説明

液体供給装置及び印刷装置

【課題】液体消費量に応じた適量の液体を、各液体の種類毎にメインタンクから引き込んでヘッドへ供給することが可能な液体供給装置及び印刷装置を提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタ1は、複数種のインクが貯留されたインクカートリッジ17と、インクカートリッジ17からインクを引き込むインクポンプ部34と、インクポンプ部34からインクが供給されるインクジェットヘッド21と、インクジェットヘッド21を移動させるキャリッジ23と、を有し、インクポンプ部34には、キャリッジ23に搭載されてキャリッジ23とともに移動される容量可変のインク室50と、キャリッジ23の移動力によりインク室を拡張させてインクカートリッジ17からインクを引き込ませる拡張機構52とを備えたサブタンク45a〜45dが、インクカートリッジ17に貯留された複数色のインク毎に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインタンクの液体を、サブタンクを介してヘッドに供給する液体供給装置及び印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記液体供給装置の一例として、パソコン等に接続されるプリンタに組み込まれて、印刷ヘッドに液体としてのインクを供給する装置が挙げられる。
このような液体供給装置では、キャリッジに搭載されてインクカートリッジからインク供給チューブを介して貯蔵室にインクの補給を受け、印刷時にインク貯蔵室のインクを記録ヘッドに供給するサブタンクユニットと、インクカートリッジのインクをサブタンクユニットに補給するポンプ手段と、記録ヘッドへの駆動信号に対応してインク流量を制御するポンプ制御手段とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、上記のポンプ手段は構造が複雑であり、しかも大きな設置スペースが必要になるため、簡易化及び小型化のために、キャリッジの往復移動の駆動力を利用してインクを供給するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に記載のインク供給装置は、往復移動されるキャリッジと、このキャリッジに設けられたインクジェット記録ヘッドへ供給されるインクを貯留したインクカートリッジと、インクジェット記録ヘッドによる印刷で消費されるインクを保持しておくインク保持部とを備え、キャリッジの所定位置への移動によって圧縮されてインク保持部へインクを送り出すとともに、キャリッジの所定位置から外れた位置への移動によって復元してインクカートリッジからインクを引き込むインクポンプ部が設けられている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−270133号公報
【特許文献2】特開2007−160639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カラー印刷を行うプリンタでは、複数色のインクをヘッドに供給する必要があるが、この場合、印刷のパターンによって各色のインク消費量が異なる。
このため、インク消費量が最小の色のインクに合わせて全色のインクをインクカートリッジから補給すると、インク消費量が多かった色のインクの補給量が少なくなり、ヘッドにおけるメニスカスの破壊やノズルでの気泡の発生が起こり、ヘッドにおけるドット抜けが生じ、印刷品質が劣化してしまう。
このため、インク消費量に応じた適量のインクをそれぞれの色毎にインクカートリッジから引き込んでヘッドへ供給する構造が要求されている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、液体消費量に応じた適量の液体を、液体の供給路毎にメインタンクから引き込んでヘッドへ供給することが可能な液体供給装置及び印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決することのできる本発明に係る液体供給装置は、複数の貯留部にそれぞれ液体が貯留される一つまたは複数のメインタンクと、
各前記貯留部からそれぞれ液体が供給される複数のサブタンクと、
各前記サブタンクから液体が供給されるヘッドと、
各前記サブタンクと前記ヘッドとを搭載して移動するキャリッジと、を有する液体供給装置であって、
各前記サブタンクは、前記キャリッジに搭載されて前記キャリッジとともに移動される容量可変の液室と、前記キャリッジの移動にともない前記液室を拡張させて前記メインタンクから前記液体を前記サブタンクに供給させる拡張手段と、をそれぞれ備えていることを特徴とする。
【0008】
