説明

液体充填方法、液体収容容器及びインクジェット記録装置

【課題】 気泡の消滅をなくし、それにより気液分離膜へのインクの衝突を抑制することを可能としたインク充填方法、液体収容容器及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 気液分離膜と該気液分離膜に接して配置される非透過部と有する気液分離部材が設けられ、前記気液分離部材の前記気液分離膜を介して気体が排出されることを利用して液体が充填される液体収容容器が、液体充填時、液体と気体との気液界面と前記気液分離膜とが接触する接線が、前記気液分離膜と前記非透過部とが接する境界に向けて移動し、前記接線が前記境界に達すると前記接線の移動が停止するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体充填方法、該液体充填方法が適用される液体収容容器及び該液体収容容器を備えるインクジェット記録装置に関し、より詳細には、気液分離機構を備える液体充填方法、該液体充填方法が適用される液体収容容器及び該液体収容容器を備えるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置には、紙などの記録媒体上を記録ヘッドが走査し、記録媒体が操作方向と90゜の方向に送られることで、記録媒体上に画像を形成する方式がある。記録媒体上を走査する記録ヘッドにインクを供給する方法として、記録ヘッドの設置されたキャリッジに直接インクタンクを搭載し、走査線上を記録ヘッドと共にインクタンクを往復動させる場合(オンキャリッジ方式)と、キャリッジ外の固定された場所にメインタンクを設置し、チューブ等により適時キャリッジ上のサブタンクにインクを充填する場合(オフキャリッジ方式)とに大きく分けることができる。さらに、オフキャリッジ方式の場合には、メインタンクとキャリッジ上のサブタンクが定常的に接続され、常時インクが供給される方法と、メインタンクとサブタンクが非定常的に接続され、必要時のみ接続される方法とに分類することができる。
【0003】
キャリッジ上にインクタンクを設置するオンキャリッジ方式の場合には、使用するインクの種類の数や搭載されるインクの量及び記録ヘッドの大きさによって往復動するキャリッジの大きさが決まる。インクの種類の数が増えたり、収容されるインクの量を増やすと、キャリッジの重量が増加し、それにより、キャリッジを走査する動力が大型化したり、助走距離が長くなり、あるいは、キャリッジの断面積も増えるため走査する空間が大きくなるなど弊害がある。したがって、この方式は、比較的小容量のインクを搭載する記録装置に向いていると言える。
【0004】
オフキャリッジ方式でメインタンクとサブタンクの2つのタンクが定常的に接続されている場合は、例えば、特許文献1に示されるような、メインタンクと記録ヘッドとの水頭差を利用した負圧発生方法が一般的である。この方法では、キャリッジの小型化が可能なため、走査する空間が小さく、駆動する動力が大型化することは少ないが、チューブの剛性によっては、駆動源に負荷を与える可能性がある。また、メインタンクとサブタンクの相対位置が限定されたり、インクがチューブ内を流れるときの圧力損失の影響、キャリッジの往復動によるチューブ内のインクの圧力変動が大きくなったりする場合があり、大型化する場合は、装置の構成を考慮する必要がある。特許文献2で示される構成も同様で、サブタンクが大気に対して密閉系であることが開示されており、基本的にメインタンクとの水頭差が記録ヘッドに負圧として与えられる構成である。
【0005】
オフキャリッジ方式でメインタンクとサブタンクの2つのタンクが非定常的に接続されている場合、記録ヘッドへインクを供給するときの負圧は、サブタンクのみで発生させるため、メインタンクとサブタンクの相対位置が限定されることはなく、キャリッジも小型にすることができれば利点が多いインク供給方法である。
【0006】
メインタンクとサブタンクが常にチューブにより接続されているインク供給方法の中でも、インク経路の途中にバルブを設けることによりインク消費量に合わせて適時断続的にインクを供給する方法も同様の利点がある。例えば、特許文献3に示されるような方法では、上記のようにインク経路が定常的に接続されている方法に比べてインク供給経路における圧力損失やキャリッジの往復動の影響を抑制することができるが、チューブの剛性によっては駆動源に負荷を与える可能性は依然として残っている。
【0007】
オフキャリッジ方式でメインタンクとサブタンクの2つのタンクが非定常的に接続されている場合において、サブタンクのみで負圧を発生させる方法として、バネで力を付与して負圧を発生させる方法、スポンジや繊維束などインク吸収体とインクの相互作用による毛管力によって負圧を発生させる方法等が知られている。例えば、特許文献4などで示されるような、バネ力を応用する場合は、構造が複雑で部品点数が増加する傾向はあるが、小型化が可能である。これに対して、インク吸収体を用いた特許文献5や特許文献6及び特許文献7に示された場合には、構成が簡略である利点を持つ。
【0008】
サブタンクにインク吸収体を使用した従来のインク供給方法の概略を図11に示す。
【0009】
サブタンク501は、メインタンク502と供給チューブ503を介してジョイント部504で非定常的に接続されている。サブタンク501とメインタンク502の接続時には、サブタンク501は、減圧ポンプ505と減圧チューブ506を介して減圧ジョイント部507で同時に接続される構造になっている。サブタンク501内には、インクを含浸するインク吸収体508が吸収体室509内に収められ、該吸収体室509の上部には、減圧ジョイント部507につながり、撥水性多孔質膜510を介して吸収体室508とつながる空気流路515と、吸収体室508の下部には、フィルター511を介して記録ヘッド部512とつながるインク流路516とが設けられている。
