液体危険物用オープン型ドラム缶
【課題】UN規格に容易に適合させることができる高品質な液体危険物用オープン型ドラム缶を提供する。
【解決手段】液体危険物用オープン型ドラム缶はその開閉可能な天蓋を胴体に対し締結する締結バンド6のバンド本体30の切れ目32の近傍付近に天蓋の変形に伴う応力集中が発生することを防止する当接金具40を設ける。
【解決手段】液体危険物用オープン型ドラム缶はその開閉可能な天蓋を胴体に対し締結する締結バンド6のバンド本体30の切れ目32の近傍付近に天蓋の変形に伴う応力集中が発生することを防止する当接金具40を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能な天蓋を備えた液体危険物用オープン型ドラム缶に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のオープン型ドラム缶は、粘性が比較的高い液体危険物や、また、粉体又は固体等の出し入れが容易ではない内容物の充填輸送に好適し、通常の密閉型ドラム缶との相違は天板の代わりに開閉可能な天蓋を備えていることにある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-272533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のオープン型ドラム缶にも通常の密閉型ドラム缶の場合と同様に、危険物輸送に関する国連勧告(UN規格=UN Recommendations on the Transport of Dangerous Goods)に定めされている気密試験、落下強度試験、水圧強度試験及び積み重ね試験の各判定基準に適合していなければならない。しかしながら、オープン型ドラム缶はその天蓋が開閉可能であるから、特にその落下強度試験や水圧強度試験の判定基準に適合した性能を満たすには、オープン型ドラム缶には通常の密閉型ドラム缶とは異なる工夫が要求される。
【0005】
具体的には、上述の性能を左右する要因として、天蓋及び胴体の胴体カールの耐圧強度や、胴体カールに対して天蓋の蓋カールを締結する締結バンドの締結強度、そして、胴体カールと蓋カールとの間に挟み込まれるガスケットのシール性能等が考えられるが、これら要因のなかでも、締結バンドはリング形状の一カ所に切れ目を有するため、特にこの切れ目の近傍部位における天蓋の耐圧強度の増加が望まれている。
【0006】
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、締結バンドの構成を工夫するだけで、天蓋の耐圧強度を容易に増加させることができ、UN規格を満たすうえで好適した液体危険物用オープン型ドラム缶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の液体危険物用オープン型ドラム缶は、円筒状をなした中空の胴体と、この胴体の下端開口を閉塞する地板と、胴体の上端開口に開閉可能に装着され、上端開口を閉塞する天蓋と、リング形状の一カ所に切れ目を有するバンド本体と、バンド本体の両端にそれぞれ位置して取り付けられ、バンド本体を縮径させることにより天蓋を胴体に対し締結する締結金具とを含む締結バンドとを備え、締結バンドは、バンド本体の内側の切れ目に位置して設けられる当接金具を含む(請求項1)。
【0008】
具体的には、胴体は、その外周部に設けられた胴体カールを含み、一方、天蓋は、蓋本体と、この蓋本体の外周部に設けられ、胴体カールにガスケットを介して嵌め合わせられる蓋カールとを含み、バンド本体は略U字形状の横断面を有し、締結バンドは、バンド本体を縮径させることによりバンド本体の内側に当接金具を介して胴体カール及び蓋カールを包み込むようにして蓋カールを胴体カールに対し締結する(請求項2)。
【0009】
また、当接金具は、バンド本体、胴体カール及び蓋カールに当接される(請求項3)。具体的には、当接金具の横断面がバンド本体と相似の略U字形をなして形成され(請求項4)、当接金具の長手方向がバンド本体のリング形に沿う円弧状をなして形成されることにより(請求項5)、バンド本体、胴体カール及び蓋カールに密着して当接される。このような当接金具の形状は、天蓋の切れ目の近傍部位に天蓋の変形に伴う応力集中が発生することを防止し、天蓋の耐圧強度を高める。
【0010】
好ましくは、当接金具は、その長手方向の両端に当接金具の略U字形の開口端面に向けて丸み付けされた円弧部を有する(請求項6)。この場合、当接金具自体の強度を確保しつつ、バンド本体、胴体カール及び蓋カールに対する当接金具の接触面積を低減することができるため、天蓋の変形が当接金具に対するバンド本体、胴体カール及び蓋カールのすべりによって円滑に許容される。
【0011】
好ましくは、当接金具は、各締結金具の何れか一方に固定される(請求項7)。この場合、天蓋の変形に伴う当接金具のずれが防止され、当接金具を切れ目に確実に位置づけることができる。
好ましくは、当接金具は、締結金具の締結トルクに対する強度に応じて板厚の下限が設定され、バンド本体との板厚差に応じて板厚の上限が設定される(請求項8)。具体的には、板厚は締結金具に対する締結トルクによって当接金具が変形、ひいては破断しない程度の厚みであり、かつ、締結金具に対する締結トルクによって当接金具の若干の変形を許容し、バンド本体との間に生じる板厚差、即ち隙間を埋めることができる程度に、0.75〜1.15mmの範囲に設定される(請求項9)。
【0012】
好ましくは、当接金具の板厚を1.0mmとすれば(請求項10)、一般的な板厚を有する本体バンドとの隙間を生めることができ、一方、当接金具の長さを10〜200mmとすれば(請求項11)、天蓋の変形に伴い、蓋カールからガスケットを介して胴体カールやバンド本体に応力分散させるための最低限の接触面積を確保できるとともに、当接金具のずれが発生したとしても当接金具を切れ目に確実に位置づけることができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜11の液体危険物用オープン型ドラム缶によれば、締結バンドのバンド本体の切れ目の位置に当接金具を設けるだけで、天蓋の耐圧強度が増加することから、UN規格に容易に適合したオープン型ドラム缶の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施例のオープン型ドラム缶の正面図である。
