説明

液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び液体吐出ヘッドの異常検知方法

【課題】ノズルプレートの割れや変形といった機械的な異常を検知し得る、液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び液体吐出ヘッドの異常検知方法を提供する。
【解決手段】液体を吐出させるためのノズル開口(18)が形成されるノズルプレート(16)と、少なくとも、ノズル開口と連通するノズル(26)が形成され、ノズルプレートがノズルに位置を合わせて接合される流路プレート(24)と、を備え、ノズルプレートは、ノズルプレートの機械的な異常を検知するための検知素子(20,22)が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び液体吐出ヘッドの異常検知方法に係り、特にノズルプレートの割れや変形などの機械的な異常を検知する液体吐出ヘッドの構造及び検知技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインクジェット記録装置ではより高解像度の画像形成が要求されている。この要求を実現するために、ノズル開口が形成されるノズルプレートの加工技術に、半導体プロセスが適用され、インクが吐出されるノズル開口がより微細に加工され、より高密度に配置される。
【0003】
特許文献1は、シリコンのノズルプレートに半導体プロセスを適用してノズル開口を形成する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−509024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に、シリコン基板は外的な衝撃や応力を受けると割れやすい。ノズルプレートに割れが発生すると、インク吐出面の反対側に設けられている流路や液室からインク漏れが発生することがあり得る。
【0006】
一方、金属や樹脂は外的な衝撃や応力を受けると変形が生じやすい。ノズルプレートが変形すると、ノズル開口の形状の変形やノズル開口の向きの変化などが起こり、インクの吐出特性に影響してしまう。
【0007】
特許文献1は、シリコンのノズルプレートについて開示しているものの、シリコンのノズルプレートの割れという課題を開示していない。また、樹脂や金属のノズルプレートの機械的な異常に関する開示をするものでもない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ノズルプレートの割れや変形といった機械的な異常を検知し得る、液体吐出ヘッド、液体吐出装置及び液体吐出ヘッドの異常検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る液体吐出ヘッドは、液体を吐出させるためのノズル開口が形成されるノズルプレートと、少なくとも、前記ノズル開口と連通する流路が形成され、前記ノズルプレートの開口が前記流路に位置を合わせて接合される流路プレートと、を備え、前記ノズルプレートは、前記ノズルプレートの機械的な異常を検知するための検知素子が設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ノズルプレートの割れや変形などの機械的な異常を検知することで、液体吐出ヘッドの動作停止などの必要な処理を行うことができ、ノズルプレートの機械的な変形による被害を最小限に食い止めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの概略構造を示すノズル面の平面図
【図2】図1に示すインクジェットヘッドに具備される1ヘッドモジュール分のノズルプレートの構造を示す平面図
【図3】図1に示すインクジェットヘッドのノズル近傍の立体構造を示す断面図
【図4】図3に示すインクジェットヘッドの他の態様に係る立体構造を示す断面図
【図5】図3に示すインクジェットヘッドのさらに他の態様に係る立体構造を示す断面図
【図6】(a):本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッドのインク吐出面の平面図、(b):該インクジェットヘッドのノズル近傍の立体構造を示す断面図
【図7】(a):本発明の第3実施形態に係るインクジェットヘッドのインク吐出面の平面図、(b):図7(a)の検知用電気配線に沿う断面図
【図8】検知用電気配線の平面形状の一例を示す説明図
【図9】検知用電気配線の形成手順を示す説明図
【図10】図9に示す検知用電気配線の形成手順の他の態様を示す説明図
【図11】検知用電気配線から引き出される引出配線の形成手順を示す説明図
【図12】図11に示す引出配線の形成手順の他の態様を示す説明図
【図13】引出配線(フレキシブル基板)の引出方向を模式的に図示した説明図
【図14】インクジェットヘッドの立体構造の一例を示す断面図
【図15】本発明の実施形態に係る液体吐出装置(インクジェット記録装置)の概略構成を示す全体構成図
【図16】図15に示す液体吐出ヘッドの制御系の概略構成を示すブロック図
【図17】図15に示すインクジェット記録装置に適用されるノズルプレートの割れ検知の制御の流れを示すフローチャート
【図18】(a):本発明の第4実施形態に係るインクジェットヘッドの立体構造を示す断面図、(b):該インクジェットヘッドの1ノズル分の平面図透視図
【図19】本発明の応用例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明を実施するための形態について詳説する。
【0013】
〔第1実施形態〕
(インクジェットヘッドの全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)の概略構造を示すノズル面の平面図である。同図に示すインクジェットヘッド10は、記録媒体の液体を付着させる領域の全幅(媒体の移動方向と直交する方向の全長)に対応する長さにわたって、複数のノズル(図1中不図示、図2に符号18を付して図示)が配置されたフルライン型ヘッドである。
【0014】
インクジェットヘッド10は、最小構成単位であるヘッドユニット12がインクジェットヘッド10の長手方向に沿ってつなぎ合わせられた構造を有している。各ヘッドユニット12のインクジェットヘッド10の短手方向の両側には、カバー14A,14Bが取り付けられている。
【0015】
(ノズルプレートの説明)
図2は、図1に示すインクジェットヘッドに具備される1ヘッドモジュール分のノズルプレートの構造を示す平面図である。図2に示すノズルプレート16は、複数のノズル開口18がマトリクス配置されて形成されている。
【0016】
図2に示すノズルプレート16は、ヘッドユニット12(インクジェットヘッド10)の長手方向(同図における左右方向)におけるノズル開口18間の配置ピッチPが100マイクロメートルから1ミリメートル(例えば、500マイクロメートル)となっている。
【0017】
ここでいう「マトリクス配置」とは、インクジェットヘッド10の長手方向に沿う行方向、及び該行方向と直交しない斜めの列方向に沿って複数のノズル開口18が配置される形態であり、このノズル開口18をインクジェットヘッド10の長手方向に並ぶように投影すると、同方向についてすべてのノズル開口18が等間隔に配置される。
【0018】
図2に示すように、ノズル開口18をマトリクス配置することで、同方向の実質的な配置密度が高密度化される。例えば、一列あたりのノズル開口18の数がmの場合、同方向における実質的なノズル開口18間の配置間隔Pは、次式(1)で表される。
【0019】
P=P/(m−1) …(1)
なお、複数のヘッドユニット12をつなぎ合わせた構造を有するインクジェットヘッド10では、上記の投影ノズル開口列の両端部近傍はノズル開口18の配置ピッチが等間隔にならない場合があり、隣接するヘッドユニット12のノズル開口18によって補間がされると、ノズル開口18の配置ピッチが等間隔になる。
【0020】
また、ノズルプレート16は、シリコン、樹脂、金属などの材料が適用される。インク吐出面16Aに割れや変形などの機械的異常(以下単に「割れ」、「異常」、「機械的異常」と記載することがある)を検知するための電気配線(検知用電気配線)20,22が形成されている。
【0021】
図2に示す検知用電気配線20は、ノズル開口18の列方向と略平行方向に沿って形成され、検知用電気配線22はノズル開口18の行方向と略平行方向に沿って形成されている。ここで、検知用電気配線20,22の形成方向とは、検知用電気配線20,22の両端を結ぶ線分に沿う方向である。
【0022】
検知用電気配線20,22は、ノズルプレート16の端部に設けられる取出端子(取出電極、図11に符号92を付して図示)と電気的に接続され、インクジェットヘッド10に設けられた測定回路(図16に符号293を付して図示)と電気的に接続される(詳細後述)。
【0023】
本例に示すインクジェットヘッド10は、検知用電気配線20,22の抵抗値の変化に基づいてノズルプレート16の割れや変形などの機械的な異常を検知することができる。例えば、ノズルプレート16に割れや変形が発生すると、割れが発生した(変形した)部分を通る検知用電気配線20,22に変形又は断線が生じて抵抗値が変化(増加)する。
【0024】
検知用電気配線20,22の抵抗値を監視して、正常な状態における検知用電気配線20,22の抵抗値と比較することで、検知用電気配線20,22の抵抗値の変化に基づいてノズルプレート16に割れや変形が発生しているか否かが判断される。
【0025】
図2に示すように、検知用電気配線20及び検知用電気配線22を複数備え、かつ、検知用電気配線20の形成方向と検知用電気配線22の形成方向とを交差するように構成することで、ノズルプレート16の全範囲にわたって割れや変形を検知することができ、割れや変形の位置を特定することも可能となる(詳細後述)。
【0026】
図2では、行方向に沿う検知用電気配線20が1本形成され、列方向に沿う検知用電気配線22が2本形成された態様を例示したが、検知用電気配線20,22の本数や検知用電気配線20,22が形成される位置は図示の例に限定されない。
【0027】
また、同図に示す検知用電気配線20はノズルプレート16の長手方向の両端に達する長さを有し、検知用電気配線22はノズルプレート16の短手方向の両端に達する長さを有しているが、検知用電気配線20はノズルプレート16の長手方向の両端に達しない長さでもよいし、検知用電気配線22はノズルプレート16の短手方向の両端に達しない長さでもよい。
【0028】
検知用電気配線20,22の材料は、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)などの金属、又はこれらの合金が適用される。また、検知用電気配線20,22の幅は50マイクロメートル程度であり、ノズル開口18の間隔に応じて決められる。
【0029】
また、検知用電気配線20,22の厚さは0.1マイクロメートル程度であり、抵抗値に応じて決められる。検知用電気配線20,22の長さは、数センチメートル程度であり、ノズルプレート16のサイズ及び抵抗値により決められる。
