液体収容袋の封止装置、液体充填装置、液体収容容器
【課題】インク充填口部を熱溶着ヘッドで熱溶着して封止するときに封止部分の肉厚が極めて薄くなって熱溶着ヘッドのズレや劣化、欠けによって封止不良が発生して液漏れが起こりやすくなる。
【解決手段】インクカートリッジ1のインク袋12のインク充填口部24に、インクを充填した後、インク充填口部24を一対の熱溶着ヘッド141、142により挟み、液噛み状態で封止し、一対の溶着ヘッド141、142のうち、一方の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部200aに、インク充填口部24を押し込む凸部201と、凸部201が押し込まれることで溶融したインク充填口部24の材料が押し込み方向と逆方向に向かって流れるのを受け止める受け止め部202とを有している熱溶着ヘッド200を用いている。
【解決手段】インクカートリッジ1のインク袋12のインク充填口部24に、インクを充填した後、インク充填口部24を一対の熱溶着ヘッド141、142により挟み、液噛み状態で封止し、一対の溶着ヘッド141、142のうち、一方の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部200aに、インク充填口部24を押し込む凸部201と、凸部201が押し込まれることで溶融したインク充填口部24の材料が押し込み方向と逆方向に向かって流れるのを受け止める受け止め部202とを有している熱溶着ヘッド200を用いている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体収容袋の封止装置、液体充填装置、液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置が、また電子写真方式で画像を形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0004】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液滴を吐出する装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること、すなわち、液体吐出装置)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。なお、以下では、主として、記録剤がインクである例について説明する。
【0005】
このような画像形成装置において、例えば記録ヘッドを搭載したキャリッジ上に、記録ヘッドにインクを供給するサブタンク(バッファタンク、ヘッドタンクとも称される。)を搭載し、メインのインクカートリッジ(メインタンク、インクタンクとも称される)を画像形成装置本体(以下、単に「装置本体」という。)側に着脱自在に装着し、サブタンクに装置本体側のインクカートリッジからインクを補充供給するようにしたものが知られている。
【0006】
インクカートリッジとしては、例えば、インク供給口部とインク充填口部を有する保持部材を袋本体に融着などで固定したインク収容袋を、分割されたカートリッジ筐体に収納し、保持部材をカートリッジ筐体の保持手段にて保持したものなどが知られている。
【0007】
ところで、インクジェット記録装置において使用するインクとしては、主に水性インクが用いられている。水性インクは原材料を混合・分散する工程と濾過工程により製造されるが、製造されたインクをそのままインクタンクに充填して記録を行うと、インク中に溶存している窒素、酸素、炭酸ガス等各種の気体が記録ヘッドまでのインク流路や記録ヘッド内のインク流路で気泡となりドット抜け等の記録不良を引き起こす。
【0008】
そこで、インクタンクにインクを充填する前にインク中の溶存気体を減らす脱気処理を行っている。脱気処理の方法としては、インクを圧力容器中で減圧しながら攪拌する方法や、気体分離膜を用いた脱気装置により脱気する方法が用いられる。
【0009】
そして、このような方法で脱気したインクを袋の中に空気を巻き込むことなく充填・封止することが求められる。そこで、従来、特許文献1に開示されているように、液体収容袋に液体を充填後、筒状の液体充填口部を、一対の熱溶着ヘッドにより挟み、液噛み状態で封止する封止装置(方法)ないし液体充填装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−125753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1記載の封止装置にあっては、溶着ヘッドとしてヘッド先端部が単なる凸状に形成されたものを用いているため、液体充填口部を溶融しながらヘッド先端部を押し込んだときに、ヘッドで溶融した液体充填口部の材料がヘッド先端部の外周面に沿って逃げてしまい、封止部分の厚みが極めて薄くなり、熱溶着ヘッドのズレや劣化、欠けによって封止不良が発生して液漏れが起こりやすくなるという課題がある。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、熱溶着ヘッドのズレや劣化、欠けなどが生じた場合でも確実に液体充填口部が封止されて封止不良が発生しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体収容袋の封止装置は、
液体を内部に充填するための筒状の液体充填口部を有する液体収容袋に、前記液体を充填後、前記液体充填口部を一対の熱溶着ヘッドにより挟み、液噛み状態で封止する液体収容袋の封止装置であって、
前記一対の溶着ヘッドのうち、少なくとも一方の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部に、前記液体充填口部を押し込む凸部と、前記凸部が押し込まれることで溶融した前記液体充填口部の材料が押し込み方向と逆方向に向かって流れるのを受け止める受け止め部とを有している
構成とした。
【0014】
ここで、前記一対の熱溶着ヘッドの一方の溶着ヘッドはヘッド先端部に前記凸部及び受け部を有し、他方の溶着ヘッドはヘッド先端部が平状又は凹状である構成とできる。
【0015】
また、前記一対の熱溶着ヘッドのヘッド先端部に温度差を持たせる構成とできる。
【0016】
本発明に係る液体充填装置は、本発明に係る液体収容袋の封止装置を備えるものである。
【0017】