【図2】図1中のII部の断面図である。
【図3】図1中のIII部の断面図である。
【図4】図1の天蓋を示した平面図である。
【図5】図4の天蓋の一部を示す断面図である。
【図6】図3に示す胴体カールの拡大図である。
【図7】図1の締結バンドの詳細を示す斜視図である。
【図8】図7の一部を示す斜視図である。
【図9】図7の当接金具の斜視図である。
【図10】図9の当接金具の横断面図である。
【図11】図7の締結バンドの組み付け時の状態を示す平面図である。
【図12】図11をXII方向からみた断面図である。
【図13】図11の締結ボルトの締め付け時の状態を示す平面図である。
【図14】図13をXIV方向からみた断面図である。
【図15】落下強度試験の方法を(a)の対角落下の場合と、(b)の水平落下の場合とで示す図である。
【図16】水圧強度試験の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図14は第1実施例の液体危険物用オープン型ドラム缶を示す。
図1から明らかなようにオープン型ドラム缶は、円筒状をなした中空の胴体2と、この胴体2の下端開口を閉塞する地板4と、胴体2の上端開口に締結ハンド6を介して開閉可能に装着され、上端開口を閉塞する円形の天蓋8とを備える。なお、胴体2には2本の輪帯10が形成されており、これら輪帯10は上下方向に所定の間隔を存して配置されている。
【0016】
図2に示されているように、胴体2の下端縁と地板4の外周縁とは充填剤(図示しない)を介在させた状態で巻締めにより相互に接合され、いわゆるチャイム12を形成している。これに対し、図3に示されるように胴体2の上端縁は外側に突出するフランジ状の胴体カール14として形成され、そして、天蓋8の外周縁もまた外側に突出するフランジ状の蓋カール16として形成されている。
蓋カール16は胴体カール14よりも大きく、天蓋8が胴体2の上端開口に装着されたとき、その蓋カール16はガスケット18を介して胴体カール14に被せられる。なお、ガスケット18は白スポンジ、EPDM等からなり、蓋カール16の内側に貼付けられている。
【0017】
図4は天蓋8の平面図、図5は天蓋8の一部の断面図を示し、天蓋8は、蓋本体20と、この蓋本体20の外周縁に設けられた蓋リム22とからなる。この蓋リム22は蓋本体20から垂直方向、つまり、胴体2の軸線方向に立ち上がり、その上端に蓋カール16を有する。更に、図4に示されているように天蓋8の蓋本体20には注入口金24及び排気口金26が設けられている。
【0018】
図5中に示す天蓋8は、外径φL、蓋リム22の高さH1、蓋カール16の高さH2、蓋カール16の内外面の曲率半径R1,R2、蓋リム22の近傍に形成される円弧部28の外面の曲率半径R0がそれぞれ適宜所定の値に形成されており、特に本実施例の場合には、天蓋8の厚さTが1.2mmに形成され、蓋本体20の中央部が段差(1mm程度)をもって僅かに膨出して形成されている。なお、胴体2及び地板4の板厚も天蓋8と同様に厚さ1.2mmに形成されている。
図6は胴体2の胴体カール14を拡大して示し、胴体カール14の先端と胴体2の外周面との間には所定の間隙Aが確保されており、間隙AはA1(=約3mm)である。
【0019】
なお、図6中に示す胴体カール14の高さH3及び幅Wc、そして、胴体カール14を形成する外面の曲率半径R3のそれぞれは適宜所定の値に設定される。
一方、図7及び図8に示されているように、締結バンド6は、リング形状のバンド本体30を備え、このバンド本体30は一カ所に切れ目32を有するとともに略U字形状の横断面を有する。バンド本体30には一対のS金具(締結金具)34がその両端にそれぞれ位置して取り付けられており、これらS金具34はパイプ状のボルト挿通部36を有する。
【0020】
図3から明らかなように、胴体2の上端開口に天蓋8が装着された後、締結バンド6はそのバンド本体30の内側に胴体カール14及び蓋カール16を包み込むようにして取り付けられる。そして、図7に示されている締結ボルト38bが一対のS金具34のボルト挿通部36にそれぞれ挿通され、この締結ボルト38bとナット38nとの間にて一対のS金具34を締付け、バンド本体30を縮径させれば、締結バンド6は胴体2の上端開口、即ち、その胴体カール14に対しガスケット18を介して天蓋8の蓋カール16を締結することができる。
【0021】
逆に、一対のS金具34から締結ボルト38bを抜き取り、そして、締結バンド6のバンド本体30を胴体カール14及び蓋カール16から取り外せば、胴体2に対して天蓋8を開くことができる。なお、胴体2、地板4及び天蓋8の外面には、脱脂処理、化成処理(ボンデ処理)及び水洗処理等の工程を経て所定の皮膜が形成され、更には、皮膜の上に所望の塗装が施されており、胴体2、地板4及び天蓋8の内面には脱脂処理、化成処理のみが施されることが多い。
【0022】
図7から明らかなように、締結バンド6のバンド本体30の内側の切れ目32の位置には当接金具40が設けられている。
図9及び図10に示されるように、当接金具40は、その長手方向がバンド本体30のリング形に沿う円弧状をなし、その横断面がバンド本体30と相似の略U字形をなす冷間圧延鋼材等から形成される。また、当接金具40の長手方向の両端には当接金具40の略U字形の開口端面40aに向けて丸み付けされた円弧部40bが形成されている。
【0023】
当接金具40は、その板厚Taの下限がS金具34を締結する際の締結トルクに対する強度に応じて設定され、板厚Taの上限がバンド本体30との板厚差に応じて設定される。具体的には、板厚Taは0.75〜1.15mmの範囲で設定され、10〜200mm程度の長さLaを有して形成されており、これらの値は当接金具40がJIS G3141に規定する冷延鋼板一般用(SPCC)に基づく強度と同等の強度を有するべく設定されている。また、後述する水圧試験の結果で明らかなように、バンド本体30の板厚を例えば2.3mm程度に設定すると、当接金具40の最適な板厚Taは1.0mmであることが判明している。
【0024】
図11及び図12に示されるように、当接金具40は円弧部40b近傍が各S金具34の何れか一方、図11では左側のS金具34の内側に溶接等により固定され、締結バンド6の組み付け時には、締結ボルト38bが一対のS金具34のボルト挿通部36にワッシャ42を介して挿通され、胴体カール14及び蓋カール16は当接金具40の内側に包み込まれるようにして当てがわれる。
