説明

液体収容容器

【課題】 優れた液体検出精度を確保しつつ、液体収容部内における液体の脱気度の低下を防止することができる良好な液体収容容器を提供する。
【解決手段】 液体収容容器1は、インクパック7と、インクパック7よりもガスバリア性の低いインク検出部9と、インク検出部9を経由してインクパック7内のインクを印字ヘッドに導出するインク導出口11とを備え、予め脱気度の高い状態にされたインクが充填される。インク検出部9とインクパック7との間の流路9aには、開閉弁37が設けられる。インクパック7からインクを導出しないときには開閉弁37を閉じることにより、インク検出部9からインクパック7に液体やガスが流入することが阻止され、脱気度の低下を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体収容容器に関し、例えば、液体噴射装置等の装着部に装着されて、液体収容部に収容した液体を外部に導出する液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
捺染装置やマイクロデスペンサ、さらには超高品質での印刷が求められる商業用記録装置等の液体噴射装置における液体噴射ヘッドは、液体収容容器から被吐出液の供給を受けるが、液体が供給されていない状態で作動させると、いわゆる空打ちとなって液体噴射ヘッドが損傷を受けるため、これを防止すべく容器の液体残量を監視する必要がある。
【0003】
そこで、記録装置の場合では、液体収容容器であるインクカートリッジ自体にインク残量を検出する為の液体検出部を装備したものが各種提案されている。
例えば、外部から供給される加圧流体、通常はエアの圧力によりインク(液体)を排出する形式のインクカートリッジにあっては、記録装置に接続される液体送出口(液体導出部)と可撓性フィルムで形成されたインク収容部(液体収容部)との間にインク残量を検出する為のセンサ室(液体検出部)を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−351871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクカートリッジの場合、インク収容部内のインクに外部の空気が浸透してインクの脱気度が低下すると、記録装置上での印字品質やメンテナンスに支障が生じる虞がある。
そこで、上記インクカートリッジの場合、一般に、インク収容部を形成する可撓性フィルムには、外部の空気がフィルムを通過してインクに浸透することを抑止するために、ガスバリア性の高いアルミラミネート複層フィルムが使用される。
【0006】
さらに、インク収容部には、品質の保証期間中にアルミラミネート複層フィルムを通過して浸透した外気に起因した脱気度の低下程度では記録装置上での印字品質やメンテナンスに影響が生じないように、予め、高い脱気度に調整したインクを充填することで、保証期間中の脱気度低下に対する品質保証を行っている。
【0007】
一方、インク残量を検出する為の液体検出部として、流動するインクの圧力によって変形するダイヤフラムを装備し、このダイヤフラムの変形をセンサ(検出機構)で検出することによりインク残量を検出する構成のものがある。
この構成の液体検出部において検出精度を高めるには、僅かな液圧変化でもダイヤフラムが変位できるように、ダイヤフラムを肉厚が薄く弾性変形し易い樹脂フィルム等で形成することが必要となる。
【0008】
ところが、肉厚が薄く弾性変形し易い樹脂フィルムは、インク収容部を形成しているアルミラミネート複層フィルムなどと比較して、ガスバリア性が低い。
即ち、液体検出部における検出精度の向上を図ると、その一方で該液体検出部におけるガスバリア性が低下する。そこで、ガスバリア性が高いインク収容部と比較して、液体検出部では、ダイヤフラム等を介しての外部の空気の浸透が進み、脱気度が低下し易い。
【0009】
そして、上記特許文献1に示したように、液体送出口とインク収容部との間にセンサ室(液体検出部)を設けた構成のインクカートリッジの場合では、センサ室において脱気度が低下したインクが該センサ室に連通しているインク収容部内に逆流したり、或いは、センサ室に浸入した空気が該センサ室内のインクを伝ってインク収容部内に浸入したりして、インク収容部内のインクの脱気度を不当に低下させてしまう。その結果、記録装置上での印字品質やメンテナンスに支障を招く虞があった。
【0010】
従って、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、優れた液体検出精度を確保しつつ、液体収容部内における液体の脱気度の低下を防止することができる良好な液体収容容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、液体収容部と、前記液体収容部よりもガスバリア性の低い液体検出部と、前記液体検出部を経由して前記液体収容部の液体を外部に導出する液体導出部とを備え、予め脱気度の高い状態にされた液体を充填した液体収容容器であって、