本発明に係る液体収容容器は、本発明に係る液体充填装置で液体が充填されて液体充填口部が封止されている液体収容袋を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る液体収容袋の封止装置によれば、一対の溶着ヘッドのうち、少なくとも一方の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部に、液体充填口部を押し込む凸部と、凸部が押し込まれることで溶融した液体充填口部の材料が押し込み方向と逆方向に向かって流れるのを受け止める受け止め部とを有している構成としたので、封止部分の厚みが極めて薄くなることが低減されて、熱溶着ヘッドのズレや劣化、欠けなどが生じた場合でも確実に液体充填口部が封止されて封止不良が発生しない。
【0019】
本発明に係る液体充填装置によれば、本発明に係る液体収容袋の封止装置を備えているので、封止不良を発生することなく液体を充填することができる。
【0020】
本発明に係る液体収容容器によれば、本発明に係る液体充填装置で液体が充填されて液体充填口部が封止されている液体収容袋を有するので、液漏れなどがなく信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る液体収容容器としてのインクカートリッジの外観斜視説明図である。
【図2】同インクカートリッジのインク袋の正面説明図である。
【図3】同インク袋のインク充填口部の拡大説明図である。
【図4】インク充填装置の全体構成を説明する説明図である。
【図5】同インク充填装置の要部拡大説明図である。
【図6】同インク充填装置の熱溶着ヘッドを構成する本発明に係る熱溶着ヘッドの一例を示す平面説明図である。
【図7】同じく図6の正面説明図である。
【図8】同じくヘッド先端部の拡大説明図である。
【図9】同熱溶着ヘッドによる熱溶着の作用説明に供する説明図である。
【図10】ヘッド先端部が凸部のみの熱溶着ヘッドを示す平面説明図である。
【図11】同じく図10の正面説明図である。
【図12】同じくヘッド先端部の拡大説明図である。
【図13】同熱溶着ヘッドによる熱溶着の作用説明に供する説明図である。
【図14】ヘッド先端部が平状の熱溶着ヘッドを示す平面説明図である。
【図15】同じく図14の正面説明図である。
【図16】ヘッド先端部が凹状の熱溶着ヘッドを示す平面説明図である。
【図17】同じく図16の正面説明図である。
【図18】本発明に係る熱溶着ヘッドの他の例を示す拡大説明図である。
【図19】本発明に係る熱溶着ヘッドの更に他の例を示す拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る液体収容容器としてのインクカートリッジの一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同インクカートリッジの外観斜視説明図、図2は同インクカートリッジのインク袋の正面説明図である。
このインクカートリッジ1は、ケース11Aとケース11Bに二分割されるカートリッジケース11内に、インクを収容した液体収容袋であるインク袋12を収納したものである。
【0023】
カートリッジケース11の前面側(インクカートリッジの前面側とは、インクカートリッジの着脱方向で画像形成装置本体に挿入するときに前面となる側の意味であり、前面の反対側を背面という。)には、装置本体側からの液体吸入手段である中空針が通る開口部14が形成されている。
【0024】
インク袋12は、例えば可撓性フィルム部材からなる密閉された袋状部材である袋本体21に保持部材22を接合したものである。インク袋12の袋本体21の材質としては、可撓性を有するフィルム部材であることが好ましい。この場合、1種の樹脂組成からなるフィルム部材でも、複数種の樹脂組成からなる層構造を有するフィルム部材でも良い。また表面、あるいは中間層に金属薄膜層を有する構造でも良い。樹脂組成として良好なものは、オレフィン系の樹脂組成のもので、特にインクとの接液性からポリエチレン系のフィルムが良好である。また、金属薄膜層としては、フィルムの透湿性を抑え、あるいはフィルムの剛性を持たせるものが好ましく、例えば、特にはアルミニウム薄膜が好ましい。
【0025】
保持部材22には、袋本体21内のインクを装置本体側に供給するために装置本体側から中空針が刺し通される供給口部23と、袋本体21内に液体であるインクを充填する筒状の液体充填口部であるインク充填口部24などが設けられている。このインク充填口部24は、後述する本発明に係る液体充填装置の封止装置によって熱溶着で封止された封止部分25が形成されている。この筒状のインク充填口部24の熱溶着による封止部分(溶融部分)25は、インク充填口部24が相対する両側から一対の溶着ヘッドによって温度差を以って溶かされ、この溶かされた溶融部分25a、25bの形状が左右非対称の形状になっている。溶融部分25a、25bの形状を左右非対称とすることで、封止を確実なものとすることができる。
【0026】
次に、本発明に係る液体収容袋の封止装置を有する本発明に係る液体充填装置について図4及び図5を参照して説明する。なお、図4は同充填装置の全体構成説明図、図5は封止動作の説明に供する拡大説明図である。
この充填装置は、ストック容器101にストックされた脱気したインク100を、カプラ102を介してクッションタンク103に送り、このクッションタンク103からカプラ104を介してインクを脱気装置105に送り込む。なお、クッションタンク103内はエアーフィルタ103aを介して大気に接続され、またバルブ103bが接続されている。
【0027】
この脱気装置105は、循環経路106内に循環ポンプ107、脱気モジュール108、バルブ109、110を含み、脱気モジュール108には脱気真空ポンプ111及び脱気真空開放弁112がそれぞれ接続され、インク101を循環ポンプ107によって循環経路106内で循環させながら、脱気真空ポンプ111を作動させて脱気モジュール108によってインク100の脱気を行う。なお、この脱気装置105の循環経路106にはバルブ113、バルブ114と115の直列回路もそれぞれ接続されている。
【0028】
そして、この脱気装置105の循環経路106を経路120によってボールバルブ121を介してシリンジ三方弁122の入口側122aに接続している。このシリンジ三方弁122の共通側122cにはシリンジ計量ポンプ123を接続している。なお、経路120にはバルブ124を接続している。さらに、シリンジ三方弁122の出口側122bは経路125及びフィルタ126を介してノズル三方弁127の供給側127aに接続し、このノズル三方弁127の共通側127cにはインク袋1へのインク100の充填を行うための充填ノズル128を接続している。また、ノズル三方弁127の真空側127bには経路131及び大気三方弁132を介してトラップ手段133に接続し、このトラップ手段133にはワーク真空ポンプ134を接続している。
