説明

液体吐出ヘッドおよびその製造方法

【課題】 来歴情報の長期の認識性を確保する。
【解決手段】 基板と、該基板上に設けられ、液体が吐出される吐出口と連通する流路の壁を備えた流路壁部材と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、前記流路壁部材に前記流路と連通しない空洞部が設けられ、前記吐出口から前記基板に向かう向きに前記空洞部を見た場合に、前記空洞部は文字の形状であることを特徴とする液体吐出ヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を吐出する液体吐出ヘッドの製造方法に関し、具体的には被記録媒体にインクを吐出することにより記録を行うインクジェット記録ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドは、例えばインクを被記録媒体に吐出して記録を行うインクジェット記録方式に適用される。このインクジェット記録ヘッドは、一般に、流路と、その流路の一部に設けられた吐出エネルギー発生素子と、そこで発生するエネルギーによってインクを吐出するための微細な吐出口と、を備えている。
【0003】
上記のようにインクジェット記録ヘッドに適用可能な液体吐出ヘッドを半導体製造技術に使用されるフォトリソグラフィー法を応用して製造するための方法が特許文献1に開示されている。この方法は、1枚のシリコンウェハー上に液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生する素子とそれに対応した吐出口、流路を備えた部材を形成した後、ダイシングによりシリコンウェハーを複数のチップ単位に分離することにより、個々の記録ヘッドとする。
【0004】
一方、ダイシング前のウエハ−における個々のチップ単位毎の来歴情報を刻印する方法が、特許文献2に開示されている。これは、来歴情報記録専用のポリシリコンのヒューズ素子領域を半導体チップ内に設け、そこに刻印用のレーザー装置によってダメージを与えることにより来歴情報を刻印する方法である。刻印内容としては、ウェハー内のチップ位置情報、ウェハーのロット番号、ウェハー番号等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−82329号公報
【特許文献2】特開平5−74748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インクジェット記録ヘッドに関して、製造時の来歴情報の記録を行い、活用することを想定した場合、特許文献2の方法の適応は以下の懸念が生じる。
【0007】
インクジェット記録ヘッド使用時には、チップ単位のヘッドの表面には、極性のインク等が付着する場合や、記録用紙が接触することも想定される。そのような状態を経験しながら、長期間、来歴情報を確実に保存するためには、来歴情報記録パターンに耐溶剤性、耐磨耗性などの信頼性に関する特性が要求される。また、来歴情報記録パターンを保護する部材を新たに設けることが考えられる。しかし来歴情報パターンの認識性、具体的には視認性などの読み取りやすさへの影響と、来歴情報パターンと保護部材との密着性、保護部材の信頼特性を検討して材料を選択することは困難が伴う。
【0008】
そこで本発明では長期的な保存を可能とし、認識性が確保された来歴情報を備えた液体吐出ヘッドを提供することを目的の一つとする。またそのような液体吐出ヘッドを簡便に、工程負荷を抑えて製造することが可能な液体吐出ヘッドの製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一例は、基板と、該基板上に設けられた、液体を吐出する吐出口と連通する流路の壁を備えた流路壁部材と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、前記流路と連通しない空洞部が前記流路壁部材の内部に設けられ、前記吐出口から前記基板に向かう向きに前記空洞部を見た場合に、前記空洞部は文字の形状を有し、前記文字は、前記液体吐出ヘッドに関する情報と対応していることを特徴とする液体吐出ヘッドである。
【0010】
また本発明の一例は、基板と、該基板上に設けられた、液体を吐出する吐出口と連通する流路の壁を備えた流路壁部材と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、前記基板の端面を封止し、前記流路壁部材の側外面に接して設けられる封止部材が、前記側外面から前記流路壁部材の内部にかけて設けられ、前記吐出口から前記基板に向かう向きに前記流路壁部材の内部の前記封止部材を見た場合に、前記封止部材は文字の形状を有し、前記文字は、前記液体吐出ヘッドに関する情報と対応していることを特徴とする液体吐出ヘッドである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、認識性が確保され、長期的な保存が可能な形で来歴情報を付与された液体吐出ヘッドが得られる。これにより、製造後、長期間使用された、あるいは保存された後の液体吐出ヘッドにおいても、その来歴情報を元に、当該液体吐出ヘッドの製造過程での状態を認識することが可能となる。またそのような液体吐出ヘッドを簡便に、工程負荷を抑えて製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の一例を示す模式的斜視図である。
