標的分析物を検出する方法であって、検体中における目的の標的分析物の自然濃縮の段階、及びプローブを備えた表面上における対流による有向性毛細管集合による目的の分析物の捕捉の段階を組み合わせた、並びに構造化された表面の分析の段階を含む、方法を提唱する。これらのプローブは、形態学的(topographic)単位、化学的単位、生物学的単位、静電的単位又は磁気的単位である。
【0028】
この目的で、本発明は、親溶液から得られる液体検体中における目的の標的分析物を検出及び定量する方法であって、該液体は特定の蒸発の条件において雰囲気中で蒸発することが可能であり、該方法は、以下の工程:
b)前記検体(1)を、分析物捕捉プローブを規定するマイクロ構造化又はナノ構造化された表面(20)を有する基板(10)上に、該液体検体が該基板の該構造化された表面を少なくとも部分的に覆うように置く工程、
c)液体/基板/雰囲気の三重線の近傍において該検体の制御された蒸発を行わせる工程であって、該液体が該雰囲気中に蒸発するにつれてこの三重線が前記基板の前記構造化された表面上を制御された速度で移動するように、及び前記プローブに向かう対流による毛細管集合により前記標的分析物が捕捉されるように、行わせる工程、
d)工程c)の後に得られる前記基板の前記構造化された表面を分析する工程
を含む、方法に関する。
【0029】
慣例により、上記の方法の工程は、アルファベット順に行う。
【0030】
高感度、すなわち非常に低濃度の標的分析物を検出する可能性を達成するために、本発明は、基板の表面の分析の自動化を可能とする、基板の表面上に配置される「プローブ」と称される組織化された部位における目的の標的分析物の特異的なトラップと併せた、親溶液の自然濃縮の効果的で再現可能な技法の組合せの使用を提唱する。
【0031】
したがって、三重線の近傍における検体の制御された蒸発により対流性流れが生成され、それによりその近傍において分析物が濃縮される。さらに、液体が雰囲気中に蒸発するにつれて三重線が基板の構造化された表面上を移動すると、標的分析物は構造化された表面に向かって毛細管力により押し動かされ、その後プローブにより発揮される特異的な力により捕捉される(固定化される)。
【0032】
他の実施の形態によれば:
工程d)は、前記基板の前記マイクロ構造化又はナノ構造化された表面により工程c)で捕捉された前記分析物を計数すること、及び前記親溶液中における分析物の濃度を得るために捕捉された標的分析物の数を換算表と比較することにより実施することができる;
工程d)は、工程c)で捕捉された前記分析物を計数すること(該分析物はその濃度が既知である基準分析物、及びその濃度が未知であるが該基準分析物の濃度に比例する目的の分析物を含む)、並びに該基準分析物と該目的の分析物との割合を比較することにより実施することができる;
工程b)は、前記基板と該プレートとの間に該液体検体を封入するように前記液体検体と接触させてプレートを置くことをさらに含み得る;
前記検体の制御された蒸発の間、前記プレート及び前記基板を、該基板とおよそ平行に並進(translation)の方向に互いに相対的に移動させることができる;
前記基板及び前記検体を、制御された雰囲気を有する封入体中に閉じ込めることができる;
工程c)の間、前記制御された雰囲気中における前記液体の成分の分圧を調節することが可能である;
前記三重線における前記液体の蒸発を行わせる及びこれを制御するのに十分な量のエネルギーを供給することにより工程c)を適用することができる;
該方法は、前記親溶液の事前調整の工程a)を含み得る;
前記親溶液の前記事前調整が、該親溶液から不要な分析物を除去することから、新たな標的分析物を添加することから、及び/又は前記構造化された表面上における対流による毛細管集合を促進する溶媒若しくは新たな分子を添加することからなっていてもよい;
該方法は、前記基板の前記表面上に前記標的分析物に特異的なプローブ分子を含む液体の液滴を該液滴が該基板の該表面を少なくとも部分的に覆うように置くこと、その後液滴/基板/雰囲気の三重線の近傍において該液体が該雰囲気中に蒸発するにつれてこの三重線が前記基板の前記構造化された表面上を制御された速度で移動するように前記液滴の制御された蒸発を行わせること、及び前記プローブ分子が前記基板の前記表面と結合して該基板の該表面上にプローブネットワーク構造を作り出すように、行わせることからなる前記構造化された表面の調製の予備工程を含み得る;
該方法は、工程d)において蛍光光度法により計数することを可能とするための前記捕捉された標的分析物上へのフルオロフォアの固定の中間工程を工程c)と工程d)との間に含み得る;
該方法は、1つ又は複数の機能化された捕捉表面上に工程c)の後に得られる前記基板を適用することによる、工程c)でトラップされた前記分析物の特異的分別の、少なくとも1つの工程を工程c)と工程d)との間にさらに含み得る;
工程c)の間、前記三重線が一定速度で移動するように蒸発を制御することができる;
工程c)の間、前記三重線が可変速度で移動するように蒸発を制御することができる;
前記表面上の前記プローブが各々、或る光学スペクトルを有するネットワークを規定し、工程c)での前記分析物の捕捉後における各ネットワークの該光学スペクトルを分析することにより工程d)を行うことができる;並びに/又は
前記表面上の前記プローブが種々のサイズを有する腔であり、工程c)が種々のサイズを有する腔中にトラップされた種々のサイズを有するマイクロ液滴又はナノ液滴中の前記標的分析物の捕捉をもたらし、工程d)を各マイクロ液滴又はナノ液滴に関する少なくとも1つの物理的特性又は化学的特性の強度の変化を測定すること、いかなる分析物をも含有しない「限界」マイクロ液滴又はナノ液滴の体積を決定すること(前記親溶液中における前記分析物の濃度は該限界マイクロ液滴又はナノ液滴の体積により除算すると1に等しい)により適用することができる。
【0033】
本発明は、
前記目的の分析物を含有する親溶液の検体を受容することを意図した構造化された表面を有する基板、
前記溶液の蒸発を制御する手段、
前記基板の前記マイクロ構造化又はナノ構造化された表面を分析する手段
を含む、上記の方法を実施するための分析物を検出及び定量する集合体にも関する。
【0034】
他の実施の形態によれば:
前記分析の手段が、前記基板の前記構造化された表面によりトラップされた分析物を計数すること、及び前記親溶液中における分析物の濃度を得るために先に得られた分析物の数を換算表と比較することが可能である;
該検出集合体は、前記基板と前記プレートとの間に該検体を封入するように溶液の前記検体と接触させて設置することを意図したプレートをさらに含み得る;
前記基板及び前記プレートを、並進の方向に移動可能なように及び互いとおよそ平行に取り付けることができる;
前記基板及び前記プレートを並進の方向に互いに相対的に移動可能なように取り付け、該プレートを、前記構造化された基板上に溶液の前記検体を適用するように該基板に対して傾斜させることができる;
前記プレートは柔軟性を有していてもよい;
前記プレートを機能化及び/又は構造化することができる;
該検出集合体は、前記基板及び前記検体を取り囲む制御された雰囲気を有する封入体をさらに含み得る;
前記封入体が前記雰囲気中における前記液体の成分の分圧の調節手段を含む;
該検出集合体は、気体の又は気体混合物の流れをポンプ送り及び/又は注入するためのチャネルをさらに含み得る;
該検出集合体は、熱エネルギー及び/又は電磁気エネルギーを供給するための装置をさらに含み得る;
前記制御手段を、前記基板の前記構造化された表面上における蒸発の制御を修正し、前記三重線の変位の速度を少なくとも1つの所望の値に調整するための、前記三重線の観察のための少なくとも1つの装置と結合する;
前記分圧の調節手段を、前記雰囲気中における前記液体の成分の分圧を修正するための及び前記三重線の変位の速度を少なくとも1つの所望の値に調整するための、前記三重線の観察のための少なくとも1つの装置と結合することができる;
前記基板の前記表面が、形態学的構造、生物学的構造、化学的構造、静電的構造、磁気的構造、又はこれらの構造の組合せから選択される構造を含み得る;
前記親溶液が、コロイド溶液、事前調整した溶液、事前濾過した溶液、界面活性剤及び較正標的を有する溶液、色により、蛍光により、若しくは集積バーコードにより標識した標的を包含する溶液、又は溶液中において既に結合した標的プローブ結合物を包含する溶液であってもよい;並びに/又は
前記親溶液及び/又は前記検体が複数種の溶媒を含み得る。
【0035】
本発明の他の特徴を、以下に示す詳細な説明において、添付した図面を参照して提示する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】基板上に置き、自然蒸発させている検体の概略側面図である。