【0010】
撥水性多孔質膜510は、膜の表裏に一定以上の圧力差を与えない限り液体が透過しない孔径と、液体に対して撥水性を持った構造になっている。このとき、液体が透過しない最大圧力差を液体が水の場合一般に耐水圧と言う。また、この撥水性多孔質膜510は、気体を透過させ、液体を膜の片側に留める、すなわち液体を透過させない機能を有するため、該膜510を気液分離膜とも言う。
【0011】
撥水性多孔質膜の他にも、単分子層などを表面に持つ膜の場合で、膜の分子間距離が、透過可能な気体分子サイズより大きく、透過不可能な気体もしくは液体分子サイズより狭い膜の場合にも同様の作用を得ることができる。この場合も、透過可能な気体分子が通る孔が開いていると考えることができるため、単分子層を表面に持つ膜は、本明細書でいう多孔質膜という表現に含まれ、同様に気液分離膜とも呼び得る。
【0012】
ジョイント部504が定常的に接続された構成も同様に考えられ、この場合、供給チューブ503にはインク供給時以外は閉じる弁が配されていると共に、インク供給時以外における減圧ポンプは、大気と連通していて、減圧用チューブ506を介してサブタンク501内の圧力を大気圧に保持する構成となっている。
【0013】
また、インク供給方法として、メインタンク502側を加圧する方法、メインタンク502のサブタンク501に対する水頭を変化させる方法等も考えられるが,ここでは説明を省略する。
【0014】
図12a〜図12dを用いて従来のインク供給方法の動作原理を説明する。図12aは、インクを消費した状態、図12bは、インク供給が開始された状態、図12cは、インクがインク吸収体に行き渡った状態、図12dは、インク供給が終了した状態を示す。
【0015】
図12aに示されるように、サブタンク501内のインク吸収体508内のインク513を記録ヘッド部512が消費すると、インクと大気との気液界面514が下降する。
【0016】
ある一定量までインク吸収体508内のインク513が減少したときには、図12bに示されるように、供給チューブ503及び減圧チューブ506がそれぞれジョイント部504及び減圧ジョイント部507を介してサブタンク501に接続され、減圧ポンプ505によりサブタンク501内は減圧され、それによりメインタンク502からサブタンク501へインクが供給される。
【0017】
減圧ポンプ505による減圧が維持されていると、図12cに示されるように、インク513は、インク吸収体508全体に行き渡り、さらに、インク513が導入されると、インク吸収体508からあふれ、該インク吸収体508とインク吸収体室509の内壁との間を満たし、最終的には、図12dに示されるように、インク513は気液分離膜510に到達する。気液分離膜510の表面の撥水性と十分に小さい孔径のため、気液分離膜510の構内にインク513が浸入することができないので、気液分離膜510全面にインク513が到達すると、インク供給が終了する。すなわち、サブタンク501内、より正確にはインク吸収体室509内にインク513が完全に充填される。なお、減圧ポンプ505は、例えば、経験則上設定された時間で自動的に停止する。
【0018】
以上の動作を、サブタンク501内のインク513が減少した毎に行うことで、常に記録ヘッド部512へのインク供給を行うことができる状態を保つことができる。
【0019】
【特許文献1】特開2002−234180号公報
【特許文献2】特開平8−300677号公報
【特許文献3】特開平10−157155号公報
【特許文献4】特開平10−128992号公報
【特許文献5】特開2001−301194号公報
【特許文献6】特開2001−310477号公報
【特許文献7】特開2002−86754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
サブタンク501内にインク吸収体508を内包する方式は、構造が簡単でコスト的にメリットが大きいが、撥水性多孔質膜508による気体と液体の分離を行う点で、サブタンク501の構成によっては、撥水性多孔質膜508の耐久性に問題があることが知られている。
【0021】
出願人は、その原因を追究し、インク吸収体室509内の空気を吸気し、液体が気体分離膜としての撥水性多孔質膜508に到達した後、インク吸収体室509内の撥水性多孔質膜508に接する空気が全て該多孔質膜508を透過した時点で、過大な圧力が多孔質膜508の一点に集中することを知得した。
【0022】
図13a〜図13dを用いて、この現象を詳細に説明する。図13a〜図13dは、図11に示す撥水性多孔質膜510の一部Bを拡大した断面図である。図13aは、インク513が撥水性多孔質膜510に接する直前の状態を示し、図13bは、インク513の一部が撥水性多孔質膜510に到達し、気泡520が形成された直後の状態を示し、図13cは、インク供給が進み、気泡520がさらに小さくなった状態を示し、図13dは、気泡が消滅した時点を示す。
【0023】
図13aに示されるように、減圧によりサブタンク501内へインク513が導入され、インク表面すなわち気液界面522が気液分離膜としての撥水性多孔質膜508に接近し、さらにインク513がサブタンク501内に流入すると、図13bに示すように、多孔質膜510の一部にインク513が到達し、該多孔質膜510の撥水性により残存する空気が多孔質膜510上で気泡を形成する。減圧の維持により、気泡520内の空気が多孔質膜510を通過することで、気泡520は、図13cに示されるように、次第に小さくなり、図13dに示されるように、気泡520が消滅した時点でインク513の流入が停止する。