【図2】本発明の液体吐出ヘッドの一例を説明するための模式図である。
【図3】本発明の液体吐出ヘッドの一例を説明するための模式図である。
【図4】本発明の液体吐出ヘッドの一例を説明するための模式図である。
【図5】本発明の液体吐出ヘッドの一例を示す模式的断面図である。
【図6】実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図7】実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法を説明するための模式図である。
【図8】液体吐出ヘッドの実施形態を説明するための模式図である。
【図9】液体吐出ヘッドの実施形態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
なお、液体吐出ヘッドは、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に搭載可能である。例えば、バイオッチップ作成や電子回路印刷、薬物を噴霧状に吐出するなどの用途としても用いることができる。
【0014】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、液体吐出ヘッドの模式的な斜視図である。これはチップ単位に切断された後の状態のものを示している。本実施形態の液体吐出ヘッドは、インクを吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子2が所定のピッチで2列に並んで形成されたシリコンの基板12を有している。基板12には、共通供給口13が、エネルギー発生素子2の2つの列の間に開口されている。基板12上の流路壁部材9には、各エネルギー発生素子2の上方に開口する吐出口11と、共通供給口13から各吐出口11に連通する流路14が設けられている。
【0015】
このヘッドは、共通供給口13が形成された面が被記録媒体の記録面に対面するように配置される。そして共通供給口13を介して流路内に充填されたインクに、エネルギー発生素子2によって発生する圧力を加えることによって、吐出口11からインク等の液滴を吐出させ、紙等の記録媒体に付着させることによって記録を行う。
【0016】
また、図1(b)に示される形態では、流路壁部材9の周囲を囲むように周囲部材101が配されている。周囲部材101は、流路壁部材9が樹脂の硬化物で形成される場合、同硬化物により形成されることが好ましい。例えば、流路壁部材と同等の高さの周囲部材101を設けることにより、ワイピング特性向上が向上されたり、基板の素子面保護が向上したりする等の効果を奏する。
【0017】
(第1の実施形態)
図2は本発明の第1の実施形態に係るヘッドの上面図である。
【0018】
図2(a)は、図1の情報刻印領域3の上面拡大図であり、図3は図2(a)と同様の拡大図である。また、基板12上の膜構成に関しては、図5で説明する。図5は、図2のA−A‘部の断面図であり、液体吐出ヘッドの流路壁部材9の側外面の一部102から内部の方向に見た図である。図2、3、5から、流路壁部材9内、あるいは周囲部材101内の空洞部4により、流路壁部材9の端部、つまり、流路壁部材9の側外面5に係るように文字の形状で情報が配置される。流路壁部材9の吐出口11が設けられた面側から基板12に向かう方向に空洞部 4を見た場合に、空洞部4は文字状に見える。空洞部 4のうち、文字として見える部分は、流路壁部材9の基板12と向かい合う天井部と基板12との間の部分である。流路壁部材9は空洞部4を形成する内壁面を有し、その内壁面が内側となるように流路壁部材9と基板12とが接合されていることで空洞部4が形成されている。無論この形態に限定されず側面が閉じていてもよい。また流路壁部材9と基板12との接合性を高めるために、ポリエーテルアミドからなる密着向上層7が基板1の表面に設けられている。本実施形態においては、情報刻印領域3の流路壁部材下部において、全て密着向上層7が配置されている。空洞部4は外気と連通してもよいし、流路壁部材9により外気と隔てられていてもよい。空洞部4と流路14との間は流路壁部材9が設けられ、空洞部4と流路14とは隔てられているため、流路内の液体が空洞部に浸入してくることはない。文字の形状の空洞部4は、周囲部材101内に設けられていてもよい。この場合には、周囲部材101は空洞部4を形成する内壁面を有し、その内壁面が内側となるように周囲部材101と基板12とが接合されていることで空洞部4が形成される。文字の形状の空洞部は、流路壁部材9、周囲部材101の少なくともいずれかに設けられ、流路壁部材9と周囲部材101との両方に設けられていてもよい。