【図2】三重線の近傍における蒸発を制御する手段を含む、本発明による装置の第1の実施の形態の概略側面図である。
【図3】検体を閉じ込める上部プレートを含む、本発明による装置の第2の実施の形態の概略側面図である。
【図4】基板よりも湿潤性が低い、検体を閉じ込める上部プレートを含む、図3における実施の形態の変形形態の概略側面図である。
【図5】検体を閉じ込めるための移動可能な上部プレートを含む、本発明による装置の第3の実施の形態の概略側面図である。
【図6】制御された雰囲気を有する封入体を含む、本発明による装置の第4の実施の形態の概略側面図である。
【図7】本発明による装置の基板の表面上でトラップされた分析物の2工程の特異的分別を含む、本発明による方法の有利な実施の形態の概略図である。
【図8】本発明による方法の適用後における分析物を検出するための基板の遠近図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の説明では、分析物は、マイクロ物体(細胞、細菌等)、ナノ物体(ナノ粒子、特定の分子(医薬品、農薬等))、生体分子(DNA、タンパク質等)、又はウイルス、胞子等であり得る。
【0038】
本発明は、表面上に植え付けられ組織化された機能的及び特異的な部位(すなわちプローブ)上で所要の標的分析物をトラップするために、対流による毛細管集合の技法と、マイクロエレクトロニクス及び表面機能化の技法を組み合わせたものである。この組織化されたトラップにより、単純な工程でのプローブ/標的結合の区域(zones)の検出、ひいては単純な工程での分析が可能となる。
【0039】
本方法は、概して3つの段階で行われる。
1)マイクロエレクトロニクスの技法により高密度化及び組織化された所定のプローブ部位による表面の機能化。これらのプローブは特異的な固定化力を発揮して、標的の特異的なサンプリングを可能とする。
2)必要に応じて事前に調整される、標的分析物を含有するコロイド溶液の対流による毛細管集合。これにより、基板の表面上で溶液が自然に濃縮される。
3)標的により占有されたプローブ部位の割合の検出。これにより、事前の較正に基づき、試験した溶液中における標的分析物の濃度が得られる。
【0040】
プローブ部位により機能化された表面は、図1において腔21により概略的に表される。
【0041】
より具体的には、本発明による方法の原理は、較正された液体の検体を分析対象の親溶液からサンプリングすること、すなわちランダムに採取することからなる。この親溶液は、未知濃度の決定対象のナノ物体を有する。引き続き、本発明による方法は、構造化された基板上で分析物を濃縮及び捕捉すること、並びに捕捉された分析物の数を計数することからなる。次に、これらの捕捉物の1つ又は複数に関する統計解析により、或る特定の信頼区間で初期溶液の濃度を推定することが可能となる。固定量の採取では、親溶液が濃縮されるにつれて、捕捉物はより多くの所要の分析物を含有するようになる。さらに、得られる捕捉部位の数が大きくなると、分析結果は親溶液の組成をより表すようになる。
【0042】
本発明は、三重線と称される特定の区域において検体の蒸発を制御することに基づいている。この線は、検体の液体と、特定の蒸発の条件(分圧、温度、基板の湿潤性)において液体が蒸発することが可能である雰囲気と、検体を置く固体基板との間の界面である。この制御により、基板の構造化された表面上の三重線の変位を制御することが可能となる(図2〜図5を参照されたい)。
【0043】
したがって、本発明による方法は、分析物をトラップする基板であって、その表面の少なくとも1部分がマイクロ構造化又はナノ構造化される、分析物をトラップする基板上に検体を置く工程b)を含む。このようにして、液体検体は、基板の構造化された表面を少なくとも部分的に覆う。
【0044】
この表面を形態学的に構造化することができる、すなわちこの表面は、その間に分析物が固定化されるレリーフ22を含む。しかしながら、この表面を機能的に構造化することもできる。換言すれば、この表面は、化学的な、生物学的な、静電的な、電気的な又は磁気的なトラップ部位を含み得る。これらの部位はそれぞれ、目的の分析物をトラップするための、表面上に固定された化学的な若しくは生物学的なプローブにより、又は静電場、電場若しくは磁場を供給する電極の存在により得られる。表面を、試験対象の溶液と比較して異なる湿潤性(又は溶解性)を有する区域により構造化することもできる。
【0045】
好ましくは、表面の構造を、秩序だったランダムでないパターンにより組織化して、その後の基板の自動分析を容易にする。
【0046】
次に、本発明による方法は、液体/基板/雰囲気の三重線付近における、検体からの液体(又は溶媒)の制御された蒸発の工程c)であって、液体(又は溶媒)が雰囲気中に蒸発するにつれてこの三重線が基板上を連続的に移動するような、蒸発の工程を含む。
【0047】
この制御により、液体(又は溶媒)の蒸発が三重線付近に局在化する。対照的に、自然蒸発、すなわち制御されない蒸発(図1において点線による波型の矢印3により表される)によると、液体/基板/雰囲気の三重線の領域だけでなく雰囲気と接触した液体の表面Sの全体が、蒸発の対象となる。
【0048】
言うまでもなく、実際には、蒸発の制御は、三重線よりも広い隣接する区域VTにおいて、可能な限り三重線の近くで行われる。重要なことは、液体(又は溶媒)の蒸発の現象が、雰囲気に曝された検体1の表面Sの残りと比較して近傍VTにおいて、特に三重線T上で優勢であるはずであることである。
【0049】
本発明による方法により、検体中に存在する分析物が、液体検体内の対流性流れのために三重線で自然に、また非常に効果的に濃縮される。これらの対流性流れは、三重線から開始され優勢である蒸発が潜熱の供給を必要とするにつれて自然に現れ、これにより大量の熱交換が生じる。これらの対流性流れは、三重線Tの近傍VTへと分析物を移送し、ひいてはこれを強く濃縮する。
【0050】
次に、本発明による方法により、形態学的に、化学的に、生物学的に、静電的に、電気的に又は磁気的にマイクロ構造化又はナノ構造化された表面を含む基板上で、三重線の近傍VTにおいて濃縮された目的の分析物が捕捉される。
【0051】
トラップは、ナノ構造化された表面上における分析物を含有する溶媒の蒸発前線(すなわち三重線)の連続的な制御された変位の間に行われる。この三重線の位置に存在する毛細管力により、蒸発時の三重線の変位の間に、これらの分析物が、構造化により規定される基板の正確な点(プローブ)へと方向付けられる。プローブは、特異的な力により、所要の標的分析物を選択及び固定化する。換言すれば、三重線は、分析物を濃縮し、これらを拡散させ、基板の表面20の構造中にこれらをプレーティングする自然なスクレイパー又はブラシの端部としての働きをする。
【0052】
基板の表面は好ましくは、主に非湿潤性(液体が水である場合には疎水性、液体が溶媒である場合には疎溶媒性(solvophobic))となるように処理される。これにより、基板の表面の構造に向かう毛細管力による分析物の閉じ込めが促進される。
【0053】
基板の表面上における分析物をトラップする構造の数により、本方法の分解能及び感度が決定される。この数を非常に高くすることができるので、本方法は非常に高感度である。部位の寸法設計、及び/又はそれらの機能化により、形状、電荷、又は化学的な、生物学的な若しくは磁気的な機能に基づいて選択的である分析を想定することが可能となる。例えば、2mm×2mmの上に百万個を超える部位を作り出し、これにより基板上で検体の分析物を多数採取することを可能とし、この数を初期溶液における標的の濃度と直接関連付けることが可能である。
【0054】
したがって、本発明による方法は、その実行の自動化を容易にする組織化された捕捉を行うものである。
【0055】
この方法により、工程d)において、構造化された表面を分析することが可能となる。この分析は、迅速な2進検出(タイプ0又はタイプ1の)、及びひいては検体中における濃度の統計的測定であり得る。捕捉物を、光学的に(反射、位相差、暗視野、蛍光、落射蛍光、LIBS、レーザービーム回折、表面プラズモン共鳴(SPR)、ナノトレーサーの使用)、又は静電場、電場若しくは磁場により、検出することができる。トラップされた標的上における蛍光粒子の固定、及びその後従来の分析スキャナーを使用して表面を分析することを、想定することもできる。
【0056】
分析物の捕捉物を、トラップすることによりその光学スペクトルが変化するプローブ単位を(例えば、回折格子として、又はジナノ粒子若しくはトリナノ粒子のクラスターとして)個別に構造化することにより、位置決めすることもできる。
【0057】
したがって、マイクロ構造化又はナノ構造化された表面のプローブは各々、或る光学スペクトルを有する回折格子を規定する。その後工程d)を、工程c)での分析物の捕捉後における各回折格子の光学スペクトルを分析することにより実行する。