この構成の液体供給装置によれば、複数のサブタンクが、それぞれ、キャリッジに搭載されてキャリッジとともに移動される容量可変の液室と、キャリッジの移動にともない液室を拡張させてメインタンクから液体をサブタンクに供給させる拡張手段とを備えているので、それぞれの貯留部の液体の消費量が異なる場合であっても、キャリッジの移動によりそれぞれの拡張手段が独立して液室を拡張してメインタンクから液体を供給させることができる。
すなわち、液体消費量に応じた適量の液体を、貯留部毎にメインタンクから引き込んで補充し、ヘッドへ供給することができる。また、液体の種類を増減するなどにより貯留部を増減する場合にも、サブタンクを増減することにより、容易にかつ低コストで対応することができる。
【0009】
本発明の液体供給装置において、各前記サブタンクの各前記拡張手段は、それぞれ前記キャリッジとともに移動されて前記キャリッジを移動可能に支持している本体に設けられた規制部に当接して独立に駆動されることが好ましい。
【0010】
この構成の液体供給装置によれば、それぞれの拡張手段が、それぞれキャリッジとともに移動されて規制部に当接して独立に駆動されてそれぞれの液室が拡張されるので、液体消費量に応じた適量の液体を、各貯留部の液体毎にメインタンクから供給させて補充し、ヘッドへ供給することができる。
【0011】
本発明の液体供給装置において、各前記拡張手段は、揺動する揺動部材を有し、前記揺動部材の揺動により前記液室が拡張されることが好ましい。
【0012】
この構成の液体供給装置によれば、規制部に当接して揺動される揺動部材の揺動により液室が拡張されるため、拡張手段の構成を簡易なものとすることができ、コストの低減を図ることができる。
【0013】
本発明の液体供給装置において、各前記サブタンクのそれぞれの前記液室が、一つのブロックに一体成形されていることが好ましい。
【0014】
この構成の液体供給装置によれば、各サブタンクのそれぞれの液室が、一つのブロックに一体成形されているので、それぞれのサブタンクの液室を別個に成形する場合と比較して、製造コストを低減することができる。
【0015】
本発明の液体供給装置において、各前記液室は、各前記拡張手段によって変位される可撓性を有する膜を備え、各前記サブタンクのそれぞれの前記液室に設けられた膜は、一枚の可撓性シートに一体成形されていることが好ましい。
【0016】
この構成の液体供給装置によれば、各サブタンクのそれぞれの液室に設けられた膜が、一枚の可撓性シートに一体成形されているので、それぞれのサブタンクの液室毎に可撓膜を成形する場合と比較して、製造コストを低減することができる。
【0017】
また、本発明に係る印刷装置は、搬送される媒体に対してヘッドからインクを吐出して印刷処理を行う印刷装置であって、
前記ヘッドへインクを供給する装置として、上記本発明に係る液体供給装置の何れかを備えていることを特徴とする。
【0018】
この構成の印刷装置によれば、それぞれの種類のインクの消費量が異なる場合であっても、キャリッジの移動によりそれぞれの拡張手段が独立して液室を拡張してメインタンクからインクを供給させることができる。
これにより、インク消費量に応じた適量のインクを、各インクの種類、つまり各インク色毎にメインタンクから供給させて補充し、ヘッドへ供給することができ、高品質に印刷を行うことができる。また、インク色を増減する場合にも、サブタンクを増減することにより、容易にかつ低コストで対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る液体供給装置及び印刷装置の実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。
図1〜図9は本発明に係る一実施形態の液体供給装置によってインク供給機構が構成されたインクジェットプリンタを説明するための図であり、図1はインクジェットプリンタの外観斜視図、図2はインクジェットプリンタのプリンタカバーを開いた状態の斜視図、図3はインクジェットプリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図、図4はインクポンプ部および規制板を示す平面図、図5はインクジェットプリンタのキャリッジが待機位置にあるときのインク供給機構の要部を示す断面図、図6はインクポンプ部の構造を示す断面図、図7は可撓膜を示す斜視図、図8は自己封止ユニットの構造を示す断面図、図9は各色のサブタンクの動きを説明するインクポンプ部および規制板を示すそれぞれ平面図である。
【0020】
まず、本実施形態の印刷装置であるインクジェットプリンタの構造について説明する。
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、複数種のカラーインクを使用してロール紙の繰り出された一部にカラー印刷するものであり、プリンタ本体を覆うプリンタケース2の前面には、ロール紙カバー5及びインクカートリッジカバー7が開閉自在に設けられている。更に、プリンタケース2の前面には、電源スイッチ3と共にフィードスイッチやインジケータ等も配置されている。