【0029】
ここで、図5を参照して、充填ノズル128はノズル保持部材140に取り付け保持されている。そして、この充填ノズル128の下側にはインク袋21のインク充填口部24を2つの相対する側から溶着するための一対の溶着ヘッド141,142をそれぞれ図5で矢示方向に進退自在に配設している。
【0030】
これら一対の溶着ヘッド141,142はその厚みが、ヘッド先端141a,142a方向に向って薄くなるテーパー形に傾斜するように略三角形状に形成し、温度センサ装着用穴143が設けられて内部に温度センサが装着されている。また、溶着ヘッド141,142の内部にはヘッドを加熱するためのヒータ144,144が埋め込まれている。
【0031】
さらに、これらの溶着ヘッド141,142の下方側にはインク袋11の排気を行うためのクランパ151,152を図5で矢示方向に進退自在に配設している。この例では、インク充填は、インク袋12を二分割構造のカートリッジケース11の一方のケース11Aに保持した状態で行うので、ケース11Aをクランパ151で押圧し、インク袋12の袋本体21をクランパ152で押圧する構成とし、このクランパ152の押圧部は積層構造の弾性部材152a,152bと剛性部材152cとで構成している。
【0032】
このように構成した充填装置における充填動作は、例えば、ボールバルブ121を開き、シリンジ三方弁122の入口側122aを開いて、シリンジ計量ポンプ123内にインクを吸引する。一方、図示しないワークホルダを上動させて、ワークであるインク袋12を上動させて充填ノズル128をインク充填口部24にセットする。そして、ワーククランプ151,152の閉動作を開始して、インク袋12を押圧することにより袋本体21の排気を行った後、ワーククランパ151,152を元に戻す。
【0033】
このとき、ワーク大気開放弁132を開き、このワーク大気開放弁132を閉じるときにノズル三方弁127の真空側127bを開く。そして、ノズル三方弁127の真空側127bを閉じるとともに、シリンジ三方弁122の出口側122bを開き、ノズル三方弁127の供給側127aを開いた後、シリンジ計量ポンプ123を上動させて、充填ノズル128からインクを吐出させてインク袋12のインク充填口24から袋本体21内にインクを充填する。
【0034】
ここまでの間、溶着ヘッド141,142のヒータ電源はオン状態にしてヒータ144に通電しておくことにより、インク袋12のインク充填口部24を予備加熱しておくことが好ましい。そして、溶着ヘッド141,142を移動させてインク充填口部24を相対する両側から押し当ててインク充填口部24を溶着して封止する。このとき、ワーク大気開放弁132を開状態にする。
【0035】
その後、ヒータ電源をオフ状態にするとともに、エアーブローバルブ162を開き、インク充填口部24に向かってエアーを吹き付け、インク充填口部24の溶着部の冷却を開始し、溶着ヘッド141,142を移動退避させ、ワーク大気開放弁132を閉じるとともにノズル三方弁127の真空側127bを開状態にし、次いでヒータ電源をオン状態にするとともにエアーブローバルブ162を閉じ、ノズル三方弁127の真空側127bを閉状態にした後、ホルダを下降させる。
【0036】
このようにして、インクを内部に充填するための筒状のインク充填口部24を有するインク袋21に、インクを充填後、インク充填口部24を一対の熱溶着ヘッド141、142により挟み、液噛み状態で熱溶着して封止することにより、封止を確実に、しかも容易に行なうことができる。
【0037】
次に、このインク充填装置における封止装置を構成する熱溶着ヘッドの一例について図6ないし図8を参照して説明する。なお、図6は熱溶着ヘッドの平面説明図、図7は図6の正面説明図、図8はヘッド先端部の拡大平面説明図である。
この熱溶着ヘッド200は、ヘッド先端部200aに、インク充填口部24を押し込む凸部201と、凸部201が押し込まれることで溶融したインク充填口部24の材料が押し込み方向と逆方向に向かって流れるのを受け止める受け止め部202とを有している。
【0038】
このように構成したので、熱溶着ヘッド200をインク充填口部24に押し当てたとき、熱溶着ヘッド200に接触したインク充填口部24の材料が加温されて溶融するが、熱溶着ヘッド200から離れた部分は熱伝達に時間差があるため溶融が遅くなる。
【0039】
ここで、図9に示すように、熱溶着ヘッド200のヘッド先端部近傍の溶融した材料は、熱溶着ヘッド200の凸部201により充填口部24内側に向かって押し込まれるが、溶融が不十分である部分24aの材料はインク充填口部24の内部に入ることができず、熱溶着ヘッド200の凸部201の外周面に沿って押し込み方向(ヘッド進入方向)と逆方向にはみ出そうとする。
【0040】
このとき、この熱溶着ヘッド200ではヘッド先端部200aの凸部201の底部側周囲に受け止め部202が設けられているので、はみ出そうとする溶融が不十分なインク充填口部24の材料は、熱溶着ヘッド200自身の推進力で、受け止め部202によって図9の矢示方向(押し込み方向:ヘッド進入方向)に向かって押され、インク充填口部24の内部に向かって押し込まれ、熱溶着後の封止部分25の壁面の厚さを厚く保つことが可能となり、液漏れが発生しにくい。
【0041】
ここで、比較のために受け止め部202を有しない熱溶着ヘッドを用いた場合について図10ないし図13を参照して説明する。
この熱溶着ヘッド300は、ヘッド先端部300aに流線形状の凸部301のみを形成したものである。このような熱溶着ヘッド300を用いて封止を行った場合、図14に示すように、溶融が不十分なインク充填口部24の材料24aは、凸部301に沿って押し込み方向(ヘッド進入方向)と逆方向(矢示方向)にはみ出してしまうので、封止部分25を形成する材料の量が少なくなるため、熱溶着後の壁面の厚さが薄くなってしまい、熱溶着ヘッド300のズレや劣化、欠け等による溶着条件がばらつくと、溶着部(封止部分25)の壁面に穴が開き、液漏れが発生しやすくなる。
【0042】