【0025】
図13及び図14に示されるように、締結ボルト38bの締め付け時には、締結ボルト38bとナット38nとの間にて一対のS金具34を締付け、バンド本体30を縮径させることにより、当接金具40はバンド本体30とともに開口端面40aが若干広がり、胴体カール14及び蓋カール16を包み込ように取り付けられる。この状態では、当接金具40はバンド本体30の内側の切れ目32の位置においてバンド本体30、胴体カール14及び蓋カール16に当接され、当接金具40の開口端面40aが若干広がったことによる反力でガスケット18がつぶされ、当接金具40は胴体カール14及び蓋カール16に密着され、これより締結バンド6は胴体カール14に対しガスケット18を介して蓋カール16を気密に締結する。
【0026】
図15は落下強度の試験方法を示す。
ここでの試験では、200Lの98%以上の水を充填したオープン型ドラム缶ODを高さ1.2m(液体危険物Y等級の場合)から落下させても、ドラム缶ODから水漏れしないことが要求される。図15(a)は、締結バンド6のS金具34を衝撃点とする対角落下試験を示し、図15(b)は胴体2の溶接部を衝撃点とする水平落下試験を示す。なお、締結バンド6はそのS金具34が胴体2に対し、その溶接部と直径方向でみて反対側に位置すべく取り付けられている。
【0027】
上述した当接金具40を備える幾つかのオープン型ドラム缶に対して高さ1.3m以上からの落下強度試験を実施し、何れのドラム缶であっても水漏れの無いことが確認されている。
以下の表1は、上述のオープン型ドラム缶に対して高さ1.2〜1.5mからの落下強度試験を行い、当接金具40の有無やその板厚Taを変えたときの主として切れ目32における漏れの有無、S金具34近傍の天蓋8の変形量、漏れが発生した落下高さを示している。なお、ガスケット18はすべて同一の仕様のものを用いている。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から明らかなように、板厚Taが1.0mmの当接金具40を使用したオープン型ドラム缶では落下高さが1.4mや1.5mであっても漏れは無く、S金具34近傍の天蓋8の変形量は、当接金具40を使用しない場合に比して何れも小さく、胴カール14の変形量も小さいことから、胴体カール14は機械的強度に優れたものとなり、落下強度試験に関して有利となる。なお、当接金具40が無い場合や当接金具40の板厚Taが1.2mmの場合であっても落下高さ1.2mのときに漏れが無いことは勿論である。
図16は水圧強度の試験方法を示す。
【0030】
ここでの試験では、200Lの98%以上の水を充填したオープン型ドラム缶ODをその締結バンド6のS金具34を下にした状態で試験台上に水平に配置し、そして、ドラム缶OD内を0.1MPaの加圧状態で5分間(液体危険物Y等級の場合)維持し、この間、ドラム缶ODから水漏れしないことが要求される。
ここでも、上述の当接金具40を備える幾つかのオープン型ドラム缶に対して0.11MPa以上での水圧強度試験を実施し、何れのドラム缶であっても水漏れの無いがことが確認されている。
【0031】
以下の表2は、上述のオープン型ドラム缶に対して0.1〜0.145MPaでの水圧強度試験を行い、当接金具40の有無やその板厚Taを変えたときの主として切れ目32における漏れの有無、S金具34近傍の天蓋8の変形量、漏れ発生圧力を示している。なお、ガスケット18はすべて同一の仕様のものを用いている。
【0032】
【表2】
【0033】
表2から明らかなように、板厚Taが1.0mmの当接金具40を使用したオープン型ドラム缶の漏れ発生圧力は全て0.1MPaを十分に超えていることから、UN規格の水圧強度を十分に満たしている。
また、板厚Taが1.0mmの当接金具40を使用したオープン型ドラム缶のS金具34近傍の天蓋8の変形量は、前述の落下強度試験の場合と同様に、当接金具40を使用しない場合に比して何れも小さく、胴カール14の変形量も小さいことから、胴体カール14は機械的強度に優れたものとなり、水圧強度試験に関して有利となる。なお、当接金具40が無い場合や当接金具40の板厚Taが1.2mmの場合であっても0.1MPaのときに漏れが無いことは勿論である。
【0034】
即ち、当接金具40は締結バンド6の締結機能を補助する補強金具、換言すると、いわゆるラップバンドとしても有効に機能する。このように、オープン型ドラム缶の漏れ発生圧力が十分に高いことから、UN規格を満たすうえで、胴体2における胴体カール14の形状、ガスケット18のシール能が高まり、UN規格に余裕をもって適合した高品質のオープン型ドラム缶を容易に提供することができる。
【0035】
上述したように、当接金具40を有するオープン型ドラム缶はその耐圧強度に優れることから、胴体2や天蓋8の薄肉化が可能となる。それ故、ドラム缶自体の重量が軽減することで、ドラム缶の輸送コスト削減に大きく寄与する。
また、当接金具40を有するオープン型ドラム缶は水圧強度の点からみて特に優れている。
【0036】
具体的には、従来のオープン型ドラム缶に対し水圧強度試験が実施されたとき、天蓋8はドラム缶内の水圧を受けることで外側に膨出するような変形を受け、当接金具40がない場合には天蓋8の切れ目32の近傍部位にて皺が発生する。これは天蓋8の切れ目32の近傍部位に天蓋8の変形に伴う応力集中が発生していることを示しており、この皺による隙間からの水漏れによってオープン型ドラム缶のシール性が低下し、天蓋8の耐圧強度が低下する。
【0037】
これに対し、当接金具40を有する場合には、オープン型ドラム缶は最高で0.145MPa程度の高い漏れ発生圧力を有する(表2参照)。これは当接金具40が天蓋8の耐圧強度を高めることを示している。何故なら、当接金具40は、その横断面がバンド本体30と相似の略U字形をなし、その長手方向がバンド本体30のリング形に沿う円弧状をなして形成されるため、当接金具40は締結バンド6の締結時にバンド本体30、胴体カール14及び蓋カール16に密着して当接されるからである。したがって、天蓋8が外側に膨出するような変形を受けても、蓋カール16からガスケット18を介して胴体カール14やバンド本体30に応力を分散させることができ、天蓋8の切れ目32の近傍部位のみに応力が集中して皺が発生することが防止され、オープン型ドラム缶のシール性、ひいては天蓋8の耐圧強度を高めることができる。
【0038】