【0021】
ロール紙カバー5を開くと、図2に示すように、印刷される媒体であるロール紙11を収容した用紙収容部13が開放状態になって、ロール紙11の交換が可能になる。
また、インクカートリッジカバー7を開くと、カートリッジ装着部15が開放状態になり、カートリッジ装着部15へのインクカートリッジ(メインタンク)17の着脱が可能になる。
【0022】
この場合、インクカートリッジカバー7を開く動作に連動して、カートリッジ装着部15の前方にインクカートリッジ17が所定距離だけ引き出される構成になっている。
【0023】
プリンタケース2内の用紙収容部13の上方には、図3に示すように、インクジェットヘッド(ヘッド)21を搭載したキャリッジ23が設けられている。キャリッジ23は、ロール紙11の幅方向に沿って延在するガイド部材25によって用紙幅方向に移動自在に支持されると共に、ロール紙11の幅方向に延在する無端ベルト26aと無端ベルト26aを駆動するキャリッジモータ26bとによって、プラテン28の上方をロール紙11の幅方向に往復移動可能になっている。インクジェットヘッド21は、ロール紙11の繰り出された一部に対してインクを吐出して印刷処理を行う。
【0024】
図示のように、カートリッジ装着部15の上方が、往復移動するキャリッジ23の待機位置(ホームポジション)となっている。そして、この待機位置の下方には、キャリッジ23の下面に露出するインクジェットヘッド21のインクノズルを覆うキャップ27と、キャップ27を介してインクジェットヘッド21の各インクノズル内のインクを吸引廃棄するインク吸引機構29とが設けられている。
【0025】
インクカートリッジ17は、カートリッジケース18内に複数個の図示略のカラーインクパックを収容したものである。インクカートリッジ17内の各インクパック(貯留部)は、可撓性材料からなり容量可変であって、内部にインクを貯留した状態で密封されるもので、インクカートリッジ17をカートリッジ装着部15に装着した際に、カートリッジ装着部15側に設けられた図示略のインク供給針がインクパックのインク供給口に差込接続される。カートリッジ装着部15のインク供給針には、プリンタケース2内に固定されたインク流路31が接続され、このインク流路31には、各色に分けられた可撓性のインク供給チューブ33の一端が接続されている。なお、インクカートリッジ17内のインクパックは、アルミを挟みこんだ多層フィルムで形成したものでも良い。
【0026】
なお、本実施形態のメインタンク(インクカートリッジ17)は、内部に複数のインクパックを収容したものであるが、一つのインクパックを一つのインクカートリッジ内に収容したものを複数用いる構成としてもよい。また、複数のインクパックには、それぞれ異なる色のインク(異種の液体)を収容する場合と、同色のインク(同種の液体)を収容する場合がある。
【0027】
インク供給チューブ33の他端は、キャリッジ23上に設けられたインクポンプ部34に接続されている。各インクポンプ部34は、インクジェットヘッド21の上方に設けられており、インクジェットヘッド21に接続された自己封止ユニット36にそれぞれ接続されている。
【0028】
キャリッジ23には、インクジェットヘッド21の他に、インクポンプ部34及び自己封止ユニット36が一体的に搭載された構成になっている。
これにより、インクカートリッジ17内の各インクパックのインクは、カートリッジ装着部15のインク供給針から、インク流路31、インク供給チューブ33、各色のインクポンプ部34及び各色の自己封止ユニット36を経て、インクジェットヘッド21の各インクノズルにそれぞれ供給されるようになっている。
【0029】
インクポンプ部34は、キャリッジ23の移動力によりインクカートリッジ17からインクを引き込むもので、キャリッジ23の移動力によりインクポンプ部34を動作させる図4にも示す規制板(規制部)37が、キャリッジ23の待機位置への移動方向前方に配置されている。
そして、上記インクジェットプリンタ1では、インクカートリッジ17、インクジェットヘッド21、キャリッジ23、インクポンプ部34からインク供給機構(液体供給機構)が構成されている。
【0030】
次に、インク供給機構を構成するインクポンプ部34について、一色分の構造を例示して説明する。
図5(a)(b)に示すように、流路31のインクカートリッジ17側における端部には、逆止弁41が設けられ、インクカートリッジ17とインクポンプ部34との間において、逆止弁41によってインクカートリッジ17側からインクポンプ部34側へのみインクが流れるようになっている。
【0031】