【0058】
親溶液中における分析物の濃度を、換算表を使用して、基板上で検出された分析物の数から推定する。この表は、基板の表面上における構造の所定の数に関して、分析物により占有された部位の数を、親溶液中における初期濃度と関連付けるものである。
【0059】
この濃度の推定に関しても、複数の変形形態が考え得る。
【0060】
例えば、親溶液中における分析物の濃度を、親溶液に添加することができ、その色により、集積(integrated)量子箱により規定される光学バーコードを読み取ることにより、又はその蛍光により検出可能である既知濃度の別の分析物との関係において、比較により得ることができる。基板の機能化された表面に対するそれらの割合が、所要の分析物の濃度を直接与える。
【0061】
親溶液中における分析物の濃度を、同一の標的分析物の種々の標準溶液から、同じ蒸発の条件におけるサンプリングの方法を較正することにより、得ることもできる。
【0062】
親溶液中における分析物の濃度を、事前に同じ実験条件において、標準溶液の分析物の閾値濃度(その濃度から、標的受容部位の最初の充填欠損が現れる)を見出すことにより、得ることもできる。
【0063】
親溶液中における分析物の濃度を、全ての部位の充填をもたらす限界濃度を最小化する標準溶液から標的のトラップの実験条件を事前に決定することにより、得ることもできる。これらの条件は、超高感度分析に好適であると考えられる。
【0064】
親溶液中における分析物の濃度を、各トラップによりもたらされる強度測定により、得ることもできる。
【0065】
この目的のために、分析物を、(例えばサイズにおいて)異なるプローブ単位により捕捉することができる。その後、1単位当たり複数の標的分析物を、疎水性又は疎溶媒性の区間により隔てられた親水性単位又は親溶媒性(solvophilic)単位上で、その上における三重線の迅速な変位により、例えば較正された液体の液滴(必要に応じて異なる体積を有する)をトラップすることにより捕捉する。後者の場合には、溶媒の蒸発により、分析物のクラスターも作り出される。
【0066】
より正確には、マイクロ構造化又はナノ構造化された表面は好ましくは、種々のサイズの腔を有する。三重線によるこの表面の迅速な走査により、種々の体積を有するマイクロ液滴又はナノ液滴が種々のサイズを有するこれらの腔中に残される。したがって、マイクロ液滴又はナノ液滴の体積が小さいほど、そこに分析物が見出される可能性は統計的に低い。
【0067】
その後、各マイクロ液滴又はナノ液滴に関する少なくとも1つの物理的特性又は化学的特性の強度の変化を測定する。例えば、各腔の光学特性の強度の変化をマイクロ液滴又はナノ液滴の蒸発後に測定し、マイクロ液滴又はナノ液滴の体積の関数として強度を表す曲線をプロットする。
【0068】
この曲線により、いかなる分析物をも含まないいわゆる「限界」マイクロ液滴又はナノ液滴の体積を決定することが可能となる。したがって、親溶液中における分析物の濃度は、限界マイクロ液滴又はナノ液滴の体積により除算すると1に等しい。
【0069】
トラップの種々の段階(phases)の収率(yield)が既知であれば、親溶液中における分析物の濃度を最終的に得ることができる。
【0070】
好ましくは、本発明による方法は、工程c)の前に、無駄な(parasitic)捕捉物を除去するための洗浄工程を含む。
【0071】
以下に記載する計算の一例により、本発明による方法の性能を評価することが可能となる。
【0072】
100nmの直径を有するナノ粒子をトラップするのに好適な寸法の形態学的構造を有する2mm×2mmの表面を有する基板10を作製する。例えば、表面20は、2μmの間隔で100nmの直径を有する腔21を有する。したがってこの基板10は、トラップ腔21の形態の106個のプローブを有する。
【0073】
検体を、該検体が含有するナノ粒子の直径におよそ等しい厚みでこの表面上に置く。検体は、既知濃度(1ml当たり1011個)の標的ナノ粒子を含む。各ナノ粒子の直径は100nmである。
【0074】
したがって、置かれた検体の体積は4×10−7cm3(又はml)(10−5×4×10−2)であり、該検体は1011×4×10−7=40000個のナノ粒子を有する。
【0075】
液体の自然な制御されない蒸発(図1に示したもののような)によれば、これらのナノ粒子が動かないと仮定すると、統計的には、それらが完全に位置付けられる腔のみに充填されるはずである。106個の腔によるランダムなこのサンプリングは、4×10−7mlの層から106×10−5×10−5×10−5ml(すなわち400中にナノ粒子1個分)の体積を奪う(すなわち検体中では100(40000/400)個のナノ粒子)。
【0076】
本発明による制御された蒸発によると、同一の検体を用いた場合、全てのナノ粒子が基板の腔によりトラップされることが実験的に観察される。したがって、三重線の近傍における対流性流れにより、ナノ粒子のトラップが改善される。したがって、このような基板を用いると、検体の濃度が許せば、最大106個のナノ粒子をトラップすることが可能である。したがって本発明による方法は、自然な制御されない蒸発の最大10000(106/100)倍の効率をもたらす。
【0077】
引き続き、種々の濃度の親溶液により較正を行う。例えば、濃度を低くしていくことができる。これにより、分析物により占有された部位の数と初期濃度との間の換算表を作成することができる。
【0078】
したがって本発明による方法は極めて高感度である。
【0079】
したがって、1ミリリットル当たり6×105個のナノ粒子(又はフェムトモーラー)の検出限界を達成するためには、106個の単位のうち、捕捉された(106/1011)×(6×105)個のクラスター、すなわち6個のナノ物体を検出することが可能であれば十分である。全ての単位を充填するのに109個/mlという検体の出発濃度で十分であったならば、この数は600まで増大する。したがって、1ミリリットル当たり5×108個のナノ粒子の濃度により、106個の形態学的単位を全て充填することが可能となることが実験的に決定された。106個のうちの1個の捕捉物は、1ml当たり5×108/106=500個未満のナノ物体、又はナノ物体が分子である場合(500/(6.02×1023))×103=8×10−19mol/l=0.8アトモーラー未満の分子という分析物の濃度に対応すると考えられる。
【0080】
4cm2上に分布させた捕捉部位が108個の場合、検出限界は、1ml当たり5個のナノ物体、又は0.01アトモーラーとなると考えられる。
【0081】
この算出は、本発明による方法により、簡単に及び経済的に、並びに非常に小さい捕捉表面を使用して、したがって小さい試料体積を用いて、従来の技法の検出限界を超えることが可能となることを実証している。本方法により、4mm2上に分布させた106個の捕捉部位により1ml当たり500個のナノ物体、又はアトモーラーの、及び4cm2上に分布させた108個の構造により100倍低い(1ml当たり5個のナノ物体、又は0.01アトモーラー)検出限界に到達することが可能となる。
【0082】
本発明による方法により、非常に複合的な液体環境(水、血清等)中に、また親溶液で分析物を懸濁した後で、空気、土壌、食品中に置かれた分析物の検出/分析が可能となる。
【0083】
この方法は、使用するのが簡単であり、迅速で、経済的で、持ち運び可能で、非常に高感度である。この方法は、ナノ毒物学、生体診断法、ナノ生体医療、薬理学からナノセキュリティまで広がる広い範囲の用途を開く。
【0084】
本発明による方法の適用のための、分析物を検出するための集合体を、図2〜図5に示す。
【0085】
図2における実施の形態は最も単純である。目的の分析物2を含む検体1又は液滴を、標的分析物をトラップするためのマイクロ構造化又はナノ構造化された表面20(すなわちプローブ)を有する基板10上に置く。
【0086】
三重線における液滴1の蒸発を、基板中に温度勾配を作り出すことにより促進することができる。
【0087】
したがって、この集合体を、三重線Tの近傍VT付近において検体の制御された蒸発(点線による波型の矢印5により表される)を行わせるように設置される、検体の蒸発の制御手段30と一体化させることができる。換言すれば、制御手段により、雰囲気Atmに曝された検体の表面の残りにおいて起こり得る自然蒸発(点線による波型の矢印3により表される)の現象と比較して優勢である三重線Tの近傍VTにおける蒸発が促進される。
【0088】
制御手段30は例えば、三重線Tの近傍VTにおいて液体を気化させるのに十分な量のエネルギーを供給するために好適なかつ較正された放射線Rを放射することができる。代替的には、制御手段30は、液体の限界層を迅速に排除する気体流であり得る。