前記液体検出部と前記液体収容部との間の流路に、前記流路を開閉する開閉弁を設けたことを特徴とする液体収容容器により達成される。
尚、脱気度の高い状態とは、例えば常温(25℃)での大気圧における溶存ガス量(飽和状態の溶存ガス量)よりも、溶存ガス量が20%以上少ない状態であることを意味する。
【0012】
上記構成によれば、液体収容部の液体を外部に導出しない時には、液体検出部と液体収容部との間の流路に設けた開閉弁を閉じることにより、液体収容部と液体検出部との間が遮断されるため、液体検出部から液体収容部に液体やガスが流入することを阻止することができる。
【0013】
そこで、液体検出部のガスバリア性が液体収容部よりも低くても、液体検出部に浸透したガスの逆流等で、液体収容部内の液体の脱気度が低下することがない。
従って、液体検出部は、ガスバリア性の低下を気にせずに液体検出精度の向上を図ることができ、優れた液体検出精度を確保しつつ、液体収容部内における液体の脱気度の低下を防止することができる。
【0014】
尚、上記構成の液体収容容器において、前記開閉弁が、外部に液体を導出する方向の流れで開き、逆方向の流れで閉じる逆止弁であることが望ましい。
このような構成によれば、逆止弁としての開閉弁は、液体検出部と液体収容部との間の流路の開口を、液体検出部側からの液体の流れによる付勢力で封止する構造で良く、例えば、薄板状の弁体を使用した単純構造で実現できる。そこで、液体収容部内における液体の脱気度の低下防止を安価に実現することができる。
【0015】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体検出部と前記液体収容部とが分離可能とされ、前記開閉弁が、前記液体収容部と接続される前記液体検出部側の流路に設けられることが望ましい。
このような構成によれば、液体収容部は開閉弁の装備に関与しない独立部品となり、液体検出部と液体収容部との間に開閉弁を装備していない従来の液体収容容器用の液体収容部の流用が可能になり、液体収容容器の開発が容易になる。
【0016】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体検出部と前記液体収容部とが分離可能とされ、前記開閉弁が、前記液体検出部と接続される前記液体収容部側の流路に設けられることが望ましい。
このような構成によれば、液体検出部は開閉弁の装備に関与しない独立部品となり、液体検出部と液体収容部との間に開閉弁を装備していない従来の液体収容容器用の液体検出部の流用が可能になり、液体収容容器の開発が容易になる。
【0017】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体収容容器は、加圧気体注入部から供給される加圧気体の圧力により前記液体収容部の液体を加圧して、前記液体供給部から外部に前記液体を導出する液体収容容器であって、
前記液体検出部が、前記加圧気体の圧力から遮断された領域に配置され、前記液体収容部からの液体の流入による圧力変化により変形するダイヤフラムと、前記ダイヤフラムの変形を検出する検出機構と、を備えることが望ましい。
【0018】
このような構成によれば、加圧気体による液体収容部への加圧力が一定の場合、液体収容部の液体残量が少なくなると、液体検出部への液体の導出量が減り、液体検出部内の圧力が減少し、この時の圧力変化によってダイヤフラムが変形するため、ダイヤフラムの変形から液体収容容器内の液体残量を算出することが可能になる。この場合に、液体検出部内の圧力変化に対して変形し易いダイヤフラムを採用することで、残量検出精度を向上させることができるが、その反面、液体検出部のガスバリア性が低下してしまう。
【0019】
しかしながら、本発明の液体収容容器では、液体収容部内の液体を外部に導出しない時には、開閉弁により液体収容部と液体検出部との間が遮断されるため、ガスバリア性の低い液体検出部からガスバリア性の高い液体収容部に液体やガスが流入することを阻止できる。その為、液体検出部のガスバリア性の低下が、液体収容部内における液体の脱気度の低下に影響することはない。従って、液体検出部内の圧力変化に対して変形し易いダイヤフラムを採用することで、残量検出精度の向上を図ることができる。
【0020】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体検出部は、液体検出部を形成する部材に設けられた凹部の開口を可撓性フィルムで封止することにより構成されることが望ましい。
このような構成によれば、可撓性フィルムが、液体検出部内の圧力変化によって変形するダイヤフラムとして機能して、液体検出部の構造を単純化することができる。
【0021】
また、上記構成の液体収容容器において、前記ダイヤフラムは、前記液体収容部から流入する液体の圧力により弾性変形可能な付勢部材によって、前記液体検出部の容積を縮小する方向に付勢されることが望ましい。
このような構成によれば、液体検出部内の圧力変化に対するダイヤフラムの変形が正確になり、残量検出動作の信頼性を向上させることができる。