また、当接金具40が円弧部40bを有することにより、当接金具40自体の強度を確保しつつ、バンド本体30、胴体カール14及び蓋カール16に対する当接金具40の接触面積を低減することができるため、天蓋8が外側に膨出するような変形を受けても、当接金具40に対するバンド本体30、胴体カール14及び蓋カール16の移動に伴う摩擦抵抗が低減される。したがって、天蓋8の変形が当接金具40に対するバンド本体30、胴体カール14及び蓋カール16のすべりによって円滑に許容され、天蓋8の切れ目32の近傍部位に皺が発生することが確実に防止される。
【0039】
更に、当接金具40が各S金具34の何れか一方に固定されることにより、天蓋8の変形に伴う当接金具40のずれが防止され、当接金具40を切れ目32に確実に位置づけることができる。なお、当接金具40をS金具34に固定しない場合には、当接金具40の移動に係る自由度が増すことにより、天蓋8の変形に伴って当接金具40自体の若干の移動が可能となるため、当接金具40自体の移動が規制されることによって天蓋8に皺が発生することが防止されるとの利点がある。
【0040】
更にまた、当接金具40は、S金具34の締結トルクに対する強度に応じて板厚Taの下限が設定され、バンド本体30との板厚差に応じて板厚Taの上限が設定される。具体的には、板厚TaはS金具40に対する締結ボルト38bの締結トルクによって当接金具40が変形し、ひいては破断しない程度の厚みであって、かつ、S金具34に対する締結ボルト38bの締結トルクによって当接金具40の若干の変形を許容し、バンド本体30との間に生じる板厚差、即ち隙間を埋めることができる程度に、0.75〜1.15mmの範囲に設定される。好ましくは、バンド本体30の板厚を一般的な2.3mm程度に設定した前提では、最適な板厚Taは1.0mmであり、板厚Taを1.2mmとすると水漏れを生じる(表2参照)。
【0041】
また、当接金具40の長さLaが10〜200mmであることにより、天蓋8の変形に伴い蓋カール16からガスケット18を介して胴体カール14やバンド本体30に応力分散させるための最低限の接触面積を確保できるとともに、当接金具40のずれが発生したとしても当接金具40を切れ目32に確実に位置づけることができて好ましい。
【0042】
本発明は上述の第1実施例に制約されるものではなく、更に種々の変形が可能である。
具体的には、本発明の当接金具40は前述した口金24,26を備えない天蓋や、また、ステンレス製のオープン型ドラム缶等の天蓋にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
2 胴体
4 地板
6 締結バンド
8 天蓋
14 胴体カール
16 蓋カール
18 ガスケット
20 蓋本体
30 バンド本体
32 切れ目
34 S金具(締結金具)
40 当接金具
40a 開口端面
40b 円弧部
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能な天蓋を備えた液体危険物用オープン型ドラム缶に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のオープン型ドラム缶は、粘性が比較的高い液体危険物や、また、粉体又は固体等の出し入れが容易ではない内容物の充填輸送に好適し、通常の密閉型ドラム缶との相違は天板の代わりに開閉可能な天蓋を備えていることにある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-272533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のオープン型ドラム缶にも通常の密閉型ドラム缶の場合と同様に、危険物輸送に関する国連勧告(UN規格=UN Recommendations on the Transport of Dangerous Goods)に定めされている気密試験、落下強度試験、水圧強度試験及び積み重ね試験の各判定基準に適合していなければならない。しかしながら、オープン型ドラム缶はその天蓋が開閉可能であるから、特にその落下強度試験や水圧強度試験の判定基準に適合した性能を満たすには、オープン型ドラム缶には通常の密閉型ドラム缶とは異なる工夫が要求される。
【0005】
具体的には、上述の性能を左右する要因として、天蓋及び胴体の胴体カールの耐圧強度や、胴体カールに対して天蓋の蓋カールを締結する締結バンドの締結強度、そして、胴体カールと蓋カールとの間に挟み込まれるガスケットのシール性能等が考えられるが、これら要因のなかでも、締結バンドはリング形状の一カ所に切れ目を有するため、特にこの切れ目の近傍部位における天蓋の耐圧強度の増加が望まれている。
【0006】
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、締結バンドの構成を工夫するだけで、天蓋の耐圧強度を容易に増加させることができ、UN規格を満たすうえで好適した液体危険物用オープン型ドラム缶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の液体危険物用オープン型ドラム缶は、円筒状をなした中空の胴体と、この胴体の下端開口を閉塞する地板と、胴体の上端開口に開閉可能に装着され、上端開口を閉塞する天蓋と、リング形状の一カ所に切れ目を有するバンド本体と、バンド本体の両端にそれぞれ位置して取り付けられ、バンド本体を縮径させることにより天蓋を胴体に対し締結する締結金具とを含む締結バンドとを備え、締結バンドは、バンド本体の内側の切れ目に位置して設けられる当接金具を含む(請求項1)。
【0008】
具体的には、胴体は、その外周部に設けられた胴体カールを含み、一方、天蓋は、蓋本体と、この蓋本体の外周部に設けられ、胴体カールにガスケットを介して嵌め合わせられる蓋カールとを含み、バンド本体は略U字形状の横断面を有し、締結バンドは、バンド本体を縮径させることによりバンド本体の内側に当接金具を介して胴体カール及び蓋カールを包み込むようにして蓋カールを胴体カールに対し締結する(請求項2)。
【0009】
また、当接金具は、バンド本体、胴体カール及び蓋カールに当接される(請求項3)。具体的には、当接金具の横断面がバンド本体と相似の略U字形をなして形成され(請求項4)、当接金具の長手方向がバンド本体のリング形に沿う円弧状をなして形成されることにより(請求項5)、バンド本体、胴体カール及び蓋カールに密着して当接される。このような当接金具の形状は、天蓋の切れ目の近傍部位に天蓋の変形に伴う応力集中が発生することを防止し、天蓋の耐圧強度を高める。