【0024】
図13b、13c、13dに示されるように、インク流入時には、気泡520との気液界面522に接するインク513は、該気液界面522に略垂直な方向に移動し、気液分離膜を透過する気体の時間当たりの量によってその速度ベクトル524は決まる。気泡520が小さくなってくると、膜に対する気体接触面積が減少するため気体の時間当たりの透過量が減少してくるが、液体の移動による慣性力のために気液界面に垂直な方向の速度はすぐには減速しないため、気泡内圧力が上昇する。気泡の消滅直前には気泡内圧力が最大となる。このため、多孔質膜510上の気泡の消滅点526に衝撃が加わり、この衝撃力が該多孔質膜510の耐水圧を超えるため、多孔質膜510の孔に形成されたメニスカスが破壊され、多孔質膜510の内部にインク513が浸入することになる。また、検討により、消泡時に衝撃が加わることで材料が破断し、実質的な孔径が広がることでインクが浸入する現象もあることが判った。多孔質膜510内にインク513が浸入すると、該多孔質膜510内にインク513が留まることになる。
【0025】
このような多孔質膜510内へのインク513の浸入が繰り返されることにより、多孔質膜510内に留まるインク513の量が増大し、結果として、空気が多孔質膜510を透過できる面積が減少し、空気が多孔質膜510を透過するときの圧力損失が増加(すなわち、通気度が低下)する。
【0026】
さらにインク513の浸入が進むと、インク513が多孔質膜510を透過し、多孔質膜510は気液分離膜としての機能を部分的に破壊することになり、外部にインク513が染み出し、障害を起こす恐れがある。
【0027】
この現象は、気泡の消滅点を集中させないことにより、ある程度の耐久性の確保は可能であるが、さらなる耐久性の向上が求められている。すなわち、インクを繰り返し供給することによる通気度の劣化を防止すると共にインクの透過を生じさせないために、気液分離膜への局所的なインクの衝突を抑制する必要がある。
【0028】
以上、サブタンク内にインク吸収体を内包し、インク吸収体の毛管力を利用したインク供給方法について言及したが、バネの弾性力を用いて負圧を発生させる方式においても、インクを収容した密閉空間内の気泡を取り除く用途で気液分離膜を用いることが可能である。気泡を取り除く時に発生する現象は同様に発生し、耐久性についても同様である。
【0029】
したがって、本発明の目的は、上記問題点に鑑み、気泡の消滅をなくし、それにより気液分離膜への液体の衝突を抑制することを可能とした液体充填方法、該液体充填方法が適用される液体収容容器及び該液体収容容器を備えるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成するために、本発明の液体充填方法は、液体収容容器と、気液分離膜と該気液分離膜に接して配置される非透過部とを有する気液分離部材を前記液体収容容器に設け、前記気液分離膜を介して気体が排出されることを利用して液体が前記液体収容容器に充填される液体充填方法であって、液体充填時、液体と気体との気液界面が、最初に前記気液分離膜に接触し、液体の充填がさらに進むと、前記気液界面と前記気液分離膜とが接触している接線が、前記気液分離膜と前記非透過部とが接する境界に向けて移動し、前記接線が前記境界に達すると前記接線の移動が停止することを特徴とする。
【0031】
また、本発明の液体収容容器は、気液分離膜と該気液分離膜に接して配置される非透過部と有する気液分離部材が設けられ、前記気液分離部材の前記気液分離膜を介して気体が排出されるように構成された液体収容容器であって、液体充填時、液体と気体との気液界面と前記気液分離膜とが接触する接線が、前記気液分離膜と前記非透過部とが接する境界に向けて移動するように構成されていることを特徴とする。
【0032】
さらに、前記気液分離部材は、該気液分離部材の気液分離膜が下方に、非透過部が上方に位置するように、水平方向に対して傾斜して配置されていてもよいし、水平に配置され、各々が水平方向に傾斜面を有する、断面台形状の1又は複数の通路が前記気液分離部材の下に形成されるとともに、該通路の幅の狭い側に気液分離膜が位置し、幅の広い側に非透過部が位置するように、前記気液分離部材が、前記通路を塞いでいてもよいし、水平に配置され、該気液分離部材の一部に非透過部を、該非透過部の周囲に気液分離膜を設けていてもよい。
【0033】
また、本発明のインクジェット記録装置は、上記本発明に係る液体収容容器をインクジェット記録装置のサブタンクとして備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、気液分離膜上での気泡の消滅を起こすことがなく、該気液分離膜への液体の衝撃が起こらず、液体充填時における気液分離膜の通気度の劣化を抑制するとともに、気液分離膜を液体が透過することを防止できる。したがって、気液分離膜の耐久性能を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を用いて本発明の実施例について詳細に説明する。
【0036】
(第1の実施例)
図1は、本発明に係る一つの実施例が適用されたサブタンクの概略断面図であり、図2は、図1に示すサブタンクに設けられた気液分離部材の一部Aを拡大した要部斜視図である。図3a〜図3cは、インク供給、充填時における動作を説明するために、図1の気液分離部材の一部Aを拡大した断面図であり、図3aは、インクが気液分離部材の撥水性多孔質膜に接する直前の状態を示し、図3bは、インクの一部が撥水性多孔質膜に到達した後の状態を示し、図3cは、インク供給が進み、インク供給が停止される状態を示す。
【0037】