また、インク室50の底部に形成された流路42には、逆止弁43が設けられており、この逆止弁43によってインク室50側から自己封止ユニット36側へのみインクが流れるようになっている。
【0032】
インクポンプ部34は、インクカートリッジ17からインク供給チューブ33を介してインクを引き込むサブタンク45を備えている。このサブタンク45は、上部分割体46と下部分割体47とで構成されており、これら上部分割体46と下部分割体47との間に、可撓性を有するダイヤフラムからなる可撓膜49によってその上部が覆われたインク室(液室)50を有している。この可撓膜49は、水分透過性及びガス透過性の低いブチルゴム等から形成されている。
【0033】
このインク室50は、インク供給チューブ33に連通しかつ自己封止ユニット36側の流路42に連通しており、インクカートリッジ17からインクが供給されるとともに自己封止ユニット36側にインクを供給可能となっている。可撓膜49は、変形容易な可撓性材料からなっており、この可撓膜49の変形をともなってインク室50が容量可変となり、拡張、縮小される。インクポンプ部34を構成するサブタンク45には、この可撓膜49を変位させてインク室50を拡張する拡張機構(拡張手段)52が設けられている。
【0034】
拡張機構52は、上下方向に延在する筒状のシリンダ53と、このシリンダ53内で上下に摺動可能に嵌挿されるピストン(可動部材)54と、上部分割体46におけるシリンダ53の上方に配置された揺動軸55に揺動可能に支持された揺動アーム(揺動部材)56と、揺動アーム56とピストン54との間に介装された引っ張りコイルバネ(弾性部)57とを有している。
なお、揺動アーム56は、揺動軸55を、例えば、上部分割体46の支持片46aに形成した溝部(図示省略)へ押し込んで嵌合するなどにより回動自在に支持されている。
【0035】
シリンダ53は、水分透過性及びガス透過性の低いポリプロピレン等の樹脂材料からなっている。シリンダ53は、ピストン54の外径よりもわずかに大径の内径を有してピストン54の外周面を摺動可能に案内する小径内周面59が上部に形成され、下部にピストン54の外周面との間に隙間を形成する大径内周面60が形成された段差形状をなしている。
【0036】
ピストン54は、水分透過性及びガス透過性の低いポリプロピレン等の樹脂材料から形成されている。ピストン54は、略有底筒状に形成されて、その揺動アーム56側は、揺動アーム56を配置させるため、上端から中間位置まで切り欠かれている。
【0037】
また、ピストン54の底部より上方には、引っ張りコイルバネ57の下端を係止する係止部67が形成されている。
【0038】
揺動アーム56は、揺動軸55からシリンダ53内に延出する腕部69と、揺動軸55から下方に延出する上下延出部70と、上下延出部70の腕部69とは反対側の端部から腕部69とは逆向きに延出する入力部71とを有している。腕部69の先端は鉤状とされており、この部分に引っ張りコイルバネ57の上端が係止されている。
【0039】
可撓膜49は、上部分割体46の円環溝73に嵌合された状態で上部分割体46と下部分割体47とに挟持される円環状の厚肉のベース部74と、このベース部74の内周部から筒状をなして延出する薄肉の膜部75と、膜部75のベース部74とは反対側を閉塞させる厚肉の略円板状の固定部76とを有する一体成形品である。
【0040】
固定部76の中央には、先細り形状の突起部77が一体成形され、この突起部77がピストン54に形成されたスリット65に圧入されて嵌合されている。この状態で固定部76がピストン54の底部に一体化され、よって可撓膜49は、ピストン54の移動により固定部76及び膜部75が変位する。
【0041】
図6に示すように、インクポンプ部34は、複数の色(本実施形態では4色)毎にサブタンク45a〜45dを備えており、これらのサブタンク45a〜45dは、それぞれのインク室50が、一つの下部分割体(ブロック)47に、例えば、射出成形によって、一体成形されている。なお、上部分割体46も各サブタンク45a〜45dで一体成形されている。
【0042】
また、図7に示すように、上部分割体46と下部分割体47との間で、各色のサブタンク45a〜45d毎に設けられたダイヤフラムからなる可撓膜49は、ブチルゴム等からなる一枚の可撓性シート48に一体成形されている。
【0043】
図8に示すように、自己封止ユニット36は、ユニット本体81に、供給路82、中間路83及び排出路84が形成されている。そして、供給路82に形成された供給口82aに、流路42の下流側端部が接続され、排出路84に形成された排出口84aに、インクジェットヘッド21が接続されている。
【0044】
供給路82と中間路83とを区画する壁部85には、流入口85aが形成されており、この流入口85aで供給路82内のインクが中間路83内へ流入される。また、中間路83と排出路84とを区画する壁部86には、連通口86aが形成されており、この連通口86aで中間路83内のインクが排出路84内へ流入される。