【0089】
液体が雰囲気中に蒸発するにつれて、三重線Tは基板上を移動する。図2では、三重線は左から右へと移動する。
【0090】
三重線Tの近傍VTにおける蒸発の現象を維持するために、制御手段30を、並進的に又は回転的に(on a pivot)移動可能なように取り付けることができる。
【0091】
制御手段30を、制御手段30及び/又は放射された放射線による蒸発の制御を修正し(adapting)、ひいては基板の構造化された表面上における三重線の変位の速度を所望の値に調節するために、三重線Tの少なくとも1つの観察装置(示していない)と結合することもできる。これにより、プローブ上への標的分析物の堆積の速度を制御することが可能となる。
【0092】
しかしながら、検体が開放環境にある、すなわち検体が雰囲気と接触する面積が大きいため、三重線における蒸発の制御はこの構成では困難であると判明することがある。実際に、自然蒸発の現象が、雰囲気の状態に応じて、分析物の濃縮の及びひいてはそのトラップの現象の低減に極めて重要な役割を果たすことがある。さらに、蒸発は液滴の輪状線に従って起こる。
【0093】
図3に示した第2の実施の形態によれば、本発明による方法は、基板上に検体を置いた後であって検体の制御された蒸発を誘導する前に、液体検体1と接触させてプレート40を置く工程であって、基板10とプレート40との間に液体検体1を封入するように、置く工程を含む。したがって、前述の装置においては雰囲気に曝されている液体表面の部分が、覆われる。プレートは好ましくは、三重線の移動を観察すること、及びその近傍における蒸発を制御することが可能であるように透明である。例えば、検体溶媒が水である場合、プレートをガラスから作製することができる。
【0094】
この集合体は、閉じ込めた環境における蒸発を可能とするマイクロ流体セルを形成する。換言すれば、三重線Tの近傍VTのみが雰囲気Atmに曝される。この集合体は、より良好な蒸発の制御をもたらし、プローブ捕捉部位の充填に関するより高い再現性をもたらす。
【0095】
制御手段30は、プレート40と基板10との間で、及び三重線Tの近傍VTにおいて検体1にメニスカスを形成する蒸発を行わせる。このメニスカスの図3において右に向かう後方移動は、蒸発が進行するにつれて、これも図3において右に向かう三重線Tの変位をもたらす。この集合体においては、検体と、雰囲気と、プレート40との間にも三重線が存在する。しかしながら、このプレート40は構造化されていないため、分析物はプレート40と結合しない。プレート40を構造化して、分析物がこれと結合するのを防止することもできる。対流性流れF1のために、分析物は基板10の構造化された表面に向かって濃縮される。
【0096】
基板10が部分的な湿潤性のみを有し、毛細管力を使用して単位に向かって分析物を集合させるように、基板10を処理する。単位は、それらの特異的な力の作用下で標的を固定することにより標的を選択する。
【0097】
図4に示した実施の形態では、プレート40は、プレート40を基板よりも湿潤性が低いものとする表面処理を施されている。その後プレート40が、蒸発が進行するにつれて、図4において右に向かって三重線を引っ張り、基板10上における三重線の変位を方向付ける。集合は準静的である。
【0098】
基板の湿潤性と上部プレートの湿潤性との間のこの平衡は繊細である。基板は、構造の間における純粋な対流による緻密な集合を回避できぬほど過度の親水性を有するものであってはならない。困難が生じる場合には、基板の二重の機能化(単位の中では引力、及び単位の外側では反発力)が効果的な変形形態であろう。別の解決策は、プレートを構造化することである。
【0099】
図5に示した前述のマイクロ流体セルの変形形態は、上部プレート40の矢印F2aの方向への制御された並進が追加されたものである。並進の方向(矢印F2a)は、基板10の平面とほぼ平行である。この並進は、三重線の近くにおけるメニスカスの拡散、及びひいては表面20の構造における分析物のトラップを制御するという利点をもたらす。代替的には又は組合せとしては、制御された並進は、基板10の矢印F2bの方向への制御された並進であり得る。この実施の形態において重要なことは、基板10とプレート40との間の相対移動が適用されることである。
【0100】
メニスカスの高さを調整するために、上部プレート40と基板10との間の間隔を調整するための装置を提供することも可能である。
【0101】
上部プレート40を、構造化された基板上にコロイド溶液を適用するスクレイパーの(又はブラシの)役割を果たすように、わずかに傾斜させることができ、柔軟性を有する材料から作製することができ、並進の方向F2aに変位させることができる。
【0102】
プレート40の傾斜は、調整可能であり得る。
【0103】
図2〜図5に示した検出集合体を、三重線の移動の速度を制御するために等温である又は温度勾配を有する、制御された雰囲気を有する封入体中に配置することができる。
【0104】
図6に示した1つの実施の形態は、基板10、プレート40及び検体1を取り囲む封入体50と、図5に示した移動可能な上部プレート40を備えた(及び/又は移動可能な基板10を備えた)マイクロ流体セルとを組み合わせたものである。封入体50により、マイクロ流体セルを単独で用いた場合のように雰囲気を閉じ込めることだけでなく、雰囲気を制御することが可能となる。
【0105】
より単純な1つの実施の形態(示していない)では、上部プレートは移動可能でない。そうすると、封入体が、検体1と接触することができる覆い51を含むことにより同じ機能を提供すれば、上部プレートは不必要であり得る。
【0106】
封入体を好ましくは、雰囲気中における検体の液体の成分(溶媒及び溶質)の分圧の調節手段60と組み合わせる。
【0107】
例えば、検体の溶媒が水である場合、検体が三重線の近傍において蒸発すると、雰囲気中における水の分圧が増大する。したがって、溶媒が蒸発するのがより困難になるにつれて、相転移の速度論(kinetics)は変化する。
【0108】
調節手段60は、分圧を水の飽和蒸気圧の閾値未満に維持することができる。その場合、調節手段60は(矢印F3に従って)蒸気の形態の幾らかの水の排除を行い、それにより検体は蒸発し続けることができる。そうして三重線Tは、この排除により、基板10の表面20上を制御下で移動する。
【0109】
調節手段60は、分圧を上述した閾値より上に維持することもできる。その場合、調節手段60は蒸気の形態の水の排除を阻止し、検体の蒸発を停止させる。したがって、封入体中における水の分圧の選択により、基板10の表面20上における三重線Tの移動の速度が調節される。複数の溶媒を含む溶液の場合には、このメカニズムにより、該溶媒のうちの1つの蒸発を阻止することが可能である。
【0110】
調節手段60を、分圧の選択により基板の構造化された表面上における三重線の移動の速度を所望の値に調整するために、三重線Tの観察装置(示していない)と結合することもできる。
【0111】
したがって、雰囲気の分圧を調節することにより、基板上における三重線の移動の速度に影響を与えることが可能である。そうして基板10の構造化された表面20による分析物のトラップが最適化される。
【0112】
調節手段60は、雰囲気の温度を制御する、又は基板上に勾配を作り出すこともできる。
【0113】
プレートと一体化させた、気体を吸引する又は吹き飛ばす(blowing)ための装置も、蒸発の限界層のより急速な排除(溶媒の気化した分子の排除)により、三重線の移動の速度を制御することができる。
【0114】
したがって、毛細管現象及び特異的な力の作用により、マイクロ物体(細菌細胞等)の、ナノ物体(ナノ粒子、特定の分子、例えば医薬品又は農薬)の、生体分子(DNA、タンパク質等)の、又はウイルス、胞子等の捕捉を行わせることが可能である。
【0115】
本発明による方法は、表面の分析の工程c)の前に、1つ又は複数の事前に機能化された表面上に工程b)の後に得られる基板を適用することによる、トラップされた分析物の特異的分別の、1つ又は複数の付加的な工程を含み得る。そうして、使用した事前に機能化された表面の特定の標的分析物を、基板から取り出すことが可能である。その後、そのようにして得られる表面を、上述した工程c)により分析する。トラップされた分析物の特異的分別のこの工程を、図7a〜図7fに示す。
【0116】
図7aは、工程b)の後に得られる基板10を示す。3種類の分析物2a、2b及び2cが、基板10の機能化された表面20により捕捉されている。
【0117】
基板10の表面20を、分析物2aを特異的に固定することが可能な機能化された表面20aを備えた基板10aに対して、矢印F4の方向に適用する(図7b及び図7c)。
【0118】
その後、基板10を、基板10aから矢印F5の方向に引き上げる。それにより基板10aは、基板10の表面20から分析物2aを引き抜く(図7d)。