図1に示されるように、本発明に係るインク供給機構は、気液分離機構としての気液分離部材の構造が異なるのみでその他の構成は、図11に示される従来例と同じであるが、簡単に説明する。
【0038】
図1において、1は、サブタンク、3は、該サブタンク1とメインタンク(不図示)とをつなぐインク供給チューブ、4は、ジョイント部、6は、サブタンク1と減圧ポンプ(不図示)とをつなぐ減圧チューブ、7は、減圧ジョイント部、8は、インク吸収体、9は、インク吸収体室、11は、フィルター、12は記録ヘッド部、14は、減圧ジョイント部7につながる空気通路、15は、インク吸収体室9と空気通路14を仕切る天井壁、16は、天井壁15を補強し、インク吸収体8に接しているリブ状吸収体保持部材、17は、インク吸収体8からのインクを記録ヘッド部12へ供給するインク通路、100は、本実施例における気液分離部材であり、図1に示されるように、天井壁15の開口部15aを塞ぐように天井壁15に取り付けられている。
【0039】
本実施例における気液分離部材100は、上記したようにインク吸収体室9の天井壁15に形成されている開口部15aを完全に塞ぐべく、その外郭が該開口部15aと相似形をなし、例えば熱融着により天井壁15に固定される、平坦な外側水平部112を有し、外側水平部112の内側部分は、図1に示されるように、外側水平部112から中心に向かって左右方向に傾斜し、側面から見て重力の作用する方向(本実施例では、図1で下向き)に突出する略V字形をなしている。また、この内側部分のV字形をなす部分の、図1において前後方向(紙面に対して垂直方向)の構造は、本実施例では、垂直の非透過性側壁113で塞がれている。気液分離部材100は、さらに、図2に明確に示されるように、内側部分のV字形をなす部分の中央部分が気体のみを通す気液分離機能を有する撥水性多孔質膜110で形成され、該撥水性多孔質膜110を取り囲む外周部分は、気体も液体も通さない非透過部111として形成されている。110aは、撥水性多孔質部材110と非透過部111との間の境界線である。気液分離部材100はこのように構成されているので、その中央部分に配置されている撥水性多孔質膜110も、断面V字形をなしており、110aは、V字形撥水性多孔質膜110のインク吸収体室9側の稜線を示す。なお、気液分離部材100は、もちろんこの製造方法に限られるものではないが、例えば、全体を撥水性多孔質膜で形成し、非透過部111に撥水性多孔質膜に非透過材料を接触させたり、撥水性多孔質膜に封止材料を塗布したりすることで作成可能である。また、V字形撥水性多孔質膜110及び非透過部111のV字をなす角は、180°に近い鈍角であることが好ましい。
【0040】
図3a〜図3cを用いて、サブタンク1へ液体としてのインク121が供給、充填されるときの動作を説明する。
【0041】
サブタンク1内に、より正確にはインク吸収体室9内にインクを供給する際、空気通路14は、減圧ポンプに接続されるから、空気通路14は減圧され、それによりインク吸収体室9内の気体(空気)120は、撥水性多孔質膜110を介して外部に排出されると共に、メインタンクに接続されている供給チューブ3を介してインク吸収体室9内にインク121が供給される。インク供給が進むにしたがい、インク吸収体室9内のインク121の液面すなわち気液界面122が上昇する(図3a)。
【0042】
インク吸収体室9内の気体120が十分に排出され、インク供給が進むと、インク液面(気液界面)122は、撥水性多孔質膜110の稜線110aに最初に接触する。その後、さらにインク供給が進み、インク液面(気液界面)の上昇と共に、撥水性多孔質膜110の表面と気液界面122の接線123は2つに分かれ、撥水性多孔質膜110の傾斜面に沿って移動する(図3b)。気液界面122の接線123が、撥水性多孔質膜110と非透過部111との境界線110aに達すると、インク吸収体室9内の気体120の排出が行われなくなり、インク供給が停止し、インク吸収体室9内にインク121が充填された状態となる(図3c)。このインク供給の停止時において、非透過部111と気液界面122との間のインク吸収体室9内に空気が閉じ込められるが、この閉じ込められた空気は、消滅することがない。したがって、撥水性多孔質膜110へのインク121の衝突による衝撃も発生することがなく、撥水性多孔質膜110の寿命を長くすることができる。
【0043】
また、インク使用時においては、上記インク充填時の動作と逆の動作が行われる。すなわち、記録ヘッド部12におけるインク121の使用に伴い、インク表面すなわち気液界面122が下降することで、気液界面122と撥水性多孔質膜110との接線123がインク充填時と逆の方向に移動する。この接線123の移動動作は、撥水性多孔質膜110の表面を洗う態様をとることとなり、インク充填時に堆積する異物が撥水性多孔質膜110から排除される。したがって、この動作により、撥水性多孔質膜110における異物の堆積の繰り返しによる目詰まりを防止し、メインタンク2からサブタンク1へのインク供給時において、撥水性多孔質膜110での目詰まりによる圧力損失の増大を抑制することができる。この意味においても、撥水性多孔質膜110の寿命が延び、結果として、寿命の長いインクジェット記録装置が提供されることとなる。
【0044】
本実施例において、気液分離部材100の撥水性多孔質膜110と非透過部111で構成される部分を、稜線110aを有するV字形状としたが、これに限定されるものではない。気液分離部材100の撥水性多孔質膜110と非透過部111とで構成される部分は、例えば、V字形状の先端は稜線を形成せずに断面円弧状に滑らかに形成されていてもよいし、あるいは、V形状に代えて、角錐形状、円錐形状、半球形状等であってもよい。要は、撥水性多孔質膜及び非透過部が傾斜した面で連続し、それにより気液界面の撥水性多孔質膜との接線が撥水性多孔質膜と非透過部との境界に移動し得るように構成されていればどのような構造であってもよい。