このように、一対の溶着ヘッドのうち、少なくとも一方の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部に、液体充填口部を押し込む凸部と、凸部が押し込まれることで溶融した液体充填口部の材料が押し込み方向と逆方向に向かって流れるのを受け止める受け止め部とを有している構成とすることで、封止部分の厚みが極めて薄くなることが低減されて、熱溶着ヘッドのズレや劣化、欠けなどが生じた場合でも確実に液体充填口部が封止されて封止不良が発生しない。
【0043】
なお、一対の熱溶着ヘッド141、142のうち、一方のヘッドは上述したように凸部201及び受け止め部202を有する熱溶着ヘッド200とすることが好ましいが、他方のヘッドは図14及び図15に示すようにヘッド先端部400aが平状の熱溶着ヘッド400、あるいは、図16及び図17に示すようにヘッド先端部500aが凹状の熱溶着ヘッド500とすることが、充填口部断面で均一に封止できるため好ましい。他方のヘッドも凸部201及び受け止め部202を有する熱溶着ヘッド200を用いると、充填口部24の封止が不十分になるおそれがある。
【0044】
また、一対の熱溶着ヘッド141、142はヘッド先端部に温度差を持たせることが好ましい。これは、左右の熱溶着ヘッドの温度に差を付けることで、充填口部の材料の軟化、溶融のタイミングがずれることになり、溶着部の接着強度が確保されるものと考えられる。このように溶着ヘッドの温度に差を付けて溶着封止した場合、充填口部の溶融部分の形状は左右で非対称形状になり、言い換えれば、充填口部の溶融部分の形状を非対称形状にすることによってより確実な封止を行うことができる。
【0045】
これに対して、左右の溶着ヘッドの温度差をなくした場合、充填口部の材質の軟化、変形は十分に進むが、接着強度が確保されず、袋の中のインクの圧力により接着面が剥離し、インクが進入することで封止不十分となり、結果としてインク漏れとなることが考えられる。
【0046】
この場合、温度差は10℃以上240℃以下とすることが好ましく、15℃以上100℃以下とすることがより好ましく、20℃以上50℃以下とすることがさらに好ましい。温度差が10℃未満では封止が不十分になり、240℃を超えると低温側の樹脂の溶解が不十分であり、やはり封止が不十分となる傾向がある。
【0047】
上述した封止装置で封止された液体収容容器の液体充填口部の形状はとして熱溶着ヘッドの形状の跡がついたものとなる。
【0048】
次に、具体的な実施例及び比較例について参照して説明する。
上述した充填装置の左側の熱溶着ヘッド141(第1ヘッド)と右側の熱溶着ヘッド142(第2ヘッド)について、表1に示すヘッド形状、ヘッド温度及び加熱時間を設定した。インク袋21のインク充填口部24の材質は軟化点122℃の高密度ポリエチレン、インク充填口部24は外径4mmφ、内径2.2mmφとした。
【0049】
ヘッド形状A:前述した熱溶着ヘッド200(図6及び図7)
ヘッド形状B:前述した熱溶着ヘッド300(図10及び図11)
ヘッド形状C:前述した熱溶着ヘッド400(図14及び図15)
ヘッド形状D:前述した熱溶着ヘッド500(図16及び図17)
【0050】
熱溶着ヘッドのズレを想定し、下記2条件でインク充填口部24の溶着封止を行い、インク袋21を1日放置後、液漏れの有無を目視で確認した。液漏れの結果を表1に示している。
条件1:左右の熱溶着ヘッドA、Bをインク充填口部のセンタに配置
条件2:右側の熱溶着ヘッドBをインク充填口部のセンタに配置
左側の熱溶着ヘッドAをインク充填口部のセンタから30μm、それぞれ図6、図11、図14、図16で上側にずらして配置
【0051】
【表1】
【0052】
この結果から、前述したように、一方の熱溶着ヘッドは凸部201及び受け止め部202を有する熱溶着ヘッド200とし、他方の熱溶着ヘッドは平状又は凹状の熱溶着ヘッド400又は500とすることが特に好ましいことが分かる。
【0053】
次に、本発明に係る封止装置における熱溶着ヘッドの他の異なる例について図18及び図19を参照して説明する。なお、正面視の形状は、図6に示す前記実施形態と同様である。
図18に示す例の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部200aに凸部201と受け止め部202とを有し、受け止め部202を平状に形成したものである。前述した図11に示す形状との違いは、ヘッド先端部200aの端面からの凸部201の突出量が小さく、凸部201の底部面(ヘッド先端部200aの端面)が受け止め部202として機能することである。
【0054】
図19に示す例の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部200aに凸部201と受け止め部202とを有し、受け止め部202を平面視略V字状に形成したものである。この場合、凸部201は、V字状受け止め部202の底面中央部から突出して形成される。なお、図示を省略するが、受け止め部をすり鉢状に形成し、凸部をすり鉢状受け止め部の底面中央部から突出して形成するようにしてもよい。
【0055】
なお、上記実施形態ではインクを収容する液体収容容器のインク袋のインク充填口部を封止する例で説明したが、インク以外の液体を収容する液体収容容器の液体収容袋の液体充填口部を封止する装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 インクカートリッジ(液体収容容器)
11 カートリッジケース
12 インク袋(液体収容袋)
21 袋本体
22 保持部材
23 供給口部
24 インク充填口部
141、142 熱溶着ヘッド
200 熱溶着ヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は液体収容袋の封止装置、液体充填装置、液体収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置が、また電子写真方式で画像を形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0004】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液滴を吐出する装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること、すなわち、液体吐出装置)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。なお、以下では、主として、記録剤がインクである例について説明する。
【0005】