【0045】
中間路83内には、壁部86に支点部87が形成されており、この支点部87には、揺動棒91が揺動可能に支持されている。この揺動棒91には、その一端部に、壁部85側へ向かって屈曲する作動棒部92が一体に形成されており、この作動棒部92の先端には、壁部85に当接して流入口85aを閉鎖する閉鎖板93が形成されている。また、この閉鎖板93と壁部86との間には、圧縮バネ94が設けられ、この圧縮バネ94の付勢力によって閉鎖板93が壁部85側へ向かって付勢されている。また、揺動棒91の他端部には、壁部86側へ屈曲され、この壁部86の連通口86aに挿通された押圧棒部95が形成されている。
【0046】
また、ユニット本体81の排出路84側の側壁81aには、開口部96が形成されている。この開口部96には、その開口縁部に、液密性及び可撓性を有するフィルム97が液密的に連結されている。このフィルム97の排出路84側における中央部分には、押圧板98が固定されている。そして、この押圧板98に、揺動棒91の押圧棒部95の先端部が当接されている。
【0047】
また、押圧板98と壁部86との間には圧縮バネ99が取り付けられており、この圧縮バネ99の付勢力によって押圧板98が外側へ押し出されている。そして、この自己封止ユニット36では、閉鎖板93が、圧縮バネ94及び閉鎖板93に作用する圧力によって壁部85に押し付けられ、流入口85aが閉鎖される。
【0048】
そして、自己封止ユニット36では、フィルム97によって覆われた部分の容積の減少にともない押圧板98によって揺動棒91の押圧棒部95が押圧されると、揺動棒91が支点部87による連結箇所を中心として揺動することにより、閉鎖板93が壁部85から離れる。これにより、供給路82から流入口85aを通って中間路83及び排出路84へインクが流れ込み、インクジェットヘッド21へ供給される。
【0049】
そして、この自己封止ユニット36をインクジェットヘッド21の上流側に設けることにより、例えば、キャリッジ23の加減速などによって供給側におけるインクの圧力変動が発生したとしても、この圧力変動のインクジェットヘッド21への伝達が自己封止ユニット36で遮断される。
これにより、圧力変動が伝達されることによるインクジェットヘッド21での意図しないインクの吐出、インクだれあるいは吐出不良によるドット抜けなどの不具合が防止される。
【0050】
上記構造のプリンタ1において、キャリッジ23が待機位置にあるとき、揺動アーム56の入力部71がキャリッジ23を移動可能に支持しているプリンタ本体に設けられた規制板37に当接し、上下延出部70が鉛直に沿い腕部69及び入力部71が水平をなす状態とされる。このとき、引っ張りコイルバネ57の付勢力でピストン54が引き上げられる。
【0051】
また、キャリッジ23が待機位置から離れてインクジェットヘッド21を印刷可能領域に位置させ、その後、この印刷可能領域内でインクジェットヘッド21がインクを吐出させて印刷を行うことで、自己封止ユニット36からインクジェットヘッド21にインクが供給され、自己封止ユニット36内が負圧になると、インク室50から流路42を介して自己封止ユニット36にインクが供給される。
【0052】
ここで、インク室50のインクが減少すると、このインクの減少により生じる負圧で、可撓膜49の膜部75を変形させながら固定部76と一体にピストン54が下降する。すると、ピストン54に引っ張りコイルバネ57を介して連結された揺動アーム56が腕部69の先端を下降させるように揺動することになり、その結果、揺動アーム56の入力部71の側方への突出量が拡大する。
【0053】
この状態からキャリッジ23が待機位置に戻ると、キャリッジ23とともに移動する揺動アーム56が入力部71において規制板37に当接して、キャリッジ23の移動力により揺動し、上下延出部70が鉛直に沿い腕部69及び入力部71が水平をなす。これにより、腕部69の先端部が上昇し、引っ張りコイルバネ57を介して連結されたピストン54がシリンダ53内を摺動して引き上げられる。
【0054】
この引っ張りコイルバネ57を介して行われるピストン54の移動によって、可撓膜49の固定部76がピストン54と一体に上昇し、サブタンク45のインク室50が拡張されて容量が増大される。このように、インク室50の容量が増大すると、逆止弁41を開きながらインクカートリッジ17からインク流路31及びインク供給チューブ33を介してインクがインク室50に吸引されることになる。
【0055】
そして、上記構造のインクジェットプリンタ1では、印刷動作中に、所定のタイミングで、上記のインク補給動作を行う。なお、このインク補給動作は、最大にインクを消費する印刷が行われても、少なくともインクジェットヘッド21へインクを供給可能な程度の量のインクがインク室50内に残留した状態で行われる。