【0022】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体収容部は、可撓性を有するフィルムを貼り合わせることにより形成された可撓性袋であり、前記フィルムがアルミニウム層を含む複層フィルムであることが望ましい。
このような構成によれば、液体収容部は、内部の液体を最後まで絞り出し易くする柔軟性と、脱気度の低下を防止するための高いガスバリア性との双方を兼ね備えることができる。そこで、液体の使い残しによる無駄が少なく、しかも貯留した液体の脱気度の低下を抑止することができる良好な液体収容部を実現することができる。
【0023】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体が、インクであることが望ましい。
このような構成によれば、液体収容部に貯留したインクの脱気度の低下を抑止でき、しかも、液体収容部におけるインク残量を高精度に検出できるので、インクジェット式記録装置に装着されるインクカートリッジとして好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る液体収容容器では、液体収容部内の液体を外部に導出しない時には、開閉弁により液体収容部と液体検出部との間を遮断して、液体検出部から液体収容部に液体やガスが流入することを阻止することができる。
従って、液体検出部は、ガスバリア性の低下を気にせずに液体検出精度の向上を図ることができ、優れた液体検出精度を確保しつつ、液体収容部内における液体の脱気度の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態に係る液体収容容器を詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る液体収容容器の縦断面図、図2は図1に示した液体検出部の液体導出時の動作を示す拡大断面図である。
【0026】
本第1実施形態の液体収容容器1は、図示しないインクジェット式記録装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されて、記録装置に装備された印字ヘッドにインクを供給するインクカートリッジである。
この液体収容容器1は、図1に示すように、加圧室3を区画形成した容器本体5と、インクを貯留して加圧室3内に収容されるインクパック(液体収容部)7と、インクパック7に連通する流路9aを備えたインク検出部(液体検出部)9と、このインク検出部9を経由してインクパック7内のインクを液体噴射ヘッドである印字ヘッドに導出するインク導出口(液体導出部)11と、を備えている。
【0027】
容器本体5は、樹脂によって一体成形された筐体であり、密閉状態の加圧室3と、この加圧室3に矢印Aで示すように加圧空気を送給するための加圧気体注入部である加圧口13と、インク検出部9を収容する検出部収容室15と、を備えている。検出部収容室15は、加圧室3に供給される加圧気体の圧力から遮断された領域である。
【0028】
インクパック7は、可撓性を有する樹脂フィルム層の上にアルミニウム層が積層形成されたアルミラミネート複層フィルム相互の周縁部を互いに貼り合わせることにより形成した可撓性袋体7aの一端側に、インク検出部9の流路9aが接続される筒状のインク供給口7bを接合したものである。このインクパック7は、アルミラミネート複層フィルムを使用したことで、高いガスバリア性を確保している。
【0029】
インクパック7とインク検出部9は、インク供給口7bに流路9aを嵌合接続させることで、互いに接続した状態になる。即ち、インク供給口7bと流路9aとの嵌合を解除することで、互いに分離可能になっている。
なお、インク供給口7bには、流路9aを提供する管部19bとの間を気密に接続するためのパッキン17が装備されている。
【0030】
インクパック7には、インク検出部9を接続する前に、予め脱気度の高い状態に調整されたインクが充填される。
ここで、脱気度の高い状態とは、例えば常温(25℃)での大気圧における溶存ガス量(飽和状態の溶存ガス量)よりも、溶存ガス量が20%以上少ない状態であることを意味する。
インクジェット記録装置に使用されるインクにおいて、飽和状態の窒素量が10PPM程度とすると、脱気度を保った状態とは、溶存する窒素量が8PPM以下の状態ということになる。
【0031】
インク検出部9は、流路9aとインク導出口11とを連通させる凹部19aを有した検出部ケース19と、凹部19aの開口を封止してセンサ室21を画成した可撓性フィルム23と、凹部19aの底部に装備された圧力検出部25と、この圧力検出部25に対向して可撓性フィルム23に支持された受圧板(移動部材)27と、この受圧板27と検出部収容室15の上壁との間に圧装されてセンサ室21の容積が縮小する方向に受圧板27及び可撓性フィルム23を弾性付勢する圧縮コイルばね(付勢部材)29とを備えている。
【0032】