このような画像形成装置において、例えば記録ヘッドを搭載したキャリッジ上に、記録ヘッドにインクを供給するサブタンク(バッファタンク、ヘッドタンクとも称される。)を搭載し、メインのインクカートリッジ(メインタンク、インクタンクとも称される)を画像形成装置本体(以下、単に「装置本体」という。)側に着脱自在に装着し、サブタンクに装置本体側のインクカートリッジからインクを補充供給するようにしたものが知られている。
【0006】
インクカートリッジとしては、例えば、インク供給口部とインク充填口部を有する保持部材を袋本体に融着などで固定したインク収容袋を、分割されたカートリッジ筐体に収納し、保持部材をカートリッジ筐体の保持手段にて保持したものなどが知られている。
【0007】
ところで、インクジェット記録装置において使用するインクとしては、主に水性インクが用いられている。水性インクは原材料を混合・分散する工程と濾過工程により製造されるが、製造されたインクをそのままインクタンクに充填して記録を行うと、インク中に溶存している窒素、酸素、炭酸ガス等各種の気体が記録ヘッドまでのインク流路や記録ヘッド内のインク流路で気泡となりドット抜け等の記録不良を引き起こす。
【0008】
そこで、インクタンクにインクを充填する前にインク中の溶存気体を減らす脱気処理を行っている。脱気処理の方法としては、インクを圧力容器中で減圧しながら攪拌する方法や、気体分離膜を用いた脱気装置により脱気する方法が用いられる。
【0009】
そして、このような方法で脱気したインクを袋の中に空気を巻き込むことなく充填・封止することが求められる。そこで、従来、特許文献1に開示されているように、液体収容袋に液体を充填後、筒状の液体充填口部を、一対の熱溶着ヘッドにより挟み、液噛み状態で封止する封止装置(方法)ないし液体充填装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−125753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1記載の封止装置にあっては、溶着ヘッドとしてヘッド先端部が単なる凸状に形成されたものを用いているため、液体充填口部を溶融しながらヘッド先端部を押し込んだときに、ヘッドで溶融した液体充填口部の材料がヘッド先端部の外周面に沿って逃げてしまい、封止部分の厚みが極めて薄くなり、熱溶着ヘッドのズレや劣化、欠けによって封止不良が発生して液漏れが起こりやすくなるという課題がある。
【0012】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、熱溶着ヘッドのズレや劣化、欠けなどが生じた場合でも確実に液体充填口部が封止されて封止不良が発生しないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体収容袋の封止装置は、
液体を内部に充填するための筒状の液体充填口部を有する液体収容袋に、前記液体を充填後、前記液体充填口部を一対の熱溶着ヘッドにより挟み、液噛み状態で封止する液体収容袋の封止装置であって、
前記一対の溶着ヘッドのうち、少なくとも一方の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部に、前記液体充填口部を押し込む凸部と、前記凸部が押し込まれることで溶融した前記液体充填口部の材料が押し込み方向と逆方向に向かって流れるのを受け止める受け止め部とを有している
構成とした。
【0014】
ここで、前記一対の熱溶着ヘッドの一方の溶着ヘッドはヘッド先端部に前記凸部及び受け部を有し、他方の溶着ヘッドはヘッド先端部が平状又は凹状である構成とできる。
【0015】
また、前記一対の熱溶着ヘッドのヘッド先端部に温度差を持たせる構成とできる。
【0016】
本発明に係る液体充填装置は、本発明に係る液体収容袋の封止装置を備えるものである。
【0017】
本発明に係る液体収容容器は、本発明に係る液体充填装置で液体が充填されて液体充填口部が封止されている液体収容袋を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る液体収容袋の封止装置によれば、一対の溶着ヘッドのうち、少なくとも一方の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部に、液体充填口部を押し込む凸部と、凸部が押し込まれることで溶融した液体充填口部の材料が押し込み方向と逆方向に向かって流れるのを受け止める受け止め部とを有している構成としたので、封止部分の厚みが極めて薄くなることが低減されて、熱溶着ヘッドのズレや劣化、欠けなどが生じた場合でも確実に液体充填口部が封止されて封止不良が発生しない。
【0019】
本発明に係る液体充填装置によれば、本発明に係る液体収容袋の封止装置を備えているので、封止不良を発生することなく液体を充填することができる。
【0020】
本発明に係る液体収容容器によれば、本発明に係る液体充填装置で液体が充填されて液体充填口部が封止されている液体収容袋を有するので、液漏れなどがなく信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る液体収容容器としてのインクカートリッジの外観斜視説明図である。
【図2】同インクカートリッジのインク袋の正面説明図である。
【図3】同インク袋のインク充填口部の拡大説明図である。
【図4】インク充填装置の全体構成を説明する説明図である。
【図5】同インク充填装置の要部拡大説明図である。
【図6】同インク充填装置の熱溶着ヘッドを構成する本発明に係る熱溶着ヘッドの一例を示す平面説明図である。
【図7】同じく図6の正面説明図である。
【図8】同じくヘッド先端部の拡大説明図である。
【図9】同熱溶着ヘッドによる熱溶着の作用説明に供する説明図である。
【図10】ヘッド先端部が凸部のみの熱溶着ヘッドを示す平面説明図である。
【図11】同じく図10の正面説明図である。
【図12】同じくヘッド先端部の拡大説明図である。
【図13】同熱溶着ヘッドによる熱溶着の作用説明に供する説明図である。
【図14】ヘッド先端部が平状の熱溶着ヘッドを示す平面説明図である。
【図15】同じく図14の正面説明図である。
【図16】ヘッド先端部が凹状の熱溶着ヘッドを示す平面説明図である。
【図17】同じく図16の正面説明図である。
【図18】本発明に係る熱溶着ヘッドの他の例を示す拡大説明図である。