【0119】
分析物2bを特異的に固定することが可能な機能化された表面20bを備えた基板10bを用いて、操作を繰り返す。
【0120】
図7b〜図7dに示した特異的分別の工程の後に得られる基板10の表面20を、基板10bに対して適用する(図7e)。
【0121】
その後、基板10を、基板10bから矢印F5の方向に引き上げる。それにより基板10bは、基板10の表面20から分析物2bを引き抜き、ここで表面20は分析物2cのみを含む。
【0122】
最後に、そのようにして得られる基板10、10a及び10bの表面を、上述した工程c)により分析する。
【0123】
表面20a〜表面20bの移動力、すなわち引力が、基板10の表面20の単位中における分析物2a〜分析物2bの保持力よりも大きくなるように、表面20a〜表面20bの機能化を修正しなければならない。有利には、基板10に関しては、PDMSのように表面20a及び表面20bより低い表面エネルギーを有する基板を使用する。
【0124】
これらの、トラップされた分析物の特異的分別の付加的な工程(複数可)により、各種の分析物の自動的な特異的分析が可能となる。
【0125】
図8は、本発明による方法を実施した後における分析物検出基板の構造化された表面を示す。この図では、100nmの直径を有するナノ粒子2が、基板10の構造化された表面20上における2μmの間隔での腔中にトラップされ、その後ガラス基板10a上に移される。
【0126】
本発明による方法を、産業の多くの部門において適用することができる。より具体的には、
ナノ毒物学(すなわち、ヒトにより人工的に作製され、環境中に分散したナノ物体の検出):特定の分子(農薬、医薬品、洗浄剤等)の、ナノ粒子の、又は燃焼産物(灰、ダイオキシン等)の検出;これは必要に応じて、それらの有害な効果を研究することを可能とする。
ナノ生体医療、すなわち医療分析、生物学的異常(DNA、タンパク質等)の検出、ウイルス又は細菌の検出をより早期化するのに好適なマイクロ技法及びナノ技法の開発、分析「ベクター」としてのナノ粒子の使用、ウイルスの及び細菌の増殖に好ましい又は好ましくない媒体の調査等。
医薬品をスクリーニングするための薬理学。
胞子、ウイルス、細菌等の超高感度検出によるナノセキュリティ。
表面処理、特にそれらの表面欠陥の修復。
【0127】
他の実施の形態によれば、
・基板の表面の機能化は、以下を含み得る:
表面上における分析物の緻密な集合を得るための、「対流による集合」と称される非常に親水性の高い表面の全体的な機能化;
(ナノ物体をサイズにより選別するための)異なる直径を有する、(別の基板上で緩衝すること(buffering)により目的の標的の回収を可能とするための)異なる高さを有する、(より良好な高密度化のための、及び/又は全体読み取り(total reading)技法を開発するための)異なる間隔及び幾何学的配置を有する、形態学的単位の製造;
共有結合型(チオール型)及び/若しくは水素結合型の、並びに/又はファンデルワールス力(炭素を含有する基)、アミン結合、イオン結合による、双極子/双極子相互作用による標的との相互作用を促進する、並びに/又は(化学的コントラスト、例えばオクタデシルトリメトキシシラン(OTS)、アミノプロピルトリメトキシシラン(APTES)等により、親水性/疎水性−親溶媒性/疎溶媒性コントラストにより)単位の間の空間においてこれらの相互作用を促進しない化学的コントラストによるプローブ単位の製造;
生物学的コントラスト、例えばビオチン、ストレプトアビジン、ポリエチレングリコール等によるプローブ単位の製造;
単位の間における抗体の、ペプチドの及びDNAのトラップを妨げるための、或る特定の区域の不動態化(passivating)表面化学(例えばOTS、PEG(ポリエチレングリコール)又はBSA(ウシ血清アルブミン)等)の使用;
分極した又は分極可能な分析物をトラップするための、正の又は負の電荷の局所注入;
磁気的トラップ、例えば球状のナノ粒子、ロッド、テープ、トーラス及び/又はそのスタックの使用;
上述した手順のうちの2つ以上の組合せ;
その光学特性、例えば反射性が分析の要素となる(prepare)高い又は低い表面エネルギーを有する種々の材料、例えばガラス、ケイ素、酸化ケイ素、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、ITO(酸化インジウムスズ)の標的基板の使用;
4mm2と異なる表面積を有する、及び106と異なるトラップ部位の数を有する基板の使用。
【0128】
・親溶液を、以下から選択することができる:
標的の天然コロイド溶液;
水系(water-based)溶液;
異なる性質を有する溶媒:有機溶媒、エーテル、アセトン、クロロホルム、オクタン、ヘプタン、ノナン、デカン、トリクロロエチレンに基づく溶液;
血清の、血液の、生物学的器官の検体;
好適な溶媒中における固体の溶液;
空気中に、エアロゾル中に、又は任意の複合的な媒体中に存在する分析物の、好適な溶媒中への蓄積による回収物及び事前濃縮物;
所要の標的/プローブのトラップが既に実施された溶液(プローブに、色、蛍光等により規定される一体化したバーコード(量子箱により規定される)を有するナノ粒子を支持(事前に基板に固定(pre-substrated))することができる);
蛍光マーカーで標識した標的;
複合的な溶液;
不必要な標的を濾過することにより、これの除去により事前に調整した溶液。
【0129】
・集合を容易にするための、親溶液中への界面活性剤(Triton X等)の、及び溶媒の導入(これは事前調整でもある);
【0130】
・相対濃度を決定することができるようにするための、親溶液中への濃度及び挙動が既知である較正標的の導入。
【0131】
・基板上に親溶液の検体を置くことは、以下のものを利用することができる:
置かれた液滴を拡散させるための、基板の湿潤性の(水に対しては親水性の、溶媒に対しては親溶媒性の)特徴、又は逆に、基板上における構造化された区域外への拡散を制限するための、中間の湿潤性/脱湿潤性(dewetting)の(水に対しては部分的に疎水性の)特徴。
制御された厚みを有する液体の層を規定する、及び三重線以外での溶媒の蒸発を防止する目的で、液滴上に上部プレートを置くこと。
この上部プレートを機能化して、自然に三重線の変位を行わせる(引っ張る)目的で、非湿潤性の(水に対しては基板より疎水性の)ものとすることができる;
このプレートをわずかに傾斜させて、準直線的な蒸発の三重線を規定すること、その端部で十分に規定されたメニスカスを形成すること、及び空気との接触面を最小化することができる。
この上部プレートを構造化することができる。
【0132】
・制御された蒸発の工程b)は、以下を利用することができる:
対流性流れにより、液滴の残りの量においてよりも三重線で効果的であり、この三重線上で分析物を濃縮する自然蒸発;この自然蒸発を、三重線と液滴の残りとの間における温度勾配を適用することにより制御することができる。
溶媒の分圧の局所的な低減(ポンプ送り)、蒸発させた限界層のより急速な排除(気体流による)、又は吸引、加熱、レーザー照射、基板上に温度勾配を作り出す基板の対応する部分の加熱等による、この三重線の近傍における溶媒の強制的な蒸発;
液体の液滴と接触させてプレートを置くこと。これにより、基板とプレートとの間に液体の液滴が封入され、三重線の近くの領域に蒸発が制限され閉じ込められる;
【0133】
・制御された蒸発の工程b)を、以下のもののために使用することができる:
最初にプローブを集合させ、引き続き繰り返してこれらのプローブ上に標的を集合させること;
三重線の迅速な変位により溶液のマイクロ液滴又はナノ液滴を採取し、そうして分析物の配置物をトラップすること、又はマイクロ−ナノサンプリング若しくはマイクロ−ナノ実験を行うこと。
【0134】
・三重線の変位を追跡するための装置を、画像解析と組み合わせたフィードバックエレクトロニクスに基づき、基板上における液体検体の堆積を自動化するために、一体化させることができる;
【0135】
・基板は、第1の材料のものであってもよく、異なる材料からなる構造化された捕捉層により完全に又は部分的に覆われていてもよい。
【0136】
・分析物検出集合体は、気体流のポンプ送り及び/又は注入のためのチャネルをさらに含んでいてもよい。特に、図3〜図6に示した実施の形態では、プレート40は、これらの気体流のポンプ送り及び/又は注入のためのこれらのチャネルを支持することができる。
【0137】
・親溶液は、コロイド溶液、界面活性剤及び較正標的を包含する溶液、蛍光標識した標的を包含する溶液、又は溶液中において既に結合した(effected)標的プローブ結合物を包含する溶液であり得る。後者の場合においては、基板10の構造化された表面が、プローブ、標的又は集合体を選択的に又は順次固定するために、選択され得る;