【0045】
(第2の実施例)
図4a、図4bは、本発明に係る第2の実施例を例示するものであり、図4aは、気液分離部材をインク吸収体室側から見た斜視図であり、図4bは、気液分離部材を含む該気液分離部材近傍の要部拡大断面図である。また、図5a〜図5dは、本実施例におけるインク供給、充填時における動作を説明するために、空気通路側から見た気液分離部材の模式的透視図であり、図5aは、天井壁の開口部にインク液面が到達する直前の状態、図5bは、インクが開孔部内に入り、インク液面が気液分離部材に到達したときの状態、図5cは、インク供給が進み、インク液面が上昇している途中の状態、図5dは、インク供給が停止したときの状態を示す。
【0046】
図4a、図4bにおいて、200は、本実施例における気液分離部材、210は、撥水性多孔質膜、211は、非透過部、215aは、天井壁215に形成される複数の開口部、213は、複数の開口部215aを仕切るリブ、216は、リブ状吸収体保持部材であり、その他の構成は、図1に示される第1の実施例のサブタンク構造と実質的に同じである。
【0047】
インク吸収体室209の上部壁を構成する天井壁215の開口部215a各々は、リブ213によって挟まれた空間であり、図4a、図5aに明示されるように、幅が長さ方向に対して傾斜を有する台形状をなしており、例えば、天井壁215を打ち抜くことにより形成される。なお、台形状の開口部215aは、図4a、図5aに示されるように、幅の広い側と幅の狭い側とを交互に配置することにより、狭い領域内で複数の開口部215aを効率的に配置することができる。しかしこのような配置に限定されるものではない。
【0048】
本実施例における気液分離部材200は、上記複数の開口部215aを全て覆う面積を有する平坦な矩形状の板状部材であり、中央部に長さL、幅Wの矩形状の撥水性多孔質膜210を備えている。矩形状撥水性多孔質膜210を取り囲む外周は、気体も液体も通さない非透過部211で形成されている。撥水性多孔質膜210の長さLは、上記台形状開口部215aの長さより小さく、その幅Wは、複数の開口部215aが形成されている領域の幅より大きい(図5a参照)。
【0049】
気液分離部材200は、図4bに示されるように、撥水性多孔質部材210と非透過部211との幅方向の境界線210aが開口部215aの幅の広い側の内側に位置するように、空気通路214側から天井壁215に熱融着され、開口部215aを塞ぐ。
【0050】
図5a〜図5dを用いて、サブタンクへ液体としてのインク121が供給、充填されるときの動作を説明する。
【0051】
サブタンク内に、より正確にはインク吸収体室209内にインクを供給する際、空気通路214は、減圧ポンプに接続されるから、空気通路214は減圧され、それによりインク吸収体室209内の気体(空気)220は、上記第1の実施例と同様に、撥水性多孔質膜210を介して外部に排出されると共に、メインタンクに接続されている供給チューブを介してインク吸収体室209内にインク221が供給される。インク供給が進むにしたがい、インク吸収体室209内のインク221の液面すなわち気液界面が上昇する(図5a)。
【0052】
インク吸収体室209内の気体220が十分に排出され、インク供給が進むと、インク液面(気液界面)は、吸収体保持部216を伝って、天井壁219の下面に到達する。このとき、インク221は、毛管力によりリブ213の間隔の狭い空間から、すなわち開口部215aの幅の狭い側から該開口部215a内に流入する(図5b)。
【0053】
その後、さらにインク供給が進むと、リブ213の間隔により設定される毛管力の違いにより、インク液面(気液界面)は、幅の狭い側から幅の広い側へ若干傾斜した状態で、開口部215a内を上昇する。すなわち、本実施例においても、上記第1の実施例と同様に、開口部215aを塞いでいる撥水性多孔質膜210は、気液界面に対して相対的に傾斜した状態を構成している。したがって、本実施例においても、気液界面と撥水性多孔質膜210とが接触する接線223が形成され、該接線223が、相対的に傾斜している撥水性多孔質膜210に沿って移動する(図5c)。
【0054】
気液界面と撥水性多孔質膜210との接線223が、該撥水性多孔質膜210と非透過部211との境界線210aに達すると、インク吸収体室209内の気体220の排出が行われなくなり、インク供給が停止し、インク吸収体室209内にインク221が充填された状態となる(図5d)。このインク供給の停止時において、非透過部211と気液界面との間のインク吸収体室209(より正確には、開口部215a)内に空気が閉じ込められるが、この閉じ込められた空気は、消滅することがない。したがって、撥水性多孔質膜210へのインク221の衝突による衝撃も発生することがない。
【0055】
本実施例においては、撥水性多孔質膜210を含む気液分離部材200は、平坦であるため、取り付けが容易であり、また、撥水性多孔質膜210と気液界面との接線223の移動を該撥水性多孔質膜210に対して上下方向(高さ方向)ではなく水平方向に利用していることにより、容積を小さく抑えることができる。
【0056】
(第3の実施例)
図6、図7は、本発明に係る第3の実施例を例示するものであり、図6は、気液分離部材をインク吸収体室側から見た斜視図であり、図7は、空気通路側から見た気液分離部材の模式的透視図である。また、図8a〜図8cは、本実施例におけるインク供給、充填時における動作を説明するために、本実施例の気液分離部材の要部を拡大した断面図であり、図8aは、天井壁の開口部にインク液面が到達する直前の状態、図8bは、インク液面が気液分離部材の撥水性多孔質膜に接して上昇している途中の状態、図8cは、インク供給が停止したときの状態を示す。