【図19】本発明に係る熱溶着ヘッドの更に他の例を示す拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る液体収容容器としてのインクカートリッジの一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同インクカートリッジの外観斜視説明図、図2は同インクカートリッジのインク袋の正面説明図である。
このインクカートリッジ1は、ケース11Aとケース11Bに二分割されるカートリッジケース11内に、インクを収容した液体収容袋であるインク袋12を収納したものである。
【0023】
カートリッジケース11の前面側(インクカートリッジの前面側とは、インクカートリッジの着脱方向で画像形成装置本体に挿入するときに前面となる側の意味であり、前面の反対側を背面という。)には、装置本体側からの液体吸入手段である中空針が通る開口部14が形成されている。
【0024】
インク袋12は、例えば可撓性フィルム部材からなる密閉された袋状部材である袋本体21に保持部材22を接合したものである。インク袋12の袋本体21の材質としては、可撓性を有するフィルム部材であることが好ましい。この場合、1種の樹脂組成からなるフィルム部材でも、複数種の樹脂組成からなる層構造を有するフィルム部材でも良い。また表面、あるいは中間層に金属薄膜層を有する構造でも良い。樹脂組成として良好なものは、オレフィン系の樹脂組成のもので、特にインクとの接液性からポリエチレン系のフィルムが良好である。また、金属薄膜層としては、フィルムの透湿性を抑え、あるいはフィルムの剛性を持たせるものが好ましく、例えば、特にはアルミニウム薄膜が好ましい。
【0025】
保持部材22には、袋本体21内のインクを装置本体側に供給するために装置本体側から中空針が刺し通される供給口部23と、袋本体21内に液体であるインクを充填する筒状の液体充填口部であるインク充填口部24などが設けられている。このインク充填口部24は、後述する本発明に係る液体充填装置の封止装置によって熱溶着で封止された封止部分25が形成されている。この筒状のインク充填口部24の熱溶着による封止部分(溶融部分)25は、インク充填口部24が相対する両側から一対の溶着ヘッドによって温度差を以って溶かされ、この溶かされた溶融部分25a、25bの形状が左右非対称の形状になっている。溶融部分25a、25bの形状を左右非対称とすることで、封止を確実なものとすることができる。
【0026】
次に、本発明に係る液体収容袋の封止装置を有する本発明に係る液体充填装置について図4及び図5を参照して説明する。なお、図4は同充填装置の全体構成説明図、図5は封止動作の説明に供する拡大説明図である。
この充填装置は、ストック容器101にストックされた脱気したインク100を、カプラ102を介してクッションタンク103に送り、このクッションタンク103からカプラ104を介してインクを脱気装置105に送り込む。なお、クッションタンク103内はエアーフィルタ103aを介して大気に接続され、またバルブ103bが接続されている。
【0027】
この脱気装置105は、循環経路106内に循環ポンプ107、脱気モジュール108、バルブ109、110を含み、脱気モジュール108には脱気真空ポンプ111及び脱気真空開放弁112がそれぞれ接続され、インク101を循環ポンプ107によって循環経路106内で循環させながら、脱気真空ポンプ111を作動させて脱気モジュール108によってインク100の脱気を行う。なお、この脱気装置105の循環経路106にはバルブ113、バルブ114と115の直列回路もそれぞれ接続されている。
【0028】
そして、この脱気装置105の循環経路106を経路120によってボールバルブ121を介してシリンジ三方弁122の入口側122aに接続している。このシリンジ三方弁122の共通側122cにはシリンジ計量ポンプ123を接続している。なお、経路120にはバルブ124を接続している。さらに、シリンジ三方弁122の出口側122bは経路125及びフィルタ126を介してノズル三方弁127の供給側127aに接続し、このノズル三方弁127の共通側127cにはインク袋1へのインク100の充填を行うための充填ノズル128を接続している。また、ノズル三方弁127の真空側127bには経路131及び大気三方弁132を介してトラップ手段133に接続し、このトラップ手段133にはワーク真空ポンプ134を接続している。
【0029】
ここで、図5を参照して、充填ノズル128はノズル保持部材140に取り付け保持されている。そして、この充填ノズル128の下側にはインク袋21のインク充填口部24を2つの相対する側から溶着するための一対の溶着ヘッド141,142をそれぞれ図5で矢示方向に進退自在に配設している。
【0030】
これら一対の溶着ヘッド141,142はその厚みが、ヘッド先端141a,142a方向に向って薄くなるテーパー形に傾斜するように略三角形状に形成し、温度センサ装着用穴143が設けられて内部に温度センサが装着されている。また、溶着ヘッド141,142の内部にはヘッドを加熱するためのヒータ144,144が埋め込まれている。
【0031】
さらに、これらの溶着ヘッド141,142の下方側にはインク袋11の排気を行うためのクランパ151,152を図5で矢示方向に進退自在に配設している。この例では、インク充填は、インク袋12を二分割構造のカートリッジケース11の一方のケース11Aに保持した状態で行うので、ケース11Aをクランパ151で押圧し、インク袋12の袋本体21をクランパ152で押圧する構成とし、このクランパ152の押圧部は積層構造の弾性部材152a,152bと剛性部材152cとで構成している。
【0032】
このように構成した充填装置における充填動作は、例えば、ボールバルブ121を開き、シリンジ三方弁122の入口側122aを開いて、シリンジ計量ポンプ123内にインクを吸引する。一方、図示しないワークホルダを上動させて、ワークであるインク袋12を上動させて充填ノズル128をインク充填口部24にセットする。そして、ワーククランプ151,152の閉動作を開始して、インク袋12を押圧することにより袋本体21の排気を行った後、ワーククランパ151,152を元に戻す。
【0033】
このとき、ワーク大気開放弁132を開き、このワーク大気開放弁132を閉じるときにノズル三方弁127の真空側127bを開く。そして、ノズル三方弁127の真空側127bを閉じるとともに、シリンジ三方弁122の出口側122bを開き、ノズル三方弁127の供給側127aを開いた後、シリンジ計量ポンプ123を上動させて、充填ノズル128からインクを吐出させてインク袋12のインク充填口24から袋本体21内にインクを充填する。
