説明

液体収容容器

【課題】 液体の残量が所定量になったことを検出する機能を備えた液体収容容器を提供する。
【解決手段】 液体収容容器1は、インクパック7とインク供給口9との間に介在するインク検出部11を備える。インク検出部11は、インクパック7に接続されるインク流入口11aとインク供給口9に接続されるインク流出口11bを備えたセンサ室21と、センサ室21のインク収容量に応動して移動可能に収容された受圧板27と、センサ室21のインク収容量が所定以下になるとセンサ室21に設けられたインク誘導路33と協働して検出空間を区画形成するように受圧板27に設けられた凹所27aと、インク誘導路33に振動を印加すると共に印加した振動に伴う自由振動状態を検出する圧電型センサ35と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体収容容器に関し、例えば、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等の液体消費装置に所定の液体を供給する液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
捺染装置やマイクロデスペンサ、さらには超高品質での印刷が求められる商業用記録装置等の液体噴射装置における液体噴射ヘッドは、液体収容容器から被吐出液の供給を受けるが、液体が供給されていない状態で作動させると、いわゆる空打ちとなって噴射ヘッドが損傷を受けるため、これを防止すべく容器の液体残量を監視する必要がある。
【0003】
そこで、記録装置に例を採ると、液体収容容器であるインクカートリッジ自体にインク残量を検出する為の液体検出部を装備したものが各種提案されている。
この様な液体検出部の具体的な構成としては、例えば、特許文献1に記載された発明のように、液体を収容する可撓性袋の相対向する扁平な面の一方に液収容用の凹部を形成するとともに、凹部の外面に圧電振動子を配置し、また他方の面に剛体を配置して、剛体と圧電振動子との間の液量(液の深さ)による振動状態から検出することも提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−136670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された液体検出部では、比較的高い精度で液残量を検出することができるものの、可撓性袋に収容されたインクの残量を、可撓性袋の変形に追従させて剛体を移動させる関係上、袋の撓みやシワ等に影響を受けて、それにより検出精度が低下する虞があった。
【0006】
従って、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、液体の残量が所定量になったことを検出する機能を備えた液体収容容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、加圧手段に加圧されて貯留している液体を液体排出口から排出する液体収容部と、外部の液体消費装置に前記液体を供給するための液体供給口と、前記液体収容部と前記液体供給口との間に介在する液体検出部とを備えた液体収容容器であって、
前記液体検出部は、
前記液体収容部の液体排出口に接続される液体流入口と前記液体供給口に接続される液体流出口を備えた液体検出室と、
前記液体検出室の液体収容量に応動して移動する移動部材と、
前記液体検出室の液体収容量が所定以下になると前記液体検出室に設けられた凹部と協働して検出空間を区画形成するように前記移動部材に設けられた凹所と、
前記凹部に振動を印加すると共に印加した振動に伴う自由振動状態を検出する圧電型検出手段と、
を備えることを特徴とする液体収容容器により達成される。
【0008】
上記構成によれば、液体検出室における液体収容量が所定以下になると、移動部材の凹所が凹部と協働して振動作用領域である検出空間を区画形成するので、凹部と凹所との合計の容積に相応する音響インピーダンスの周波数が現れる。この周波数は、移動部部材が凹部から離れている時の音響インピーダンスによる周波数よりも低い周波数となり、差異が顕著に出る。
そこで、圧電検出手段が検出する自由振動状態の変化が顕著になり、液体検出室における液体収容量が所定レベルに達した時点又は状態を、正確に確実に検出することができる。
【0009】
更に、液体検出室に設けられた凹部は、移動部材に設けられた凹所と協働して検出空間を区画形成することで該検出空間の容積を増大させるため、振動作用領域の容積不足のために残留振動が小さくなって検出不能になったり、或いは、検出できたとしても凹部が液体検出室に開放状態にあるときと遮断された時との残留振動の周波数差が僅少なために相異が判別できなくなったりすることがない。
【0010】
即ち、移動部材の移動によって振動作用領域である検出空間の容積が変化し、音響インピーダンスが異なるので、残留振動の周波数の相違を検出することにより、液体収容室における液体収容量が所定レベルに達したことを高精度に検出することができる。