【0030】
検知用電気配線20,22の長さをL(メートル)、断面積をA(平方メートル)、電気抵抗率をρ(オーム・メートル)とすると、検知用電気配線20,22の抵抗値Rは、次式(2)で表される。
【0031】
R(オーム)=ρ×(L/A) …(2)
銅及び金の電気抵抗率の値は、それぞれ1.68×10−3(オーム・メートル)、2.21×10−3(オーム・メートル)である。電気抵抗率がより大きい材料を使用することで、抵抗値の検知感度を向上させることができる。
【0032】
(検知用配線の構成例)
図3(a),(b)は、図1に示すインクジェットヘッドのノズル近傍の立体構造を示す断面図であり、インク吐出方向が上向きに図示されている。図3(a),(b)に示すように、ノズルプレート16のノズル開口18と、流路プレート24に形成されるノズル(ノズル流路)26との位置が合わせられて、ノズルプレート16のインク吐出面16Aと反対側の面16Bに流路プレート24が接合される。
【0033】
なお、図3(a),(b)では、ノズル26と連通する液室等の図示は省略されている(図14(a),(b)参照)。また、ノズル26が省略され、ノズル開口18と流路プレート24の流路との位置が合わせられて、ノズルプレート16と流路プレート24が接合される態様もありうる。
【0034】
ここで、流路プレートの「流路」とは、圧力室(液室)やノズル(ノズル流路)26を含む概念である。
【0035】
図3(a)に示す態様では、インク吐出面16Aに検知用電気配線20,22が形成されている。一方、図3(b)に示す態様では、ノズルプレート16のインク吐出面16Aと反対側の面(流路プレート24と接合される面)に検知用電気配線20,22が形成されている。
【0036】
図3(b)に示す態様では、検知用電気配線20,22は、ノズルプレート16と流路プレート24とを接合する接着剤28に埋められた形態となる。
【0037】
図4は、図3に示すインクジェットヘッドの他の態様に係る立体構造を示す断面図であり、インク吐出面16Aに形成された検知用電気配線20,22が絶縁層30(第1の絶縁層)により被覆される態様である。なお、図4でもインク吐出方向が上向きに図示されている。
【0038】
インク吐出面16Aは、ノズル開口18から吐出されたインクが付着することがある。そうすると、インク吐出面16Aに検知用電気配線20,22が形成されている場合には、検知用電気配線20,22を絶縁層30によって被覆することで、検知用電気配線20,22と他の部材との電気的な絶縁性能が確保されるとともに、インクによる検知用電気配線20,22やノズルプレート16の腐食が防止される。
【0039】
なお、インク吐出面16Aには、付着したインクの濡れ広がりを防止する目的で撥液処理が施される。検知用電気配線20,22が絶縁層30により被覆される形態では、絶縁層30の上に不図示の撥液膜が形成される。
【0040】
図5は、図3に示すインクジェットヘッドのさらに他の態様に係る立体構造を示す断面図であり、ノズルプレート16と検知用電気配線20,22との間に絶縁層32(第2の絶縁層)が形成されている。なお、図5(a),(b)でもインク吐出方向が上向きに図示されている。
【0041】
すなわち、ノズルプレート16にステンレスなどの金属材料(導電性を有する材料)が適用される場合は、ノズルプレート16と検知用電気配線20,22との電気的な絶縁性能を確保するために、ノズルプレート16と検知用電気配線20,22との間に絶縁層32が形成される。
【0042】
絶縁層32の一例として、材質がSiO、厚みが0.1マイクロメートルから1マイクロメートルの膜が挙げられる。この膜の絶縁抵抗値は数キロオームから数メガオームとなる。なお、絶縁抵抗値は膜の性質等により異なる。
【0043】
絶縁層32の他の例として、SU8などのエポキシ樹脂材料が挙げられる。絶縁層32にSU8が適用される場合は、厚みが1マイクロメートルから5マイクロメートルとされる。なお、SU8の体積抵抗率は1.8×1016オーム・センチメートルであり、膜の厚みは要求される絶縁性能により決められる。
【0044】
上記の如く構成されたインクジェットヘッド10は、ノズルプレート16に割れや変形を検知するための検知素子として検知用電気配線20,22が形成されるので、検知用電気配線20,22の抵抗値に基づいてノズルプレート16の割れや変形などの機械的な異常を判断することができるので、液体吐出ヘッドの動作停止などの必要な処理を行うことができ、ノズルプレートの機械的な変形による被害を最小限に食い止めることが可能となる。
【0045】
なお、本例では、複数のヘッドユニット12を長手方向に沿って一列につなぎ合わせた形態を有するフルライン型のインクジェットヘッド10を例示したが、複数のヘッドユニット12が二列の千鳥配置で並べられる形態も可能である(図13(b)参照)。また、一体構造の(長尺のヘッドユニット12を1つだけ備えた)フルライン型ヘッドとすることも可能である。
【0046】
本例では、ノズル開口18がマトリクス配置される態様を例示したが、ノズル開口18がインクジェットヘッド10の長手方向に沿って一列に並べられる態様や、二列の千鳥配置で並べられる態様も可能である。
【0047】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッドについて説明する。以下に説明する第2実施形態に係るインクジェットヘッド40の構造の中で、第1実施形態に係るインクジェットヘッド10と共通する部分の説明は省略し、相違する部分について説明することとする。
【0048】
図6(a)は、本発明の第2実施形態に係るノズルプレート42(インクジェットヘッド40)のインク吐出面42Aの平面図であり、図6(b)は、インクジェットヘッド40のノズル46近傍の立体構造を示す断面図である。なお、図6(b)でもインク吐出方向が上向きに図示されている。
【0049】
図6(a)に示すノズルプレート42は、マトリクス配置された複数のノズル開口48が形成されるとともに、ノズル開口48の配置に対応して検知用電気配線50,52が形成されている。
【0050】
すなわち、ノズルプレート42の長手方向(ノズル開口48のマトリクス配置における行方向)と略平行方向に沿って複数の検知用電気配線50が形成され、この検知用電気配線50が複数のノズルプレート42の短手方向について配置されている。また、ノズルプレート42の長手方向及び短手方向と直交しない斜め方向(ノズル開口48のマトリクス配置における列方向)と略平行方向に沿って複数の検知用電気配線52が形成され、この検知用電気配線52が複数のノズルプレート42の長手方向について配置されている。
【0051】
図6(a)に示すように、検知用電気配線50,52を互いに交差する2方向に沿って配置し、かつ、複数本の検知用電気配線50,52を配置することで(検知用電気配線50,52を網目状に形成することで)、ノズルプレート42の割れや変形の位置を特定することが可能である。
【0052】
図6(b)に示すように、行方向の検知用電気配線50をインク吐出面42Aに形成し、列方向の検知用電気配線52をインク吐出面42Aの反対側面(流路プレート54側の面)42Bに形成することで、検知用電気配線50,52の抵抗値を独立に測定することができる。もちろん、行方向の検知用電気配線50をインク吐出面42Aの反対側面42Bに形成し、列方向の検知用電気配線52をインク吐出面42Aに形成してもよい。
【0053】
例えば、図6(a)の上から2番目の検知用電気配線50の抵抗値が正常値と異なり、同図の左から2番目の検知用電気配線52の抵抗値が正常値と異なる場合には、これらが交差する位置近傍に割れが発生していると判断することができる。
【0054】
図6(a)に示す態様では、1ノズル行おきに検知用電気配線50が形成され、1ノズル列おきに検知用電気配線52が形成されている。もちろん、検知用電気配線50,52の配置密度をより密にすることも、疎にすることも可能である。
【0055】
なお、図6(b)では図示を省略したが、図4に図示した絶縁層30や、図5(a),(b)に図示した絶縁層32が適宜形成される。また、曲線部などの直線形状以外の形状を含む検知用電気配線50,52を形成することも可能である。かかる態様を考慮すると、検知用電気配線50,52の形成方向は、両端を結ぶ線分により表される方向となる。
【0056】
第2実施形態に係るインクジェットヘッドによれば、ノズルプレート42の割れや変形を検知するための検知用電気配線50,52が互いに交差する方向に形成されるとともに、複数本の検知用電気配線50,52が形成されることで、ノズルプレート42の割れや変形が発生した位置を特定することができる。
【0057】
例えば、一つのヘッドに複数色のインクに対応するノズルが形成される場合には、色ごとに分離した(独立した)流路が形成されているので、ノズルプレート42の割れ(変形)位置に対応する流路のインク供給を停止することができ、ノズルプレート42の割れや変形に起因する被害を最小限に食い止めることができる。
【0058】
本例では、ノズル開口48の配置における行方向に沿って検知用電気配線50が形成され、列方向に沿って検知用電気配線52が形成される態様を例示したが、検知用電気配線50,52が形成される方向は互いに交差する方向(非平行)であればよく、ノズルプレート42の形状や、割れやすい位置が予め把握されている場合には当該割れやすい位置などに対応して、適宜決めることができる。
【0059】
また、検知用電気配線が形成される方向は二方向に限定されず、互いに交差する三方向以上の方向に沿って検知用電気配線を形成してもよい。
【0060】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下に説明する第3実施形態に係るインクジェットヘッド60の構造の中で、第1、第2実施形態に係るインクジェットヘッド10,40と共通する部分の説明は省略し、相違する部分について説明することとする。
【0061】
図7(a)は、本発明の第3実施形態に係るインクジェットヘッド60(ノズルプレート62)のインク吐出面62Aの平面図であり、図7(b)は図7(a)の検知用電気配線70に沿う断面図であり、共通流路69が一本だけ図示されている。
【0062】
図7(a)に示すインクジェットヘッド60は、ノズル開口68の配置における列方向に沿って共通流路69(破線により図示)が設けられており、複数の共通流路69がノズル開口68の配置における行方向について並べられている。
【0063】
複数の共通流路69は、図示しない上流側のインク流路と連通し、該上流側のインク流路はインク供給口を介して、インクジェットヘッド60の外部のインク流路(不図示)及びインクタンク(不図示)と連通している。
【0064】
一つの共通流路69は、同一列に属するノズル開口68と連通するすべての圧力室(図7(a),(b)中不図示、図14(a)に符号27、図14(b)に符号27’を付して図示)と連通し、不図示のインクタンクから送られたインクは、各共通流路69を介して各共通流路69と連通している圧力室へ供給される。
【0065】