【0010】
好ましくは、当接金具は、その長手方向の両端に当接金具の略U字形の開口端面に向けて丸み付けされた円弧部を有する(請求項6)。この場合、当接金具自体の強度を確保しつつ、バンド本体、胴体カール及び蓋カールに対する当接金具の接触面積を低減することができるため、天蓋の変形が当接金具に対するバンド本体、胴体カール及び蓋カールのすべりによって円滑に許容される。
【0011】
好ましくは、当接金具は、各締結金具の何れか一方に固定される(請求項7)。この場合、天蓋の変形に伴う当接金具のずれが防止され、当接金具を切れ目に確実に位置づけることができる。
好ましくは、当接金具は、締結金具の締結トルクに対する強度に応じて板厚の下限が設定され、バンド本体との板厚差に応じて板厚の上限が設定される(請求項8)。具体的には、板厚は締結金具に対する締結トルクによって当接金具が変形、ひいては破断しない程度の厚みであり、かつ、締結金具に対する締結トルクによって当接金具の若干の変形を許容し、バンド本体との間に生じる板厚差、即ち隙間を埋めることができる程度に、0.75〜1.15mmの範囲に設定される(請求項9)。
【0012】
好ましくは、当接金具の板厚を1.0mmとすれば(請求項10)、一般的な板厚を有する本体バンドとの隙間を生めることができ、一方、当接金具の長さを10〜200mmとすれば(請求項11)、天蓋の変形に伴い、蓋カールからガスケットを介して胴体カールやバンド本体に応力分散させるための最低限の接触面積を確保できるとともに、当接金具のずれが発生したとしても当接金具を切れ目に確実に位置づけることができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜11の液体危険物用オープン型ドラム缶によれば、締結バンドのバンド本体の切れ目の位置に当接金具を設けるだけで、天蓋の耐圧強度が増加することから、UN規格に容易に適合したオープン型ドラム缶の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施例のオープン型ドラム缶の正面図である。
【図2】図1中のII部の断面図である。
【図3】図1中のIII部の断面図である。
【図4】図1の天蓋を示した平面図である。
【図5】図4の天蓋の一部を示す断面図である。
【図6】図3に示す胴体カールの拡大図である。
【図7】図1の締結バンドの詳細を示す斜視図である。
【図8】図7の一部を示す斜視図である。
【図9】図7の当接金具の斜視図である。
【図10】図9の当接金具の横断面図である。
【図11】図7の締結バンドの組み付け時の状態を示す平面図である。
【図12】図11をXII方向からみた断面図である。
【図13】図11の締結ボルトの締め付け時の状態を示す平面図である。
【図14】図13をXIV方向からみた断面図である。
【図15】落下強度試験の方法を(a)の対角落下の場合と、(b)の水平落下の場合とで示す図である。
【図16】水圧強度試験の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図14は第1実施例の液体危険物用オープン型ドラム缶を示す。
図1から明らかなようにオープン型ドラム缶は、円筒状をなした中空の胴体2と、この胴体2の下端開口を閉塞する地板4と、胴体2の上端開口に締結ハンド6を介して開閉可能に装着され、上端開口を閉塞する円形の天蓋8とを備える。なお、胴体2には2本の輪帯10が形成されており、これら輪帯10は上下方向に所定の間隔を存して配置されている。
【0016】
図2に示されているように、胴体2の下端縁と地板4の外周縁とは充填剤(図示しない)を介在させた状態で巻締めにより相互に接合され、いわゆるチャイム12を形成している。これに対し、図3に示されるように胴体2の上端縁は外側に突出するフランジ状の胴体カール14として形成され、そして、天蓋8の外周縁もまた外側に突出するフランジ状の蓋カール16として形成されている。
蓋カール16は胴体カール14よりも大きく、天蓋8が胴体2の上端開口に装着されたとき、その蓋カール16はガスケット18を介して胴体カール14に被せられる。なお、ガスケット18は白スポンジ、EPDM等からなり、蓋カール16の内側に貼付けられている。
【0017】
図4は天蓋8の平面図、図5は天蓋8の一部の断面図を示し、天蓋8は、蓋本体20と、この蓋本体20の外周縁に設けられた蓋リム22とからなる。この蓋リム22は蓋本体20から垂直方向、つまり、胴体2の軸線方向に立ち上がり、その上端に蓋カール16を有する。更に、図4に示されているように天蓋8の蓋本体20には注入口金24及び排気口金26が設けられている。
【0018】
図5中に示す天蓋8は、外径φL、蓋リム22の高さH1、蓋カール16の高さH2、蓋カール16の内外面の曲率半径R1,R2、蓋リム22の近傍に形成される円弧部28の外面の曲率半径R0がそれぞれ適宜所定の値に形成されており、特に本実施例の場合には、天蓋8の厚さTが1.2mmに形成され、蓋本体20の中央部が段差(1mm程度)をもって僅かに膨出して形成されている。なお、胴体2及び地板4の板厚も天蓋8と同様に厚さ1.2mmに形成されている。
図6は胴体2の胴体カール14を拡大して示し、胴体カール14の先端と胴体2の外周面との間には所定の間隙Aが確保されており、間隙AはA1(=約3mm)である。
【0019】
なお、図6中に示す胴体カール14の高さH3及び幅Wc、そして、胴体カール14を形成する外面の曲率半径R3のそれぞれは適宜所定の値に設定される。
一方、図7及び図8に示されているように、締結バンド6は、リング形状のバンド本体30を備え、このバンド本体30は一カ所に切れ目32を有するとともに略U字形状の横断面を有する。バンド本体30には一対のS金具(締結金具)34がその両端にそれぞれ位置して取り付けられており、これらS金具34はパイプ状のボルト挿通部36を有する。
【0020】
図3から明らかなように、胴体2の上端開口に天蓋8が装着された後、締結バンド6はそのバンド本体30の内側に胴体カール14及び蓋カール16を包み込むようにして取り付けられる。そして、図7に示されている締結ボルト38bが一対のS金具34のボルト挿通部36にそれぞれ挿通され、この締結ボルト38bとナット38nとの間にて一対のS金具34を締付け、バンド本体30を縮径させれば、締結バンド6は胴体2の上端開口、即ち、その胴体カール14に対しガスケット18を介して天蓋8の蓋カール16を締結することができる。