【0034】
ここまでの間、溶着ヘッド141,142のヒータ電源はオン状態にしてヒータ144に通電しておくことにより、インク袋12のインク充填口部24を予備加熱しておくことが好ましい。そして、溶着ヘッド141,142を移動させてインク充填口部24を相対する両側から押し当ててインク充填口部24を溶着して封止する。このとき、ワーク大気開放弁132を開状態にする。
【0035】
その後、ヒータ電源をオフ状態にするとともに、エアーブローバルブ162を開き、インク充填口部24に向かってエアーを吹き付け、インク充填口部24の溶着部の冷却を開始し、溶着ヘッド141,142を移動退避させ、ワーク大気開放弁132を閉じるとともにノズル三方弁127の真空側127bを開状態にし、次いでヒータ電源をオン状態にするとともにエアーブローバルブ162を閉じ、ノズル三方弁127の真空側127bを閉状態にした後、ホルダを下降させる。
【0036】
このようにして、インクを内部に充填するための筒状のインク充填口部24を有するインク袋21に、インクを充填後、インク充填口部24を一対の熱溶着ヘッド141、142により挟み、液噛み状態で熱溶着して封止することにより、封止を確実に、しかも容易に行なうことができる。
【0037】
次に、このインク充填装置における封止装置を構成する熱溶着ヘッドの一例について図6ないし図8を参照して説明する。なお、図6は熱溶着ヘッドの平面説明図、図7は図6の正面説明図、図8はヘッド先端部の拡大平面説明図である。
この熱溶着ヘッド200は、ヘッド先端部200aに、インク充填口部24を押し込む凸部201と、凸部201が押し込まれることで溶融したインク充填口部24の材料が押し込み方向と逆方向に向かって流れるのを受け止める受け止め部202とを有している。
【0038】
このように構成したので、熱溶着ヘッド200をインク充填口部24に押し当てたとき、熱溶着ヘッド200に接触したインク充填口部24の材料が加温されて溶融するが、熱溶着ヘッド200から離れた部分は熱伝達に時間差があるため溶融が遅くなる。
【0039】
ここで、図9に示すように、熱溶着ヘッド200のヘッド先端部近傍の溶融した材料は、熱溶着ヘッド200の凸部201により充填口部24内側に向かって押し込まれるが、溶融が不十分である部分24aの材料はインク充填口部24の内部に入ることができず、熱溶着ヘッド200の凸部201の外周面に沿って押し込み方向(ヘッド進入方向)と逆方向にはみ出そうとする。
【0040】
このとき、この熱溶着ヘッド200ではヘッド先端部200aの凸部201の底部側周囲に受け止め部202が設けられているので、はみ出そうとする溶融が不十分なインク充填口部24の材料は、熱溶着ヘッド200自身の推進力で、受け止め部202によって図9の矢示方向(押し込み方向:ヘッド進入方向)に向かって押され、インク充填口部24の内部に向かって押し込まれ、熱溶着後の封止部分25の壁面の厚さを厚く保つことが可能となり、液漏れが発生しにくい。
【0041】
ここで、比較のために受け止め部202を有しない熱溶着ヘッドを用いた場合について図10ないし図13を参照して説明する。
この熱溶着ヘッド300は、ヘッド先端部300aに流線形状の凸部301のみを形成したものである。このような熱溶着ヘッド300を用いて封止を行った場合、図14に示すように、溶融が不十分なインク充填口部24の材料24aは、凸部301に沿って押し込み方向(ヘッド進入方向)と逆方向(矢示方向)にはみ出してしまうので、封止部分25を形成する材料の量が少なくなるため、熱溶着後の壁面の厚さが薄くなってしまい、熱溶着ヘッド300のズレや劣化、欠け等による溶着条件がばらつくと、溶着部(封止部分25)の壁面に穴が開き、液漏れが発生しやすくなる。
【0042】
このように、一対の溶着ヘッドのうち、少なくとも一方の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部に、液体充填口部を押し込む凸部と、凸部が押し込まれることで溶融した液体充填口部の材料が押し込み方向と逆方向に向かって流れるのを受け止める受け止め部とを有している構成とすることで、封止部分の厚みが極めて薄くなることが低減されて、熱溶着ヘッドのズレや劣化、欠けなどが生じた場合でも確実に液体充填口部が封止されて封止不良が発生しない。
【0043】
なお、一対の熱溶着ヘッド141、142のうち、一方のヘッドは上述したように凸部201及び受け止め部202を有する熱溶着ヘッド200とすることが好ましいが、他方のヘッドは図14及び図15に示すようにヘッド先端部400aが平状の熱溶着ヘッド400、あるいは、図16及び図17に示すようにヘッド先端部500aが凹状の熱溶着ヘッド500とすることが、充填口部断面で均一に封止できるため好ましい。他方のヘッドも凸部201及び受け止め部202を有する熱溶着ヘッド200を用いると、充填口部24の封止が不十分になるおそれがある。
【0044】
また、一対の熱溶着ヘッド141、142はヘッド先端部に温度差を持たせることが好ましい。これは、左右の熱溶着ヘッドの温度に差を付けることで、充填口部の材料の軟化、溶融のタイミングがずれることになり、溶着部の接着強度が確保されるものと考えられる。このように溶着ヘッドの温度に差を付けて溶着封止した場合、充填口部の溶融部分の形状は左右で非対称形状になり、言い換えれば、充填口部の溶融部分の形状を非対称形状にすることによってより確実な封止を行うことができる。
【0045】
これに対して、左右の溶着ヘッドの温度差をなくした場合、充填口部の材質の軟化、変形は十分に進むが、接着強度が確保されず、袋の中のインクの圧力により接着面が剥離し、インクが進入することで封止不十分となり、結果としてインク漏れとなることが考えられる。
【0046】
この場合、温度差は10℃以上240℃以下とすることが好ましく、15℃以上100℃以下とすることがより好ましく、20℃以上50℃以下とすることがさらに好ましい。温度差が10℃未満では封止が不十分になり、240℃を超えると低温側の樹脂の溶解が不十分であり、やはり封止が不十分となる傾向がある。
【0047】
上述した封止装置で封止された液体収容容器の液体充填口部の形状はとして熱溶着ヘッドの形状の跡がついたものとなる。
【0048】
次に、具体的な実施例及び比較例について参照して説明する。
上述した充填装置の左側の熱溶着ヘッド141(第1ヘッド)と右側の熱溶着ヘッド142(第2ヘッド)について、表1に示すヘッド形状、ヘッド温度及び加熱時間を設定した。インク袋21のインク充填口部24の材質は軟化点122℃の高密度ポリエチレン、インク充填口部24は外径4mmφ、内径2.2mmφとした。