ノズルプレート62に形成される検知用電気配線70は、少なくとも一本の共通流路69をまたぐように、共通流路69の形成方向に対して交差する方向に沿って形成される。
【0066】
ノズルプレート62の材料がシリコンの場合、ノズルプレート62のインク吐出面62Aと反対側の面(背面)62Bに共通流路69があると、共通流路69の位置が割れやすいので、共通流路69をまたぐように検知用電気配線70を形成することで、ノズルプレート62の割れを検知する確率を向上させることができる。
【0067】
〔検知用電気配線の形状〕
(平面形状)
次に、検知用電気配線の形状について詳細に説明する。図8(a)から(d)は、検知用電気配線の平面形状の一例を示す説明図である。以下の説明では、先に説明した図2の検知用電気配線20,22、図6の検知用電気配線50,52、図7の検知用電気配線70をまとめて、符号80から86を付して図示する。
【0068】
図8(a)に示す検知用電気配線80は、均一の幅を有する略直線状であり、略長方形形状の平面形状を有している。略直線状の検知用電気配線80は形成が容易であり、安定した抵抗値を得ることができる。なお、曲線を含む態様も可能である。
【0069】
図8(b)に示す検知用電気配線82は、均一な幅を有する幅広部82Aと、幅広部82A未満の幅を有する幅細部82Bと、を有している。図8(b)に示す幅細部82Bは、幅広部82Aが略円弧状に切り欠かれた形状を有している。
【0070】
図8(c)に示す検知用電気配線84は、均一な幅を有する幅広部84Aと、幅広部84A未満の幅を有する幅細部84Bと、を有している点で図8(b)に図示した検知用電気配線82と共通している。一方、図8(c)に示す検知用電気配線84の幅細部84Bは、幅広部84Aが略三角形形状に切り欠かかれた形状を有している。
【0071】
図8(d)に示す検知用電気配線86は、複数の略円形状を一部が重なるように一列につなぎ合わせた平面形状を有している。検知用電気配線86における幅広部86Aは、検知用電気配線86の最大幅となる位置の近傍とし、幅細部86Bは最小幅となる位置の近傍とする。
【0072】
図8(d)に示す検知用電気配線86は、金属粒子を含む機能性液体を用いて、インクジェット方式により容易に形成することができる。ドットサイズ(直径)及びドット間ピッチ(隣接するドットの中心間距離)を調整することで、幅広部86Aの最大幅や幅細部の最小幅を容易に調整することが可能である。
【0073】
例えば、ドットサイズの直径を大きくすると幅広部86Aの最大幅が大きくなる。ドット間ピッチを大きくすると幅細部86Bの最小幅が小さくなり、ドット間ピッチを小さくすると幅細部86Bの最小幅が大きくなる。
【0074】
図8(b)から(c)に図示した検知用電気配線82,84,86において、幅広部82A,84A、86Aの幅の最大値Dと、幅細部82B,84B,86Bの幅の最小値Dとの関係は、D>Dとなっている。
【0075】
幅広部82A,84A、86Aの最大幅Dに対して、幅細部82B,84B,86Bの最小幅Dがより小さい方が断線しやすくなり、効果(検出感度)が高くなる。一方、幅細部82B,84B,86Bの最小幅Dをより小さくすると、検知用電気配線82,84,86抵抗値が高くなるために幅細部82B,84B,86Bをより厚くして、抵抗値が適正範囲に収まるようにしなくてはならない。
【0076】
一方、幅細部82B,84B,86Bの最小幅Dを小さくしすぎると、製造ばらつきにより製造時に断線してしまう可能性がある。インクジェット方式を用いて検知用電気配線82,84,86を形成する場合は、液滴量のばらつき(ドットサイズのばらつき)、吐出方向のばらつき(ドット位置のばらつき)により、ドットが線としてつながらなくなる恐れがある。
【0077】
つまり、幅細部82B,84B,86Bの最小幅Dは、極端に小さくすることができないので、DとDとの関係が、0.8×D>D>0.5×Dとなるように、幅広部82A,84A、86A及び幅細部82B,84B,86Bを形成するとよい。
【0078】
他の部分よりも幅が細い幅細部82B,84B,86Bは、断線や変形が生じやすくなるので、ノズルプレートの割れや変形の検知感度を向上させることができる。幅細部82B,84B,86Bは一か所でもよいし、複数か所でもよい。割れや変形が生じやすい位置が予め把握されている場合は、割れや変形が生じやすい位置に幅細部82B,84B,86Bを形成するとよい。
【0079】
例えば、幅細部82B,84B,86Bを形成する位置として、図7(a),(b)に図示した共通流路69の位置が挙げられる。
【0080】
(厚み)
次に、検知用電気配線80(82,84,86)の厚みについて詳述する。複数の検知用電気配線80を備える態様では、各検知用電気配線80の抵抗値が均一であることが好ましい。一方、各検知用電気配線80の抵抗値は、数パーセント程度のばらつきが発生しうる。
【0081】
検知用電気配線80の抵抗値のばらつき(誤差)は、検知の精度に影響を与えるので、抵抗値のばらつきは可能な限り抑制されることが好ましい。したがって、同一のノズルプレートに形成される検知用電気配線80の抵抗値を測定し、所定のばらつきの範囲に収まらないものがあるときは厚みを調整して、抵抗値が所定のばらつきの範囲に収まるようにすることができる。
【0082】
例えば、抵抗値が所定の範囲を超える場合は、めっき処理等により厚みを厚くすればよい。一方、抵抗値が所定の範囲未満の場合は、研磨等により厚みを薄くすればよい。幅細部82B,84B,86Bの形状や数によって抵抗値を調整することも可能である。
【0083】
〔検知用電気配線の形成手順の説明〕
図9及び図10は、検知用電気配線の形成手順を示す説明図である。図9は、ノズルプレート16が流路プレート24に接合された後に、検知用電気配線20,22を形成するときの形成手順である。
【0084】
同図に示すように、ノズルプレート16(図3(a)参照)に流路プレート24が接合されると(ステップS1)、ノズルプレート16のインク吐出面16Aに絶縁層32(図5(a)参照)が形成される(ステップS2)。絶縁層32には、例えば、二酸化シリコン(SiO)が適用可能である。なお、ノズルプレート16が金属材料でない場合は、ステップS12は省略可能である。
【0085】
次に、絶縁層32(絶縁層32が形成されない場合はインク吐出面16A)に、検知用電気配線20,22となる金属層が形成される(ステップS3)。金属層の形成手法には、薄膜成膜技術(ゾルゲル法、スパッタ法など)が適用される。
【0086】
金属層が形成されると、該金属層にパターンニングがされる(ステップS4)。金属層のパターンニングは、金属層の全面にフォトレジストを塗布する工程と、フォトレジストを露光、現像してフォトレジストをパターンニングする工程と、パターンニングされたレジストをマスクとしてエッチング処理が施されるエッチング処理工程と、を含む態様がある。
【0087】
なお、ノズル開口18が既に空けられている場合にはウエットプロセスを適用することが困難なので、ドライフィルムレジストを用いるとよい。
【0088】
金属層のパターンニング工程(ステップS4)がされ、検知用電気配線20,22が形成されると、検知用電気配線20,22の抵抗値が測定される(ステップS5、検査工程)。検査工程において、検知用電気配線20,22の抵抗値が基準範囲を超えている場合は、めっき処理により検知用電気配線20,22を成長させて厚みを大きくし、検知用電気配線20,22の抵抗値が基準範囲内に収まるようにする。
【0089】
その後、検知用電気配線20,22が絶縁層30(図4参照)により被覆され(ステップS6)、引出配線が接続される(ステップS7)。なお、金属層形成工程(ステップS3)及びパターンニング工程(ステップS4)を統合して、インクジェット方式により検知用電気配線20,22を形成することも可能である。
【0090】
インクジェット方式による検知用電気配線20,22の形成では、複数回の重ね打ち(パターンの積層)により所望の厚みを得ることができる。また、検査工程(ステップS5)における抵抗値の調整にもインクジェット方式による重ね打ちを適用することができる。
【0091】
検知用電気配線20,22の他の形成方法として、リフトオフを適用してもよい。リフトオフでは、絶縁層形成後にフォトレジストが塗布され、フォトレジストがパターニングされ、その後金属膜が成膜され、フォトレジストが除去されると同時に、フォトレジスト上の金属膜が除去され、検知用電気配線20,22が形成される。
【0092】
図10は、ノズルプレート16が流路プレート24に接合される前に、ノズルプレート16単体で検知用電気配線20,22が形成される場合の形成手順を示している。なお、図10では、ノズルプレートの裏面(インク吐出面16Aと反対側の面)16Bに検知用電気配線20,22が形成される場合を示しているが、インク吐出面16Aに検知用電気配線20,22が形成される場合には、図10の「裏面16B」を「インク吐出面16A」に読み替えればよい。
【0093】
また、図10において図9に図示した工程と同一工程には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0094】
図10に示す検知用電気配線20,22の形成手順では、ノズルプレート16の裏面16Bに絶縁層32(図5(a)参照)が形成される(ステップS2’)、その後、金属層形成工程(ステップS3)、パターンニング工程(ステップS4)、検査工程(ステップS5)、絶縁層形成工程(ステップS6)を経て、裏面16Bに検知用電気配線20,22が形成されたノズルプレート16が作製される。
【0095】
次に、検知用電気配線20,22が形成されたノズルプレート16に流路プレート24が接合され(ノズルプレート接合工程、ステップS1)、引出配線が接合される(引出配線工程、ステップS7)。
【0096】
なお、ノズルプレート接合工程(ステップS1)と引出配線接合工程(ステップS74)とを入れ替えて、引出配線が接合されたノズルプレート16を流路プレート24に接合するように構成してもよい。
【0097】
ノズルプレート16と流路プレート24とを接合させる前に、ノズルプレート16に検知用電気配線20,22を形成する場合には、インクジェットヘッドの内部流路等にフォトレジストなどが入り込むことがないので、ウエットプロセスを用いて検知用電気配線20,22を容易に形成することが可能である。
【0098】
なお、図9及び図10には図示を省略したが、インク吐出面16Aに撥液膜を形成する工程(撥液膜形成工程)が含まれる。ノズルプレート接合工程における処理温度が、検知用電気配線20,22の耐熱温度を超える場合には、図9に図示した手順が適用される。
【0099】
〔引出配線の説明〕
次に、検知用電気配線から引き出される引出配線について説明する。図11(a)から(c)は、検知用電気配線20,22から引き出される引出配線90の形成手順を示す説明図であり、ワイヤボンディングにより引出配線90が形成される態様を模式的に図示している。
【0100】