【0019】
図2の拡大図では複数個のそれぞれ独立した(連通しない)空洞部4のそれぞれは「7」、「0」、「3」の数字の形状であり、3桁の数字「703」として表示される。空洞部4の個数が複数桁を表示する際の桁数とすることが可能である。無論空洞部同士が連通しても構わない。また図3に示されるように、文字は数字に限られず、図3(a)のように3つの空洞部4により「E」、「1」、「1」としてローマ字を混在させる形または、ローマ字のみでもよい。さらに、数字はアラビア数字のみではなく、ギリシア数字(b)、漢数字(c)でもよい。その他に、ハングル文字、キリル文字等、諸国において文字として使用されているものでもよい。また、図3(d)に示されるように側外面5を上部として「0」、「4」と読み取れるように形成してもよい。また、図3Eに示されるように、複数の空洞部4で韓国語で「2」を意味する数字の形状として認識できるような形状に空洞部4を形成することもできる。
【0020】
文字の読み取りは、顕微鏡を使い、倍率、フォーカスを調整して人間が視認してもよいし、機械に認証させることも可能である。人間が視認することは、特別な読み取り装置を必要とせず、また文字形状に多少の形状誤差が生じていてもそれを加味して判断できるという点でこのましい。一方可視光以外の光を用いて、流路壁部材9と空洞部4とのコントラストを計測して形状に関する情報を取得することが可能となる装置を使用して、得た情報から数値を認知してもよい。この場合には、流路壁部材9は、計測に用いられる任意の波長の光に対して、測定を妨げないような光吸収、光反射特性を有することが望まれる。
【0021】
空洞部4によって情報刻印領域3に付される文字情報は、流路壁部材が設けられる、すなわち流路となる空間が備わった流路壁部材がウェハー上に形成される前に、予め決められていた液体吐出ヘッドに関する事項に対応する。一例として来歴情報が挙げられる。例えば、空洞部が示す文字が、図4に示されるように、基板12がウェハー15から切り分けられてチップ単位に分割される前に、ウェハー領域内でどの位置にあったかということを数字で番号表示するというものである。それぞれの流路壁部材をウェハー内のどの位置で形成することになるかという事項は、流路壁部材を形成する前に予め決められていて、上記事項が液体吐出ヘッドに関する情報として文字の形式で保存される。これを単離された液体吐出ヘッドから読み取ることによって、分離後の基板12のウェハー状態での位置を知ることが可能となり、これをもとに製造工程を振り返り、改善することが可能となる。たとえば、流路壁部材9を露光して製造するときのフォトマスクの状態を振り返ることができる。液体吐出ヘッドに関連する情報は、液体吐出ヘッドの固体を識別するための情報、流路壁部材形成のための露光用マスクの識別情報、製造時の日時、場所に関連する情報や生産個数に関する情報等が挙げられる。上記は流路壁部材を形成する時点では決まっているもので、これらの情報をそれに対応する文字の形状の空洞部4により文字表示させることができる。
【0022】
以上の説明では、文字形状の空洞部4によって、液体吐出ヘッドに関する情報に対応する情報を文字として液体吐出ヘッドに付与する形態を説明した。しかし、空洞部4の形状は文字形状に限定されず、広く記号(mark)として認識可能な形状とし、その記号と液体吐出ヘッドに関する情報(来歴情報等)とを対応させることができる。例えば、キーボードの「アットマーク」形状の記号(図3(f))や、「クローバー」形状の記号(図3(g))の形状の空洞部4を設けることができる。上述したように、文字に対して行ったことと同様に、予め分かっている液体吐出ヘッドに関する情報を記号に対応させて、その記号の形状の空洞部4を液体吐出ヘッドに設けることができる。記号は、数学、物理学等の学問の分野、音楽、美術等の芸術の分野のほかに、建築、会計、道路交通、商業等の分野で使用され、その例として、文字の他、符号として使用されるものも挙げられる。また、一般的に事象と関連した記号として認識されて使用されることがない形状であっても、その形状と液体吐出ヘッドに関連する情報との対応関係を定義して、その形状を記号として使用することも可能である。その例として、図3(h)に示されるように、円の中に、3つの矩形を配置した形状を例示する。そして、上述した、文字と液体吐出ヘッドに関する情報との対応のさせ方と同様に、複数の記号と1つの情報とを対応させることももちろん可能である。
【0023】