【0057】
図6、図7において、300は、本実施例における気液分離部材、310は、撥水性多孔質膜、311は、非透過部、315aは、天井壁315に形成される複数の開口部、313は、開口部315aを仕切るリブである。
【0058】
そして、インク吸収体室309の上部壁を構成する天井壁315の開口部315a各々は、リブ313によって挟まれた空間であり、図6、図7に明示されるように、上から見て幅が長さ方向に対して傾斜を有する台形状をなしている点で上記第2の実施例と同じであるが、本実施例では、さらに、リブ313間の間隔、すなわち開口部315aの幅の広い側が上方に位置するように、開口部315aは、側面から見ても傾斜している(図6及び図8a〜図8c参照)点で第2の実施例とその構成を異にする。
【0059】
さらに、本実施例では、上記のとおり開口部315aが垂直方向に傾斜していることから、図6、7に示されるように、開口部315aは、幅の広い側のみが一方向に揃うように配置される点でも第2の実施例とその構成を異にする。もちろん、第2の実施例のように幅の狭い側と広い側とが交互にくるように開口部315aを配置することも可能であるが、その場合構造が複雑になる。
【0060】
本実施例における気液分離部材300は、上記複数の開口部315aを全て覆う面積を有する矩形状の板状部材であり、中央部に長さL1、幅W1の矩形状の撥水性多孔質膜310を備えている。矩形状撥水性多孔質膜310を取り囲む外周は、気体も液体も通さない非透過部311で形成されている。撥水性多孔質膜310の長さL1は、上記台形状開口部315aの長さより小さく、その幅W1は、複数の開口部315aが形成されている領域の幅より大きい(図6参照)。また、本実施例における気液分離部材300は、垂直方向に傾斜する開口部315aに対応する部分は、傾斜面として構成される。
【0061】
気液分離部材300は、上記第2の実施例と同様に、撥水性多孔質部材310と非透過部311との幅方向の境界線310aが開口部315aの幅の広い側の内側に位置するように、空気通路314側から天井壁315に熱融着され、開口部315aを塞ぐ。
【0062】
本実施例におけるその他の構成は、上記第2の実施例のサブタンク構造と同じである。
【0063】
図8a〜図8cを用いて、サブタンクへ液体としてのインク321が供給、充填されるときの動作を説明する。
【0064】
サブタンクのインク吸収体室309内にインクを供給する際、空気通路314は、減圧ポンプに接続されるから、空気通路314は減圧され、それによりインク吸収体室309内の気体320は、上記第1、第2の実施例と同様に、撥水性多孔質膜310を介して外部に排出されると共に、メインタンクに接続されている供給チューブを介してインク吸収体室309内にインク321が供給される。インク供給が進むにしたがい、インク吸収体室309内のインク321の液面すなわち気液界面322が上昇する(図8a)。
【0065】
インク吸収体室309内の気体320が十分に排出され、インク供給が進むと、インク321は、開口部315aの幅の狭い側から流入し、インク液面すなわち気液界面322をさらに上昇させ、傾斜している撥水性多孔質膜310に接触する(図8b)。
【0066】
さらにインク供給が進み、気液界面322と撥水性多孔質膜310との接線323が該撥水性多孔質膜310と非透過部311との境界線310aに達すると、インク吸収体室309内の気体320の排出が行われなくなり、インク供給が停止し、インク吸収体室309内にインク321が充填された状態となる(図8c)。
【0067】
このインク供給の停止時において、非透過部311と気液界面322との間のインク吸収体室309内に空気が閉じ込められるが、この閉じ込められた空気は、消滅することがない。したがって、撥水性多孔質膜310へのインク321の衝突による衝撃も発生することがない。
【0068】
本実施例においては、動作自体は、第1の実施例と略同じであるが、さらに第2の実施例の動作原理を加えることにより、より安定した気液界面の移動を制御できる。
【0069】
(第4の実施例)
図9は、本発明に係る第4の実施例を例示するものであり、空気通路側から見た気液分離部材の模式的透視図である。また、図10a〜図10cは、本実施例におけるインク供給、充填時における動作を説明するために、本実施例の気液分離部材の要部を拡大した断面図であり、図10aは、天井壁の開口部にインク液面が到達する直前の状態、図10bは、インク513の一部が撥水性多孔質膜510に到達し、気泡520が形成された直後の状態を示し、図10cは、インク供給が停止したときの状態を示す。
【0070】
図9、図10aにおいて、400は、本実施例における気液分離部材、410は、撥水性多孔質膜、411は、非透過部、415aは、天井壁415に形成される円形の開口部、416は、リブ状吸収体保持部材であり、その他の構成は、図1に示される第1の実施例のサブタンク構造と実質的に同じである。
【0071】
本実施例における気液分離部材400は、上記開口部415aを完全に覆う面積を有する板状部材(本実施例では矩形状)であり、中央部に円形状の撥水性多孔質膜410を備えている。なお、気液分離部材の形状は、平坦な開口部415aの外郭形状(本実施例では円形状)に相似していてもよい。本実施例では、この円形状撥水性多孔質膜410の中心部に、さらに、気体も液体も通さない円形状の非透過部411が設けられている。なお、円形状撥水性多孔質膜410を取り囲む外周も、本実施例では、気体も液体も通さない非透過部411で形成されている。なお、撥水性多孔質膜410及び該撥水性多孔質膜410の中心部に配置される非透過部411は、その大きさ及び形状は、本実施例に限られるものではなく、適宜設定される。