図11(a)に示すように、ノズルプレート16のインク吐出面16A(裏面16B)に形成される検知用電気配線20,22の両端部には、取出電極92が形成される。取出電極92は、ノズルプレート16の端部に形成される。次に、取出電極92と引出配線90が電気的に接合される。この接合には、はんだや導電性接着剤が適用される。
【0101】
また、取出電極92に代わりコネクタ(例えば、レセプタクル)を搭載し、引出電極側に嵌合するコネクタ(例えば、プラグ)を取り付けておき、これらを嵌合させて検知用電気配線20,22と引出配線90とを接続する形態も可能である。
【0102】
なお、取出電極92が形成される部分には、図4に示す絶縁層30や不図示の撥液膜は形成されない。
【0103】
図11(b)に示すように、引出配線90と取出電極92が接合されると、接合部分(取出電極92)の近傍は、シリコン樹脂やエポキシ樹脂などの被覆部材94により被覆され、被覆部材94を加熱により硬化させる。
【0104】
さらに、図11(c)に示すように、被覆部材94に金属性(もしくは、エポキシなどの樹脂性)のカバー96が取り付けられる。図11(c)に示すカバー96を取り付けることで、インク吐出面16Aがワイピングされる際に、被覆部材94の磨耗、削れ、剥離が防止される。
【0105】
図12は、図11(a)から(c)に示す引出配線の形成手順の他の態様を示す説明図であり、引出配線としてフレキシブル基板91が適用される。フレキシブル基板91は、基材(樹脂層)91Aに配線パターン(配線層)91Bが形成され構造を有し、配線パターン91Bは不図示の絶縁層により被覆されている。
【0106】
図12(a)に示すノズルプレート16’は、端部の角が面取りされた(斜めにカットされた)傾斜部17が形成されており、この傾斜面に取出電極92が形成されている。フレキシブル基板91の端部は、ノズルプレート16’の傾斜部17に対応する傾斜形状とされ、該傾斜形状に配線パターン91Bの端部が露出している。
【0107】
ノズルプレート16’の傾斜部17にフレキシブル基板91の傾斜形状がはめ合わされ、ノズルプレート16’の取出電極92とフレキシブル基板91の配線パターン91Bが位置合わせをされ、ノズルプレート16’にフレキシブル基板91が接合される。フレキシブル基板91は、支持部材95により裏側面(インク吐出面16A側に露出しない面)を支持される。支持部材95には、樹脂材料を適用することができる。
【0108】
図12(a)に示す態様によれば、ノズルプレート16’にフレキシブル基板91を接合した状態で、ノズルプレート16’のインク吐出面16A’からフレキシブル基板91が出張ることがない。
【0109】
また、図12(b)に図示するように、フレキシブル基板91を保護するカバー96を取り付けることで、インク吐出面16Aがワイピングされる際のフレキシブル基板91の磨耗、削れ、剥離が防止される。
【0110】
図13(a),(b)は、引出配線90、フレキシブル基板91の引出方向を模式的に図示した説明図である。図13(a)は、複数のヘッドユニット12が一列につなぎ合わせられたインクジェットヘッド10における引出配線90(フレキシブル基板91)の引出方向を示している。
【0111】
図13(a)に示すインクジェットヘッド10は、隣接するヘッドユニット12間の隙間は数百マイクロメートルであり、ここから引出配線90(フレキシブル基板91)を引き出すことができない。したがって、各ヘッドユニット12(インクジェットヘッド10)の短手方向の両端から引出配線90(フレキシブル基板91)が引き出される。
【0112】
かかる態様によれば、引出配線90(フレキシブル基板91)に機械的なストレスをかけることなく、引出配線90(フレキシブル基板91)を接合することができる。
【0113】
図13(b)に示す、複数のヘッドユニット12が二列の千鳥配置されたインクジェットヘッド10’では、各ヘッドユニット12(インクジェットヘッド10’)の長手方向の両端から引出配線90(フレキシブル基板91)を引き出すことも可能である。
【0114】
かかる態様によれば、ヘッドユニット12間の隙間の有効利用が可能となる。
【0115】
〔インクジェットヘッドの立体構造例〕
図14(a),(b)は、インクジェットヘッド10の立体構造の一例を示す断面図であり、図14(a)は圧電方式が適用される例であり、図14(b)はサーマル方式が適用される例である。なお、図14(a),(b)でもインク吐出方向が上向きに図示されている。
【0116】
図14(a)に示す圧電方式は、圧力室27の一壁面(天井面)を構成する振動板29の圧力室27に対応する位置に圧電素子31が設けられている。圧電素子31の不図示の個別電極と共通電極との間に駆動電圧が印加されると、圧電素子31がたわみ変形して圧力室27を収縮させる。
【0117】
そうすると、ノズル開口18から圧力室27の体積減少分に対応する体積のインクが吐出される。圧電素子31をたわみ変形した状態から元の状態に復帰させると、不図示の供給口を介して共通流路69(図7(a),(b)参照)から圧力室27へインクが充填される。
【0118】
図14(b)に示すサーマル方式は、ノズル26と連通する液室27’の内部にヒータ31’が設けられる。ヒータ31’を加熱して膜沸騰現象を発生させると、液室27’内のインクがノズル開口18から吐出される。なお、インクの吐出方式は圧電方式及びサーマル方式に限定されず、他の方式を適用することができる。
【0119】
なお、図14(a)に図示したインクジェットヘッド10、及び図4(b)に図示したインクジェットヘッド10’において、ノズル26が省略される態様も可能である。
【0120】
なお、図8から図11を用いて説明した検知用電気配線20,22の形状、図12,13を用いて説明した引出配線、図14を用いて説明したインクジェットヘッドの立体構造は、第1から第3実施形態のいずれにも適用可能である。
【0121】
〔装置構成例〕
次に、先に説明したインクジェットヘッド10(10’,40,60)を備えたインクジェット記録装置100について説明する。
【0122】
(全体構成)
図15は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置(液体吐出装置)の概略構成を示す全体構成図である。同図に示すインクジェット記録装置100は、記録媒体114を圧胴の外周面に保持して搬送する圧胴搬送方式が適用される。
【0123】
また、記録媒体114にインクを吐出させるインクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yは、ノズル面が圧胴(描画胴144)の外周面の法線に対して直交するように、水平面に対して斜めに傾けられて配置される。インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yには、先に説明したインクジェットヘッド10(10’,40,60)が適用される。
【0124】
図15に示すインクジェット記録装置100は、画像形成前の記録媒体114が収納される記録媒体収納部120と、記録媒体収納部120から送り出された記録媒体114に処理液を塗布する処理液塗布部130と、処理液が塗布された記録媒体114にカラーインクを吐出させて、所望のカラー画像を形成する描画部140と、カラー画像が形成された記録媒体114を乾燥させる乾燥処理部150と、乾燥処理後の記録媒体114に対して定着処理を施す定着処理部160と、定着処理後の記録媒体114を排出させる排出部170と、を備えている。
【0125】
給紙トレイ122を介して渡し胴132に受け渡された記録媒体114は、処理液胴134のグリッパー180A,180Bに先端部を挟持され、処理液胴134に支持されて、処理液胴134の回転に従って処理液胴134の外周面に沿って搬送される。
【0126】
処理液胴134により回転搬送される記録媒体114は、処理液胴134の外周面と対向する位置に配置される処理液塗布装置136の処理領域に達すると、画像が形成される面に処理液を塗布される。処理液塗布装置136により塗布される処理液は、インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yから吐出されるカラーインクと反応して、カラーインクに含まれる着色剤を凝集又は不溶化させる機能を有している。
【0127】
処理液が塗布された記録媒体114は、渡し胴142を介して描画胴144へ受け渡され、描画胴144の外周面に保持されて、描画胴144の外周面に沿って回転搬送される。
【0128】
インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yの記録媒体搬送方向上流側の直前には用紙押さえローラ146が配置されており、インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yの直下に進入する直前に用紙押さえローラ146により記録媒体114を描画胴144の外周面へ密着させるように構成される。
【0129】
描画胴144によって回転搬送される記録媒体114は、インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yからカラーインクが吐出され、処理液が塗布された画像形成面にカラー画像が形成される。
【0130】
インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yは、図1や図13に図示したように、複数のヘッドユニット12がインクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yの長手方向に沿って一列につなぎ合わせられた構造を有している。
【0131】
カラー画像が形成された記録媒体114は、渡し胴152を介して乾燥胴154へ受け渡され、乾燥胴154の外周面に支持されて、乾燥胴154の回転に従って乾燥胴154の外周面に沿って回転搬送される。
【0132】
乾燥胴154により回転搬送される記録媒体114は、乾燥処理装置156から乾燥処理が施される。乾燥処理には、ヒータによる加熱、ファンによる乾燥風(加熱風)の吹きつけ、又はこれらの組み合わせが適用される。
【0133】
乾燥処理が施された記録媒体114は、渡し胴162を介して定着胴164へ受け渡される。定着胴164に受け渡された記録媒体114は、乾燥胴154の外周面に保持されて、乾燥胴154の回転に従って乾燥胴154の外周面に沿って回転搬送される。
【0134】
乾燥胴154により回転搬送される記録媒体114上に形成された画像は、ヒータ166により加熱処理が施されるとともに、定着ローラ168により加圧処理が施される。定着ローラ168の記録媒体搬送方向下流側に設けられるインラインセンサ182は、加熱及び加圧による定着処理が施された記録媒体114(画像)を撮像する手段であり、インラインセンサ182の撮像結果に基づいて、インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yの吐出異常が判断される。
【0135】
インラインセンサ182による撮像領域を通過した記録媒体114は、排出部170へ送られる。排出部170は、張架ローラ172A,172Bに巻き掛けられたチェーン174により記録媒体114をストッカー176へ搬送するように構成されている。