また、空洞部4は基板から、流路14とほぼ同等の高さで設けられ、具体的には、5μm以上20μm以下である。視認等の表面から深さ方向に観測する際の認識性を高めるという観点からは10μm以上で設けられることが好ましい。流路壁部材9は、樹脂の硬化物等で、可視光に対してほぼ透明に形成される。具体的には、視認性を考えた場合550nmの波長の光に対して透過率が90%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは、1%以下であることが好ましい。具体的には、オキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ樹脂として、EHPE−3150(ダイセル化学(株)製)の硬化物や、SU−8(化薬マイクロケム(株)製)が知られているノボラック系の樹脂の硬化物から流路壁部材が形成される。視認性の観点からは、可視光に対して吸収が高い添加物は用いないことが好ましい。
【0024】
また、本形態では空洞部4を形成する側面は、基板の表面に対して、垂直より緩やかに傾いていているため、(図示は省略してある)光が反射せず、流路壁部材表面から見た場合に、黒色に縁取られている。この両者が合わさり、数字や記号等の来歴情報が格段に読み取り易くなっている。
【0025】
来歴情報が流路壁部材の内部に空洞部4として抜きパターンとして設けられることで、来歴情報表示専用の特別な部材や、来歴情報専用の保護部材等を設ける必要がなくなる。流路壁部材は、インク等の吐出液体に長期に触れること、記録媒体等との接触の可能性を前提として材料が選択されている。そのため、来歴表示部も流路壁部材と同等の液耐性を有し、また外部からの衝撃耐性を有することとなり、長期にわたり来歴情報の保存を行うことが可能となる。
【0026】
(第2の実施形態)
液体吐出ヘッドの製造方法の一例を第2の実施形態として説明する。
図6は、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の製造方法の一例を示す模式的断面図であり、図1のA−A’断面である。
図6(a)に示されるシリコンのウェハー状基板15は結晶方位が<100>面である。本発明では、<100>面を使った場合を記載するが、面方位を制限するものではない。この基板15上には、発熱抵抗体等の液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子2が複数個配置されている。(図示は省略する)、この基板12上には、密着向上層7を所定の形状でパターニングして設けられている。密着向上層7の材料としては、ポリエーテルアミド樹脂が用いられる。具体的な材料としては、日立化成(株)のHIMAL−1200(製品名)を使用できる。密着向上層7の厚みは2μmとする。
【0027】
次いで、図6(b)に示されるように、基板上にポジ型感光性樹脂等からなる樹脂層16を設ける。ポリケトン系の樹脂、メタクリレート系の樹脂が使用可能である。この樹脂層16は高さ12μmとする。
【0028】
図6(c)に示されるように、樹脂層16から前記流路の形状の第1の型8と、前記空洞部4を形成するための第2の型17と、をそれぞれ別体で設ける。この第2の型17は基板の上方から前記基板の面に向かう方向にみた場合(図5)、形成される空洞部4の形状に応じた文字の形状をしている。ポジ型感光性樹脂の層16に対して、ウェハー全面に一括でプロキシミティー露光を行うことにより、切断後のチップ単位それぞれに対して、第1の型8は同形状、第2の型17は異なる文字形状となるように露光を行うことができる。文字は、ウェハー内でのチップ単位の位置を示すものである。これは露光マスクを編集することにより可能となる。次いで現像を行えば、型が形成される。型は、ウェハーから切断されて作成される液体吐出ヘッドの個数に応じて複数形成される。
【0029】
次いで、図6(d)に示されるように、第1の型8と第2の型17とを覆うように流路壁部材となる感光性のエポキシ樹脂等のネガ型感光性樹脂の被覆層18を前記基板上に設ける。スピンコート法などで塗布することができる。
【0030】
次いで、図6(e)に示されるように、被覆層18に露光、現像等の光加工を行い、吐出口となる第1の開口11aと、空洞部を形成するために第2の型を除去するための第2の開口19を形成する。第1の開口11aは第1の型上に、第2の開口19は第2の型上に設ける。これとともに、被覆層18に側外面20を形成して、第2の型17を露出させる。流路壁部材がウェハーから切断されて作成される液体吐出ヘッドの個数に応じて複数形成されるように、露光現像を行う。
【0031】