【0056】
ところで、カラー印刷を行う上記インクジェットプリンタ1では、インクポンプ部34の複数色のインク毎のサブタンク45a〜45dによってインクカートリッジ17から各色のインクを引き込むようになっている。この場合、印刷のパターンによって各色のインク消費量が異なり、サブタンク45a〜45dにおける揺動アーム56の側方への突出量が、インク消費量に応じて異なることとなる。
【0057】
次に、このように、各色でインク消費量が異なる場合におけるキャリッジ23の移動による各色のサブタンク45a〜45dの動きについて説明する。
図9は各色のサブタンクの動きを説明するインクポンプ部および規制板を示す平面図である。
なお、ここでは、各サブタンク45a〜45dでのインク消費量は、サブタンク45aが最も少なく、サブタンク45cが最も多く、サブタンク45b,45dがその中間程度である場合について説明する。
【0058】
インク補給タイミングとなり、キャリッジ23が待機位置へ向かって移動すると、図9(a)に示すように、側方への突出量が最も大きいサブタンク45cの揺動アーム56が、その入力部71において規制板37に当接する。
さらに、キャリッジ23が移動すると、規制板37によってサブタンク45cの揺動アーム56が揺動され、このサブタンク45cのインク室50内に、インクカートリッジ17からインクが引き込まれる。
【0059】
その後、図9(b)に示すように、サブタンク45b,45dの揺動アーム56が、その入力部71において規制板37に当接する。
さらに、キャリッジ23が移動すると、規制板37によってサブタンク45b〜45dの揺動アーム56が揺動され、サブタンク45b〜45dのインク室50内に、インクカートリッジ17からインクが引き込まれる。
【0060】
その後、図9(c)に示すように、側方への突出量が最も小さいサブタンク45aの揺動アーム56が、その入力部71において規制板37に当接する。
この状態で、さらにキャリッジ23が移動すると、規制板37によって全色のサブタンク45a〜45dの揺動アーム56が揺動され、これらサブタンク45a〜45dのインク室50内に、インクカートリッジ17からインクが引き込まれる。
そして、キャリッジ23が待機位置に達すると、全色のサブタンク45a〜45dにおけるインクの補給が完了する。
【0061】
以上に述べた本実施形態のインク供給機構及びインクジェットプリンタによれば、インクポンプ部34に、キャリッジ23に搭載されてキャリッジ23とともに移動される容量可変のインク室50と、キャリッジ23の移動力によりインク室50を拡張させてインクカートリッジ17からインクを引き込ませる拡張機構52とを備えたサブタンク45a〜45dが、インクカートリッジ17に貯留された複数色のインク毎(すなわちインクパック毎)に設けられているので、それぞれの種類の色のインクの消費量が異なる場合であっても、キャリッジ23の移動によりそれぞれの拡張機構52が独立して駆動され、それぞれ独立してインク室50を拡張してインクカートリッジ17からインクを引き込むことができる。
【0062】
これにより、インク消費量に応じた適量のインクを、各インクの色毎にインクカートリッジ17から引き込んで補充し、インクジェットヘッド21へ供給することができ、インクジェットヘッド21によって高品質に印刷を行うことができる。また、インク色を増減する場合にも、サブタンク45を増減することにより、容易にかつ低コストで対応することができる。
【0063】
また、拡張機構52が、それぞれキャリッジ23とともに移動されてキャリッジ23外の規制板37に当接して独立に揺動する揺動アーム56を有し、揺動アーム56の揺動によりインク室50が拡張されるので、各揺動アーム56の独立した揺動により、インク消費量に応じた適量のインクを、各インクの色毎にインクカートリッジ17から引き込んで補充することができる。
【0064】
また、複数色のインク毎のサブタンク45a〜45dのそれぞれのインク室50が、一つのブロックである下部分割体47に一体成形されているので、それぞれのサブタンク45a〜45dのインク室50を別個に成形する場合と比較して、製造コストを低減することができる。
【0065】
また、複数色のインク毎に設けられたサブタンク45a〜45dのそれぞれのインク室50に設けられた可撓膜49が、一枚の可撓性シート48に一体成形されているので、それぞれのサブタンク45a〜45dのインク室50毎に可撓膜49を成形する場合と比較して、製造コストを低減することができる。
【0066】