【0136】
(印字部の構成)
描画部140に具備されるインクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yは、記録媒体114の全幅を超える長さにわたって複数のノズルが配置されたフルライン型のインクジェットヘッドである。また、インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yは、複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせた構造を有している(図1、13参照)。
【0137】
図15に示すインクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yは、記録媒体搬送方向の上流側からこの順番で配置されている。フルライン型のインクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yと記録媒体114とを相対的に一回だけ移動させるシングルパス方式により、記録媒体114の全域にわたって記録画像を記録することができる。
【0138】
なお、描画部140は上述した形態に限定されない。例えば、LC(ライトシアン)やLM(ライトマゼンタ)に対応するインクジェットヘッド106を具備してもよい。また、インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yの配置順も適宜変更可能である。
【0139】
インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yは、図14(a)に図示した圧電方式を適用してもよいし、図14(b)に図示したサーマル方式を適用してもよい。
【0140】
(制御系の構成)
図16は、インクジェット記録装置100の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置100は、通信インターフェース270、システム制御部272、搬送制御部274、画像処理部276、ヘッド駆動部278を備えるとともに、画像メモリ280、ROM282を備えている。
【0141】
また、インクジェットヘッド148(図15に図示したインクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yをまとめて、符号148を付して図示)のノズルプレート16(図2参照)に形成された検知用電気配線20,22の抵抗値を測定する抵抗値測定回路293と、検知用電気配線20,22の基準抵抗値のデータが記憶される抵抗値記憶部294と、抵抗値測定回路293により測定された検知用電気配線20,22の抵抗値のデータに基づいて、ノズルプレート16の機械的な異常の有無を判断する異常判断部295と、ノズルプレート16に機械的な異常が発生した旨を報知する異常報知部296と、を備えている。
【0142】
通信インターフェース270は、ホストコンピュータ284から送られてくるラスター画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース270は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース270は、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0143】
システム制御部272は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能し、さらに、画像メモリ280及びROM282のメモリコントローラとして機能する。
【0144】
すなわち、システム制御部272は、通信インターフェース270、搬送制御部274等の各部を制御し、ホストコンピュータ284との間の通信制御、画像メモリ280及びROM282の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
【0145】
ホストコンピュータ284から送出された画像データは通信インターフェース270を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、画像処理部276によって所定の画像処理が施される。
【0146】
画像処理部276は、画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッド駆動部278に供給する制御部である。
【0147】
画像処理部276において所要の信号処理が施されると、該印字データ(ハーフトーン画像データ)に基づいて、ヘッド駆動部278を介してインクジェットヘッド148の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。なお、ヘッド駆動部278は、ヘッドユニット12ごとに複数のブロックから構成されていてもよい。
【0148】
これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図16に示すヘッド駆動部278には、インクジェットヘッド148の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0149】
搬送制御部274は、画像処理部276により生成された印字データに基づいて記録媒体114(図15参照)の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。図16における搬送駆動部186は、記録媒体114を搬送する圧胴134,144,154,164及び渡し胴132,142,152,162を駆動するモータが含まれており、搬送制御部274は該モータのドライバーとして機能している。
【0150】
画像メモリ(一時記憶メモリ)280は、通信インターフェース270を介して入力された画像データを一旦格納する一時記憶手段としての機能や、ROM282に記憶されている各種プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域(例えば、画像処理部276の作業領域)としての機能を有している。画像メモリ280には、逐次読み書きが可能な揮発性メモリ(RAM)が用いられる。
【0151】
ROM282は、システム制御部272のCPUが実行するプログラムや、装置各部の制御に必要な各種データ、制御パラメータなどが格納されており、システム制御部272を通じてデータの読み書きが行われる。ROM282は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、着脱可能な記憶媒体を用いてもよい。
【0152】
メンテナンス処理部285は、インクジェットヘッド148のメンテナンス処理を実行するブロックである。インクジェットヘッド148のメンテナンス処理のとして、インク吐出面16A(図2参照)の洗浄処理、圧電素子31(図14(a)参照)やヒータ31’(図14(b)参照)を動作させて、ノズル26(図2参照)からインクを排出させるパージ(予備吐出)処理、キャップ(不図示)をインク吐出面16Aへ密着させて、ノズル26からインクを吸引して排出させる吸引処理が挙げられる。
【0153】
メンテナンス処理が開始されると、システム制御部272から送られる指令信号によって、インクジェットヘッド148を描画胴144(図15参照)の外周面に対向する描画位置からメンテナンス位置へ移動させ、インクジェットヘッド148に対して上記の処理が施される。
【0154】
インクジェットヘッド148に対する上記処理が終了すると、インクジェットヘッド148をメンテナンス位置から描画位置へ移動させる。インクジェットヘッド148のメンテナンスは、ジョブ間のインターバル中やジョブ開始時などに定期的に実行してもよいし、不図示のユーザインターフェイスを用いてオペレータによる入力を受けて実行してもよい。
【0155】
バルブ制御部287は、システム制御部272から送られる指令信号に基づいて、インク等の液体流路や真空流路などの設けられるバルブ288の開閉を制御する。なお、図16のバルブ288は、インクジェット記録装置100に具備される複数のバルブがまとめて図示されている。
【0156】
ポンプ制御部289は、システム制御部272から送られる指令信号に基づいて、インク等の液体流路や真空流路などの設けられるポンプ291の動作(オンオフ、流量)を制御する。なお、図16のポンプ291は、インクジェット記録装置100に具備される複数のポンプがまとめて図示されている。
【0157】
パラメータ記憶部290は、インクジェット記録装置100の動作に必要な各種制御パラメータが記憶されている。システム制御部272は、制御に必要なパラメータを適宜読み出すとともに、必要に応じて各種パラメータの更新(書換)を実行する。パラメータ記憶部290は、検知用電気配線20,22の基準抵抗値が記憶されている。
【0158】
プログラム格納部292は、インクジェット記録装置100を動作させるための制御プログラムが格納されている記憶手段である。システム制御部272(又は装置各部)は、装置各部の制御を実行する際にプログラム格納部292から必要な制御プログラムが読み出され、該制御プログラムは適宜実行される。
【0159】
抵抗値測定回路293は、インクジェットヘッド148のノズルプレート16(図2参照)に形成された検知用電気配線20,22の抵抗値を検知する手段である。すなわち、抵抗値測定回路293の入力部は、引出配線90(図11参照)又はフレキシブル基板91(図12参照)を介して検知用電気配線20,22と電気的に接続される。
【0160】
抵抗値測定回路293は、所定のサンプリング周期に応じて、ノズルプレート16に形成される複数の検知用電気配線20,22の抵抗値を個別に測定する。抵抗値測定回路293によるノズルプレート16に形成された検知用電気配線20,22の抵抗値の測定は、インクジェットヘッドの稼動中(描画中)、停止中(待機中、メンテナンス中)、装置の稼動開始時、及び終了時など、常時実行される。
【0161】
測定結果された検知用電気配線20,22ごとの抵抗値のデータは、抵抗値記憶部294へ格納される。複数のヘッドユニット12を備える態様では、複数のヘッドユニット12の中のどのヘッドユニット12(ノズルプレート16)に異常が発生しているかが特定される。
【0162】
なお、パラメータ記憶部290に記憶されている検知用電気配線20,22の基準抵抗値を抵抗値測定回路293よって測定された各検知用電気配線20,22の抵抗値に定期的に書き換えるように構成してもよい。
【0163】
異常判断部295は、抵抗値記憶部294に格納されている各検知用電気配線20,22の抵抗値の測定値と、パラメータ記憶部290に記憶されている検知用電気配線20,22の基準抵抗値と比較し、各検知用電気配線20,22の抵抗値の測定値が検知用電気配線20,22の基準抵抗値未満の場合は、ノズルプレート16の割れや変形などの機械的な異常が発生していると判断し、その判断結果をシステム制御部272へ送出する。
【0164】