【0011】
なお、上記構成の液体収容容器において、前記凹所は、少なくとも一面が弾性を有する部材により形成されていることが望ましい。
このような構成によれば、液体検出室の凹部が移動部材の凹所と協働して区画形成する検出空間は、前記凹所の少なくとも一面を形成する弾性部材の弾性変形による容積変化特性(コンプライアンス)により残留振動の減衰を抑えて、残留振動の振幅を検出し易くすることができ、検出精度の向上を図ることができる。
【0012】
更に、上記構成の液体収容容器において、前記弾性を有する部材が、フィルムであることが望ましい。
このような構成によれば、例えば板状の移動部材に凹所を設ける際には、該移動部材に貫通形成した開口部を弾性部材としてのフィルムで塞ぐだけで、弾性変形による容積変化特性(コンプライアンス)を備えた凹所を簡単に形成することができる。
【0013】
また、上記構成の液体収容容器において、前記凹所が、前記液体検出室に連通していることが望ましい。
このような構成によれば、凹所の一面を弾性部材で形成することにより凹所のコンプライアンスを確保しなくとも、凹所を容積が大きい液体空間である液体検出室に連通させることによって、凹部が凹所と協働して区画形成する検出空間の残留振動の減衰を抑えて、検出時の残留振動の振幅を確保することでき、検出精度の向上を図ることができる。
【0014】
また、上記構成の液体収容容器において、前記凹所が、前記凹部を前記液体検出室に連通させる2つの流路で構成されることが望ましい。
このような構成によれば、液体検出室へ液体を充填する為に、液体消費装置に接続される液体供給口から吸引された場合には、吸引力が移動部材に設けた2つの流路に作用し、この吸引力が作用する経路を遡って液体供給口に液体供給がなされる。
即ち、振動作用領域である液体検出室の凹部にも確実に液体が充填され、該凹部に気泡が残存することがないので、気泡の残存による検出精度の低下を防止できる。
【0015】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体検出室が、上面に形成された開口部を液体収容量に応じて変形可能なフィルムにより封止して構成され、
前記圧電型検出手段が、前記液体検出室の底部に配置されることが望ましい。
このような構成によれば、液体検出室が液体収容量の変化(圧力変化)に対応して容易に変形し、かつ容易に密閉空間として構成でき、簡単な構造で液体の漏れを防止することができる。
【0016】
更に、上記構成の液体収容容器において、前記移動部材が、前記液体検出室の液体収容量の変化に対応した前記フィルムの変形によって移動することが望ましい。又、上記構成の液体収容容器において、前記移動部材が、前記フィルムに固着されることが望ましい。
このような構成によれば、フィルムの容易な変形により、移動部材を液位や圧力にスムーズに追従させることができる。
【0017】
更に、上記構成の液体収容容器において、前記移動部材が、前記圧電型検出手段の振動面に対向する領域に、前記振動面に対して略平行となる面を有することが望ましい。
このような構成によれば、液量に応動して容積を変化させる検出空間を容易に形成することができる。
【0018】
更に、上記構成の液体収容容器において、前記移動部材が、前記圧電型検出手段を配置した方向に付勢手段により付勢されていることが望ましい。又、上記構成の液体収容容器において、前記付勢手段が、弾性部材により構成されていることが望ましい。
このような構成によれば、付勢手段による付勢力を調整することにより、移動部材の凹所が液体検出室の凹部と協働して検出空間を区画形成する時期を変更できると共に、検出すべき液体検出室の内圧(残存液量)を容易に設定することができる。
【0019】
更に、上記構成の液体収容容器において、前記凹所が前記凹部と協働して検出空間を区画形成する時点を、前記液体収容部の液体が消尽された状態に設定されていることが望ましい。又、上記構成の液体収容容器において、前記凹所が前記凹部と協働して検出空間を区画形成する時点を、前記液体収容部の液体が略消尽された状態に設定されていることが望ましい。
【0020】
このような構成によれば、例えば液体収容容器をインクカートリッジとして使用した場合に、液体検出部の圧電型検出手段を、液体収容部におけるインク残量がゼロになったことを検知するインクエンド検出機構や、もうすぐゼロになる状態を検知するインクニアエンド検出機構として有効に活用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の液体収容容器によれば、液体検出室における液体収容量が所定以下になると、移動部材の凹所が液体検出室の凹部と協働して検出空間を区画形成するので、圧電検出手段が検出する自由振動状態の変化が顕著になり、液体検出室における液体収容量が所定レベルに達した時点又は状態を、正確に確実に検出することができる。
【0022】