検出部ケース19は、凹部19aを区画形成している周壁19cの一端側に、流路9aを提供する管部19bが一体形成され、この管部19bと対向する周壁19cに、インク導出口11が貫通形成されている。図示していないが、インク導出口11には、インクジェット式記録装置のカートリッジ装着部に装着した際に、カートリッジ装着部に装備されているインク供給針の挿入により流路を開く弁機構が装備される。
【0033】
インク検出部9における圧力検出部25は、インクパック7からインク導出口11にインクが導出されない時には、圧縮コイルばね29の付勢力で受圧板27が密着した状態に当接する底板31と、該底板31に貫通形成されて、図2に示すように受圧板27が底板31から離れた状態になるとセンサ室21に連通するインク誘導路33と、インク誘導路33に振動を印加すると共に、前記振動に伴う自由振動の状態を検出する圧電型センサ35とを備えたものである。
【0034】
インク検出部9は、図2に示すように、加圧室3に供給される加圧空気によるインクパック7の加圧で、インクパック7からセンサ室21にインクが供給されると、そのインクの圧力で、可撓性フィルム23が上方に膨出変形する。この可撓性フィルム23の変形により、受圧板27が上方に移動して、受圧板27が底板31から離れることにより、インク誘導路33がセンサ室21に連通する。
【0035】
圧電型センサ35は、インク誘導路33が受圧板27で閉塞された状態と、インク誘導路33がセンサ室21に連通した状態とで、異なる自由振動の状態を検出することができる。
そこで、例えばインクジェット式記録装置に設けた制御部は、圧電型センサ35が検出した自由振動の状態に応じて、受圧板27を支持している可撓性フィルム23の変形を検出することで、センサ室21内の圧力を検知できる。
【0036】
可撓性フィルム23は、センサ室21に供給されるインクの圧力に応じて受圧板27に変位を付与するダイヤフラムとして機能する。インクの微少な圧力変化を検出可能にして、検出精度を向上させるためには、可撓性フィルム23には十分な可撓性を持たせることが必要になるが、そのようにすると、ガスバリア性が低下する。
従って、インク検出部9は、インクパック7よりもガスバリア性が低い環境になる。
【0037】
加圧気体によるインクパック7への加圧力が一定の場合、インクパック7のインク残量が少なくなると、インク検出部9におけるセンサ室21へのインクの導出量が減り、センサ室21内の圧力が減少するため、センサ室21内の圧力変化からインクパック7内のインク残量を算出することが可能になる。
【0038】
本実施形態の場合、インク検出部9のインクパック7に接続される流路9aには、該流路9aを開閉する開閉弁37が装備されている。この開閉弁37には、印字ヘッドにインクを導出する方向の流れで開き、逆方向の流れで閉じる逆止弁が採用されている。
【0039】
以上に説明した本実施形態の液体収容容器1では、インクパック7内のインクを印字ヘッドに導出しないときには、インク検出部9とインクパック7との間の流路9aに設けた開閉弁37を閉じることにより、インクパック7とインク検出部9との間が遮断されるため、インク検出部9からインクパック7にインクやガスが逆流入することを阻止することができる。
【0040】
そのため、インク検出部9のガスバリア性がインクパック7よりも低くても、インク検出部9に浸透したガスの逆流等で、インクパック7内のインクの脱気度が低下することがない。
従って、インク検出部9は、ガスバリア性の低下を気にせずに可撓性に優れた可撓性フィルム23を使用して残量検出精度の向上を図ることができ、優れた残量検出精度を確保しつつ、インクパック7内におけるインクの脱気度の低下を防止することができる。
【0041】
また、本実施形態の場合、逆止弁としての開閉弁37は、インク検出部9とインクパック7との間の流路9aの開口を、インク検出部9側からのインクの流れによる付勢力で封止する構造で良く、例えば、薄板状の弁体を使用した単純構造で実現でき、インクパック7内におけるインクの脱気度の低下防止を安価に実現することができる。
【0042】
さらに本実施形態の場合、インクパック7とインク検出部9とが分離可能に構成されており、インクパック7と接続されるインク検出部9側の流路9aに開閉弁37を設けたので、インクパック7は開閉弁37の装備に関与しない独立部品となり、インク検出部9とインクパック7との間に開閉弁37を装備していない従来の液体収容容器用のインクパックの流用が可能になり、液体収容容器の開発が容易になる。
【0043】
また、本実施形態の場合、インク検出部9におけるセンサ室21は、インク検出部9を構成する検出部ケース19に設けられた凹部19aの開口を可撓性フィルム23により封止することで形成されており、可撓性フィルム23が、インク検出部9内の圧力変化によって変形するダイヤフラムとして機能するため、インク検出部9の構造を単純化することができる。
【0044】