異常判断部295によって、割れや変形などの機械的な異常が発生しているノズルプレート16が発見されると、システム制御部272は異常が発生しているノズルプレート16の情報を異常報知部296へ送出する。
【0165】
また、第2実施形態(図6)に示す態様では、ノズルプレート42のどの位置に異常が発生しているかが特定され、異常が発生している位置の情報が合わせてシステム制御部272へ送られる。
【0166】
異常報知部296は、システム制御部272からノズルプレート16の割れや変形などの機械的な異常が発生している旨の情報を取得すると、その旨を報知する。異常報知部296による報知の形態には、アラーム音、音声、文字、ランプの点灯(点滅)などが挙げられる。
【0167】
例えば、モニタ装置を備える構成では、複数のヘッドユニット12のいずれに異常が発生しているかの情報を図形や画像により表示することができる。
【0168】
異常が発生しているノズルプレート16が発見されると、システム制御部272は以下の処理を実行するために、装置各部へ指令信号を送出する。すなわち、システム制御部272は、ノズルプレート16の機械的な異常が発生した場合に、装置各部の二次的な災害を防止するために、装置各部に特定のシーケンスを実行させる異常処理手段として機能する。
【0169】
(1)インクジェットヘッド148を上下方向に移動させる上下移動部を動作させて、インクジェットヘッド148を上方へ移動させて、記録媒体から離す。
【0170】
(2)ヘッド駆動部278へ指令信号を送出して、異常と判断されたノズルプレート16を有するヘッドユニット12に対する駆動信号を停止させ、当該ヘッドユニット12からの異常吐出の発生を防止する。
【0171】
(3)異常と判断されたノズルプレート16を有するヘッドユニット12の電源をオフにし、駆動回路基板(ヘッド駆動部278等が搭載される基板)への影響を防止する。
【0172】
(4)バルブ制御部287へ指令信号を送出して、異常と判断されたノズルプレート16を有するヘッドユニット12へのインク供給を遮断し、インクの漏れを防止する。
【0173】
(5)メンテナンス処理部285へ指令信号を送出して、インクジェットヘッド148のメンテナンス中であれば、異常と判断されたノズルプレート16を有するヘッドユニット12のメンテナンス処理を実行せず、他のヘッドユニット12へのダメージを防止する。
【0174】
すなわち、ノズルプレート16の割れによる破片、ゴミなどがノズルプレート16に付着した状態でインク吐出面16Aのワイピングがされると、その破片等がワイピング部材に付着し、他のヘッドユニット12のインク吐出面16Aをワイピングしたときにキズを付けてしまうおそれがある。
【0175】
このように、ノズルプレート16の異常が発見されると、ノズルプレート16の異常に起因するトラブル(インク漏れ、駆動回路の故障等)を未然に回避すべく、装置各部へ所定の処理を実行するため指令信号が送出される。
【0176】
図17は、上述したノズルプレート16の異常検知方法の制御の流れを示すフローチャートである。先に説明したように、少なくとも装置が稼動している期間は、抵抗値測定回路293によってノズルプレート16に形成された検知用電気配線20,22の抵抗値が所定のサンプリング周期に基づいて測定される(ステップS10)。
【0177】
各検知用電気配線20,22の抵抗値が基準抵抗値未満であれば(NO判定)、検知用電気配線20,22の測定が継続される(ステップS10)。一方、ステップS12において、各検知用電気配線20,22の抵抗値が基準抵抗値未満であると判断されると(YES判定)、異常報知部296によりアラームが出され(ステップS14)、異常が発生しているノズルプレート16を有するヘッドユニット12の電源がオフにされる(ステップS16)。
【0178】
その後、ステップS18に進み、描画中(インクジェットヘッド148の稼働中)であるか否かが判断され、描画中であれば(YES判定)、記録媒体(用紙)の搬送が停止され(ステップS20)、該当のヘッドユニット12へのインク供給が停止される(ステップS22)。
【0179】
その後、インクジェットヘッド148を描画位置からメンテナンス位置へ移動させ(ステップS24)、インクジェットヘッド148メンテナンスを実行するか否かが判断される(ステップS26)。ステップS26において、メンテナンスを実行すると判断されると(YES判定)、異常と判断されたノズルプレート16を有するヘッドユニット12以外のヘッドユニット12のメンテナンス処理が実行され(ステップS28)、インクジェットヘッド148を待機状態へ遷移させる(ステップS30)。
【0180】
一方、ステップS26において、インクジェットヘッド148のメンテナンスを実行しないと判断されると(NO判定)、インクジェットヘッド148を待機状態へ遷移させる(ステップS30)。この状態で、異常と判断されたノズルプレート16を有するヘッドユニット12以外のヘッドユニット12の交換を行うことが可能となる。
【0181】
ステップS18において、描画中でないと判断されると(NO判定)、異常と判断されたノズルプレート16を有するヘッドユニット12へインクが供給されているか否かが判断される(ステップS32)。インクが供給されている場合は(YES判定)、ステップS22に進み、インク供給が停止され、ステップS24からステップS30の処理が実行される。
【0182】
一方、インク供給がされていない場合は(NO判定)、ステップS34に進み、インクジェットヘッド148の位置が確認され、描画位置であるか、メンテナンス位置であるかが判断される(ステップS36)。ステップS36において、インクジェットヘッド148が描画位置であると判断されると(NO判定)、ステップS24に進み、インクジェットヘッド148をメンテナンス位置へ移動させ、ステップS26からステップS30の処理が実行される。
【0183】
ステップS36において、インクジェットヘッド148の位置がメンテナンス位置であると判断されると(YES判定)、ステップS26に進み、ステップS26からステップS30の処理が実行される。
【0184】
かかるノズルプレートの異常検知方法を実行させるプログラムは、図16のプログラム格納部292に格納されている。システム制御部272は、プログラム格納部292から当該実行プログラムを適宜読み出して、上記したノズルプレートの異常検知方法を実行する。
【0185】
上記の如く構成されたインクジェット記録装置100によれば、インクジェットヘッド148に具備されるヘッドユニット12のノズルプレート16に検知用電気配線20,22が形成され、検知用電気配線20,22の抵抗値の変化に基づいて、ノズルプレート16の割れや変形などの機械的な異常が発生しているか否かが判断される。異常が発生しているノズルプレート16が発見されると、その旨が報知されるとともに、インクジェットヘッド148の退避、インク供給の停止、駆動電圧印加停止等の処理が実行され、ノズルプレート16の異常に起因する装置各部への影響を最小限に食い止められる。
【0186】
また、装置を速やかに停止させて、異常が発生しているノズルプレート16を有するヘッドユニット12を交換することができる。
【0187】
本装置構成例では、記録媒体を描画胴144の外周面に保持して搬送する圧胴搬送方式を例示したが、本発明は記録媒体を直線状に搬送する形態への適用も可能である。なお、圧胴搬送方式では、記録媒体の端部の浮きによるインクジェットヘッド148(インク吐出面16A)への衝突が起こりやすく、インク吐出面16Aへ記録媒体114が衝突すると、ノズルプレート16の機械的な異常が発生しやすいといえるので、特に、圧胴搬送方式が適用される構成に対して大きな効果を発揮しうる。
【0188】
本例では、主として第1実施形態に係るインクジェットヘッド10(10’)と同様の構成を具備するインクジェット記録装置100について説明したが、第2実施形態に係るインクジェットヘッド40や、第3実施形態に係るインクジェットヘッド60を適用することも可能である。
【0189】
また、第1〜第3実施形態に係るインクジェットヘッド10,10’、40,60を適宜組み合わせた態様も好ましい。
【0190】
〔第4実施形態〕
次に、本発明第4実施形態について説明する。図18(a)は、本発明の第4実施形態に係るインクジェットヘッドの立体構造を示す断面図であり、図18(b)は該インクジェットヘッドの1ノズル分の平面図透視図である。
【0191】
図18(a),(b)に示すインクジェットヘッド300は、ノズルプレート316の割れや変形等の機械的な異常を検知するための手段として、圧電素子320が具備されている。
【0192】
圧電素子320は、ノズルプレート316と流路プレート324との間に設けられており、ノズルプレート316側の面に第1の電極320Aが形成され、流路プレート324側の面に第2の電極320Bが形成されている。第1の電極320A及び第2の電極は、ノズルプレート316に形成された配線を介して、ノズルプレート316の端部に形成される取出電極(不図示)と電気的に接続される。
【0193】
圧電素子320、第1の電極320A、第2の電極320Bがノズル326内のインクに接触すると性能が劣化してしまうので、樹脂等の保護部材328により覆われている。なお、圧電素子320を接着する接着剤により被覆して、圧電素子320を保護することも可能である。
【0194】
ノズルプレート316に衝撃が与えられると、圧電素子320の第1の電極320Aと第2の電極320Bとの間に圧電素子320に与えられた力に比例した電気信号が発生する。すなわち、圧電素子320の電極間に発生した電気信号を常時監視することで、該電気信号の変動によってノズルプレート316の機械的な異常が発生したか否かを判断することができる。
【0195】
なお、ノズルプレート316の機械的な異常を検知する手段として圧電素子320を備える態様では、図16の抵抗値測定回路293に代わり、圧電素子320の発生電圧を測定する電圧測定回路を備え、抵抗値記憶部294に代わり圧電素子の基準電圧を記憶しておく基準電圧記憶部を備え、異常判断部295は電圧測定値と基準電圧値を比較して、電圧測定値が基準電圧値以上の場合にノズルプレート316に異常が発生したと判断することができる。
【0196】
図18(a),(b)には、ノズルプレート316のインク吐出面316Aと反対側の面316Bに圧電素子320が配設される態様を例示したが、圧電素子320はインク吐出面316Aに配設されてもよい。圧電素子320がインク吐出面側に配設される場合には、圧電素子320(電極)が露出しないように、保護膜により圧電素子320が被覆される。
【0197】
圧電素子320は、ノズルプレート316の全面に設けられていてもよいし、図2等に示す検知用電気配線20,22のようにパターンニングされ、ノズルプレート316の一部に設けられていてもよい。
【0198】
本例では、ノズルプレート316に与えられる衝撃を電気信号に変換する機械‐電気変換素子として圧電素子320を例示したが、各種振動センサ、歪センサを適用することも可能である。
【0199】
〔応用例〕