更に、液体検出室の凹部は、移動部材の凹所と協働して検出空間を区画形成することで該検出空間の容積を増大させるため、振動作用領域の容積不足のために残留振動が小さくなって検出不能になったり、或いは、検出できたとしても凹部が液体検出室に開放状態にあるときと遮断された時との残留振動の周波数差が僅少なために相異が判別できなくなったりすることがない。
従って、移動部材の移動によって振動作用領域である検出空間の容積が変化し、音響インピーダンスが異なるので、残留振動の周波数の相違を検出することにより、液体収容室における液体収容量が所定レベルに達したことを高精度に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態に係る液体収容容器を詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る液体収容容器の縦断面図であり、液体検出室の液体収容量が所定以下となった状態を示す。図2は図1に示した液体収容容器の液体収容部が加圧状態時の縦断面図である。
【0024】
本第1実施形態の液体収容容器1は、図示しないインクジェット式記録装置(液体消費装置)のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されて、記録装置に装備された印字ヘッドにインク(液体)を供給するインクカートリッジである。
この液体収容容器1は、図1に示すように、図示しない加圧手段によって加圧される加圧室3を区画形成した容器本体5と、インクを貯留して加圧室3内に収容されて加圧室3の加圧により貯留しているインクを排出口(液体排出口)7bから排出するインクパック(液体収容部)7と、外部の液体消費装置であるインクジェット式記録装置の印字ヘッドにインクを供給するためのインク供給口(液体供給口)9と、インクパック7とインク供給口9との間に介在してインク残量の検出を行うインク検出部(液体検出部)11とを備えている。
【0025】
容器本体5は、樹脂によって一体成形された筐体であり、密閉状態の加圧室3と、この加圧室3に矢印Aで示すように不図示の加圧手段が加圧空気を送給するための加圧気体注入部である加圧口13と、インク検出部11を収容する検出部収容室15と、を備えている。検出部収容室15は、加圧室3に供給される加圧気体の圧力から遮断された領域である。
尚、容器本体5は、加圧室3を密閉状態にできれば、必ずしも一体成形された樹脂部材である必要はない。
【0026】
インクパック7は、可撓性を有する樹脂フィルム層の上にアルミニウム層が積層形成されたアルミラミネート複層フィルム相互の周縁部を互いに貼り合わせることにより形成した可撓性袋体7aの一端側に、インク検出部11のインク流入口(液体流入口)11aが接続される筒状の排出口7bを接合したものである。このインクパック7は、アルミラミネート複層フィルムを使用したことで、高いガスバリア性を確保している。
【0027】
インクパック7とインク検出部11は、排出口7bにインク流入口11aを嵌合接続させることで、互いに接続した状態になる。即ち、排出口7bとインク流入口11aとの嵌合を解除することで、互いに分離可能になっている。
なお、排出口7bには、インク流入口11aとの間を気密に接続するためのパッキン17が装備されている。そして、インクパック7には、インク検出部11を接続する前に、予め脱気度の高い状態に調整されたインクが充填される。
【0028】
インク検出部11は、インクパック7の排出口7bに接続されるインク流入口11aとインク供給口9に接続されるインク流出口(液体流出口)11bとを連通させた凹空間19aを有した検出部ケース19と、凹空間19aの開口を封止してセンサ室(液体検出室)21を区画形成した可撓性フィルム23と、凹空間19aの底部に装備された圧力検出部25と、この圧力検出部25に対向して可撓性フィルム23に固着された受圧板(移動部材)27と、この受圧板27と検出部収容室15の上壁との間に圧装されてセンサ室21の容積が縮小する方向に受圧板27及び可撓性フィルム23を弾性付勢する圧縮コイルバネ(付勢部材)29と、を備えている。
【0029】
検出部ケース19は、凹空間19aを区画形成している周壁の一端側に、インク流入口11aが一体形成され、また、このインク流入口11aと対向する周壁に、インク供給口9に連通するインク流出口11bが貫通形成されている。図示していないが、インク供給口9には、インクジェット式記録装置のカートリッジ装着部に装着した際に、カートリッジ装着部に装備されているインク供給針の挿入により流路を開く弁機構が装備される。
【0030】
インク検出部11における圧力検出部25は、インクパック7からインク供給口9にインクが導出されない時には、圧縮コイルバネ29の付勢力で受圧板27が密着した状態に当接してする底板31と、該底板31に形成された凹部であるインク誘導路33と、インク誘導路33と協働して検出空間を区画形成するように受圧板27に設けられた凹所27aと、インク誘導路33に振動を印加すると共に、前記振動に伴う自由振動の状態を検出する圧電型センサ(圧電型検出手段)35とを備えたものである。