次いで、図6(f)に示されるように、供給口13を基板15に形成して、第1の型と第2の型とを一括して溶解、超音波等により除去して、流路14、吐出口11を形成するとともに流路壁部材9を形成する。また流路とともに文字状の空洞部4を一括して形成する。空洞部を基板の上方から見た図が図8である。空洞部4は、流路壁部材9の側外面5側に開口し、また第2の開口19により吐出口11が設けられた面側でも開口している。その後、ウェハー状基板15をダイシング等により切断して、一つ、または所定個数の流路壁部材を一つの単位として分割して切り出し、チップ単位の基板12上に流路壁部材等が設けられた液体吐出ヘッドが作成される。
【0032】
さらに以降に行われる実装工程を説明する。
図6(g)に示されるように、アルミナ等の支持部材21に液体吐出ヘッドを載置して、接着剤等で基板12と支持部材21とを接合する。次いで、ダイシングにより切断されることで生じた基板12の端面22を封止部材10により封止する。端面をインクミスト等の吐出液体のミスト等から保護するためにブタジエン系エポキシ等の封止材料により行う。具体的な製品としては、サンユレック(株)製のNR200C(製品名)が挙げられる。その過程において、流路壁部材9の側外面5から空洞部4内にかけて封止部材10を毛管現象により注入する。図9は来歴情報表示部を基板の上方からみた上面図である。図示されるように、流路壁部材9の側外面5から内部にかけて封止部材10により文字が透明である場合には、黒色の封止部材10を注入することでコントラストを更に強調することが可能となり、来歴情報の読み取りが更に容易となる。
【符号の説明】
【0033】
1 基板
4 空洞部
9 流路壁部材
10 封止部材
11 吐出口
12 基板
14 流路
101 周囲部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に設けられた、液体を吐出する吐出口と連通する流路の壁を備えた流路壁部材と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記流路と連通しない空洞部が1つ以上、前記流路壁部材の内部に設けられ、前記吐出口から前記基板に向かう向きに前記空洞部を見た場合に、前記空洞部は文字の形状を有し、前記文字または複数の前記空洞部で表現される複数の文字は、前記液体吐出ヘッドに関する情報と対応していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記文字は数字であることを特徴とする請求項1の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記数字はアラビア数字、漢数字およびギリシア数字から選ばれる一つであることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
複数の前記空洞部が前記流路壁部材に設けられ、前記吐出口から前記基板に向かう向きに前記空洞部を見た場合に、数字の形状の前記空洞部の複数が複数桁の数字を示していることを特徴とする請求項2または3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドは、ウェハー状態の基板に複数の前記流路壁部材を設けた後、所定個数の前記流路壁部材を一つの単位として前記ウェハーを複数個に分割することで製造され、前記情報は前記流路壁部材の前記ウェハーの領域内での位置に関わる情報であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記空洞部は前記基板の表面から10μm以上の高さで設けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記流路壁部材はエポキシ樹脂の硬化物を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
基板と、該基板上に設けられた、液体を吐出する吐出口と連通する流路の壁を備えた流路壁部材と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記基板の端面を封止し、前記流路壁部材の側外面に接して設けられる封止部材が、前記側外面から前記流路壁部材の内部にかけて設けられ、前記吐出口から前記基板に向かう向きに前記流路壁部材の内部の前記封止部材を見た場合に、前記封止部材は文字の形状を有し、前記文字は、前記液体吐出ヘッドに関する情報と対応していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項9】
基板と、該基板上に設けられた、液体を吐出する吐出口と連通する流路の壁を備えた流路壁部材と、前記流路壁部材を囲う周囲部材と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記周囲部材に前記流路と連通しない空洞部が1つ以上設けられ、前記吐出口から前記基板に向かう向きに前記空洞部を見た場合に、前記空洞部は文字の形状を有し、前記文字または複数の前記空洞部で表現される複数の文字は、前記液体吐出ヘッドに関する情報と対応していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記数字はアラビア数字、漢数字およびギリシア数字から選ばれる一つであることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