【0072】
気液分離部材400は、図9、図10aに示されるように、撥水性多孔質部材410の中心部に配置される非透過部411が開口部415aの略中心部に同心円状に位置するように、空気通路414側から天井壁415に熱融着され、開口部415aを塞ぐ。
【0073】
図10a〜図10cを用いて、サブタンクへ液体としてのインク421が供給、充填されるときの動作を説明する。
【0074】
サブタンクのインク吸収体室409内にインクを供給する際、空気通路414は、減圧ポンプに接続されるから、空気通路414は減圧され、それによりインク吸収体室409内の気体420は、上記第1〜第3の実施例と同様に、撥水性多孔質膜410を介して外部に排出されると共に、メインタンクに接続されている供給チューブを介してインク吸収体室409内にインク421が供給される。インク供給が進むにしたがい、インク吸収体室409内のインク421の液面すなわち気液界面422が上昇する(図10a)。
【0075】
さらにインク421がサブタンク内に流入すると、撥水性多孔質膜410の一部にインク421が到達し、該撥水性多孔質膜410の撥水性により残存する気体が多孔質膜410上で気泡420を形成する(図10b)。
【0076】
引き続き減圧が維持されることにより、気泡420内の気体は、撥水性多孔質膜410を通過し、気泡420は、次第に小さくなり、気泡420内の気体とインク421との気液界面422及び撥水性多孔質膜410との接触する接線423が、撥水性多孔質膜410と該多孔質膜410の中心部に配置されている非透過部411との境界に移動してきた時点で、気体の排出を行うことができなくなる。したがって、サブタンクへのインク421の供給が停止する(図10c)。
【0077】
このインク供給の停止時において、撥水性多孔質膜410の中心部に配置されている非透過部411の真下のインク吸収体室409(より正確には、開口部415a)内に気体が気泡420の形態で閉じ込められるが、この気泡420は、該気泡420内の気体が排出されないのであるから、消滅することがない。したがって、撥水性多孔質膜410へのインク421の衝突による衝撃も発生することがない。
【0078】
本実施例においても、撥水性多孔質膜410を含む気液分離部材400は、平坦であるため、取り付けが容易であり、また、撥水性多孔質膜410と気液界面422との接線423の移動を該撥水性多孔質膜210に対して上下方向(高さ方向)ではなく水平方向に利用していることにより、容積を小さく抑えることができる。さらに、撥水性多孔質膜410を含む気液分離部材400の下部の構造も単純な形状で第1ないし第3の実施例と同じ機能を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上、本発明の上記第1ないし第4の実施例においては、インクの供給方法及び装置として述べてきたが、密閉空間内の気泡の除去を含めた一般的な液体内の気泡の除去方法及び装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る第1の実施例が適用されたサブタンクの概略断面図である。
【図2】図1に示されるサブタンクに設けられた気液分離部材の一部Aを拡大した要部斜視図である。
【図3】第1の実施例におけるインク供給、充填時における動作を説明するために、図1の気液分離部材の一部Aを拡大した断面図であり、aは、インクが気液分離部材の撥水性多孔質膜に接する直前の状態を示し、bは、インクの一部が撥水性多孔質膜に到達した後の状態を示し、cは、インク供給が進み、インク供給が停止される状態を示す。
【図4】本発明に係る第2の実施例を示し、aは、気液分離部材をインク吸収体室側から見た斜視図であり、bは、気液分離部材を含む該気液分離部材近傍の要部拡大断面図である。
【図5】第2の実施例におけるインク供給、充填時における動作を説明するために、空気通路側から見た気液分離部材の模式的透視図であり、aは、天井壁の開口部にインク液面が到達する直前の状態、bは、インクが開孔部内に入り、インク液面が気液分離部材に到達したときの状態、cは、インク供給が進み、インク液面が上昇している途中の状態、dは、インク供給が停止したときの状態を示す。
【図6】本発明に係る第3の実施例を示し、気液分離部材をインク吸収体室側から見た斜視図である。
【図7】図6の気液分離部材を空気通路側から見た模式的透視図である。
【図8】第3の実施例におけるインク供給、充填時における動作を説明するために、本実施例の気液分離部材の要部を拡大した断面図であり、aは、天井壁の開口部にインク液面が到達する直前の状態、bは、インク液面が気液分離部材の撥水性多孔質膜に接して上昇している途中の状態、cは、インク供給が停止したときの状態を示す。
【図9】本発明に係る第4の実施例を示し、空気通路側から見た気液分離部材の模式的透視図である。
【図10】第4の実施例におけるインク供給、充填時における動作を説明するために、本実施例の気液分離部材の要部を拡大した断面図であり、aは、天井壁の開口部にインク液面が到達する直前の状態、bは、インク513の一部が撥水性多孔質膜510に到達し、気泡520が形成された直後の状態を示し、cは、インク供給が停止したときの状態を示す。
【図11】従来のインク供給方法の概略図を示す。
【図12】図11に示される従来のインク供給方法の動作原理を説明するための図であり、aは、インクを消費した状態、bは、インク供給が開始された状態、cは、インクがインク吸収体に行き渡った状態、dは、インク供給が終了した状態を示す。