図19は、本発明の第4実施形態の応用例の説明図である。図18(a),(b)に示すように、ノズルプレート316のインク吐出面316Aと反対側の面316Bに圧電素子320が設けられる態様では、ノズルプレート316と流路プレート324とを接合する際の加重を圧電素子320により測定することができる。
【0200】
ノズルプレート316と流路プレート324とを接合する際の加重を測定しながら、ノズルプレート316と流路プレート324との加重が均一になるように補正することで、ノズルプレート316と流路プレート324との均一に接合させることができる。
【0201】
例えば、図19に示すように、圧電素子320の電極(不図示)に予め外部の測定器393を接続すると、外部の測定器393による測定値をモニタとして、ノズルプレート316と流路プレート324との接合時の加重を把握することができる。
【0202】
なお、本発明の適用範囲は、記録媒体上にカラー画像を形成するインクジェット記録装置に限定されない。例えば、樹脂粒子や金属粒子を含有する機能性液体により、所定のパターン(マスクパターン、配線パターン)を形成するパターン形成装置なと、インクジェットヘッドを備えた液体吐出装置に広く適用することが可能である。
【0203】
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0204】
(第1態様):液体を吐出させるためのノズル開口が形成されるノズルプレートと、少なくとも、前記ノズル開口と連通する流路が形成され、前記ノズルプレートの開口が前記流路に位置を合わせて接合される流路プレートと、を備え、前記ノズルプレートは、前記ノズルプレートの機械的な異常を検知するための検知素子が設けられる液体吐出ヘッド。
【0205】
第1態様によれば、ノズルプレートの割れや変形などの機械的な異常を検知することで、液体吐出ヘッドの動作停止などの必要な処理を行うことができ、ノズルプレートの機械的な変形による被害を最小限に食い止めることが可能となる。
【0206】
「ノズルプレートの機械的な異常」とは、ノズルプレートの割れ、欠け、歪み等のノズルプレートが受ける機械的な衝撃、応力によって起こる損傷である。
【0207】
検知素子はノズルプレートの全面に設けられていてもよいし、ノズルプレートの一部に設けられていてもよい。
【0208】
「流路」とは、ノズル開口と連通するノズル流路、ノズル流路と連通する圧力室など、液体が通過する構造が含まれる概念である。
【0209】
(第2態様):前記検知素子は、前記ノズルプレートの前記流路プレートと接合される第1の面に形成される電気配線、及び前記第1の面の反対側の第2の面に形成される電気配線の少なくともいずれか一方を含む態様が好ましい。
【0210】
かかる態様によれば、電気配線の抵抗値の変化に基づき、ノズルプレートの機械的な異常を把握することができる。
【0211】
(第3態様):前記第1の面に形成される電気配線の始端と終端とを結ぶ線分の方向と、前記第2の面に形成される電気配線の始端と終端とを結ぶ線分の方向と、は交差する態様が好ましい。
【0212】
かかる態様によれば、ノズルプレートの第1の面及び第2の面に別々に検知用の電気配線を形成し、さらに第1の面の電気配線と第2の面の電気配線とを交差する方向に形成することで、ノズルプレートの面方向について発生する機械的な異常を把握することができる。
【0213】
(第4態様):電気的絶縁性能を有し、前記第2の面に形成された電気配線を被覆する第1の絶縁層を備える態様が好ましい。
【0214】
かかる態様によれば、ノズルプレートに形成されたノズル開口から吐出される液体による電気配線の絶縁不良や腐食を防止することができる。
【0215】
(第5態様):前記ノズルプレートは導電性を有し、前記ノズルプレートと前記電気配線との間に電気的絶縁性能を有する第2の絶縁層を備える態様が好ましい。
【0216】
かかる態様によれば、ノズルプレートが導電性部材の場合や、ノズルプレートに他の電気配線が形成される場合にも、ノズルプレートや他の電気配線との電気的絶縁性能が確保される。
【0217】
(第6態様):前記流路プレートは、前記ノズルプレートのノズル開口と連通する液室及び前記液室と連通する流路を有し、前記電気配線は、前記流路の形成方向と交差する方向に沿って形成される態様が好ましい。
【0218】
かかる態様によれば、ノズルプレートの背面に流路が形成される場合には、ノズルプレートの流路に対応する位置に割れや変形が生じやく、割れや変形が生じやすい部分に検知用の電気配線を形成することで、ノズルプレートの割れや変形の検知精度を向上させることができる。
【0219】
(第7態様):前記電気配線は、最大幅となる部分を含む幅広部、及び前記幅広部の幅未満の幅を有する幅細部を具備する形状を有する態様が好ましい。
【0220】
かかる態様によれば、幅細部は変形や断線が生じやすいので、検知の感度を向上させることができる。
【0221】
(第8態様):前記流路プレートは、前記ノズルプレートのノズル開口と連通する液室及び前記液室と連通する流路を有し、前記電気配線は、前記流路の形成方向と交差する方向に沿って形成され前記電気配線は、最大幅となる部分を含む幅広部、及び前記幅広部の幅未満の幅を有する幅細部を具備する形状を有し、前記幅細部は、前記流路に対応する位置に形成される態様が好ましい。
【0222】
かかる態様によれば、ノズルプレートの割れ等が発生しやすい、背面に流路が形成されている位置に検知感度が高い幅細部を形成することで、より精度が高く、感度が高い検知が可能となる。
【0223】
(第9態様):前記検知素子は、前記ノズルプレートの前記流路プレートと接合される第1の面及び前記第1の面の反対側の第2の面の少なくともいずれか一方に形成される電歪素子を含む態様が好ましい。
【0224】
かかる態様によれば、ノズルプレートの機械的な異常に起因して圧電素子に機械的な変形が生じることで、電歪素子から電気信号が発生されるので、かかる電気信号に基づいて、ノズルプレートの機械的な異常が検知される。
【0225】
かかる態様における「電歪素子」の一例として、一方の面に第1の電極を備えるとともに、他方の面に第2の電極を備える圧電素子が挙げられる。
【0226】
(第10態様):前記ノズルプレートは、前記検知素子から得られた電気信号を伝送する引出配線が接合される電気信号取出部を備える態様が好ましい。
【0227】
かかる態様において、ノズルプレートには、検知素子と電気信号取出部と電気的に接続させる配線パターンが形成される。
【0228】
(第11態様):前記電気信号取出部は、前記ノズルプレートの端部の角部が面取りされた傾斜面に形成され、前記引出配線は、前記ノズルプレートとの接合部分に前記ノズルプレートの傾斜面に対応する形状を有する態様が好ましい。
【0229】
かかる態様によれば、ノズルプレートの引出配線が取り付けられる面から引き出し配線が出張らない。
【0230】
(第12態様):前記電気信号取出部を被覆するカバー部材を備える態様が好ましい。
【0231】
かかる態様によれば、ノズルプレートのワイピング等による電気信号取出部の破損は防止される。
【0232】
(第13態様):前記インクジェットヘッドは、長手方向について複数のヘッドユニットを一列につなぎ合わせた構造を有し、前記引出配線は、前記ヘッドユニットごとに前記インクジェットヘッドの短手方向の端部に接合される態様が好ましい。
【0233】
かかる態様によれば、隣接するヘッドユニットの間隔が狭く、引出配線を接合するスペースがない場合でも、引出配線に機械的なストレスかけることなく接合することが可能である。
【0234】
(第14態様):前記インクジェットヘッドは、長手方向について複数のヘッドユニット二列の千鳥配置させた構造を有し、前記引出配線は、前記ヘッドユニットごとに前記インクジェットヘッドの短手方向の端部に接合される態様が好ましい。
【0235】
かかる態様によれば、ヘッドユニット間の隙間の有効利用が可能である。
【0236】
(第15態様):前記ノズルプレートの材料は、シリコンである態様が好ましい。
【0237】
かかる態様によれば、シリコン製のノズルプレートは、応力や機械的な衝撃によって割れや欠けが発生しやすく、この割れや欠けを把握することができる。
【0238】
(第16態様):前記ノズルプレートの材料は、金属又は樹脂である態様が好ましい。
【0239】
かかる態様によれば、金属製のノズルプレートや樹脂製のノズルプレートは、応力や機械的な衝撃によって変形が発生しやすく、この変形を把握することができる。
【0240】
(第17態様):液体を吐出させるためのノズル開口が形成されるノズルプレート、及び少なくとも、前記ノズル開口と連通する流路が形成され、前記ノズルプレートのノズル開口が前記流路に位置を合わせて接合される流路プレートを具備し、前記ノズルプレートに前記ノズルプレートの機械的な異常を検知するための検知素子が設けられる液体吐出ヘッドと、前記検知素子から得られた情報に基づいて、前記ノズルプレートの機械的な異常の発生の有無を検知する検知手段と、を備えた液体吐出装置。
【0241】
液体吐出装置には、インクジェットヘッドからカラーインクを吐出させるインクジェット記録装置が含まれる。
【0242】
(第18態様):前記検知素子は、前記ノズルプレートの前記流路プレートと接合される第1の面に形成される電気配線、及び前記第1の面の反対側の第2の面に形成される電気配線の少なくともいずれか一方を含み、前記検知手段は、前記配線の抵抗値を測定する測定部と、前記測定部により得られた前記配線の抵抗値の変化に基づいて、前記ノズルプレートの機械的な異常が発生しているか否かを判断する判断部と、を備える態様が好ましい。
【0243】
かかる態様によれば、ノズルプレートに形成された電気配線の抵抗値に変化に基づいて、ノズルプレートの機械的な異常を検知することができる。
【0244】
かかる態様において、測定部の測定結果を記憶する記憶部を備える態様が好ましい。
【0245】
(第19態様):第3態様から第8態様及び第10態様から第16態様のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備える態様が好ましい。
【0246】
(第20態様):第9態様に記載の液体吐出ヘッドを備える態様が好ましい。
【0247】
(第21態様):前記検知素子は、前記ノズルプレートの前記流路プレートと接合される第1の面又は前記第1の面の反対側の第2の面に形成される圧電素子を含み、前記検知手段は、前記圧電素子から電気信号を取得する電気信号取得部と、前記電気信号取得部により得られた前記電気信号の変化に基づいて、前記ノズルプレートの機械的な異常が発生しているか否かを判断する判断部と、を備える態様が好ましい。
【0248】
(第22態様):前記検知手段は、前記液体吐出ヘッドの稼働中に前記検出素子から情報を取得して、前記ノズルプレートの機械的な異常の発生の有無を検知する態様が好ましい。
【0249】
かかる態様によれば、液体吐出ヘッドの稼働中に発生したノズルプレートの機械的な異常の有無を把握することができる。
【0250】
液体吐出ヘッドの稼働中とは、インクジェットヘッドに電源が投入されている状態であり、所定のジョブにおける液体吐出中、ジョブ間のインターバル(待機)中、メンテナンス中などが含まれる。