また、本実施形態の場合、ダイヤフラムとして機能する可撓性フィルム23は、インクパック7から流入するインクの圧力により弾性変形可能な圧縮コイルばね29によって、インク検出部9の容積を縮小する方向に付勢されているため、インク検出部9内の圧力変化に対するダイヤフラムの変形が正確になり、残量検出動作の信頼性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態の場合、インクパック7は、可撓性フィルムを貼り合わせることにより形成された可撓性袋であり、前記可撓性フィルムがアルミニウム層を含む複層フィルムであるため、内部のインクを最後まで絞り出し易くする柔軟性と、脱気度の低下を防止するための高いガスバリア性との双方を兼ね備えることができる。そこで、インクの使い残しによる無駄が少なく、しかも貯留したインクの脱気度の低下を抑止することができる良好なインクパック7を実現することができる。
【0046】
従って、本実施形態の液体収容容器1によれば、インクパック7に貯留したインクの脱気度の低下を抑止でき、しかも、インクパック7におけるインク残量を高精度に検出可能なインクカートリッジをインクジェット式記録装置に装着することができる。
【0047】
図3は、本発明の第2実施形態に係る液体収容容器を示したものである。
本第2実施形態の液体収容容器1Aは、図3に示すように、上記第1実施形態の液体収容容器1に対して、インクパック7とインク検出部9との間の流路を開閉する開閉弁37の装備位置を、インクパック7側に変更した点で相違する。尚、開閉弁37の装備位置を変更した点以外は、上記第1実施形態と共通の構成であり、共通の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0048】
本第2実施形態の液体収容容器1Aにおける開閉弁37は、インク検出部9とインクパック7とが分離可能とされ、インク検出部9の流路9aに接続されるインクパック7側のインク供給口7bにおける流路7cに設けられている。
この第2実施形態の液体収容容器1Aでは、上記第1実施形態液体収容容器1と同様に、インク検出部9とインクパック7とが分離可能であるため、インク検出部9は、開閉弁37の装備に関与しない独立部品となる。そこで、インク検出部9とインクパック7との間に開閉弁37を装備していない従来の液体収容容器用のインク検出部の流用が可能になり、液体収容容器1Aの開発が容易になる。
【0049】
図4は、本発明の第3実施形態に係る液体収容容器を示したものである。
本第3実施形態の液体収容容器1Bは、上記第1実施形態の液体収容容器1に対して、インクパック7とインク検出部9との間の流路を開閉する開閉弁37を、インクパック7側にも追加したものである。尚、開閉弁37の装備位置を追加した点以外は、上記第1実施形態と共通の構成であり、共通の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0050】
即ち、開閉弁37は、インクパック7に接続されるインク検出部9側の流路9aと、インク検出部9に接続されるインクパック7側の流路7cとのそれぞれに装備されている。
このようにインクパック7およびインク検出部9におけるそれぞれの流路7c,9aに開閉弁37を装備すると、インク検出部9からインクパック7側へのインクやガスの逆流防止がさらに徹底され、インクパック7内の脱気度の低下防止性能をさらに向上させることができる。
【0051】
なお、本発明の液体収容容器に係る液体収容部、液体検出部、液体導出部及び開閉弁等の構成は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうることは云うまでもない。
例えば、インクパック7内のインク残量を検出する為のインク検出部は、上記実施形態における圧力検出部25のように、インク誘導路33に振動を印加すると共に前記振動に伴う自由振動の状態を検出することにより、センサ室21へのインク流入による圧力変化によって変形するダイヤフラムの変形を検出する為の圧電型センサ35を備えた構成に限らない。
【0052】
そこで、センサ室21へのインク流入による圧力変化によって変形するダイヤフラムの変形を直接的に検出する接点センサを備えることにより、この接点センサの信号から液体収容容器内のインク残量を検出することができるインク検出部としても良い。
このような構成のインク検出部を備えた液体収容容器では、加圧気体によるインクパック7への加圧力が一定の場合、インクパック7のインク残量が少なくなるとインク検出部へのインク導出量が減ってインク検出部内の圧力が減少し、この時の圧力変化によってダイヤフラムが変形するため、ダイヤフラムの変形を検出する接点センサにより液体収容容器内のインク残量を検出することが可能になる。
【0053】
この場合にも、インク検出部内の圧力変化に対して変形し易いダイヤフラムを採用することで、残量検出精度を向上させることができると共に、開閉弁によりインクパック7とインク検出部との間が遮断されてガスバリア性の低いインク検出部からガスバリア性の高いインクパック7にインクやガスが逆流することを阻止できる。
【0054】