【0031】
この圧電型センサ35は、インク誘導路33が受圧板27により覆われているか否かで、異なる自由振動の状態(残留振動の振幅や周波数の変化)を検出することができる。
そこで、例えばインクジェット式記録装置に設けた制御部は、圧電型センサ35が検出した自由振動の状態に応じて、受圧板27を支持している可撓性フィルム23の変形を検出することで、センサ室21内の圧力を検知できる。
【0032】
圧縮コイルバネ29の付勢方向は、前述したようにセンサ室21の容積が縮小する方向であると同時に、圧電型センサ35が配置された方向となっている。
底板31に形成された凹部であるインク誘導路33は、図1に示すように受圧板27が底板31に密着した状態では、受圧板27の凹所27aと協働して検出空間を区画形成し、図2に示すように受圧板27が底板31から離れた状態になるとセンサ室21に開放される。受圧板27は、圧電型センサ35の振動面に対向する領域において前記振動面に対して略平行となる面を有する。
【0033】
インク検出部11は、図2に示すように、加圧室3に供給される加圧空気によるインクパック7の加圧で、インクパック7からセンサ室21にインクが供給されると、それによるセンサ室21内のインク収容量(液量レベル)の変化に相応して、可撓性フィルム23が上方に膨出変形する。この可撓性フィルム23の変形により、センサ室21の隔壁の一部を構成している受圧板27が上方に移動して、受圧板27が底板31から離れる。受圧板27が底板31から離れることにより、インク誘導路33がセンサ室21に開放した状態になると共に、センサ室21を通ってインク供給口9から記録ヘッド側にインクが供給されることになる。
【0034】
加圧室3が所定の加圧状態になっていても、インクパック7に収容されているインクが低減すると、インクパック7からセンサ室21に供給されるインク量が減少する。それにより、センサ室21内の圧力が減少するため、受圧板27がインク誘導路33を有した底板31に近づいてゆく。
本実施の形態では、センサ室21内の圧力の減少によって受圧板27が底板31に密着し、凹所27aがインク誘導路33と協働して検出空間を区画形成する時点を、インクパック7のインクが消尽された状態に設定している。
【0035】
可撓性フィルム23は、センサ室21に供給されるインクの圧力に応じて受圧板27に変位を付与するダイヤフラムとして機能する。インクの微少な圧力変化を検出可能にして、検出精度を向上させるためには、可撓性フィルム23には十分な可撓性を持たせると良い。
【0036】
以上に説明した本実施形態の液体収容容器1では、センサ室21におけるインク収容量(液体収容量)が所定以下になると、受圧板27の凹所27aがインク誘導路33と協働して振動作用領域である検出空間を区画形成するので、インク誘導路33と凹所27aとの合計の容積に相応する音響インピーダンスの周波数が現れる。この周波数は、受圧板27が底板31から離れている時の音響インピーダンスによる周波数よりも低い周波数となり、差異が顕著に出る。
【0037】
そこで、圧電型センサ35が検出する自由振動状態の変化が顕著になり、センサ室21におけるインク収容量が所定レベルに到達した時点又は状態を、正確に確実に検出することができる。
【0038】
更に、センサ室21に設けられたインク誘導路33は、受圧板27に設けられた凹所27aと協働して検出空間を区画形成することで該検出空間の容積を増大させるため、振動作用領域の容積不足のために残留振動が小さくなって検出不能になったり、或いは、検出できたとしてもセンサ室21に開放状態にあるときと遮断された時との残留振動の周波数差が僅少なために相異が判別できなくなったりすることがない。
【0039】
即ち、受圧板27の移動によって振動作用領域である検出空間の容積が変化し、音響インピーダンスが異なるので、残留振動の周波数の相違を検出することにより、センサ室21におけるインクの残量が所定レベルに達したことを高精度に検出することができる。
従って、本実施形態の液体収容容器1は、インクの残量が所定量になったことを検出する機能を備えることができる。
【0040】
更に、本実施形態の液体収容容器1では、センサ室21が、上面に形成された開口部をインク収容量に応じて変形可能な可撓性フィルム23により封止して構成され、圧電型センサ35が、センサ室21の底部に配置される構成である。
このため、センサ室21がインク収容量の変化(圧力変化)に対応して容易に変形し、かつ容易に密閉空間として構成でき、簡単な構造で液体の漏れを防止することができる。
【0041】
また、上記実施形態の液体収容容器1では、受圧板27が、可撓性フィルム23に固着され、センサ室21のインク収容量の変化に対応した該可撓性フィルム23の変形によって移動する。