【0049】
ヘッド形状A:前述した熱溶着ヘッド200(図6及び図7)
ヘッド形状B:前述した熱溶着ヘッド300(図10及び図11)
ヘッド形状C:前述した熱溶着ヘッド400(図14及び図15)
ヘッド形状D:前述した熱溶着ヘッド500(図16及び図17)
【0050】
熱溶着ヘッドのズレを想定し、下記2条件でインク充填口部24の溶着封止を行い、インク袋21を1日放置後、液漏れの有無を目視で確認した。液漏れの結果を表1に示している。
条件1:左右の熱溶着ヘッドA、Bをインク充填口部のセンタに配置
条件2:右側の熱溶着ヘッドBをインク充填口部のセンタに配置
左側の熱溶着ヘッドAをインク充填口部のセンタから30μm、それぞれ図6、図11、図14、図16で上側にずらして配置
【0051】
【表1】
【0052】
この結果から、前述したように、一方の熱溶着ヘッドは凸部201及び受け止め部202を有する熱溶着ヘッド200とし、他方の熱溶着ヘッドは平状又は凹状の熱溶着ヘッド400又は500とすることが特に好ましいことが分かる。
【0053】
次に、本発明に係る封止装置における熱溶着ヘッドの他の異なる例について図18及び図19を参照して説明する。なお、正面視の形状は、図6に示す前記実施形態と同様である。
図18に示す例の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部200aに凸部201と受け止め部202とを有し、受け止め部202を平状に形成したものである。前述した図11に示す形状との違いは、ヘッド先端部200aの端面からの凸部201の突出量が小さく、凸部201の底部面(ヘッド先端部200aの端面)が受け止め部202として機能することである。
【0054】
図19に示す例の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部200aに凸部201と受け止め部202とを有し、受け止め部202を平面視略V字状に形成したものである。この場合、凸部201は、V字状受け止め部202の底面中央部から突出して形成される。なお、図示を省略するが、受け止め部をすり鉢状に形成し、凸部をすり鉢状受け止め部の底面中央部から突出して形成するようにしてもよい。
【0055】
なお、上記実施形態ではインクを収容する液体収容容器のインク袋のインク充填口部を封止する例で説明したが、インク以外の液体を収容する液体収容容器の液体収容袋の液体充填口部を封止する装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 インクカートリッジ(液体収容容器)
11 カートリッジケース
12 インク袋(液体収容袋)
21 袋本体
22 保持部材
23 供給口部
24 インク充填口部
141、142 熱溶着ヘッド
200 熱溶着ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を内部に充填するための筒状の液体充填口部を有する液体収容袋に、前記液体を充填後、前記液体充填口部を一対の熱溶着ヘッドにより挟み、液噛み状態で封止する液体収容袋の封止装置であって、
前記一対の溶着ヘッドのうち、少なくとも一方の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部に、前記液体充填口部を押し込む凸部と、前記凸部が押し込まれることで溶融した前記液体充填口部の材料が押し込み方向と逆方向に向かって流れるのを受け止める受け止め部とを有している
ことを特徴とする液体収容袋の封止装置。
【請求項2】
前記一対の熱溶着ヘッドの一方の溶着ヘッドはヘッド先端部に前記凸部及び受け部を有し、他方の溶着ヘッドはヘッド先端部が平状又は凹状であることを特徴とする請求項1に記載の液体収容袋の封止装置。
【請求項3】
前記一対の熱溶着ヘッドのヘッド先端部に温度差を持たせることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体収容袋の封止装置。
【請求項4】
液体収容容器に液体を充填する液体充填装置であって、請求項1ないし3のいずれかに記載の液体収容袋の封止装置を備えていることを特徴とする液体充填装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体充填装置で液体が充填されて液体充填口部が封止されている液体収容袋を有することを特徴とする液体収容容器。
【請求項1】
液体を内部に充填するための筒状の液体充填口部を有する液体収容袋に、前記液体を充填後、前記液体充填口部を一対の熱溶着ヘッドにより挟み、液噛み状態で封止する液体収容袋の封止装置であって、
前記一対の溶着ヘッドのうち、少なくとも一方の熱溶着ヘッドは、ヘッド先端部に、前記液体充填口部を押し込む凸部と、前記凸部が押し込まれることで溶融した前記液体充填口部の材料が押し込み方向と逆方向に向かって流れるのを受け止める受け止め部とを有している
ことを特徴とする液体収容袋の封止装置。
【請求項2】
前記一対の熱溶着ヘッドの一方の溶着ヘッドはヘッド先端部に前記凸部及び受け部を有し、他方の溶着ヘッドはヘッド先端部が平状又は凹状であることを特徴とする請求項1に記載の液体収容袋の封止装置。
【請求項3】
前記一対の熱溶着ヘッドのヘッド先端部に温度差を持たせることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体収容袋の封止装置。
【請求項4】
液体収容容器に液体を充填する液体充填装置であって、請求項1ないし3のいずれかに記載の液体収容袋の封止装置を備えていることを特徴とする液体充填装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体充填装置で液体が充填されて液体充填口部が封止されている液体収容袋を有することを特徴とする液体収容容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−274499(P2010−274499A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128489(P2009−128489)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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