【0138】
・親溶液及び/又は検体は、複数の溶媒を含み得る。
【0139】
本発明の新規な特徴のうちの1つは、三重線の近傍において溶媒の蒸発を制御することであり、これにより緻密な配置においてこの三重線上で所要の標的分析物が自然に濃縮される。この濃縮の現象は、蒸発する液体中における対流性流れの発生(その役割は蒸発に必要とされる熱エネルギー(すなわち潜熱)を供給することである)から生じるものである。構造化された表面上に置かれた検体の制御された蒸発の使用により、分析物のサイズによる、又は化学的特性、生物学的特性、静電的特性、電気的特性及び/若しくは磁気的特性による分析が可能となる。
【0140】
別の新規な特徴は、非常に小さい表面積を占有する多数の機能的な又は選択的な受容性プローブ部位上におけるサンプリングを達成することにより、非常に低い検出限界に到達することからなる。したがって本発明は、100分の数マイクロリットルの検体の分析に好適である。
【0141】
さらに、プローブの組織化により、プローブ−標的の捕捉を検出するための自動化された技法を使用することが可能となる。したがって本発明により、所要の分析物により占有された及び占有されていない部位の十分に規定されたパターン、並びに単純であり自動化することができる分析を得ることが可能となる。
【0142】
したがって本発明は、分析の速度を増大させ、分析の費用を低下させ、多数の分析を並行して行うことを可能とするラボオンチップ(laboratory on a chip)を提唱する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親溶液から得られる液体の検体(1)中における目的の標的分析物(2)を検出及び定量する方法であって、該液体は特定の蒸発の条件において雰囲気(Atm)中で蒸発することが可能であり、該方法は、以下の工程:
b)前記検体(1)を、分析物捕捉プローブを規定するマイクロ構造化又はナノ構造化された表面(20)を有する基板(10)上に、該液体検体が該基板の該構造化された表面を少なくとも部分的に覆うように置く工程、
c)前記検体の前記液体と前記雰囲気と前記基板との間の界面により構成される液体/基板/雰囲気の三重線(T)の近傍(VT)において該検体の制御された蒸発(5)を行わせる工程であって、該液体が該雰囲気中に蒸発するにつれてこの三重線が前記基板の前記構造化された表面上を制御された速度で移動するように、及び前記プローブに向かう対流による毛細管集合により前記標的分析物が捕捉されるように、行わせる工程、
d)工程c)の後に得られる前記基板の前記構造化された表面を分析する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記基板の前記マイクロ構造化又はナノ構造化された表面により工程c)で捕捉された前記分析物を計数すること、及び捕捉された標的分析物の数を換算表に対して比較して、前記親溶液中における分析物の濃度を得ることにより工程d)を適用する、請求項1に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項3】
工程c)で捕捉された前記分析物を計数すること(該分析物はその濃度が既知である基準分析物、及びその濃度が未知であるが該基準分析物の濃度に比例する目的の分析物を含む)、並びに該基準分析物と該目的の分析物との割合を比較することにより工程d)を適用する、請求項1に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項4】
工程b)が、前記基板(10)と該プレート(40)との間に該液体検体(1)を封入するように前記液体検体(1)と接触させてプレート(40)を置くことをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項5】
前記検体の制御された蒸発の間、前記プレート(40)及び前記基板(10)を、該基板とおよそ平行に並進の方向(F2a−F2b)に互いに相対的に変位させる、請求項4に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項6】
前記基板及び前記検体が、制御された雰囲気を有する封入体(50)中に閉じ込められる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項7】
工程c)の間、前記制御された雰囲気中における前記液体の成分の分圧を調節する、請求項6に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項8】
前記三重線における前記液体の蒸発を行わせる及びこれを制御するのに十分な量のエネルギーを供給することにより工程c)を適用する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項9】
前記親溶液の事前調整の工程a)を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項10】
前記親溶液の前記事前調整が、該親溶液から不要な分析物を除去することから、新たな標的分析物を添加することから、及び/又は前記構造化された表面上における対流による毛細管集合を促進する溶媒若しくは新たな分子を添加することからなる、請求項9に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項11】
前記基板(10)の前記表面(20)上に前記標的分析物に特異的なプローブ分子を含む液体の液滴を、該液滴が該基板の該表面を少なくとも部分的に覆うように置くこと、その後該液体が該雰囲気中に蒸発するにつれてこの三重線が前記基板の前記構造化された表面上を制御された速度で移動するように液滴/基板/雰囲気の三重線(T)の近傍(VT)において前記液滴の制御された蒸発を行わせること、及び前記プローブ分子が前記基板の前記表面と結合して該基板の該表面上にプローブネットワーク構造を作り出すように、行わせることからなる前記構造化された表面の調製の予備工程を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項12】
工程d)において蛍光光度法により計数することを可能とするための前記捕捉された標的分析物上へのフルオロフォアの固定の中間工程を工程c)と工程d)との間に含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項13】
1つ又は複数の機能化された捕捉表面上に工程c)の後に得られる前記基板を適用することによる、工程c)でトラップされた前記分析物の特異的分別の、少なくとも1つの工程を工程c)と工程d)との間にさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の検出及び定量する方法。
【請求項14】
工程c)の間、前記三重線(T)が一定速度で移動するように蒸発を制御する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の検出及び定量する方法。
【請求項15】
工程c)の間、前記三重線(T)が可変速度で移動するように蒸発を制御する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の検出及び定量する方法。
【請求項16】
前記表面(20)の前記プローブが各々、或る光学スペクトルをもたらす格子を規定し、工程c)での前記分析物の捕捉後における各格子の該光学スペクトルを分析することにより工程d)を行う、請求項1〜15のいずれか一項に記載の検出及び定量する方法。
【請求項17】
前記表面(20)の前記プローブが種々のサイズを有する腔であり、工程c)が種々のサイズを有する腔中にトラップされた種々のサイズを有するマイクロ液滴又はナノ液滴中の前記標的分析物の捕捉をもたらし、工程d)を各マイクロ液滴又はナノ液滴に関する少なくとも1つの物理的特性又は化学的特性の強度の変化を測定すること、いかなる分析物をも含有しない「限界」マイクロ液滴又はナノ液滴の体積を決定すること(前記親溶液中における前記分析物の濃度は該限界マイクロ液滴又はナノ液滴の体積により除算すると1に等しい)により適用する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の検出及び定量する方法。
【請求項18】
前記目的の分析物を含有する親溶液の検体を受容することを意図した構造化された表面を有する基板(10)、
液体/基板/雰囲気の三重線(T)の近傍(VT)における前記溶液の蒸発の制御の手段(30)、
前記基板の前記マイクロ構造化又はナノ構造化された表面を分析する手段