そこで、可撓性フィルム23の容易な変形により、受圧板127を液位や圧力にスムーズに追従させることができる。
【0042】
更に、本実施形態の液体収容容器1では、受圧板27が、圧電型センサ35の振動面に対向する領域において前記振動面に対して略平行となる面を有するので、液位に応動して容積を変化させる検出空間を容易に形成することができる。
また、本実施形態の液体収容容器1では、受圧板27が、弾性部材により構成された付勢手段である圧縮コイルバネ29によって圧電型センサ35を配置した方向に付勢されている。
そこで、圧縮コイルバネ29の付勢力を調整することにより、受圧板27の凹所27aがインク誘導路33と協働して検出空間を区画形成する時期を任意に変更できると共に、検出すべきセンサ室21の内圧(残存液量)を容易に設定することができる。
【0043】
また、本実施形態の液体収容容器1では、受圧板27の凹所27aがインク誘導路33と協働して検出空間を区画形成する時点を、インクパック7のインクが消尽された状態に設定しているため、上記のようにインクカートリッジとして使用した場合に、インク検出部11の圧電型センサ35を、インクパック7におけるインク残量がゼロになったことを検知するインクエンド検出機構として有効に活用することができる。
【0044】
図3は、本発明の第2実施形態に係る液体収容容器の縦断面図である。
図3に示すように、本第2実施形態の液体収容容器101は、図1に示した液体収容容器1の一部を改善したもので、受圧板127に貫通形成した開口部を、該受圧板127が固着される可撓性フィルム23によって塞ぐことで、凹所127aが構成されている。なお、それ以外の構成は、図1に示した液体収容容器1と共通のため、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
可撓性フィルム23は、所謂弾性部材であるため、本第2実施形態の液体収容容器101では、受圧板127の凹所127aの一面が弾性を有する部材で形成された構成になっている。
そこで、本第2実施形態の液体収容容器101によれば、センサ室21のインク誘導路33が受圧板127の凹所127aと協働して区画形成する検出空間は、前記凹所127aの一面を形成する可撓性フィルム23の弾性変形による容積変化特性(コンプライアンス)により残留振動の減衰を抑えて、残留振動の振幅を検出し易くすることができ、検出精度の更なる向上を図ることができる。
【0046】
なお、凹所127aにコンプライアンスを確保する弾性部材としては、上記のように可撓性フィルム23を活用する他、例えば、受圧板自体を所定の弾性特性を持つゴムやプラスチック等で形成することが考えられる。
但し、本実施形態における受圧板127のように、凹所127aの壁面を形成する弾性部材として可撓性フィルム23を利用する場合には、図3に示したように、板状の受圧板127に貫通形成した開口部を、弾性部材としての可撓性フィルム23で塞ぐだけで、コンプライアンスを確保した凹所127aを簡単に形成することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0047】
図4は、本発明の第3実施形態に係る液体収容容器の縦断面図である。
図4に示すように、本第3実施形態の液体収容容器102は、図1に示した液体収容容器1の一部を改善したもので、受圧板227に形成される単一の凹所227aには、インク流出口11b側でセンサ室21と凹所227aとを連通させる一本の連通路227bが追加形成されている。なお、連通路227bを追加した点以外の構成は、図1に示した液体収容容器1と共通のため、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
本第3実施形態の液体収容容器102によれば、受圧板227に形成される凹所227aが連通路227bによって容積が大きい液体空間であるセンサ室21に連通させられることにより、上記第2実施形態における受圧板127のように凹所127aの一面を弾性部材である可撓性フィルム23で形成してコンプライアンスを確保する代わりに、インク誘導路33が凹所227aと協働して区画形成する検出空間の残留振動の減衰を抑えて、検出時の残留振動の振幅を確保することができる。
【0049】
そこで、センサ室21のインク誘導路33が受圧板227の凹所227aと協働して区画形成する検出空間は、残留振動の減衰を抑えて残留振動の振幅を検出し易くすることができ、検出精度の更なる向上を図ることができる。
従って、本実施形態の液体収容容器102は、インクの残量が所定量になったことを検出する機能を備えることができる。
【0050】
図5は、本発明の第4実施形態に係る液体収容容器の縦断面図である。
図5に示すように、本第4実施形態の液体収容容器103は、図1に示した液体収容容器1の一部を改善したもので、受圧板327には、インク誘導路33と協働して検出空間を区画形成するように2つの凹所327a,327bが設けられると共に、各凹所327a,327bには、それぞれセンサ室21と連通させる連通路327c,327dが形成されている。なお、受圧板327以外の構成は、図1に示した液体収容容器1と共通のため、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0051】