【0021】
逆に、一対のS金具34から締結ボルト38bを抜き取り、そして、締結バンド6のバンド本体30を胴体カール14及び蓋カール16から取り外せば、胴体2に対して天蓋8を開くことができる。なお、胴体2、地板4及び天蓋8の外面には、脱脂処理、化成処理(ボンデ処理)及び水洗処理等の工程を経て所定の皮膜が形成され、更には、皮膜の上に所望の塗装が施されており、胴体2、地板4及び天蓋8の内面には脱脂処理、化成処理のみが施されることが多い。
【0022】
図7から明らかなように、締結バンド6のバンド本体30の内側の切れ目32の位置には当接金具40が設けられている。
図9及び図10に示されるように、当接金具40は、その長手方向がバンド本体30のリング形に沿う円弧状をなし、その横断面がバンド本体30と相似の略U字形をなす冷間圧延鋼材等から形成される。また、当接金具40の長手方向の両端には当接金具40の略U字形の開口端面40aに向けて丸み付けされた円弧部40bが形成されている。
【0023】
当接金具40は、その板厚Taの下限がS金具34を締結する際の締結トルクに対する強度に応じて設定され、板厚Taの上限がバンド本体30との板厚差に応じて設定される。具体的には、板厚Taは0.75〜1.15mmの範囲で設定され、10〜200mm程度の長さLaを有して形成されており、これらの値は当接金具40がJIS G3141に規定する冷延鋼板一般用(SPCC)に基づく強度と同等の強度を有するべく設定されている。また、後述する水圧試験の結果で明らかなように、バンド本体30の板厚を例えば2.3mm程度に設定すると、当接金具40の最適な板厚Taは1.0mmであることが判明している。
【0024】
図11及び図12に示されるように、当接金具40は円弧部40b近傍が各S金具34の何れか一方、図11では左側のS金具34の内側に溶接等により固定され、締結バンド6の組み付け時には、締結ボルト38bが一対のS金具34のボルト挿通部36にワッシャ42を介して挿通され、胴体カール14及び蓋カール16は当接金具40の内側に包み込まれるようにして当てがわれる。
【0025】
図13及び図14に示されるように、締結ボルト38bの締め付け時には、締結ボルト38bとナット38nとの間にて一対のS金具34を締付け、バンド本体30を縮径させることにより、当接金具40はバンド本体30とともに開口端面40aが若干広がり、胴体カール14及び蓋カール16を包み込ように取り付けられる。この状態では、当接金具40はバンド本体30の内側の切れ目32の位置においてバンド本体30、胴体カール14及び蓋カール16に当接され、当接金具40の開口端面40aが若干広がったことによる反力でガスケット18がつぶされ、当接金具40は胴体カール14及び蓋カール16に密着され、これより締結バンド6は胴体カール14に対しガスケット18を介して蓋カール16を気密に締結する。
【0026】
図15は落下強度の試験方法を示す。
ここでの試験では、200Lの98%以上の水を充填したオープン型ドラム缶ODを高さ1.2m(液体危険物Y等級の場合)から落下させても、ドラム缶ODから水漏れしないことが要求される。図15(a)は、締結バンド6のS金具34を衝撃点とする対角落下試験を示し、図15(b)は胴体2の溶接部を衝撃点とする水平落下試験を示す。なお、締結バンド6はそのS金具34が胴体2に対し、その溶接部と直径方向でみて反対側に位置すべく取り付けられている。
【0027】
上述した当接金具40を備える幾つかのオープン型ドラム缶に対して高さ1.3m以上からの落下強度試験を実施し、何れのドラム缶であっても水漏れの無いことが確認されている。
以下の表1は、上述のオープン型ドラム缶に対して高さ1.2〜1.5mからの落下強度試験を行い、当接金具40の有無やその板厚Taを変えたときの主として切れ目32における漏れの有無、S金具34近傍の天蓋8の変形量、漏れが発生した落下高さを示している。なお、ガスケット18はすべて同一の仕様のものを用いている。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から明らかなように、板厚Taが1.0mmの当接金具40を使用したオープン型ドラム缶では落下高さが1.4mや1.5mであっても漏れは無く、S金具34近傍の天蓋8の変形量は、当接金具40を使用しない場合に比して何れも小さく、胴カール14の変形量も小さいことから、胴体カール14は機械的強度に優れたものとなり、落下強度試験に関して有利となる。なお、当接金具40が無い場合や当接金具40の板厚Taが1.2mmの場合であっても落下高さ1.2mのときに漏れが無いことは勿論である。
図16は水圧強度の試験方法を示す。
【0030】
ここでの試験では、200Lの98%以上の水を充填したオープン型ドラム缶ODをその締結バンド6のS金具34を下にした状態で試験台上に水平に配置し、そして、ドラム缶OD内を0.1MPaの加圧状態で5分間(液体危険物Y等級の場合)維持し、この間、ドラム缶ODから水漏れしないことが要求される。
ここでも、上述の当接金具40を備える幾つかのオープン型ドラム缶に対して0.11MPa以上での水圧強度試験を実施し、何れのドラム缶であっても水漏れの無いがことが確認されている。
【0031】
以下の表2は、上述のオープン型ドラム缶に対して0.1〜0.145MPaでの水圧強度試験を行い、当接金具40の有無やその板厚Taを変えたときの主として切れ目32における漏れの有無、S金具34近傍の天蓋8の変形量、漏れ発生圧力を示している。なお、ガスケット18はすべて同一の仕様のものを用いている。
【0032】
【表2】
【0033】
表2から明らかなように、板厚Taが1.0mmの当接金具40を使用したオープン型ドラム缶の漏れ発生圧力は全て0.1MPaを十分に超えていることから、UN規格の水圧強度を十分に満たしている。
また、板厚Taが1.0mmの当接金具40を使用したオープン型ドラム缶のS金具34近傍の天蓋8の変形量は、前述の落下強度試験の場合と同様に、当接金具40を使用しない場合に比して何れも小さく、胴カール14の変形量も小さいことから、胴体カール14は機械的強度に優れたものとなり、水圧強度試験に関して有利となる。なお、当接金具40が無い場合や当接金具40の板厚Taが1.2mmの場合であっても0.1MPaのときに漏れが無いことは勿論である。