を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法を実施するための分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項19】
前記分析の手段が、前記基板の前記構造化された表面によりトラップされた分析物を計数すること、及び先に得られた分析物の数を換算表に対して比較することであって、前記親溶液中における分析物の濃度を得る、計数及び比較することが可能である、請求項18に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項20】
前記基板と前記プレートとの間に該検体を封入するように溶液の前記検体と接触させて設置することを意図したプレート(40)をさらに含む、請求項18又は19に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項21】
前記基板(10)及び前記プレート(40)を、並進の方向(F2a−F2b)に移動可能なように及び互いとおよそ平行に取り付ける、請求項20に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項22】
前記基板(10)及び前記プレート(40)を並進の方向(F2a−F2b)に互いに相対的に移動可能なように取り付け、該プレートを、前記構造化された基板上に溶液の前記検体を適用するように該基板に対して傾斜させる、請求項21に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項23】
前記プレート(40)が柔軟性を有する、請求項22に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項24】
前記プレート(40)が機能化及び/又は構造化される、請求項20〜23に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項25】
前記基板及び前記検体を取り囲む制御された雰囲気を有する封入体(50)をさらに含む、請求項18〜24のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項26】
前記封入体が前記雰囲気中における前記液体の成分の分圧の調節手段(60)を含む、請求項25に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項27】
気体の又は気体混合物の流れをポンプ送り及び/又は注入するためのチャネルをさらに含む、請求項25又は26に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項28】
熱エネルギー及び/又は電磁気エネルギーを供給するための装置をさらに含む、請求項18〜27のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項29】
前記制御手段(30)を、前記基板の前記構造化された表面上における蒸発の制御を修正し、前記三重線の変位の速度を少なくとも1つの所望の値に調整するための、前記三重線(T)の観察のための少なくとも1つの装置と結合した、請求項18〜28のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項30】
前記分圧の調節手段(60)を、前記雰囲気中における前記液体の成分の分圧を修正するための及び前記三重線(T)の変位の速度を少なくとも1つの所望の値に調整するための、前記三重線(T)の観察のための少なくとも1つの装置と結合した、請求項26に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項31】
前記基板の前記表面が、形態学的構造、生物学的構造、化学的構造、静電的構造、磁気的構造、又はこれらの構造の組合せから選択される構造を含む、請求項18〜30のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項32】
前記親溶液が、コロイド溶液、事前調整した溶液、事前濾過した溶液、界面活性剤及び較正標的を有する溶液、色により、蛍光により、若しくは集積バーコードにより標識した標的を包含する溶液、又は溶液中において既に結合した標的プローブ結合物を包含する溶液である、請求項18〜31のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項33】
前記親溶液及び/又は前記検体が複数種の溶媒を含む、請求項18〜32のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項1】
親溶液から得られる液体の検体(1)中における目的の標的分析物(2)を検出及び定量する方法であって、該液体は特定の蒸発の条件において雰囲気(Atm)中で蒸発することが可能であり、該方法は、以下の工程:
b)前記検体(1)を、分析物捕捉プローブを規定するマイクロ構造化又はナノ構造化された表面(20)を有する基板(10)上に、該液体検体が該基板の該構造化された表面を少なくとも部分的に覆うように置く工程、
c)前記検体の前記液体と前記雰囲気と前記基板との間の界面により構成される液体/基板/雰囲気の三重線(T)の近傍(VT)において該検体の制御された蒸発(5)を行わせる工程であって、該液体が該雰囲気中に蒸発するにつれてこの三重線が前記基板の前記構造化された表面上を制御された速度で移動するように、及び前記プローブに向かう対流による毛細管集合により前記標的分析物が捕捉されるように、行わせる工程、
d)工程c)の後に得られる前記基板の前記構造化された表面を分析する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記基板の前記マイクロ構造化又はナノ構造化された表面により工程c)で捕捉された前記分析物を計数すること、及び捕捉された標的分析物の数を換算表に対して比較して、前記親溶液中における分析物の濃度を得ることにより工程d)を適用する、請求項1に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項3】
工程c)で捕捉された前記分析物を計数すること(該分析物はその濃度が既知である基準分析物、及びその濃度が未知であるが該基準分析物の濃度に比例する目的の分析物を含む)、並びに該基準分析物と該目的の分析物との割合を比較することにより工程d)を適用する、請求項1に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項4】
工程b)が、前記基板(10)と該プレート(40)との間に該液体検体(1)を封入するように前記液体検体(1)と接触させてプレート(40)を置くことをさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項5】
前記検体の制御された蒸発の間、前記プレート(40)及び前記基板(10)を、該基板とおよそ平行に並進の方向(F2a−F2b)に互いに相対的に変位させる、請求項4に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項6】
前記基板及び前記検体が、制御された雰囲気を有する封入体(50)中に閉じ込められる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項7】
工程c)の間、前記制御された雰囲気中における前記液体の成分の分圧を調節する、請求項6に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項8】
前記三重線における前記液体の蒸発を行わせる及びこれを制御するのに十分な量のエネルギーを供給することにより工程c)を適用する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項9】
前記親溶液の事前調整の工程a)を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項10】
前記親溶液の前記事前調整が、該親溶液から不要な分析物を除去することから、新たな標的分析物を添加することから、及び/又は前記構造化された表面上における対流による毛細管集合を促進する溶媒若しくは新たな分子を添加することからなる、請求項9に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項11】