【0251】
(第23態様):前記検知手段によって前記ノズルプレートの機械的な異常が発生したと判断されたときに、その旨を報知する報知手段を備える態様が好ましい。
【0252】
かかる態様によれば、報知手段による報知によりノズルプレートに機械的な異常は発生したことを把握することが可能となる。
【0253】
(第24態様):前記検知手段は、前記ノズルプレートの機械的な異常が発生した位置を特定する位置特定部を備える態様が好ましい。
【0254】
かかる態様において、第3態様に係る液体吐出ヘッドを備えることが好ましい。
【0255】
(第25態様):前記検知手段によって前記ノズルプレートの機械的な異常が発生したと判断されたときに、装置各部に特定のシーケンスを実行させる異常処理手段を備える態様も好ましい。
【0256】
かかる態様によれば、ノズルプレートの機械的な異常の発生による、装置各部への二次的な災害が防止される。
【0257】
(第26態様):液体を吐出させるためのノズル開口が形成されるノズルプレート、及び少なくとも、前記ノズル開口と連通する流路が形成され、前記ノズルプレートが前記流路に位置を合わせて接合される流路プレートを具備した液体吐出ヘッドの前記ノズルプレートに設けられた検知素子から得られた情報に基づいて、前記ノズルプレートの機械的な異常の発生の有無を検知する液体吐出ヘッドの異常検知方法。
【符号の説明】
【0258】
10,10’,40,60,148,148M,148K,148C,148Y…インクジェットヘッド、12…ヘッドユニット、16,42,62,…ノズルプレート、18…ノズル、20,22,50,52,70…検知用電気配線、24,54…流路プレート、30,32…絶縁層、90…引出配線、91…フレキシブル基板、92…取出電極、94…被覆部材、96…カバー、100…インクジェット記録装置、272…システム制御部、278…ヘッド駆動部、290…パラメータ記憶部、292…プログラム格納部、293…抵抗値測定回路、294…抵抗値記憶部、295…異常判断部、296…異常報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出させるためのノズル開口が形成されるノズルプレートと、
少なくとも、前記ノズル開口と連通する流路が形成され、前記ノズルプレートの開口が前記流路に位置を合わせて接合される流路プレートと、
を備え、
前記ノズルプレートは、前記ノズルプレートの機械的な異常を検知するための検知素子が設けられることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記検知素子は、前記ノズルプレートの前記流路プレートと接合される第1の面に形成される電気配線、及び前記第1の面の反対側の第2の面に形成される電気配線の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1の面に形成される電気配線の始端と終端とを結ぶ線分の方向と、前記第2の面に形成される電気配線の始端と終端とを結ぶ線分の方向と、は交差することを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
電気的絶縁性能を有し、前記第2の面に形成された電気配線を被覆する第1の絶縁層を備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ノズルプレートは導電性を有し、
前記ノズルプレートと前記電気配線との間に電気的絶縁性能を有する第2の絶縁層を備えたことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記流路プレートは、前記ノズルプレートのノズル開口と連通する液室及び前記液室と連通する流路を有し、
前記電気配線は、前記流路の形成方向と交差する方向に沿って形成されることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記電気配線は、最大幅となる部分を含む幅広部、及び前記幅広部の幅未満の幅を有する幅細部を具備する形状を有することを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記流路プレートは、前記ノズルプレートのノズル開口と連通する液室及び前記液室と連通する流路を有し、
前記電気配線は、前記流路の形成方向と交差する方向に沿って形成され
前記電気配線は、最大幅となる部分を含む幅広部、及び前記幅広部の幅未満の幅を有する幅細部を具備する形状を有し、
前記幅細部は、前記流路に対応する位置に形成されることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記検知素子は、前記ノズルプレートの前記流路プレートと接合される第1の面及び前記第1の面の反対側の第2の面の少なくともいずれか一方に形成される電歪素子を含むことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記ノズルプレートは、前記検知素子から得られた電気信号を伝送する引出配線が接合される電気信号取出部を備えたことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記電気信号取出部は、前記ノズルプレートの端部の角部が面取りされた傾斜面に形成され、
前記引出配線は、前記ノズルプレートとの接合部分に前記ノズルプレートの傾斜面に対応する形状を有することを特徴とする請求項10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記電気信号取出部を被覆するカバー部材を備えたことを特徴とする請求項10又は11に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記インクジェットヘッドは、長手方向について複数のヘッドユニットを一列につなぎ合わせた構造を有し、
前記引出配線は、前記ヘッドユニットごとに前記インクジェットヘッドの短手方向の端部に接合されることを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記インクジェットヘッドは、長手方向について複数のヘッドユニット二列の千鳥配置させた構造を有し、
前記引出配線は、前記ヘッドユニットごとに前記インクジェットヘッドの長手方向の端部、又は短手方向の端部に接合されることを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
前記ノズルプレートの材料は、シリコンであることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項16】
前記ノズルプレートの材料は、金属又は樹脂であることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項17】
液体を吐出させるためのノズル開口が形成されるノズルプレート、及び少なくとも、前記ノズル開口と連通する流路が形成され、前記ノズルプレートのノズル開口が前記流路に位置を合わせて接合される流路プレートを具備し、前記ノズルプレートに前記ノズルプレートの機械的な異常を検知するための検知素子が設けられる液体吐出ヘッドと、
前記検知素子から得られた情報に基づいて、前記ノズルプレートの機械的な異常の発生の有無を検知する検知手段と、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項18】
前記検知素子は、前記ノズルプレートの前記流路プレートと接合される第1の面に形成される電気配線、及び前記第1の面の反対側の第2の面に形成される電気配線の少なくともいずれか一方を含み、
前記検知手段は、前記配線の抵抗値を測定する測定部と、
前記測定部により得られた前記配線の抵抗値の変化に基づいて、前記ノズルプレートの機械的な異常が発生しているか否かを判断する判断部と、
を備えたこと特徴とする請求項17に記載の液体吐出装置。
【請求項19】
請求項3から8及び請求項10から16のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする請求項17又は18に記載の液体吐出装置。
【請求項20】
請求項9に記載の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする請求項17に記載の液体吐出装置。
【請求項21】
前記検知素子は、前記ノズルプレートの前記流路プレートと接合される第1の面又は前記第1の面の反対側の第2の面に形成される圧電素子を含み、
前記検知手段は、前記圧電素子から電気信号を取得する電気信号取得部と、
前記電気信号取得部により得られた前記電気信号の変化に基づいて、前記ノズルプレートの機械的な異常が発生しているか否かを判断する判断部と、
を備えたこと特徴とする請求項17に記載の液体吐出装置。
【請求項22】
前記検知手段は、前記液体吐出ヘッドの稼働中に前記検出素子から情報を取得して、前記ノズルプレートの機械的な異常の発生の有無を検知することを特徴とする請求項17から21のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項23】
前記検知手段によって前記ノズルプレートの機械的な異常が発生したと判断されたときに、その旨を報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項17から22のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項24】
前記検知手段は、前記ノズルプレートの機械的な異常が発生した位置を特定する位置特定部を備えたことを特徴とする請求項17から23のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項25】
前記検知手段によって前記ノズルプレートの機械的な異常が発生したと判断されたときに、装置各部に特定のシーケンスを実行させる異常処理手段を備えたことを特徴とする請求項17から24のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項26】
液体を吐出させるためのノズル開口が形成されるノズルプレート、及び少なくとも、前記ノズル開口と連通する流路が形成され、前記ノズルプレートが前記流路に位置を合わせて接合される流路プレートを具備した液体吐出ヘッドの前記ノズルプレートに設けられた検知素子から得られた情報に基づいて、前記ノズルプレートの機械的な異常の発生の有無を検知することを特徴とする液体吐出ヘッドの異常検知方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2013−67055(P2013−67055A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206317(P2011−206317)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】