【0034】
即ち、当接金具40は締結バンド6の締結機能を補助する補強金具、換言すると、いわゆるラップバンドとしても有効に機能する。このように、オープン型ドラム缶の漏れ発生圧力が十分に高いことから、UN規格を満たすうえで、胴体2における胴体カール14の形状、ガスケット18のシール能が高まり、UN規格に余裕をもって適合した高品質のオープン型ドラム缶を容易に提供することができる。
【0035】
上述したように、当接金具40を有するオープン型ドラム缶はその耐圧強度に優れることから、胴体2や天蓋8の薄肉化が可能となる。それ故、ドラム缶自体の重量が軽減することで、ドラム缶の輸送コスト削減に大きく寄与する。
また、当接金具40を有するオープン型ドラム缶は水圧強度の点からみて特に優れている。
【0036】
具体的には、従来のオープン型ドラム缶に対し水圧強度試験が実施されたとき、天蓋8はドラム缶内の水圧を受けることで外側に膨出するような変形を受け、当接金具40がない場合には天蓋8の切れ目32の近傍部位にて皺が発生する。これは天蓋8の切れ目32の近傍部位に天蓋8の変形に伴う応力集中が発生していることを示しており、この皺による隙間からの水漏れによってオープン型ドラム缶のシール性が低下し、天蓋8の耐圧強度が低下する。
【0037】
これに対し、当接金具40を有する場合には、オープン型ドラム缶は最高で0.145MPa程度の高い漏れ発生圧力を有する(表2参照)。これは当接金具40が天蓋8の耐圧強度を高めることを示している。何故なら、当接金具40は、その横断面がバンド本体30と相似の略U字形をなし、その長手方向がバンド本体30のリング形に沿う円弧状をなして形成されるため、当接金具40は締結バンド6の締結時にバンド本体30、胴体カール14及び蓋カール16に密着して当接されるからである。したがって、天蓋8が外側に膨出するような変形を受けても、蓋カール16からガスケット18を介して胴体カール14やバンド本体30に応力を分散させることができ、天蓋8の切れ目32の近傍部位のみに応力が集中して皺が発生することが防止され、オープン型ドラム缶のシール性、ひいては天蓋8の耐圧強度を高めることができる。
【0038】
また、当接金具40が円弧部40bを有することにより、当接金具40自体の強度を確保しつつ、バンド本体30、胴体カール14及び蓋カール16に対する当接金具40の接触面積を低減することができるため、天蓋8が外側に膨出するような変形を受けても、当接金具40に対するバンド本体30、胴体カール14及び蓋カール16の移動に伴う摩擦抵抗が低減される。したがって、天蓋8の変形が当接金具40に対するバンド本体30、胴体カール14及び蓋カール16のすべりによって円滑に許容され、天蓋8の切れ目32の近傍部位に皺が発生することが確実に防止される。
【0039】
更に、当接金具40が各S金具34の何れか一方に固定されることにより、天蓋8の変形に伴う当接金具40のずれが防止され、当接金具40を切れ目32に確実に位置づけることができる。なお、当接金具40をS金具34に固定しない場合には、当接金具40の移動に係る自由度が増すことにより、天蓋8の変形に伴って当接金具40自体の若干の移動が可能となるため、当接金具40自体の移動が規制されることによって天蓋8に皺が発生することが防止されるとの利点がある。
【0040】
更にまた、当接金具40は、S金具34の締結トルクに対する強度に応じて板厚Taの下限が設定され、バンド本体30との板厚差に応じて板厚Taの上限が設定される。具体的には、板厚TaはS金具40に対する締結ボルト38bの締結トルクによって当接金具40が変形し、ひいては破断しない程度の厚みであって、かつ、S金具34に対する締結ボルト38bの締結トルクによって当接金具40の若干の変形を許容し、バンド本体30との間に生じる板厚差、即ち隙間を埋めることができる程度に、0.75〜1.15mmの範囲に設定される。好ましくは、バンド本体30の板厚を一般的な2.3mm程度に設定した前提では、最適な板厚Taは1.0mmであり、板厚Taを1.2mmとすると水漏れを生じる(表2参照)。
【0041】
また、当接金具40の長さLaが10〜200mmであることにより、天蓋8の変形に伴い蓋カール16からガスケット18を介して胴体カール14やバンド本体30に応力分散させるための最低限の接触面積を確保できるとともに、当接金具40のずれが発生したとしても当接金具40を切れ目32に確実に位置づけることができて好ましい。
【0042】
本発明は上述の第1実施例に制約されるものではなく、更に種々の変形が可能である。
具体的には、本発明の当接金具40は前述した口金24,26を備えない天蓋や、また、ステンレス製のオープン型ドラム缶等の天蓋にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
2 胴体
4 地板
6 締結バンド
8 天蓋
14 胴体カール
16 蓋カール
18 ガスケット
20 蓋本体
30 バンド本体
32 切れ目
34 S金具(締結金具)
40 当接金具
40a 開口端面
40b 円弧部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなした中空の胴体と、
前記胴体の下端開口を閉塞する地板と、
前記胴体の上端開口に開閉可能に装着され、前記上端開口を閉塞する天蓋と、
リング形状の一カ所に切れ目を有するバンド本体と、前記バンド本体の両端にそれぞれ位置して取り付けられ、前記バンド本体を縮径させることにより前記天蓋を前記胴体に対し締結する締結金具とを含む締結バンドとを備え、
前記締結バンドは、前記バンド本体の内側の前記切れ目に位置して設けられる当接金具を含むことを特徴とする液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項2】
前記胴体は、その外周部に設けられた胴体カールを含み、
前記天蓋は、蓋本体と、前記蓋本体の外周部に設けられ、前記胴体カールにガスケットを介して嵌め合わせられる蓋カールとを含み、
前記バンド本体は略U字形状の横断面を有し、前記締結バンドは、前記バンド本体を縮径させることにより前記バンド本体の内側に前記当接金具を介して前記胴体カール及び前記蓋カールを包み込むようにして前記蓋カールを前記胴体カールに対し締結することを特徴とする請求項1に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項3】