本第4実施形態の液体収容容器103は、受圧板327に形成される2つの凹所327a,327bが、凹部であるインク誘導路33と協働して区画形成する検出空間をそれぞれ連通路327c,327dを介してセンサ室21に連通させる2つの流路となっている。
そこで、センサ室21に設けられたインク誘導路33は、受圧板327に設けられた2つの凹所327a,327bと協働して検出空間を区画形成することで該検出空間の容積を増大させるため、振動作用領域の容積不足のために残留振動が小さくなって検出不能になったり、或いは、検出できたとしてもセンサ室21に開放状態にあるときと遮断された時との残留振動の周波数差が僅少なために相異が判別できなくなったりすることがない。
【0052】
即ち、受圧板327に形成される2つの凹所327a,327bが、それぞれ連通路327c,327dを介して容積の大きい液体空間であるセンサ室21に連通させられることにより、インク誘導路33が凹所327a,327bと協働して区画形成する検出空間の残留振動の減衰を抑えて、検出時の残留振動の振幅を確保することができる。
【0053】
また、センサ室21へインクを充填する為に、インクジェット式記録装置に接続されるインク供給口9から吸引された場合には、吸引力が受圧板327に形成した連通路327d、凹所327b、インク誘導路33、凹所327a及び連通路327cを経て、センサ室21に接続したインクパック7の排出口7bに作用し、この吸引力が作用する経路を遡ってインク供給口9にインク供給がなされる。
【0054】
即ち、振動作用領域であるインク誘導路33にも確実にインクが充填され、インク誘導路33に気泡が残存することがないので、気泡の残存による検出精度の低下を防止することができる。
従って、本実施形態の液体収容容器103は、インクの残量が所定量になったことを検出する機能を備えることができると共に、インク誘導路33がインク充填をし難い形状であっても、確実にインクを充填して、高精度なインク収容量の検出が可能となる。
【0055】
なお、本発明の液体収容容器における液体検出部、液体検出室、移動部材、凹部、凹所及び圧電型検出手段等の構成は、上記各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうることは云うまでもない。
例えば、上記各実施形態では、可撓性フィルム23及び受圧板27(127,227,327)を圧電型センサ35側に付勢する付勢手段として圧縮コイルばね29を使用した。
しかしながら、圧縮コイルばね29の代わりに、ゴムその他の弾性部材により構成される付勢手段を使用するようにしても良い。
【0056】
さらに、上記各実施形態では、受圧板27(127,227,327)がインク誘導路33と協働して検出空間を区画形成する時点を、インクパック7のインクが完全に消尽された状態に設定して、圧電型センサ35をインクパック7におけるインク残量がゼロになったことを検知するインクエンド検出機構として機能させるようにした。
しかしながら、受圧板27(127,227,327)がインク誘導路33と協働して検出空間を区画形成する時点を、インクパック7のインクが略消尽された状態(所定の小量が残っている状態)に設定すれば、圧電型センサ35をインクパック7におけるインク残量がもうすぐゼロになる状態を検知するインクニアエンド検出機構として活用することもできる。
【0057】
また、本発明の液体収容容器において、移動部材の凹所と協働して検出空間を区画形成すると共に圧力検出部が振動を作用させる振動作用領域である凹部は、上記各実施形態に示したようなインク誘導路33に限らない。本発明に係る凹部は、管状の通路ではなく、底板31の上面に開放する単純な切欠き部状に形成するようにしても良い。
【0058】
また、本発明の液体収容容器の用途は、インクジェット記録装置のインクカートリッジに限らない。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体消費装置に流用可能である。
液体消費装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置、捺染装置やマイクロデスペンサ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体収容容器の縦断面図であり、液体検出室の液体収容量が所定以下となった状態を示す。