前記基板(10)の前記表面(20)上に前記標的分析物に特異的なプローブ分子を含む液体の液滴を、該液滴が該基板の該表面を少なくとも部分的に覆うように置くこと、その後該液体が該雰囲気中に蒸発するにつれてこの三重線が前記基板の前記構造化された表面上を制御された速度で移動するように液滴/基板/雰囲気の三重線(T)の近傍(VT)において前記液滴の制御された蒸発を行わせること、及び前記プローブ分子が前記基板の前記表面と結合して該基板の該表面上にプローブネットワーク構造を作り出すように、行わせることからなる前記構造化された表面の調製の予備工程を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項12】
工程d)において蛍光光度法により計数することを可能とするための前記捕捉された標的分析物上へのフルオロフォアの固定の中間工程を工程c)と工程d)との間に含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する方法。
【請求項13】
1つ又は複数の機能化された捕捉表面上に工程c)の後に得られる前記基板を適用することによる、工程c)でトラップされた前記分析物の特異的分別の、少なくとも1つの工程を工程c)と工程d)との間にさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の検出及び定量する方法。
【請求項14】
工程c)の間、前記三重線(T)が一定速度で移動するように蒸発を制御する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の検出及び定量する方法。
【請求項15】
工程c)の間、前記三重線(T)が可変速度で移動するように蒸発を制御する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の検出及び定量する方法。
【請求項16】
前記表面(20)の前記プローブが各々、或る光学スペクトルをもたらす格子を規定し、工程c)での前記分析物の捕捉後における各格子の該光学スペクトルを分析することにより工程d)を行う、請求項1〜15のいずれか一項に記載の検出及び定量する方法。
【請求項17】
前記表面(20)の前記プローブが種々のサイズを有する腔であり、工程c)が種々のサイズを有する腔中にトラップされた種々のサイズを有するマイクロ液滴又はナノ液滴中の前記標的分析物の捕捉をもたらし、工程d)を各マイクロ液滴又はナノ液滴に関する少なくとも1つの物理的特性又は化学的特性の強度の変化を測定すること、いかなる分析物をも含有しない「限界」マイクロ液滴又はナノ液滴の体積を決定すること(前記親溶液中における前記分析物の濃度は該限界マイクロ液滴又はナノ液滴の体積により除算すると1に等しい)により適用する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の検出及び定量する方法。
【請求項18】
前記目的の分析物を含有する親溶液の検体を受容することを意図した構造化された表面を有する基板(10)、
液体/基板/雰囲気の三重線(T)の近傍(VT)における前記溶液の蒸発の制御の手段(30)、
前記基板の前記マイクロ構造化又はナノ構造化された表面を分析する手段
を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法を実施するための分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項19】
前記分析の手段が、前記基板の前記構造化された表面によりトラップされた分析物を計数すること、及び先に得られた分析物の数を換算表に対して比較することであって、前記親溶液中における分析物の濃度を得る、計数及び比較することが可能である、請求項18に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項20】
前記基板と前記プレートとの間に該検体を封入するように溶液の前記検体と接触させて設置することを意図したプレート(40)をさらに含む、請求項18又は19に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項21】
前記基板(10)及び前記プレート(40)を、並進の方向(F2a−F2b)に移動可能なように及び互いとおよそ平行に取り付ける、請求項20に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項22】
前記基板(10)及び前記プレート(40)を並進の方向(F2a−F2b)に互いに相対的に移動可能なように取り付け、該プレートを、前記構造化された基板上に溶液の前記検体を適用するように該基板に対して傾斜させる、請求項21に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項23】
前記プレート(40)が柔軟性を有する、請求項22に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項24】
前記プレート(40)が機能化及び/又は構造化される、請求項20〜23に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項25】
前記基板及び前記検体を取り囲む制御された雰囲気を有する封入体(50)をさらに含む、請求項18〜24のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項26】
前記封入体が前記雰囲気中における前記液体の成分の分圧の調節手段(60)を含む、請求項25に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項27】
気体の又は気体混合物の流れをポンプ送り及び/又は注入するためのチャネルをさらに含む、請求項25又は26に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項28】
熱エネルギー及び/又は電磁気エネルギーを供給するための装置をさらに含む、請求項18〜27のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項29】
前記制御手段(30)を、前記基板の前記構造化された表面上における蒸発の制御を修正し、前記三重線の変位の速度を少なくとも1つの所望の値に調整するための、前記三重線(T)の観察のための少なくとも1つの装置と結合した、請求項18〜28のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項30】
前記分圧の調節手段(60)を、前記雰囲気中における前記液体の成分の分圧を修正するための及び前記三重線(T)の変位の速度を少なくとも1つの所望の値に調整するための、前記三重線(T)の観察のための少なくとも1つの装置と結合した、請求項26に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項31】
前記基板の前記表面が、形態学的構造、生物学的構造、化学的構造、静電的構造、磁気的構造、又はこれらの構造の組合せから選択される構造を含む、請求項18〜30のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項32】
前記親溶液が、コロイド溶液、事前調整した溶液、事前濾過した溶液、界面活性剤及び較正標的を有する溶液、色により、蛍光により、若しくは集積バーコードにより標識した標的を包含する溶液、又は溶液中において既に結合した標的プローブ結合物を包含する溶液である、請求項18〜31のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【請求項33】
前記親溶液及び/又は前記検体が複数種の溶媒を含む、請求項18〜32のいずれか一項に記載の分析物を検出及び定量する集合体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図8】
【公表番号】特表2012−522237(P2012−522237A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502729(P2012−502729)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000263
【国際公開番号】WO2010/112699
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(500056471)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000263
【国際公開番号】WO2010/112699
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(500056471)
【Fターム(参考)】
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