前記当接金具は、前記バンド本体、前記胴体カール及び前記蓋カールに当接されることを特徴とする請求項2に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項4】
前記当接金具は、その横断面が前記バンド本体と相似の略U字形をなして形成されることを特徴とする請求項3に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項5】
前記当接金具は、その長手方向が前記バンド本体のリング形に沿う円弧状をなして形成されることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項6】
前記当接金具は、その長手方向の両端に前記当接金具の略U字形の開口端面に向けて丸み付けされた円弧部を有することを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項7】
前記当接金具は、前記各締結金具の何れか一方に固定されることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項8】
前記当接金具は、前記締結金具の締結トルクに対する強度に応じて板厚の下限が設定され、前記バンド本体との板厚差に応じて板厚の上限が設定されることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項9】
前記当接金具は、0.75〜1.15mmの板厚を有することを特徴とする請求項8に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項10】
前記当接金具は、1.0mmの板厚を有することを特徴とする請求項9に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項11】
前記当接金具は、10〜200mmの長さを有することを特徴とする請求項9又は10に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項1】
円筒状をなした中空の胴体と、
前記胴体の下端開口を閉塞する地板と、
前記胴体の上端開口に開閉可能に装着され、前記上端開口を閉塞する天蓋と、
リング形状の一カ所に切れ目を有するバンド本体と、前記バンド本体の両端にそれぞれ位置して取り付けられ、前記バンド本体を縮径させることにより前記天蓋を前記胴体に対し締結する締結金具とを含む締結バンドとを備え、
前記締結バンドは、前記バンド本体の内側の前記切れ目に位置して設けられる当接金具を含むことを特徴とする液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項2】
前記胴体は、その外周部に設けられた胴体カールを含み、
前記天蓋は、蓋本体と、前記蓋本体の外周部に設けられ、前記胴体カールにガスケットを介して嵌め合わせられる蓋カールとを含み、
前記バンド本体は略U字形状の横断面を有し、前記締結バンドは、前記バンド本体を縮径させることにより前記バンド本体の内側に前記当接金具を介して前記胴体カール及び前記蓋カールを包み込むようにして前記蓋カールを前記胴体カールに対し締結することを特徴とする請求項1に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項3】
前記当接金具は、前記バンド本体、前記胴体カール及び前記蓋カールに当接されることを特徴とする請求項2に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項4】
前記当接金具は、その横断面が前記バンド本体と相似の略U字形をなして形成されることを特徴とする請求項3に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項5】
前記当接金具は、その長手方向が前記バンド本体のリング形に沿う円弧状をなして形成されることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項6】
前記当接金具は、その長手方向の両端に前記当接金具の略U字形の開口端面に向けて丸み付けされた円弧部を有することを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項7】
前記当接金具は、前記各締結金具の何れか一方に固定されることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項8】
前記当接金具は、前記締結金具の締結トルクに対する強度に応じて板厚の下限が設定され、前記バンド本体との板厚差に応じて板厚の上限が設定されることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項9】
前記当接金具は、0.75〜1.15mmの板厚を有することを特徴とする請求項8に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項10】
前記当接金具は、1.0mmの板厚を有することを特徴とする請求項9に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【請求項11】
前記当接金具は、10〜200mmの長さを有することを特徴とする請求項9又は10に記載の液体危険物用オープン型ドラム缶。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−98769(P2011−98769A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256186(P2009−256186)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000233675)日鐵ドラム株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000233675)日鐵ドラム株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
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