なお、本発明の液体収容容器の用途は、インクジェット記録装置のインクカートリッジに限るものではなく、貯留する液体の脱気度の低下を抑止し得る液体収容容器として、各種の液体噴射装置に対応した液体収容容器に流用可能である。
液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置、捺染装置やマイクロデスペンサ等が挙げられる。
【0055】
また、本発明の液体収容容器において、液体収容部と液体検出部との間の流路を開閉する開閉弁は、上記実施の態で示した逆止弁に限らない。例えば、弁体を電磁力で開閉動作させる開閉弁等を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体収容容器の縦断面図である。
【図2】図1に示した液体検出部の液体導出時の動作を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る液体収容容器の縦断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る液体収容容器の縦断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…液体収容容器、3…加圧室、5…容器本体、7…インクパック(液体収容部)、7a…可撓性袋体、7b…インク供給口、7c…流路、9…インク検出部(液体検出部)、9a…流路、11…インク導出口(液体導出口)、13…加圧口(加圧気体注入部)、15…検出部収容室、19…検出部ケース、19a…凹部、21…センサ室、23…可撓性フィルム(ダイヤフラム)、25…圧力検出部、27…受圧板(移動部材)、29…圧縮コイルばね(付勢部材)、31…底板、33…インク誘導路、35…圧電型センサ、37…開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体収容部と、前記液体収容部よりもガスバリア性の低い液体検出部と、前記液体検出部を経由して前記液体収容部の液体を外部に導出する液体導出部とを備え、予め脱気度の高い状態にされた液体を充填した液体収容容器であって、
前記液体検出部と前記液体収容部との間の流路に、前記流路を開閉する開閉弁を設けたことを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記開閉弁が、外部に液体を導出する方向の流れで開き、逆方向の流れで閉じる逆止弁であることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
前記液体検出部と前記液体収容部とが分離可能とされ、
前記開閉弁が、前記液体収容部と接続される前記液体検出部側の流路に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記液体検出部と前記液体収容部とが分離可能とされ、
前記開閉弁が、前記液体検出部と接続される前記液体収容部側の流路に設けられることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項5】
前記液体収容容器は、加圧気体注入部から供給される加圧気体の圧力により前記液体収容部の液体を加圧して、前記液体供給部から外部に前記液体を導出する液体収容容器であって、
前記液体検出部が、前記加圧気体の圧力から遮断された領域に配置され、前記液体収容部からの液体の流入による圧力変化により変形するダイヤフラムと、前記ダイヤフラムの変形を検出する検出機構と、を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項6】
前記液体検出部は、液体検出部を形成する部材に設けられた凹部の開口を可撓性フィルムで封止することにより構成されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項7】
前記ダイヤフラムは、前記液体収容部から流入する液体の圧力により弾性変形可能な付勢部材によって、前記液体検出部の容積を縮小する方向に付勢されることを特徴とする請求項5又は6に記載の液体収容容器。
【請求項8】
前記液体収容部は、可撓性を有するフィルムを貼り合わせることにより形成された可撓性袋であり、前記フィルムがアルミニウム層を含む複層フィルムであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項9】
前記液体が、インクであることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の液体収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−130812(P2007−130812A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323977(P2005−323977)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】