【図13】図11に示す従来のインク供給方法における撥水性多孔質膜の一部Bを拡大した断面図であり、aは、インクが撥水性多孔質膜に接する直前の状態を示し、bは、インクの一部が撥水性多孔質膜に到達し、気泡が形成された直後の状態を示し、cは、インク供給が進み、気泡がさらに小さくなった状態を示し、dは、気泡が消滅した時点を示す。
【符号の説明】
【0081】
1、501 サブタンク
3、503 供給チューブ
4、504 ジョイント部
6、506 減圧チューブ
7、507 減圧ジョイント部
8、208、408、508 インク吸収体
9、209、309、409、509 インク吸収体室
11、511 フィルター
12、512 記録ヘッド部
14、214、314、414、515 空気(気体)通路
15、215、315、415 天井壁
15a、215a、315a、415a 開口部
16、216、416 リブ状吸収体保持部材
17、516 インク(液体)通路
100、200、300、400 気液分離部材
110、210、310、410、510 撥水性多孔質膜(気液分離膜)
110a、210a、310a、410a (撥水性多孔質膜と非透過部との)境界
111、211、311、411 非透過部
120、220、320、420 気体
121、221、321、421、513 インク(液体)
122、322、422、522 気液界面(インク表面)
123、223、323、423、523 (気液界面と撥水性多孔質膜との)接線
502 メインタンク
505 減圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体収容容器と、気液分離膜と該気液分離膜に接して配置される非透過部とを有する気液分離部材を前記液体収容容器に設け、前記気液分離膜を介して気体が排出されることを利用して液体が前記液体収容容器に充填される液体充填方法であって、
液体充填時、液体と気体との気液界面が、最初に前記気液分離膜に接触し、
液体の充填がさらに進むと、前記気液界面と前記気液分離膜とが接触している接線が、前記気液分離膜と前記非透過部とが接する境界に向けて移動し、
前記接線が前記境界に達すると前記接線の移動が停止することを特徴とする液体充填方法。
【請求項2】
気液分離膜と該気液分離膜に接して配置される非透過部と有する気液分離部材が設けられ、前記気液分離部材の前記気液分離膜を介して気体が排出されるように構成された液体収容容器であって、
液体と気体との気液界面と前記気液分離膜とが接触する接線が、前記気液分離膜と前記非透過部とが接する境界に向けて移動するように構成されていることを特徴とする液体収容容器。
【請求項3】
前記気液分離部材は、該気液分離部材の気液分離膜が下方に、非透過部が上方に位置するように、水平方向に対して傾斜して配置されていることを特徴とする請求項2に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記気液分離部材は、下方に向けて凸形状をなしていることを特徴とする請求項3に記載の液体収容容器。
【請求項5】
前記気液分離部材は、水平に配置され、各々が水平方向に傾斜面を有する、断面台形状の1又は複数の通路が前記気液分離部材の下に形成されるとともに、該通路の幅の狭い側に気液分離膜が位置し、幅の広い側に非透過部が位置するように、前記気液分離部材が、前記通路を塞いでいることを特徴とする請求項2に記載の液体収容容器。
【請求項6】
さらに、水平の天井壁を備え、
前記断面台形状の1又は複数の通路は、前記天井壁に開けられた1又は複数の開口部で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の液体収容容器。
【請求項7】
前記気液分離部材は、水平に配置され、該気液分離部材の一部に非透過部を、該非透過部の周囲に気液分離膜を設けていることを特徴とする請求項2に記載の液体収容容器。
【請求項8】
前記気液分離部材の前記非透過部は、該気液分離部材の略中央部に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の液体収容容器。
【請求項9】
前記液体は、インクであることを特徴とする請求項2ないし8のいずれかに記載の液体収容容器。
【請求項10】
装置本体に設けられているメインタンクと、該メインタンクに連通し、記録ヘッドを含むキャリッジに搭載され、記録時記録ヘッドにインクを供給するサブタンクと、該サブタンクから気体を排出する減圧ポンプとを有するインクジェット記録装置であって、
前記サブタンクは、請求項2ないし9のいずれかに記載の液体収容容器として構成されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
気液分離膜と該気液分離膜に接して配置される非透過部と有する気液分離部材が設けられ、前記気液分離部材の前記気液分離膜を介して気体が排出されるように構成された液体収容容器であって、
前記気液分離部材は、液体と気体とが接する第1の面と、気体のみが接する第2の面を有し、前記第1の面から前記第2の面へ気体が移動する過程で、前記第1の面及び液体と気体との気体界面が接する接線が、前記気液分離膜と非透過部との境界線に向けて移動するように構成されている液体収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−159790(P2006−159790A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357303(P2004−357303)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】