また、本発明に係る液体供給装置は、上記実施形態で例示したインクジェット式のプリンタをはじめとして、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材吐出ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材吐出ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物吐出ヘッド等の液体を吐出する液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給装置、精密ピペットとしての試料吐出装置への液体供給装置等にも適用できる。
また、液体の概念にはジェル状のもの、粘性の高いもの、固形物を溶媒に混合させたもの、も含み、さらにインクの概念には水性インクも油性インクも含む。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る印刷装置の一例であるインクジェットプリンタを示す外観斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタのプリンタカバーを開いた状態の斜視図である。
【図3】インクジェットプリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図である。
【図4】インクジェットプリンタのインクポンプ部および規制板を示す平面図である。
【図5】インクジェットプリンタのキャリッジが待機位置にあるときのインク供給機構の要部を示すもので、(a)は正断面図、(b)は側断面図である。
【図6】インクポンプ部の構造を示す断面図である。
【図7】可撓膜を示す斜視図である。
【図8】自己封止ユニットの構造を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、各色のサブタンクの動きを説明するインクポンプ部及び規制板を示すそれぞれ平面図である。
【符号の説明】
【0068】
1…インクジェットプリンタ(印刷装置)、17…インクカートリッジ(メインタンク)、21…インクジェットヘッド(ヘッド)、23…キャリッジ、34…インクポンプ部、37…規制板(規制部)、45a〜45d…サブタンク、47…下部分割体(ブロック)、48…可撓性シート、49…可撓膜(膜)、50…インク室(液室)、52…拡張機構(拡張手段)、56…揺動アーム(揺動部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貯留部にそれぞれ液体が貯留される一つまたは複数のメインタンクと、
各前記貯留部からそれぞれ液体が供給される複数のサブタンクと、
各前記サブタンクから液体が供給されるヘッドと、
各前記サブタンクと前記ヘッドとを搭載して移動するキャリッジと、を有する液体供給装置であって、
各前記サブタンクは、前記キャリッジに搭載されて前記キャリッジとともに移動される容量可変の液室と、前記キャリッジの移動にともない前記液室を拡張させて前記メインタンクから前記液体を前記サブタンクに供給させる拡張手段と、をそれぞれ備えていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体供給装置であって、
各前記サブタンクの各前記拡張手段は、それぞれ前記キャリッジとともに移動されて前記キャリッジを移動可能に支持している本体に設けられた規制部に当接して独立に駆動されることを特徴とする液体供給装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体供給装置であって、
各前記拡張手段は、揺動する揺動部材を有し、前記揺動部材の揺動により前記液室が拡張されることを特徴とする液体供給装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の液体供給装置であって、
各前記サブタンクのそれぞれの前記液室が、一つのブロックに一体成形されていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の液体供給装置であって、
各前記液室は、各前記拡張手段によって変位される可撓性を有する膜を備え、各前記サブタンクのそれぞれの前記液室に設けられた膜は、一枚の可撓性シートに一体成形されていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項6】
搬送される媒体に対して前記ヘッドからインクを吐出して印刷処理を行う印刷装置であって、
前記ヘッドへインクを供給する装置として、請求項1から5の何れか一項に記載の液体供給装置を備えていることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−5953(P2010−5953A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168955(P2008−168955)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】