【図2】図1に示した液体収容容器の液体収容部が加圧状態時の縦断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る液体収容容器の縦断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る液体収容容器の縦断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る液体収容容器の縦断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1…液体収容容器、3…加圧室、5…容器本体、7…インクパック(液体収容部)、7a…可撓性袋体、7b…排出口(液体排出口)、9…インク供給口(液体供給口)、11…インク検出部(液体検出部)、11a…インク流入口(液体流入口)、11b…インク流出口(液体流出口)、13…加圧口、15…検出部収容室、19…検出部ケース、19a…凹空間、21…センサ室(液体検出室)、23…可撓性フィルム、25…圧力検出部、27…受圧板(移動部材)、27a…凹所、29…圧縮コイルバネ(付勢手段)、31…底板、33…インク誘導路(凹部)、35…圧電型センサ(圧電型検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧手段に加圧されて貯留している液体を液体排出口から排出する液体収容部と、外部の液体消費装置に前記液体を供給するための液体供給口と、前記液体収容部と前記液体供給口との間に介在する液体検出部とを備えた液体収容容器であって、
前記液体検出部は、
前記液体収容部の液体排出口に接続される液体流入口と前記液体供給口に接続される液体流出口を備えた液体検出室と、
前記液体検出室の液体収容量に応動して移動する移動部材と、
前記液体検出室の液体収容量が所定以下になると前記液体検出室に設けられた凹部と協働して検出空間を区画形成するように前記移動部材に設けられた凹所と、
前記凹部に振動を印加すると共に印加した振動に伴う自由振動状態を検出する圧電型検出手段と、
を備えることを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記凹所は、少なくとも一面が弾性を有する部材により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
前記弾性を有する部材が、フィルムであることを特徴とする請求項2に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記凹所が、前記液体検出室に連通していることを特徴とする請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項5】
前記凹所が、前記凹部を前記液体検出室に連通させる2つの流路で構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体収容容器。
【請求項6】
前記液体検出室が、上面に形成された開口部を液体収容量に応じて変形可能なフィルムにより封止して構成され、
前記圧電型検出手段が、前記液体検出室の底部に配置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体収容容器。
【請求項7】
前記移動部材が、前記液体検出室の液体収容量の変化に対応した前記フィルムの変形によって移動することを特徴とする請求項6に記載の液体収容容器。
【請求項8】
前記移動部材が、前記フィルムに固着されることを特徴とする請求項7に記載の液体収容容器。
【請求項9】
前記移動部材が、前記圧電型検出手段の振動面に対向する領域に、前記振動面に対して略平行となる面を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液体収容容器。
【請求項10】
前記移動部材が、前記圧電型検出手段を配置した方向に付勢手段により付勢されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の液体収容容器。
【請求項11】
前記付勢手段が、弾性部材により構成されていることを特徴とする請求項10に記載の液体収容容器。
【請求項12】
前記凹所が前記凹部と協働して検出空間を区画形成する時点を、前記液体収容部の液体が消尽された状態に設定されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の液体収容容器。
【請求項13】
前記凹所が前記凹部と協働して検出空間を区画形成する時点を、前記液体収容部の液体が略消尽された状態に設定されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の液体収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−152821(P2007−152821A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353111(P2005−353111)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】