基板と、該基板上に設けられた、液体を吐出する吐出口と連通する流路の壁を備えた流路壁部材と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記流路と連通しない空洞部が複数、前記流路壁部材の内部に設けられ、前記吐出口から前記基板に向かう向きに前記空洞部を見た場合に、前記空洞部は複数の前記空洞部で1つの文字の形状として識別可能な形状であり、複数の前記空洞部で表現される複数の文字は、前記液体吐出ヘッドに関する情報と対応していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項12】
基板と、該基板上に設けられた、液体を吐出する吐出口と連通する流路の壁を備えた流路壁部材と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記流路と連通しない空洞部が1つ以上、前記流路壁部材の内部に設けられ、前記吐出口から前記基板に向かう向きに前記空洞部を見た場合に、前記空洞部は記号として識別可能な形状を有し、前記記号または複数の前記空洞部で表現される複数の前記記号は、前記液体吐出ヘッドに関する情報と対応していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項13】
基板と、該基板上に設けられた、液体を吐出する吐出口と連通する流路の壁を備えた流路壁部材と、を有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記流路と連通しない空洞部が複数、前記流路壁部材の内部に設けられ、前記吐出口から前記基板に向かう向きに前記空洞部を見た場合に、前記空洞部は複数の前記空洞部で1つの記号の形状として識別可能な形状であり、前記記号は、前記液体吐出ヘッドに関する情報と対応していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項14】
基板と、該基板上に設けられた、液体を吐出する吐出口と連通する流路が設けられた流路壁部材と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法において、
前記基板上に、前記流路の形状を有する第1の型と、前記基板の上方から前記基板の面に向かう方向にみて文字の形状を有する第2の型と、を互いに離して設ける工程と、
前記第1の型と前記第2の型とを覆うように前記流路壁部材となる層を前記基板上に設ける工程と、
前記第1の型を除去して前記流路を形成し、前記2の型を除去して前記液体吐出ヘッドに関する情報と対応している前記文字の形状の空洞を形成する工程と、
を有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記第1の型と前記第2の型とを設ける工程において、
前記基板上に設けられたポジ型感光性樹脂の層から前記第1の型と前記第2の型とを形成することを特徴とする請求項14に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記層を前記基板上に設ける工程を行った後に、
前記層の前記第1の型上に前記吐出口となる第1の開口を設けるとともに、前記層の前記第2の型上に第2の開口を設け、
前記第2の開口から前記第2の型を除去して、前記流路壁部材に前記流路と連通しない空洞部を形成することを特徴とする請求項14または15に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記層の側外面に前記第2の型の一部を露出させ、前記側外面から前記第2の型を除去して前記流路壁部材に前記流路と連通しない空洞部を形成する工程と、
空洞部を埋めるように前記基板の端面を封止するための封止部材を設ける工程と、
を有することを特徴とする請求項16に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記文字はアラビア数字、漢数字およびギリシア数字から選ばれる一つであることを特徴とする請求項14に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−68129(P2011−68129A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188487(P2010−188487)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】